(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の焦点と前記第1レンズとの間に前記第1の虚像が形成され、かつ、前記第2の焦点と前記第2レンズとの間に前記第2の虚像が形成される、請求項2に記載の照明装置。
前記第2の光学系は、前記第1の光学系に対して最も近接する凹レンズと、前記第1の光学系に対して前記凹レンズの次に近接する凸レンズとを含む、請求項5に記載の照明装置。
前記アクロマートレンズは、凹レンズと前記凹レンズに密着する凸レンズとから構成されており、前記凹レンズと前記凸レンズとの中央部における接合界面が平面である、請求項13に記載の照明装置。
前記面光源は、ピッチPで並べられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子と重なるように配置された蛍光体とを含み、前記蛍光体のエッジと、前記蛍光体のエッジに最も近い位置に配置された発光素子のエッジとの間の距離をAとしたとき、A≦Pを満たす、請求項1から14のいずれかに記載の照明装置。
光軸上における、前記面光源の発光面の位置から前記フードの先端の位置までの距離Lf1+Lf2は、角度−相対照度グラフの傾きが−0.1よりも小さくなる最小の角度をθ1とし、迷光領域の光束/(照射領域の光束+迷光領域の光束)で表される迷光割合が1%以下となる出射角度をθ2とし、前記フードの半径をRfとしたとき、Rf/tanθ2<Lf1+Lf2<Rf/tanθ1を満たす、請求項16に記載の照明装置。
前記面光源、前記第1レンズおよび前記第2レンズを収容する空間を有する筺体をさらに備え、前記収容する空間の外側を規定する筺体部分の少なくとも一部において光吸収層が設けられている請求項1から18のいずれかに記載の照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0061】
<実施の形態1>
図1、および
図2は、本実施の形態に係る照明装置11の概略構成を示す図である。
【0062】
図3は、
図2に示す照明装置11における光照射状態を示す図である。
【0063】
(照明装置の構成)・・・
図1、2、3
上記照明装置11は、
図1に示すように、光源(発光部)1と、当該光源1の光取り出し側である、光出射面側の光軸AX上に配置された光学レンズ部2とを含み、上記光源1で発光された光を、光学レンズ部2を通して照射するように構成されている。
【0064】
上記光源1は、面発光を行う面発光体であるLED発光体を含む。なお、面発光を行う面発光体であれば、LED発光体に限定されるものではない。
【0065】
上記光学レンズ部2は、2枚の光学レンズL1、L2を備えており、上記光源1に近い側から順に、光学レンズL1(第1レンズL1と呼ぶことがある)、光学レンズL2(第2レンズL2と呼ぶことがある)が配置された構造となっている。なお、光学レンズL1、L2は、それぞれの中心が上記光軸AXを通るように配置されている。
【0066】
上記光学レンズL1は、少なくとも上記光源1の発光面の最大幅よりも大きな直径を有しており、上記光源1側の面が凹面形状となった光学レンズからなる。
【0067】
上記光学レンズL2は、少なくとも1枚目の光学レンズである光学レンズL1の最大径よりも大きな直径を有しており、光射出面側は凸形状となったレンズからなる。
【0068】
ここで、上記光学レンズL1、L2の焦点位置、および各光学レンズL1、L2通過後に発生する虚像について説明する。
【0069】
光学レンズL1の焦点位置をf1(焦点F1と呼ぶことがある)、光源1からの光が光学レンズL1を通過することによって発生する虚像をL1虚像(虚像I1と呼ぶことがある)とする。また、光学レンズL2の焦点位置をf2(焦点F2と呼ぶことがある)、光学レンズL1で発生したL1虚像からの光が光学レンズL2を通過することによって発生する虚像をL2虚像(虚像I2と呼ぶことがある)とする。さらに、光学レンズL1、L2の合成焦点位置をf1+f2(合成焦点F(1+2)と呼ぶことがある)とする。
【0070】
図1に示す照明装置11では、光学レンズ部2を構成する光学レンズL1、L2の焦点f1、f2が、光学レンズL1、L2によって発生するそれぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)に対して、それぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)の光源1に対向する面とは反対側に存在するように、光学レンズ部2が設計されている。この構成において、焦点f1とレンズL1との間に第1の虚像I1が形成され、かつ、焦点f2とレンズL2との間に第2の虚像I2が形成されている。
【0071】
また、本実施形態の他の設計による照明装置11は、
図2に示すように、光源(発光部)1と、当該光源1の光出射面側の光軸AX上に配置された光学レンズ部2とを含み、光源1で発光された光を、光学レンズ部2を通して光照射するように構成されている。
【0072】
光源1は、面発光を行う面発光体であるLED発光体を含む。なお、面発光を行う面発光体であれば、LED発光体に限定されるものではない。
【0073】
光学レンズ部2は、2枚の光学レンズL1(第1光学レンズ)、L2を備えており、光源1に近い側から順に、光学レンズL1、光学レンズL2が配置された構造となっている。なお、光学レンズL1、L2は、それぞれの中心が光軸AXを通るように配置されている。
【0074】
光学レンズL1は、少なくとも光源1の発光面の最大幅よりも大きな直径を有しており、光源1側の面が凹面形状となった光学レンズからなる。
【0075】
光学レンズL2は、少なくとも1枚目の光学レンズである光学レンズL1の最大径よりも大きな直径を有しており、光射出面側は凸形状となったレンズからなる。
【0076】
ここで、光学レンズL1、L2の焦点位置、および各光学レンズL1、L2通過後に発生する虚像について説明する。
【0077】
光学レンズL1の焦点位置をf1、光源1からの光が光学レンズL1を通過することによって発生する虚像をL1虚像とする。また、光学レンズL2の焦点位置をf2、光学レンズL1で発生したL1虚像からの光が光学レンズL2を通過することによって発生する虚像をL2虚像とする。さらに、光学レンズL1、L2の合成焦点位置をf1+f2とする。
【0078】
図2に示す照明装置11では、光学レンズ部2を構成する光学レンズL1、L2の焦点f1、f2を合成した合成焦点位置f1+f2が、光学レンズL1、L2によって発生するそれぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)に対して、当該全ての虚像(L1虚像、L2虚像)の光源1に対向する面とは反対側に存在するように、光学レンズ部2が設計されている。この構成において、レンズL1とレンズL2との合成焦点位置f1+f2と、レンズL1との間において、L1虚像およびL2虚像が形成されている。
【0079】
光学レンズL1、L2の焦点位置、および各光学レンズL1、L2通過後に発生する虚像が、
図2に示すような関係にある照明装置11では、
図3に示すように、光源1の発光面からの光線を全て光学レンズ部2に導き、照射面に対して効率よく光照射することが可能となる。つまり、上記構成の照明装置11によれば、高い光利用効率と照射面の均一性の向上との両立を図ることが可能となる。
【0080】
以下に、上記構成の照明装置11によって得られる効果について説明する。
【0081】
(本実施形態のポイント)・・・・
図4、5
図4(a)は、
図2の照明装置11のレンズ構成(2枚レンズ構成)における、各光学レンズL1、L2の焦点位置、および各光学レンズL1、L2通過後に発生するL1虚像、L2虚像についてのモデル図を示し、
図4(b)は、別の形態における各光学レンズL1、L2の焦点位置、および各光学レンズL1、L2通過後に発生するL1虚像、L2虚像についてのモデル図を示している。
【0082】
照明装置11は、
図4(a)に示すように、光源の位置に対して、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2が、各光学レンズL1、L2によって発生する虚像(L1虚像、L2虚像)の位置よりも光源側とは反対側に存在するように、光学レンズ部2が設計されている。
【0083】
上記構成において、各光学レンズL1、L2での虚像(L1虚像、L2虚像)は、光源の比較的近傍に形成されることになる。ここで、複数レンズ(光学レンズL1、L2)通過後の光は最終レンズによって発生する虚像(
図4(a)ではL2虚像)から光が出射するものと見なせる為、L2虚像が光源付近に発生することによって、
図5(a)に示すような効果が期待できる。
【0084】
図5(a)は、
図4(a)に示すレンズ構成の場合における、光源中心から射出する光(
図5(a)中の細線)と光源上端より発光する光(
図5(a)中の太線)の経路を示している。ここで、光源の中心とは、光学レンズ部2の中心を通る光軸AXを通る部分をいう。
【0085】
図5(a)に示すように、
図4(a)に示すレンズ構成の場合、光源中心から出射する光と光源上端から出射する光とは、ほぼ等しい角度分布で光学レンズ部2を出射していることがわかる。これにより、
図4(a)に示すレンズ構成によれば、光源中心から出射する光も、光源上端部から出射する光も、所定の照射領域の全域を同じように照射することができ、照射領域の均一性を向上させることが可能となる。
