特許第5900928号(P5900928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900928少なくとも1種のポリエステルブロック及びポリ(エチレングリコール)ブロックを含むブロックコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900928
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】少なくとも1種のポリエステルブロック及びポリ(エチレングリコール)ブロックを含むブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/00 20060101AFI20160324BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20160324BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160324BHJP
   C08G 18/42 20060101ALN20160324BHJP
【FI】
   A61L31/00 P
   A61F2/82
   A61K47/34
   !C08G18/42
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-241159(P2013-241159)
(22)【出願日】2013年11月21日
(62)【分割の表示】特願2011-505243(P2011-505243)の分割
【原出願日】2009年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-57876(P2014-57876A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2013年11月22日
(31)【優先権主張番号】12/106,212
(32)【優先日】2008年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507135788
【氏名又は名称】アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】トロールサス, ミカエル, オー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴー, マイケル, ハイ
(72)【発明者】
【氏名】ホセイニー, シド, エフ. エー.
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン, デイビッド, ジェイ.
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522274(JP,A)
【文献】 特表2007−532640(JP,A)
【文献】 特表2004−505063(JP,A)
【文献】 特開平06−041310(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/055049(WO,A1)
【文献】 特表2006−512945(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/009919(WO,A1)
【文献】 特表2007−519756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00
A61F 2/82
A61K 47/34
C08G 18/42
C08G 81/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーを含むコーティングを含み、前記ブロックコポリマーは少なくとも1種のポリエステルブロック及び少なくとも1種のポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロックを含む埋込型デバイスであって、
前記PEGブロックは1,000ダルトン〜30,000ダルトンの重量平均分子量(M)を有し、
前記ブロックコポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)−PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)であり、
前記コーティングが半結晶性形態を含み、
前記ポリエステルブロック中の前記ラクチドが、少なくとも60%のモル濃度を有し、
前記ブロックコポリマーが60,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する、
埋込型デバイス。
【請求項2】
前記ポリエステルブロック中の前記グリコリドが、10%〜75%の間のモル濃度を有する、請求項1に記載の埋込型デバイス。
【請求項3】
前記ブロックコポリマー中の前記ラクチドがD,L−ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の埋込型デバイス。
【請求項4】
前記ポリエステルブロック中の前記ラクチドが、少なくとも80%のモル濃度を有する、請求項に記載の埋込型デバイス。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが100,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項6】
前記コーティングが生物活性剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項7】
前記生物活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−ベータ−エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、コルチコステロイド、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、ゾタロリムス、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン、デホロリムス、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、cRGD、フェノフィブレート、及びこれらの組合せから選択される、請求項に記載の埋込型デバイス。
【請求項8】
ステントである、請求項1〜のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項9】
生体吸収性ステントである、請求項に記載の埋込型デバイス。
【請求項10】
ブロックコポリマーを含み、前記ブロックコポリマーは少なくとも1種のポリエステルブロック及び少なくとも1種のポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロックを含む埋込型デバイスであって、
前記PEGブロックは1,000ダルトン〜30,000ダルトンの重量平均分子量(M)を有し、
前記ブロックコポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)−PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)であり、
前記ブロックコポリマーが、前記埋込型デバイスの本体構造の少なくとも1部分を形成し
前記ブロックコポリマーが半結晶性形態を含み、
前記ポリエステルブロック中の前記ラクチドが、少なくとも60%のモル濃度を有し、
前記ブロックコポリマーが60,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する、
埋込型デバイス。
【請求項11】
前記ポリエステルブロック中の前記グリコリドが、10%〜75%の間のモル濃度を有する、請求項10に記載の埋込型デバイス。
【請求項12】
前記ブロックコポリマー中の前記ラクチドがD,L−ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの組合せを含む、請求項10に記載の埋込型デバイス。
【請求項13】
前記ポリエステルブロック中の前記ラクチドが、少なくとも80%のモル濃度を有する、請求項10に記載の埋込型デバイス。
【請求項14】
前記ブロックコポリマーが、ポリアンヒドリド、ポリ(エステルアミド)、ポリチオエステル、及びこれらの組合せからなる群から選択される生分解性サイドブロックを含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項15】
前記ブロックコポリマーが100,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する、請求項10〜14のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項16】
生物活性剤をさらに含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項17】
前記生物活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−ベータ−エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、コルチコステロイド、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、ゾタロリムス、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン、デホロリムス、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、cRGD、フェノフィブレート、及びこれらの組合せから選択される、請求項16に記載の埋込型デバイス。
