(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源装置の演算処理部は、R波と推定されるイベントをセンシングした後、短くとも50m秒間、長くとも500m秒間は、前記第1電極群および前記第2電極群に電圧が印加されないように前記DC電源部を制御することを特徴とする請求項1に記載の心腔内除細動カテーテルシステム。
前記電源装置の演算処理部は、R波と推定されるイベントをセンシングした後、短くとも10m秒間、長くとも150m秒間は、R波と推定されるイベントを新たにセンシングしないことを特徴とする請求項2に記載の心腔内除細動カテーテルシステム。
前記電源装置の演算処理部は、前記電気エネルギーの印加スイッチの入力後、短くとも10m秒間、長くとも500m秒間は、前記第1電極群および前記第2電極群に電圧が印加されないように前記DC電源部を制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の心腔内除細動カテーテルシステム。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、本実施形態の心腔内除細動カテーテルシステムは、除細動カテーテル100と、電源装置700と、心電計800と、心電位測定手段900とを備えている。
【0027】
図2乃至
図5に示すように、本実施形態の除細動カテーテルシステムを構成する除細動カテーテル100は、マルチルーメンチューブ10と、ハンドル20と、第1DC電極群31Gと、第2DC電極群32Gと、基端側電位測定電極群33Gと、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとを備えている。
【0028】
図4および
図5に示すように、除細動カテーテル100を構成するマルチルーメンチューブ10(マルチルーメン構造を有する絶縁性のチューブ部材)には、4つのルーメン(第1ルーメン11、第2ルーメン12、第3ルーメン13、第4ルーメン14)が形成されている。
【0029】
図4および
図5において、15は、ルーメンを区画するフッ素樹脂層、16は、低硬度のナイロンエラストマーからなるインナー(コア)部、17は、高硬度のナイロンエラストマーからなるアウター(シェル)部であり、
図4における18は、編組ブレードを形成するステンレス素線である。
【0030】
ルーメンを区画するフッ素樹脂層15は、例えばパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの絶縁性の高い材料により構成されている。
【0031】
マルチルーメンチューブ10のアウター部17を構成するナイロンエラストマーは、軸方向によって異なる硬度のものが用いられている。これにより、マルチルーメンチューブ10は、先端側から基端側に向けて段階的に硬度が高くなるよう構成されている。
好適な一例を示せば、
図3において、L1(長さ52mm)で示す領域の硬度(D型硬度計による硬度)は40、L2(長さ108mm)で示す領域の硬度は55、L3(長さ25.7mm)で示す領域の硬度は63、L4(長さ10mm)で示す領域の硬度は68、L5(長さ500mm)で示す領域の硬度は72である。
【0032】
ステンレス素線18により構成される編組ブレードは、
図3においてL5で示される領域においてのみ形成され、
図4に示すように、インナー部16とアウター部17との間に設けられている。
マルチルーメンチューブ10の外径は、例えば1.2〜3.3mmとされる。
【0033】
マルチルーメンチューブ10を製造する方法としては特に限定されるものではない。
【0034】
本実施形態における除細動カテーテル100を構成するハンドル20は、ハンドル本体21と、摘まみ22と、ストレインリリーフ24とを備えている。
摘まみ22を回転操作することにより、マルチルーメンチューブ10の先端部を偏向(首振り)させることができる。
【0035】
マルチルーメンチューブ10の外周(内部に編組が形成されていない先端領域)には、第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gが装着されている。ここに、「電極群」とは、同一の極を構成し(同一の極性を有し)、または、同一の目的を持って、狭い間隔(例えば5mm以下)で装着された複数の電極の集合体をいう。
【0036】
第1DC電極群は、マルチルーメンチューブの先端領域において、同一の極(−極または+極)を構成することになる複数の電極が狭い間隔で装着されてなる。ここに、第1DC電極群を構成する電極の個数は、電極の幅や配置間隔によっても異なるが、例えば4〜13個とされ、好ましくは8〜10個とされる。
【0037】
本実施形態において、第1DC電極群31Gは、マルチルーメンチューブ10の先端領域に装着された8個のリング状電極31から構成されている。
第1DC電極群31Gを構成する電極31は、リード線(第1リード線群41Gを構成するリード線41)および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタに接続されている。
【0038】
ここに、電極31の幅(軸方向の長さ)は、2〜5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば4mmである。
電極31の幅が狭過ぎると、電圧印加時の発熱量が過大となって、周辺組織に損傷を与える虞がある。一方、電極31の幅が広過ぎると、マルチルーメンチューブ10における第1DC電極群31Gが設けられている部分の可撓性・柔軟性が損なわれることがある。
【0039】
電極31の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、1〜5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2mmである。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、第1DC電極群31Gは、例えば冠状静脈内に位置する。
【0040】
第2DC電極群は、マルチルーメンチューブの第1DC電極群の装着位置から基端側に離間して、第1DC電極群とは逆の極(+極または−極)を構成することになる複数の電極が狭い間隔で装着されてなる。ここに、第2DC電極群を構成する電極の個数は、電極の幅や配置間隔によっても異なるが、例えば4〜13個とされ、好ましくは8〜10個とされる。
【0041】
本実施形態において、第2DC電極群32Gは、第1DC電極群31Gの装着位置から基端側に離間してマルチルーメンチューブ10に装着された8個のリング状電極32から構成されている。
第2DC電極群32Gを構成する電極32は、リード線(第2リード線群42Gを構成するリード線42)および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタに接続されている。
【0042】
ここに、電極32の幅(軸方向の長さ)は、2〜5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば4mmである。
電極32の幅が狭過ぎると、電圧印加時の発熱量が過大となって、周辺組織に損傷を与える虞がある。一方、電極32の幅が広過ぎると、マルチルーメンチューブ10における第2DC電極群32Gが設けられている部分の可撓性・柔軟性が損なわれることがある。
【0043】
電極32の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、1〜5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2mmである。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、第2DC電極群32Gは、例えば右心房に位置する。
【0044】
本実施形態において、基端側電位測定電極群33Gは、第2DC電極群32Gの装着位置から基端側に離間してマルチルーメンチューブ10に装着された4個のリング状電極33から構成されている。
基端側電位測定電極群33Gを構成する電極33は、リード線(第3リード線群43Gを構成するリード線43)および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタに接続されている。
【0045】
ここに、電極33の幅(軸方向の長さ)は0.5〜2.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.2mmである。