【0086】
一方、別の形態のレンズ構成では、
図4(b)に示すように、2枚目の光学レンズL2によってL2虚像が比較的離れた位置に形成されており、上記
図4(a)に示した形態とは異なり、光学レンズL2とその焦点位置f2との間にL2虚像が配置されていない。また、光学レンズL2の焦点位置f2は、L1虚像に比較的近い場所に配置されている。この構成では、L2虚像が、光学レンズL2の焦点位置f2よりも光源から遠い場所に発生し、
図5(b)に示すような結果となる場合がある。
【0087】
ただし、後述するように、L2虚像が光源1から離れている場合であっても、少なくとも光学レンズL2の焦点位置f2よりも光源側にL1虚像が形成され、かつ、光学レンズL1が形成する虚像I1、および、光学レンズL2の焦点位置f2が、後述するように、光源1から所定の距離以上離れるように光学系が構成されている場合には、照射領域における照度の均一性を向上させ得る。
【0088】
なお、
図5(b)は、
図4(b)のレンズ構成を採用した場合において、L1虚像が光源の近傍に形成される場合における、光源中心から出射する光(
図5(b)中の細線)と、光源上端から出射する光(
図5(b)中の太線)との経路の一例を示している。
図5(b)に示す例では、
図5(a)に示した場合と異なり、光源中心から出射する光と、光源上端から出射する光とが、それぞれ異なる角度分布で光学レンズL2を出射している。このような特性では、光源の異なる場所から出射した光が別々の範囲を照射することになり、照射領域の均一性が得られないおそれがある。
【0089】
以上に説明したように、上記の
図4(a)に示した実施形態では、光源の光出射面側に配置する光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2を、各光学レンズL1、L2が形成するL1虚像、L2虚像よりも後ろ側(レンズ射出側の反対方向)の遠くへ配置させている。これによって、光源、及び虚像位置を相対的に、光学レンズL1、L2へ近付けることができる。
【0090】
このような構成では、光学レンズ部の光軸上に存在する光源中心から出射される光と、光源の中心から外れた位置から出射される光とを、ほぼ等しい角度分布で光学レンズ部2の特に光学レンズL1に出射することが可能となる。このことによって、光源中心から出射される光も光源中心から外れた位置から出射される光も所定の照射領域の全域を同じように照射することができるので、照射領域の照度均一性を向上させることが可能となる。
【0091】
しかも、光源中心から出射される光と光源中心から外れた位置から出射される光とは、ほぼ等しい角度分布で光学レンズ部に出射することが可能となるので、当該光学レンズ部2に出射されない光を殆ど無くすことができ、その結果、高い光利用効率を実現することが可能となる。
【0092】
従って、光源から出射される光のほぼ全ての光を利用することができ、高い光利用効率を実現するとともに、光源の異なる場所から出射する光をほぼ等しい照射領域へ照射することが可能となる。このことによって、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることができる。
【0093】
さらに、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2が、光学レンズL1、L2によって発生するそれぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)に対して、当該全ての虚像(L1虚像、L2虚像)の光源1に対向する面とは反対側に存在していることで、各レンズによる虚像を発光部に更に近い位置で発生させることができる。これにより、光学レンズ部から射出する光の角度を拡げることができるので、より広い照射領域の均一性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0094】
ただし、レンズL2によって形成される虚像I2の位置は、必ずしも光源1の近傍に形成される必要はなく、虚像I2が光源から比較的遠い位置に形成されていてもよい。この場合、照明装置は、比較的狭角に光を照射する。ただし、このように狭角に光を照射する形態においては、第2レンズL2の焦点F2が、L1虚像I1または光源から所定の距離以上離れた位置に設けられていることが、照射領域の照度均一性を向上させるために好適である。
【0095】
図27(a)〜(e)は、各レンズL1、L2の焦点F1、F2の位置と、虚像I1、I2との様々な位置関係を示す。
図27(a)〜(e)のいずれの形態においても、第1レンズL1とその焦点F1との間に光源1が配置されており、第1レンズL1によって光源の虚像I1が形成されている。また、この虚像I1は、第2レンズL2の焦点F2よりも内側(光源側)に存在している。これにより、第2レンズL2によって虚像I2が形成される。
【0096】
ただし、虚像I1が、第2レンズの焦点F2の近傍に位置している場合、面光源1の発光面での強度および色度ムラや、発光面の形状自体が、スクリーン上の照射領域にも反映されるおそれがあることを本発明者らは見出した。
【0097】
図28は、
図27(a)に示すように、第1レンズL1によって形成される光源1の虚像I1が、第2レンズL2の焦点F2の近傍にある場合における、スクリーン上での照射領域の様子を示す。焦点F2と虚像I1とが近すぎると、第2レンズL2によって虚像I1がスクリーン上であたかも結像しているかのように、面光源1の発光面において複数の素子LEDによって形成される強度および色度ムラが、スクリーン上の照射領域においても観察されやすくなるおそれがある。
【0098】
このようなあたかも結像している状態が生じることを避け、発光面での強度および色度ムラが照射領域に反映されにくくするためには、焦点F2が、虚像I1よりも、ある程度の距離以上だけ遠位側(光源側とは反対側)に存在することが好ましい。さらに、第2レンズL2の焦点F2の焦点距離は、所定の大きさ以上であることが好ましい。後述するように、第2レンズL2の焦点F2の位置は、例えば、面光源1のサイズによって応じて決定されていてよい。また、第2レンズL2の焦点F2の位置は、例えば、面光源1が複数の発光素子を含む場合には、発光素子の配列ピッチに応じて決定されてもよい。
【0099】
図29は、第2レンズL2の焦点F2が、光軸上の所定の基準位置f’(基準焦点f’と呼ぶ場合がある)に対して遠位側にある場合(F2<f’)と、所定の基準位置f’に対して近位側にある場合(F2≧f’:焦点F2が基準位置f’にある場合を含む)とを示す。本発明の実施形態による照明装置では、焦点F2が基準位置f’よりも遠位側に存在するように、光学系が設計されている。
【0100】
ここで、基準位置(または基準焦点)f’について説明する。基準位置f’は、第2レンズの焦点F2がこの位置f’よりも遠位側に存在する場合に、光照射領域において、面光源の形状や強度および色度ムラが視認されにくくなる位置である。
【0101】
逆に、焦点F2が、基準位置f’と同じ位置、または、基準位置f’よりも手前の位置に存在すると、第2レンズL2は、虚像I1を概ねピントが合った状態で像面上に投射することになる。この結果、発光面の形状や、発光面の強度および色度ムラが、照射領域において反映される現象が生じる。
【0102】
この現象は、カメラなどの撮像装置で広角レンズ(焦点距離が比較的短いレンズ)を用い、絞りの調節によりF値を大きく設定した場合などにおいて、後側被写界深度が無限遠まで深くなる現象(パンフォーカスまたはディープフォーカスと呼ばれる)と類似の原理によって生じるものと考えられる。
【0103】
図30(a)は、上記のパンフォーカスを説明するための図である。ここでは、レンズの厚さを無視し、開口径Dを有し焦点f’を有するレンズ(F値は、Fno.=f’/Dで与えられる)が用いられているとする。また、被写体とレンズとの間の距離をsとし、レンズと像面との間の距離をs’とする。一般的に、ある被写体をあるレンズを用いて像面に結像させる場合、この像面にピントが合う被写体の位置は1つのみとなり、その前後に被写体がある場合はピントがずれてボケてしまうはずである。しかし、
図30(a)に示すような場合において、平面上の被写体を光軸上である範囲内に前後に移動させても、像面上ではあたかもピントが合っているように見える。これは像面上では実際にはピントが合わずボケているのであるが、ある大きさ以下のボケはボケとして検出できず、あたかもピントが合っているように見えるからである。ここで、像面の位置において、ボケの許容限界の大きさを許容錯乱円εとして設定すると、許容錯乱円ε以下のサイズを有する点は、ピントのボケが生じていない点として見なしてよい。
【0104】
また、ガウスの結像公式1/s’−1/s=1/f’から、s’=f’・s/(f’+s)が導かれる。ここで、パンフォーカスが実現される条件は、レンズから被写体までの距離s=f’
2/εFno.(過焦点距離)にピントが合っているときである。
【0105】
この過焦点距離sを、レンズと像面との間の距離s’について書き直すと、s’=(D/(ε+D))・f’が得られ、この関係式を満たすときにパンフォーカスが実現される。このような撮像装置におけるパンフォーカスが、本実施形態の照明装置でも実現され得ることを本発明者らは見出した。
【0106】
