(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子と、該発光素子への電流供給路と、該電流供給路を介して前記発光素子に電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路が前記発光素子への電流供給を停止した場合に前記発光素子及びその両電極間に接続する部位に蓄積する電荷を放電する放電路と、を備える発光素子回路中の前記発光素子の短絡を検出する発光素子故障検出器において、
前記電流供給路の、前記放電路とは重複していない部位に配置され、前記定電流回路が前記発光素子に供給する電流を瞬断する電流瞬断回路と、
前記発光素子のアノードとカソードとの間の前記瞬断の期間の電圧Vfを測定対象として出力を得る電圧検出部と、
前記出力から短絡の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする発光素子故障検出器。
前記発光素子回路は、設定された調光レベルに基づきパルス幅を設定し、該設定したパルス幅のパルス列からなるPWM信号を生成するPWM信号生成部と、該PWM信号生成部で生成された前記PWM信号を受け、該PWM信号と同じパターンのパルス列からなるPWM制御信号を出力する駆動回路と、前記電流供給路に設置され、前記PWM制御信号を入力し、該PWM制御信号により、前記発光素子への電流の供給と停止とを切り換える電流制御スイッチと、を更に備え、
前記PWM信号生成部は、前記パルス列から所定の周期で少なくとも1パルス以上のパルスを連続して除いて前記PWM信号を生成し、該生成されたPWM信号を前記駆動回路に供給し、
前記放電路と異なる前記電流供給路に設置された前記電流制御スイッチは、前記スイッチ部を兼用し、
パルスの存在しない期間を前記電流を瞬断した期間とすることにより、前記PWM信号生成部と前記駆動回路が前記スイッチ制御部を兼用する、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光素子故障検出器。
発光素子と、該発光素子への電流供給路と、該電流供給路を介して前記発光素子に電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路が前記発光素子への電流供給を停止した場合に前記発光素子及びその両電極間に接続する部位に蓄積する電荷を放電する放電路と、を備える発光素子回路中の前記発光素子の短絡を検出する発光素子故障検出方法において、
前記電流供給路の、前記放電路とは重複していない部位で、前記定電流回路が前記発光素子に供給する電流を瞬断する電流瞬断ステップと、
前記発光素子のアノードとカソードとの間の前記瞬断の期間の電圧Vfを測定対象として出力を得る電圧検出ステップと、
前記出力から短絡の有無を判定する判定ステップと、
を備えることを特徴とする発光素子故障検出方法。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子)を照明装置の光源として使用することが提案されている。
【0003】
有機EL素子が短絡した場合、有機EL素子のアノード/カソード間のインピーダンスに応じた電圧Vfが、アノード/カソード間にかかる。この電圧Vfは正常な状態の有機ELのアノード/カソード間の電圧よりも低い。
【0004】
特許文献1に記載されている故障検出手段は、有機EL素子のアノード電極の電位Vfを測定する。アノード電極の電位Vfが基準電圧より低い場合、特許文献1の故障検出手段は、有機EL素子の短絡故障を検出する。
【0005】
また、有機EL素子が短絡した場合、有機EL素子のアノード/カソード間のインピーダンスが低下するため、有機EL素子に流れる電流が増加する。
【0006】
特許文献2に記載されている故障検出手段は、有機EL素子に直列に接続した抵抗の電圧を測定する。電流の増加は、測定した電圧から検出できる。したがって、特許文献2の故障検出手段は、測定した電圧が所定の閾値を超えた場合、短絡故障を検出する。
【0007】
発光素子の短絡故障は、発光素子のアノード/カソード間の電圧Vf(出力電圧)の測定により、検出できる。
【0008】
