【文献】
周山大慶、外3名,コニカルマウントされた金属格子における表面プラズモンの共鳴吸収,電気学会研究会資料 電磁界理論研究会 EMT−05−1〜11・13,2005年 1月21日,第29頁−第34頁
【文献】
Bai B,Artificial optical activity in chiral resonant nanogratings,Proceedings of SPIE,2009年11月25日,Vol.7393,pp.73930K-1 - 73930K-11
【文献】
周山大慶、外4名,金属格子における表面プラズモンの励振と屈折率測定への応用,電気学会研究会資料,日本,2007年 1月29日,EMT−07−12,第61頁−第66頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る表面プラズモンセンサ1を説明する。
図1は、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ1の概略を示す図である。
図1の表面プラズモンセンサ1は、周期構造を有する金属層10を備える反射板11と、反射板11上に入射光を照射する光源12と、反射板で反射した反射光を受光する受光部13と、反射光の楕円率の変動から反射板11上に配置された試料の屈折率nを測定する計測部14と、を備える。
【0012】
各部の詳細を説明する。
反射板11は、例えばシリコン等の基板15と、基板15上に積層された例えばアルミニウム等の金属層10と、を有する。
【0013】
図2は、金属層10の一例を示す図である。金属層10の基板と対向する面には、光の波長程度の間隔dで、凹凸形状が周期的に形成されている。金属層10は、周期dの周期構造を有する。この凹凸形状が繰り返し形成される方向を周期方向と称する。
【0014】
図2(a)に示すように、金属層10の基板15と接していない面に周期構造が形成されており、かつ一方向(
図2(a)ではx方向)に周期的に凹凸形状が形成された周期構造を一次元周期構造と呼ぶ。この場合、周期方向は、x方向となる。
【0015】
図2(b)に示すように、金属層10の基板15と接していない面に周期構造が形成されており、かつ二方向(
図2(b)ではx、y方向)に周期的に凹凸形状が形成された周期構造を二次元周期構造と呼ぶ。この場合、周期方向は、x方向及びy方向となる。
【0016】
図2(c)に示すように、金属層10が、
図2(a)、(b)より薄い、例えば数nm〜数十nmの金属薄膜で形成されている場合に、金属層10の基板15と接する面及びこれに対向する面の両面に周期構造が形成されており、かつ一方向(
図2(c)ではx方向)に周期的に凹凸形状が形成された周期構造を一次元薄膜周期構造と呼ぶ。この場合、周期方向は、x方向となる。
【0017】
図2(d)に示すように、金属層10が、
図2(a)、(b)より薄い、例えば数nm〜数十nmの金属薄膜で形成されている場合に、金属層10の基板15と接する面及びこれに対向する面の両面に周期構造が形成されており、かつ二方向(
図2(d)ではx、y方向)に周期的に凹凸形状が形成された周期構造を二次元薄膜周期構造と呼ぶ。この場合、周期方向は、x方向及びy方向となる。
【0018】
なお、
図2(c)、(d)では、金属層10の両面に周期構造を形成しているが、基板15と対向する片面のみに周期構造を形成してもよい。
【0019】
このように、凹凸形状が繰り返し形成される方向によって、金属層10の表面には複数の周期構造が形成され得る。本実施形態の金属層10は、上述したどの周期構造を有していてもよいが、ここではx方向を周期方向とする一次元周期構造を有するものとして説明する。
【0020】
図3に示すように、反射板11は、金属層10の周期方向(x方向)と、光源12から出射される入射光が入射する面S1(以下、入射面S1と呼ぶ。詳細は後述。)と、が直交しないように斜めに配置される。このように、入射面S1と周期方向とが直交しないような反射板11の配置をコニカルマウントと呼ぶ。入射面S1と周期方向とのなす角を方位角φと呼ぶ。本実施形態の反射板11は、φ≠0°,90°となるように配置される。入射光と0次回折光(以下、反射光と呼ぶ)の波数ベクトルは、入射面内に存在する。
【0021】
図1に戻る。
反射板11の上には屈折率nの測定対象となる試料16や、試料16の屈折率n測定の基準となる基準物質等が配置される。
【0022】
光源12は、例えば半導体レーザや発光ダイオードなどの受光素子で構成される。光源12からはp波を有する入射光が照射される。光源12は、入射光を照射する角度θ(以下、入射角θと呼ぶ。
図3を参照。)を変化させながら入射光を照射する。光源12には、入射角θを変動させるために必要な駆動装置(図示せず)を含む。なお、図示しない駆動装置以外にも、例えばレーザダイオードアレイを用いるなどして光学的に入射角度を変化させてもよい。
【0023】
受光部13は、例えばフォトダイオードなどで構成される。受光部13は、p波及びs波を有する反射光を受光する。受光部13は、入射光の入射角θの変動に連動して反射光を受光するための駆動装置を含む。なお、受光部13もフォトダイオードアレイを用いるなどして光学的に受光部13の反射光の反射角を変えるようにしてもよい。
【0024】
計測部14は、受光部13が受光した反射光の楕円率を測定し、楕円率の変動を測定する。計測部14は、測定した楕円率の変動から、楕円率がゼロとなる入射角θ
0(以下、吸収角θ
0と称する。)を測定する。計測部14は、反射板11に基準物質が配置された場合の吸収角θ
0と、試料16が配置された場合の吸収角θ’
0との差Δθ
0(=θ’
0−θ