【請求項18】
ステントである、請求項10〜17のいずれか一項に記載の埋込型デバイス。
【請求項19】
生体吸収性ステントである、請求項18に記載の埋込型デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、埋込型デバイス用のコーティングからの薬物の放出を制御するための少なくとも1種のポリエステルブロック(複数可)及びポリ(エチレングリコール)ブロックを含むブロックコポリマーに関する。
【0002】
[発明の背景]
[0002]経皮冠動脈インターベンション(PCI)は、心臓病の一治療手技である。バルーン部分を有するカテーテルアッセンブリーを、橈骨動脈、上腕動脈又は大腿動脈を介して患者の心血管系に経皮的に導入する。カテーテルアッセンブリーを、冠動脈血管系を通してバルーン部分が閉塞性病変を通る位置まで進める。閉塞性病変を通る位置に進むと、バルーンを所定のサイズに膨らませて、病変の動脈硬化性プラークを放射状に加圧して管腔壁を再形成する。次いで、カテーテルを患者の血管系から引き抜けるように、バルーンをより小さな断面に収縮させる。
【0003】
[0003]上記手技に付随する問題には、バルーンを収縮させた後に血管(blood conduit)をつぶし、ふさぐことがある血管内膜弁又は破れた動脈内層の形成が含まれる。さらに、動脈の血栓症及び再狭窄が、上記手技後数ヵ月かけて生じることがあり、これによって別の血管形成手技又は外科的バイパス手術が必要になることがある。動脈内層の崩壊による動脈の部分的又は全体的閉塞を減少させるため、及び血栓症又は再狭窄の可能性を減少させるために、ステントを動脈に移植して動脈を開いた状態に保つ。
【0004】
[0004]薬物送達ステントは、10年を超えて介入心臓学を悩ましている、PCI後のステント内再狭窄(ISR)の発生率を減少させた(例えば、Serruys,P.W.ら、J.Am.Coll.Cardiol.39巻:393〜399頁(2002年)を参照されたい)。しかし、いくつかの難題が薬物送達ステントの技術に残っている。例えば、非晶質で形成されたコーティングからの薬物の放出は、しばしば、薬物の突発放出を有して薬物の不十分な制御放出をもたらすことがある。
【0005】
[0005]それゆえ、コーティング中の薬物の制御放出をもたらすコーティングが必要である。
【0006】
[0006]本発明の実施形態は、上記で明らかにされた要求及び問題に取り組む。
【0007】
[発明の概要]
[0007]本発明の一態様によれば、埋込型デバイスが提供される。埋込型デバイスは、少なくとも1種のポリエステルブロック及び少なくとも1種のポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロックを含むブロックコポリマーを含む。PEGブロックは、約1,000ダルトン〜約30,000ダルトンの重量平均分子量(M)を有する。ブロックコポリマーは、生体溶解性であり、生理環境に曝されると、ブロックコポリマーの80質量%が約1日〜約90日の期間に溶解する。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマー中のポリエステルブロック(複数可)は、グリコリド、ラクチド、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、又はこれらの組合せを含む。ラクチドは、光学活性又はラセミ体であってよく、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらの組合せであり得る。ポリエステルブロック(複数可)は、様々なモル濃度のこれらのモノマーのいずれかを有し得る。例えば、ポリエステルブロック(複数可)は、少なくとも60%又は少なくとも80%のポリエステルブロック(複数可)中のモル濃度を有するラクチドを有し得る。いくつかの実施形態において、ポリエステルブロック(複数可)は、約10%〜約75%の間のポリエステルブロック(複数可)中のモル濃度を有するグリコリドを有し得る。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、生分解性サイドブロックを含み得る。上記サイドブロックは、任意の生分解性ポリマーであってよく、生分解性ポリマーのいくつかの例は、ポリアンヒドリド、ポリ(エステルアミド)、ポリチオエステル、又はこれらの組合せである。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、Aがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)ブロックであり、BがPEGブロックである交互A−Bブロックコポリマーであり得る。
【0011】
[0011]ブロックコポリマーのいくつかの限定されない例は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)−ブロック−PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート−コ−グリコリド)−ブロック−PEG−ブロック−ポリ(トリメチレンカーボネート−コ−グリコリド)、ポリラクチド−ブロック−PEG−ポリアクチド、ポリ(トリメチレンカーボネート−コ−グリコリド)−ブロック−PEG−ポリ(トリメチレンカーボネート−コ−グリコリド)、及びこれらの組合せである。
【0012】
[0012]上記の実施形態のブロックコポリマーは、様々な分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、約60,000ダルトン以上又は約100,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する。
【0013】
[0013]上記の様々な実施形態のブロックコポリマーは、埋込型デバイス又は埋込型デバイスの少なくとも本体構造の1部分上にコーティングを形成し得る。いくつかの実施形態において、埋込型デバイスのコーティング又は本体構造は、生物活性剤をさらに含み得る。生物活性剤のいくつかの例は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−ベータ−エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、超酸化物不均化酵素模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、ゾタロリムス、バイオリムス A9(Biolimus A9)(Biosensors International、Singapore)、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、γ−ヒリダン(hiridun)、クロベタゾール、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、フェノフィブラート、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ(co−drug)、及びこれらの組合せであり得る。
【0014】
[0014]埋込型デバイスは、ステントなどの任意の埋込型デバイスであり得る。埋込型デバイスは、生体耐久性(biodurable)又は生体吸収性であり得る。いくつかの実施形態において、埋込型デバイスは生体吸収性ステントである。
【0015】
[0015]本発明のさらなる一態様によれば、埋込型医療デバイスの製作方法が提供される。この方法は埋込型デバイス上にコーティングを形成するステップを含み、このコーティングは上記の様々な実施形態のブロックコポリマーを含む。このコーティングは結晶、非晶質、又は半結晶形態を含み得る。いくつかの実施形態において、コーティングは、ブロックコポリマーが、少なくとも60%又は少なくとも80%のモル濃度におけるラクチドを有するポリエステルブロック(複数可)を含む半結晶形態を含む。
【0016】
[0016]本明細書で記載される埋込型デバイスは、ステントなどの埋込型デバイス上に形成することができ、この埋込型デバイスを患者に移植して、血管病態を治療、予防、緩和、若しくは軽減し、又は治癒促進効果をもたらすことができる。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態において、血管病態又は血管状態は、冠動脈疾患(CAD)及び/又は末梢血管疾患(PVD)である。このような血管内科疾患のいくつかの例は、再狭窄及び/又はアテローム性動脈硬化である。
【0018】
[0018]これらの状態のいくつかの他の例には、血栓症、出血、血管解離若しくは穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(静脈及び人工グラフトに対する)、胆管閉塞、尿道閉塞、腫瘍性閉塞、又はこれらの組合せが含まれる。
【0019】
[詳細な説明]
[0019]本発明は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロック及び少なくとも1種のポリエステルブロックを含むブロックコポリマーを提供する。ブロックコポリマーは、コーティングからの薬物の放出を制御するためのコーティングを、埋込型デバイス上に形成し得る。ポリエステルブロックは、疎水性であり、ブロックコポリマーに疎水性を付与し、PEGブロックは、親水性であり、ブロックコポリマーに親水性を付与する。ブロックコポリマーは、一般的に、約60,000ダルトン以上、より好ましくは、約100,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を有する。
