【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明に係る食品収納袋についてより詳細に説明するが、本発明の食品収納袋は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例および比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0032】
<引張弾性率>
JIS−K−7127に準拠し、幅10mm×長さ200mmのフィルムを、株式会社島津製作所製 引張試験機(AG−20KN×Dplus)で、20℃の条件下でチャック間距離100mm、引張速度200mm/分で引っ張った際の初期値から算出した。なお、当該引張弾性率の測定は、ロール状のフィルムの長手方向(MD方向:食品収納袋の幅方向)、および、ロール状のフィルムの幅方向(TD方向:食品収納袋の高さ方向)について実施した。
【0033】
<破断伸度>
JIS−K−7127に準拠し、幅10mm×長さ200mmのフィルムを、株式会社島津製作所製 引張試験機(AG−20KN×Dplus)で、20℃の条件下でチャック間距離100mm、引張速度200mm/分で引っ張り、破断したときの伸度を求めて破断伸度とした。なお、当該破断伸度の測定も、上記した引張弾性率の測定と同様に、ロール状のフィルムの長手方向、および、ロール状のフィルムの幅方向について実施した。
【0034】
<内容物収納時の蒸気孔部の剥離>
実施例および比較例で得られた食品収納袋(幅×高さ=150mm×220mmの開閉可能なジッパー付き三方袋)の開口部を開口して、一塊の収納物(ブロッコリー100g)を開口部際から落下させた。そして、そのように収納物を落下させた後の食品収納袋の切り欠き(蒸気孔)の周囲のヒートシールの剥離状態を、目視によって下記の3段階で官能評価した。
○:切り欠きの周囲のヒートシールに剥離が認められない。
△:切り欠きの周囲のヒートシールの一部(概ね1/2以下)に剥離が認められる。
×:切り欠きの周囲のヒートシールがほとんど剥離した。
【0035】
<印刷インク剥がれ(レンジ内汚れ)>
実施例および比較例で得られた食品収納袋(幅×高さ=150mm×220mmの開閉可能なジッパー付き三方袋)に、ブロッコリー100gを収納した後、7℃の雰囲気下にて約24時間放置して中身を十分に冷却させた。しかる後に、その食品包装袋を、600kwの電子レンジの中に入れ、1分40秒間加熱した。そして、加熱後の食品包装袋における印刷状態を剥離状態を、目視によって下記の3段階で官能評価した。
○:食品包装袋の印刷状態に剥離、ゆがみ等の乱れがまったく認められない。
△:食品包装袋の印刷状態に剥離、ゆがみ等の乱れがわずかに認められる。
×:食品包装袋の印刷状態に剥離、ゆがみ等の乱れが認められ、電子レンジ内にインクの付着が認められる。
【0036】
<蒸気抜け>
「印刷インク剥がれ(レンジ内汚れ)」と同様にブロッコリー100gを収納して冷却させた食品包装袋を電子レンジで加熱する際に、食品包装袋の切り欠き(蒸気孔)の形成部分以外の部分から蒸気が抜けているか否かを、目視によって下記の3段階で官能評価した。
○:蒸気の抜けがまったく認められない。
△:蒸気の抜けがわずかに認められる。
×:切り欠き形成部分以外の複数箇所から蒸気の抜けが認められる。
【0037】
<蒸気孔部の剥離状態>
「印刷インク剥がれ(レンジ内汚れ)」と同様にブロッコリー100gを収納して冷却させた食品包装袋を電子レンジで加熱した後に、食品包装袋の切り欠き(蒸気孔)の周囲のヒートシールの剥離状態を、目視によって下記の4段階で官能評価した。
◎:切り欠きの周囲のヒートシールが綺麗に剥離している。
○:切り欠きの周囲のヒートシールに若干剥離していない部分が認められる。
△:切り欠きの周囲のヒートシールの概ね1/2程度がに剥離していない。
×:切り欠きの周囲のヒートシールがほとんど剥離していない。
【0038】
<防曇性>
実施例および比較例で得られた食品収納袋を構成するフィルムを用いて、次の手順にて防曇性を測定した。
(1)500mLの上部開口容器に50℃の温水を300mL入れる。
(2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
