特許第5900923号(P5900923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900923
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】アレルゲン低減化機能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20160324BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20160324BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   G01N33/53 Q
   G01N33/543 545A
   G01N1/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-116433(P2012-116433)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-242254(P2013-242254A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 圭一郎
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−047778(JP,A)
【文献】 特開2011−111600(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0237396(US,A1)
【文献】 特開平09−105708(JP,A)
【文献】 実開平07−043237(JP,U)
【文献】 国際公開第2004/061444(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 1/10
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルゲン低減化剤が加工された試験基材のアレルゲン低減化性能を評価する試験方法であって、アレルゲン低減化剤が加工された試験基材の表面に既知濃度のアレルゲン水溶液を載せ、さらにアレルゲン低減化剤が加工されたもうひとつの試験基材の表面を前記のアレルゲン水溶液と合わせるように挟み込むことによってアレルゲン水溶液を試験基材表面に広げ、一定時間後にアレルゲン水溶液を回収し、水溶液中のアレルゲン量を分析することによってアレルゲン低減化性能を評価することを特徴とする、アレルゲン低減化性能の試験方法。
【請求項2】
請求項1に示す試験方法において、2枚の試験基材にアレルゲン水溶液と空隙保持具を挟み込むことを特徴とする、アレルゲン低減化性能の試験方法。
【請求項3】
アレルゲン水溶液中のアレルゲン量を分析する方法が、酵素免疫測定法であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のアレルゲン低減化性能の試験方法。
【請求項4】
試験基材が木質材料、プラスチック製品、ゴム、ガラス、石およびセラミックスから選択されるいずれかの平板状またはシート状のもの、あるいはこれらの平板状またはシート状の試験基材の表面に塗膜を形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアレルゲン低減化性能の試験方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン低減化剤の加工を行った床材や壁紙等の材料のアレルゲン低減化機能を評価する試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患は多くの人が悩まされているものであり、特に近年では増加する傾向となっている。これらのアレルギー性疾患の原因となっているのは環境中に存在する種々のアレルゲンであり、それらの中でも屋内に棲息するダニ、ペット動物のフケ、花粉、カビは代表的な吸入性のアレルゲンとして、良く知られている。特に家屋内に生息する塵性ダニであるヒョウヒダニ類はアレルゲンの発生源として大きな問題となっている。ヒョウヒダニ類は畳、絨毯、寝具、カーテン等の家屋内の繊維製品、あるいは屋外においても電車や自動車等の移動車両の座席シート生地等が生育の温床となる。
【0003】
ヒョウヒダニ類の中でも、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)とヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)は代表的な種であり、これらのダニの死骸や糞が強いアレルゲン物質となる。また春先に飛散するスギ(Cryptomeria japonica)の花粉を初め、多種の植物の花粉もアレルゲンとなるものであり、特にアレルギー性鼻炎を発症させる原因となっている。飛散する花粉は春先のスギ花粉だけでなく、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサ、カモガヤ等、多くの種類があり一年を通じて何らかの花粉が飛散している状態であり、いつの時期でも花粉によるアレルギーを引き起こす危険性があると考えられる。
【0004】
このようなダニや花粉等のアレルゲンを除去するために、種々のアレルゲン低減化剤が開発されている。タンニン酸はアレルゲン低減化機能を有することは20年以上前から知られており、さらにタンニン酸の類似化合物であるポリフェノール類が提案されている。またポリフェノール類以外にも多くのアレルゲン低減化剤が開発されている。