【0020】
[0020]ポリエステルブロックは、ポリエステルブロックを形成し得る任意のモノマーを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリエステルブロック(複数可)は、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート(TMC)、又はこれらの組合せなどの単位を含み得る。ポリエステルブロック(複数可)用の様々なモノマーの選択によって、薬物/ポリマー相互作用パラメータを最小化して薬物放出のより良い制御をもたらすことができるように、ブロックの分子構造を設計することが可能になる。薬物/ポリマー相互作用パラメータは、薬物及びポリマーの溶解度の間の差に直接的及びプラス方向に関係する。薬物がポリマーからの制御放出を有するためには、薬物及びポリマーは混和性である必要があり、このことは、これらの相互作用パラメータがゼロに等しいことを意味する。薬物及びポリマーの混和性は、ヒルデブランド溶解パラメータによって予想することができ、それゆえ、薬物及びポリマーのヒルデブランド溶解パラメータによって、薬物/ポリマー相互作用パラメータの測定がもたらされる。例えば、PLLA及び/又はPLGAを含むポリエステルで形成されたコーティングからのエベロリムスの制御放出を得るために、ポリエステルブロック(複数可)を、カプロラクトン単位などの疎水性単位を含むよう設計することができ、PLLA又はPLGAはエベロリムスと比較してより親水性であり、ポリマーが薬物とより混和性になるためにより疎水性になるように、カプロラクトンのより疎水性の鎖を有することが望ましい。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、グリコリドを含む少なくとも1種のポリエステルブロック及びPEGブロックを含む。グリコリドはブロックコポリマーの加速された又は促進された分解をもたらす。例えば、ブロックコポリマーは、グリコリドモノマーがポリマーに促進された分解を付与し、ラクチドモノマーがブロックコポリマーに機械的強度を付与する、ラクチド及びグリコリドから誘導されるポリエステルブロック並びにPEGブロックを含み得る。より早い分解について、ポリエステルブロックは、一般的に約10%〜約75%の間のグリコリドのモル濃度を有する。
【0022】
[0022]本明細書に開示されたブロックコポリマーは、様々な吸収速度を有し得る。例えば、ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの約80質量%が、生理環境において約1日〜約90日の期間で溶解し得る吸収速度を有し得る。このようなブロックコポリマーで形成されたコーティングは、生体溶解性であることが好ましい。このような生体溶解性コーティングは、溶解メカニズムによって血流中に吸収され、これにより、コーティング中のポリマーの吸収又は分解過程において生成される、血管壁に炎症又は他の有害反応を引き起こし得る、より小さな分子の副生成物により引き起こされる副作用を緩和する。
【0023】
[0023]ポリエステルブロックがラクチドモノマーを含むブロックコポリマーにおいて、ラクチドはDL−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、又はメソ−ラクチドであり得る。このようなブロックコポリマーは、L−ラクチドモノマー濃度がポリエステルブロック(複数可)の少なくとも60%、例えば、ポリエステルブロック(複数可)の80%を上回ることがある、半結晶形態を有するコーティングを形成し得る。
【0024】
[0024]PEGブロックは、ブロックコポリマーに生体有益な性質(biobeneficial properties)も付与する。本明細書で使用される「生体有益な」という用語は、特に、付着しない(non−fouling)特性及び炎症低減を意味するものとする。このような特性には生体溶解性も含まれる。本明細書で使用される生体溶解性という用語は、溶解メカニズムによって血流中に吸収され得る特性を意味する。
【0025】
[0025]ブロックコポリマーにおいて、PEGブロックのMは、一般的に約1Kダルトン〜約30Kダルトンに及び得る。いくつかの実施形態において、PEGブロックのMは、1Kダルトン未満又は30Kダルトンを上回り得る。しかし、PEGブロックの分子量は、ブロックコポリマーが腎臓膜を通って透過できる断片に分解できるほど十分に小さい(例えば、約40,000ダルトン未満)ものとする。PEGブロックのいくつかの例示的なMは、6,000ダルトン、10,000ダルトン、20,000ダルトン、又は25,000ダルトンである。ブロックコポリマーは様々なレベルのPEGを有し得る。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたブロックコポリマーは、サイドブロックを含み得る。腎臓中のポリマーの蓄積を避けるために、サイドブロックを生分解性に設計することができる。サイドブロックのいくつかの例は、ポリアンヒドリド、ポリ(エステルアミド)、ポリアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリチオエステルである。
【0027】
[0027]ブロックコポリマーのいくつかの例は、PLGA−PEG−PLGA、P(LA−GA−CL)−PEG−P(LA−GA−CL)、P(TMC−GA)−PEG−P(TMC−GA)、PLA−PEG−PLA、P(TMC−GA)−PEG−P(TMC−GA)である。本明細書で使用される、「LA」はラクチドであり、「GA」はグリコリドであり、「LGA」はラクチド−コ−グリコリドであり、「CL」はカプロラクトンであり、TMCはトリメチレンカーボネートである。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは交互ブロックコポリマーであり得る。例えば、ブロックコポリマーは、AブロックがPLGAであり、BブロックがPEGであるA−B交互ブロックコポリマーである。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、1種又は複数の生物活性剤、例えば、薬物(複数可)を含み得るコーティングを形成し得る。上記の吸湿層を有するコーティングに含むことができる、いくつかの例示的な生物活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−ベータ−エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、超酸化物不均化酵素模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、ゾタロリムス、バイオリムス A9(Biosensors International、Singapore)、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、cRGD、フェノフィブラート、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せである。生物活性剤のいくつかの他の例には、内皮細胞遊走を阻害するsiRNA及び/又は他のオリゴヌクレオチドが含まれる。生物活性剤のいくつかのさらなる例は、リゾホスファチジン酸(LPA)又はスフィンゴシン−1−リン酸(SlP)であってもよい。LPAは多種多様な正常及び悪性細胞タイプにおいて、成長因子様作用を発生し得る「生物活性」リン脂質である。創傷治癒などの正常な生理的過程において、及び血管緊張、血管統合性、又は生殖において、LPAは重要な役割を果たす。本明細書中いくつかの実施形態において使用される、「薬物」という用語及び「生物活性剤」という用語は互換的に使用される。
【0030】
[0030]本明細書に記載されたブロックコポリマーから形成されたコーティングは、患者に移植して血管病態を治療、予防、緩和、若しくは軽減し、又は治癒促進効果をもたらすことができるステントなどの埋込型デバイス上に形成することができる。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態において、血管病態又は血管状態は、冠動脈疾患(CAD)及び/又は末梢血管疾患(PVD)である。このような血管内科疾患のいくつかの例は、再狭窄及び/又はアテローム性動脈硬化である。これらの状態のいくつかの他の例には、血栓症、出血、血管解離若しくは穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(静脈及び人工グラフトに対する)、胆管閉塞、尿道閉塞、腫瘍性閉塞、又はこれらの組合せが含まれる。
【0032】
定義
[0032]適用可能な限りは、以下に提供される本発明の説明を通して使用されるいくつかの用語に対する定義が適用されるものとする。
ポリマー及びコーティングに関して、「生分解性(biologically degradable)」(又は「生分解性(biodegradable)」)、「生体侵食性(biologically erodable)」(又は「生体侵食性(bioerodable)」)、「生体吸収性(biologically absorbable)」(又は「生体吸収性(bioabsorbable)」)、及び「生体再吸収性(biologically resorbable)」(又は「生体再吸収性(bioresorbable)」)という用語は、互換的に使用され、生理的状態に曝露された場合、時間とともに完全に又は実質的に完全に分解、溶解、及び/又は侵食され得る、身体によって徐々に再吸収、吸収及び/又は排出され得る、又は動物(例えば、ヒト)の腎臓膜を通して透過し得る断片、例えば、約40,000ダルトン(40Kダルトン)又はこれを下回る分子量を有する断片に分解され得るポリマー及びコーティングを意味する。ポリマー又はコーティングの分解及び結果としての吸収及び排出の過程は、例えば、加水分解、代謝過程、酸化、酵素過程、バルク又は表面侵食などによって引き起こされ得る。反対に、「生体安定性(biostable)」ポリマー又はコーティングは、耐久性のある生分解性ではないポリマー又はコーティングを意味する。