特許文献3に記載されている回路保護部(故障検出手段)は、第1比較部と第2比較部とを備える。第1比較部は、LED(LIGHT EMITTING DIODE)の出力電圧が第1基準電圧より大きい場合、ハイレベルの電圧を出力する。また、第1比較部は、LEDの出力電圧が第1基準電圧より小さい場合、ローレベルの電圧を出力する。第2比較部は、第1比較部の出力電圧と第2基準電圧とを比較する。第2比較部は、その結果に応じてローレベル又はハイレベルの電圧を出力する。回路保護部は第1比較部、第2比較部の出力電圧から短絡故障を検出する。
【0009】
上記の故障検出手段は、発光素子のアノード/カソード間電圧Vf、又はVfに関連する電圧を測定する。そして、測定した電圧と基準電圧から、発光素子の短絡故障を検出する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る発光素子故障検出器を含む発光素子回路の構成を示す。発光素子回路は、発光素子1と、発光素子1に所定の電流を供給する定電流回路2と、定電流回路2に電力を供給する交流電源3と、発光素子1の短絡を検出する発光素子故障検出器4とを備える。また、発光素子故障検出器4は、電流瞬断回路5と、故障検出部6とを備える。
【0018】
発光素子回路では、静電容量が発光素子1と並列に接続されるとみなされる。コンデンサ7は、この静電容量を示す(
図1)。また、ダイオード8が、コンデンサ7及び発光素子1に並列に接続される。さらに、コイル9が、コンデンサ7及び発光素子1と、ダイオード8とを接続する電路の少なくとも一方に接続される。ダイオード8は、並列に接続された発光素子1の極性とは逆向きの極性で配置される。コンデンサ7と、発光素子1と、コイル9と、ダイオード8とは、放電路を形成する。この放電路は、発光素子1への電流供給が停止した場合に、発光素子1とコンデンサ7とが蓄積する電荷を放電する。なお、コイル9は抵抗でもよい。
【0019】
抵抗10は発光素子1に直列に接続される。定電流回路2は、抵抗10を介して発光素子1に電流を供給する。
【0020】
電流瞬断回路5は、スイッチ部50とスイッチ制御部51とを備える。スイッチ部50は、電流の供給と停止の切り換えにより、電流を瞬断する。スイッチ制御部51は、スイッチ部50の切り換えを制御することにより、電流の瞬断を制御する。
【0021】
スイッチ部50は、例えばFET(Field Effect Transistor)で構成される。スイッチ部50は、定電流回路2から発光素子1への電流供給路上であって、放電路とは異なる位置に配置される。
【0022】
スイッチ制御部51は、所定のタイミングでスイッチ部50にON/OFF切り換え信号を出力する。スイッチ部50がFETの場合、スイッチ制御部51は切り換え信号をFETのゲート電極に出力する。
【0023】
故障検出部6は、電圧検出部60と、直流電源61と、判定部62とを備える。電圧検出部60は、2つの入力端子を有し、両端子間に印加された電圧に比例する信号を出力する。直流電源61は、電圧検出部60の2つの入力端子の一方に接続され、その一方の入力端子に直流電圧である基準電圧Vcを出力する。判定部62は、電圧検出部60の出力を受け、その出力に基づいて短絡故障の有無を判定する。
【0024】
電圧検出部60は、例えば差動増幅器で構成される。電圧検出部60は、発光素子1のアノード/カソード間の電圧Vfを検出対象として、電圧Vfから固定値である基準電圧Vcを差し引いた電圧を入力とした場合の検出結果を出力する。
図1では、電圧検出部60の2入力端子の一方には直流電源61が直列に接続されている。また、一方の入力端子は、直流電源61を介して発光素子1のカソードと接続されている。2入力端子の他方は発光素子1のアノードと接続される。基準電圧Vcの極性は、
図1に示す例では入力端子側が正極、カソード側が負極である。これにより、電圧検出部60の2入力端子間にはVf−Vcの電圧が印加される。
【0025】
判定部62は、電圧検出部60からの出力を入力している。また、判定部62は、その出力から短絡故障の有無を判定する。判定部62は、短絡故障が発生していると判定すると、制御信号を定電流回路2に出力する。定電流回路2はこの制御信号を入力し、これにより発光素子1への電流供給を停止する。
【0026】
図2Aおよび
図2Bは、実施形態1の発光素子故障検出器4の動作を示す。特に、
