(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と 前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の 製造方法において、
前記キャピラリーチューブと前記サクションパイプの素材がともにアルミニウム材であり、
前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面を圧接させた状態で、レーザービームを前記圧接させたそれぞれの外表面に照射し、それぞれの外表面を溶融させて接合したことを特徴とする冷凍サイクルの熱交換器の製造方法。
圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、
1)アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で押さえ治具により前記サクションパイプの側面を前記キャピラリーチューブに向けて押圧するとともに前記キャピラリーチューブの側面を前記サクションパイプに向けて押圧し、前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態とし、
2)前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態で、レーザービームに対して相対的に移動させながら、前記レーザービームを前記圧接させたそれぞれの外表面に照射し、
3)前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を溶融させて接合する、
ことを特徴とする冷凍サイクルの熱交換器の製造方法。
前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態でレーザービームに対して相対的に移動させながら、前記レーザービームを前記相対的な移動方向の上流側または下流側に傾けて照射することを特徴とする請求項2または請求項3記載の冷凍サイクルの熱交換器の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫は圧縮機から吐出された冷媒が、順次、凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプを通り、再び圧縮機に戻る冷凍サイクルを構成する。
【0003】
圧縮機で圧縮された冷媒は、高温高圧ガスとなって凝縮器に送られ、ここで放熱して液化される。液化された冷媒は、キャピラリーチューブを通って蒸発器に送られる。キャピラリーチューブから蒸発器に送られる液化された冷媒は、蒸発器にて気化されることにより周囲の熱を奪い取り冷気を生み出す。気化された冷媒は、サクションパイプを通って圧縮機に戻り再び圧縮される。
【0004】
このような冷凍サイクルにおいては、キャピラリーチューブを通る冷媒は比較的高温である。冷却性能を向上させるためには、キャピラリーチューブから蒸発器に流入する冷媒の温度を低くすることが有効である。このために、比較的低温の冷媒が流れるサクションパイプをキャピラリーチューブと接触させる方法が知られている。すなわち、サクションパイプの冷媒とキャピラリーチューブの冷媒の間で熱交換させることで、キャピラリーチューブを流れる冷媒の温度を低下させるのである。このような冷凍サイクルの熱交換器としてのキャピラリーチューブとサクションパイプの接合方法としては、キャピラリーチューブとサクションパイプを並列に添わせた状態でハンダ付けするという方法がよく採用されている。
【0005】
現行のキャピラリーチューブは、概ね、内径がφ0.6mm〜φ0.8mm程度、外径がφ2.0mm〜φ3.0mm程度の細径管である。一方、サクションパイプは、概ね、内径がφ4.5mm〜φ6.5mm程度、外径がφ6.0mm〜φ8.0mm程度の丸管で構成されている。また、キャピラリーチューブとサクションパイプの長さは、冷凍冷蔵庫の大きさによっても異なるが、概ね2,000〜3,000mm程度である。
【0006】
我が国を始め世界中で市販されている冷凍冷蔵庫に搭載されている冷凍サイクルの熱交換器は、銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブのそれぞれの外表面が、熱的に接触されるようにハンダ付けにより一体的に接合されたものである。銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブは、熱交換性がよい、耐食性に優れる、ハンダ付けにより容易に一体的に接合することができる、などの理由により現在に至るまで実用に供されている。
【0007】
多数の特許文献、例えば、特許文献1、2、5においても、それぞれ熱交換器としての改良が提案されているが、基本的には銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブとをハンダ付けにより熱的に接触させた熱交換器が開示されている。また、特許文献7には、銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブをシーム溶接により熱的に接触させた熱交換器が開示されている。
【0008】
特許文献3においては、具体的にはサクションパイプとキャピラリーチューブの素材については言及していないが、「キャピラリーチューブはサクションパイプと対向流熱交換器をなす形でハンダ付けされている。」との記載から、サクションパイプとキャピラリーチューブの素材は銅であると思われる。特許文献5においては、キャピラリーチューブの素材については言及していないが、「サクションパイプとキャピラリーチューブはハンダ付けで所定の距離を熱接触させ熱交換させた構成とするが、サクションパイプのキャピラリーチューブと熱接触する部分は銅などの金属とし、」との記載から、キャピラリーチューブの素材についても銅であると思われる。特許文献3と特許文献5における熱交換器としてのサクションパイプとキャピラリーチューブの素材がともに銅であろうことは、特許文献6の段落〔0011〕〜〔0012〕の「サクションパイプと毛細管(キャピラリーチューブと同義)とを連結するために、・・・・・、通常、ハンダ付けはスズ(Sn)を使用して実施される。また、サクションパイプと毛細管との間の熱交換性及び耐食性が向上するように、サクションパイプと毛細管は銅製のものが一般的である。」との記載からも首肯できる。
【0009】
特許文献1は、サクションパイプとキャピラリーチューブを熱交換する冷蔵庫に関するものである。キャピラリーチューブとサクションパイプが共に銅管で形成され、それぞれを並列に添わせた状態でハンダ付けにより熱的に接触させることが記載されている。
【0010】
特許文献2は、冷蔵庫などで使用される多重熱交換器の改良に関するものである。この多重熱交換器は流体流路管(外管)内に流体流路管(内管)を配して流体の熱交換を行うものである。流体流路管(外管)(サクションパイプに相当)及び流体流路管(内管)(キャピラリーチューブに相当)としては、銅管、銅合金管を使用することが、塑性加工性、熱伝導性、ろう付け性、ハンダ付け性、耐食性などに優れるので好ましいことが記載されている。
【0011】
特許文献3は、サクションパイプとキャピラリーチューブを熱交換する冷蔵庫に関するものである。キャピラリーチューブとサクションパイプを並列に添わせた状態で対向流熱交換器をなす形でハンダ付けされている。
【0012】
特許文献4は、冷蔵庫などの冷凍回路に用いることのできる熱交換器に関するものである。銅合金製のキャピラリーチューブとアルミ合金製のサクションパイプを用いた熱交換器が開示されている。キャピラリーチューブとサクションパイプが異種金属であるので、熱交換器に水分が付着すると異種金属間に局部電池が形成され、熱交換器が腐食する可能性がある。このため、銅合金製のキャピラリーチューブとアルミ合金製のサクションパイプを並列に添わせた状態で保持し、溶融したアルミ−シリコン系のろう材を流し込み、凝固させる。これにより、銅合金製のキャピラリーチューブとアルミ合金製のサクションパイプを熱的に接合するとともに、キャピラリーチューブとサクションパイプの外周囲を連続的にろう材で被覆させるというものである。
【0013】