【0033】
[0033]「生分解性」、「生体侵食性」、「生体吸収性」及び「生体再吸収性」ステントコーティング又はこのようなステントコーティングを形成するポリマーに言及する場合はいつも、分解、侵食、吸収、及び/又は再吸収の過程が完了又は実質的に完了した後、コーティングはステント上に全く残らない、又は実質的にほとんど残らないものと理解される。「分解性」、「生分解性(biodegradable)」、又は「生分解性(biologically degradable)」という用語が、本出願において使用される場合はいつも、これらは、生分解性、生体侵食性、生体吸収性、及び生体再吸収性ポリマー又はコーティングを広く含むことを意図されている。
【0034】
[0034]「生理的状態」は、動物(例えば、ヒト)の身体内でインプラントが曝露される状態を意味する。生理的状態には、それだけには限らないが、動物のその種にとって「正常な」体温(ヒトにとって約37℃)並びに生理的イオン強度、pH及び酵素の水性環境が含まれる。ある場合には、特定の動物の体温は、動物のその種にとって「正常な」体温と考えられるものを上回り又は下回り得る。例えば、ヒトの体温は、特定の場合には約37℃を上回り又は下回り得る。本発明の範囲は、動物の生理的状態(例えば、体温)が、「正常」とは考えられない場合を包含する。
【0035】
[0035]血液と接触する埋込型デバイスに関連して、「治癒促進」薬物又は薬剤は、動脈内腔の再内皮形成を促進又は増強して血管組織の治癒を促進する性質を有する薬物又は薬剤を意味する。
【0036】
[0036]本明細書で使用される「コドラッグ」は、別の薬物と同時に又は連続的に投与して特定の薬理効果を達成する薬物である。この効果は一般的又は特異的であり得る。コドラッグは、他の薬物の効果と異なる効果を発揮することができ、又はコドラッグは、他の薬物の効果を促進、増進又は強化することができる。
【0037】
[0037]本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、薬物又は薬物の活性成分に代謝する又は生体内で加水分解されて薬物又は薬物の活性成分を形成する、化学的又は生物学的部分によって活性を減少させた薬剤を意味する。「プロドラッグ」という用語は、「前駆薬剤(proagent)」、「潜在薬(latentiated drug)」、「生体可逆性(bioreversible)誘導体」、及び「同類物(congener)」などの用語と互換的に使用し得る。N.J.Harper、Drug latentiation、Prog Drug Res.、4号:221〜294頁(1962年);E.B.Roche、Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs、Washington,DC:American Pharmaceutical Association(1977年);A.A.Sinkula and S.H.Yalkowsky、Rationale for design of biologically reversible drug derivatives:prodrugs、J.Pharm.Sci、64巻:181〜210頁(1975年)。「プロドラッグ」という用語の使用は、活性薬物分子の塩のいくらかの形態を特徴付けるためにもこの用語を使用する著者もいるが、薬物及び化学的部分の間の共有結合を一般的に表す。プロドラッグ自体の厳密な普遍的定義はなく、定義は著者によって変わり得るが、プロドラッグは一般的に、治療的、予防的又は診断的効果を発揮する、活性な又はより活性な薬物分子に生体内で酵素的に又は非酵素的に変換することができる、薬理学的により活性が少ない化学的誘導体と定義され得る。Sinkula及びYalkowsky、前出;V.J.Stellaら、Prodrugs:Do they have advantages in clinical practice?、Drugs、29巻:455〜473頁(1985年)。
【0038】
[0038]他に特に定義されない限り、「ポリマー(polymer)」及び「ポリマーの(polymeric)」という用語は、重合反応の生成物である化合物を意味する。これらの用語は、(鎖状ポリマー又は縮合ポリマーのいずれかによる)ランダム、(鎖状ポリマー又は縮合ポリマーのいずれかによる)交互、(鎖状ポリマー又は縮合ポリマーのいずれかによる)ブロック、グラフト、樹状、架橋及びこれらの任意の他の変形を含めた、ホモポリマー(すなわち、鎖状ポリマー又は縮合ポリマーのいずれかによる1種類のモノマーを重合させることによって得られるポリマー)、コポリマー(すなわち、鎖状ポリマー又は縮合ポリマーのいずれかによる2以上の異なる種類のモノマーを重合させることによって得られるポリマー)、縮合ポリマー(縮合重合から作られるポリマー)、トリ−ブロックコポリマーなどを含む。
【0039】
[0039]本明細書で使用される「埋込型の」という用語は、デバイスがそのデバイスにより示された使用に関して安全及び有効であるように、政府機関(例えば、米国FDA)の法律及び規制により規定されるデバイスの機械的、物理学的、化学的、生物学的、及び薬理学的要求に合致する、哺乳動物(例えば、ヒト又は患者)に埋め込むことができる特性を意味する。本明細書で使用される「埋込型デバイス」は、ヒト又はヒト以外の動物に埋め込むことができる任意の好適な基材であり得る。埋込型デバイスの例には、それだけには限らないが、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、冠状動脈ステント、末梢ステント、ステント−グラフト、カテーテル、種々の身体の内腔又は開口部のための他の拡張型管状デバイス、グラフト、血管グラフト、動静脈グラフト、バイパスグラフト、ペースメーカー及び除細動器、ペースメーカー及び除細動器のためのリード線及び電極、人工心臓弁、吻合クリップ、動脈閉鎖デバイス、開存卵円孔閉鎖デバイス、脳脊髄液シャント、及び粒子(例えば、薬剤溶出粒子、微小粒子及びナノ粒子)が含まれる。ステントは、神経、頸動脈、静脈グラフト、冠状動脈、大動脈、腎臓、腸骨、大腿部、膝窩血管系、及び尿道通路を含む身体における任意の脈管を対象としていてよい。埋込型デバイスは治療薬の局所的送達用に設計し得る。薬物適用(medicated)埋込型デバイスは、1つには、例えば、治療薬を含むコーティング材料で、このデバイスをコーティングすることによって構成することができる。このデバイスの本体も治療薬を含むことができる。
【0040】
[0040]埋込型デバイスは、生分解性/生体吸収性/生体侵食性ポリマー、生体安定性ポリマー、又はこれらの組合せを部分的又は完全に含むコーティングを用いて製作することができる。埋込型デバイス自体を、生分解性/生体吸収性/生体侵食性ポリマー、生体安定性ポリマー、又はこれらの組合せから部分的又は完全に製作することもできる。
【0041】
[0041]本明細書で使用される、指示された基材(例えば、埋込型デバイス)「に配置された(disposed over)」層又はフィルム(例えば、コーティング)として記載される材料は、例えば、基材の表面の少なくとも1部分に直接又は間接的に堆積された材料のコーティングを意味する。直接堆積は、コーティングが基材の露出した表面に直接適用されることを意味する。間接堆積は、コーティングが基材に直接又は間接的に堆積された介在層に適用されることを意味する。いくつかの実施形態において、「層」又は「フィルム」という用語は、非埋込型デバイス上に形成されたフィルム又は層を排除する。
【0042】
[0042]ステントに関連して、「送達」は、処置を必要とする血管中の病変などの領域に、身体の内腔を通してステントを導入及び輸送することを意味する。「展開」は処置領域における内腔中のステントの膨張に相当する。ステントの送達及び展開は、カテーテルの1端部の回りにステントの位置を合わせ、身体の内腔中に皮膚を通してカテーテルのこの端を挿入し、所望の処置位置まで身体の内腔中のカテーテルを前進させ、処置位置においてこのステントを拡張させ、内腔からカテーテルを取り出すことによって達成される。
【0043】
[0043]本明細書で使用される「結晶性の」という用語は、トリ−ブロックコポリマーにおいて5%を上回る結晶度を有することを意味する。いくつかの実施形態において、「結晶性の」という用語は、トリ−ブロックコポリマーにおいて約10%を上回る、約20%を上回る、約30%を上回る、約40%を上回る、約50%を上回る、又は約60%を上回る結晶度を有することを意味し得る。
【0044】
[0044]「半結晶性形態」という用語は、ポリマー中に結晶性のドメイン(複数可)/領域(複数可)及び非晶質のドメイン(複数可)/領域(複数可)を有することを意味する。
【0045】
[0045]これらの3種のモノマーの異なる含有量を有するトリ−ブロックコポリマーは、トリ−ブロックコポリマー中のモノマーの特定の組成に応じて、例えば、分解速度、機械的性質、薬物透過性、透水性、及び薬物放出速度に関する異なる性質を有する。
【0046】