【0005】
これらのアレルゲン低減化剤は、スプレー剤として噴霧することによって、環境中に存在するアレルゲン物質を除去あるいは低減化させる方法が考えられるが、多くの場合、空気清浄機やエアコンのフィルター類、衣料等の繊維製品、さらには建築材料である床材等の木質材料、壁紙等の樹脂製品に加工される。
【0006】
アレルゲン低減化剤が加工された繊維製品、木質材料、壁紙等は、そのアレルゲン低減化効果を証明するために性能を評価することが必要である。その方法は、アレルゲンを含有する水溶液を、アレルゲン低減化剤を加工した試験基材に一定時間、浸漬あるいは接触させ、その後の水溶液中のアレルゲン量を測定するものである(特許文献1〜4)。
【0007】
またアレルゲン水溶液を試験基材に接触させる方法としては、試験基材の表面にアレルゲン水溶液を載せてフィルムを被せる方法が提案されているが、載せるアレルゲン水溶液の液量が制限され、また接触面積が十分でないことから正確な評価が困難な場面があった(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−212806号公報
【特許文献2】特開2010−116450号公報
【特許文献3】特開2010−235701号公報
【特許文献4】特開2008−239721号公報
【特許文献5】特開2011−47778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
表面あるいは全体にアレルゲン低減化剤を加工した床材、壁紙等のアレルゲン低減化効果を、正確に評価するための再現性が高い試験方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アレルゲン水溶液を試験基材2枚に挟みこむことによって接触させ、接触後のアレルゲン水溶液中のアレルゲン量を測定することによって、正確で高い再現性を持つアレルゲン低減化性能の評価が可能であることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、(1)アレルゲン低減化剤が加工された試験基材のアレルゲン低減化性能を評価する試験方法であって、アレルゲン低減化剤が加工された試験基材の表面に既知濃度のアレルゲン水溶液を載せ、さらにアレルゲン低減化剤が加工されたもうひとつの試験基材の表面を合わせて挟み込むことによってアレルゲン水溶液を試験基材表面に広げ、一定時間後にアレルゲン水溶液を回収し、水溶液中のアレルゲン量を分析することによるアレルゲン低減化性能の試験方法であり、(2)その試験方法において、2枚の試験基材にアレルゲン水溶液と空隙保持具を挟み込むアレルゲン低減化性能の試験方法であり、(3)アレルゲン水溶液中のアレルゲン量を分析する方法が、酵素免疫測定法であるアレルゲン低減化性能の試験方法であり、(4)アレルゲン低減化剤が加工された試験基材が、木質材料、プラスチック製品、ゴム、ガラス、石およびセラミックスから選択されるいずれかの平板状またはシート状のもの、あるいはこれらの平板状またはシート状の試験基材の表面に塗膜を形成したものであるアレルゲン低減化性能の試験方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の試験方法を用いることにより、アレルゲン低減化剤が加工された木質材料、プラスチック製品、ゴム、ガラス、石およびセラミックス等の平板状またはシート状の試験基材について、正確で高い再現性を持つアレルゲン低減化性能の評価を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
評価する試験基材は特に限定されないが、床材等に使用される木質材料、壁紙等に使用される樹脂やプラスチック製品、ゴムやプラスチック製のシート、ガラスあるいはセラミックスや石製のタイルプレート等の建築材料が挙げられ、通常は平板状である。アレルゲン低減化剤は、これらの建築材料を製造するときに練り込むことによって添加することができる。またこれらの建築材料の表面に加工するコーティング剤や塗料にアレルゲン低減化剤を添加しておき、塗布することによってこれらの建築材料の表面に加工することも可能である。
【0014】
試験基材は通常平板状であり、平板状の試験基材2枚を用いてアレルゲン水溶液を挟み込むことによって試験が行われるが、アレルゲン水溶液を挟み込むことが可能であれば一定の曲率を持つ曲面であっても差し支えない。
【0015】
試験基材の大きさに特に限定されないが、試験基材の表面積は4〜225cm、好ましくは9〜100cmが適切である。形状については特に限定されないが、通常は一辺が2〜15cmの正方形、好ましくは一辺が3〜10cmの正方形で行われる。しかし円形あるいは長方形でも差し支えなく、アレルゲン水溶液と試験基材との接触に障害がなければいびつな形状でも差し支えない。
【0016】
試験基材に挟み込むアレルゲン水溶液は、アレルゲン量の測定に必要な液量が回収可能な範囲で任意に選定することができる。この液量は試験基材の表面積に相関するものであり、表面積が広いほど液量を多くすることが可能である。アレルゲン量の測定には約100μLが必要とされることが多く、測定に十分な液量として100μL以上を試験に使用することが好ましい。試験基材が十分な面積を有し、また試験基材の表面に適度の凹凸が存在する場合は、アレルゲン水溶液を2枚の試験基材で挟みこむことで試験を行うことが可能である。アレルゲン水溶液量が試験基材の表面積に対して多く、アレルゲン水溶液がこぼれてしまう恐れがある場合には、試験基材に一定の曲率で変形あるいは一部を変形させ、皿状にすることでアレルゲン水溶液がこぼれるのを防ぐことが可能である。さらに試験基材の平面性が高くまた試験基材にある程度の重量がある場合は、アレルゲン水溶液を挟み込んだ場合にこぼれてしまう恐れがあり、これを防ぐ目的でアレルゲン水溶液を保持する空隙を確保するための、一定の厚さを有する微小な物体(空隙保持具)を使用することができる。