(3)5℃の冷室中に放置する。
(4)5℃の冷室に放置30分後、冷室から取り出し、フィルム測定面の露付着状況を6段階で評価する。
・評価6級:全面露なし(付着面積ゼロ)
・評価5級:若干の露付着(付着面積1/5まで)
・評価4級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
・評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
・評価2級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
・評価1級:全面露付着(付着面積3/4以上)
【0039】
<ヒートシール強度>
実施例および比較例において食品収納袋の形成用に用いたロール状のフィルム(ラミネートフィルムを含む)から、長手方向の長さ=500mm×幅方向(長手方向と直角する方向)の長さ=50mmの大きさのストリップ状の試験片を切り出し、熱融着層が内側となるように幅方向に沿って二つ折りにすることによって、250mm×50mmの大きさの長方形状の試験片を準備した。しかる後、熱傾斜試験機(東洋精機製HG−100 5点温度水準タイプ)を用いて、圧力98KPa、所定の温度(130℃および140℃)で1秒間の圧着時間にてヒートシールした。そして、そのヒートシールした試験片の中央部を15mm幅にカットした後、東洋ボールドウィン株式会社製「テンシロン」(STM−T−50BP)を用いて、距離20mmのチャック間に、低温でシールした側を上にして試験片を把持させて、200mm/分の速度(チャート速度200mm/分)で剥離した際の強度を測定し、その測定値をヒートシール強度(N/15mm)とした。
【0040】
また、実施例および比較例において食品包装袋を作製する際には、下記の4種類の合成樹脂フィルム(ポリプロピレン系樹脂フィルム)を用いた。
・フィルムA:東洋紡績株式会社製 防曇剤含有延伸ポリプロピレン系樹脂(OPP)フィルム P2161(厚み=25μm)
・フィルムB:東洋紡績株式会社製 防曇剤含有延伸ポリプロピレン系樹脂(OPP)フィルム P5562(厚み=25μm)
・フィルムC:グンゼ株式会社製 延伸ポリプロピレン系樹脂(OPP)フィルム(防曇剤非含有) SVS2(厚み=25μm)
・フィルムD:東洋紡績株式会社製 防曇剤含有延伸ポリプロピレン系樹脂(OPP)フィルム P5563(厚み=25μm)
なお、それらのフィルムの特性を、以下の表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例1]
上記したフィルムD(一定幅のロール状)とフィルムB(一定幅のロール状)とを、株式会社オリエント総業社製のドライラミネータを用いて、DIC株式会社製エーテル系接着剤(ディックドライLX401A:ポリエーテルポリウレタン系接着剤)を使用して、常温下でドライラミネートすることによって、厚さ約50μmのラミネートフィルムを得た。なお、当該ラミネートフィルムを作製する際には、フィルムBの表面(フィルムDとの接合面)に、所定のインク(DIC株式会社製包装用インキ(ユニビアNTK1:溶剤型(ノントルエン)裏印刷用グラビアインキ)によって印刷を施した。そして、そのフィルムDとフィルムBとからなるラミネートフィルムを、フィルムDが内側になるように連続的に二つ折りして、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させ、さらに、所定の間隔(約150mm間隔)で、折り畳み端縁際に、約130℃の温度で直径約12mmの半円形のヒートシールを断続的に施し、そのヒートシール部分の中心に、直径約5mmの半円形の孔を穿設した。しかる後、その半円形の孔が幅方向の中央に位置するように、フィルムの幅方向に沿った直線状に、所定の温度(約370℃)にて所定の幅(熱融着部分の幅=約0.3mm)の溶断シールを施すことによって、実施例1の食品収納袋を得た。そして、その実施例1の食品収納袋を、上記した方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0043】
また、得られた実施例1の食品収納袋の概観を