[0046]いくつかの実施形態において、トリ−ブロックコポリマーは約60℃未満のTを有し得る。このトリ−ブロックコポリマーは、約10重量%〜約80重量%のD−ラクチド、L−ラクチド、又はD,L−ラクチドから誘導される単位を有し得る。ポリマー中に高濃度で存在する場合、D−ラクチド、L−ラクチド、グリコリド、及びジオキサノンなどのモノマーは結晶化し得る。しかし、ポリマー中の各々の濃度が80重量%未満である場合、これらのモノマーのいずれかからの単位の結晶化を最小化又は防止することができる。したがって、本明細書に記載されるトリ−ブロックコポリマーの組成は、約10〜80重量%のD−ラクチド又はL−ラクチドの単位、約5〜80重量%のグリコリドの単位及び約5〜60重量%の第3の低Tモノマーからの単位を含むものとする。トリ−ブロックコポリマーは、約10Kダルトン以上、好ましくは約20Kダルトン〜約600Kダルトンの重量平均分子量(M)を有し得る。
【0047】
[0047]ラクチド、グリコリド及び低Tモノマーからの単位の比率は変化して、異なる性質、例えば、異なる分解速度、トリ−ブロックコポリマーから形成されるコーティングからの薬物の異なる放出速度、異なる薬物透過性、異なる可撓性又は機械的性質を有するトリ−ブロックコポリマーを形成し得る。上述のとおり、一般的に、グリコリドは、トリ−ブロックコポリマーの加速された又は高められた分解をもたらし、ラクチドモノマーは、トリ−ブロックコポリマーに機械的強度をもたらし、第3の低Tモノマーは、薬物透過性、透水性、ポリマーの分解速度を高め、より大きな可撓性及び伸びを与え、トリ−ブロックコポリマーから形成されるコーティングの機械的性質を改善することができる。
【0048】
[0048]いくつかの実施形態において、種々のモノマーの比率は、トリ−ブロックコポリマーの鎖に沿って変化し得る。このようなトリ−ブロックコポリマーにおいて、例えば、ポリマーの鎖の1点は1種のモノマーの重みが大きいことがあるが、一方、この鎖の別の点は同じモノマーの重みが小さいことがある。単官能開始剤が使用され、選択されたモノマーが極めて異なる反応性比を有する場合、重合中にモノマーが消費されるにつれて組成の勾配が生じる。別の方法において、このようなトリ−ブロックコポリマーは、重合中に第1又は第2のモノマーが、第1のモノマーの全て又は1部分を収容している反応器に段々に添加される、いわゆる勾配重合によって調製することができる。(Matyjaszewski K.及びDavis T.P.編 Handbook of Radical polymerization、John Wiley & Sons、2002年、789頁)。さらに第3の方法は、トリ−ブロックコポリマーの鎖にモノマーの種々の比率のブロックを導入することによるものである。
【0049】
[0049]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたブロックコポリマーは、以下に記載される生分解性又は生体耐久性ポリマーの他のブロックと組み合わせて1種又は複数のブロックを作るために使用することができる。
【0050】
[0050]本明細書に記載されたブロックコポリマーの調製は、ポリマー合成の確立された方法によって容易に達成することができる。例えば、PLGA−PEG−PLGAは、触媒としてのオクチル酸錫の存在下でD,L−ラクチド及びグリコリドの開環重合用に開始剤としてPEGを使用することによって合成することができる。
【0051】
生物活性剤
[0051]いくつかの実施形態において、本明細書に記載された埋込型デバイスは、少なくとも1種の生物活性(biologically active)(「生物活性(bioactive)」)剤を場合によって含むことができる。少なくとも1種の生物活性剤は、患者のために治療、予防又は診断効果を発揮し得る任意の物質を含むことができる。
【0052】
[0052]好適な生物活性剤の例には、それだけには限らないが、治療、予防又は診断活性を有する、合成無機及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖及び他の糖、脂質、並びにDNA及びRNA核酸配列が含まれる。核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。他の生物活性剤のいくつかの他の例には、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害剤又はストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子などの血栓溶解剤、免疫用抗原、ホルモン及び成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムなどのオリゴヌクレオチド並びに遺伝子療法における使用のためのレトロウイルスベクターが含まれる。生物活性剤は、例えば、血管平滑筋細胞の活性を阻害するよう設計することができる。再狭窄を阻害するために平滑筋細胞の異常又は不適切な遊走及び/又は増殖の阻害に、これらを向けることができる。
【0053】
[0053]本明細書に記載された1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた特定の実施形態において、上記埋込型デバイスは、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗菌性、抗アレルギー性及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種の生物活性剤を含むことができる。
【0054】
[0054]抗増殖性剤は、細胞毒素などの天然タンパク質性薬剤又は合成分子であり得る。抗増殖性物質の例には、それだけには限らないが、アクチノマイシンD又はこの誘導体及び類似体(Sigma−Aldrich製、又はMerckより市販のコスメゲン(COSMEGEN))(アクチノマイシンDの別名にはダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが含まれる);タキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル及びこれらの誘導体などの全てのタキソイド;マクロライド抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造誘導体及び機能類似体、エベロリムスの構造誘導体及び機能類似体、FKBP−12媒介mTOR阻害剤、バイオリムス、ペルフェニドン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグなどの全てのオリムス薬(olimus drug)、並びにこれらの組合せが含まれる。ラパマイシン誘導体の例には、それだけには限らないが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(Novartis製の商品名エベロリムス(everolimus))、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(Abbott Labs製のゾタロリムス)、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せが含まれる。
【0055】
[0055]抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はこれらの組合せであり得る。抗炎症薬の例には、それだけには限らないが、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾール、クロベタゾールプロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラック、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフロラソンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニザール、ジフルプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニソロンスルエプタネート、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリスルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロケアゾン、プロキザゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリト、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せが含まれる。
【0056】
[0056]別法として、抗炎症剤は、炎症誘発性シグナル伝達分子の生物学的阻害剤であり得る。抗炎症生物剤は、このような生物学的炎症性シグナル伝達分子に対する抗体を含む。
【0057】
[0057]さらに、生物活性剤は、抗増殖剤又は抗炎症剤以外であり得る。生物活性剤は、治療、予防又は診断剤である任意の薬剤であり得る。いくつかの実施形態において、このような薬剤は、抗増殖剤又は抗炎症剤と組み合わせて使用することができる。これらの生物活性剤は、抗増殖性及び/又は抗炎症性の性質も有することができ、又は抗腫瘍性、抗有糸分裂性、細胞分裂抑制性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗菌性、抗アレルギー性、及び/又は抗酸化性などの他の性質を有することができる。
【0058】
[0058]抗腫瘍剤及び/又は抗有糸分裂剤の例には、それだけには限らないが、パクリタキセル(例えば、Bristol−Myers Squibbから市販のタキソール(TAXOL)(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis製タキソテール(Taxotere)(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pfizer製アドリアマイシン(Adriamycin)(登録商標))、及びマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb製ムタマイシン(Mutamycin)(登録商標))が含まれる。
