特許第5900853号(P5900853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5900853-非水電解質二次電池 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900853
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20160324BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20160324BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160324BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160324BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160324BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160324BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M4/48
   H01M4/36 E
   H01M4/525
   H01M4/58
   H01M4/505
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-57769(P2012-57769)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191458(P2013-191458A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−269331(JP,A)
【文献】 特開平09−007638(JP,A)
【文献】 特開平06−325765(JP,A)
【文献】 特開2011−076997(JP,A)
【文献】 特開2010−033924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiを有する正極と、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLi及びSiO(0≦x<2)を有する負極とが組み込まれた非水電解質二次電池であって、
前記正極は、前記の正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiを有する正極活物質(A)と、前記正極活物質(A)以外の正極活物質(B)とを併有する非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質(A)は、リチウム鉄リン酸化合物、リチウムコバルト酸化物及びリチウムニッケル酸化物から選択される1種以上であり、前記正極活物質(B)は、スピネル型リチウムマンガン酸化物、モリブデン酸化物及びバナジウム酸化物から選択される1種以上である請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極における前記の正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiの含有量は、前記負極の理論的な可逆容量の5〜100%となる量である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記の正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiの総量は、前記正極の理論容量と前記負極の理論容量との合計100に対し、50超100以下となる量である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高く軽量であることから、電子機器の電源として注目され、特にボタン型の非水電解質二次電池は、小型であることから携帯電話等の携帯電子機器のバックアップ用途を含め広く利用されている。
非水電解質二次電池は、充放電が繰り返されると、次第に放電容量が低下する。非水電解質二次電池は、電子機器から発せられた熱により50℃以上に加熱されることがあり、このような高温状況下で充放電が繰り返されると、容量の低下がより速くなる傾向にある。このため、非水電解質二次電池には、充放電が繰り返されても、放電容量が低下しにくい(サイクル特性が高い)ものが求められている。
例えば、正極活物質としてLiMn12を用い、負極活物質としてSiOを用いたものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、特定の正極活物質と特定の負極活物質を組み合わせることによって、サイクル特性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−327282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非水電解質二次電池には、さらなるサイクル特性の向上が求められている。
そこで、本発明は、サイクル特性が高い非水電解質二次電池を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の非水電解質二次電池は、正極又は負極にのみ、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLi(以下、可逆Liということがある)を有している。例えば、ボタン型(コイン型)の非水電解質二次電池は、負極にLiを吸蔵させ、この吸蔵させたLiの移動によって正極と負極との間で電子の授受を行わせている。通常、負極に吸蔵させたLiの一部は可逆容量分として正極と負極との間を移動し、他の一部は不可逆容量分として負極内に保持される。このため、負極に不可逆容量分を加味した量のLiを吸蔵させておくことで、可逆容量分のLiの必要量を確保することが図られている。