図1(a)に示す。食品収納袋1は、幅×高さ=150mm×220mmの大きさを有した三方袋であり、奥側の端縁(折り畳み側の端縁)の中央(左右の中央)には、直径約5mmの半円形状の切り欠き2が形成されており、その周囲に0.3mm幅のヒートシール部分3が設けられている。さらに、開口部には、合成樹脂製のジッパー(長尺状の凹溝に長尺状の突条を嵌め込むタイプのもの)4が融着されており、密封、開放可能になっている。
【0044】
[実施例2]
上記したフィルムC(一定幅のロール状)とフィルムBとを実施例1と同様な方法でラミネートすることによってラミネートフィルムを得た。しかる後、そのフィルムCとフィルムBとからなるラミネートフィルムを、フィルムCが内側になるように連続的に二つ折りして、実施例1と同様な方法で、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させ、所定の間隔で折り畳み端縁際に半円形のヒートシールを断続的に施し、当該ヒートシール部分の中心に半円形の孔を穿設した後に、所定の温度にて所定の幅の溶断シールを施すことによって、実施例2の食品収納袋を得た。そして、その実施例2の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0045】
[実施例3]
実施例2と同様な方法で得られたフィルムCとフィルムBとからなるラミネートフィルムを、フィルムCが内側になるように連続的に二つ折りして、実施例1と同様な方法で、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させた後に、フィルムの幅方向の略中央に、所定の間隔(約150mm間隔)で、約130℃の温度で直径約12mmの円形のヒートシールを断続的に施し、そのヒートシール部分の中心に円形の孔を穿設した後、その円形の孔の中心を通り、かつ、フィルムの幅方向に沿った直線状に、所定の幅(熱融着部分の幅=約0.3mm)の溶断シールを施すことによって、実施例3の
食品収納袋を得た。そして、その実施例3の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0046】
また、得られた実施例3の食品収納袋の概観を
図1(b)に示す。食品収納袋11の左右の端縁の中央(高さ方向の中央)には、それぞれ、直径約5mmの半円形状の切り欠き2,2が形成されており、それらの切り欠き2,2の周囲に0.3mm幅のヒートシール部分3,3が設けられている。さらに、実施例1の食品収納袋と同様に、開口部には、合成樹脂製のジッパー4が融着されており、密封、開放可能になっている。
【0047】
[実施例4]
実施例2と同様な方法で得られたフィルムCとフィルムBとからなるラミネートフィルムを、実施例1と同様に、フィルムCが内側になるように連続的に二つ折りして、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させた。しかる後に、所定の間隔(約150mm間隔)で、直径約12mmの円形のヒートシール(第一ヒートシール)を断続的に施すとともに、その円形の第一ヒートシール部分の内側(袋の奥側)に、長さ15mmで幅5mmの矩形にヒートシール(第二ヒートシール)を、開放側の端縁に対して約45°の角度で傾斜するように施した。そして、円形の第一ヒートシール部分の中心に円形の孔を穿設した後、その円形の孔の中心を通り、かつ、フィルムの幅方向に沿った直線状に、所定の幅(熱融着部分の幅=約0.3mm)の溶断シールを施すことによって、実施例4の食品収納袋を得た。そして、その実施例4の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0048】
また、得られた実施例4の食品収納袋の概観を
図1(c)に示す。食品収納袋21の左右の端縁の中央(高さ方向の中央)には、それぞれ、直径約5mmの半円形状の切り欠き2,2が形成されており、それらの切り欠き2,2の周囲に0.3mm幅の第一ヒートシール部分3,3が設けられている。さらに、切り欠き2,2の内側(袋の奥側)には、長さ15mmで幅5mmの矩形の第二ヒートシール部分5,5が設けられており、開放側の端縁に対して約45°の角度で傾斜した状態になっている。なお、各第二ヒートシール部分5,5は、両端縁から切り欠き2の中心までの長さが等しくなっており、切り欠き2から最も近い部分までの長さが約10mmになっている。加えて、実施例1の食品収納袋と同様に、開口部には、合成樹脂製のジッパー4が融着されており、密封、開放可能になっている。