特許文献5は、冷凍サイクルによる結露防止を目的とする冷凍システム機器に関するものである。サクションパイプ自体が熱伝導性に優れる銅などの金属材料で構成されているので結露の問題が発生しやすい。サクションパイプの一部を銅などの金属よりも熱伝導率が低い樹脂とすることによりこの問題を解決しようというものである。サクションパイプとキャピラリーチューブはハンダ付けで所定の距離を熱接触させ熱交換させた構成とする。サクションパイプのキャピラリーチューブと熱接触する部分は銅などの金属とし、それ以外の部分はガスバリア性の高い樹脂とすることが記載されている。
【0014】
特許文献6は、熱伝導率を向上するサクションパイプアセンブリに関するものである。サクションパイプアセンブリは、内部にキャピラリーチューブを備え外部にサクションパイプとの接触面積を広げるための接触部を備えた熱伝達パイプの接触部が、サクションパイプの外周面に熱導電性接着剤を介して連結された構造となっている。熱伝達パイプとサクションパイプとの接触面積が増加するので、サクションパイプを移動する冷媒と熱伝達パイプの内部に挿入されたキャピラリーチューブを移動する冷媒との間の熱交換が、効果的に行われるというものである。キャピラリーチューブは銅製であるが、アルミニウム、鋼で形成されてもよいこと、また、熱伝達パイプはアルミニウム製であってもよいが、様々な材料が使用できることが記載されている。サクションパイプは銅材料やアルミニウムでもよいが、加工性及び曲げ性がよいことや相対的に安価なことから鋼製が好ましいことが記載されている。サクションパイプを鋼製とした場合、耐食性メッキを施すことにより腐食の心配がない商業利用できるサクションパイプが得られることが記載されている。実施例では、鋼製のサクションパイプ、銅製のキャピラリーチューブ、アルミニウム製の熱伝達パイプを使用している。
【0015】
特許文献7には、サクションパイプとキャピラリーチューブを熱的に接触させるため溶接により接合する方法が開示されている。具体的には、サクションパイプをなす銅管の外周面に、サクションパイプの一部を径方向に突出するように塑性変形させることにより、管軸方向に延びる一対の突条部を周方向にキャピラリーチューブの外径とほぼ同等の間隔をおいて形成する。この後、各突条部の間にキャピラリーチューブをなす銅管を配置し、各突条部をシーム溶接によってキャピラリーチューブに接合する、というものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
製造業の世界では製品のコストダウンは永遠の課題である。冷凍サイクルの熱交換器のコストダウンを実現することができれば、製品としての冷凍冷蔵庫のコストダウンが実現できる。製品としての冷凍冷蔵庫のコストダウンを実現するためには、熱交換器としての機能、品質は許容範囲内で現状のものと遜色のないことが求められる。また、熱交換器自体を改良することにより、冷凍サイクルシステムとしての構造を変更する、あるいは、冷凍冷蔵庫全体の構造の変更を余儀なくされるようなことは回避しなければならない。このためには、改良した熱交換器は、現行の熱交換器と実質的に同じ構造、すなわち、熱交換器を構成するサクションパイプとキャピラリーチューブの形状(パイプやチューブの内径、外径、長さ)が許容範囲内で同等であることが求められる。
【0018】
本発明者等は、現行の冷凍サイクルの熱交換器の銅製のサクションパイプ及び銅製のキャピラリーチューブに換えて、サクションパイプ及びキャピラリーチューブの素材としてアルミニウム材を使用することができれば、現行の冷凍サイクルの熱交換器としての機能、品質が許容範囲内で遜色なく、また、現行の冷凍サイクルの熱交換器と実質的に同じ構造であり、且つ、コストダウンが可能な冷凍サイクルの熱交換器を提供することができるのではないかと考えた。
【0019】
サクションパイプとキャピラリーチューブのように、径が極端に異なる母材同士をハンダ付けあるいはろう付けする場合には、母材とハンダあるいはろう材の融点の差が大きいことが望ましい。ハンダ付けの場合には、母材であるアルミニウム材とハンダの融点の差が大きいので、母材に影響を与えることなく、サクションパイプの外表面とキャピラリーチューブの外表面を接合することができる。しかしながら、アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブをアルミハンダ(例えば、Sn−Zn合金)により接合した冷凍サイクルの熱交換器は、耐食性の点で問題があり、使用環境下での接合部の劣化が避けられず、これを防止するために防食処理が必要である。
【0020】
アルミニウム材同士をAl−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材で接合したものは、耐食性には問題がないので接合部保護のための防食処理を必要としない。しかしながら、長さが2,000〜3,000mmもある径の細いアルミニウム材製のキャピラリーチューブと、それと比べ極端に径の太いアルミニウム材製のサクションパイプを並列に添わせた状態で加熱し、双方を同じ温度に上げることは双方の熱容量の違いから難しいと考えられ、ろう付け温度の適温に上げようとした場合、径の細いキャピラリーチューブが加熱オーバーとなり溶解損傷するおそれがある。
【0021】
特許文献7では、銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブの接合をシーム溶接で行っている。銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブの接合にシーム溶接、アーク溶接などの溶接は可能である。しかしながら、銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブに換えて、アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブとした場合には、シーム溶接、アーク溶接による接合は不可能であると考えられる。
【0022】
その理由としては、次のようなことが考えられる。銅の比熱(0℃)が0.880J/g・K、アルミニウムの比熱(0℃)が0.379J/g・Kであること、銅の比重(20℃)が8.96、アルミニウムの比重が2.71であることから、銅製のサクションパイプはアルミニウム材製のサクションパイプの熱容量の7.7倍であり、同じく銅製のキャピラリーチューブはアルミニウム材製のキャピラリーチューブの熱容量の7.7倍である。従って、同じ熱量を与えても銅製の方がアルミニウム材製に比べて、より温度変化が小さいことになる。加えて、銅の融点が約1083℃、アルミニウムの融点が約660℃であることを考え合わせると、銅製のサクションパイプと銅製のキャピラリーチューブの接合にシーム溶接、アーク溶接などの溶接が可能であっても、アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブとした場合には、径の細いキャピラリーチューブが加熱オーバーとなり溶解損傷するおそれがある。
【0023】
以上のような理由から、今日に至るまで、アルミニウム材製のキャピラリーチューブとアルミニウム材製のサクションパイプを使用した冷凍サイクルの熱交換器の提案がなかったものと思われる。
【0024】
従って、本発明の目的は、現行の冷凍サイクルの熱交換器の銅製のサクションパイプ及び銅製のキャピラリーチューブに換えて、サクションパイプ及びキャピラリーチューブの素材としてアルミニウム材を使用し、現行の冷凍サイクルの熱交換器としての機能、品質が許容範囲内で遜色なく、また、現行の冷凍サイクルの熱交換器と実質的に同じ構造であり、且つ、生産性に優れ、コストダウンが可能な冷凍サイクルの熱交換器及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者等は、鋭意検討した結果、接合する箇所にAl−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材が供給されフラックスが施こされたアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを治具に並列に添わせた状態で、全体を均一にろう付け温度の適温まで加熱できれば、径の細いキャピラリーチューブが加熱オーバーとなり溶解損傷するといった前記のおそれは解決できるのではないかと推測し本発明に至った。
【0026】