電極33の幅が広過ぎると、心電位の測定精度が低下したり、異常電位の発生部位の特定が困難となったりする。
【0046】
電極33の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、1.0〜10.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば5mmである。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、基端側電位測定電極群33Gは、例えば、異常電位が発生しやすい上大静脈に位置する。
【0047】
除細動カテーテル100の先端には、先端チップ35が装着されている。
この先端チップ35には、リード線は接続されておらず、本実施形態では電極として使用していない。但し、リード線を接続させることにより、電極として使用することも可能である。先端チップ35の構成材料は、白金、ステンレスなどの金属材料、各種の樹脂材料など、特に限定されるものではない。
【0048】
第1DC電極群31G(基端側の電極31)と、第2DC電極群32G(先端側の電極32)との離間距離d2は40〜100mmであることが好ましく、好適な一例を示せば66mmである。
【0049】
第2DC電極群32G(基端側の電極32)と、基端側電位測定電極群33G(先端側の電極33)との離間距離d3は5〜50mmであることが好ましく、好適な一例を示せば30mmである。
【0050】
第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gを構成する電極31,32,33としては、X線に対する造影性を良好なものとするために、白金または白金系の合金からなることが好ましい。
【0051】
図4および
図5に示される第1リード線群41Gは、第1DC電極群(31G)を構成する8個の電極(31)の各々に接続された8本のリード線41の集合体である。
第1リード線群41G(リード線41)により、第1DC電極群31Gを構成する8個の電極31の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0052】
第1DC電極群31Gを構成する8個の電極31は、それぞれ、異なるリード線41に接続される。リード線41の各々は、その先端部分において電極31の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第1ルーメン11に進入する。第1ルーメン11に進入した8本のリード線41は、第1リード線群41Gとして、第1ルーメン11に延在する。
【0053】
図4および
図5に示される第2リード線群42Gは、第2DC電極群(32G)を構成する8個の電極(32)の各々に接続された8本のリード線42の集合体である。
第2リード線群42G(リード線42)により、第2DC電極群32Gを構成する8個の電極32の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0054】
第2DC電極群32Gを構成する8個の電極32は、それぞれ、異なるリード線42に接続される。リード線42の各々は、その先端部分において電極32の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第2ルーメン12(第1リード線群41Gが延在する第1ルーメン11とは異なるルーメン)に進入する。第2ルーメン12に進入した8本のリード線42は、第2リード線群42Gとして、第2ルーメン12に延在する。
【0055】
上記のように、第1リード線群41Gが第1ルーメン11に延在し、第2リード線群42Gが第2ルーメン12に延在していることにより、両者は、マルチルーメンチューブ10内において完全に絶縁隔離されている。このため、除細動に必要な電圧が印加されたときに、第1リード線群41G(第1DC電極群31G)と、第2リード線群42G(第2DC電極群32G)との間の短絡を確実に防止することができる。
【0056】
図4に示される第3リード線群43Gは、基端側電位測定電極群(33G)を構成する電極(33)の各々に接続された4本のリード線43の集合体である。
第3リード線群43G(リード線43)により、基端側電位測定電極群33Gを構成する電極33の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0057】
基端側電位測定電極群33Gを構成する4個の電極33は、それぞれ、異なるリード線43に接続されている。リード線43の各々は、その先端部分において電極33の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第3ルーメン13に進入する。第3ルーメン13に進入した4本のリード線43は、第3リード線群43Gとして、第3ルーメン13に延在する。
【0058】
上記のように、第3ルーメン13に延在している第3リード線群43Gは、第1リード線群41Gおよび第2リード線群42Gの何れからも完全に絶縁隔離されている。このため、除細動に必要な電圧が印加されたときに、第3リード線群43G(基端側電位測定電極群33G)と、第1リード線群41G(第1DC電極群31G)または第2リード線群42G(第2DC電極群32G)との間の短絡を確実に防止することができる。
【0059】
リード線41、リード線42およびリード線43は、何れも、ポリイミドなどの樹脂によって金属導線の外周面が被覆された樹脂被覆線からなる。ここに、被覆樹脂の膜厚としては2〜30μm程度とされる。
【0060】
図4および
図5において65はプルワイヤである。
プルワイヤ65は、第4ルーメン14に延在し、マルチルーメンチューブ10の中心軸に対して偏心して延びている。
【0061】
プルワイヤ65の先端部分は、ハンダによって先端チップ35に固定されている。また、プルワイヤ65の先端には抜け止め用大径部(抜け止め部)が形成されていてもよい。これにより、先端チップ35とプルワイヤ65とは強固に結合され、先端チップ35の脱落などを確実に防止することができる。
【0062】
一方、プルワイヤ65の基端部分は、ハンドル20の摘まみ22に接続されており、摘まみ22を操作することによってプルワイヤ65が引っ張られ、これにより、マルチルーメンチューブ10の先端部が偏向する。
プルワイヤ65は、ステンレスやNi−Ti系超弾性合金製で構成してあるが、必ずしも金属で構成する必要はない。プルワイヤ65は、たとえば高強度の非導電性ワイヤなどで構成してもよい。
なお、マルチルーメンチューブの先端部を偏向させる機構は、これに限定されるものではなく、例えば、板バネを備えてなるものであってもよい。
【0063】
マルチルーメンチューブ10の第4ルーメン14には、プルワイヤ65のみが延在しており、リード線(群)は延在していない。これにより、マルチルーメンチューブ10の先端部の偏向操作時において、軸方向に移動するプルワイヤ65によってリード線が損傷(例えば、擦過傷)を受けることを防止することができる。
【0064】
本実施形態における除細動カテーテル100は、ハンドル20の内部においても、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとが絶縁隔離されている。
【0065】
図6は、本実施形態における除細動カテーテル100のハンドルの内部構造を示す斜視図、
図7は、ハンドル内部(先端側)の部分拡大図、
図8は、ハンドル内部(基端側)の部分拡大図である。
【0066】
図6に示すように、マルチルーメンチューブ10の基端部は、ハンドル20の先端開口に挿入され、これにより、マルチルーメンチューブ10と、ハンドル20とが接続されている。
【0067】
図6および
図8に示すように、ハンドル20の基端部には、先端方向に突出する複数のピン端子(51、52、53)を先端面50Aに配置してなる円筒状のコネクタ50が内蔵されている。
また、
図6乃至
図8に示すように、ハンドル20の内部には、3つのリード線群(第1リード線群41G、第2リード線群42G、第3リード線群43G)の各々が挿通される3本の絶縁性チューブ(第1絶縁性チューブ26、第2絶縁性チューブ27、第3絶縁性チューブ28)が延在している。
【0068】
図6および
図7に示すように、第1絶縁性チューブ26の先端部(先端から10mm程度)は、マルチルーメンチューブ10の第1ルーメン11に挿入され、これにより、第1絶縁性チューブ26は、第1リード線群41Gが延在する第1ルーメン11に連結されている。
