(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900971
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】経皮吸収促進剤及びそれを含有する経皮吸収型製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/423 20060101AFI20160324BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20160324BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20160324BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20160324BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160324BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20160324BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20160324BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20160324BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20160324BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20160324BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20160324BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20160324BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
A61K31/423
A61K47/12
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/08
A61K47/34
A61K47/14
A61K47/32
A61K31/496
A61K31/4375
A61K9/70 401
A61P25/18
A61P25/16
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-555939(P2012-555939)
(86)(22)【出願日】2012年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2012052313
(87)【国際公開番号】WO2012105625
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-21196(P2011-21196)
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】大日本住友製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】前田 弘雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 和充
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅康
【審査官】
磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−120912(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/013611(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/016219(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/142295(WO,A1)
【文献】
特開平08−291052(JP,A)
【文献】
特表2010−532390(JP,A)
【文献】
特表2009−507076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/423
A61K 47/12
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/107
A61K 9/70
A61K 31/4375
A61K 31/496
A61K 47/14
A61K 47/32
A61K 47/34
A61P 25/16
A61P 25/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性低分子薬物、及び経皮吸収促進剤を含有する経皮吸収型製剤であって、
塩基性低分子薬物が、ペロスピロン、5−(3−メトキシフェニル)−3−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン、またはゾニサミドであり、
経皮吸収促進剤が(i)乳酸、並びに(ii)α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリルアルコール、セバシン酸ジエチル、及びオレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、経皮吸収型製剤。
【請求項2】
添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール、及びアジピン酸ジイソプロピルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項3】
添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、またはラウロマクロゴールを含む、請求項1または2に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項4】
添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテルを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項5】
添加剤が、ラウロマクロゴールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項6】
乳酸1重量部に対して、添加剤を総量として0.1〜30重量部の割合で含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項7】