本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器において、前記熱交換器は前記キャピラリーチューブと前記サクションパイプの素材がともにアルミニウム材であり、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面との接合箇所はAl−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材のフィレットが形成された状態で接合していることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器の第一の製造方法(以下、第一の製造方法という。)は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、
1)治具にワークを準備する工程;
(ア)前記ワークは、前記冶具にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で配置したものである
(イ)前記ワークは、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材が供給されフラックスが施されている
2)前記治具に準備された前記ワークを前記冶具とともに予め加熱されているろう付け炉に搬入する工程;
3)前記ワークが加熱され前記ろう材が溶融し前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットが形成される工程;
4)前記ワークを冷却し前記フィレットを凝固する工程;
以上の1)〜4)の工程を有する炉中ろう付け法により冷凍サイクルの熱交換器を製造することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明者等は、高周波誘導加熱法によりアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブをろう付けする場合、高周波誘導加熱時に並列に添わせた状態のサクションパイプとキャピラリーチューブのそれぞれの外表面が密着していれば、サクションパイプとキャピラリーチューブの温度がほぼ均一になり、ろう付け温度の適温に上げた場合であっても、径の細いキャピラリーチューブが加熱オーバーとなり溶解損傷することがない、ということを見出した。
【0029】
本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器の第二の製造方法(以下、第二の製造方法という。)は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材が供給されフラックスが施されたアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態のワークを、前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態で、高周波誘導加熱コイルの中を相対的に移動させながら、前記サクションパイプの外表面と前記キャピラリーチューブの外表面を前記高周波誘導加熱コイルで加熱し前記ろう材を溶融することにより前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットを形成し、次いで冷却し前記フィレットを凝固することを特徴とする。
【0030】
第二の製造方法をより具体的に記述すると、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、
1)治具にワークを準備する工程;
(ア)前記ワークは、前記冶具にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で配置したものである
(イ)前記ワークは、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材が供給されフラックスが施されている
2)前記治具に準備された前記ワークを、少なくとも前記ワークと接触する部材が高周波誘導加熱コイルの内側に配置されたワーク保持装置に搬送する工程;
(ア)前記ワーク保持装置は、前記ワークの一方である前記サクションパイプの側面を前記ワークの他方である前記キャピラリーチューブに向けて押圧するサクションパイプ押圧部材と、前記キャピラリーチューブの側面を前記サクションパイプに向けて押圧するキャピラリーチューブ押圧部材を備えている
3)前記ワーク保持装置により前記アルミニウム材製のサクションパイプと前記アルミニウム材製のキャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態で、前記ワークを前記高周波誘導加熱コイルの中を移動させながら、前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブの外表面を前記高周波誘導加熱コイルで加熱し前記ろう材を溶融することにより前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットを形成する工程;
4)前記ワークを冷却し前記フィレットを凝固する工程;
以上の1)〜4)の工程を有する高周波誘導加熱法により冷凍サイクルの熱交換器を製造することを特徴とするものである。
【0031】
本発明者等は更なる検討を行った結果、アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態とし、サクションパイプとキャピラリーチューブ全体に熱的影響を極力与えないように接合箇所を微小スポット熱源で短時間に加熱することにより、熱交換性のよい冷凍サイクルの熱交換器を製造できることを見出した。
【0032】
すなわち、本発明者等は、アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブの外表面を溶融して接合するに際して、熱源としてレーザービームを用い、サクションパイプとキャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態でレーザー溶接すれば、サクションパイプとキャピラリーチューブに熱的影響を極力与えずに径の細いキャピラリーチューブが加熱オーバーとなり変形乃至は溶解損傷することがない、ということを見出した。
【0033】
本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器において、前記熱交換器は前記キャピラリーチューブと前記サクションパイプの素材がともにアルミニウム材であり、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面との接合箇所はそれぞれの外表面が溶融した状態で接合していることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器の第三の製造方法(以下、第三の製造方法という。)は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、
i)アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で押さえ治具により押圧し、前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態とし、
ii)前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブのそれぞれの外表面を圧接させた状態でレーザービームに対して相対的に移動させながら、前記サクションパイプの外表面と前記キャピラリーチューブの外表面との接合箇所に前記レーザービームを照射することにより前記接合箇所であるそれぞれの外表面を溶融し、前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブの外表面を接合する、ことを特徴とする。
【0035】
本発明において、「アルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態」とは、
図4、
図7、
図13、