0)から試料16の屈折率nを測定する。
【0025】
次に、試料16の屈折率nを測定する方法を説明する。
図4を用いて、受光部13が受光する反射光について説明する。
図4(a)に示すように、反射光には入射面S1に対して平行なp波成分と、垂直なs波成分とに分けられる。光を進行方向から見るとp波とs波との位相差δに応じて、光の電界ベクトルは、
図4(b)のように楕円状に旋回しているように見える。このとき長軸の長さをa、短軸の長さをbとすると楕円率tanχは、tanχ=b/aで求められる。また、光の電界ベクトルが成す楕円の長軸がx方向に対して成す角を楕円の傾き角ψと呼ぶことにする。
【0026】
p波とs波との位相差δがゼロより小さい、即ちp波に比べs波が遅れている場合、
図5(a)に示すように、光は進行方向から見て楕円状に左旋回している。これを左楕円偏光と呼ぶ。このときの楕円率tanχはゼロより小さくなる。
【0027】
p波とs波との位相差δがゼロ、即ちp波及びs波の位相が同じ場合、
図5(b)に示すように、光は進行方向から見て直線状に振動している。これを直線偏光と呼ぶ。このときの楕円率tanχはゼロとなる。
【0028】
p波とs波との位相差δがゼロより大きい、即ちp波に比べs波が進んでいる場合、
図5(c)に示すように、光は進行方向から見て楕円状に右旋回している。これを右楕円偏光と呼ぶ。このときの楕円率tanχはゼロより大きくなる。
【0029】
このように反射光の楕円率tanχは、p波及びs波の位相に依存している。従って計測部14で反射光の楕円率tanχを測定することでp波及びs波の位相関係を知ることができる。
【0030】
図6に示すように、反射板11をコニカルマウントとした場合、p波の入射光を反射板11に入射すると、p波及びs波の反射光が得られる。
【0031】
次に、
図7を用いて反射板11上に試料16を配置した場合の反射光の楕円率(以下、試料16の楕円率と呼ぶ)の変動を測定する方法について説明する。本実施形態では、入射光の入射角θを変更した場合の試料16の楕円率の変動を計測する。
【0032】
反射板11上に試料16を配置し(S101)、入射角θ、波長λの入射光を光源12から照射する(S102)。光源12は、p波の入射光を照射する。
受光部13は、入射光が試料16を介して反射板11で反射した光(反射光)を受光する(S103)。
【0033】
計測部14は、反射光から反射光の楕円率を測定する(S104)。
光源12は照射する入射光の入射角θを変更し、θ+Δθとする(S105)。
【0034】
楕円率を測定したい範囲の入射角θ全てで楕円率tanχを測定していない場合(S106のno)は、ステップS102に戻る。一方、測定したい入射角θの範囲全てで楕円率tanχを測定した場合(S106のyes)は、試料16の楕円率変動測定を終了する。
【0035】
図8に、計測部14が測定した各入射角θにおける楕円率tanχの変動のシミュレーション結果を示す。
図8は、
図7の楕円率変動測定のフローチャートに従って測定した試料16である空気のtanχ−θ特性曲線を示す図である。ここでは、反射板11としてホログラフィックアルミ格子を用いている。格子の溝の深さをH=72nm、格子の周期dをd=556nm、方位角φをφ=30°、波長λをλ=670nmとし、入射角θを3°<θ<15°の範囲で変化させた。
【0036】
図8に示すように、tanχ−θ特性曲線は、楕円率tanχがゼロとなる吸収角θ
0の前後で正から負へと変化する。
【0037】
次に、
図9に、計測部14が測定した各入射角θにおける位相δ
p、δ
s及び位相差δ
のシミュレーション結果を示す。ここでは、試料16として空気を用い、反射板11としてホログラフィックアルミ格子を用いている。格子の溝の深さをH=72nm、格子の周期dを、d=556nm、方位角φをφ=30°、波長λをλ=670nmとし、入射角
θを10°<θ<15°の範囲で変化させた。
【0038】
図9の実線で示すグラフがp波の位相δ
pの変化を示しており、一点破線で示すグラフがs波の位相δ
sを示している。破線で示すグラフは、p波とs波との位相差δ=δ
s−δ
pを示している。
【0039】
反射光のp波の位相δ
pは、入射角θが13°から14°の範囲で急激に変動し、s波の位相δ
sは滑らかに変動している。
図9のp波の位相δ
pとs波の位相δ
sとが交差する入射角θがp波とs波との位相差δがゼロとなる入射角θであり、楕円率tanχがゼロとなる吸収角θ
0である。反射光の位相差δは、吸収角θ
0の前後で正から負、又は負から正へと変化する。つまり、反射光の楕円率tanχは、吸収角θ
0の前後で正から負、又は負から正へと変化する。従って、tanχを測定することで位相差δがゼロとなる吸収角θ
0を測定することができる。
【0040】
図10は、計測部14が測定した反射率ρのシミュレーション結果を示す図である。破線で示すグラフがp波の反射率ρ
pを示しており、一点破線で示すグラフがs波の反射率
ρ
sを示している。実線で示すグラフは、p波及びs波の反射率ρ
s、ρ
pを合わせた反射光の反射率ρを示している。
【0041】
図10に示すように、反射光の反射率ρが最も小さくなる入射角が吸収角θ
spとなる。一般に反射光の反射率ρを用いて屈折率nの測定を行う表面プラズモンセンサは、入射角を変動させながらp波の反射率ρの変動を測定し、最小点検出を行うことで吸収角θ
spを測定する。一方、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ1では、反射率ρの変動ではなく楕円率tanχの変動を測定し、楕円率tanχがゼロになるゼロ点検出を行うことで吸収角θ