剤型が、貼付製剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、またはローション剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項8】
剤型が、貼付製剤である、請求項7に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項9】
支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤であって、該粘着剤層が、(1)経皮吸収促進剤、(2)塩基性低分子薬物、及び(3)粘着剤を含有する、請求項8に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項10】
粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン粘着剤から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項11】
粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む、請求項10に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項12】
アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10または11に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項13】
粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む、請求項10または11に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項14】
ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10または13に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項15】
塩基性低分子薬物が、ペロスピロンである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項16】
塩基性低分子薬物が、5−(3−メトキシフェニル)−3−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジンである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項17】
塩基性低分子薬物が、ゾニサミドである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項18】
経皮吸収促進剤の配合量が、粘着剤層全量に対して、0.01〜50重量%である、請求項9〜17のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項19】
塩基性低分子薬物の配合量が、粘着剤層全量に対して、0.1〜40重量%である、請求項9〜18のいずれか一項に記載の経皮吸収型製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収促進剤に関する。具体的には、乳酸及び特定の添加剤を配合した経皮吸収促進剤、並びにそれを含有する経皮吸収型製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬物の経皮投与は、経口投与に比較して、より持続的に血中薬物濃度を維持することができ、また、初回通過効果を回避するため、肝臓における代謝を低減することや薬物相互作用の低減ができることから、有用である。また、経皮吸収型製剤、特に貼付製剤による投与では、食事の影響を受けないことや、嚥下困難な患者への投与が可能であること、投薬の確認、及び中断が容易であること等、多くの優れた点がある。
【0003】
しかし、皮膚は、外部からの異物の侵入を防ぐバリアの働きを有しているため、単に薬物を皮膚に塗布、又は貼付しても、薬効を生じる必要且つ十分な量の薬物を体内に送り込むことは難しい。このため、一般的に、薬物の皮膚透過を促進することを目的とする添加剤、すなわち、経皮吸収促進剤、を製剤中に配合して薬物を投与することにより薬効を発現させる方法が行われている。経皮吸収促進剤の例として、例えば、添加剤を複数組み合わせることによる薬物の皮膚透過性の向上の方法が提案され、ジグリセリンと低分子ベタインの組み合わせが知られている(特許文献1)。また、特定の化合物に対する乳酸による経皮吸収性の向上は知られているが(特許文献2)、皮膚透過性を向上する乳酸と組み合わせる好ましい添加剤は具体的に知られていない。このような背景下、薬物の種類に依らず、安全で使用性に優れ、且つ効果の高い経皮吸収促進剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336134号公報
【特許文献2】国際公開第2007/142295号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薬物の皮膚透過を顕著に向上することができる経皮吸収促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、皮膚透過を促進する組成を鋭意検討した結果、乳酸と特定の添加剤とを組み合わせることによって、薬物の皮膚透過促進において相乗効果が奏されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1](i)乳酸、並びに(ii)α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリルアルコール、セバシン酸ジエチル、及びオレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する経皮吸収促進剤。
[2]添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール、及びアジピン酸ジイソプロピルからなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]に記載の経皮吸収促進剤。
[3]添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、またはラウロマクロゴールを含む上記[1]または[2]に記載の経皮吸収促進剤。
[4]添加剤が、α-モノイソステアリルグリセリルエーテルを含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
[5]添加剤が、ラウロマクロゴールを含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