第1ルーメン11に連結された第1絶縁性チューブ26は、ハンドル20の内部に延在する第1の保護チューブ61の内孔を通ってコネクタ50(ピン端子が配置された先端面50A)の近傍まで延びており、第1リード線群41Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。これにより、マルチルーメンチューブ10(第1ルーメン11)から延び出した第1リード線群41Gは、キンクすることなく、ハンドル20の内部(第1絶縁性チューブ26の内孔)を延在することができる。
第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出した第1リード線群41Gは、これを構成する8本のリード線41にばらされ、これらリード線41の各々は、コネクタ50の先端面50Aに配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。ここに、第1リード線群41Gを構成するリード線41が接続固定されたピン端子(ピン端子51)が配置されている領域を「第1端子群領域」とする。
【0069】
第2絶縁性チューブ27の先端部(先端から10mm程度)は、マルチルーメンチューブ10の第2ルーメン12に挿入され、これにより、第2絶縁性チューブ27は、第2リード線群42Gが延在する第2ルーメン12に連結されている。
第2ルーメン12に連結された第2絶縁性チューブ27は、ハンドル20の内部に延在する第2の保護チューブ62の内孔を通ってコネクタ50(ピン端子が配置された先端面50A)の近傍まで延びており、第2リード線群42Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。これにより、マルチルーメンチューブ10(第2ルーメン12)から延び出した第2リード線群42Gは、キンクすることなく、ハンドル20の内部(第2絶縁性チューブ27の内孔)を延在することができる。
第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出した第2リード線群42Gは、これを構成する8本のリード線42にばらされ、これらリード線42の各々は、コネクタ50の先端面50Aに配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。ここに、第2リード線群42Gを構成するリード線42が接続固定されたピン端子(ピン端子52)が配置されている領域を「第2端子群領域」とする。
【0070】
第3絶縁性チューブ28の先端部(先端から10mm程度)は、マルチルーメンチューブ10の第3ルーメン13に挿入され、これにより、第3絶縁性チューブ28は、第3リード線群43Gが延在する第3ルーメン13に連結されている。
第3ルーメン13に連結された第3絶縁性チューブ28は、ハンドル20の内部に延在する第2の保護チューブ62の内孔を通ってコネクタ50(ピン端子が配置された先端面50A)の近傍まで延びており、第3リード線群43Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。これにより、マルチルーメンチューブ10(第3ルーメン13)から延び出した第3リード線群43Gは、キンクすることなく、ハンドル20の内部(第3絶縁性チューブ28の内孔)を延在することができる。
第3絶縁性チューブ28の基端開口から延び出した第3リード線群43Gは、これを構成する4本のリード線43にばらされ、これらリード線43の各々は、コネクタ50の先端面50Aに配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。ここに、第3リード線群43Gを構成するリード線43が接続固定されたピン端子(ピン端子53)が配置されている領域を「第3端子群領域」とする。
【0071】
ここに、絶縁性チューブ(第1絶縁性チューブ26、第2絶縁性チューブ27および第3絶縁性チューブ28)の構成材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などを例示することができる。これらのうち、硬度が高くて、リード線群を挿通しやすく、肉薄成形が可能なポリイミド樹脂が特に好ましい。
絶縁性チューブの肉厚としては、20〜40μmであることが好ましく、好適な一例を示せば30μmである。
【0072】
また、絶縁性チューブが内挿される保護チューブ(第1の保護チューブ61および第2の保護チューブ62)の構成材料としては、「Pebax」(ARKEMA社の登録商標)などのナイロン系エラストマーを例示することができる。
【0073】
上記のような構成を有する本実施形態における除細動カテーテル100によれば、第1絶縁性チューブ26内に第1リード線群41Gが延在し、第2絶縁性チューブ27内に第2リード線群42Gが延在し、第3絶縁性チューブ28内に第3リード線群43Gが延在していることで、ハンドル20の内部においても、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとを完全に絶縁隔離することができる。この結果、除細動に必要な電圧が印加されたときにおいて、ハンドル20の内部における第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとの間の短絡(特に、ルーメンの開口付近において延び出したリード線群間における短絡)を確実に防止することができる。
【0074】
さらに、ハンドル20の内部において、第1絶縁性チューブ26が第1の保護チューブ61によって保護され、第2絶縁性チューブ27および第3絶縁性チューブ28が第2の保護チューブ52によって保護されていることにより、例えば、マルチルーメンチューブ10の先端部の偏向操作時に摘まみ22の構成部材(可動部品)が接触・擦過することによって絶縁性チューブが損傷することを防止することができる。
【0075】
本実施形態における除細動カテーテル100は、複数のピン端子が配置されたコネクタ50の先端面50Aを、第1端子群領域と、第2端子群領域および第3端子群領域とに仕切り、リード線41と、リード線42およびリード線43とを互いに隔離する隔壁板55を備えている。
【0076】
第1端子群領域と、第2端子群領域および第3端子群領域とを仕切る隔壁板55は、絶縁性樹脂を、両側に平坦面を有する樋状に成型加工してなる。隔壁板55を構成する絶縁性樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンなどの汎用樹脂を使用することができる。
【0077】
隔壁板55の厚さは、例えば0.1〜0.5mmとされ、好適な一例を示せば0.2mmである。
隔壁板55の高さ(基端縁から先端縁までの距離)は、コネクタ50の先端面50Aと絶縁性チューブ(第1絶縁性チューブ26および第2絶縁性チューブ27)との離間距離より高いことが必要であり、この離間距離が7mmの場合、隔壁板55の高さは、例えば8mmとされる。高さが7mm未満の隔壁板では、その先端縁を、絶縁性チューブの基端よりも先端側に位置させることができない。
【0078】
このような構成によれば、第1リード線群41Gを構成するリード線41(第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出したリード線41の基端部分)と、第2リード線群42Gを構成するリード線42(第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出したリード線42の基端部分)とを確実かつ整然と隔離することができる。
隔壁板55を備えていない場合には、リード線41と、リード線42とを整然と隔離する(分ける)ことができず、これらが混線するおそれがある。
【0079】
そして、互いに異なる極性の電圧が印加される、第1リード線群41Gを構成するリード線41と、第2リード線群42Gを構成するリード線42とが、隔壁板55により互いに隔離されて接触することがないので、除細動カテーテル100の使用時において、心腔内除細動に必要な電圧を印加しても、第1リード線群41Gを構成するリード線41(第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出したリード線41の基端部分)と、第2リード線群42Gを構成するリード線42(第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出したリード線42の基端部分)との間で短絡が発生することはない。
【0080】
また、除細動カテーテルの製造時において、リード線をピン端子に接続固定する際に誤りが生じた場合、例えば、第1リード線群41Gを構成するリード線41を、第2端子群領域におけるピン端子に接続した場合には、そのリード41は隔壁55を跨ぐことになるので、接続の誤りを容易に発見することができる。