【0017】
この空隙保持具は2枚の試験基材の間にアレルゲン水溶液を保持するためのものであり、厚さを調節することによって、一定面積の試験基材に供するアレルゲン水溶液の量を調節することが可能であり、平面性の高い試験基材であれば薄い空隙保持具を使用することによって少量のアレルゲン水溶液を広い試験基材の表面に広げることが可能となる。空隙保持具の材質はアレルゲンの吸着やアレルゲンと反応を起こさないものであれば特に限定されないが、ステンレスやガラス製のものを使用することができる。ステンレス製の空隙保持具としては、例えば適度な太さのステンレス製針金を5mm程度の長さに切断したものを使用することができ、またガラス製の空隙保持具としてはガラス製の薄板を小さく分割したものを使用することができる。空隙保持具によって一定の空隙を得るために、試験基材ひとつに付き、空隙保持具は少なくとも3個が必要であり、通常は3〜4個を使用することができる。
【0018】
試験基材に使用されるアレルゲン低減化剤は、アレルゲン低減化作用を有するものであれば特に限定されず、汎用的に使用されているものが加工された試験基材について本発明の試験方法を適用することができる。このようなアレルゲン低減化剤としては、例えばタンニン酸、ガロタンニン、エピカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、柿渋等の天然ポリフェノール類、合成ポリフェノール類としてパラビニルフェノールの重合物、またジヒドロキシ安息香酸や2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物またはその塩、ポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン系化合物、あるいはオリーブ葉、イチョウ葉等の抽出物が挙げられる。さらに金属酸化物である酸化亜鉛、光触媒機能を有する酸化チタンや酸化タングステン類、また水溶性無機塩であるカルシウム塩やストロンチウム塩や希土類塩等の無機塩系化合物が挙げられる。これらの種々のアレルゲン低減化剤の中でも、床材や壁紙等の建築資材に加工するものとしては非水溶性のものが好ましく、非水溶性の有機系あるいは無機系のアレルゲン低減化剤を適用することができる。アレルゲン低減化剤の剤型についても特に制限はないが、通常は液状または固体状のものが使用される。液状の場合には、アレルゲン低減化剤有効成分を水あるいは溶剤に溶解したものや、溶解しない場合には分散剤と共に分散させたフロアブル剤とすることができる。固体状の場合には粉末状や顆粒状等のいずれの形状でも使用できるが、粉末状が好ましい。これらのアレルゲン低減化剤は二種類以上を併用しても差し支えない。
【0019】
本発明の試験方法について詳細に説明する。まず試験基材の表面にアレルゲン水溶液を載せる。このアレルゲン水溶液に含有されるアレルゲン量は、精製アレルゲンとして0.1〜1000ng/mL、好ましくは1〜50ng/mL、より好ましくは2〜25ng/mLである。
【0020】
アレルゲンの種類は特に限定されないが、ダニアレルゲン、スギ花粉アレルゲン、ネコアレルゲン、イヌアレルゲン、カビアレルゲン、ゴキブリアレルゲン等を使用することができる。ダニアレルゲンの場合には、通常コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニがアレルゲンの原因となることが多く、アレルゲンとしては、例えばコナヒョウヒダニの糞を由来とするDer f1、コナヒョウヒダニの虫体を由来とするDer f2がアレルゲンタンパクとして挙げられる。花粉アレルゲンの代表的なものとしてスギ花粉アレルゲンが挙げられ、スギ花粉の外層に主に存在するCry j1がアレルゲンタンパクとして挙げられる。この他、アレルゲンの原因となる花粉の由来となる植物種としてはヒノキ、ヨモギ、ブタクサ、ハルガヤ、カモガヤ等が挙げられる。ダニアレルゲンや花粉アレルゲン以外に由来となるものとしては、カビ、イヌやネコのフケ、ゴキブリやユスリカ等の昆虫類等が挙げられる。例えばこれらのアレルゲンタンパクとしては、ゴキブリ由来のBla g1、イヌのフケ由来のCan f1、ネコのフケ由来のFel d1、カビ由来のAlt a1等が挙げられる。
【0021】
次にアレルゲン水溶液と試験基材を一定時間、接触させる。接触時間に関しては任意の時間を設定することができるが、通常は5分から72時間の範囲、好ましくは30分から24時間の範囲、さらに好ましくは1時間から3時間の範囲で設定することができる。接触時間を長く設定する場合には、アレルゲン水溶液が揮発または蒸発によって減少しアレルゲン濃度が変化する恐れがあるため、接触を行っている間は試験基材を密閉容器に保管しておくことが好ましい。このような密閉容器としては、特に限定されないが、ガラス製チャンバー、ガラス製デシケーター、チャックつきポリエチレン製の袋等が挙げられる。さらに密閉容器の容積が比較的大きく、アレルゲン水溶液量が少ない場合には密閉容器においてもアレルゲン水溶液の揮発による減少が試験に影響する恐れがあるため、密閉容器内の湿度を調節して防ぐために、水を含ませた脱脂綿や水を入れた容器を同封することが好ましい。
【0022】