0を測定する。楕円率tanχの吸収角θ
0と反射率ρの吸収角θ
spは、必ずしも同じ値となるわけではないが、非常に近い値となるため本実施形態に係る表面プラズモンセンサ1では、反射率ρの吸収角θ
spではなく楕円率tanχの吸収角θ
0を用いて試料16の屈折率nを測定する。
【0042】
次に、
図11、
図12を用いて本実施形態に係る表面プラズモンセンサ1が高精度に屈折率nを測定できる点について説明する。屈折率nがそれぞれ「1.0002」、「1.0003」、「1.0004」である試料16の反射光の楕円率tanχの入射角特性を
図11に、反射率ρの入射角特性を
図12に示す。
図11、
図12ともにシミュレーション結果を示す図である。なお、
図11、
図12ともに吸収角θ
0、θ
sp付近の入射角特性を拡大して示している。
図11、
図12の実線が屈折率「1.0002」、一点破線が
「1.0003」、破線が「1.0004」の入射角特性を示している。
【0043】
図11では、各屈折率nの入射角特性が略線形となっている。楕円率tanχがゼロになる入射角であるため、楕円率tanχの吸収角θ
0は、各入射角特性のゼロ点検出を行うことで測定できる。ゼロ点検出は容易にかつ高精度に測定できる。
図11の各屈折率nにおける吸収角θ
0は、屈折率「1.0002」で吸収角θ
0=11.349°、屈折率「1.0003」で吸収角θ
0=11.342°、屈折率「1.0004」で吸収角θ
0=11.334°となる。
【0044】
一方、
図12では、各屈折率nの入射角特性が下に凸の緩やかなカーブを描く非線形となっている。反射率ρの吸収角θ
spは、反射率ρが最小となる入射角であるため、各入射角特性の最小点検出を行えば反射率ρの吸収角θ
spは測定できる。しかしながら各屈折率nの差が小さく、かつ入射角特性のQ値が小さい場合、
図12に示すように最小点が重なっているようにみえ、吸収角θ
spを高精度に測定することが難しい。
【0045】
上述したように楕円率tanχの入射角特性は吸収角θ
0付近で略線形となるため、各屈折率nの差が小さくても、その差を吸収角θ
0の差として検出できる。
【0046】
そこで、本実施形態の表面プラズモンセンサ1では、まず試料16として屈折率n
sが既知である基準物質を反射板11上に配置し、
図7に示す手順に従って反射光の楕円率tanχの変動を測定し、吸収角θ
0を測定する。
次に、反射板11に屈折率nを測定したい試料16を配置し、基準物質と同様の手順に従って楕円率tanχがゼロとなる吸収角θ’
0を測定する。
測定した吸収角の差Δθ
0(=θ’
0−θ
0)から基準物質の屈折率n
sと、試料16の屈折率nの差Δn(=n−n
s)を測定する。
【0047】
なお、上述した測定方法では、基準物質の吸収角θ
0を測定しているが、基準物質の屈折率n
s及び吸収角θ
0が既知の場合は測定を省略してもよい。
【0048】
計測部14は、入射角θを反射光の楕円率tanχを測定する毎に光源12から取得してもよく、楕円率tanχがゼロになった時の入射角θを光源12から取得するようにしてもよい。あるいは、計測部14は、入射角θの範囲と入射角の変化分(ステップS105のΔθ)から楕円率tanχを測定した時の入射角を求めるようにしてもよい。このように、計測部14が光源12を制御し上述した屈折率nの測定方法を実行するようにしてもよく、図示しない制御部を設け、制御部によって各部を制御するようにしてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ1は、楕円率tanχの変動、具体的には楕円率tanχがゼロとなる吸収角θ
0から試料16の屈折率nを測定する。楕円率tanχの入射角特性は、吸収角θ
0付近で略線形となるため、楕円率tanχがゼロとなる吸収角θ
0はゼロ点検出を行えば測定できるため、最小点検出のような複雑な検出が不要となり、吸収角θ
0を容易かつ高精度に測定することができる。そのため、例えば気体のように屈折率nの差が微小な物質でも屈折率nを測定することができる。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る表面プラズモンセンサ2を説明する。
図13は表面プラズモンセンサ2の概略を示す図である。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ2は反射板21の金属層20が
図2(c)に示す一次元薄膜周期構造を有している点及び基板25側から入射光を入射している点で
図1の表面プラズモンセンサ1と異なる。
【0051】
反射板21は、シリコン基板のように光を透過する基板25と、一次元薄膜周期構造を有する金属層20とを有する。反射板21は、光源12に近い方から基板25、金属層20との順に積層されており、金属層20の基板25と対向する面上に試料16が配置される。
【0052】
これ以外の構成及び屈折率の測定方法は、第1実施形態に係る表面プラズモンセンサ1と同じであるため説明を省略する。なお、本実施形態の金属層20は、両面に周期構造を有しているが、試料16が配置される面のみに周期構造を有するようにしてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ2は、光源12と反射板21との間に試料16を配置できない場合であっても、第1実施形態と同様に試料16の屈折率nを測定することができる。
【0054】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る表面プラズモンセンサ3を説明する。