図16に図示するように、アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が接するように並べることを意味する。なお、第一の製造方法、第二の製造方法のようにろう材のフィレットを形成する場合、ろう材としてブレージングシートを用いるときにはアルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面がブレージングシートを介して接するように並べてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、現行の冷凍サイクルの熱交換器としての機能、品質が許容範囲内で遜色なく、また、現行の冷凍サイクルの熱交換器と実質的に同じ構造、すなわち、熱交換器を構成するサクションパイプとキャピラリーチューブの形状(パイプやチューブの内径、外径、長さ)が許容範囲内で同等であり、且つ、銅に比較して重量単価がほぼ1/3、また比重がほぼ1/3であるアルミニウム材を使用したコストダウンを可能とした冷凍サイクルの熱交換器を提供することができた。また、第三の製造方法では、サクションパイプとキャピラリーチューブの外表面をレーザー溶接により接合することができたので大量生産が容易となり、また、ろう材を使用することがないので、大幅なコストダウンが可能な冷凍サイクルの熱交換器を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書においては、アルミニウム材製のキャピラリーチューブ103を単にキャピラリーチューブ103と記載し、アルミニウム材製のサクションパイプ105を単にサクションパイプ105と記載することもある。また、第一の製造方法及び第二の製造方法により得られる熱交換器を熱交換器106Aと称し、第三の製造方法により得られる熱交換器を熱交換器106Bと称する。熱交換器106A、106Bを総称する場合は熱交換器106という。
【0039】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る熱交換器を用いた冷凍サイクルの構成図である。
図2は、接合箇所にフィレットが形成されて接合している本発明に係る熱交換器を示す斜視図であり、
図3は
図2の断面図である。
図4は、第一の製造方法に使用する治具に本発明に係るワークが準備されている状態を示す斜視図であり、
図5は
図4の断面図である。
図6は、第一の製造方法に使用するろう付け炉の概略説明図である。
【0040】
図1に示す冷凍サイクルは、冷媒を吸入し吐出する圧縮機101と、一端が圧縮機101の冷媒吐出側に接続された凝縮器102と、一端が凝縮器102の他端に接続されたアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103と、一端がこのキャピラリーチューブ103の他端に接続された蒸発器104と、一端が蒸発器104の他端に接続され他端を圧縮機101の冷媒吸入側に接続したアルミニウム材製のサクションパイプ105を備えている。この冷凍サイクルにおいて、アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を熱的に接触させることにより本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器106が形成される。
【0041】
本発明に係る冷凍サイクルは、蒸発器104とサクションパイプ105の間に蒸発した気体の冷媒と液体の冷媒とを分離し気体の冷媒を圧縮機101に向かわせる機能を備えるアキュムレータ、凝縮器102とキャピラリーチューブ103の間に水分除去のためのドライヤなどを備えることができる。
【0042】
熱交換器106Aにおいては、アルミニウム材製のキャピラリーチューブ103の外表面とアルミニウム材製のサクションパイプ105の外表面との接合箇所は、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材のフィレットが形成された状態で接合している。
【0043】
圧縮機101で圧縮された冷媒は、高温高圧ガスとなって凝縮器102に送られ、凝縮器102で放熱することで液化する。液化した冷媒は、キャピラリーチューブ103を通って減圧され、蒸発器104に送られる。蒸発器104で液化された冷媒が蒸発することに伴い周囲の熱を奪い、この結果周囲の空気を冷却する。蒸発した低温冷媒はサクションパイプ105を通って圧縮機101に戻り、再び圧縮される。使用する冷媒としては、地球温暖化係数の小さいシクロペンタン、イソブタンなどの炭化水素系の冷媒が好ましい。
【0044】
以上のように構成された冷凍サイクルにおいて、アルミニウム材製のキャピラリーチューブ103とアルミニウム材製のサクションパイプ105とは互いに熱的に接触しているので、キャピラリーチューブ103内を流通する液相冷媒はサクションパイプ105内を流通する低温冷媒によって冷却され冷却効率の向上が図られる。
【0045】
図2は、接合箇所にフィレットが形成されて接合している本発明に係る熱交換器を示す斜視図であり、
図3はその断面図である。熱交換器106Aを構成するキャピラリーチューブ103とサクションパイプ105の素材は、ともにアルミニウム材である。また、キャピラリーチューブ103の外表面とサクションパイプ105の外表面との接合箇所は、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材のフィレット201が形成された状態で接合しているので、キャピラリーチューブ103とサクションパイプ105とは互いに熱的に接触した状態となっている。
【0046】
熱交換器106Aを構成するキャピラリーチューブ103とサクションパイプ105は素材がアルミニウム材であるという点を除いては、形状、長さ、外径、内径などは現行の冷凍冷蔵庫や冷凍装置に使用されているキャピラリーチューブとサクションパイプとほぼ同等のものである。また、サクションパイプ105及びキャピラリーチューブ103の素材であるアルミニウム材としては、アルミニウムであってもアルミニウム合金であってもよい。
【0047】
本発明においては、融点、熱伝導性、接合部の耐食性、強度、作業性等の観点から、ろう材としてAl−Si合金またはZn−Al合金を選択した。本発明に係る熱交換器106の主たる用途は冷凍冷蔵庫であり、買い替えサイクルは、メーカーによって推奨期間が多少異なるが、大体10〜12年としているところが多い。また、ある調査によれば、買い替えサイクルが10年以上であるとの回答が70%ということを考慮すると、接合部の耐食性は重要な因子となり、この観点から熱交換器106Aに使用されるろう材としてはAl−Si合金が好ましい。
【0048】
アルミニウム材表面の酸化皮膜を除去し、溶融ろう材の濡れ性及び流動性を良くするためにフラックスを用いる。使用するフラックスは、CeF系フラックス、塩化物系フラックス、非腐食性フッ化物系フラックスが使用できる。非腐食性のフッ化物系フラックスを使用することが、熱交換器106Aのろう付け後の洗浄が不要になる等の利点があり好ましい。
【0049】
図4は、第一の製造方法に使用する治具に本発明に係るワークが準備されている状態を示す斜視図であり、
図5はその断面図である。アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103は、それぞれの外表面を接触させた状態で並列に添わせ治具400に配置されている。符号502はろう材であり、細線状のろう材を使用している。ろう材はブレージングシートといったシート状のろう材でもよく、この場合は、ブレージングシートを介してサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103を並列に添わせた状態で冶具400に配置する。ここでは、ろう材を第三の材料として供給しているが、ろう材をアルミニウム材製のサクションパイプ或いはアルミニウム材製のキャピラリーチューブにクラッドした形態で供給してもよい。
【0050】
本発明に係るワーク501にはフラックスが塗布されている。フラックスの塗布方法としては、刷毛で塗布する方法、スプレー塗布、ワーク501をフラックス液に浸漬するディップ法など任意の方法を採用することができる。また、フラックスとろう材が一体となったもの、例えば、粉末状のろう材をフラックスに混ぜてペースト状としたペーストろう材或いはフラックスをろう材に含有させたフラックス入りろう材を使用することもできる。
【0051】
治具400はL形治具401と押さえ蓋402から構成されている。L形治具401と押さえ蓋402は、ステンレス鋼(例えばSUS304)にて作製することができる。L形治具401は、底板401aと側板401bをレーザー溶接で接合して作製する。治具400の長さは500〜1,000mmとし、ワーク501の長さに応じて複数個を使用し、アルミニウム材製のキャピラリーチューブ103の熱膨張による変形を防ぐことができる。
【0052】
次に、炉中ろう付け法である第一の製造方法について説明する。L形治具401にサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103を並列に添わせ、細線状のAl−Si合金502を供給し、刷毛で非腐食性のフッ化物系フラックス(ノコロックフラックス)を塗布し、次いで押さえ蓋402でワーク501を固定する。ここでは、それぞれ3,000mmのアルミニウム製のサクションパイプとアルミニウム製のキャピラリーチューブを使用するので、1,000mmの治具400を3個直列に並べて使用する。