アレルゲン水溶液を試験基材の接触を行う温度に関しては特に限定されないが、アレルゲン水溶液の揮発を抑えることを考慮して室温付近で行うことが好ましく、通常は5〜37℃、好ましくは15〜25℃の範囲で任意に設定することができる。温度を一定に保つために恒温器内に保管することが好ましいが、温度変化のある室内に保管しても差し支えない。
【0023】
アレルゲン水溶液を試験基材の接触を行った後、アレルゲン水溶液の回収を行う。回収する方法としては、マイクロピペットを用いて回収することができ、アレルゲン水溶液の一部が試験基材に吸収されて回収が困難な場合は試験基材を圧縮してアレルゲン水溶液を搾り出すことも可能である。試験基材の圧縮を行う方法は特に限定されないが、手で絞ることが可能であり、さらに万力等の器具を使用することも可能である。
【0024】
次にアレルゲン水溶液を回収した後、アレルゲン水溶液中のアレルゲン量の測定を行う。アレルゲンの測定方法に関しては特に限定されないが、酵素免疫法(ELISA法)を用いる方法や市販されているアレルゲン測定簡易キットを使用する方法が考えられる。ELISA法は、抗原抗体反応を利用した抗原の測定方法であり、本発明においては抗原が測定するアレルゲンに相当する。
【0025】
アレルゲン測定簡易キットに関しては、いくつかの市販品が存在し、例えばマイティチェッカー(住化エンビロサイエンス株式会社製)やダニスキャン(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)等を使用することができる。
【実施例】
【0026】
本発明を実施例、試験例により更に詳しく説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。なお、下記に示す%はすべて重量%である。
【0027】
(ダニアレルゲン水溶液)
飼育したコナヒョウヒダニより抽出したアレルゲンをpH7.2のリン酸緩衝液でDer f2が約900ng/mL(総タンパク量として)となるように希釈し、以下の試験に使用した。
【0028】
(スギ花粉アレルゲン水溶液)
pH7.2のリン酸緩衝液を用いて、スギ花粉アレルゲンCry j1(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を、濃度が約12.5ng/mLとなるように希釈し、以下の試験に使用した。
【0029】
(ダニアレルゲン濃度測定方法)
酵素免疫測定法(Der f2サンドイッチELISA法)
まず、リン酸緩衝液(pH7.4、0.1重量%NaN含有)で2μg/mLに希釈したDer f2 モノクローナル抗体15E11を、F16 MAXISORP NUNC−IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり200μLずつ添加し、4℃にて3日以上感作させた。感作後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミン+リン酸緩衝液(pH7.2、0.1重量%NaN含有)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。
【0030】
次に、ダニアレルゲン測定試料液を1ウェルに100μL滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識したDer f2モノクローナル抗体を蒸留水で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミンおよび0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で1000倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で、次いで蒸留水でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(SIGMA CHEMICAL CO.製:26mg Tablet)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/L HSOを50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。既知濃度のDer f2水溶液を用いて同様に測定した検量線より測定試料のDer f2濃度を求めた。
【0031】
(スギ花粉アレルゲン濃度測定方法)
酵素免疫測定法(Cry j1サンドイッチELISA法)
まず、リン酸緩衝液(pH7.4、0.1重量%NaN含有)で2μg/mLに希釈したCry j1 モノクローナル抗体013を、F16 MAXISORP NUNC−IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて1日以上感作させた。感作後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミン+リン酸緩衝液(pH7.2、0.1重量%NaN含有)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。
【0032】
次に、スギ花粉アレルゲン測定試料液を1ウェルに100μL滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識したCry j1モノクローナル抗体053を蒸留水で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミンおよび0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で1200倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(SIGMA CHEMICAL CO.製:26mg Tablet)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/L HSOを50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。既知濃度のCry j1水溶液を用いて同様に測定した検量線より測定試料のCry j1濃度を求めた。