図14は、表面プラズモンセンサ3の概略を示す図である。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ3は、入射角θ及び波長λを一定とし、反射板31の方位角φを変動させながら楕円率tanχの変動を測定する点で
図1の表面プラズモンセンサ1と異なる。
【0055】
反射板31は、図示しない駆動装置を有しており、方位角φが変動するよう回転する。
計測部34は、受光部13が受光した反射光の楕円率の変動を測定する。計測部34は、測定した楕円率がゼロとなる方位角φ
0(以下、吸収方位角φ
0と称する。)を測定する。計測部34は、反射板11上に基準物質が配置された場合の吸収方位角φ
0と、試料16が配置された場合の吸収方位角φ’
0との差Δφ
0(=φ’
0−φ
0)から試料16と基準物質との屈折率の差Δnを測定する。
そのほかの構成は
図1に示す表面プラズモンセンサ1と同様であるため説明を省略する。
【0056】
図15を用いて反射板31の方位角φを変化させる場合の反射光の楕円率tanχの変動を測定する方法を説明する。ステップS104までは
図7と同じであるため説明を省略する。
【0057】
反射光から楕円率tanχを測定すると、反射板31は方位角φを変更し、φ+Δφとする(S305)。楕円率の変動を測定する全ての方位角φで楕円率tanχを測定していない場合(S306のno)は、ステップS102に戻る。一方、全ての方位角φで楕円率tanχを測定した場合(S306のyes)は、試料16の測定を終了する。
【0058】
図16を用いて本実施形態に係る表面プラズモンセンサ3が屈折率nを測定できる点について説明する。
図16に、屈折率nがそれぞれ「1.0003」、「1.00039」
、「1.0001」である試料16における反射光の楕円率tanχの方位角特性を示す。実線が屈折率「1.0001」、破線が「1.0003」、一点鎖線が「1.00039」の方位角特性を示している。なお、
図16では、入射角θをθ=11.3°とし、波長
λをλ=670nmとした場合の空気の楕円率tanχの変動を計測したシミュレーション結果を示している。
【0059】
図16では、各屈折率nの方位角特性が略線形となっている。そのため、第1実施形態の入射角特性と同様に方位角特性を用いても楕円率tanχがゼロとなる吸収方位角φ
0を容易にかつ高精度に測定することができる。
【0060】
本実施形態に係る表面プラズモンセンサ3では、まず、屈折率n
sが既知である基準物質を反射板31上に配置し、
図15に示す手順に従い方位角を変化させた場合の楕円率tanχの変動を測定し、楕円率tanχがゼロとなる吸収方位角φ
0を測定する。
次に、反射板31に屈折率nを測定したい試料16を配置し、基準物質と同様の手順に従って楕円率tanχがゼロとなる吸収方位角φ’
0を測定する。
測定した吸収方位角の差Δφ
0(=φ’
0−φ
0)から基準物質の屈折率n
sと、試料16の屈折率nの差Δn(=n−n
s)を測定する。
【0061】
なお、上述した測定方法では、基準物質の吸収方位角φ
0を測定しているが、基準物質の屈折率n
s及び吸収方位角φ
0が既知の場合は測定を省略してもよい。
【0062】
計測部34は、反射板31の方位角φを、反射光の楕円率tanχを測定する毎に反射板31から取得してもよく、楕円率tanχがゼロになった時の方位角φを反射板31から取得するようにしてもよい。あるいは、計測部34は、方位角φの範囲と方位角φの変化分(ステップS305のΔφ)から楕円率tanχを測定した時の方位角φを求めるようにしてもよい。このように、計測部34が反射板31を制御し上述した屈折率nの測定方法を実行するようにしてもよく、図示しない制御部を設け、該制御部によって各部を制御するようにしてもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ3によると、入射角θを一定としても方位角φを変動させると楕円率が変動するため、入射角θを変動させずに試料16の屈折率nを容易にかつ高精度に測定することができる。
【0064】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る表面プラズモンセンサ4を説明する。
図17は、表面プラズモンセンサ4の概略を示す図である。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ4は、入射角θ及び方位角φを一定とし、入射光の波長λを変動させながら楕円率tanχの変動を測定する点で
図1の表面プラズモンセンサ1と異なる。
【0065】
光源42は、例えば半導体レーザで構成される。半導体レーザは、図示しない制御部から制御信号が入力されることで、入射光の波長を変更することが可能である。光源42が該制御部を備える構成としてもよい。光源42は、入射光の波長λを変化させながら入射光を照射する。
【0066】
計測部44は、受光部13が受光した反射光の楕円率の変動を測定する。計測部44は、測定した楕円率がゼロとなる波長λ
0(以下、吸収波長λ
0と称する。)を測定する。計測部44は、反射板11上に基準物質が配置された場合の吸収波長λ
0と、試料16が配置された場合の吸収波長λ’
0との差Δλ
0(=λ’
0−λ
0)から試料16と基準物質との屈折率の差Δnを測定する。
そのほかの構成は
図1に示す表面プラズモンセンサ1と同様であるため説明を省略する。
【0067】
図18を用いて入射光の波長λを変化させる場合の反射光の楕円率tanχの変動を測定する方法を説明する。ステップS104までは
図7と同じであるため説明を省略する。
【0068】