[6]乳酸1重量部に対して、添加剤を総量として0.1〜30重量部の割合で含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
[7]塩基性低分子薬物(ただし、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン、または(3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イルメチル]シクロヘキシルメチル}ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−1,3−ジオン、或いはその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)、及び上記[1]〜[6]のいずれかに記載の経皮吸収促進剤を含有する経皮吸収型製剤。
[8]経皮吸収促進剤が、(i)乳酸、(ii)α-モノイソステアリルグリセリルエーテル、及び(iii)ラウロマクロゴールからなる上記[7]に記載の経皮吸収型製剤。
[9]経皮吸収促進剤が、(i)乳酸、及び(ii)α-モノイソステアリルグリセリルエーテルからなる上記[7]に記載の経皮吸収型製剤。
[10]経皮吸収促進剤が、(i)乳酸、及び(ii)ラウロマクロゴールからなる上記[7]に記載の経皮吸収型製剤。
[11]経皮吸収促進剤が、(i)乳酸、及び(ii)アジピン酸ジイソプロピルからなる上記[7]に記載の経皮吸収型製剤。
[12]剤型が、貼付製剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、またはローション剤である上記[7]〜[11]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[13]剤型が、貼付製剤である上記[12]に記載の経皮吸収型製剤。
[14]支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付製剤であって、該粘着剤層が、(1)上記[1]〜[6]のいずれかに記載の経皮吸収促進剤、(2)塩基性低分子薬物、及び(3)粘着剤を含有する上記[13]に記載の経皮吸収型製剤。
[15]粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン粘着剤から選択される少なくとも1種である上記[14]に記載の経皮吸収型製剤。
[16]粘着剤が、アクリル系粘着剤を含む上記[15]に記載の経皮吸収型製剤。
[17]アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である上記[15]または[16]に記載の経皮吸収型製剤。
[18]粘着剤が、ゴム系粘着剤を含む上記[15]または[16]に記載の経皮吸収型製剤。
[19]ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である上記[15]または[18]に記載の経皮吸収型製剤。
[20]塩基性低分子薬物が、ペロスピロン、5−(3−メトキシフェニル)−3−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン、またはゾニサミドである上記[7]〜[19]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[21]乳酸1重量部に対して、添加剤を総量として0.1〜30重量部の割合で含む上記[7]〜[20]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[22]ゾニサミド、乳酸、並びに、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル及びラウロマクロゴールからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する経皮吸収型製剤。
[23]ゾニサミド、乳酸及びα-モノイソステアリルグリセリルエーテルを含有する経皮吸収型製剤。
[24]ゾニサミド、乳酸及びラウロマクロゴールを含有する経皮吸収型製剤。
[25]乳酸1重量部に対して、添加剤を総量として0.1〜30重量部の割合で含む上記[22]〜[24]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の経皮吸収促進剤は、薬物の皮膚透過性を促進させるものであり、これにより、医療現場で必要とされる塩基性低分子薬物を薬物として含有する経皮吸収型製剤の提供において、製剤の小型化、塗布面積や塗布必要量の低減、投与終了後の製剤中に残存する薬物の低減等、医療における使用性、安全性、及び経済性の向上に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(1)経皮吸収促進剤
本発明の経皮吸収促進剤は、(i)乳酸と(ii)特定の添加剤との組み合わせからなり、該剤における両者の比率は、乳酸1重量部に対し、特定の添加剤0.1〜30重量部が通常であるが、好ましくは、0.5〜12重量部である。該経皮吸収促進剤は、例えば、両者を混合することで製造することができる。
【0011】
(i)乳酸
乳酸は、ラセミ体であるDL−乳酸であってもよく、光学活性体であるL−乳酸又はD−乳酸であってもよい。本明細書でいう乳酸は、これらのいずれであってもよい。
【0012】
(ii)特定の添加剤
本発明において、乳酸と特定の添加剤の組み合わせによる皮膚透過促進に対する相乗効果を見出した。
【0013】
本発明に用いられる好適な特定の添加剤としては、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリルアルコール、オレイン酸、及びセバシン酸ジエチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、特にα-モノイソステアリルグリセリルエーテル、ラウロマクロゴール又はアジピン酸ジイソプロピルが好ましい。
【0014】
上記特定の添加剤は、単独、または2種以上組み合わせて用いてもよく、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、またはラウロマクロゴール、或いはその両者を共に含有させてもよい。
【0015】
(2)経皮吸収型製剤
本発明における経皮吸収型製剤の剤型としては、従来外用剤として使用されている剤型、例えば、貼付製剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、リニメント剤等、任意の剤型の外用剤として使用することができる。中でも貼付剤が好ましい。貼付剤(以下、貼付製剤ともいう。)とは、皮膚に貼り付けられる製剤全般を意味し、例えば、テープ製剤、パッチ製剤、パップ製剤、プラスター製剤等を含む。中でも、テープ製剤、またはパッチ製剤が特に好ましい。