図30(b)は、本実施形態の照明装置において、上記パンフォーカスと同様の原理にて、面光源の像がボケずに、あたかもピントが合った状態で照射領域に形成される(すなわち、面光源の形状や、強度および色度ムラが照射領域に反映される)条件を説明するための図である。
【0107】
照明装置においては、上記のs’=(D/(ε+D))・f’を、第2レンズL2(レンズの厚みを考慮する場合には光源側主点)から虚像I1までの距離をl’を用いて、l’=(D/(ε+D))・f’で表すことができる。この関係式においてl’、Dおよびεを決定することによって、第2レンズL2についての基準焦点f’を求めることができる。
【0108】
ここで、有効径Dは第2レンズL2の有効径である。また、第2レンズL2から虚像I1までの距離l’は、光源1から第2レンズL2までの距離、および光源1から虚像l1までの距離から計算することができる。また、光源1から虚像l1までの距離は、光源1と第1レンズL1との位置関係、および、第1レンズL1の屈折率やレンズ面の形状などから計算することができる。
【0109】
また、パンフォーカスにおける許容錯乱円εは、本実施形態の照明装置に適用した場合、面光源の発光面サイズに応じて設定されるファクタと見なすことができる。あるいは、許容錯乱円εは、面光源が間隔を空けて配列された複数の発光素子を含む場合、それらの配列ピッチ(強度および色度ムラのピッチ)によって設定されるファクタと見なすこともできる。このように、本実施形態の照明装置に適用する場合、パンフォーカスにおける許容錯乱円εは、発光面のサイズや発光素子の配列ピッチによって規定されるので、これらを「光源サイズファクタε」と称する場合がある。上記関係式から理解されるように、光源サイズファクタεをどのように設定するかによって、基準焦点f’の位置も変化する。
【0110】
図31は、光源サイズファクタεの大きさに応じて、基準焦点f’が変化する様子を示す。パターン(A)に示すように、LEDチップのピッチを光源サイズファクタεとして考えた場合、ピッチのオーダーでの強度および色度ムラがスクリーン上で視認される条件としての基準焦点f’は、比較的光源に近い側に設定される。また、パターン(B)に示すように、LEDチップのピッチよりも大きく、光源全体のサイズよりも小さいサイズを光源サイズファクタεとして考えた場合、基準焦点f’は、パターン(A)の場合よりは遠位に設定される。さらに、パターン(C)に示すように、光源全体のサイズを光源サイズファクタεとして考えた場合、基準焦点f’は、パターン(B)の場合よりさらに遠位に設定される。
【0111】
つまり、光源サイズファクタε(以下、ファクタεと呼ぶ)を大きく設定すれば、基準焦点f’は光源から遠ざかり、第2レンズL2の焦点F2は基準焦点よりもさらに光源から遠位に設定される。また、図において、2つの円によって示すように、発光面上におけるファクタεに対応する領域が、スクリーン上の所定の領域に集まる。
【0112】
上記の構成において、第2焦点F2=f‘を満たす場合について形成される像について考察する。
【0113】
パターン(A)に示すように、ファクタεがLED発光面の強度および色度ムラ(LED素子の配置の最小ピッチ)より小さい場合、その強度および色度ムラの像がスクリーン上に反映される。発光面上の2つの円のそれぞれで囲む領域で光出射特性が違うため、スクリーン上の2つの円にそれぞれ到達する特性も異なり、それがLEDチップの像として写ることになる。
【0114】
また、好ましい例として、パターン(B)に示すように、ファクタεの範囲内に上記の強度および色度ムラが複数入る場合(LED素子の配置の最小ピッチ以上)、発光面上の2つの円で囲む領域の光出射特性は平均化され、スクリーン上でも強度および色度ムラの像が視認されない。しかし、LED発光面のサイズが、ファクタεの範囲を超えていると、LED発光面とその外側の領域との間の強度および色度の差(つまり、LED発光面の形状)が反映され、スクリーン上ではLED発光面の形状を有する像が写り、問題となる場合がある。
【0115】
また、さらに好ましい例として、パターン(C)に示すように、ファクタεが発光面全体を包含する大きさである場合、発光面形状が反映されにくくなり、スクリーン上で良好な照射が実現される。
【0116】
ただし、光源サイズファクタεは、他の形態によって設定されていても良い。光源サイズファクタεを他の形態によって設定する例を以下に説明する。
【0117】
図32(a)には、赤色LEDと、青色LEDと、緑色LEDとが、所定のパターンで配列されている形態が示されている。この場合、図に示すように、異なる3色のLEDを1つのセットとして、繰り返し最小ピッチPaで、3色LEDが配列されている。この場合、光源サイズファクタεとして、繰り返しピッチ最小Paを選択することで、照射領域での上記3色LEDごとの配列によるムラが観察されることが防止される。
【0118】
また、
図32(b)には、蛍光体の種類、濃度、厚さなどが異なる2種類の縦に延びる領域が列ごとに繰り返されるパターンで発光面が形成されている場合を示す。それぞれの発光素子の特性は同じであって良いが、蛍光体の種類が異なる為、2種類の領域で発光面から射出する波長分光特性が異なっている。この場合、2列ごとの配列の繰り返しピッチ最小Pbを光源サイズファクタεとして設定しても良い。これによって、照射領域において波長分光特性の異なる2種類の領域が形成する縞状のムラの発生を防止することができる。なお、
図32(a)および(b)は、LED素子の配列の一例を示しているに過ぎず、面内に発光強度、波長分光特性の異なる領域が存在する他の配列においても、繰り返し最小ピッチを光源サイズファクタεとすることができる。
【0119】
また、
図27(a)〜(e)に示すように、第2レンズの焦点F2と、第1レンズL1による虚像I1との位置関係によって、照射される光の角度範囲(照射領域の広さ)が変わる。一般的に、光学レンズは発光源が焦点位置に存在する場合に最も出射角度を狭くすることができ、発光源が焦点位置よりもレンズ側に近付く程、出射角度は広がりを持つ。換言すると、第2レンズの焦点F2と、第1レンズL1による虚像I1との位置が近いほど、照射角度は狭くなり、虚像l1が遠いほど、照射角度は広くなる。
【0120】
この照射角度は、例えば、配向角によって表すことができる。ここで、配向角とは、スクリーン上に形成された照射領域において、その中心における照度を100%としたときに、照射領域の中心での照度に対して50%以上の照度を有する領域の幅(円形の照射領域が形成される場合には、その直径)と、光源とスクリーンとの間の距離とによって算出される角度である。配向角が小さい場合、照明装置が狭角に光を照射することを意味し、配向角が大きい場合、照明装置が広角に光を照射することを意味する。
【0121】
本実施形態の照明装置では、上記のように、第2レンズの焦点F2が、基準位置f’よりも遠位側に設けられており、この場合において、例えば、8度以上の配向角を有する照射光を照射する照明装置が得られる。
【0122】
なお、
図27(a)〜(c)に示す形態では、第2レンズL2の焦点F2が、第1レンズL1による虚像I1と、第2レンズL2による虚像I2との間に存在している。ただし、焦点F2は、焦点F1よりも光源側に位置している。これらの形態においても、上記の基準位置f’よりも焦点F2が遠位に設けられている限りにおいて、均一な照度分布の照度領域を形成することができる。
【0123】
一方、
図27(d)および(e)に示すように、焦点F2よりも焦点F1が光源側に位置する場合であっても、均一な照度分布の照度領域を形成することができる。なお、
図27(e)は、
図1に示した実施形態における、各レンズの焦点f1、f2(F1、F2)、各虚像の位置(I1、I2)および合成焦点f1+f2(F(1+2))の位置関係をそれぞれ示している。
図27(e)からわかるように、
図1に示した形態では、比較的大きい配向角で、発光面での強度及び色度ムラが目立たないように、広角に光を照射することができる。
【0124】
以上に説明したように、第2レンズの焦点を、上記発光面のサイズファクタεや第2レンズの有効径Dなどから求められる基準焦点f’よりも遠位側に設定することによって、ムラの低減された、すなわち均一性の高い照明を実現することができる。
【0125】
なお、第2レンズF2の有効口径Dを調節するための機構が設けられていてもよい。この場合、取り得る任意の有効口径Dに対して、発光面の形状や強度及び色度ムラが照射領域に反映されないように、第2レンズの焦点距離が設定されていることが好ましい。
【0126】
以上、第1レンズと第2レンズとから構成されている場合の光学設計について説明したが、より多数のレンズを用いて光学系が構成されていてもよい。この場合、光源側からn個のレンズが並んでいると仮定すると、上記に説明した第1レンズを、1個目〜n−1個目までのレンズ群が全体として有する特性を持つレンズとして考えればよく、第2レンズを、n個目のレンズとして考えればよい。
【0127】
(レンズ形状の設計について)
上記照明装置11における光学レンズ部2に含まれる光学レンズ形状は、光軸近傍では焦点位置や虚像位置の配置により決定されてよい。ただし、光軸外も含めたレンズ形状については、以下の設計方針によって決定することがより好ましい。
【0128】