反射光から楕円率tanχを測定すると、光源42は照射する波長λを変更し、λ+Δλとする(S405)。楕円率の変動を測定する全ての波長で楕円率tanχを測定していない場合(S406のno)は、ステップS102に戻る。一方、全ての波長で楕円率tanχを測定した場合(S406のyes)は、試料16の測定を終了する。
【0069】
図19を用いて本実施形態に係る表面プラズモンセンサ4が屈折率nを測定できる点について説明する。
図19に、屈折率nがそれぞれ「1.0003」、「1.00039」、「1.0001」である試料16における反射光の楕円率tanχの波長特性を示す。破線が屈折率「1.0001」、実線が「1.0003」、一点破線が「1.00039」の波長特性を示している。
図19では、入射角θをθ=11.193°とし、方位角φをφ=5°とした場合の空気の楕円率tanχの変動を計測したシミュレーション結果を示している。
【0070】
図19では、各屈折率nの波長特性が略線形となっている。そのため、第1実施形態の入射角特性と同様に波長特性を用いても楕円率tanχがゼロとなる吸収波長λ
0を容易にかつ高精度に測定することができる。
【0071】
本実施形態に係る表面プラズモンセンサ4では、まず、屈折率n
sが既知である基準物質を反射板11上に配置し、
図18に示す手順に従い波長を変化させた場合の楕円率tanχの変動を測定し、楕円率tanχがゼロとなる吸収波長λ
0を測定する。
次に、反射板11に屈折率nを測定したい試料16を配置し、基準物質と同様の手順に従って楕円率tanχがゼロとなる吸収波長λ’
0を測定する。
測定した吸収波長の差Δλ
0(=λ’
0−λ
0)から基準物質の屈折率n
sと、試料16の屈折率nの差Δn(=n−n
s)を測定する。
【0072】
なお、上述した測定方法では、基準物質の吸収波長λ
0を測定しているが、基準物質の屈折率n
s及び吸収波長λ
0が既知の場合は測定を省略してもよい。
【0073】
計測部44は、入射光の波長λを、反射光の楕円率tanχを測定する毎に光源42から取得してもよく、楕円率tanχがゼロになった時の波長λを光源42から取得するようにしてもよい。あるいは、計測部44は、波長λの範囲と波長λの変化分(ステップS405のΔλ)から楕円率tanχを測定した時の波長λを求めるようにしてもよい。このように、計測部44が光源42を制御し上述した屈折率nの測定方法を実行するようにしてもよく、図示しない制御部を設け、該制御部によって各部を制御するようにしてもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ4によると、入射角θを一定としても波長λを変動させると楕円率が変動するため、入射角θを変動させずに試料16の屈折率nを容易にかつ高精度に測定することができる。入射角θを変動させる必要がないため、光源42に駆動装置が不要となり、表面プラズモンセンサ4を小型化することができる。
【0075】
(第5実施形態)
図20を用いて第5実施形態に係る表面プラズモンセンサ5を説明する。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ5は、計測部54が計測する楕円率tanχに基づいて光源52が照射する入射光の波長λを制御する制御部57を備える。
【0076】
光源52は、制御部57から入力される制御信号に基づき、半導体レーザ(図示せず)を制御し、波長λの入射光を照射する。計測部54は、受光部13が受光した反射光から楕円率tanχを測定する。計測部54は、楕円率tanχを制御部57に出力する。
【0077】
制御部57は、計測部54から入力された楕円率tanχに基づき、光源52から楕円率tanχがゼロとなる波長λの入射光が照射されるように制御信号を生成する。制御部57は、制御信号を光源52に出力する。なお計測部54から制御部57に入力される情報は、楕円率tanχそのものでなくとも、制御部57が楕円率tanχがゼロか否かを識別することができる情報であればよい。計測部54から制御部57に対しては、例えばp波とs波との位相差δやどちらの位相が進んでいるのかといった情報を入力してもよい。
【0078】
図21を用いて本実施形態における楕円率tanχの変動を測定する方法を説明する。ステップS104までは
図7と同じであるため説明を省略する。
【0079】
計測部54は、楕円率tanχを測定(ステップS104)し、制御部57に測定した楕円率tanχを出力する。
制御部57は、楕円率tanχがゼロでない場合(ステップS506のno)、波長λを変更しλ+Δλとなるよう制御信号を生成する(ステップS507)。制御部57は、制御信号を光源52に渡すとステップS102に戻る。一方、楕円率がゼロの場合(ステップS506のyes)、楕円率変動測定を終了する。
【0080】
図19に示すように、吸収波長λ
0付近の楕円率tanχの波長特性が、正の傾きを持つ略線形となっている場合に、ステップS507で波長λを変更するときは、楕円率tanχが正の場合は波長λを短くするように、負の場合は長くするように変更してもよい。なお、楕円率tanχの波長特性は、吸収波長λ
0付近で負の傾きを持つ略線形となる場合もある。この場合は、楕円率tanχが負の場合は波長λを短くするように、正の場合は長くするように変更すればよい。
【0081】
このように楕円率tanχに応じて波長λを変更することで楕円率変動測定の繰り返しステップ数を短くすることができる。
【0082】
本実施形態に係る表面プラズモンセンサ5では、まず、屈折率n
sが既知である基準物質を反射板11上に配置し、
図21に示す手順に従い波長を変化させた場合の楕円率tanχの変動を測定し、楕円率tanχがゼロとなる吸収波長λ