【0081】
なお、第3リード線群43Gを構成するリード線43(ピン端子53)は、リード線42(ピン端子52)とともに、隔壁板55によりリード線41(ピン端子51)から隔離されているが、これに限定されるものではなく、リード線41(ピン端子51)とともに、隔壁板55によってリード線42(ピン端子52)から隔離されていてもよい。
【0082】
除細動カテーテル100において、隔壁板55の先端縁は、第1絶縁性チューブ26の基端および第2絶縁性チューブ27の基端の何れよりも先端側に位置している。
これにより、第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出したリード線(第1リード線群41Gを構成するリード線41)と、第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出たリード線(第2リード線群42Gを構成するリード線42)との間には、常に隔壁板55が存在することになり、リード線41とリード線42との接触による短絡を確実に防止することができる。
【0083】
図8に示すように、第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出してコネクタ50のピン端子51に接続固定された8本のリード線41、第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出してコネクタ50のピン端子52に接続固定された8本のリード線42、第3絶縁性チューブ28の基端開口から延び出してコネクタ50のピン端子53に接続固定された4本のリード線43は、これらの周囲が樹脂58で固められることにより、それぞれの形状が保持固定されている。
【0084】
リード線の形状を保持する樹脂58は、コネクタ50と同径の円筒状に成形されており、この樹脂成形体の内部に、ピン端子、リード線、絶縁性チューブの基端部および隔壁板55が埋め込まれた状態となっている。
そして、絶縁性チューブの基端部が樹脂成形体の内部に埋め込まれている構成によれば、絶縁性チューブの基端開口より延び出してからピン端子に接続固定されるまでのリード線(基端部分)の全域を樹脂58によって完全に覆うことができ、リード線(基端部分)の形状を完全に保持固定することができる。
また、樹脂成形体の高さ(基端面から先端面までの距離)は、隔壁板55の高さよりも高いことが好ましく、隔壁板55の高さが8mmの場合に、例えば9mmとされる。
【0085】
ここに、樹脂成形体を構成する樹脂58としては特に限定されるのではないが、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を使用することが好ましい。具体的には、ウレタン系、エポキシ系、ウレタン−エポキシ系の硬化性樹脂を例示することができる。
【0086】
上記のような構成によれば、樹脂58によってリード線の形状が保持固定されるので、除細動カテーテル100を製造する際(ハンドル20の内部にコネクタ50を装着する際)に、絶縁性チューブの基端開口から延び出したリード線がキンクしたり、ピン端子のエッジと接触したりして損傷(例えば、リード線の被覆樹脂にクラックが発生)することを防止することができる。
【0087】
図1に示したように、本実施形態の除細動カテーテルシステムを構成する電源装置700は、DC電源部71と、カテーテル接続コネクタ72と、心電計接続コネクタ73と、外部スイッチ(入力手段)74と、演算処理部75と、切替部76と、心電図入力コネクタ77と、表示手段78とを備えている。
【0088】
DC電源部71にはコンデンサが内蔵され、外部スイッチ74(充電スイッチ743)の入力により、内蔵コンデンサが充電される。
【0089】
カテーテル接続コネクタ72は、除細動カテーテル100のコネクタ50と接続され、第1リード線群(41G)、第2リード線群(42G)および第3リード線群(43G)の基端側と電気的に接続される。
【0090】
図9に示すように、除細動カテーテル100のコネクタ50と、電源装置700のカテーテル接続コネクタ72とが、コネクタケーブルC1によって連結されることにより、
第1リード線群を構成する8本のリード線41を接続固定したピン端子51(実際には8個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子721(実際には8個)、
第2リード線群を構成する8本のリード線42を接続固定したピン端子52(実際には8個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子722(実際には8個)、
第3リード線群を構成する4本のリード線43を接続固定したピン端子53(実際には4個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子723(実際には4個)が、それぞれ接続されている。
【0091】
ここに、カテーテル接続コネクタ72の端子721および端子722は、切替部76に接続され、端子723は、切替部76を経ることなく心電計接続コネクタ73に直接接続されている。
これにより、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gにより測定された心電位情報は、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に到達し、基端側電位測定電極群33Gにより測定された心電位情報は、切替部76を経ることなく、心電計接続コネクタ73に到達する。
【0092】
心電計接続コネクタ73は、心電計800の入力端子に接続されている。
入力手段である外部スイッチ74は、心電位測定モードと除細動モードとを切り替えるためのモード切替スイッチ741、除細動の際に印加する電気エネルギーを設定する印加エネルギー設定スイッチ742、DC電源部71を充電するための充電スイッチ743、電気エネルギーを印加して除細動を行うためのエネルギー印加スイッチ(放電スイッチ)744からなる。これら外部スイッチ74からの入力信号はすべて演算処理部75に送られる。
【0093】
演算処理部75は、外部スイッチ74の入力に基づいて、DC電源部71、切替部76および表示手段78を制御する。
この演算処理部75は、DC電源部71からの直流電圧を、切替部76を介して除細動カテーテル100の電極に出力するための出力回路751を有している。
【0094】
この出力回路751により、
図9に示したカテーテル接続コネクタ72の端子721(最終的には、除細動カテーテル100の第1DC電極群31G)と、カテーテル接続コネクタ72の端子722(最終的には、除細動カテーテル100の第2DC電極群32G)とが互いに異なる極性となる(一方の電極群が−極のときには、他方の電極群は+極となる)ように直流電圧を印加することができる。
【0095】
切替部76は、共通接点にカテーテル接続コネクタ72(端子721および端子722)が接続され、第1接点に心電計接続コネクタ73が接続され、第2接点に演算処理部75が接続された1回路2接点(Single Pole Double Throw)の切替スイッチからなる。
すなわち、第1接点を選択したとき(第1接点が共通接点に接続されたとき)には、カテーテル接続コネクタ72と、心電計接続コネクタ73とを結ぶ経路が確保され、第2接点を選択したとき(第2接点が共通接点に接続されたとき)には、カテーテル接続コネクタ72と、演算処理部75とを結ぶ経路が確保される。
【0096】
切替部76の切替動作は、外部スイッチ74(モード切替スイッチ741・エネルギー印加スイッチ744)の入力に基いて演算処理部75により制御される。
【0097】
心電図入力コネクタ77は、演算処理部75に接続され、また、心電計800の出力端子に接続される。
この心電図入力コネクタ77により、心電計800から出力される心電位情報(通常、心電計800に入力された心電位情報の一部)を演算処理部75に入力することができ、演算処理部75では、この心電位情報に基いて、DC電源部71および切替部76を制御することができる。
【0098】
表示手段78は演算処理部75に接続され、表示手段78には、心電図入力コネクタ77から演算処理部75に入力された心電位情報(主に、心電図(心電位波形))が表示され、オペレータは、演算処理部75に入力された心電位情報(心電図)を監視しながら除細動治療(外部スイッチの入力など)を行うことができる。
【0099】