具体的には、有限の大きさを有する光源1から射出する光の利用効率を最大限に引き出し、照射領域面内の照度均一性を確保する為に、光源1を出来る限り光源1近傍の光学レンズに近付け、近軸理論的には概ね等倍系の虚像関係を維持しながら、面光源の大きさに対して軸外のコマ収差を補正するようにし、且つ、スポット径が軸上像点も軸外像点も同型になるようにレンズ系を形成する。
【0129】
上記コマ収差とは、光軸から離れた1点から出た光が、像面で1点に集まらずに、尾を引いた彗星のような像になる現象のことをいい、像面での集光状態をスポット形状(スポットダイヤグラム)と称する。
【0130】
上記の軸とは、レンズの光軸を示しており、軸上とはレンズの光軸を通る場所、軸外とは光軸から離れた場所を示す。
【0131】
ここで、「近軸理論的に概ね等倍系の虚像関係」とは、
図4(a)におけるL1虚像、L2虚像の大きさが光源に対して1〜数倍となり、かつ、光源付近にL1虚像、L2虚像を発生させる条件を示している。
【0132】
また、「軸外のコマ収差を補正する」とは、光軸から離れた場所から出た光が像面で1点に集まるように軸外のレンズ形状を変化させて補正することである。
【0133】
また、「スポット径が軸上像点も軸外像点も同型になる」とは、軸上から出た光と軸外から出た光の像面でのスポット形状の範囲を同等程度となるように、軸外のレンズ形状を変化させて補正することである。
【0134】
(本実施形態の効果)・・・・
図6〜11
上記構成の照明装置11における効果の詳細について、
図6〜11を参照しながら以下に説明する。
【0135】
図6に示すように、
図2のような照明装置11から1m離れた距離に評価面を設置した場合、その評価面上での照度分布は
図7に示す結果となった。
図7では照度強度に応じてモノクロで面内分布を示しており、黒表示部は照度最小、白表示部は照度最大を示している。
【0136】
また、
図7に示すように、中心部での照度分布の断面プロファイルを確認した結果、
図8に示すように、照射領域内がほぼ均一な照度となることが確認できた。
【0137】
本実施形態の照明装置では、光源1の発光面全ての領域が均一に発光している場合だけでなく、
図9(a)に示すように、たとえば、光源1の発光面上に複数の微小発光面を複数配置させた場合においても、所定の照明領域を均一に照明することが可能となる。例えば、光源1の発光面に複数のLED発光体を配置することが考えられる。
【0138】
また、
図9(b)に示すように、光源1の発光面上に配置する複数の微小発光面において、一部の発光面で発光量が少ない場合においても、所定の照明領域を均一に照明することが可能となる。これは、
図5(a)を用いて説明した場合のように、光源1の発光面において、光軸から外れた場所からの光であっても、光軸上からの光と同じ照射領域に光を照射することができるためである。つまり、発光面のどの場所から光も同じ照射領域に光を照射することができるので、発光面の一部に発光光量の少ない場所があっても、照射領域における照射の均一性に影響を及ぼさないためである。
【0139】
図9(c)は、
図9(b)に示す光源1の発光面による照度分布を示す。この照度分布からも、照射領域における照射の均一性に影響を及ぼさないことがわかる。
【0140】
また、
図9(a)における複数の微小発光面が
図32(a)や(b)に示すように、それぞれ異なる主波長の光を出射してもよいし、異なる主波長の光を出射する発光物を複数組合せてもよい。その場合において、それぞれ異なる色光が同一照明領域をほぼ均一に照射することにより、広い色再現性を持つ照明装置を実現することが可能となる。
【0141】
このように、異なる主波長の光を出射する複数の発光物を組合せて用いることにより、広範囲の色度座標上の色を再現させることが可能となる。
【0142】
ところで、LED光源は発光体の製造プロセスでの様々なバラツキにより、発光量、発光主波長や発光波長領域などの発光特性に大きなバラツキを持っている。現状、LED光源を用いる場合において、発光特性が似ているものを選別して使用しているが、この選別作業がコストアップ要因となっている。
【0143】
ここで、
図9(a)に示す光源1の一つの発光面を一つのLED光源で実現することを想定した場合、
図9(b)に示すように、発光面を構成するLED光源の発光特性にバラツキがあっても、
図9(c)に示すように、照射領域における照射の均一性に影響を及ぼさないので、LED光源のバラツキを照射領域内において平均化することが可能となる。これにより、LED光源の選別が不要となり、低コスト化が実現可能となる。
【0144】
また、これらの結果より、複数の発光物を配置可能となる為、発光物が1つ故障により点灯不能となった場合においても、照射領域の均一性は変化しない。その為、照明機器全体を取りかえる必要が無く、照明機器の使用時間の延長化が見込まれる。
【0145】
図10に示すように、照明装置11から1m離れた距離、5m離れた距離のそれぞれの断面照度分布は、
図11(a)および(b)に示すようになる。
【0146】
図11(a)は、照明装置11から1m離れた場所の断面照度分布を示し、
図11(b)は、照明装置11から5m離れた場所の断面照度分布を示している。
【0147】
なお、図示しないが、照明装置11から2m、3m、それ以外の任意の距離だけ離れた場所における断面照度分布においても、
図11(a)および(b)と同様に、いずれも均一な照度分布を有している。
【0148】
これらのことから、照明装置11から射出する光の断面照度分布は、ある距離以上離れていれば、どの位置においても均一な照度分布を有することがわかる。ここで、ある距離以上とは、照明装置11の光学レンズ部2を構成している光学レンズL1、L2の最大直径の2倍以上とする。
【0149】
(実施例)・・・・・
図12、
図13
ここで、
図1に示す照明装置11の試作例を
図12の(a)に示す。
【0150】
光源1として、約6mm×6mmの白色LEDパッケージを用いた。
【0151】
光学レンズ部2の1枚目の光学レンズL1として、屈折率nd=約1.585のポリカーボネートを材料とし、光源側に配置される光入射面の曲率半径を9.2mm、光出射面の曲率半径を6.0mm、レンズ外形を12mm、レンズ厚みを5mmで製作した光学レンズを用いた。
【0152】
2枚目の光学レンズL2として、屈折率nd=約1.49のPMMA(ポリメチルメタクリレート)を材料とし、光入射面を平面、光出射面の曲率半径を20.966mm、コーニック定数を0.28119、4次、6次、8次、10次、12次の高次の非球面係数をそれぞれ−5.2×10
-7、−1.8914×10
-8、3.4858×10
-10、−9.7419×10
-13、2.6235×10
-16とし、レンズ外形を35mm、レンズ厚みを10.5mmで製作した光学レンズを用いた。
【0153】
白色LEDパッケージ、1枚目の光学レンズL1、および2枚目の光学レンズL2の中心がそれぞれ光軸上と一致するように配置させ、かつ、光軸上における白色LEDパッケージの発光面と1枚目の光学レンズL1の光入射面との距離を1.5mm、また、光軸上における1枚目の光学レンズL1の光射出面と2枚目の光学レンズL2の入射面との距離を2.0mmとして配置させた。
【0154】
このとき、光学レンズL1、L2の焦点距離はそれぞれ18.52mm、42.47mmであり、合成焦点距離は14.12mmであった。また、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2の位置は、光源部の発光面を0(原点)として、出射方向を+方向に軸を取った場合、それぞれ−11.30mm、−26.94mm、−5.14mmであった。
【0155】
一方、各光学レンズL1、L2によって発生する虚像(L1虚像、L2虚像)の位置を計算により導出した結果、L1虚像は−1.61mm、L2虚像は−9.74mmであった。
【0156】
これにより、照明装置11は、各光学レンズ光学レンズ部2を構成する光学レンズL1、L2の焦点f1、f2が、光学レンズL1、L2によって発生するそれぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)に対して、それぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)の光源1に対向する面とは反対側に存在していることになり、
図1に示すように設計されていることを確認した。
【0157】
上記構成の照明装置11による照度実験を行った。
【0158】
この実験結果を
図12(b)に示す。
図12(b)から、所定の照明領域が均一な照度で照らされていることが分かった。
【0159】
また、
図2に示す照明装置11の試作例について
図13の(a)に示す。
【0160】
光源1として、直径2mmの白色LEDパッケージを用いた。
【0161】
光学レンズ部2の1枚目の光学レンズL1として、屈折率nd=約1.806のガラス材料SLAH53を材料とし、光源側に配置される光入射面の曲率半径を2.96mm、光出射面の曲率半径を2.69mm、レンズ外形を5mm、レンズ厚みを1.6mmで製作した光学レンズを用いた。
【0162】
2枚目の光学レンズL2として、屈折率nd=約1.49のPMMAを材料とし、光源側に配置される光入射面の曲率半径を65.4mm、コーニック定数を‐5.0、4次、6次、8次の高次の非球面係数をそれぞれ−5.97×10
-5、−7.927×10
-6、−7.278×10