0を測定する。
次に、反射板11に屈折率nを測定したい試料16を配置し、基準物質と同様の手順に従って楕円率tanχがゼロとなる吸収波長λ’
0を測定する。吸収波長λ
0、λ’
0から第4実施形態と同様に試料16の屈折率nを測定する。
【0083】
なお、屈折率nの測定は、第4実施形態と同様に計測部54が行ってもよく、また制御部57が行ってもよい。制御部57が計測部54の機能を備えるように構成し、計測部54を省略してもよい。
【0084】
以上のように、第5実施形態に係る表面プラズモンセンサ5によれば、計測部54が楕円率tanχをフィードバックすることにより、測定した楕円率tanχに応じて光源52の波長λを変更できるようになる。これにより、吸収波長λ
0の測定を短時間で行うことができるようになり、試料16の屈折率測定時間を短縮することができる。
【0085】
なお、ここでは測定した楕円率tanχに応じて光源52の波長λを変更しているが、波長λの代わりに入射角θを変更し、吸収角θ
0を測定するようにしてもよく、方位角φを変更し、吸収方位角φ
0を測定するようにしてもよい。なお、方位角φを変更する場合、制御部57は、光源52ではなく反射板11を制御する。
【0086】
(第6実施形態)
図22を用いて第6実施形態に係る表面プラズモンセンサ6を説明する。
本実施形態に係る表面プラズモンセンサ6は、計測部64での屈折率nの測定方法が第4実施形態に係る表面プラズモンセンサ5と異なる。それ以外の構成は同じであるため説明は省略する。
【0087】
まず、基準物質の吸収波長λ
0を測定する。これは第5実施形態と同様に測定するので説明を省略する。次に、屈折率nを測定したい試料16を反射板11上に配置し、光源52から波長λが基準物質の吸収波長λ
0である入射光を照射する。計測部64は、受光部13が受光した反射光の楕円率tanχを測定する。
【0088】
図23に示すように、反射板11上に配置した試料16の屈折率がn
sからn
s+Δnに変化すると、楕円率tanχの入射角特性もθ+Δθ変化する。第1実施形態のように、楕円率tanχがゼロになる吸収角θ
0の変化Δθを測定することで、屈折率n
sの変化Δnを計測してもよいが、一定の波長λ
0及び入射角θ
0における楕円率tanχの変化(
図23中の矢印)を測定することで、屈折率n
sの変化Δnを計測してもよい。ただし、試料16の楕円率tanχは、楕円率tanχの入射角特性の直線部分であるtanΧ
−からtanΧ
+の範囲にあるものとする。
【0089】
そこで、本実施形態では、計測部64は、一定の入射角θで基準物質の楕円率tanχがゼロとなる波長λ
0を測定し、該入射角θ及び波長λ
0で試料16の楕円率tanΧを測定する。計測部64は、測定した試料16の楕円率tanΧから試料16の屈折率nの変化Δnを測定する。
【0090】
なお、ここでは入射角を一定とし、波長λを変化させることで基準物質の楕円率tanχがゼロとなる波長λ
0を測定したが、波長を一定とし、入射角θを変化させることで、基準物質の楕円率tanχがゼロとなる入射角θ
0及び波長λで試料16の楕円率tanχを測定してもよい。また、波長λ、入射角θを一定とし、方位角φを変化させることで基準物質の楕円率tanχがゼロとなる入射角θ及び方位角φ
0で試料16の楕円率tanχを測定してもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ6では、試料16の屈折率変化に伴う楕円率tanχの入射角特性の直線部分の変化を利用して試料16の屈折率nを測定するため、試料16の楕円率測定回数が1回で済む。これにより、計測時間を大幅に短縮することができる。また、
図23に示すように、楕円率tanχの入射角特性は楕円率tanχがゼロとなる付近で急峻となるため、屈折率のわずかな差が楕円率tanχの大きな変化となって現れやすい。従って、例えば気体のような屈折率nの差が小さい物質であってもより高精度に屈折率nを測定することができる。
【0092】
また、屈折率nを測定したい試料16の楕円率tanχの測定回数が1回で済むため、実験の再現性が良くなり、試料気体の違いによりtanχの値が変わるため、さらに高精度に屈折率nを測定することができる。
【0093】
(第7実施形態)
図24を用いて第7実施形態に係る表面プラズモンセンサ7を説明する。
本実施形態に係る表面プラズモンセンサ7は、反射板71を調整することで屈折率nの測定感度を向上させている点で表面プラズモンセンサ1と異なる。それ以外の構成は同じであるため説明を省略する。
【0094】
図25に、反射板71の方位角φ及び格子の溝の形状(ここでは、溝の深さH)を変化させた場合の楕円率tanχの入射角特性を示す。
図25は、試料16として空気を用いた場合のシミュレーション結果を示す図である。楕円率tanχの変動を測定する方法は、
図7と同じである。
【0095】
図25に示すように、反射板71の方位角φ及び溝の形状(ここでは溝の深さH)を変化させることで、吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きが変化していることがわかる。吸収角θ
0は楕円率tanχの傾きが大きい方が高精度に求まる。そこで、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ7では、反射板71の方位角φ及び溝の形状(例えば溝の深さH)を調整することで、吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きが最も大きくなるようにして楕円率tanχの変動を測定する。
【0096】