本実施形態の除細動カテーテルシステムを構成する心電計800(入力端子)は、電源装置700の心電計接続コネクタ73に接続され、除細動カテーテル100(第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gの構成電極)により測定された心電位情報は、心電計接続コネクタ73から心電計800に入力される。
【0100】
また、心電計800(他の入力端子)は心電位測定手段900にも接続され、心電位測定手段900により測定された心電位情報も心電計800に入力される。
ここに、心電位測定手段900としては、12誘導心電図を測定するために患者の体表面に貼付される電極パッド、患者の心臓内に装着される電極カテーテル(除細動カテーテル100とは異なる電極カテーテル)を挙げることができる。
【0101】
心電計800(出力端子)は、電源装置700の心電図入力コネクタ77に接続され、心電計800に入力された心電位情報(除細動カテーテル100からの心電位情報および心電位測定手段900からの心電位情報)の一部を、心電図入力コネクタ77を経由して演算処理部75に送ることができる。
【0102】
本実施形態における除細動カテーテル100は、除細動治療を必要としないときには、心電位測定用の電極カテーテルとして用いることができる。
【0103】
図10は、心臓カテーテル術(例えば高周波治療)を行う際に、本実施形態に係る除細動カテーテル100によって心電位を測定する場合の心電位情報の流れを示している。
このとき、電源装置700の切替部76は、心電計接続コネクタ73が接続された第1接点を選択している。
【0104】
除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gを構成する電極によって測定された心電位は、カテーテル接続コネクタ72、切替部76および心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。
また、除細動カテーテル100の基端側電位測定電極群33Gを構成する電極によって測定された心電位は、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を通ることなく直接心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。
【0105】
除細動カテーテル100からの心電位情報(
心電図)は、心電計800のモニタ(図示省略)に表示される。
また、除細動カテーテル100からの心電位情報の一部(例えば、第1DC電極群31Gを構成する電極31(第1極と第2極)間の電位差)を、心電計800から、心電図入力コネクタ77および演算処理部75を経由して、表示手段78に入力して表示することができる。
【0106】
上記のように、心臓カテーテル術中において除細動治療を必要としないときには、除細動カテーテル100を心電位測定用の電極カテーテルとして用いることができる。
【0107】
そして、心臓カテーテル術中において心房細動が起こったときには、電極カテーテルとして使用していた除細動カテーテル100によって直ちに除細動治療を行うことができる。この結果、心房細動が起きたときに、除細動のためのカテーテルを新に挿入するなどの手間を省くことができる。
【0108】
演算処理部75は、心電図入力コネクタ77を経由して心電計800から送られてきた心電位情報の一部(心電図)から、当該心電図のR波と推定されるイベント(波形)を逐次センシングしている。
R波と推定されるイベントのセンシングは、例えば、センシングしようとするサイクル(拍動)の1つ前のサイクルにおける最大ピーク波形と、2つ前のサイクルにおける最大ピーク波形とを検知して、これらの最大ピーク波形の平均高さを算出し、この平均高さの80%の高さ(トリガーレベル)に電位差が到達したことを検知することにより行われる。
【0109】
また、演算処理部75は、センシングしたイベントの各々について、その極性(±の符号で表されるピークの方向)を認識し、エネルギー印加スイッチ744を入力後、n回目のサイクルにおいてセンシングされたイベント(V
n )の極性が、その1つ前のサイクルにおいてセンシングされたイベント(V
n-1 )の極性およびその2つ前のサイクルにおいてセンシングされたイベント(V
n-2 )の極性と一致したときに、当該イベント(V
n )に同期して、カテーテル接続コネクタ72の端子721(第1DC電極群31G)と、カテーテル接続コネクタ72の端子722(第2DC電極群32G)とに電圧が印加されるように演算処理してDC電源部71を制御する。
【0110】
図16A乃至
図16Dに示す心電図において、R波と推定されてセンシングされた6つのイベントのうち、左から3番目のイベントの極性は(−)(そのピーク波形が下向き)であり、他の5つのイベントの極性は(+)(そのピーク波形が上向き)である。
【0111】
図16Aに示すように、左から2番目のイベント(V
0 )をセンシングした後にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合、3番目のイベント(V
1 )の極性(−)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた2番目のイベント(V
0 )の極性(+)と異なるため、このイベント(V
1 )に同期して電圧が印加されることはない。
また、4番目のイベント(V
2 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた3番目のイベント(V
1 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
2 )に同期して電圧が印加されることもない。
また、5番目のイベント(V
3 )の極性(+)は、2つ前のサイクルにおいてセンシングされた3番目のイベント(V
1 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
3 )に同期して電圧が印加されることもない。
6番目のイベント(V
4 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた5番目のイベント(V
3 )の極性(+)及び2つ前のサイクルにおいてセンシングされた4番目のイベント(V
2 )の極性(+)と同じであるため、このイベント(V
4 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0112】
図16Bに示すように、左から3番目のイベント(V
0 )をセンシングした後にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合、4番目のイベント(V
1 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた3番目のイベント(V
0 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
1 )に同期して電圧が印加されることはない。
また、5番目のイベント(V
2 )の極性(+)は、2つ前のサイクルにおいてセンシングされた3番目のイベント(V
0 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
2 )に同期して電圧が印加されることもない。
6番目のイベント(V
3 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた5番目のイベント(V
2 )の極性(+)及び2つ前のサイクルにおいてセンシングされた4番目のイベント(V
1 )の極性(+)と同じであるため、このイベント(V
3 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0113】
図16Cに示すように、左から4番目のイベント(V
0 )をセンシングした後にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合、5番目のイベント(V
1 )の極性(+)は、2つ前のサイクルにおいてセンシングされた3番目のイベント(V
-1)の極性(−)と異なるため、このイベント(V
1 )に同期して電圧が印加されることはない。
6番目のイベント(V
2 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた5番目のイベント(V
1 )の極性(+)及び2つ前のサイクルにおいてセンシングされた4番目のイベント(V
0 )の極性(+)と同じであるため、このイベント(V
2 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0114】