-7とした。また、光出射面の曲率半径を8.0mm、コーニック定数を0.73、4次、6次、8次、10次、12次の高次の非球面係数をそれぞれ1.225×10
-4、−3.777×10
-6、−1.054×10
-7、−1.83×10
-9、4.2397×10
-11とし、レンズ外形を10mm、レンズ厚さを3.0mmで製作した光学レンズを用いた。
【0163】
白色LEDパッケージ、1枚目の光学レンズL1、および2枚目の光学レンズL2の中心がそれぞれ光軸上と一致するように配置させ、かつ、光軸上における白色LEDパッケージの発光面と1枚目の光学レンズL1の光入射面との距離を0.5mm、また、光軸上における1枚目の光学レンズL1の光射出面と2枚目の光学レンズL2の入射面との距離を0.1mmとして配置させた。
【0164】
このとき、光学レンズL1、L2の焦点距離はそれぞれ9,899mm、14.69mmであり、合成焦点距離は5.81mmであった。また、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2の位置は、光源部の発光面を0(原点)として、射出方向を+方向に軸を取った場合、それぞれ−6.76mm、−10.68mm、−2.85mmであった。
【0165】
一方、各光学レンズL1、L2によって発生する虚像(L1虚像、L2虚像)の位置を計算により導出した結果、L1虚像は−0.10mm、L2虚像は−0.75mmであった。
【0166】
これにより、上記構成の照明装置11は、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2が、光学レンズL1、L2によって発生するそれぞれの虚像(L1虚像、L2虚像)に対して、当該全ての虚像(L1虚像、L2虚像)の光源1に対向する面とは反対側に存在していることになり、
図2に示すように設計されていることを確認した。
【0167】
上記構成の照明装置11を用いて行った照度実験の結果を
図13(b)に示す。
図13(b)からわかるように、照明装置11によれば、所定の照明領域を均一な照度で照らすことができる。
【0168】
<実施の形態2>
本発明の他の実施の形態について説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1と同一の機能を有する部材には、同一の番号を付記し、詳細な説明を省略する。
【0169】
(照明装置の構成)・・・
図14、15
図14は、本実施の形態に係る照明装置12の概略構成を示す図である。
【0171】
照明装置12は、
図14に示すように、前記実施の形態1の光学レンズ部2の出射側に、更に光学レンズ3、4が追加された構造を有している。
【0172】
つまり、照明装置12は、光学レンズ部2を第1光学レンズ部としたとき、第1光学レンズ部の光射出側に、少なくとも2枚の光学レンズからなる第2光学レンズ部(光学レンズ3、4)が設けられている構造を有している。
【0173】
光学レンズ3は、凹レンズであり、光学レンズ部2に一番近く、且つ、凹面側を光学レンズ部2に向けて配置されている。
【0174】
光学レンズ4は、凸レンズであり、光学レンズ3よりも光学レンズ部2から遠い位置に配置されている。
【0175】
このように、光学レンズ部2の外側にさらに光学レンズ3、4を配置することで、
図15に示すように、照明装置12から照射される光の射出角度を狭くすることができる。
【0176】
(本実施形態の効果)・・・
図16〜19
上記構成の照明装置12において、追加する光学レンズ3、4のレンズ形状を最適化することにより、
図16に示すように、照射領域内を均一に照明することが可能となる。
【0177】
この場合、出射角度の狭角度化と照明領域の均一化を両立する為には、上記のように、凹レンズと凸レンズとを組合せて用いることがより好ましい。これは、凹レンズと凸レンズとを組合せて用いることにより、各レンズで発生する収差を補正し合い、照射領域の均一性を実現させることが可能となるためである。
【0178】
また、追加するレンズの配置は、
図14の配置位置に限定されるものではなく、他の位置であってもよい。
【0179】
図17は、
図14に示す光学レンズ3、4の配置とは異なる位置に、光学レンズ3、4を配置した場合の照明装置12の概略構成を示す図である。
【0181】
図17に示すように、
図14において追加配置した光学レンズ3、4の一部を異なる場所へ配置させることで、この照明装置12から出射される光の角度分布を変化させることができる。
【0182】
なお、角度分布を変化させた場合においても、
図19に示すように、照射領域内をほぼ均一に照明することが可能となる。
【0183】
以上のように、前記実施の形態1で説明した照明装置11に対して、光出射側にさらに光学レンズ3、4を追加することによって、出射角度を狭くすることが可能となる。また、追加する光学レンズの配置を変化させることにより、出射角度を調整(制御)することも可能となる。
【0184】
このように、光学レンズ3、4を追加して、出射角度を制御しても、
図16、
図19に示すように、それぞれの場合においても、照射領域内の照度均一性を保つことが可能となる。
【0185】
なお、第2光学レンズ部は、
図14に示す光学レンズ3、4に限定されるものではなく、例えば、光学レンズ3の替わりに、光学レンズ3と同様の光学特性を持つように組合せられた複数の光学レンズを用いても良い。第2光学レンズ部を構成する光学レンズの枚数に特段の制限は設けない。
【0186】
しかし、光学レンズの枚数が増加すると、面内均一性の向上、照射角度制御が容易になる一方、レンズ界面増加に伴う光透過率の低下、レンズ枚数増加に伴うコストアップなどの課題を考慮する必要がある。
【0187】
<実施の形態3>
本発明のさらに他の実施の形態について説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1、2と同一の機能を有する部材には、同一の番号を付記し、詳細な説明を省略する。ここでは、光学レンズ部2の2枚構成の光学レンズを一体化した例について説明する。
【0188】
(照明装置の構成)・・・
図20、21
図20は、本実施の形態に係る照明装置13aの概略構成を示す図である。
【0189】
図21は、本実施の形態に係る照明装置13bの概略構成を示す図である。
【0190】
図20に示す照明装置13aでは、光学レンズL1、L2を一体成型して光学レンズ部22を構成する例を示している。
【0191】
具体的には、アクリル材質等の樹脂を材料として用いて、金型によって光学レンズL1、L2を一体成型して光学レンズ部22としている。
【0192】
一方、
図21に示す照明装置13bでは、光学レンズL1、L2を接着して光学レンズ部23とした例を示している。
【0193】
具体的には、光源1の発光面に近いレンズ(光学レンズL1)と発光面から遠いレンズ(光学レンズL2)とをそれぞれ成型した後、各レンズの中心付近で接着させて光学レンズ部23としている。
【0194】
ここで、実施の形態1で示した光学レンズ部2(
図1)と、
図20に示す光学レンズ部22との光学レンズ形状を比較すると、光源1から広角に出射する光においては、どちらも同じ4つの空気界面での屈折によって、光の進行方向を大きく変化させている。
【0195】
一方、
図1における光源面に垂直な方向に出射する光は、光学レンズ部2の各空気界面において、概ね垂直に入射している。その為、
図20のように、光学レンズ部22の中央付近の一部を接触または接合させても、射出角度分布に大きな影響を及ぼすことなく、照射領域の均一性が実現される。
【0196】
(本実施形態の効果)・・・
図22、23
図20に示すように、光学レンズを一体成型した場合の光学レンズ部22を用いた照明装置13aにおいて、
図22に示すように、照明装置13aより1m離れた場所に発光面と平行となるように評価面を配置する場合、
図23に示すように、照射領域の照度分布は概ね均一となる。
【0197】
このように、光学レンズを構成する2枚のレンズを接着する場合のメリットとしては、発光面と光学レンズとの位置合わせの簡素化による低コスト化が挙げられる。また、使用中における発光面と光学レンズとの固定方法においても、簡素化することが可能となる。
【0198】
さらに、光学レンズを一体成型する場合のメリットとしては、前述した位置合わせ・固定方法の簡素化による低コスト化だけでなく、成型回数が2回から1回に減少することによる低コスト化も挙げられる。また、2枚のレンズを接着するプロセスも省略することが可能となり、低コスト化に寄与する。
【0199】
<変形例>・・・
図24、25
図24は、前記実施の形態1の照明装置11の光出射側に、六角形の開口(アパチャー)部5を設けた場合を示す。照明装置11から出射された光のうち、六角形の開口部5に向かう光のみがこれを透過し、それ以外の光は反射・吸収されることになる。
【0200】
図25は、照明装置11から1m離れた場所に評価面を配置した場合の2次元照度分布を示しているが、概ね開口部5と同じ形状で照明され、かつ、照射領域内は均一な照度で照明されることが可能となる。さらに、評価面を面光源照明装置から離した場合においても、照射領域の形状、均一性は保たれたまま照明されることも可能である。
【0201】
<補足説明>・・・
図26
(1)
図26を用いて、光源1の配置範囲の制限について説明する。
【0202】
光源1の配置範囲は下記式を満たす範囲内に制限されることがより好ましい。
h≦2√(d(2R−d))
【0203】