反射板71の調整方法としては、反射板71の方位角φ及び溝の形状を変化させながら楕円率tanχの入射角特性を測定し、吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きが最も大きくなる反射板71の方位角φ及び溝の形状を決定してもよい。
【0097】
また、吸収角θ
0の前後で反射光のp波とs波の位相差δを±90°,反射率を同じ(ρ
s=ρ
p)になるように溝の形状と方位角φを選べば、楕円率tanχが±1に近づき、楕円率tanχの吸収角θ
0の前後の傾きが大きくなる。従って、溝の形状と方位角φを変化させながら、反射光のp波とs波の位相差δや反射率を測定し、吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きが最も大きくなる反射板71の方位角φ及び溝の形状を決定してもよい。なお、反射板71の調整は、屈折率nを測定する前に1度行えば十分である。
【0098】
以上のように、本実施形態に係る表面プラズモンセンサ7は、屈折率nを測定する前に反射板71を調整することで、吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きを大きくすることができる。これにより、吸収角θ
0を高精度に測定することができ、屈折率nの測定感度を向上させることができる。
【0099】
ここでは、表面プラズモンセンサ1の反射板を調整するようにしているが、表面プラズモンセンサ2、4〜6の反射板を同様に調整することで屈折率nの測定感度を向上させるようにしてもよい。また、表面プラズモンセンサ3の反射板の溝の形状を調整し吸収角θ
0付近の楕円率tanχの傾きを大きくし、吸収角θ
0の測定感度を向上させるようにしてもよい。
【0100】
(第8実施形態):
本発明の第8実施形態に係る表面プラズモンセンサ8を説明する。
図26は、表面プラズモンセンサ8の概略を示す図である。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ8は、上述した楕円率tanχ算出の元となる位相情報に基づいて屈折率を測定する点で上述した各実施形態に係る表面プラズモンセンサと異なる。
【0101】
上述した
図9を参照して説明したように、反射光のp波の位相δ
p及びs波の位相δ
sは、吸収角θ
0の前後で正から負、又は負から正へと変化し、反射光の位相差δも、吸収角θ
0の前後で正から負、又は負から正へと変化する。上述した例では、この特性を利用して吸収角θ
0を測定するにあたり、楕円率tanχを測定することで位相差δがゼロとなる入射角を吸収角θ
0に特定していた。
【0102】
これに対し、本第8実施形態では、偏光板を用いることで反射光のp波とs波の位相差δに相当する値を測定し、位相差δがゼロとなる入射角(吸収角θ
0)を測定することができる。これにより、楕円率tanχの測定を行わずに吸収角θ
0を特定し、ひいては屈折率nを特定することができる。すなわち、楕円率tanχを測定するポラリメータ等の機器が不要となる。
【0103】
図26において、表面プラズモンセンサ8は、スプリッタ87と、偏光板88a,88bと、2つの受光部83a,83bを備えている。なお、その他の構成は
図1に示す表面プラズモンセンサ1と同様であるため説明を省略する。
スプリッタ87は、反射板11が反射する反射光の経路上に配置されており、反射光の光束を2つに分割し、一方の光束を受光部83aへ入射させ、他方の光束を受光部83bへ入射させる。
【0104】
偏光板88aは、スプリッタ87にて分割された一方の光束の経路上に配置されており、この光束の中の特定方向に偏光した成分を選択的に通過させる。偏光板88bは、スプリッタ87にて分割された他方の光束の経路上に配置されており、この光束の中の特定方向に偏光した成分を選択的に通過させる。これにより、受光部83a,83bは、特定方向に偏光した反射光をそれぞれ受光する。
【0105】
偏光板88aと偏光板88bは、異なる方向に偏光した成分を通過させるように透過軸の方向を調整されている。例えば、後述の
図28や
図30に示す例では、偏光板88aは、反射光の楕円の傾き角ψと同じ向きに偏光した光を選択的に通過させるように調整し、偏光板88bは、反射光の楕円の傾き角ψと直交する向きに偏光した光を選択的に通過させるように調整する。このように、楕円の傾き角が90°異なる光を各偏光板が選択的に通過することで、反射光の位相差δの増減を測定することができる。
【0106】
換言すると、偏光板88a,88bの少なくとも一方が、反射光の楕円の傾き角ψの向きと直交する方向に偏光した光の一部を通過可能に調整されていればよい。これにより、少なくとも一方の受光部が反射光の位相差δの増減傾向を測定することとなり、計測部84は、位相差δが0になる吸収角θ
0を測定することができる。
【0107】
計測部84は、偏光板88a,88bを介して受光部83a,83bが受光した反射光の強度変動を測定する。そして、計測部84は、反射光の強度変動に基づいて吸収角θ
0を測定することができる。
【0108】
ここで、本実施形態における吸収角θ
0の測定方法について説明する。
図27は、入射角θと楕円の傾き角ψの関係を示す図である。同図には、各入射角θにおける楕円の傾き角ψの変動をシミュレーションした結果を示してある。ここでは、反射板11としてホログラフィックアルミ格子を用いている。格子の溝の深さをH=72nm、格子の周期dをd=556nm、方位角φをφ=30°、波長λをλ=670nmとし、入射角θを3°<θ<15°の範囲で変化させた。同図に示すように、楕円の傾き角ψは吸収角θ