【0053】
図6は、第一の製造方法に使用するろう付け炉の概略説明図である。治具400に固定したワーク501をろう付け炉600に搬入する。
図6においては、ろう付け炉600は、予熱室601、ろう付け室602、冷却室603を備えた連続炉である。図示していない搬送ベルトに、ワーク501が固定されている治具400をセットし、ワーク501を予熱室601内に搬入する。予熱室601は常時320℃に保ちワーク501が搬入されると480℃に加熱するように調整されている。搬送速度は、一度にろう付けするワーク501の数量によって異なるが、ワークが1セットのときには1m/分の搬送速度とする。
【0054】
次に、予熱室601にて予備加熱されたワーク501を620〜630℃に加熱されているろう付け室602に搬送する。ろう付け室602内のヒータによりワーク501をろう付け温度(ろう材の融点)まで加熱してろう付けを行う。ろう材としてAl−Si合金を用いるので、ろう付け温度は602℃±5℃とする。ろう付け室602内には、液体窒素タンク605から開閉弁604aを備える供給管604を経て窒素ガスが流入するようになっているので、ろう付け室602内は窒素ガスの雰囲気に維持されている。窒素ガス雰囲気の酸素濃度は100ppm以下、窒素ガス雰囲気の露点は−40℃以下、窒素ガス雰囲気の圧力は大気圧とする。ろう付け室602内は窒素ガス雰囲気に維持することにより、アルミニウム製のサクションパイプ105とアルミニウム製のキャピラリーチューブ103表面における酸化皮膜の生成が抑制される。Al−Si合金と非腐食性のフッ化物系フラックスを使用するろう付け法により、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103が接合する箇所にろう材であるAl−Si合金が溶融しフィレット201が形成され、ワーク501を良好に接合することができる。ろう付け室602と予熱室601の間、ろう付け室602と冷却室603の間は、相互を扉なしで常に連通している状態とすることにより、これらの各室はいずれも窒素ガス雰囲気とすることができる。
【0055】
ろう付け室602でろう付けが終わると、ワーク501は水冷ジャケット(図示せず)を持つ冷却室603に搬送されここで徐冷されるので、ろう付け室602で形成されたフィレット201が凝固する。
【0056】
冷却室603で冷却されたワーク501はろう付け炉600の外部に搬送されて熱交換器106Aの製造が完了する。アルミニウム製のサクションパイプ105とアルミニウム製のキャピラリーチューブ103の接合箇所にはピンホールがなく、連続的にろう付けされていることを確認できた。また、ワーク501は徐々に冷却されるので、焼鈍効果が得られ曲げ加工を容易に行うことができる。
【0057】
熱交換器106Aは、ろう付けする時にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブのそれぞれの外表面を強制的に密着させた状態、すなわち圧接させた状態で加熱することにより、高周波誘導加熱法によっても製造することが可能であることがわかった。以下に図面を参照しながら説明する。
【0058】
図7は、第二の製造方法である高周波誘導加熱法により本発明に係る熱交換器を製造している状態を示す斜視図であり、
図8は、
図7の正面図である。
図9は、第二の製造方法に使用するワーク保持装置によりワークを押圧している状態を説明するための模式図である。
図10は、ワーク保持装置が備えるサクションパイプ押圧部材とキャピラリーチューブ押圧部材がそれぞれサクションパイプの側面とキャピラリーチューブの側面を斜め上方から押圧している状態を説明するための模式図である。
【0059】
図7は、冶具に準備されたワーク501が、ワーク501と接触する部材が高周波誘導加熱コイル700の内側に配置されたワーク保持装置に矢印(←)で示す方向(図面向かって右から左方向)に搬送され、熱交換器106Aが製造されている状態を示している。第一の製造方法と同様に、ワーク501はAl−Si合金が供給されと非腐食性のフッ化物系フラックスが施されている。なお、熱交換器106Aに係る符号は、第一の製造方法における説明で付したものと同じ符号が付してある。すなわち、符号103はアルミニウム材製のキャピラリーチューブ、符号105はアルミニウム材製のサクションパイプ、符号501はワーク、符号201はフィレット、符号502はろう材をそれぞれ表す。
【0060】
ワーク保持装置について
図8も参照しながら説明する。ワーク保持装置は、サクションパイプ押圧部材810(図面では、サクションパイプ押圧部材810は、サクションパイプ接触部811とバネ部812と支柱813から構成されている。)と、キャピラリーチューブ押圧部材820(図面では、キャピラリーチューブ押圧部材820は、キャピラリーチューブ接触部821とバネ部822と支柱823から構成されている。)を備えている。サクションパイプ押圧部材810は、ワーク501の一方であるサクションパイプ105の側面をワーク501の他方であるキャピラリーチューブ103に向けて押圧するものである。キャピラリーチューブ押圧部材820は、キャピラリーチューブ103の側面をサクションパイプ105に向けて押圧するものである。
【0061】
本発明においては、ワーク保持装置は、少なくともサクションパイプ押圧部材810とキャピラリーチューブ押圧部材820を備えていればよいが、サクションパイプ105の下面とキャピラリーチューブ103の下面を支える支持部材830(図面では、サクションパイプ下面支持部831と支柱832、キャピラリーチューブ下面支持部833と支柱834から構成されている。)を備えることにより、より安定にワーク501を保持することができる。符号840は支柱813、823、832、834を支える床部である。
【0062】
図面では、支柱813と支柱823は高周波誘導加熱コイル700の外側に配置されているが、高周波誘導加熱コイル700の内側に配置されてもよい。本発明においては、高周波誘導加熱時に、並列に添わせた状態のアルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が強制的に密着している、すなわち圧接されていることが必須である。このため、ワーク保持装置の全長は高周波誘導加熱コイル700のコイル長さとほぼ同等であればよい。
【0063】
熱交換器106Aを第二の製造方法である高周波誘導加熱法により製造するに当たっては、ワーク保持装置が重要な役割を果たすので、さらに
図9、
図10を参照して詳述する。
図9、
図10においては、図面を簡略化するために、サクションパイプ押圧部材810を代表してサクションパイプ接触部811で表示し、キャピラリーチューブ押圧部材820を代表してキャピラリーチューブ接触部821で表示する。また、支持部材830を代表してサクションパイプ下面支持部831とキャピラリーチューブ下面支持部833で表示する。さらに、サクションパイプ押圧部材810の押圧方向を矢印(図面向かって左から右に向いている矢印(→))で表示し、キャピラリーチューブ押圧部材820の押圧方向を矢印(図面向かって右から左に向いている矢印(←))で表示した。また、
図9、
図10においては、ろう材502についても表示は省略した。
【0064】
ろう付けするときに、ワーク501であるアルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させるためには、基本的には
図9に示すようにすればよい。すなわち、サクションパイプ押圧部材810(図ではサクションパイプ接触部811で代表)でサクションパイプ105の側面をサクションパイプの中心(符号OS)に向かって水平の方向(図面向かって左から右に向いている矢印(→)の方向)に押圧し、また、キャピラリーチューブ押圧部材820(図ではキャピラリーチューブ接触部821で代表)でキャピラリーチューブ103の側面をキャピラリーチューブの中心(符号OC)に向かって水平の方向(図面向かって右から左に向いている矢印(←)の方向)に押圧すればよい。
【0065】