ここで、hは発光部の配置範囲の幅、dは光源から光軸上の光学レンズL1界面との距離、Rは光学レンズL1の内側レンズ曲率半径を示している。
【0204】
上記範囲内に光源1を配置させることによって、光源1から射出する光を全て1枚目レンズである光学レンズL1に取込むことが可能となり、光利用効率を向上させることができる。
【0205】
(2)光学レンズ部2の焦点位置と虚像位置、光源位置との関係について説明する。
【0206】
上記構成のように、光源1の射出面側に配置する光学レンズ部2の焦点位置を各光学レンズL1、L2で発生するL1虚像、L2虚像の位置よりも後ろ側(レンズ射出側の反対方向)の遠くへ配置させることによって、光源1、及び虚像(L1虚像、L2虚像)位置を相対的に、光学レンズ部2へ近付けることができる。
【0207】
このとき、光学レンズ部2のレンズ主点から焦点位置までの距離をf、レンズ主点から光源までの距離をa、レンズ主点から虚像までの距離をbとすると、以下の関係式が成立する。ここでレンズ主点とは、レンズに入射する光線と出射する光線の振るまいだけを代表させて、レンズ厚さの無視できる薄肉レンズで置き換えた場合の薄肉レンズの位置を示す。
1/a ― 1/b = 1/f ・・・(1)
【0208】
上記構成の照明装置11では、虚像位置を光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2よりも相対的に光学レンズ部2へ近付ける為、以下の関係式が成立する。
f>b ・・・(2)
【0209】
ここで、上記式(1)より、以下の関係式が導かれる。
1/a = 1/b + 1/f = (b+f)/bf ・・・(3)
【0210】
さらに式(3)を展開すると、以下の関係式となる。
a = bf/(b+f) = f/(1+f/b) ・・・(4)
【0211】
ここで、式(2)より、以下の関係式が導かれる。
f/b>1 ・・・(5)
【0212】
よって、式(4)に式(5)の関係式を代入すると、以下の関係式が成立する。
a<f/2
【0213】
つまり、レンズ主点から光源までの距離aを、レンズ主点から焦点位置までの距離fの半分より短くすることによって、常に、虚像位置を光学レンズの焦点位置よりも相対的に光学レンズへ近付けることが出来る。
【0214】
(3)光学レンズ部2のレンズ界面にて一部の光が反射される為、各光学レンズのレンズ表面に反射防止用の表面処理を行う方がより好ましい。一般的な反射防止用の表面処理として、複数の屈折率の異なる薄膜を成膜させて表面反射を低減させる反射防止膜が挙げられる。また、その他の方法として、各光学レンズのレンズ表面上に1ミクロン以下の微小凹凸形状(モスアイ構造)を形成させて界面反射を低減させる方法も挙げられる。
【0215】
各光学レンズのレンズ表面での界面反射を低減させる方法については、上記の方法のみに限定されるものではない。
【0216】
(4)光源部の発光波長は可視光に限定されるものではない。紫外域や赤外域の波長を発する発光素子を用いても良い。
【0217】
(5)以上に説明した実施形態において、レンズ形状は全て回転対称系の形状としているがこれに限定されるものではなく、図面奥行き方向に一様な形状とするレンチキュラー形状であってもよい。これによれば、レンチキュラー形状のレンズ断面方向に平行な方向のみ効果が発せられる。例えば、冷陰極管や直列配置されたLEDランプを光源として用いる場合に適している。棒状の光源部とレンチキュラー形状の光学レンズを組み合わせることによって、均一照明領域を丸みを帯びた矩形とすることが可能となる。
【0218】
以下、本発明のさらに別の実施形態を説明する。
【0219】
〔照射領域の周辺部で発生する色付きや迷光を抑制するための形態〕
上記のように構成された照明装置を用いることによって、均一な強度の照射領域を実現することができるが、一方で、照射領域の周辺部において、その中心部とは異なる色の環状の色つき領域が観察されることがある(イエローリング)。これは、レンズによる色収差が原因であると考えられる。
【0220】
これとは別に、LED照明装置の分野において、照射領域の周辺部に黄色成分を多く含む光が到達し、照射領域周辺ほど黄色くなり、照射領域全体では色度むらとして観察されることが知られている(色むら)。さらに、この照射領域周辺部への照射光の黄色成分増加がレンズによる色収差に畳重されることによって、イエローリングがさらに強い色つきで形成されることが分かった。また、照射領域の周辺部では、光学系で発生する意図しない光の反射、散乱などによって、迷光が観察されることがある。
【0221】
ここで、照射領域の周辺部において、異なる色合いの領域が形成される要因について説明する。
【0222】
図33は、LEDを用いて構成された面光源1からレンズを介しての光を照射する場合における、LEDからの光の出射角度と、照射位置との関係を示すグラフである。
図33からわかるように、おおよそ正面方向(出射角度0〜30°)に出射された光は、照射領域の中央部にピークを持つ山型の強度分布を形成する。これに対して、より大きい出射角度で出射された光は、照射領域の周辺領域での強度がより高くなるように強度分布が形成される。特に、出射角度60°〜90°で出射された光は、照射領域の中央部に到達することはほとんどなく、その多くは照射領域の周辺部に照射される。
【0223】
また、
図34に示すように、LEDから出射された光は、その出射角度によって、分光スペクトルが変化する。より具体的には、出射角度が大きい(約60°)の光の波長約610nmでの相対強度のピークP60は、正面方向(出射角度0°)の光の波長約610nmでの相対強度のピークP0に比べて大きい。これは、出射角度がより大きい光は、LEDを覆うように設けられた蛍光体に対して斜めに入射するので、まっすぐに入射する光に比べて蛍光体を通過する距離が長く、これによって、蛍光を生じさせる確率が高くなるためであると考えられる。
【0224】
以上の説明からわかるように、LEDから大きい出射角度で出射された光は、長波長の成分を比較的多く含むとともに、その大部分が照射領域の周辺部に到達する。この結果、照射領域の中央部と比べて黄色づいた領域がその周辺部に形成されることになる。
【0225】
また、イエローリング以外にも、照明装置の内部で意図しない光の反射、散乱などが生じ、これによって、照射領域の外側に迷光が発生することがある。
【0226】
照明装置の分野では、所定の照射領域以外の領域に光が照射されることは好ましくない。そこで、以下に説明する実施の形態4−1〜4−6では、上記のような照射領域の周辺部で観察される所望としない照射光を防止する形態を説明する。
【0227】
<実施の形態4−1:アクロマートレンズを用いる形態>
図36は、実施の形態4−1の照明装置410の構成を示す図である。照明装置410は、上記実施の形態1〜3で説明した照明装置と同様に、面光源1と、面光源1の光出射側に配置された第1レンズL1と、第1レンズの光出射側に配置された第2レンズL2とを備える。
【0228】
照明装置410も、実施の形態1〜3で説明した照明装置と同様に、照射領域に均一に光が照射されるように構成されている。より具体的には、第1レンズL1によって形成される虚像I1が第2レンズL2の焦点F2よりも光源側に位置するように、光学系が構成されている。また、本実施形態においても、
図29を用いて説明したように、第2レンズL2の焦点F2が、サイズファクタεを考慮して決定される基準位置f’よりも遠位側に設けられている。これにより、均一な強度の照射領域を形成することができる。
【0229】
ただし、本実施形態では、第1レンズL1が、間に空気層を介さずに互いに密着するように配置された凹レンズL1−1と凸レンズL1−2とから構成されている。凹レンズL1−1と凸レンズL1−2とは、屈折率が異なる材料から形成されており、このような2つのレンズ組み合わせて用いることによって、色収差を補正するアクロマートレンズとして機能させることができる。
【0230】
第2レンズL2もまた、材質の異なる凹レンズL2−1と凸レンズL2−2とから構成されており、アクロマートレンズとして機能させることができる。
【0231】
色収差を補正するためには、組み合わせるレンズの材料を適切に選択する必要があり、例えば、凹レンズL1−1、L2−1を、屈折率が1.59のポリカーボネート樹脂(PC)から作製し、凸レンズL1−2、L2−2を、屈折率が1.49のポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)から作製する。
【0232】
ただし、凹レンズL1−1、L2−1および凸レンズL1−2、L2−2は、その他の樹脂材料、あるいは、ガラスなどの無機材料から形成されていてもよい。ただし、照射領域の周辺部で生じるイエローリングの発生を適切に抑制するためには、アクロマートレンズを構成する凹凸レンズの屈折率差が0.05以上であることが好ましい。また、比較的屈折率の高い材料を用いることによって、レンズの厚さを薄くし、光源1からの光を取り込みやすい光学系を得ることがより容易になる。
【0233】
また、従来のアクロマートレンズは、色収差を補正し軸上で高精度に結像するように構成されているが、本実施形態では、特定の位置で結像させる必要はなく照射面周辺部へ照射される各波長の光線の方向を近づけることで効果が得られる。このため、従来の一般に使用される結像させる場合に比べて熱膨張などによるレンズ形状の変化に対して許容度が大きく、上記のようにガラスに比べて線膨張係数が大きい樹脂製のレンズの組み合わせを用いることができる。