本発明の経皮吸収型製剤は、製剤中に経皮吸収促進剤として上記(i)乳酸、及び(ii)特定の添加剤を適量配合させることにより、通常の方法で製造することができる。また、乳酸、及び特定の添加剤と基剤との溶解性が思わしくない場合には溶解性を改善するために適宜溶媒を使用することもできる。次に、本発明の経皮吸収型製剤として、貼付製剤についてより詳細に説明する。
【0016】
貼付製剤の場合、上記(i)乳酸、及び(ii)特定の添加剤からなる経皮吸収促進剤を、該製剤の粘着剤層に薬物、並びに粘着剤と共に配合することができる。さらに必要に応じて、貼付製剤の製造に用いられる薬学的に許容される下記の製剤化成分を配合してもよい。
【0017】
本発明の貼付製剤に配合される経皮吸収促進剤の配合量は、粘着剤層全量に対して、通常、0.01〜50重量%程度、好ましくは、0.1〜40重量%、より好ましくは、0.3〜40重量%、更に好ましくは、1〜40重量%である。
【0018】
本特許請求の範囲及び本明細書において、粘着剤層とは、支持体上に形成される薬物を含有する層のことであり、少なくとも、(i)薬物、(ii)粘着剤、(iii)乳酸、及び(iv)特定の添加剤を含有し、更にその他の製剤化成分を含んでいてもよい。
【0019】
本特許請求の範囲及び本明細書において単に「重量%」で表示されたものは、乾燥等によって溶媒等を実質的に含まない粘着剤層の総重量を100重量%としたときの重量%を意味する。
【0020】
本発明の貼付製剤に使用する粘着剤としては、皮膚安全性、薬物放出性、皮膚への付着性等を考慮して公知のものより適宜選択できる。好ましい粘着剤としては、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等が例示できる。
【0021】
シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とするものが挙げられ、またゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプロピレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が例示できる。
【0022】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(共)重合体、具体的には、アクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体、メタアクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体、アクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体、メタアクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体、アクリル酸アルキルエステルとメタアクリル酸アルキルエステルを主体とする共重合体が挙げられる。この(共)重合体は、上述のような2種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよく、また(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合しうる官能性モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であってもよい。
なお、ここで「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタアクリル酸」、或いは「アクリル酸及び/又はメタアクリル酸」を意味しており、また、「(共)重合体」とは、「重合体又は共重合体」、或いは「重合体及び/又は共重合体」を意味する。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖又は分枝鎖の炭素数が1〜18のアルキルでエステル化された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル等が挙げられる。官能性モノマーとしては、例えば、水酸基を有するモノマー((メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル等)、カルボキシル基を有するモノマー(マレイン酸ブチル、クロトン酸等)、アミド基を有するモノマー((メタ)アクリルアミド等)、アミノ基を有するモノマー(ジメチルアミノアクリル酸エステル等)、ピロリドン環を有するモノマー(N−ビニル−2−ピロリドン等)等が挙げられる。
【0024】
本発明のアクリル系粘着剤は、単独、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、他の粘着剤との混合物であってもよい。他の粘着剤としては、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0025】
具体的な好ましいアクリル系粘着剤としては、これらに限らないが、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸シルクフィブロイン共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体等であり、例えば、市販品の三洋化成工業株式会社製「ポリシック410−SA」、東洋インキ製造株式会社製「オリバインBPS−4849−40」、ナショナルスターチ&ケミカル社製「DURO−TAK 87−2194(登録商標)」、「DURO−TAK 387−2516(登録商標)」、コスメディ製薬株式会社製「MAS811」、「MAS683」、「MAS955」等が挙げられる。
【0026】
また、皮膚に対して適度な粘着性を持たせるために、必要に応じて硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては、例えば、市販品の三洋化成工業株式会社製の「ポリシックSC−75」、東洋インキ製造株式会社製の「BHS8515」等が例示できる。その配合量としては、粘着剤の特性に合わせて適宜選択すればよく、例えば、粘着剤1重量部に対して0.001〜0.05重量部程度である。
【0027】
本発明の貼付製剤における粘着剤の配合量としては、粘着剤層中、薬物、乳酸及び特定の添加剤からなる経皮吸収促進剤、並びに下記の必要に応じて添加する各種製剤化成分そのものを除いた残余であり、その量は粘着剤層を完成させるに必要な量である。したがって、例えば、粘着剤層が薬物を10重量%、経皮吸収促進剤を20重量%含むものである場合、粘着剤は、約70重量%となる。
【0028】
ここで用いる粘着剤の粘着性は、医療用の貼付製剤として用いる程度のものであり、皮膚に貼付しやすく、また剥がすことにも特に問題のない程度の粘着性を意図する。
【0029】