このように中心に向かって水平に押圧する場合は、原理的には支持部材830(図ではサクションパイプ下面支持部831とキャピラリーチューブ下面支持部833で代表)はなくてもよいが、あったほうが安定する。安定の程度は、サクションパイプ接触部811とキャピラリーチューブ接触部821が、それぞれサクションパイプ105の側面とキャピラリーチューブ103の側面に接触する面積(以下、接触面積という)に依存するが、熱効率の観点からは可能な限り接触面積は小さいほうが好ましい。接触面積を小さくすると、ワーク501のいずれか一方あるいは両方が上部方向に向かって離れるおそれがある。
【0066】
したがって、
図10に示すように、サクションパイプ押圧部材810(図ではサクションパイプ接触部811で代表)は、サクションパイプ105の側面をサクションパイプの中心(符号OS)に向かって斜め上方から(図面向かって斜め左上から斜め右下に向いている矢印の方向)押圧するように構成する。また、キャピラリーチューブ押圧部材820(図ではキャピラリーチューブ接触部821で代表)は、キャピラリーチューブ103の側面をキャピラリーチューブの中心(符号OC)に向かって斜め上方から(図面向かって斜め右上から斜め左下に向いている矢印の方向)押圧するように構成する。その上で、支持部材830(図ではサクションパイプ下面支持部831とキャピラリーチューブ下面支持部833で代表)を設けることが好ましい。このような構成にすることにより、アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させた状態で安定的に移動させながら、ろう材が供給されたアルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103の外表面を高周波誘導加熱コイル700で加熱することによりろう材が溶融し接合箇所にフィレット(図示せず)を形成することができる。
【0067】
図9、
図10に示すように、サクションパイプ接触部811とキャピラリーチューブ接触部821の形状は、サクションパイプ105、キャピラリーチューブ103のそれぞれに接触する部分は、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103の側面形状と同じR形状とする。また、サクションパイプ接触部811とキャピラリーチューブ接触部821の上部側は、外側に反った形状とすることによりワーク501の移動がスムーズとなる。
【0068】
ワーク保持装置の素材については特に制限はないが、高周波誘導加熱により発熱しない、若しくは発熱しにくい素材が好ましい。特にワーク保持装置のワーク501と接触する部材(サクションパイプ接触部811、キャピラリーチューブ接触部821、サクションパイプ下面支持部831、キャピラリーチューブ下面支持部833)の素材については、高周波誘導加熱により発熱しない素材である、例えば、非磁性のセラミックが好ましい。
【0069】
図7に戻るが、治具にワークを準備する工程については図示していない。ワーク501であるサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103を並列に添わせた状態に配置する冶具としては、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103を並列に添わせた状態に保つことができればどのような構造のものでもよいが、ここでは、前記で説明したワーク保持装置と同じ構造のものを使用することができる。
【0070】
3,000mmのアルミニウム製サクションパイプ105と3,000mmのアルミニウム製キャピラリーチューブ103を並列に添わせたものをワーク501とし、前記で説明したワーク保持装置と同じ構造の冶具にワーク501を保持する。ここでは、高周波誘導加熱コイル700のコイル長さが20cmのものを使用するので、冶具であるワーク保持装置の全長は概ね20cmとした。なお、ワーク501にはろう材が供給されフラックスが塗布されているが、第一の製造方法で説明したものと同じであるので詳細については省略する。
【0071】
一方の端に細い鋼製のワイヤが取り付けられた耐熱性樹脂製の栓(図示せず)がワーク501であるサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの開口部に嵌め込まれ、ワイヤの先端(図示せず)は
図7に示すワーク保持装置を通過して、矢印(→)で示す方向(
図7の図面向かって右から左方向)の高周波誘導加熱コイル700の外側に配置されている駆動装置(図示せず)に接続される。耐熱性樹脂製の栓と細い鋼製のワイヤと駆動装置が協働して、冶具に準備されたワーク501を
図7に示すワーク保持装置に搬送する手段(以下、搬送手段という)として機能する。
【0072】
図示していないが、ワーク501が準備された冶具と
図7に示すワーク保持装置は直列に配置されている。冶具に準備されたワーク501は、サクションパイプ105の外表面とキャピラリーチューブ103の外表面が圧接された状態になっている。この状態で、前記した搬送手段により、ワーク501を
図7に示すワーク保持装置に搬送する。
【0073】
第二の製造方法である高周波誘導加熱法によるろう付けでは、使用する発振周波数は好ましくは20kHzから200kHzのうちの一波であり、加熱出力は20kWから40kWの範囲が好ましい。また、ワーク搬送手段による搬送速度は、ろう材の種類と加熱出力によって異なるが、概ね0.5m/分から15m/分程度である。
【0074】
ワーク保持装置に搬送されたワーク501は、ワーク501の一方であるサクションパイプ105の側面が、サクションパイプ押圧部材810でワーク501の他方であるキャピラリーチューブ103に向けて押圧される。また、キャピラリーチューブ103の側面が、キャピラリーチューブ押圧部材820でサクションパイプ105に向けて押圧されている。このように、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103の側面がそれぞれ押圧されているので、サクションパイプ105の外表面とキャピラリーチューブ103の外表面は圧接された状態、すなわち密着された状態で加熱される。ろう材502は、高周波誘導加熱コイル700の入口近傍(図面7の図面向かって右側)から徐々に溶融し始め、高周波誘導加熱コイル700の出口近傍で完全に溶融しフィレット201が形成される。ここでは、ろう材としては細線状のAl−Si合金を用い、非腐食性のフッ化物系フラックスを用いた。ろう付け温度を602℃±5℃となるように加熱出力は20kWとした。また、ワークの搬送速度は0.5m/分とした。
【0075】
高周波加熱コイル700から搬出されたワーク501は室温で徐々に冷却されフィレット201が凝固する。アルミニウム製のサクションパイプ105とアルミニウム製のキャピラリーチューブ103の接合箇所にはピンホールがなく、連続的にろう付けされていることを確認できた。また、ワーク501は徐々に冷却されるので、焼鈍効果が得られ曲げ加工を容易に行うことができる。
【0076】
本発明に係る熱交換器106Aはレーザーろう付け法により製造することもできる。すなわち、接合する箇所にAl−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材を供給しフラックスを施こしたアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを、治具に並列に添わせた状態でろう材を加熱する熱源としてレーザービームを用いろう材を溶融し前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットを形成し、次いで冷却することによりフィレットを凝固すればよい。本発明に係る冷凍サイクルの熱交換器のレーザーろう付け法による製造方法は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮器、キャピラリーチューブ、蒸発器、サクションパイプ及び前記圧縮機に順次循環するように構成され、前記キャピラリーチューブの外表面と前記サクションパイプの外表面とが互いに熱的に接触している冷凍サイクルの熱交換器の製造方法において、
1)治具にワークを準備する工程;
(ア)前記ワークは、前記冶具にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で配置したものである
(イ)前記ワークは、Al−Si合金またはZn−Al合金から選ばれるろう材が供給されフラックスが施されている