図2Aは、正常な状態の発光素子1のアノード/カソード間の電圧Vfの時間変化を示す。また、
図2Bは、短絡した発光素子1に対して電流が瞬断した場合の、発光素子1に流れる電流と発光素子1のアノード/カソード間の電圧Vfの時間変化を示す。
【0027】
正常な状態の発光素子1のアノード/カソード間電圧VfをVfnと仮定する。電流が瞬断した場合、
図2Aに示すように、電圧VfはVfnからVfn
0へわずかに低下する。すなわち、電圧Vfは急速に0Vに低下しない。これは、コンデンサ7及び発光素子1が蓄積する電荷が放電路を介して放電される時定数が大きいためである。なお、正常な状態は、短絡が生じていない状態を指す。
【0028】
一方、発光素子1が短絡した場合、発光素子1は等価回路として、小さな抵抗値を有する抵抗に置き換えできる。したがって、発光素子1の電圧VfはVfnよりも小さいVfaに低下する。また、短絡した発光素子1においては、放電時定数が小さいため、
図2Bに示すように、発光素子1の電圧Vfは電流の瞬断により0Vに急減する。
【0029】
瞬断の期間は、短絡した発光素子1において、電圧Vfが0Vに低下する時間以上、且つ、瞬断による発光素子1の発光停止が観察者に認識されない時間に設定する。この瞬断の期間はあらかじめ計算又は試行により求められる。なお、発光素子1の発光停止が観察者に認識されない瞬断では、正常な状態の発光素子1の電圧Vfは0Vにまで低下しない。
【0030】
従って、短絡故障検出の閾値はVfn
0よりも小さく、0Vよりも大きく設定される。電流の瞬断により、電圧Vfが閾値以下に低下した場合、発光素子故障検出器4は短絡を検出する。すなわち、判定部62は短絡故障が発生していると判定する。
【0031】
閾値の設定について従来例と比較して説明する(
図3A、
図3B)。従来例においては、
図3Aに示すように、閾値は、VfnとVfaの間に設定される。そして、従来の発光素子故障検出器はVfが閾値以下であるかどうかにより短絡を検出していた。Vfnは、発光素子1のV−I特性のばらつき、温度変化、経年変化等により大きく変動する。また、Vfaは短絡した発光素子1の抵抗成分に依存するので、Vfaは、短絡の状態により大きく変動する。したがって、閾値は、Vfnとfaの変動を予測した後、どちらの変動の範囲にも属さない範囲W内に設定される。この範囲Wは狭いため、閾値の設定は難しい。
【0032】
一方、本実施形態において電流が瞬断した場合、正常な状態の発光素子1の電圧VfはVfn
0にわずかに低下する。本実施形態において電流が瞬断した場合、短絡した発光素子1の電圧Vfは0Vに急激に低下する。
図3Bに示すように、Vfn
0は、発光素子1のV−I特性のばらつき、温度変化、経年変化等により変動するので、閾値は、Vfn
0の変動の下限よりも小さく、且つ0Vよりも大きく設定される(
図3B)。この範囲W
0は、従来例の範囲Wに比べ、非常に広い。なお、0Vよりも大きい値とは、実用的には、0Vに裕度Δを加えた値よりも大きいことを指す。裕度Δは、正値であればよい。例えば、裕度Δは、電圧Vfが0V近傍で有する揺らぎ幅の1/2に設定される。
【0033】
上述のような閾値の設定により、発光素子故障検出器4は、電流遮断により発光素子1のアノード/カソード間の電圧Vfが、閾値よりも小さい場合を短絡故障として検出できる。
【0034】
図1に示す発光素子故障検出器4の動作を具体的に説明する。発光素子1は、定電流回路2が供給する電流により発光し、照明装置や表示装置等に利用される。
【0035】
電流瞬断回路5は発光素子1に供給される電流を、放電路ではない電流供給路で瞬断する。瞬断の期間は、既に説明したとおりに設定される。
【0036】
図1において、基準電圧Vcを閾値に設定する。電圧検出部60は、発光素子1の両電極間の電圧Vfから基準電圧Vcを差し引いた電圧を入力として測定する。短絡故障の発生は、電流が瞬断した場合、電圧Vfが基準電圧Vcよりも小さくなるかどうかにより判断される。
図1の場合、判定部62は、電流が瞬断した場合、電圧検出部60の2入力端子間の入力電圧の符号により、すなわち電圧検出部60の出力の符号により、短絡故障の発生を判定する。符号の判定には、判定基準として0を設定する。判定部62は、電圧検出部60の出力とこの判定基準との大小関係を判定する。電圧検出部60の入出力の符号が同じに設計されている場合は(以下ではこれを前提とするが、入出力の符号が反転する場合は、正負を逆にして判定すればよい)、電圧検出部60の出力が負であれば短絡故障が発生していると判定する。この場合の判定基準0による判定は、電圧Vfが閾値としての基準電圧Vcより小さいかどうかの判定と等価である。