可逆Liは、充放電を繰り返す間に電極表面で電解液との反応物(有機物、フッ化物、水酸化物等)等を生成することで消費されて低減すると共に、先の反応物によって生じた皮膜(以下、SEIということがある)がリチウムイオンの電荷抵抗を増大させ、充放電時の過電圧を増大させて、電池機能を低下させていく。ここで、正極の容量よりも負極の容量を大きくして、多量のLiを負極に吸蔵させることで、サイクル特性の向上を図れるものの、小型のボタン型の非水電解質二次電池では、電池全体に占める負極の体積の割合が制限されるため、負極の体積割合を大きくすることによるサイクル特性の向上に限界がある。
本発明者らは鋭意検討した結果、予め、正極及び負極のそれぞれに、可逆Liを含有させておくことで、非水電解質二次電池のサイクル特性の向上が図れることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明の非水電解質二次電池は、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiを有する正極と、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLi及びSiO(0≦x<2)を有する負極とが組み込まれたことを特徴とする。
前記正極は、前記の正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiを有する正極活物質(A)を含有することが好ましく、前記正極は、前記正極活物質(A)以外の正極活物質(B)を併有してもよく、前記正極活物質(A)は、リチウム鉄リン酸化合物、リチウムコバルト酸化物及びリチウムニッケル酸化物から選択される1種以上であり、前記正極活物質(B)は、スピネル型リチウムマンガン酸化物、モリブデン酸化物及びバナジウム酸化物から選択される1種以上が好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非水電解質二次電池によれば、サイクル特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる非水電解質二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の非水電解質二次電池は、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLiを有する正極と、正極と負極との間を移動して電子の授受を行うLi及びSiO(0≦x<2)を有する負極とが組み込まれたものである。
本発明の非水電解質二次電池の一実施形態について、図1を参照して説明する。非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン型構造のものである。
図1の非水電解質二次電池1は、有底円筒状の本体部(正極缶)12と、正極缶12の開口部を塞ぐ有蓋円筒状の蓋部(負極缶)22と、正極缶12の内周面に沿って設けられたガスケット40とからなり、正極缶12の開口部周縁を内側にかしめた収納容器2を備えるものである。
非水電解質二次電池1は、収納容器2内に、正極10と負極20とがセパレータ30を介して対向配置され、電解液50が充填されたものである。正極10は正極集電体14を介して正極缶12の内面に電気的に接続され、負極20は負極集電体24を介して負極缶22の内面に電気的に接続されている。そして、正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された電解液50が含浸している。
【0010】
正極缶12の材質としては、従来公知のものが用いられ、例えば、ステンレス鋼等が挙げられる。
負極缶22の材質は、正極缶12と同様である。
【0011】
正極10としては、可逆Liを有するものが用いられる。
可逆Liは、正極10と負極20との間を移動して電子の授受を行えるものであれば、特に限定されないが、例えば、可逆Liを有する正極活物質(A)として、正極10に添加される。
正極活物質(A)としては、LiFe1−pPO(0≦p≦1、MはMn、Ni、Co、Ti、Al、Cr、V、Nbのうちの少なくとも1種類)、LiFe2−q(PO(0≦q≦1、MはMと同じである)等のリチウム鉄リン酸化合物、LiCo1−r(0≦r<1、MはMn、Ti、Fe、Cr、Al、Mo、V、Cu、Nb、Zn、Ca、Mgのうちの少なくとも1種類)等のリチウムコバルト酸化物、LiNi1−s(0≦s<1、MはMn、Co、Ti、Fe、Cr、Al、Mo、V、Cu、Nb、Zn、Ca、Mgのうちの少なくとも1種類)等のリチウムニッケル酸化物、LiCo1−tPO(0≦t<1、MはMと同じである)等のリチウムコバルトリン酸化合物、LiNi1−uPO(0≦u<1、MはMと同じである)等のリチウムニッケルリン酸化合物等が挙げられる。
【0012】
正極活物質(A)の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば、リチウムコバルト酸化物やリチウムニッケル酸化物の場合には、0.1〜100μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。また、リチウム鉄リン酸化合物では、0.001〜1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。上記下限値未満では、後述する正極活物質(B)と混合しにくく、上記上限値超では放電レートが低下するためである。なお、平均粒子径(D50)は、レーザー回折法を用いて測定される質量平均粒子径である。