2)前記治具に準備された前記ワークをレーザービームに対して相対的に移動させながら前記レーザービームを前記ろう材に照射し前記ろう材が溶融し前記サクションパイプと前記キャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットを形成する工程;
3)前記ワークを冷却し前記フィレットを凝固する工程;
以上の1)〜3)の工程を有するレーザーろう付け法により冷凍サイクルの熱交換器を製造することを特徴とするものである。
【0077】
熱交換器106Aをレーザーろう付け法により製造する場合、ワークとして準備するものは第一の製造方法のワーク501と同じでよい。治具に準備されたワークは、第一の製造方法と同様にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブを並列に添わせた状態で配置すればよい。この状態でろう材にレーザービームを照射することによりろう材が溶融しサクションパイプとキャピラリーチューブが接合する箇所にフィレットを形成することができる。
【0078】
第二の製造方法と同様に、ろう付けする時にアルミニウム材製のサクションパイプとアルミニウム材製のキャピラリーチューブのそれぞれの外表面を強制的に密着させた状態、すなわち圧接させた状態でろう材にレーザービームを照射してもよい。この場合、治具としては第二の製造方法で用いたワーク保持装置を利用することができる。また、第三の製造方法と同様な押さえ治具を利用することもできる。
【0079】
使用するレーザーとしては、後記する第三の製造方法で使用するレーザー溶接機を利用することができる。ろう材としてAl−Si合金を使用する場合には、レーザービームの照射条件などは第三の製造方法と同様な条件を利用することができる。
【0080】
次に、アルミニウム材製のキャピラリーチューブ103の外表面とアルミニウム材製のサクションパイプ105の外表面との接合箇所が、キャピラリーチューブ103とサクションパイプ105のそれぞれの外表面が溶融した状態で接合している冷凍サイクルの熱交換器106B及びこの熱交換器106Bを製造する代表的な製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0081】
本発明に係る熱交換器106Bを用いた冷凍サイクルの構成図は
図1に示す冷凍サイクルの構成図と共通であるので詳細については省略する。この冷凍サイクルにおいて、アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103とで本発明に係る熱交換器106B(
図11を参照。)を構成する。この熱交換器106Bにおけるサクションパイプ105の外表面とキャピラリーチューブ103の外表面との接合箇所は、それぞれの外表面が溶融した状態で接合している。
【0082】
図11は本発明に係る熱交換器106Bを示す斜視図である。本発明に係る熱交換器106Bを構成するキャピラリーチューブ103とサクションパイプ105の素材は、ともにアルミニウム材である。キャピラリーチューブ103の外表面とサクションパイプ105の外表面との接合箇所は、レーザービームの照射によりそれぞれの外表面が溶融した状態で接合しているので、キャピラリーチューブ103とサクションパイプ105とは互いに熱的に接触した状態になっている。
【0083】
本発明に係る熱交換器106Bを構成するキャピラリーチューブ103とサクションパイプ105は素材がアルミニウム材であるという点を除いては、形状、長さ、外径、内径などは現行の冷凍冷蔵庫や冷凍装置に使用されているキャピラリーチューブとサクションパイプとほぼ同等のものである。また、サクションパイプ105及びキャピラリーチューブ103の素材であるアルミニウム材としては、アルミニウムであってもアルミニウム合金であってもよい。
【0084】
図12は、第三の製造方法、すなわち本発明に係る熱交換器106Bを製造する際に用いるレーザー溶接機の概念図である。ここでは、レーザー溶接機としては、ファイバーレーザー溶接機を例示している。符号1301はファイバーレーザー本体であり、符号1302は光ファイバー(ファイバー径φ)、符号1303はレーザービーム出射ユニットである。レーザービーム出射ユニット1303に導かれたレーザービームLB(図中、破線で示す線)は、レンズL1(焦点距離f
1)により平行ビーム化され次いでレンズL2(焦点距離f
2)により集光され、レーザービームLBに対して一方向に移動する被加工物1405(
図13で説明する。)に所定のスポット径のレーザービームLBが照射されるように構成されている。
【0085】
なお、被加工物1405は押圧ローラ1401、1402で押圧されながらアルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が圧接された状態にある(
図13を参照。)が、ここでは簡略化して図示した。この図においては、被加工物1405が矢印(→)で示す方向(図面に向かって左から右方向)に移動しているものとする。符号1308は窒素ボンベであり、符号1307は窒素ガス噴射ノズルである。レーザー溶接は被加工物1405の酸化を防ぐためアルゴンガスなどの不活性ガスを使用することもできる。
【0086】
図13は、押さえ治具である押圧ローラー1401、1402により被加工物1405(アルミニウム材製のサクションパイプ105とアルミニウム材製のキャピラリーチューブ103を並列に添わせた状態のものをいう。)を押圧しサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させている状態を示す図である。
図13(a)は側面から見た図であり、
図13(b)は平面図である。
【0087】
押圧ローラー1401は、サクションパイプ105の側面をキャピラリーチューブ103に向けて押圧するように構成されている。押圧ローラー1401は、サクションパイプ105の外径に合わせた円弧状の溝が形成された溝付きローラーとなっている。押圧ローラー1402は、キャピラリーチューブ103の側面をサクションパイプ105に向けて押圧するように構成されている。押圧ローラー1402は、キャピラリーチューブ103の外径に合わせた円弧状の溝が形成された溝付きローラーとなっている。符号1403は押圧ローラー1401のシャフトであり、符号1404は押圧ローラー1402のシャフトである。シャフト1403、シャフト1404の両方、あるいはいずれか一方は図示しない筐体に軸方向と垂直方向(サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの中心点を通る線の方向)に位置調整可能に固定されている。
【0088】
図13では、適宜な間隔で設けた二対の押圧ローラー1401、1402により被加工物1405を押圧してサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させているが、これに限られない。一対の押圧ローラー1401、1402により被加工物1405を押圧してサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させてもよい。また、後述する
図16で示すような全自動で本発明に係る熱交換器106Bを製造する方法のように、一対の押圧ローラー1401、1402と一対のガイドローラー1701、1702とが協働して押さえ治具を構成し、被加工物1405を押圧してサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させてもよい。押圧ローラー1401、1402の素材としては、銅、真鍮、アルミニウムなどの熱導電性のよいもの、或いはウレタンなどポリマーを使用することができる。
【0089】
図14は、第三の製造方法を説明するための模式図であり、
図14(a)は側面から見た図であり、
図14(b)は平面図である。一対の押圧ローラー1401、1402により被加工物1405を押圧しながらサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接し、窒素ガスを吹き付けながらレーザー溶接している様子を示している。この被化工物1405は、レーザービームLBに対して矢印(←)の方向(図面に向かって右から左方向)に移動している。被化工物1405の移動速度は、ファイバーレーザーの出力が大きいほど速くすることができるが、目安としてファイバーレーザーのピーク出力が1000W程度で概ね3m/分〜5m/分程度である。
【0090】