【0037】
判定部62は短絡故障が発生していると判定すると、例えば、定電流回路2に対して、発光素子1への電流供給を停止する制御信号を出力する。
【0038】
図4は、発光素子故障検出処理のフローチャートを示す。
【0039】
交流電源3がON状態にされる。これにより、定電流回路2は発光素子1への電流を供給する。電流が供給された発光素子1は発光を開始する(ステップS1)。
【0040】
次に、電流瞬断回路5は、所定のタイミングで発光素子1への電流供給を瞬断する(ステップS2)。電圧検出部60は、発光素子1のアノード/カソード間電圧Vfの測定を行う(ステップS3)。ただし、
図1の例では、電圧検出部60は電圧Vfから基準電圧Vcを差し引いた電圧を入力としてその測定結果を出力として得る。次に、判定部62は、電圧検出部60の出力が判定基準0よりも小さいかどうかを判定する(ステップS4)。電圧検出部60の出力が判定基準0よりも小さければ、すなわち、出力の符号が負の場合(ステップS4;YES)は、短絡故障が発生していると判定される。この判定により、例えば定電流回路2をOFFにして発光素子1への電流供給を停止する等の短絡に対処する処置を実施される(ステップS5)。これにより、発光素子故障検出処理は終了する。電圧検出部60の出力が判定基準0以上であれば、すなわち、出力の符号が正又は0の場合(ステップS4;NO)、判定部62は、発光素子1が正常であると判定する。この判定により、ステップS2に戻り、それぞれの構成要素が発光素子故障検出処理を繰り返す。なお、短絡に対処する処置とは、例えば定電流回路2をOFFにして発光素子1への電流供給を停止する以外に、又はその電流供給を停止するとともに、短絡故障の発生を知らせる表示を行う、又は警報を鳴らすなどが考えられる。
【0041】
図3Bに示す閾値(基準電圧Vc)の設定が可能な範囲W
0は、
図3Aに示す従来の閾値の設定が可能な範囲Wに比べると広い。また、範囲W
0の下限は、変動を考慮する必要のなく、0Vよりも大きければよい。従って、閾値を裕度Δ以上で0V近傍に設定することにより、事実上Vfn
0の変動幅を考慮せずに、換言すれば素子毎のV−I特性、経時変化、環境温度等のばらつきや変動を考慮せずに、また、短絡故障の程度を考慮せずに、短絡故障検出の基準となる閾値(ここでは基準電圧Vc)を設定することができると言える。
【0042】
なお、直流電源61は、電圧検出部60の
図1に示す入力端子ではなく他方の入力端子に接続しても良い。ただし、この場合は、直流電源61は、電圧検出部60のアノード側の電位が基準電圧Vcだけ低くなるように、
図1の場合とは逆極性の電圧を印加する。このようにすれば、電圧検出部60の出力は
図1に示す構成の場合と同様となる。
【0043】
判定部62は、電圧検出部60に含めても良い。例えば、電圧検出部60は、その2入力端子間の入力電圧が負値となる場合のみ所定の出力を出す。
【0044】
また、判定部62は、必ずしも故障検出部6に含まれている必要はない。例えば、電圧検出部60から負の出力が定電流回路2に入力された場合、定電流回路2がOFFになるように設計されていてもよい。かかる設計では、判定部62は実質的には定電流回路2に内蔵されていることになる。この場合、
図4に示すフローチャートのステップS4は実質的には定電流回路2の中で実行されることになる。
【0045】
さらに、スイッチ部50をFETで構成する例を示したが、高速に電流のON/OFF切り換えができるものであれば、これに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチから構成してもよい。
【0046】
図5に実施形態1に係る発光素子故障検出器4の変形例を示す。