【0013】
正極10中の正極活物質(A)の含有量は、正極活物質(A)の種類等を勘案して決定でき、例えば、10〜76質量%が好ましく、28〜53質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、サイクル特性をより高められ、上記上限値以下であれば、正極10を成形しやすい。
【0014】
正極10は、正極活物質(A)以外の正極活物質(B)を含有してもよい。
正極活物質(B)としては、例えば、LiMn5−w12(0≦w<1、MはNi、Co、Ti、Fe、Cr、Al、Mo、V、Cu、Nb、Zn、Ca、Mgのうちの少なくとも1種類)、LiMn2−y(0≦y<1、MはMと同じである)、LiMn4−z(0≦z<1、MはMと同じである)等のスピネル型リチウムマンガン酸化物、MoO、MoO等のモリブデン酸化物、V、V、V13等のバナジウム酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質(B)を含有することで、非水電解質二次電池1の放電容量を高められる。
正極活物質(B)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0015】
正極活物質(A)と正極活物質(B)との組み合わせは、非水電解質二次電池1の電圧値等を勘案して決定される。
例えば、非水電解質二次電池1を電圧値4V以上5V未満のもの(4V系二次電池)とする場合、正極活物質(A)を含み、かつ正極活物質(B)を含まない構成、正極活物質(A)と、LiMnを除く正極活物質(B)とを組み合わせた構成等が好適である。
また、例えば、非水電解質二次電池1を電圧値3V以上4V未満のもの(3V系二次電池)とする場合、正極活物質(A)と、正極活物質(B)とを組み合わせた構成が好適である。
【0016】
正極活物質(B)の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。上記下限値未満では、電解液との反応性が高まるため扱いにくく、上記上限値超では放電レートが低下するためである。
【0017】
正極10中の正極活物質(B)の含有量は、非水電解質二次電池1に求める放電容量等を勘案して決定され、例えば、10〜76質量%が好ましく、28〜53質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、放電容量をより高められ、上記上限値以下であれば、正極10を成形しやすい。
【0018】
正極活物質(A)/正極活物質(B)で表される質量比(以下、A/B比ということがある)は、非水電解質二次電池1の電圧値等を勘案して決定される。A/B比が低すぎるとサイクル特性を十分に高められないおそれがあり、A/B比が高すぎると、所望する電圧値が得られなかったり、過充電によって正極活物質(A)が析出して非水電解質二次電池1が過熱する場合がある。
このため、例えば、3V系二次電池であれば、A/B比は、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましく、4/6〜6/4がさらに好ましい。
【0019】
正極10中の正極活物質(A)と正極活物質(B)との合計量は、非水電解質二次電池1に求める放電容量等を勘案して決定され、例えば、50〜95質量%が好ましく、70〜88質量%がより好ましい。上記下限値未満では、十分な放電容量を得にくく、上記上限値超では、正極10を成形しにくい傾向となる。
【0020】
正極10は、導電助剤(正極10に用いられる導電助剤を正極導電助剤ということがある)を含有してもよい。正極導電助剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。これらの正極導電助剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
正極10中の正極導電助剤の含有量は、例えば、4〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。上記下限値未満では、十分な導電性を得にくく、正極10をペレット状に成形する場合には成形しにくく、上記上限値超では正極10の放電容量が不十分になるおそれがある。
【0021】
正極10はバインダ(正極10に用いられるバインダを正極バインダということがある)を含有してもよい。正極バインダとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)等のポリマー、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。これらの正極バインダは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。なお、ポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を予めpH3〜10に調整しておくことが好ましい。pHの調整には、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
正極10中の正極バインダの含有量は、例えば、1〜20質量%とされる。
【0022】