被加工物1405に対するレーザービームLBの照射の向きは、被加工物1405からの戻り光を避けるために、被加工物1405に対して斜めの方向から照射することが好ましい。レーザービーム出射ユニット1303の傾きは、被加工物移動方向の上流側に傾いている(レーザービームLBが被加工物1405の進行方向前方側に向けて照射されている。)、或いは、被加工物移動方向の下流側に傾いている(レーザービームLBが被加工物1405の進行方向後方側に向けて照射されている。)のいずれでもよい。
【0091】
被化工物1405に対するレーザービームLBの照射位置は、一対の押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置から被化工物移動方向の下流側直後の範囲が好ましく、より好ましくは一対の押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置である。また、二対の押圧ローラー1401、1402で被加工物1405を押圧しサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面を圧接させる場合には、レーザービームLBの照射位置は、被化工物移動方向の下流側に位置する押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置から被化工物移動方向の下流側直後の範囲が好ましい。より好ましくは、被化工物移動方向の下流側に位置する押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置である。
【0092】
なお、
図14(b)では、レーザービームLBの照射位置は、一対の押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧する位置の被化工物移動方向の下流側直後よりさらに下流側であるかのように描かれている。これは、レーザービーム出射ユニット1303と窒素ガス噴射ノズル1307を同一平面で描く上での便宜的なものである。
【0093】
図示していないが、被加工物が押さえ冶具により固定押圧されて押さえ冶具とともに被加工物がレーザービームに対して一方向に移動するような装置では、被化工物に対する被加工物移動方向におけるレーザービームの照射位置は任意の位置に設定することができる。
【0094】
窒素ガス噴射ノズル1307から噴射する窒素ガスの被化工物1405に対する吹き付け位置は、レーザービームLBの照射位置とほぼ同じ位置が好ましい。また、窒素ガスの吹き付け方向は、被化工物1405の移動方向と同じ方向が好ましい。このような方向に窒素ガスを吹き付けることにより、溶接直後の接合部も窒素ガス雰囲気で覆われることになり酸素からの遮断をより確実なものとすることができる。窒素ガスのガス流量は概ね10l/分(毎分10リットル)程度である。なお、
図14(b)において、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103の接触部における×××××の符号は、レーザービーム溶接によりサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が溶融して接合している状態を示している。
【0095】
図15は、押圧ローラー(図示せず)によりサクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が圧接された被加工物1405に、レーザービームLBを照射している状態を模式的に示す拡大図である。
図15(a)は側面から見た図であり、
図15(b)は平面図である。サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面をレーザービーム溶接により接合するには、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が接触している箇所を照射する。換言すれば、サクションパイプ105とキャピラリーチューブ103のそれぞれの外表面が圧接されて形成する接触線LCを挟むようにレーザービームLBを照射する。レーザービームスポットLBSのスポット径としては概ねφ0.05mm〜0.6mm程度である。
【0096】
被化工物1405に対するレーザービームLBの照射位置は、
図15(b)に示すようにサクションパイプ105側に偏っていることが好ましい。換言すれば、レーザービームLBのスポット中心SOが接触線LCよりもサクションパイプ105側に寄っていることが好ましい。数値的に表せば、レーザービームLBのスポット中心SOは、前記接触線LCを基準として、概ね、スポット径(φ)×1/6〜スポット径(φ)×1/3程度サクションパイプ側に寄っていることが好ましい。
【0097】
図16は、本発明に係る熱交換器106Bを全自動で製造する方法を示す概念図である。符号1703、1704は駆動ローラー、符号1401、1402は押圧ローラー、符号1701、1702はガイドローラーである。アンコイラ装置1705には、コイル状に巻回したキャピラリーチューブ用アルミニウム管CAとサクションパイプ用アルミニウム管SAが装備されている。図示しないモーターにより駆動される駆動ローラー1703,1704は、被加工物1405を→方向(図面に向かって左から右方向)に搬送するように構成されている。アンコイラ装置1705から繰り出されたサクションパイプ用アルミニウム管SAとキャピラリーチューブ用アルミニウム管CAは、下流に配置された矯正装置1706、1707を通過することにより巻き癖が矯正され、ガイドローラー1701、1702に導かれる。ガイドローラー1701、1702でサクションパイプ用アルミニウム管SAとキャピラリーチューブ用アルミニウム管CAを並列に添わせた状態とし、さらに下流に配置された押圧ローラー1401、1402に向けて搬送される。
【0098】
ガイドローラー1701、1702とその下流に配置された押圧ローラー1401、1402とが協働して押さえ治具を構成し、被加工物1405を押圧しサクションパイプ用アルミニウム管SAとキャピラリーチューブ用アルミニウム管CAのそれぞれの外表面を圧接させた状態としている。被化工物1405に対するレーザービームLBの照射位置が一対の押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置となるように、レーザービーム出射ユニット1303を配置している。
【0099】
窒素ガス噴射ノズル1307は、窒素ガスの吹き付け方向が被化工物1405の移動方向と同じ方向となるように、且つ、窒素ガスの被化工物1405に対する吹き付け位置がレーザービームLBの照射位置とほぼ同じ位置となるように配置されている。駆動ローラー1703、1704の下流側に配置された切断機1708で溶接された被加工物を所定の長さに切断する。このようにして製造された本発明に係る熱交換器106Bがストッカ1709に積載されるように構成されている。
【0100】
図17は、ファイバーレーザー溶接装置を用いて、アルミニウム製サクションパイプとアルミニウム製キャピラリーチューブを接合して得られた本発明に係る熱交換器106Bの写真である。
アルミニウム製サクションパイプ;
外径:φ6.4mm、肉厚:0.7mm、内径:φ5mm、
アルミニウム製キャピラリーチューブ;
外径:φ2mm、肉厚:0.7mm、内径:φ0.6mm、
ファイバーレーザー溶接機
発振波長:1070〜1100nm、光ファイバー302のファイバー径:φ0.1mm、レンズL1の焦点距離(f
1):100mm、レンズL2の焦点距離(f
2):200mm、レーザービームスポット径:φ0.2mm、ピーク出力:800W、
レーザービームスポット径:φ0.2mmで焦点位置を被化工物1405の表面とし、レーザービームLBのスポット中心SOは、前記接触線LCを基準として(
図15を参照。)、0.05mmだけサクションパイプ側に寄った位置に調整し、被化工物1405に対するレーザービームLBの照射位置は、押圧ローラー1401、1402が被化工物1405を押圧している位置に調整した。押圧ローラー1401、1402の素材は銅製とした。被加工物1405の移動速度を30mm/秒、50mm/秒で実験を行った。また、シールドガスとして流量が10l/分(毎分10リットル)の窒素ガスを用い被加工物1405の移動方向と同じ方向に吹き付けた。
【0101】
アルミニウム製サクションパイプとアルミニウム製キャピラリーチューブを接合して得られた本発明に係る熱交換器は、銅製サクションパイプと銅製キャピラリーチューブをハンダ付けして得られた現行の熱交換器に対して、熱交換器としての性能において遜色がなかった。