【0033】
(アレルゲン低減化剤加工壁紙の評価)
アレルゲン低減化剤として炭酸ジルコニウムカリウム20%水溶液(日本軽金属株式会社製)を添加したコーティング剤を表面に加工した壁紙、およびアレルゲン低減化剤未加工の壁紙について、アレルゲン低減化効果を測定した。
【0034】
実施例1
試験基材の壁紙を直径8cmの円形に切り取り、アレルゲン低減化剤を加工した面が凹となるように壁紙試料のふちの部分約5mmを折り曲げた。これにダニアレルゲン水溶液(Der f2濃度900ng/mL)1mLを広げ、上からアレルゲン低減化剤を加工した面が凸となるようにふちの部分約5mmを折り曲げた壁紙試料を、加工面を合わせるようにして挟んだ。これをアレルゲン水溶液の揮発を防ぐためにチャックつきポリ袋内に入れて、1時間、室温にて保管し、アレルゲン水溶液を、ピペットマンを用いて100μL回収し、アレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。試験は3反復で行った。
【0035】
比較例1
試験基材の壁紙を直径8cmの円形に切り取り、チャックつきポリ袋に入れ、これにダニアレルゲン水溶液(Der f2濃度900ng/mL)1mLを加えて揉みこんだ。室温で1時間経過後、アレルゲン水溶液の回収を試みたが、アレルゲン水溶液のほとんどが壁紙試料に吸収されていたため万力を用いて絞り、100μLの回収を行った。この液についてアレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。試験は3反復で行った。
【0036】
比較例2
試験基材の壁紙を直径8cmの円形に切り取り、その加工面にダニアレルゲン水溶液(Der f2濃度900ng/mL)1mLを広げ、上から直径7cmの円形のポリエチレンシートを被せた。これをチャックつきポリ袋内に1時間、室温にて保管し、アレルゲン水溶液を、ピペットマンを用いて100μL回収し、アレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。試験は3反復で行った。
【0037】
実施例1、比較例1〜2のアレルゲン濃度測定結果を表1に示す。実施例1は未加工品、加工品ともに再現性の高い測定結果が得られた。
【0038】
【表1】
【0039】
(アレルゲン低減化剤加工フロアー材の評価)
アレルゲン低減化剤として光触媒酸化チタン(石原テクノ株式会社製ST−01)を表面コーティング層に含有したフロアー床材合板、及びアレルゲン低減化剤未加工の合板についてアレルゲン低減化効果を測定した。
【0040】
実施例2
試験基材のフロアー床材を一辺の長さが8cmとなるように正方形に切断した。空隙保持具として直径0.3mmのステンレス製針金を5mmの長さに切り取ったものを4つ、フロアー床材の4隅に置き、スギ花粉アレルゲン水溶液(Cry j1濃度12.5ng/mL)1mLを広げて、上からもうひとつのフロアー床材を、加工面を合わせるようにして上から被せた。これをチャックつきポリ袋内に室温にて保管し、18時間経過後、アレルゲン水溶液を、ピペットマンを用いて100μL回収し、アレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。保管時には水を含ませた脱脂綿をポリ袋内に入れ、アレルゲン水溶液からの水分の揮発を抑えた。試験は3反復で行った。
【0041】
実施例3
試験基材のフロアー床材を一辺の長さが8cmとなるように正方形に切断した。空隙保持具として厚さ0.15mmの顕微鏡用カバーガラスの破片を4つ、フロアー床材試料の4隅に置き、スギ花粉アレルゲン水溶液(Cry j1濃度12.5ng/mL)0.6mLを広げて、上からもうひとつのフロアー床材試料を、加工面を合わせるようにして上から被せた。これをチャックつきポリ袋内に室温にて保管し、18時間経過後、アレルゲン水溶液を、ピペットマンを用いて100μL回収し、アレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。保管時には水を含ませた脱脂綿をポリ袋内に入れ、アレルゲン水溶液からの水分の揮発を抑えた。試験は3反復で行った。
【0042】
比較例3
試験基材のフロアー床材を一辺の長さが8cmとなるように正方形に切断した。その加工面にスギ花粉アレルゲン水溶液(Cry j1濃度12.5ng/mL)1mLを広げ、上から一辺7cmの正方形のポリエチレンシートを被せた。これをチャックつきポリ袋内に18時間、室温にて保管し、アレルゲン水溶液を、ピペットマンを用いて100μL回収し、アレルゲン濃度をサンドイッチELISA法にて測定した。試験は3反復で行った。
【0043】
実施例2〜3、比較例3のアレルゲン濃度測定結果を表2に示す。実施例2〜3は未加工品、加工品ともに再現性の高い測定結果が得られた。
【0044】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、表面あるいは全体にアレルゲン低減化剤を加工した床材、壁紙等のアレルゲン低減化効果を、正確で再現性の高い評価を行うことができる。