正極10の大きさは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定される。
正極10の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が、バックアップ用のボタン型の非水電解質二次電池であれば、300〜1000μmとされる。
【0023】
正極10は、従来公知の製造方法により得られる。正極10の製造方法は、例えば、正極活物質(A)、ならびに必要に応じて正極活物質(B)、正極導電助剤及び正極バインダから選択される1種以上を混合して正極合剤とし、この正極合剤を任意の形状に加圧成形する方法が挙げられる。
加圧成形時の圧力は、正極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば、0.2〜5ton/cmとされる。
【0024】
正極集電体14としては、従来公知のものが用いられ、例えば、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等が挙げられる。
【0025】
負極20としては、可逆Liを含有するものが用いられ、例えば、負極活物質等を含有する負極ペレットに、可逆Liである金属リチウムを吸蔵させたものが挙げられる。
負極20中の可逆Liの含有量は、非水電解質二次電池1の放電容量等を勘案して決定され、例えば、負極20において、負極活物質の理論的な可逆容量(以下、理論容量ということがある)の5〜100%となる量が好ましく、20〜100%となる量がより好ましい(負極における負極活物質の理論容量に対する可逆Liの含有量を負極可逆Li量ということがある)。負極活物質がSiO(x=1)である場合、SiO(x=1)1モルに対し4モルのLiを吸蔵させられるが、この内の2モルのLiは負極活物質にトラップされて可逆Liの含有量は2モルとなる。このため、SiO(x=1)1モルに対して2.1〜4モルのLiを吸蔵させれば負極可逆Li量が5〜100%となり、SiO(x=1)1モルに対して2.4〜4モルのLiを吸蔵させれば負極可逆Li量が20〜100%となる。負極可逆Li量が上記下限値未満であると、サイクル特性を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超では、サイクルに伴い負極20の表面にLi金属が析出しやすくなって非水電解質二次電池1の安定性が低下するおそれがある。
【0026】
非水電解質二次電池1に組み込まれる正極10中の可逆Liと、非水電解質二次電池1に組み込まれる負極20中の可逆Liとの合計量(可逆Li総量)は、正極10の理論容量と負極20の理論容量との合計を100とした場合、50超100以下が好ましく、60〜70がより好ましい(正極10の理論容量と負極20の理論容量との合計100に対する可逆Li総量の比を可逆Li含有比ということがある)。可逆Li含有比が上記下限値以下では、サイクル特性を十分に高められないおそれがあり、可逆Li含有比が上記上限値超では、サイクルに伴い負極20の表面にLi金属が析出しやすくなって、非水電解質二次電池1の安定性が低下するおそれがある。
【0027】
負極ペレットとしては、例えば、負極活物質としてSiO(0≦x<2)を含有するものであり、SiO(x=1)を含有するものが好ましい。このような負極活物質を含有することで、非水電解質二次電池1のサイクル特性をより高めたり、放電容量をより高めたりできる。なお、SiO(0≦x<2)は、X線回折パターンでブロードを示すアモルファス状で用いられてもよいが、予めSiO(0≦x<2)に熱処理を施して不均化した状態で用いられてもよい。
【0028】
負極ペレットは、SiO(0≦x<2)以外の負極活物質(任意負極活物質)を含有できる。任意負極活物質としては、SnO(0≦v<1)、C(グラファイト、ハードカーボン等)、LiTi12、LiAl等が挙げられる。
【0029】
負極ペレット中のSiO(0≦x<2)と任意負極活物質との合計量は、特に限定されないが、例えば、40〜85質量%とされる。負極活物質の含有量は、主に負極活物質の導電性により決まり、導電性の低い負極活物質であっても表面を炭素で被覆する等して導電性を高めたものであれば、負極活物質の含有比率を高められる。
負極活物質中のSiO(0≦x<2)の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。上記下限値以上であれば、可逆Liの含有量を増やし、サイクル特性のさらなる向上を図れるためである。
【0030】
負極ペレットは、導電助剤(負極20に用いられる導電助剤を負極導電助剤ということがある)を含有できる。負極導電助剤は、正極導電助剤と同様である。
負極ペレット中の負極導電助剤の含有量は、例えば、4〜40質量%とされる。
負極ペレットは、バインダ(負極20に用いられるバインダを負極バインダということがある)を含有できる。負極バインダは、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。これらの負極バインダは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。なお、ポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を予めpH3〜10に調整しておくことが好ましい。pHの調整には、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
負極ペレット中の負極バインダの含有量は、例えば、1〜20質量%とされる。
【0031】