【0059】
[0059]細胞増殖抑制性又は抗増殖性の性質も有し得る、抗血小板剤、抗凝血剤、抗フィブリン剤、及び抗トロンビン剤の例には、それだけには限らないが、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタシクリン及びプロスタシクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換え型ヒルジン、アンジオマックス(ANGIOMAX)(Biogen製)などのトロンビン抑制剤、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルチシン、繊維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(例えば、オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素を阻害するコレステロール降下薬、Merck製商標名メバコール(Mevacor)(登録商標))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、超酸化物不均化酵素模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、種々のビタミンなどの栄養補助食品、及びこれらの組合せが含まれる。
【0060】
[0060]細胞増殖抑制物質の例には、それだけには限らないが、アンジオペプチン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb製カポテン(Capoten)(登録商標)及びカポザイド(Capozide)(登録商標))、シラザプリル及びリシノプリル(例えば、Merck製プリニビル(Prinivil)(登録商標)及びプリンザイド(Prinzide)(登録商標))が含まれる。
【0061】
[0061]抗アレルギー剤の例には、それだけには限らないが、ペルミロラストカリウムが含まれる。抗酸化物質の例には、それだけには限らないが、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)が含まれる。他の生物活性剤には、抗ウイルス剤などの抗感染薬、鎮痛剤及び鎮痛複合剤、食欲減退薬、駆虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙れん薬、抗うつ薬、抗利尿薬、止瀉薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬製剤、制嘔吐剤、パーキンソン病治療薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作動薬、交感神経刺激薬、キサンチン誘導体、カルシウムチャネル遮断薬を含む心臓血管製剤及びピンドロールなどのベータ遮断薬及び不整脈治療剤、抗高血圧薬、利尿薬、全身冠拡張薬を含む血管拡張剤、末梢及び脳血管拡張剤、中枢神経系興奮薬、充血除去剤を含む咳及び風邪薬製剤、睡眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、精神刺激薬、鎮静剤、精神安定剤、天然由来又は遺伝子組換えリポタンパク質、及び再狭窄低減剤が含まれる。
【0062】
[0062]使用し得る他の生物活性剤には、アルファ−インターフェロン、遺伝子組換え上皮細胞、タクロリムス及びデキサメタゾンが含まれる。
【0063】
[0063]血液と接触する埋込型デバイスとの関連で、「治癒促進」薬又は薬剤は、動脈内腔の再内皮化を促進又は増進して血管組織の治癒を促進するという性質を有する薬物又は薬剤を意味する。治癒促進薬又は薬剤を含む埋込型デバイス(例えば、ステント)の部分(複数可)は、内皮細胞(例えば、内皮前駆細胞)を引きつけ、結合し、最終的にこれによって封じ込められ得る。細胞の引きつけ、結合及び封じ込めは、ステントが不十分に封じ込められた場合に生じ得る機械的性質の損失による、塞栓又は血栓の形成を減少又は防止する。増進された再内皮化は、ステントの機械的性質の損失より早い速度で内皮化を促進し得る。
【0064】
[0064]治癒促進薬又は薬剤は、生体吸収性ポリマー基材又は足場材料の本体中に分散させることができる。治癒促進薬又は薬剤は、埋込型デバイス(例えば、ステント)の表面上の生体吸収性ポリマーコーティング中に分散させることもできる。
【0065】
[0065]「内皮前駆細胞」は、血流に入り血管損傷の領域に行き損傷を修復する助けとなり得る、骨髄中で作られる原始細胞を意味する。内皮前駆細胞は成人の末梢血中を循環し、サイトカイン、成長因子、及び虚血状態によって骨髄から動員される。血管損傷は血管形成及び脈管形成メカニズムの両方によって修復される。内皮前駆細胞を循環させることは、脈管形成メカニズムによる損傷血管の修復に主に寄与する。
【0066】
[0066]いくつかの実施形態において、治癒促進薬又は薬剤は、内皮細胞(EDC)結合剤であり得る。特定の実施形態において、EDC結合剤は、例えば、コラーゲン1型、単鎖Fv断片(scFv A5)として知られる23ペプチド断片、接合膜タンパク質血管内皮(VE)カドヘリン、及びこれらの組合せのうちの1つであり得る、タンパク質、ペプチド又は抗体であり得る。コラーゲン1型は、オステオポンチンに結合している場合、内皮細胞の接着を促進し、アポプトーシス経路の下方調節によってこれらの生存力を調節することが示されている。S.M.Martinら、J.Biomed.Mater.Res.、70A巻:10〜19頁(2004年)。scFv A5を用いて、内皮細胞を、(免疫リポゾームの標的化送達用に)選択的に標的化することができる。T.Volkelら、Biochimica et Biophysica Acta、1663巻:158〜166頁(2004年)。接合膜タンパク質血管内皮(VE)カドヘリンは、内皮細胞に結合し、内皮細胞のアポプトーシスを下方調節することが示されている。R.Spagnuoloら、Blood、103巻:3005〜3012頁(2004年)。
【0067】
[0067]特定の実施形態において、EDC結合剤は、オステオポンチンの活性断片、(Asp−Val−Asp−Val−Pro−Asp−Gly−Asp−Ser−Leu−Ala−Tyr−Gly)であり得る。他のEDC結合剤には、それだけには限らないが、EPC(上皮細胞)抗体、RGDペプチド配列、RGD模倣薬、及びこれらの組合せが含まれる。
【0068】
[0068]さらなる実施形態において、治癒促進薬又は薬剤は、内皮前駆細胞を引きつけ結合する物質又は薬剤であり得る。内皮前駆細胞を引きつけ結合する典型的な物質又は薬剤には、CD−34、CD−133及びvegf 2型受容体などの抗体が含まれる。内皮前駆細胞を引きつけ結合する薬剤には、一酸化窒素供与体基を有するポリマーが含まれ得る。
【0069】
[0069]前述の生物活性剤は、例として挙げられており、制限することを意図されていない。現在利用可能である又は将来開発され得る他の生物活性剤は等しく適用可能である。
【0070】
[0070]本明細書に記載された1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、より特定の一実施形態において、本発明の埋込型デバイスは、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、超酸化物不均化酵素模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、バイオリムス A9(Biosensors International、Singapore)、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕獲抗体、治癒促進薬、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の生物活性剤を含む。特定の一実施形態において、生物活性剤はエベロリムスである。別の特定の実施形態において、生物活性剤はクロベタゾールである。
【0071】
[0071]薬物の別のクラスは、増加した脂質輸送のためのp−パラ−α−アゴニストであろう。例にはフェノフィブレートが含まれる。
【0072】
[0072]本明細書に記載された1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、いくつかの実施形態において、少なくとも1種の生物活性剤は、特に、本明細書に記載された生物活性薬又は薬剤のいずれかの1種又は複数であり得ない。
【0073】
コーティング構成
[0073]本明細書に記載された1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、本発明のいくつかの実施形態によれば、埋込型デバイス(例えば、ステント)上に配置されたコーティングは、コーティングの任意の設計による層中に、本明細書に記載されたブロックコポリマーを含むことができる。コーティングは、以下に記載される層(2)である少なくとも1つの貯蔵層を含み、以下の(1)、(3)、(4)及び(5)層又はこれらの組合せのうちのいずれかを含むことができる多層構造であり得る。
(1)プライマー層、(場合による)
(2)少なくとも1種のポリマーを含む薬物−ポリマー層(薬物−ポリマー層)又は、代わりにポリマーを含まない薬物層であり得る貯蔵層(「マトリックス層」又は「薬物マトリックス」とも呼ばれる)、
(3)放出制御層(「律速層」とも呼ばれる)(場合による)、
(4)トップコート層、及び/又は(場合による)、
(5)仕上げコート層、(場合による)。