図1に示す発光素子故障検出器4と異なる点は故障検出部6の構成である。この変形例では、直流電源61を使用せず、電圧検出部60の2つの入力端子は発光素子1のアノードとカソードにそれぞれ直接接続される。また、判定部62は、電圧検出部60の出力の符号を判定するのではなく、電圧検出部60の出力が0とは異なる判定基準εよりも小さいかどうかを判定する。すなわち、判定部62は、電圧検出部60の出力が判定基準εよりも小さいと判定すれば、短絡故障が発生したと判定し、短絡故障発生時のあらかじめ定められた処理を実行する。判定部62は、電圧検出部60の出力が判定基準ε以上と判定すれば、短絡故障が発生しておらず、正常と判定する。なお、判定基準εは、実施形態1との対比で言えば、電圧検出部60の2入力端子間に基準電圧Vcを入力した場合の出力に相当する値である。従って、判定部62によるこの判定は、電圧Vfが閾値である基準電圧Vcよりも小さいかどうかを判定することと等価である。この変形例においても、電圧検出部60又は定電流回路2は、判定部62を含むように構成されてもよい。
【0047】
複数個の発光素子1を直列接続して使用した場合、発光素子回路に電流瞬断回路5を設置してもよい。この場合、各発光素子1のアノード/カソード間にそれぞれ故障検出部6を設置することができる。これにより、いずれかの発光素子1で短絡故障が発生した場合、これを検出することができる。また、その検出結果に基づいて、例えば、定電流回路2をOFFにし、複数個の発光素子1全体に対する電流の供給を停止することができる。このような措置を講ずることにより、他の正常な発光素子1に過剰な電圧がかからないので、故障が誘発されることを防止することができる。なお、短絡故障を検出した場合の措置は、これに限定されることはなく、あらかじめ定められた内容に従って各種措置を講じることもできる。
【0048】
このように、実施形態1に係る発光素子故障検出器4及び発光素子故障検出方法によれば、短絡故障検出の基準となる閾値(または基準電圧Vc)は、発光素子1のアノード/カソード間電圧Vfのばらつき、変化、変動等に影響されずに設定される。したがって、本実施形態によれば、発光素子1のアノード/カソード間電圧Vfのばらつき、変化、変動等に影響されずに短絡故障を検出できる発光素子故障検出器4及び発光素子故障検出方法を提供することができる。
【0049】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る発光素子故障検出器4を備える発光素子回路の構成例を示す。本実施形態においては、発光素子回路は、発光素子1の調光制御にPWM(Pulse Width Modulation)制御を使用する。
【0050】
PWM制御においては所定周波数のパルス列が発光素子1に供給される。発光素子1の調光は、供給されるパルスのパルス幅により制御される。
【0051】
本実施形態の発光素子回路は、PWM調光回路11を備える。PWM調光回路11は、電流制御スイッチ110と調光レベル設定部111とPWM信号生成部112と駆動回路113とを備える。電流制御スイッチ110は、放電路とは異なる発光素子1への電流供給路に設置される。また、電流制御スイッチ110は、発光素子1への電流供給のON/OFF制御を行う。電流制御スイッチ110は、例えば、FETで構成される(
図5)。調光レベル設定部111は、発光素子1の調光レベルを設定する。PWM信号生成部112は、設定された調光レベルからパルス幅を選択する。PWM信号生成部112は、選択されたパルス幅を有する所定周波数のパルス列(PWM信号)を生成する。駆動回路113は、PWM信号に従って、電流制御スイッチ110による電流供給のON/OFFを制御する。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0052】
実施形態2では、実施形態1における電流瞬断回路5はPWM調光回路11の一部で構成される。具体的には、電流制御スイッチ111は、実施形態1におけるスイッチ部50を兼用する。また、PWM信号生成部112と駆動回路113とが、実施形態1におけるスイッチ制御部51を兼用する。
【0053】
実施形態2は、PWM信号生成部112が、所定の周期でパルス列の一部を連続して間引いてパルス列を生成することを特徴とする。例えば、Nパルス当たり1パルス又は複数のパルスがパルス列から連続して間引かれる。この間引きにより生じるパルスの存在しない期間が実施形態1における電流の瞬断の期間に相当する。
【0054】