負極20の大きさは、負極活物質の種類、非水電解質二次電池1の大きさや、正極10の大きさ等を勘案して決定される。負極20の大きさは、負極20の容量が正極10の容量よりも大きくなるように設計されることが好ましい。
(負極20の理論容量)/(正極10の理論容量)で表される負極/正極容量比は、例えば、0.5〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。負極/正極容量比が上記下限値未満では、非水電解質二次電池1のサイクル特性を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超では、例えば、正極10の大きさが制限され、非水電解質二次電池1の放電容量が低下するおそれがある。
【0032】
負極集電体24は、正極集電体14と同様である。
【0033】
負極20の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、負極活物質ならびに必要に応じて負極導電助剤及び/又は負極バインダを混合して負極合剤とし、この負極合剤を任意の形状に加圧成形して負極ペレットとする。
加圧成形時の圧力は、負極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば、0.2〜5ton/cmとされる。
次いで、負極ペレットの表面に、リチウムフォイル等のLiの成形物を任意の圧力で押し付けつつ、任意の温度で静置して、負極ペレットにLiを吸蔵させる。この際、所望する可逆Liの量に、負極活物質の不可逆容量分のLiを加えた量のLiを負極ペレットに吸蔵(負極活物質のSiO(0≦x<2)にリチウムイオンをインターカレーション)させる。
Liの成形物を負極ペレットに押し付ける圧力は、特に限定されず、例えば、0.01〜1MPaとされる。
静置する温度は、特に限定されず、例えば、10〜60℃とされ、好ましくは20〜30℃とされる。
静置する時間は、Liを負極ペレットに十分に吸蔵できる時間とされ、例えば、5〜7日間とされる。
また、負極20の製造方法としては、負極ペレットの表面にLi層をスパッタリング等で形成し、その後、任意の温度で静置して負極ペレットにLiを吸蔵させる方法が挙げられる。
【0034】
電解液50は、支持塩を非水溶媒に溶解させたものである。
非水溶媒としては、従来公知のものが用いられ、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート、γ−ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、1,2−エトキシメトキシエタン(EME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン(DOL)等が挙げられる。これらの非水溶媒は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0035】
支持塩は、非水電解質二次電池の電解液に支持塩として用いられる公知の物質を用いることができる。例えば、LiCHSO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO等の有機酸リチウム塩、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCl、LiBr等の無機酸リチウム塩等のリチウム塩等が挙げられる。中でも、リチウムイオン導電性を有する化合物であるリチウム塩が好ましく、LiN(CFSO2、LiN(FSO2、LiBFがより好ましく、耐熱性及び水分との反応性が低く、保存特性を十分に発揮できるという観点から、LiN(CFSOが特に好ましい。これらの支持塩は1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0036】
電解液50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案して決定でき、例えば、リチウム塩を用いる場合、0.5〜3.5mol/Lが好ましく、0.5〜3.0mol/Lがより好ましく、1〜2.5mol/Lが特に好ましい。リチウム塩濃度が高すぎても低すぎても電導度の低下が起き、電池特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
セパレータ30は、従来、非水電解質二次電池のセパレータに用いられるものを適用でき、例えば、ホウ珪酸ガラス、アルカリガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)等の樹脂からなる不織布等が挙げられる。中でも、ガラス製不織布が好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布がより好ましい。ガラス製不織布は、機械強度に優れると共に、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図れる。
【0038】
セパレータ30の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさやセパレータ30の材質等を勘案して決定され、例えば、5〜300μmとされる。
【0039】
ガスケット40の材質は、熱変形温度が230℃以上の樹脂が好ましい。熱変形温度が230℃以上であれば、例えばリフロー処理で、ガスケット40が著しく変形して電解液50が漏出するのを防止できる。ガスケット40の材質としては、例えば、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、これらの材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を30質量%以下の添加量で添加したものを好適に用いることができる。このような材質を用いることで、リフローハンダ付けにおいて、ガスケット40の変形を防止し、電解液50の揮発や漏出を防止できる。