図16Dに示すように、左から5番目のイベント(V
0 )をセンシングした後にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合、6番目のイベント(V
1 )の極性(+)は、1つ前のサイクルにおいてセンシングされた5番目のイベント(V
0 )の極性(+)及び2つ前のサイクルにおいてセンシングされた4番目のイベント(V
-1)の極性(+)と同じであるため、このイベント(V
1 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0115】
上記のように、
図16A乃至
図16Dに示した何れのタイミングでエネルギー印加スイッチ744を入力した場合でも、同じ極性(+)が3回連続したときの3回目のイベント(左から6番目のイベント)に同期して電圧が印加されることになる。
【0116】
また、演算処理部75は、入力された心電図においてR波と推定されるイベントをセンシングした後260m秒間は、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加されないようにDC電源部71を制御する。
【0117】
これにより、センシングしたイベントがR波のピークである場合、その次のT波が現れる時点で除細動が行われることを確実に回避すること、いわば、T波と推定されるピークにマスクをして除細動できないようにすることができる。
なお、イベントをセンシングした後、直流電圧が印加されない期間としては、260m秒間に限定されるものではなく、短くとも50m秒間、長くとも500m秒間とされる。この期間が50m秒間より短い場合には、T波と推定されるピークにマスクすることができなくなる場合がある。他方、この期間が500m秒間より長い場合には、次のサイクル(拍動)におけるR波をセンシングできなくなる場合がある。
【0118】
また、演算処理部75は、R波と推定されるイベントをセンシングした後100m秒間は、R波と推定されるイベントを新たにセンシングしないようにプログラムされている。
【0119】
これにより、R波に続いて、このR波と反対方向(反対の極性)に現れるS波のピークが増大してトリガーレベルに到達したような場合(この状態であっても、除細動を行うにあたり特に問題とはならない)に、このS波のピークをセンシングして、イベントの極性の連続性が損なわれる(同一極性のカウントがリセットされる)ことを防止することができる。
なお、イベントをセンシングした後、R波と推定されるイベントを新たにセンシングしない期間(ブランキング期間)としては、100m秒間に限定されるものではなく、短くとも10m秒間、長くとも150m秒間とされる。
【0120】
更に、演算処理部75は、エネルギー印加スイッチ744の入力後260m秒間は、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加されないようにDC電源部71を制御する。
これにより、エネルギー印加スイッチ744の入力によって発生したノイズ(その前回および前々回のイベントと同一極性のノイズ)をR波であると誤認してセンシングし、このノイズに同期させて除細動を行うようなことを防止することができる。
また、エネルギー印加スイッチ744の入力によって発生したノイズ(その前回および/または前々回のイベントと異なる極性のノイズ)により、イベントの極性の連続性が損なわれる(同一極性のカウントがリセットされる)ことを防止することができる。
更に、エネルギー印加スイッチ744の入力直後に発生したベースラインの変動をR波と誤認してセンシングし、これに同期させて除細動を行うようなことも防止することができる。
なお、エネルギー印加スイッチ744の入力後、直流電圧が印加されない期間としては、260m秒間に限定されるものではなく、短くとも10m秒間、長くとも500m秒間とされる。
【0121】
以下、本実施形態の心腔内除細動カテーテルシステムによる除細動治療の一例について、
図11に示すフローチャートに沿って説明する。
【0122】
(1)先ず、X線画像で、除細動カテーテル100の電極(第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gの構成電極)の位置を確認するとともに、心電位測定手段900(体表面に貼付した電極パッド)から心電計800に入力されている心電位情報(12誘導心電図)の一部を選択して、心電図入力コネクタ77から電源装置700の演算処理部75に入力する(
図11AのStep1)。このとき、演算処理部75に入力された心電位情報の一部は表示手段78に表示される(
図12参照)。また、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gの構成電極から、カテーテル接続コネクタ72、切替部76、心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力された心電位情報、除細動カテーテル100の基端側電位測定電極群33Gの構成電極から、カテーテル接続コネクタ72、心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力された心電位情報は、心電計800のモニタ(図示省略)に表示されている。
【0123】
(2)次に、外部スイッチ74であるモード切替スイッチ741を入力する。本実施形態における電源装置700は、初期状態において「心電位測定モード」であり、切替部76は第1接点を選択し、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が確保されている。
モード切替スイッチ741の入力により「除細動モード」となる(Step2)。
【0124】
(3)
図13に示すように、モード切替スイッチ741が入力されて除細動モードに切り替わると、演算処理部75の制御信号によって切替部76の接点が第2接点に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して演算処理部75に至る経路が確保され、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が遮断される(Step3)。切替部76が第2接点を選択しているとき、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報は、心電計800に入力することはできない(従って、この心電位情報を演算処理部75に送ることもできない。)。但し、切替部76を経由しない基端側電位測定電極群33Gの構成電極からの心電位情報は心電計800に入力される。
【0125】
(4)切替部76の接点が第2接点に切り替わったところで、除細動カテーテル100の第1DC電極群(31G)と第2DC電極群(32G)との間の抵抗を測定する(Step4)。カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して、演算処理部75に入力された抵抗値は、演算処理部75に入力された心電位測定手段900からの心電位情報の一部とともに、表示手段78に表示される(
図13参照)。
【0126】
(5)切替部76の接点が第1接点に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が復帰する(Step5)。
なお、切替部76の接点が第2接点を選択している時間(上記のStep3〜Step5)は、例えば1秒間とされる。
【0127】
(6)演算処理部75は、Step4で測定した抵抗が一定の値を超えているか否かを判定し、超えていない場合には、次のStep7(直流電圧を印加するための準備)に進み、超えている場合にはStep1(除細動カテーテル100の電極の位置確認)に戻る(Step6)。
ここに、抵抗が一定の値を超えている場合には、第1DC電極群および/または第2DC電極群が、所定の部位(例えば、冠状静脈の管壁、右心房の内壁)に確実に当接されていないことを意味するので、Step1に戻り、電極の位置を再調整する必要がある。
このように、除細動カテーテル100の第1DC電極群および第2DC電極群が、所定の部位(例えば、冠状静脈の管壁、右心房の内壁)に対し確実に当接されたときにのみ電圧を印加することができるので、効果的な除細動治療を行うことができる。
【0128】
(7)外部スイッチ74である印加エネルギー設定スイッチ742を入力して、除細動の際の印加エネルギーを設定する(
図11BのStep7)。
本実施形態における電極装置700によれば、印加エネルギーは1Jから30Jまで、1J刻みで設定することができる。
【0129】