【0234】
下記表1に、各レンズL1−1、L1−2、L2−1、L2−2の具体的な設計例を挙げる。なお、表1において、「座標」は、光源1の位置を原点とし、光出射側を正方向としたときの、光軸上における各レンズの光入射面の位置を示している。また、表1におけるコーニック(出射側)とは、非球面レンズを用いた場合において、非球面の形状を規定するための非球面関数に含まれるコーニック定数の値を示している。
【0236】
図37(a)および(b)は、本実施形態の照明装置410と、アクロマートレンズを用いていない照明装置(参考例)とのそれぞれについて、照度領域の中心からの距離と、色つきの指標としてのBR差分(R−B)/(R+B)との関係を示す図である。
【0237】
ここでBR差分とは、白色のスクリーンへ照射した場合における照射領域中心でのB光(波長450nm)とR光(波長610nm)の分光放射輝度(規格化輝度)をそれぞれ1としたときの、各点でのR光の分光放射輝度(相対値)とB光の分光放射輝度(相対値)を測定し、この測定結果から(R−B)/(R+B)を計算したものである。
【0238】
図37(a)に示すように、アクロマートレンズを用いた場合、BR差分(R−B)/(R+B)は、照射領域の中心から離れた周辺部において、比較的低い値を示す。一方で、
図37(b)からわかるように、アクロマートレンズを用いなかった場合には、(R−B)/(R+B)が照射領域の周辺部において比較的高い値を示す。これらのグラフの違いから、アクロマートレンズを用いることで、照射領域の周辺部での色つきを低減できることがわかる。
【0239】
また、イエローリングの発生を主観にて評価したところ、上記のBR差分が0.3以下の場合に100ルクスの照度下でイエローリングを視認することはなく、BR差分が0.25以下の場合に50ルクスの照度下でイエローリングを視認することはなかった。
【0240】
なお、上記の分光放射輝度の測定は、
図35に示すように、スクリーン法線方向に照明装置410を設置し、分光放射輝度計SR3を左右に移動させてスクリーン上の各点の分光放射輝度を測定することによって行われた。各点で測定された450nm、610nmの分光放射輝度を、照射領域の中央でのそれぞれの測定値によって規格化し、これによってBR差分(R−B)/(R+B)を求めることができる。
【0241】
以下、本実施形態の変形例の照明装置412を説明する。
【0242】
図38は、変形例の照明装置412を示す。照明装置412は、光源1と第1のレンズL1と第2のレンズL2とを備える。本変形例では、第1のレンズL1は、1枚のメニスカスレンズによって構成されており、第2のレンズL2としてのみ凹レンズL2−1と凸レンズL2−2との組み合わせからなるアクロマートレンズが用いられている。なお、本変形例でも、第1のレンズL1によって形成される虚像が、第2のレンズL2の焦点F2よりも光源側に位置するように、光学系が設計されている。
【0243】
本変形例においても、
図38に示すように、RB差分(R−B)/(R+B)は、照射領域の周辺部において比較的低い値を示す。このように、第2レンズL2としてアクロマートレンズを用いるだけでも、イエローリングの発生を適切に抑制し得る。
【0244】
下記の表2に、各レンズL1、L2−1、L2−2の具体的な設計例を挙げる。なお、表におけるコーニック(出射側)とは、非球面レンズを用いた場合のコーニック定数の値を示している。
【0246】
変形例の照明装置412では、レンズの貼り合わせ工程が少なくなるという製造上の利点が得られる。また、貼り合わせるレンズの数が少ないので、設計上、公差を大きく取ることができる。
【0247】
なお、第2レンズを構成する凹レンズL2−1の端面に入射した光の一部は、端面をそのまま通過する。このような光は、照射領域には到達せず、迷光となる可能性がある。そこで、凹レンズL2−1の端面に、光吸収層や反射層を設け、迷光を防止する構成としてもよい。
【0248】
上記の変形例では、第2レンズL2としてアクロマートレンズを用いる形態を説明したが、第1レンズL1としてアクロマートレンズを用い、かつ、第2レンズとしてアクロマートレンズを用いない形態も考えられる。しかし、この場合には、第2レンズL2を通過する光が屈折率波長分散の影響を受け、色収差が適切に補正されない場合がある。このため、少なくとも第2レンズL2としてアクロマートレンズを用いることが好ましい。
【0249】
なお、第2レンズL2としては、回折レンズを用いることも可能である。この場合、第2レンズL2を薄型化および軽量化することができる。
【0250】
図39は、照明装置412が形成する照射領域において測定されたBR差分を示す。
図39〜わかるように、L2レンズのみにアクロマートレンズを用いた場合であっても、BR差分(R−B)/(R+B)は、照射領域の中心から離れた周辺部において、比較的低い値を示す。従って、イエローリングの発生が適切に防止される。
【0251】
本実施形態の照明装置において、レンズの周辺部分を透過する光に対して色収差を軽減できるようにレンズが構成されていればよく、必ずしも、光軸近傍を通過する光の色収差の補償は行われなくて良い。
【0252】
そこで、以下にさらなる変形例として、レンズの周辺部のみが、アクロマートレンズ化されている形態を説明する。
【0253】
図40は、本変形例の照明装置414を示す。アクロマートが必要とされる領域(以下、アクロマート部分と呼ぶことがある)は、レンズ面の最周辺部でよく、例えば、レンズ半径において周辺の例えば50%がアクロマートレンズ化されていれば良い。これによりさらなる効果としてアクロマートレンズの軽量、薄型が実現される。
【0254】
以下の表3に、具体的な設計例を示す。照明装置414では、第2レンズL2の凹レンズL2−1の光軸近辺(レンズ中央部)での厚さを0.8mmに設定している。ただし、レンズ中央部での厚さを0mm、すなわち、中央部に空洞を有するドーナツ状のレンズ形状としてもよい。なぜなら、照射領域の周辺部でBR差分を小さくする為には、少なくともレンズ外周領域を通過する光に対してアクロマート化すればよいからである。なお、本明細書では、その一部においてのみアクロマート部分が形成されているレンズもアクロマートレンズと呼ぶ場合がある。
【0256】
このように、レンズの周辺部のみをアクロマートレンズ化してもよく、周辺部のみの色収差を補正したときにも、イエローリングの発生を防止することができる。なお、通常のアクロマートレンズは、光軸上の色収差を補正するように設計されるが、本構成では、非軸光線の色収差を補正するように設計する点で、従来のアクロマートレンズと異なっている。
【0257】
図41は、照明装置414が形成する照射領域において測定されたBR差分を示す。
図41からわかるように、L2レンズの周辺部のみにアクロマートレンズを用いた場合であっても、BR差分(R−B)/(R+B)は、照射領域の中心から離れた周辺部において、比較的低い値を示す。従って、イエローリングの発生が適切に防止される。
【0258】
<実施の形態4−2:光拡散層を光源とレンズとの間に設ける形態>
図42(a)は、本実施形態の照明装置が備える光源1の近傍を示しており、複数のLEDチップ1aを封止する封止層1bの上に、透光性を有する拡散層40aが設けられている。拡散層40aは、その表面において、典型的には不規則に配置された多数の微細な凹凸を有している。
【0259】
また、
図42(b)は、変形例の照明装置が備える光源1の近傍を示しており、LEDチップ1aを封止する封止層1bの上に、複数の微粒子を含む透明樹脂などから形成される拡散層40bが設けられている。
【0260】
図42(c)に示すように、本実施形態では、光源1と、第1レンズL1との間に、光を散乱・拡散させる光学素子が配置されている。
【0261】
下記の表4に、
図42(a)および(b)に対応する実施例(a)および(b)、その他の実施例(c1)〜(c5)について、周辺色度ムラ、着色の発生の結果および光利用効率を示す。その他の実施例では、拡散層を、実施例(a)および(b)と同様に光源と第1レンズとの間に設けるとともに、拡散層のヘイズ値を3%〜70%の範囲でそれぞれ設定している。また、表4には、比較例として、第1レンズL1と第2レンズL2との間に拡散層を設けた場合も示している。
【0262】
なお、表4において、色度ムラや着色が確認された場合を「×」で示し、確認されなかった場合を「○」で示し、わずかに確認された場合を「△」で示している。
【0264】
表4からわかるように、ヘイズ値が5%の場合には、十分な着色解消の効果は得られず、ヘイズ値が60%の場合には、着色解消の効果は得られるものの効率低下を引き起こす。また、比較例に示されるように、第1レンズと第2レンズとの間に拡散層を設けた場合、照射領域の均一性、照射領域の境界の明確化、光利用効率の低下の問題が引き起こされ得る。
【0265】
本実施形態の構成では、光源からの出射角度とその光の照射位置には、従来の照明装置にはない強い相関関係があることがわかった。そして、本構成では、このスペクトルの出射角度依存性が照射面で色度むらとして視認される。これは、本構成で特有の問題であり、このような光源のスペクトルの出射角度依存性を低減させるためには、第1レンズと光源との間に光拡散層を設けることが好ましいことがわかった。
【0266】