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングは、2つ以上の上記の貯蔵層を含むことができ、この貯蔵層の各々は、本明細書に記載された生物活性剤を含むことができる。
【0074】
[0074]ステントコーティングの各層は、非晶質ポリマーを、場合によって1種又は複数の他のポリマーとともに、溶媒、又は溶媒の混合物中に溶解し、得られるコーティング溶液を、噴霧又は溶液中にステントを浸漬することによってステント上に配置することによって、埋込型デバイス(例えば、ステント)上に配置することができる。溶液をステント上に配置した後、溶媒を蒸発させることによって、コーティングを乾燥させる。乾燥を高温で行えば、乾燥の過程を促進することができる。完成したステントコーティングは、必要に応じて、約40℃〜約150℃の間、例えば、80℃の温度で、約5分〜約60分の間、場合によってアニールしてポリマーコーティングを結晶化させ、及び/又はコーティングの熱力学的安定性を改善することができる。
【0075】
[0075]貯蔵層中に生物活性剤(例えば、薬物)を組み込むために、上記の埋込型デバイス上に配置されるポリマー溶液と薬物を混合することができる。別法として、必要に応じて、ポリマーを含まない貯蔵を作ることができる。ポリマーを含まない貯蔵を作るために、好適な溶媒又は溶媒の混合物中に薬物を溶解することができ、得られる薬物溶液を、噴霧又は薬物含有溶液中にステントを浸漬することによって埋込型デバイス(例えば、ステント)上に配置することができる。
【0076】
[0076]溶液によって薬物を導入する代わりに、好適な溶媒相中の懸濁液などのコロイド系として薬物を導入することができる。懸濁液を作るために、コロイド化学において使用される従来の技術を用いて、薬物を溶媒相中に分散させることができる。様々な要因、例えば、薬物の性質に応じて、当業者は、懸濁液の溶媒相を形成する溶媒、及び溶媒相中に分散させるべき薬物の量を選択することができる。場合によって、界面活性剤を添加して懸濁液を安定化することができる。懸濁液をポリマー溶液と混合することができ、この混合物を上記のステント上に配置することができる。別法として、薬物懸濁液を、ポリマー溶液と混合しないでステント上に配置することができる。
【0077】
[0077]薬物−ポリマー層は、貯蔵層中に組み込まれる少なくとも1種の生物活性剤(例えば、薬物)のための貯蔵として役立てるために、ステント表面の少なくとも1部分上に直接又は間接的に塗布することができる。任意のプライマー層は、ステント及び貯蔵の間に塗布して、薬物−ポリマー層のステントとの接着を改善することができる。任意のトップコート層は、貯蔵層の少なくとも1部分上に塗布して、薬物の放出の速度を制御する助けとなる律速膜として役立てることができる。一実施形態において、トップコート層は、いかなる生物活性剤又は薬物も本質的に含まなくてよい。トップコート層を使用する場合、任意の仕上げコート層は、薬物放出速度のさらなる制御のため及びコーティングの生体適合性の改善のために、トップコート層の少なくとも1部分上に塗布することができる。トップコート層を用いずに、仕上げコート層を貯蔵層上に直接堆積することができる。
【0078】
[0078]コートされた医療デバイスの殺菌は、一般的に微小病原体(micropathogen)の不活性化のための過程を含む。このような過程は当技術分野でよく知られている。いくつかの例は、電子線(e−beam)、ETO殺菌、及び照射殺菌である。これらの過程の全てではなくとも大部分は高温を必要とすることがある。例えば、コートされたステントのETO殺菌は、一般的に、最高100%に達する湿度レベルで、数時間〜24時間までの期間、50℃を超えて加熱することを必要とする。一般的なEtOサイクルは、最初の3〜4時間以内に50℃を超える高さに達し、次いで17〜18時間、40℃〜50℃の間で変動する、密閉チャンバーにおける温度を有し、一方、湿度は100%のピークに達し、サイクルの変動時間中80%超を維持するものであろう。
【0079】
[0079]トップコート及び仕上げコート層の両方を有するコーティングからの薬物の放出の過程は、少なくとも3つのステップを必要とする。最初に、薬物−ポリマー層/トップコート層の界面におけるトップコート層のポリマーによって、薬物が吸収される。次に、トップコート層ポリマーの巨大分子の間の空隙容積を、移動のための経路として用いて、薬物がトップコート層を通して拡散する。次に、薬物がトップコート層/仕上げ層界面に到達する。最後に、薬物が仕上げコート層を通して同様に拡散し、仕上げコート層の外面に到達し、外面から脱着される。この時点で、薬物が血管又は周辺組織中に放出される。したがって、使用される場合、トップコート及び仕上げコート層の組合せは、律速バリアとして役立ち得る。コーティングを形成している層(複数可)の分解、溶解、及び/若しくは侵食によって、又は非晶質ポリマー層(複数可)を通した薬物の移動によって、薬物は血管又は組織中に放出され得る。
【0080】
[0080]一実施形態において、ステントコーティングの層のいずれか又は全てを、本明細書に記載されたブロックコポリマーで作ることができる。別の実施形態において、コーティングの最も外側の層は、上記定義のブロックコポリマーに限定することができる。
【0081】
[0081]より詳細に説明するために、上記の全ての4つの層(すなわち、プライマー、貯蔵層、トップコート層及び仕上げコート層)を有するステントコーティングにおいて、最も外側の層は、記載されたブロックコポリマーで作ることができる仕上げコート層である。残りの層(すなわち、プライマー、貯蔵層及びトップコート層)は、場合によって、生分解性、若しくは生体安定性である性質、又は本明細書に記載されたブロックコポリマーと混合される性質を有する。特定の層におけるポリマー(複数可)は、別の生体吸収性の外側の層も、好ましくは生体吸収性であり、内層に比べて同等又はより早く分解する限り、他の層のいずれかにおけるものと同一でも異なってもよい。別の例として、コーティングは、本明細書に記載のポリマー及び薬物を含む単一マトリックス層を含み得る。
【0082】
[0082]仕上げコート層を使用しない場合、トップコート層は最も外側の層であってよく、記載されたブロックコポリマーで作られるべきである。この場合、残りの層(すなわち、プライマー及び貯蔵層)も、本明細書に記載のブロックコポリマーで場合によって作られてよい。特定の層におけるポリマー(複数可)は、別の生体吸収性の外側も、好ましくは、生体吸収性であり、内層と比べて同等又はより早く分解する限り、他の層のいずれかにおけるものと同一でも異なっていてもよい。
【0083】
[0083]仕上げコート層もトップコート層も使用しない場合、ステントコーティングは、プライマー及び貯蔵層の2層だけを有することがある。このような場合、貯蔵はステントコーティングの最も外側の層であり、記載されたブロックコポリマーで作られるべきである。プライマーも、本明細書に記載のブロックコポリマー及び場合によって1種又は複数の生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、並びにこれらの組合せで場合によって作られ得る。別の生体吸収性の外側の層も、好ましくは生体吸収性であり、内層に比べて同等又はより早く分解する限り、上記2層は、同一のポリマーから作られても、異なるポリマーから作られてもよい。
【0084】
[0084]コーティングの任意の層は、別の生体吸収性及び/又は生体適合性ポリマーと場合によって混合されている、任意の量の、本明細書に記載されたブロックコポリマーを含み得る。生体吸収性ポリマー及び生体適合性ポリマーの限定されない例には、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、セロハン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びこれらの誘導体(例えば、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロース)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(L−乳酸−コ−カプロラクトン)(PLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−グリコール酸(PDLA−GA)、ポリ(L−乳酸−グリコール酸(PLLA−GA)、ポリ(DL−乳酸−グリコール酸(PDLLA−GA)、ポリ(D−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PDLA−GA−CL)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PLLA−GA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PDLLA−GA−CL)、ポリ(L−乳酸−コ−カプロラクトン)(PLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLLA−CL)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(PGA−CL)、又はこれらの任意のコポリマーが含まれる。
【0085】