(8)外部スイッチ74である充電スイッチ743を入力して、DC電源部71の内蔵コンデンサにエネルギーを充電する(Step8)。
【0130】
(9)充電完了後、外部スイッチ74であるエネルギー印加スイッチ744を入力する(Step9)。
【0131】
(10)後述するStep12でセンシングされる今回のイベント(V
n )が、エネルギー印加スイッチ744を入力してから何回目にセンシングされるものであるかを示す数(n)として「1」を発生させる。(Step10)。
【0132】
(11)演算処理部75は、前回のイベント(V
n-1 )(エネルギー印加スイッチ744の入力直前にセンシングしたイベント)をセンシングしてから100m秒間、ブランキング期間として、新たなセンシングを行わないように待機する(Step11)。
【0133】
(12)ブランキング期間経過後、演算処理部75はイベント(V
n )をセンシングする(Step12)。
【0134】
(13)演算処理部75は、Step12でセンシングしたイベント(V
n )の極性が、前回(1つ前にセンシングされた)のイベント(V
n-1 )の極性と一致しているか否かを判定し、一致している場合には、Step14に進み、一致していない場合は、Step10’において、上記の数(n)に1を加算してStep11に戻る(Step13)。
【0135】
(14)演算処理部75は、Step12でセンシングしたイベント(V
n )の極性が、前々回(2つ前にセンシングされた)のイベント(V
n-2 )の極性と一致しているか否かを判定し、一致している場合には、Step15に進み、一致していない場合は、Step10’において、上記の数(n)に1を加算してStep11に戻る(Step14)。
【0136】
(15)演算処理部75は、前回のイベント(V
n-1 )をセンシングしてから、イベント(V
n )をセンシングするまでの時間が260m秒間を超えているか否かを判定し、超えている場合にはStep16に進み、超えていない場合には、Step10’において、上記の数(n)に1を加算してStep11に戻る(
図11CのStep15)。
【0137】
(16)演算処理部75は、エネルギー印加スイッチ744を入力してから、イベント(V
n )をセンシングするまでの時間が260m秒間を超えているか否かを判定し、超えている場合にはStep17に進み、超えていない場合には、Step10’において、上記の数(n)に1を加算してStep11に戻る(Step16)。
【0138】
(17)演算処理部75によって切替部76の接点が第2接点に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して演算処理部75に至る経路が確保され、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が遮断される(Step17)。
【0139】
(18)切替部76の接点が第2接点に切り替わった後、演算処理部75からの制御信号を受けたDC電源部71から、演算処理部75の出力回路751、切替部76およびカテーテル接続コネクタ72を経由して、除細動カテーテル100の第1DC電極群と、第2DC電極群とに、互いに異なる極性の直流電圧が印加される(Step18、
図14参照)。
【0140】
ここに、演算処理部75は、Step12でセンシングしたイベント(V
n )に同期をとって、第1DC電極群および前記第2電極群に直流電圧が印加されるよう演算処理してDC電源部71に制御信号を送る。
具体的には、イベント(V
n )をセンシングした時点(次のR波が立ち上がり時)から一定時間(例えば、イベント(V
n )であるR波のピーク幅の1/10程度の極めて短い時間)の経過後に印加を開始する。
【0141】
図15は、本実施形態における除細動カテーテル100によって所定の電気エネルギー(例えば、設定出力=10J)を付与した際に測定される電位波形を示す図である。同図において、横軸は時間、縦軸は電位を表す。
先ず、演算処理部75がイベント(V
n )をセンシングしてから一定時間(t
0 )経過後、第1DC電極群31Gが−極、第2DC電極群32Gが+極となるよう、両者の間で直流電圧を印加することにより、電気エネルギーが供給されて測定電位が立ち上がる(E
1 は、このときのピーク電圧である。)。一定時間(t
1 )経過後、第1DC電極群31Gが+極、第2DC電極群32Gが−極となるよう、±を反転した直流電圧を両者の間で印加することにより、電気エネルギーが供給されて測定電位が立ち上がる(E
2 は、このときのピーク電圧である。)。
【0142】
ここに、イベント(V
n )をセンシングしてから印加を開始するまでの時間(t
0 )は、例えば0.01〜0.05秒、好適な一例を示せば0.01秒とされ、時間(t=t
1 +t
2 )は、例えば0.006〜0.03秒、好適な一例を示せば0.02秒とされる。これにより、R波であるイベント(V
n )に同期をとって電圧を印加することができ、効果的な除細動治療を行うことができる。
測定されるピーク電圧(E
1 )は、例えば300〜600Vとされる。
【0143】
(19) イベント(V
n )をセンシングしてから一定時間(t
0 +t)が経過後、演算処理部75からの制御信号を受けてDC電源部71からの電圧の印加が停止する(Step19)。
【0144】
(20)電圧の印加が停止した後、印加した記録(
図15に示したような印加時の心電位波形)が表示手段78に表示される(Step20)。表示時間としては、例えば5秒間とされる。
【0145】
(21)切替部76の接点が第1接点に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が復帰し、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報が、心電計800に入力される(Step21)。
【0146】
(22)心電計800のモニタに表示される、除細動カテーテル100の構成電極(第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gの構成電極)からの心電位情報(心電図)、並びに、心電位測定手段900からの心電位情報(12誘導心電図)を観察し、「正常」であれば終了とし、「正常でない(心房細動が治まっていない)」場合には、Step2に戻る(Step22)。
【0147】
本実施形態のカテーテルシステムによれば、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gにより、細動を起こした心臓に対して直接的に電気エネルギーを与えることができ、除細動治療に必要かつ十分な電気的刺激(電気ショック)を心臓のみに確実に与えることができる。
そして、心臓に直接的に電気エネルギーを与えることができるので、患者の体表に火傷を生じさせることもない。
【0148】
また、基端側電位測定電極群33Gの構成電極33によって測定された心電位情報は、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経ることなく、心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力され、さらに、この心電計800には、心電位測定手段900が接続されているので、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gからの心電位を心電計800が取得することのできない除細動治療の際(切替部76が第2接点に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から、切替部76を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が遮断されているとき)にも、基端側電位測定電極群33Gおよび心電位測定手段900によって測定された心電位情報を心電計800が取得することができ、心電計800において心電位を監視(モニタリング)しながら除細動治療を行うことができる。
【0149】
さらに、電源装置700の演算処理部75は、心電図入力コネクタ77を経由して入力された心電位波形に同期をとって電圧が印加されるように演算処理してDC電源部71を制御する(心電位波形における電位差がトリガーレベルに到達してから一定時間(例えば0.01秒)経過後に印加を開始させる)ので、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに対し、心電位波形に同期をとって電圧を印加することができ、効果的な除細動治療を行うことができる。
【0150】