本発明の貼付製剤における薬物としては、塩基性の低分子薬物であれば特に限定されない。ここで低分子とは、分子量が700より小さい分子を言う。
【0030】
具体的には、例えば、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、メトプロロール、ビソプロロール、プロプラノロール、ペンブトロール等)、抗不整脈薬(メキシレチン等)、抗パーキンソン薬(ペルゴリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、セレギリン、アマンタジン、ロチゴチン、ゾニサミド等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、フェノテロール、プロカテロール、サルブタモール等)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、アゼラスチン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン等)、麻薬系鎮痛剤(フェンタニル、モルヒネ等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン、トルテロジン等)、精神神経用剤(クロルプロマジン、ブプロピオン等)、抗うつ剤(フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、デュロキセチン、エスシクロプラム等)、抗痴呆薬(ドネペジル、リバスチグミン等)、去痰薬(アンブロキソール等)、抗不安薬(タンドスピロン等)、抗精神病薬(クエチアピン、アリピプラゾール、ペロスピロン等)、ADHD治療剤(メチルフェニデート、アモキセチン等)、骨粗鬆症治療薬(ラロキシフェン等)、乳がん予防薬(タモキシフェン等)、抗がん剤(イリノテカン、パクリタキセル等)、抗肥満薬(シブトラミン等)、不眠症改善薬(ゾルピデム等)、制吐剤(オンダンセトロン、パロノセトロン、ラモセトロン等)等が例示でき、これらは遊離塩基であってもよいし、その生理学的に許容される酸付加塩であってもよい。これらに限らないが、例えば、有機酸の付加塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。さらに、遊離塩基、またはその生理学的に許容される酸付加塩は、溶媒和物であってもよく、水和物及び非水和物であってもよい。
【0031】
本発明の貼付製剤に配合される薬物は、薬物が塩の形態をとる場合には遊離塩基等に換算して、粘着剤層100重量%中、通常、0.1〜40重量%程度であり、好ましくは、貼付製剤の面積にもよるが、0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.1〜20重量%程度であり、また好ましくは、0.5〜40重量%程度、より好ましくは0.5〜30重量%程度、さらに好ましくは0.5〜20重量%程度である。なお、ここで遊離塩基等に換算してとは、薬物が塩の形態をとっている場合、または薬物が結晶水を有する場合に、当該塩または結晶水相当量は薬物の重量には含めないものとする意味である。
【0032】
本発明の貼付製剤中に必要に応じて配合される薬学的に許容される慣用の製剤化成分としては、配合しても不都合がなく、且つ、配合の必要性があるものならばいずれでもよく、例えば、安定化剤、粘着付与剤、可塑剤、香料、充填剤、増粘剤、硬化剤等が例示できる。
【0033】
安定化剤としては、これらに限らないが、例えば、アスコルビン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0034】
粘着付与剤としては、これらに限らないが、例えば、エステルガム、グリセリン、水素添加ロジングリセリンエステル、石油樹脂、ロジン、ポリブテン等が挙げられる。可塑剤としては、これらに限らないが、例えば、ポリブテン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。香料としては、これらに限らないが、例えば、dl−メントール、オレンジ油、ハッカ油、レモン油、ローズ油等が挙げられる。充填剤としては、これらに限らないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン100等が挙げられる。
【0035】
増粘剤としては、これらに限らないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、N−ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体等が挙げられる。
【0036】
本発明における貼付製剤は、支持体の片面(一面)に上述の粘着剤層が形成され、粘着剤層の支持体と接触しない他方面には、適宜剥離ライナーが施されたものである。使用時にはこの剥離ライナーを剥がし、該貼付製剤の粘着剤層を皮膚に貼付することで経皮投与がされることとなる。
【0037】
支持体としては、薬物を透過しないもしくは透過しにくい素材のもの、薬物の放出に影響を及ぼさないものもしくは及ぼしにくいものであれば特に限定されず、伸縮性のものであっても、非伸縮性のものであってもよい。例えば、これらに限らないが、エチルセルロース、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリプロピレン等の樹脂フィルム、及びこれらの組合せが例示できる。また、粘着剤層が形成されない支持体の一面にPET製等の不織布が形成されていてもよい。また、単層構造の支持体であっても、複数の素材が積層された構造の支持体であってもよい。支持体は、無色透明であっても、白色又は肌色等に着色したものであってもよく、白色又は肌色等に着色したものは、支持体の表面を色素でコーティングしたものであっても、支持体中に色素又は顔料等を均一に練り込んだものであってもよい。
【0038】
粘着剤層が形成される支持体面は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等の表面処理をおこなっているものが好ましい。
【0039】
本発明の貼付製剤は通常の方法で製造することができる。例えば、「経皮適用製剤開発マニュアル」松本光男監修(1985)に記載のプラスター剤の製造に関する項に従って製造することができる。また、例えば、「経皮治療システム用貼付剤製造装置の開発(膜, 32(2), 116-119 (2007))」に記載の装置、方法等により製造することができる。
【0040】
具体的には、本発明の貼付製剤、特にテープ製剤の調製において、粘着剤層を形成するには、通常の粘着テープの製造方法が適用できる。その代表例は溶剤塗工法であり、これ以外にもホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法等が用いられる。
【0041】