[0085]コーティングの任意の層は、任意の量の非分解性ポリマー、又は2種以上のこのようなもののブレンドも含み得る。非分解性ポリマーを使用する場合、非分解性ポリマーは、約40Kダルトン以下の分子量(M)を有するものとする。一般的に多くはないポリマーが、非常に十分に弾性がある。これらがそうではない場合、より高いMwはコーティングに靭性をもたらし、理想的には薬物溶出ステントにおいて、100kDを上回るポリマーが好ましい。同様に、これらは分解性又は溶解性ではないので、腎臓を通過することは問題ではないはずである。非分解性ポリマーの限定されない例には、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシルエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール(PEG)アクリレート)、ポリ(PEGメタクリレート)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含むメタクリレートポリマー、PC1036、及びポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレートを含むメタクリレートポリマー、及びこれらのコポリマーが含まれる。
【0086】
埋込型デバイスの製作方法
[0086]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、本発明の他の実施形態は、埋込型デバイスの製作方法に関する。一実施形態において、上記方法は、場合によって1種又は複数の他の生分解性又は生体安定性ポリマー又はコポリマーとともに、本明細書に記載のブロックコポリマーを含む材料で埋込型デバイスを形成することを含む。
【0087】
[0087]上記方法に従って、埋込型デバイスの1部分又は全体のデバイス自体を、生分解又は生体安定性ポリマー又はコポリマーを含む材料で形成することができる。上記方法は埋込型デバイス上に一定範囲の厚さを有するコーティングを堆積することができる。特定の実施形態において、上記方法は、埋込型デバイスの少なくとも1部分上に、≦約30ミクロン、又は≦約20ミクロン、又は≦約10ミクロン、又は≦約5ミクロンの厚さを有するコーティングを堆積する。
【0088】
[0088]特定の実施形態において、上記方法を用いて、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード線及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、弁、及び粒子から選択される埋込型デバイスを製作する。特定の実施形態において、上記方法を用いてステントを製作する。
【0089】
[0089]いくつかの実施形態において、ポリマーから形成される埋込型デバイスを形成するために、本明細書に記載の少なくとも1種の生物活性剤を場合によって含むポリマー又はコポリマーを、丸めて又は接着してチューブなどの構成を形成することができるチューブ又はシートなどのポリマー構成に形成することができる。次いで、埋込型デバイスを上記構成から製作することができる。例えば、チューブにパターンをレーザー加工することによって、ステントをチューブから製作することができる。別の実施形態において、射出成形装置を用いて、ポリマー構成を本発明のポリマー材料から形成することができる。
【0090】
[0090]上記定義のブロックコポリマーであってもなくてもよい、埋込型デバイスを製作するために使用し得るポリマーの限定されない例には、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(L−乳酸−コ−カプロラクトン)(PLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−グリコール酸(PDLA−GA)、ポリ(L−乳酸−グリコール酸(PLLA−GA)、ポリ(DL−乳酸−グリコール酸(PDLLA−GA)、ポリ(D−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PDLA−GA−CL)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PLLA−GA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)(PDLLA−GA−CL)、ポリ(L−乳酸−コ−カプロラクトン)(PLLA−CL)、ポリ(D−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLA−CL)、ポリ(DL−乳酸−コ−カプロラクトン)(PDLLA−CL)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(PGA−CL)、ポリ(チオエステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエチレンアミド、ポリエチレンアクリレート、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマー及びコポリマー、ビニルハリドポリマー及びコポリマー(例えば、ポリビニルクロリド)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリビニリデンハリド(例えば、ポリビニリデンクロリド)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、Nylon66及びポリカプロラクタム)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース及びセルロースの誘導体(例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロース)、並びにこれらのコポリマーが含まれる。
【0091】
[0091]埋込型デバイスの製作に好適であり得るポリマーのさらなる典型的な例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOH又は商品名エバール(EVAL)で一般に知られている)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(例えば、New Jersey、ThorofareのSolvay Solexis PVDFから市販されているSOLEF 21508)、ポリビニリデンフルオリド(Pennsylvania、PhiladelphiaのATOFINA Chemicalsから市販されているカイナー(KYNAR)として別に知られている)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン−コ−ビニリデンフルオリド)、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0092】
障害の治療又は予防法
[0092]本発明による埋込型デバイスを用いて、種々の状態又は障害を治療、予防又は診断することができる。このような状態又は障害の例には、それだけには限らないが、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、血管及び人工グラフトの吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞、尿道閉塞及び腫瘍性閉塞が含まれる。埋込型デバイスの1部分又は全体のデバイス自体を、本明細書に記載の材料で形成することができる。例えば、上記材料はデバイスの少なくとも1部分上に配置されたコーティングであり得る。
【0093】
[0093]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、特定の実施形態において、本発明の方法は、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、血管及び人工グラフトの吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞、尿道閉塞及び腫瘍性閉塞から選択される状態又は障害を治療、予防又は診断する。特定の一実施形態において、状態又は障害は、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄又は不安定プラークである。
【0094】
[0094]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、上記方法の一実施形態において、埋込型デバイスは、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、超酸化物不均化酵素、超酸化物不均化酵素模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、バイオリムス A9(Biosensors International、Singapore)、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕獲抗体、治癒促進薬、フェノフィブレート、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の生物活性剤を含む材料で形成され又はこれを含むコーティングを含む。
【0095】
[0095]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と場合によって組み合わせた、特定の実施形態において、上記方法に用いられる埋込型デバイスは、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード線及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、弁、及び粒子から選択される。特定の実施形態において、埋込型デバイスはステントである。
【0096】
[0096]本発明の特定の実施形態が示され説明されてきたが、変更及び修正が本発明から逸脱することなく、そのより広い態様においてなされ得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲に含まれるあらゆるこのような変更及び修正を、これらの範囲内に包含するものである。