【0049】
[実施例5]
実施例2と同様な方法で得られたフィルムCとフィルムBとからなるラミネートフィルムを、実施例2と同様に、フィルムCが内側になるように連続的に二つ折りして、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させた。しかる後に、所定の間隔(約150mm間隔)で、折り畳み端縁際に、直径約12mmの半円形のヒートシール(第一ヒートシール)を断続的に施すとともに、その円形の第一ヒートシール部分の内側(袋の中央部側)に、長さ15mmで幅5mmの矩形にヒートシール(第二ヒートシール)を、開放側の端縁に対して約45°の角度で傾斜するように施した。そして、円形の第一ヒートシール部分の中心に、直径約5mmの半円形の孔を穿設した後に、その半円形の孔が幅方向の中央に位置するように、フィルムの幅方向に沿った直線状に、所定の温度(約370℃)にて所定の幅(熱融着部分の幅=約0.3mm)の溶断シールを施すことによって、実施例5の食品収納袋を得た。そして、その実施例5の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0050】
また、得られた実施例5の食品収納袋の概観を
図1(d)に示す。食品収納袋31の奥側の端縁(折り畳み側の端縁)の中央(左右の中央)には、直径約5mmの半円形状の切り欠き2が形成されており、その切り欠き2の周囲に0.3mm幅の第一ヒートシール部分3が設けられている。さらに、切り欠き2の内側(袋の奥側)には、開口側の端縁と略平行になるように、長さ15mmで幅5mmの矩形の第二ヒートシール部分5’が設けられている。なお、当該第二ヒートシール部分5は、両端縁から切り欠き2の中心までの長さが等しくなっており、切り欠き2から最も近い部分までの長さが約10mmになっている。加えて、実施例1の食品収納袋と同様に、開口部には、合成樹脂製のジッパー4が融着されており、密封、開放可能になっている。
【0051】
[比較例1]
三方袋を形成する際に、ラミネートフィルムを使用することなく、ロール状のフィルムC(DIC株式会社製包装用インキ(アルティマNT:溶剤型(ノントルエン)表印刷用グラビアインキ)によって表面に印刷を施したもの)を単独で用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の食品収納袋を得た。そして、その比較例1の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0052】
[比較例2]
上記したフィルムCとフィルムA(一定幅のロール状)とを実施例1と同様な方法でラミネートすることによってラミネートフィルムを得た。そして、得られたフィルムCとフィルムAとからなるラミネートフィルムを、フィルムCが内側になるように連続的に二つ折りして、実施例1と同様の方法で、開放端縁際に密封用のジッパーを連続的に熱融着させた。そして、実施例1と同様に、所定の間隔で折り畳み端縁際に半円形のヒートシールを断続的に施し、そのヒートシール部分の中心に半円形の孔を穿設した後に、所定の温度にて所定の幅の溶断シールを施すことによって、比較例2の食品収納袋を得た。そして、その比較例2の食品収納袋を、実施例1と同様な方法で評価した。評価結果を食品収納袋の特性とともに表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2から、実施例1〜4の食品収納袋が良好な防曇性を示し、それらの食品収納袋を用いて食品を冷凍させた後に電子レンジで加熱した場合には、印刷インクが剥がれたりしない上、加熱中に切り欠き部分が綺麗に剥離して飽和した蒸気を排出させることができ、切り欠き以外の部分から蒸気抜けを生じさせないことが分かる。これに対して、ラミネートフィルムを用いて作製されていない比較例1の食品収納袋は、印刷インク剥がれが起こり易く、ラミネートフィルムの片方が防曇性のフィルムではない上、破断伸度が220%を下回る比較例2の食品収納袋は、蒸気孔部の剥離が起こり易いことが分かる。