粘着剤層を溶剤塗工法で形成するには、例えば、薬物、粘着剤を含む混合液、及び経皮吸収促進剤や硬化剤等の製剤化成分と、有機溶媒とを混合して粘着剤層混合液を調製し、該混合液を支持体又は剥離ライナーの片面に塗布し、乾燥させて有機溶媒を除去し、乾燥の前後のいずれかのタイミングで剥離ライナー又は支持体を貼り合わせることによって製造することができる。得られる粘着剤層の厚さは約10〜約400μm程度、好ましくは約20〜約200μm程度の範囲である。但し、該粘着層の厚さはこれらの範囲に制限されず、これらより厚くても薄くても本発明の範囲である。
【0042】
粘着剤層の表面を被覆する剥離ライナーとしては、適宜選択されるが、その表面に剥離性能を有する剥離層を形成したもの、これらに限らないが、例えば、シリコン樹脂処理等をした紙バイナーやプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0043】
かくして得られた本発明の貼付製剤は、投与量等の要因に合わせて適当な大きさで製造されるか、又はカットしてそのような形態とされる。なお、その大きさの貼付製剤は実際に貼付する大きさよりも大きなテープとしていてもよく、また逆に小さなテープとしていてもよく、使用に際しては適宜切り取って使用したり、適当な枚数を並べて貼付してもよい。貼付される身体の部位は特に制限はないが、例えば、腕、肩、頸部、背中、腰、腹部、胸部、臀部、足等が挙げられる。本発明の貼付製剤は、貼付製剤に関する情報を記載した記載物とともに包装され、流通する。記載物はパッケージ上であってもよいし、パッケージ内に指示書として含めてもよい。
【0044】
次に、その他の経皮吸収剤である軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、及びローション剤の配合処方について簡単に説明する。
【0045】
軟膏剤は、薬物と、乳酸及び特定の添加剤との組み合わせからなる経皮吸収促進剤に加えて、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸等の高級脂肪酸又はそのエステル、鯨ロウ等のロウ類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、親水ワセリン、プラスチベース等の炭化水素類を少なくとも配合するものである。この軟膏剤の製剤処方は、例えば、高級脂肪酸又はそのエステル5〜15重量%、界面活性剤1〜10重量%、薬物0.5〜10重量%、前記経皮吸収促進剤0.1〜20重量%を室温又は加温下で混合し、ロウ類4〜10重量%、炭化水素50〜80重量%を加え、加温又は加熱融解し、50〜100℃に保ち、全成分が透明溶解液になった後、ホモミキサーで均一に混和する。その後、撹拌しながら室温まで下げることによって軟膏剤とするものである。
【0046】
ゲル剤は、薬物と、乳酸及び特定の添加剤との組み合わせからなる経皮吸収促進剤に加えて、エタノール等の低級アルコール、水、カルボキシビニル重合体等のゲル化剤、トリエタノールアミン等の中和剤を少なくとも配合してなるものである。このゲル剤の製剤処方は、例えば、水55重量%以下にゲル化剤0.5〜5重量%を加えて膨張させる。一方、薬物0.5〜10重量%と、前記経皮吸収促進剤0.1〜20重量%をグリコール類40重量%以下と低級アルコール60重量%以下の混合物に溶解する。これら両者を混合し、更に中和剤を加えてpH4〜7となるように調整し、ゲル化剤が得られる。
【0047】
クリーム剤は、薬物と、乳酸及び特定の添加剤との組み合わせからなる経皮吸収促進剤に加えて、ミリスチン酸エステル、オレイン酸エステル等の高級脂肪酸エステル、水、流動パラフィン等の炭化水素類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等の乳化剤を少なくとも配合してなる。このクリーム剤の配合処方は、上記した薬物、前記経皮吸収促進剤、高級脂肪酸エステル、水、炭化水素類、乳化剤を適量加え混合、撹拌することにより得られる。
【0048】
ローション剤は、薬物と、乳酸及び特定の添加剤との組み合わせからなる経皮吸収促進剤に加えて、基材としてエタノール等の低級アルコール、水、グリセリン、及び/又はグリコール類を少なくとも配合する。このローション剤の配合処方は、上記した薬物、前記経皮吸収促進剤、低級アルコール、水及び/又はグリコール類を適量加えて混合、撹拌することにより得られる。
【0049】
本発明の上記その他の経皮吸収型製剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、貼付製剤の場合と同様に、薬学的に許容される慣用の製剤化成分、例えば、安定化剤、香料、充填剤、増粘剤等を添加することができる。
【0050】
本発明の経皮吸収型製剤の一態様として、ゾニサミド、乳酸、並びに、α-モノイソステアリルグリセリルエーテル及びラウロマクロゴールからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する経皮吸収型製剤が挙げられる。さらには、ゾニサミド、乳酸及びα-モノイソステアリルグリセリルエーテルを含有する経皮吸収型製剤、および、ゾニサミド、乳酸及びラウロマクロゴールを含有する経皮吸収型製剤が挙げられる。さらに、該経皮吸収型製剤として貼付製剤があげられ、好ましくはテープ製剤、又はパッチ製剤である。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例、参考例、試験例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の実施例等において「%」とあるのは「重量%」を意味する。
【0052】
支持体は、実施例1〜11および参考例1〜14については、藤森工業株式会社製の25μmポリエチレンテレフタレートフィルムを、また、実施例12〜14および参考例15〜19については、スリーエムヘルスケア株式会社製の50.8μmポリエチレンテレフタレート,エチレン酢酸ビニル共重合体ラミネートフィルム(Scotchpak#9732)を使用した。剥離ライナーは、藤森工業株式会社製のバイナシート64S−018Bを使用した。
【0053】
実施例1
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.63g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)28.0mg、酢酸エチル1.2ml、並びに粘着剤層中の含有率が各々5%となるように乳酸及びα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が1%となるように、5−(3−メトキシフェニル)−3−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン(以下「化合物1」という。)を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0054】