実施形態2では、電流が発光素子1にパルス列で供給されるため、電流の瞬断が絶えず起こる。従って、パルス列に応じて電圧の低下も絶えず生じる。しかし、パルス列が連続している場合、瞬断の期間は非常に短いので、電圧Vfが0Vまで急激に低下しない。PWM信号生成部112は、発光素子1が短絡した状態において、電圧Vfが0Vまで低下する時間とパルス幅から、連続して間引くパルス数を選択する。瞬断の期間の設定は実施形態1と同様である。パルス幅は、PWM信号生成部112により、調光レベルに応じて選択される。
【0055】
本実施形態の動作は、瞬断の方法を除き、実施形態1と同様である。
図4のフローチャートのステップS2の「所定のタイミングで電流供給の瞬断を実行する」という処理内容を、実施形態2では、「所定のタイミングでパルス列からパルスを間引くことにより電流供給の瞬断を実行する」という内容に変更すれば
図4のフローチャートは実施形態2でも成立する。
【0056】
実施形態2によれば、PWM信号生成部112は所定の周期でパルスを間引いたパルス列を生成する。この間引かれたパルス列を発光素子1に供給することにより、PWM信号生成部112と駆動回路113とが、実施形態1におけるスイッチ制御部51の機能を兼ね備える。また、電流制御スイッチ110は実施形態1におけるスイッチ部50の機能を兼ね備える。実施形態2によれば、新たなハードウェアの追加なしに、電流瞬断回路5を実現できる。本実施形態における発光素子故障検出器4は実施形態1に記載の効果と同様の効果を奏する。
【0057】
なお、
図6に示す故障検出部6の構成は、
図5に示す故障検出部6の構成に置き換えてもよい。
【0058】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0059】
例えば、図示した回路構成は例示であり、同様の機能が得られるならば、任意に変更可能である。
【0060】
発光素子故障検出器4をCPU(Central Processing Unit)、メモリなどから構成することもできる。この場合、CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行して上述の発光素子故障検出処理を実行することができる。
【0061】
さらに、発光素子1は、有機EL素子の他に、LED(LIGHT EMITTING DIODE)素子であってもよい。
【0062】
さらに、所定のタイミングでON/OFF切り換え信号を出力するスイッチ制御部51、またはPWM調光回路11のPWM調光機能を利用して、電流を瞬断したが、他の構成により、発光素子1に流れる電流を瞬断してもよい。また、電流が発光素子1に流れないように、発光素子回路の電流供給路にバイパス手段を設けて、バイパスさせてもよい。
【0063】
さらにまた、発光素子1のアノード/カソード間の電圧Vfを、発光素子1に並列に接続された差動増幅器からなる電圧検出部60によって検出する構成を使用したが、他の検出手法を使用してもよい。
【0064】
判定部62は、定電流回路2に対して、発光素子1への電流供給を停止する制御信号を出力したが、かかる制御信号を電流瞬断回路5のスイッチ部50に出力してスイッチ部50をOFFに切り換えて発光素子1への電流供給を停止してもよい。この場合、判定部62は、スイッチ部50をOFF状態に維持するために、判定部62の出力段にたとえば、フリップフロップを設けて、上記制御信号を出力し続ける構成とするとよい。
【0065】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0066】
(付記1)
発光素子と、該発光素子への電流供給路と、該電流供給路を介して前記発光素子に電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路が前記発光素子への電流供給を停止した場合に前記発光素子及びその両電極間に接続する部位に蓄積する電荷を放電する放電路と、を備える発光素子回路中の前記発光素子の短絡を検出する発光素子故障検出器において、
前記放電路とは異なる前記電流供給路に配置され、前記定電流回路が前記発光素子に供給する電流を瞬断する電流瞬断回路と、
前記発光素子のアノードとカソードとの間の前記瞬断の期間の電圧Vfを測定対象として出力を得る電圧検出部と、
