【実施例】
【0040】
(条件1)
図1の装置を用いた。対向電極1、2の放電部面積は500cm
2(幅(図の奥行きに相当)500mm×長さ100mm)である。電極間の隙間は1.0mmとした。基体4には190×300mm、厚さ125μmのPETフィルム(東レ“ルミラー”T60)を用い、速度3.6m/minで電極1の上を通した。雰囲気ガスとして、アセチレン4体積%を含む窒素との混合ガスを雰囲気ガス供給配管5より供給して排気配管8より吸入した。電極1と2の間に電圧 15kV、幅3μsの矩形パルスを周波数30kHzで印加してプラズマ7を発生させてアセチレンを分解し、膜厚40nmのDLC薄膜を得た。膜厚は、エポキシ樹脂中に埋め込んで補強したサンプルを、ライカマイクロシステムズ社製ウルトラミクロトームUC−7により切断して露出させた断面を、走査式電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズS−4800)にて加速電圧を5kVとして測定した。電極の長さを送り速度で割って算出した成膜時間は約2秒であった。
分光光度計により測定した波長400nmでの光線透過率T、光線反射率R、基体の光線透過率T
F、同光線反射率R
F、DLC薄膜の厚さdより下記の近似的な式1、2により吸収係数aを求めた。
【0041】
式1において、100%の入射光から光線反射率R(%)を除いたDLC薄膜に入射した光(100%−R)は、DLC膜の厚さd、吸収係数aによる吸収と、基体による吸収A
Fの結果、光線透過率T(%)となる。厳密には光線反射率R(%)は、DLC薄膜表面、DLC薄膜と基材界面、基材裏面とで多重に反射した光を含み、DLC薄膜表面からの反射以外はDLC膜やフィルムの吸収を受けるが、ここでは光線透過率の高い領域を対象とするので、式1による近似とした。フィルムによる吸収A
Fは式2の関係から、基材単独で測定した光線透過率T
F、光線反射率R
Fの測定値より算出される。そして、成膜に要した時間とともに表1にまとめた。
【0042】
測定器 島津製作所 分光光度計 MPC−3100PC
測定条件 波長範囲 380nm〜2500nm、サンプリングピッチ 1nm、スキャン速度 中速、絶対反射モード
【0043】
【数1】
【0044】
【数2】
【0045】
(条件2、3)
条件1において、アセチレンの濃度を35体積%(条件2)、45体積%(条件3)とし、膜厚を合わせる様に送り速度を調整した以外はすべて実施例1と同じ条件とした。
波長400nmでの吸収係数はそれぞれ2.6/μmと3.4/μmとなった。成膜時間は実施例1と同様に短い。
【0046】
(条件4)
DLC薄膜を作成する方法を以下のように変更した。
マグネトロンスパッタ装置のチャンバー中に基材フィルムをセットして1.5×10
−4Paまで70分かけて真空引きした後、アルゴンガスに水素を4体積%導入したスパッタガスを流し0.3Paの圧力として、グラファイトターゲット(56mm×212mm×5mmt)を装着したカソードに直流電力200Wを印加して搬送速度0.1m/minにてDLC薄膜を成膜した。波長400nmでの吸収係数は4.3/μmと大きくなった上に、成膜時間が長く生産性を低くする条件である。
【0047】
(実施例1)
アクリル系ハードコートを有するフィルムとして東レフィルム加工(株)製“タフトップ”C0T0(100μm厚)をスパッタ装置にセットして、到達圧力8×10
−3Paまで真空引きした後、アルゴンガスを流し圧力0.5Paとした。Ag合金ターゲット(56mm×212mm×5mmt:1質量%Au含有)に直流電力210Wを印加して、搬送速度0.3m/minにて、非ハードコート面に厚さ14nmの銀系金属膜を形成した。
次に条件1の方法にて膜厚40nmのDLC薄膜を積層した。
続いて、アクリル系ハードコート剤としてJSR(株)製“オプスター”Z7535を希釈溶媒にメチルエチルケトンを用いて固形分濃度7.5質量%に希釈し、バーコーター(番手No.10)を用いて塗布し、80℃で3分乾燥した後、UV硬化(水銀ランプ使用、670mJ/cm
2)させた。ハードコート層の膜厚は0.6μmであった。
このように作成した赤外線反射積層体の分光光度計により測定した波長400nmでの光線透過率と2.5μmでの光線反射率を表1にまとめた。波長400nmでの光線透過率は59%とこの種の用途としては高い値となった。また2.5μmにおける光線反射率は80%と高い値となった。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件2によるDLC薄膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
【0049】
(実施例3)
アクリル系ハードコートを有するフィルムとして東レフィルム加工(株)製“タフトップ”C0T0(100μm厚)の非ハードコート面に、条件1の方法にて膜厚40nmのDLC薄膜を得た。次に、スパッタ装置にセットして、到達圧力8×10
−3Paまで真空引きした後、アルゴンガスを流し圧力0.5Paとした。Ag合金ターゲット(56mm×212mm×5mmt:1質量%Au含有)に直流電力210Wを印加して、搬送速度0.3m/minにて銀系金属膜を厚さ14nm形成した。
さらに条件1の方法にて膜厚40nmのDLC膜を得た。
続いて、アクリル系ハードコート剤としてJSR(株)製“オプスター”Z7535を希釈溶媒にメチルエチルケトンを用いて固形分濃度7.5質量%に希釈し、バーコーター(番手No.10)を用いて塗布し、80℃で3分乾燥した後、UV硬化(水銀ランプ使用、670mJ/cm
2)させた。ハードコート層の膜厚は0.6μmであった。
分光光度計により測定した波長400nmでの光線透過率と2.5μmでの光線反射率を表1にまとめた。波長400nmでの光線透過率は55%とこの種の用途としては高い値となった。
【0050】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件1によるDLC薄膜の2回の成膜を続けて行い、DLC薄膜を80nm形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件4によりスパッタリングでDLC薄膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
DLC薄膜の黄色みが強く、波長400nmでの光線透過率は31%と、低いものとなった。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件3によりスパッタリングでDLC薄膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
DLC薄膜の黄色みが強く、波長400nmでの光線透過率は43%と、不十分なものであった。
【0053】
(比較例3)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件1により、15m/minの基材搬送速度でDLC薄膜の成膜を行い、DLC薄膜を10nm形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
波長400nmでの光線透過率は45%と、不十分なものであった。
【0054】
(比較例4)
実施例1と同様の方法で銀系金属膜を形成した上に、条件1によるDLC薄膜の4回の成膜を続けて行い、DLC薄膜を160nm形成した以外は、実施例1と同様の方法にて赤外線反射積層体を作成した。
【0055】
【表1】