実施例2〜4
実施例1のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに以下の表1に示す添加剤を使用して各テープ製剤を製造した。
【0055】
【表1】
【0056】
参考例1
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.89g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)30mg、酢酸エチル1.2ml、粘着剤層中の含有率が5%となるように乳酸を添加して混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が1%となるように化合物1を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0057】
参考例2〜5
参考例1の乳酸の代わりに以下の表2に示す添加剤を使用して、各テープ製剤を製造した。
【0058】
【表2】
【0059】
試験例1
ヘアレスラット皮膚透過実験
In vitro拡散セルを用いて、5〜6週令のヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例1〜4及び参考例1〜5で得られたテープ製剤についての化合物1の皮膚透過性を調べた。すなわち、透過面積1.13cm
2のIn vitro拡散セルにヘアレスラットの皮膚をセットし、レシーバー液としてポリエチレングリコール200(マクロゴール200)とリン酸緩衝液の2:1混合液0.75mlを使用して、ドナー側の皮膚には各製剤を貼付した(n=4)。24時間にわたり37℃保温下、レシーバー液を撹拌した後、レシーバー液中の化合物1濃度を高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC AM312 ODS 5μm(6mmφ×150mm;YMC)、移動相:0.05mol/l リン酸二水素ナトリウム(pH3.0にリン酸で調整):アセトニトリル(3:1)、カラム温度:40℃、流速:1.5ml/分)により測定し、各製剤における化合物1の透過量を求めた。結果を表3に示した。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例5
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.63g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)28.0mg、酢酸エチル1.2ml、並びに粘着剤層中の含有率が各々5%となるように乳酸、及び添加剤としてα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が1%となるようにシス−N−[4−[4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]ブチル]シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド(ペロスピロン、以下、「化合物2」という)を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0062】
実施例6〜9
実施例5のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりに以下の表4に示す添加剤を使用して、各テープ製剤を製造した。
【0063】
【表4】
【0064】
参考例6
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.89g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)30mg、酢酸エチル1.2ml、粘着剤層中の含有率が5%となるように乳酸を添加して混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が1%となるように化合物2を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0065】
参考例7〜11
参考例6の乳酸の代わりに以下の表に示す添加剤を使用して、各テープ製剤を製造した。
【0066】
【表5】
【0067】
試験例2
ヘアレスラット皮膚透過実験
In vitro拡散セルを用いて、5〜6週令のヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例5〜9及び参考例6〜11で得られたテープ製剤についての化合物2の皮膚透過性を調べた。すなわち、透過面積1.13cm
2のIn vitro拡散セルにヘアレスラットの皮膚をセットし、レシーバー液としてポリエチレングリコール200(マクロゴール200)とリン酸緩衝液の2:1混合液0.75mlを使用して、ドナー側の皮膚には各製剤を貼付した(n=4)。24時間にわたり37℃保温下、レシーバー液を撹拌した後、レシーバー液中の化合物2濃度を高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC AM312 ODS 5μm(6mmφ×150mm;YMC)、移動相:0.05mol/l1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム水溶液(pH2.5にリン酸で調整):アセトニトリル:メタノール(15:8:2)、カラム温度:40℃、流速:1.3ml/分)により測定し、各製剤における化合物2の透過量を求めた。結果を表6に示した。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例10
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.42g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)27mg、酢酸エチル1.2ml、並びに粘着剤層中の含有率が各々5%となるように乳酸及び添加剤としてオレイン酸を混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように化合物1を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0070】
実施例11
実施例10のオレイン酸の代わりにセバシン酸ジエチルを使用して、テープ製剤を製造した。
【0071】
参考例12