前記出力から短絡の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする発光素子故障検出器。
【0067】
(付記2)
所定の直流電圧を発生し、前記電圧検出部の入力端子の一方に接続される直流電源を備え、
前記直流電圧は、前記入力端子間の電位差が、前記電圧Vfから前記直流電圧の絶対値が差し引かれた電圧に等しくなる極性を有し、
前記出力は、前記入力端子間の電位差が、前記電圧Vfから前記直流電圧の絶対値が差し引かれた電圧に等しい場合の出力であり、
前記判定部は、前記出力の符号により短絡の有無を判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の発光素子故障検出器。
【0068】
(付記3)
前記電流瞬断回路は、
前記定電流回路から前記発光素子への電流の供給と停止
とを切り換えるスイッチ部と、
該スイッチ部の前記切り換えを制御するスイッチ制御部と、を備える、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の発光素子故障検出器。
【0069】
(付記4)
前記発光素子回路は、設定された調光レベルに基づきパルス幅を設定し、該設定したパルス幅のパルス列からなるPWM信号を生成するPWM信号生成部と、該PWM信号生成部で生成された前記PWM信号を受け、該PWM信号と同じパターンのパルス列からなるPWM制御信号を出力する駆動回路と、前記電流供給路に設置され、前記PWM制御信号を入力し、該PWM制御信号により、前記発光素子への電流の供給と停止
とを切り換える電流制御スイッチと、を更に備え、
前記PWM信号生成部は、前記パルス列から所定の周期で少なくとも1パルス以上のパルスを連続して除いて前記PWM信号を生成し、該生成されたPWM信号を前記駆動回路に供給し、
前記放電路と異なる前記電流供給路に設置された前記電流制御スイッチは、前記スイッチ部を兼用し、
パルスの存在しない期間を前記電流を瞬断した期間とすることにより、前記PWM信号生成部と前記駆動回路が前記スイッ
チ制御部を兼用する、
ことを特徴とする付記3に記載の発光素子故障検出器。
【0070】
(付記5)
前記PWM信号生成部は、前記設定されたパルス幅と、あらかじめ設定された前記瞬断の期間とから前記連続して除くパルスの数を選択する、
ことを特徴とする付記4に記載の発光素子故障検出器。
【0071】
(付記6)
前記発光素子は、有機EL素子である、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の発光素子故障検出器。
【0072】
(付記7)
前記発光素子は、LED素子である、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の発光素子故障検出器。
【0073】
(付記8)
発光素子と、該発光素子への電流供給路と、該電流供給路を介して前記発光素子に電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路が前記発光素子への電流供給を停止した場合に前記発光素子及びその両電極間に接続する部位に蓄積する電荷を放電する放電路と、を備える発光素子回路中の前記発光素子の短絡を検出する発光素子故障検出方法において、
前記放電路とは異なる前記電流供給路で、前記定電流回路が前記発光素子に供給する電流を瞬断する電流瞬断ステップと、
前記発光素子のアノードとカソードとの間の前記瞬断の期間の電圧Vfを測定対象として出力を得る電圧検出ステップと、
前記出力から短絡の有無を判定する判定ステップと、
を備えることを特徴とする発光素子故障検出方法。
【0074】
なお、上記実施形態は、本発明の具体的実施態様の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自在に変形、応用あるいは改良して実施できる。
【0075】
本発明は、2011年7月4日に出願された日本国特許出願2011−148536号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2011−148536号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。