0を中心とするピークを有している。
【0109】
同図において、θ
1は楕円の傾き角ψ=30°における入射角を表し、θ
2は楕円の傾き角ψ=70°における入射角を表す。入射角θ
1,θ
2は吸収角θ
0からずれているが、吸収角θ
0から数°の範囲内にある。
【0110】
図28は、入射光の楕円の傾き角ψを30°として計測部84が測定した受光強度を示すシミュレーション結果を示す図である。ここでは、反射板11としてホログラフィックアルミ格子を用いている。格子の溝の深さをH=72nm、格子の周期dをd=556nm、方位角φをφ=30°、波長λをλ=670nmとし、入射角θを3°<θ<15°の範囲で変化させた。同図において、受光部83aの受光強度Eaを一点鎖線で示し、受光部83bの受光強度Ebを二点鎖線で示し、受光強度の差分Ea−Ebを点線で示してある。
【0111】
受光強度Ea,Ebや差分Ea−Ebは、入射角θ
1を略中心とする所定範囲において線形的に変化している。そこで、この所定範囲における線形的な変化を基準試料にて測定、又はシミュレーションし、その測定結果又はシミュレーション結果を校正データとして用いることにより、屈折率nの変動に伴う入射角θ
1の変動を測定することができる。
【0112】
図29は、本実施形態に係る屈折率nの測定手順を示すフローチャートである。同図に示す測定方法においては、反射板11上に試料16を配置した場合の試料16からの反射光の強度(以下、反射光強度Iと呼ぶ。)の変動を測定する。
【0113】
まず、反射板11上に試料16を配置し(S201)、入射角θ、波長λの入射光を光源12から照射する(S202)。ここでは、光源12は、p波の入射光を照射する。この入射光の入射角θは、上述した入射角θ
1を略中心とする所定範囲内の角度である。
受光部83a,83bは、入射光が試料16を介して反射板11にて反射された反射光を受光する(S203)。
【0114】
計測部84は、反射光から反射光強度Iを測定する(S204)。
このようにして測定された反射光強度Iに基づいて、計測部84は、上述した校正データを参照しつつ反射光強度Iの校正データからの変動量ΔIを特定する。そして、計測部84は、変動量ΔIに基づいて基準物質の屈折率n
sと試料16の屈折率の差Δn(=n−n
s)を測定する。
【0115】
なお、入射光の楕円の傾き角ψは30°に限るものではなく、楕円の傾き角ψの取り得る角度の範囲内であれば様々に設定することができる。例えば、
図30は、入射光の楕円の傾き角ψを70°として計測部84が測定した受光強度を示すシミュレーション結果を示す図である。ここでは、反射板11としてホログラフィックアルミ格子を用いている。格子の溝の深さをH=72nm、格子の周期dをd=556nm、方位角φをφ=30°、波長λをλ=670nmとし、入射角θを3°<θ<15°の範囲で変化させた。
【0116】
図30において、受光部83aの受光強度Eaを一点鎖線で示し、受光部83bの受光強度Ebを二点鎖線で示し、受光強度の差分Ea−Ebを点線で示してある。同図においても、受光強度Ea,Ebや差分Ea−Ebは、入射角θ
2を略中心とする所定範囲において線形的に変化しているため、この所定範囲の校正データを用いることにより入射角θ
2の変動を測定することができる。
【0117】
以上のように、第8実施形態に係る表面プラズモンセンサ8は、偏光板を用いて得られる位相差δに相当する値を用いて屈折率nを測定することができる。すなわち、楕円率tanχの測定が不要であるため、ポラリメータ等のように楕円率tanχを測定する高価且つ複雑な機器を用いること無く、屈折率nを測定することができる。
【0118】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態に係る表面プラズモンセンサ9を説明する。
図31は、表面プラズモンセンサ9の概略を示す図である。本実施形態に係る表面プラズモンセンサ9は、スプリッタを備えず、偏光板と受光部を1つずつ備える点で、上述した第8実施形態に係る表面プラズモンセンサ8と異なる。
【0119】
図31において、表面プラズモンセンサ9は、偏光板98と受光部93を備える。偏光板98は、反射光の経路上に配置されており、この反射光の中の特定方向に偏光した成分を選択的に通過させる。偏光板98は、これにより、受光部93は、特定方向に偏光した反射光を受光する。
【0120】
計測部94は、偏光板98を介して受光部93が受光した反射光の強度変動を測定することができる。そして、計測部94は、反射光の強度変動に基づいて入射角(吸収角θ
0)を測定することができる。そのほかの構成は
図26に示す表面プラズモンセンサ8と同様であるため説明を省略する。また、屈折率nの測定方法も、第8実施形態における受光強度Ea,Ebに基づく屈折率の測定方法と同様であるため、説明を省略する。
【0121】
以上のように、第9実施形態に係る表面プラズモンセンサ9は、1組の偏光板と受光部を用いて位相差δに相当する値を取得して屈折率nを測定することができる。
【0122】
なお、第3〜第9実施形態に係る表面プラズモンセンサ3〜9の反射板を、第2実施形態と同様に基板25側から入射光が入射されるように構成するようにしてもよい。
【0123】
また、第1〜第7実施形態において、楕円率tanχの代わりに第8,9実施形態のように偏光板を用いて反射光の位相差δに相当する値を測定することにより測定した吸収角θ
0や吸収方位角φ
0、吸収波長λ
0を用いて屈折率nを測定することもできる。
【0124】
最後に、上述した各実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。