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)4.68g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)28mg、酢酸エチル1.2ml、粘着剤層中の含有率が5%となるように乳酸を添加して混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように化合物1を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で1日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0072】
参考例13、14
参考例12の乳酸の代わりに以下の表7に示す添加剤を使用して、各テープ製剤を製造した。
【0073】
【表7】
【0074】
試験例3
ヘアレスラット皮膚透過実験
試験例1と同様の方法で、ヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例10、11及び参考例12〜14で得られたテープ製剤についての化合物1の皮膚透過性を調べた。結果を表8に示す。
【0075】
【表8】
【0076】
実施例12
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)2.21g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)13.0mg、並びに粘着剤層中の含有率が各々5%となるように乳酸及びα−モノイソステアリルグリセリルエーテルを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように、アセトン0.8mlで溶解した1,2−ベンズイソキサゾール−3−メタンスルホンアミド(ゾニサミド、以下「化合物3」という)を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で2日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0077】
実施例13
実施例12のα−モノイソステアリルグリセリルエーテルの代わりにラウロマクロゴールを使用して、テープ製剤を製造した。
【0078】
参考例15
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)2.34g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)14.0mg、並びに粘着剤層中の含有率が5%となるように乳酸を混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように、アセトン0.8mlで溶解した化合物3を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で2日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0079】
参考例16、17
参考例15の乳酸の代わりに以下の表9に示す添加剤を使用して、テープ製剤を製造した。
【0080】
【表9】
【0081】
試験例4
ヘアレスラット皮膚透過実験
In vitro拡散セルを用いて、6週令のヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例12、13及び参考例15〜17で得られたテープ製剤についての化合物3の皮膚透過性を調べた。すなわち、透過面積1.13cm
2のIn vitro拡散セルにヘアレスラットの皮膚をセットし、レシーバー液としてポリエチレングリコール400(マクロゴール400)とリン酸緩衝液の2:3混合液0.75mlを使用して、ドナー側の皮膚には各製剤を貼付した(n=4)。16時間にわたり37℃保温下、レシーバー液を撹拌した後、レシーバー液中の化合物3濃度を高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC AM312 ODS 5μm(6mmφ×150mm;YMC)、移動相:1%−酢酸:メタノール(3:2)、カラム温度:40℃、流速:1.5ml/分)により測定し、各製剤における化合物3の透過量を求めた。結果を表10に示した。
【0082】
【表10】
【0083】
実施例14
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)1.95g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)12.0mg、並びに粘着剤層中の含有率が各々10%となるように乳酸及びラウロマクロゴールを混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように、アセトン0.8mlで溶解した化合物3を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で3日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0084】
参考例18
アクリル系粘着剤(ポリシック410−SA、三洋化成工業株式会社製、固形分38重量%)2.21g、硬化剤(ポリシックSC−75、三洋化成工業株式会社製、固形分75重量%)13.0mg、並びに粘着剤層中の含有率が10%となるように乳酸を混合した。この混合液に粘着剤層中の含有率が5%となるように、アセトン0.8mlで溶解した化合物3を添加し、十分に攪拌した。得られた混合液を、乾燥後の粘着剤層の厚さが約60μmとなるように支持体上に展延し、室温で3日乾燥した。その後、剥離ライナーを貼り合わせてテープ製剤を製造した。
【0085】
参考例19
参考例15の乳酸の代わりにラウロマクロゴールを使用して、テープ製剤を製造した。
【0086】
試験例5
ヘアレスラット皮膚透過実験
試験例4と同様の方法で、ヘアレスラットの腹部の皮膚に対しての実施例14及び参考例18、19で得られたテープ製剤についての化合物3の皮膚透過性を調べた。結果を表11に示す。
【0087】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の経皮吸収促進剤は、薬物、例えば、塩基性低分子薬物の経皮吸収を著しく増大させるものである。本発明の経皮吸収促進剤を配合してなる経皮吸収型製剤は、使用性に優れ、且つ所望の薬物を局所部位、或いは循環系を通して全身に速やかに送達することが可能なため、各種疾患の治療に極めて有用である。
【0089】
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の教示と利点から実質的に逸脱しない範囲で様々な修正と変更をなすことは可能である。従って、そのような修正及び変更も、すべて後記の請求の範囲で請求される本発明の精神と範囲内に含まれるものである。
【0090】
本出願は、特願2011−021196を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。