【0040】
本実施形態の非水電解質二次電池によれば、可逆Liを有する正極と、負極活物質としてSiO(0≦x<2)を含有し、かつ可逆Liを有する負極とが組み込まれているため、サイクル特性を高められる。
【0041】
上述の実施形態では、ステンレス鋼製の正極缶とステンレス鋼製の負極缶とをかしめた収納容器を備えるコイン型構造の非水電解質二次電池を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、非水電解質二次電池は、セラミックス製の容器本体の開口部が、金属製の封口部材を用いたシーム溶接等の加熱処理によってセラミックス製の蓋体で封止された構造であってもよい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜36、比較例1〜6)
表1〜4の正極活物質の配合に従い、正極活物質(A)と正極活物質(B)とを混合した。表中の正極の配合に従い、正極活物質70質量部と、正極導電助剤である炭素28質量部と、バインダである架橋型のポリアクリル酸2質量部とを混合して正極合剤とした。この正極合剤7mgを2ton/cmで加圧成形し、直径2mm、厚さ600μmの円盤型の正極を得た。
粉砕したSiO(x=1)45質量部と、炭素40質量部と、架橋型のポリアクリル酸15質量部とを混合して負極合剤とした。この負極合剤1.0mgを2ton/cmで加圧成形し、直径2.0mm、厚さ200μmの円盤型の負極ペレットを得た。
30質量部のエチレンカーボネートと35質量部のプロピレンカーボネートと35質量部のスルホランとを混合して非水溶媒とし、得られた非水溶媒に支持塩(LiN(CFSO)を2.0mol/Lとなるように溶解して電解液を得た。
【0044】
ステンレス鋼製の正極缶の内面に、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる正極集電体を用いて正極を接着して正極ユニットを得た。正極ユニットを大気中で、200℃、10時間加熱して、乾燥した。
次いで、正極ユニットの正極缶の開口部の内側面にシール剤を塗布した。
ステンレス鋼製の負極缶の内面に、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる負極集電体を用いて負極を接着し、表中の負極可逆Li量となるように負極上にリチウムフォイルを載置した。
次いで、ホウ珪酸ガラス製繊維を原料とする不織布を乾燥後、直径3mm、厚さ200μmの円盤型に打ち抜いてセパレータとした。このセパレータを負極上に載置し、負極缶の開口部にガスケットを設け、負極ユニットを得た。
正極缶及び負極缶に計5μLの電解液を充填した。
リチウムフォイルがセパレータに当接するように、負極ユニットを正極ユニットに嵌めた。次いで、正極缶の開口部をかしめて正極缶と負極缶とを密封した後、25℃で7日間静置して、各例の非水電解質二次電池を得た。
得られた非水電解質二次電池について、サイクル特性を評価し、その結果を表中に示す。
なお、負極可逆Li量を100、60、30、7、0とするために、負極上に載置するリチウムフォイル(直径2mm)の厚さをそれぞれ220μm、170μm、140μm、120μm、110μmとした。
ただし、実施例28〜36は参考例である。
【0045】
(評価方法)
<サイクル特性>
製造直後の各例の非水電解質二次電池6個について、24℃の環境下、定電流5μA(放電電流)で2.0Vになるまで放電した。次いで、24℃の環境下、表1〜4に示す充電電圧値で48時間印加した。その後、24℃の環境下、定電流5μA(放電電流)で2.0Vになるまで放電し、下記(i)式により放電容量を算出し、その平均値を初期放電容量とした
【0046】
放電容量(μAh)=放電電流(5μA)×放電時間(h) ・・・(i)
【0047】
初期放電容量を測定した非水電解質二次電池について、表1〜4に示す充電電圧値で48時間印加した後、24℃の環境下、定電流5μA(放電電流)で2.0Vになるまで放電する操作(充放電サイクル)を100回繰り返した。100回目の充放電サイクルにおける放電容量(サイクル後放電容量)を初期放電容量と同様にして求め、下記(ii)式により容量維持率を算出した。容量維持率が高いほど、サイクル特性が高いといえる。
【0048】
容量維持率(%)=サイクル後放電容量÷初期放電容量×100 ・・・・(ii)
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
実施例1〜27、比較例1〜3は、3V系二次電池の例であり、実施例28〜36、比較例4〜6は、4V系二次電池の例である。
表1〜4に示すように、本発明を適用した実施例1〜36の容量維持率は83%以上であった。
一方、正極に可逆Liを有さず、負極にのみ可逆Liを有する比較例1〜3の容量維持率、及び、負極に可逆Liを有さず、正極にのみ可逆Liを有する比較例4〜6の容量維持率は、82%以下であった。
この結果から、本発明を適用することで、サイクル特性を高められることが判った。
【0054】
加えて、3V系二次電池において、実施例1〜27の容量維持率は87%以上であったのに対し、比較例1〜3の容量維持率は78%以下であった。
この結果から、本発明の効果は、3V系二次電池において、顕著であることが判った。
【符号の説明】
【0055】
1 非水電解質二次電池
10 正極
20 負極
図1