さらに、演算処理部75は、除細動カテーテル100の電極群間の抵抗が一定の値を超えていない場合、すなわち、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gが、所定の部位(例えば、冠状静脈の管壁、右心房の内壁)に確実に当接されたときにのみ、直流電圧を印加するための準備に進むことができるよう制御するので、効果的な除細動治療を行うことができる。
【0151】
さらに、演算処理部75は、心電図入力コネクタ77を経由して心電計800から入力された心電図において、R波と推定されるイベントを逐次センシングし、エネルギー印加スイッチ744の入力後、n回目にセンシングされたイベント(V
n )の極性が、その1つ前にセンシングされたイベント(V
n-1 )の極性およびその2つ前にセンシングされたイベント(V
n-2 )の極性と一致したときに、イベント(V
n )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加されるように演算処理してDC電源部71を制御することにより、連続してセンシングされた3つのイベント(V
n-2 ),(V
n-1 )および(V
n )の極性が一致していなければ、イベント(V
n )に同期させて電圧を印加することはなく、3つのイベント(V
n-2 ),(V
n-1 )および(V
n )の極性が一致したときにのみ、3回目のイベント(V
n )に同期させて電圧を印加するので、確実にR波に同期させた除細動を行うことができる。
【0152】
図17Aは、患者の心臓に単発の期外収縮が発生したときに演算処理部75に入力された心電図(
図19に示したものと同様の心電位波形)である。
図17Aにおいて、左から第4番目のR波〔イベント(V
0 )〕の極性は(−)であり、これに続くT波のピークが増大し、このT波がイベント(V
1 )としてセンシングされている。
同図に示すように、イベント(V
0 )をセンシングした後に、エネルギー印加スイッチ744を入力した場合において、その直後にセンシングされたイベント(V
1 )の極性(+)は、その1つ前にセンシングされたイベント(V
0 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
1 )に同期して電圧が印加されることはない。これにより、ピークが増大してR波と誤認されたT波に同期して電圧が印加されることを回避することができる。
また、イベント(V
1 )の次にセンシングされたイベント(V
2 )は、R波のピークであるが、その極性(+)が、2つ前にセンシングされたイベント(V
0 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
2 )に同期して電圧が印加されることはない。
そして、イベント(V
2 )の次にセンシングされたイベント(V
3 )の極性(+)は、1つ前にセンシングされたイベント(V
2 )の極性(+)及び2つ前にセンシングされたイベント(V
1 )の極性(+)と同じであるため、R波のピークと確信できるイベント(V
3 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0153】
図17Bは、患者の心臓に期外収縮が連続して起こっているときに、演算処理部75に入力された心電図である。
同図に示すように、期外収縮により極性が反転して(−)となったイベント(V
0 )をセンシングした後にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合において、その直後にセンシングされたイベント(V
1 )の極性は(+)、その次にセンシングされたイベント(V
2 )の極性は(−)、その次にセンシングされたイベント(V
3 )の極性は(+)、その次にセンシングされたイベント(V
4 )の極性は(−)、その次にセンシングされたイベント(V
5 )の極性は(+)となっており、イベントの極性が交互に変化している。従って、このように、連続してセンシングされる3つのイベントの極性が一致していない状態では、これらのイベントの各々が、R波のピークではない可能性があると判断して、イベントに同期させて電圧を印加することはない。
また、イベント(V
5 )の次にセンシングされたイベント(V
6 )の極性(+)は、R波のピークであるが、その極性(+)が、2つ前にセンシングされたイベント(V
4 )の極性(−)と異なるため、このイベント(V
6 )に同期して電圧が印加されることはない。
そして、イベント(V
6 )の次にセンシングされたイベント(V
7 )の極性(+)は、イベント(V
6 )の極性(+)及びイベント(V
5 )の極性(+)と同じであるため、イベント(V
7 )のセンシング時において期外収縮が確実に治まったものと判断され、R波のピークと確信できるイベント(V
7 )に同期して、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0154】
図18は、ドリフトが発生してベースラインが下降し、その後、ベースラインが上昇して元のレベルまで復帰した心電図(
図20に示したものと同様の心電位波形)であり、ベースラインの下降および上昇がR波として誤認され、それぞれ、イベント(V
-1)およびイベント(V
1 )としてセンシングされている。
図18に示すように、ベースラインが上昇する直前にエネルギー印加スイッチ744を入力した場合において、その直後にセンシングされたイベント(V
1 )の極性(+)は、その1つ前にセンシングされたイベント(V
0 )の極性(+)と同じであるが、その2つ前にセンシングされたイベント(V
-1)の極性(−)と異なるため、このイベント(V
1 )に同期して電圧が印加されることはなく、これにより、R波と誤認されたベースラインの上昇時に同期して電圧が印加されることを回避することができる。
そして、イベント(V
1 )の次にセンシングされたイベント(V
2 )の極性(+)は、1つ前にセンシングされたイベント(V
1 )の極性(+)及び2つ前にセンシングされたイベント(V
0 )の極性(+)と同じであるため、イベント(V
2 )のセンシング時にはベースラインが安定しているものと判断され、R波のピークと確信できるイベント(V
2 )に同期して第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに電圧が印加される。
【0155】
さらに、演算処理部75は、R波と推定されるイベントをセンシングした後260m秒間は、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに直流電圧が印加されないようにDC電源部71を制御するので、センシングしたイベントがR波のピークである場合に、その次のT波が現れる時点で除細動が行われることを確実に回避することができる。
【0156】
さらに、演算処理部75は、R波と推定されるイベントをセンシングした後100m秒間は、R波と推定されるイベントを新たにセンシングしないようにプログラムされているので、センシングしたイベントがR波のピークであり、これに続いて反対方向に現れるS波のピークが増大してトリガーレベルに到達したような場合に、このS波のピークをセンシングして同一極性のカウントがリセットされることを防止することができる。
【0157】
さらに、演算処理部75は、エネルギー印加スイッチ744の入力後260m秒間は、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gに直流電圧が印加されないようにDC電源部71を制御するので、エネルギー印加スイッチ744の入力により発生したノイズをR波と誤認してセンシングし、このノイズに同期させて除細動を行ったり、このノイズによって同一極性のカウントがリセットされたりすることを防止することができる。
【0158】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の除細動カテーテルシステムはこれに限定されるものでなく、種々の変更が可能である。
例えば、電源装置の演算処理部は、エネルギー印加スイッチの入力後にセンシングされたイベント(V
n )の極性が、その1つ前にセンシングされたイベント(V
n-1 )の極性、その2つ前にセンシングされたイベント(V
n-2 )の極性、およびその3つ前にセンシングされたイベント(V
n-3 )の極性と一致したとき(同じ極性が4回連続したとき)に、4回目のイベント(V
n )に同期して、第1DC電極群および第2DC電極群に電圧が印加されるように演算処理してDC電源部を制御するものであってもよい。