ただし、ヘイズ値が大きければ、周辺着色の低減効果はあるが、照射面の均一性の低下、最周辺部のきれの低下が発生する。
【0267】
本方式の配光特性において散乱層の効果的な特性を評価した結果、ヘイズ値が5%〜50%に設定することが好ましいことが判明した。
【0268】
さらに、ヘイズ値を5%〜30%に設定した場合には、周辺着色解消と同時に照射領域内での色むらの解消の効果も得られる。
【0269】
なお、「ヘイズ値」とは「曇り度」を示す値である。ヘイズ値は、全光線透過率をTt(%)とし、拡散透過率をTd(%)とした場合、以下の式で定義される。
ヘイズ値(%)=(Td/Tt)×100
【0270】
ここで、全光線透過率Ttは、入射光(平行光線)強度に対する拡散透過光および平行透過光の合計強度の比率である。また、拡散透過率Tdは、入射光(平行光線)強度に対する拡散透過光の強度の比率である。ヘイズ値が小さいほど光拡散層の明度は増し、ヘイズ値が大きいほど光拡散層の曇り度が強くなる。ヘイズ値は、例えば、積分球式光線透過率測定装置によって測定することができる。
【0271】
<実施の形態4−3:蛍光体の配置範囲と光源のピッチとの関係>
図43(a)はLED照明装置に用いられる一般的な光源(比較例)を示し、
図43(b)〜(e)は、本実施形態の照明装置で用いられる種々の光源を示す。
【0272】
各光源において、複数のLEDが、ピッチPの間隔で、互いに離間されるように配置されている。また、光源には、LEDとともに、蛍光体が設けられている。蛍光体は、LEDからの光を受けて適切に蛍光を生じさせるように、例えば、複数のLEDを覆うように層状に設けられている。
【0273】
ここで、
図43(a)〜(e)のそれぞれに示すように、最も外側のLEDと、このLEDの外側に存在する蛍光体のエッジとの間の距離のうち、最も長い距離をA、最も短い距離をBとする。このとき、
図43(b)〜(e)に示すように、LEDチップの配列ピッチP(不規則な配置の場合、または2種類以上の場合は平均)に対して、上記の距離A≦PかつB≦Pであることが好ましい。なお、LEDチップの配置は図示するものに限定されない。
【0274】
図43(a)に示す比較例では、A≧PかつB≧Pである。このように、LEDチップの外側の蛍光体領域が広い場合、そこのスペクトルは黄色成分が比較的多くなる傾向がある。これが、照射領域でのイエローリングの発生の要因の一つとなる。
【0275】
これに対して、
図43(b)に示すように、LED外側の蛍光体形成領域をより小さくする(ここでは、B≦P)ことによってイエローリングを低減することができる。ただし、
図43(b)に示した例では、コーナー部とそれ以外とでは蛍光体の形成領域が異なる。その結果、イエローリングの濃淡が照射領域周辺で発生する場合がある。
【0276】
したがって、さらに好ましい形態としては、
図43(c)および(d)に示すように、任意の場所で、LEDの外側の蛍光体形成領域のエッジまでの距離が略同等に設定し、これをピッチP以下の距離となるようすることで(すなわち、A≦PかつB≦Pに設定することで)、イエローリングをより効果的に低減することができる。また、
図43(e)に示すように、遮光層を形成して、蛍光体の発光面を
図43(d)に示す場合と同様にしてもよい。
【0277】
このように、蛍光体の発光領域とLEDの配列ピッチPとを適切に設定することで、光源の周辺部から発せられる光のスペクトルの黄色成分を減らすことができ、イエローリングや色度むらの発生を抑制することができる。
【0278】
図44は、
図43(c)に示した光源を用いた場合に形成される照射領域において測定されたBR差分を示す。
図44からわかるように、BR差分(R−B)/(R+B)は、照射領域の中心から離れた周辺部において、比較的低い値を示しており、従って、イエローリングの発生が適切に防止される。
【0279】
<実施の形態4−4:レンズフードを設ける形態>
本実施形態では、
図47に示すように、照明装置440の光出射側において遮光部材としての筒状のフード48を設ける。後述するように、照明装置440から発せられる光の配向角に応じて適切にフード48の長さLf2を調節することによって、光の利用効率を高くしたまま、照射領域周辺で発生する迷光を防止することができる。
【0280】
まず、本実施形態の照明装置の詳細を説明する前に、フード48によって遮断する迷光について説明する。
【0281】
図45は、照射領域の周辺部における相対照度を示す。上記のように均一な照射領域を形成する照明装置において、照射領域のエッジ部分で照度が急激に低下する。しかし、照射領域の周囲において迷光が形成する迷光領域が形成される。
【0282】
迷光は、光学系での意図しない光の反射やレンズの端面を透過する光などによって生じるものと考えられる。このような迷光は、意図する照射領域の周辺に観察されるものであり、照明装置では発生を防止することが望まれている。
【0283】
ここで、本明細書で用いる「照射領域」、「迷光領域」、「迷光割合」の定義を説明する。
【0284】
照射領域は、
図46に示すように、照明装置から1m離れたスクリーン(サイズ1m×1m)上に、光を照射したときに、
図45に示す角度−相対照度グラフにおいて、相対照度0.10の接線とX軸(角度)の交点よりも内側の領域を意味するものとする。
【0285】
また、迷光領域は、上記のようにして規定された照射領域の外側の領域を意味するものとする。
【0286】
さらに、迷光割合とは、迷光領域の光束/(照射領域の光束+迷光領域の光束)によって表される照射光全体における迷光の割合を意味するものとする。
【0287】
次に、
図47を参照しながら本実施形態の照明装置440を説明する。
【0288】
照明装置440は、実施形態4−1で説明したように、光源1と、第1レンズL1と、アクロマートレンズである第2レンズL2とを備えている。第2レンズL2は、凹レンズL2−1と、これに組み合わされた凸レンズL2−2とから構成されている。光源1、第1レンズL1、第2レンズL2は、筺体47の収容空間内に保持されている。
【0289】
下記の表5に、第1レンズおよび第2レンズの設計例を示す。ただし、その他の種々の設計が可能であることは言うまでもない。なお、表における、非球面係数4次および非球面係数6次とは、非球面レンズを用いた場合における、非球面を規定するための4次および6次の項の非球面係数をそれぞれ示している。
【0291】
照明装置440は、さらに、第2レンズL2の光出射面の周囲を囲うように設けられたフード48を有しており、フード48は筺体47に対して固定されている。フード48は、例えば、樹脂や金属材料から形成されており、典型的にはその内面側が光を吸収するように構成されている。
【0292】
従来より、照明装置において、照射範囲を制御するためにフードを設置する手法が利用されている。しかし、従来の照明装置においてフードを設置する場合、照射光が大きく損失する。これは、従来の照射装置の配光特性がガウシアン分布となっているためである。
【0293】
これに対して、照明装置440では、例えば
図48に示すように、所定の照射領域の内側では略均一な照度が実現されるとともに、照射領域の外側で急激に照度が低下する。このような照射光に対しては、フード48を設けることによって、照射領域への照射される光の損失を抑制しつつ、迷光を効果的に低減することができる。
【0294】
ここで、フード48の長さLf2について説明する。
【0295】
フード48を長くしすぎると、迷光だけでなく、照射光の一部をも吸収または散乱させてしまうので、光の利用効率が大きく低下する。一方でフードを短くしすぎると、照射領域の周辺に到達する迷光を防止することができない。
【0296】
例えば、下記の表6に示すように、フードがない場合、利用効率は高くなるものの、迷光割合が大きく、十分に迷光を抑制することができない。そこで、実施例4(a)および(b)に示すように40mmまたは60mmの長さのフードを設けると、利用効率を大幅に低下させることなく、迷光を防止することができ、迷光割合とし3%以下を実現できる。ただし、フード長が80mmと長いと、光利用効率が大幅に低下してしまうために好ましくない場合がある。
【0298】
以下、より具体的なフードの長さのより詳細な設計について説明する。
【0299】
フードの長さは、
図47に示す出射角度θ1、出射角度θ2、および、フード半径Rfに応じて決定されていてよい。
【0300】
ここで、フードの長さの上限L2yは、スクリーン上での相対照度が急激に低下する出射角度θ1を用いて規定できる。θ1は、例えば、
図48に示す角度−相対照度のグラフの傾きが−0.1よりも小さくなる最小の角度に設定されていてよい。例えば、
図48に示すような照度分布が得られる場合、θ1は25°である。
【0301】
この出射角度θ1を用いて、フード長さ上限L2yは、下記の式によって求められる。
L2y=Rf/tanθ1−Lf1
【0302】
ここで、Lf1は、光軸上における、面光源1から筺体端部(フード48との接続部)までの距離である。すなわち、光軸上における面光源1からフードの先端までの距離はLf1+Lf2で表すことができる。
【0303】
フードが上限L2yよりも長い場合、照射領域に到達すべき光が、フードによって遮られることになる。したがって、光の利用効率が大幅に低下し、また、照射領域エッジでの照度の急峻な立下りが実現できなくなる可能性がある。
【0304】
他方、フードの長さの下限L2sは、上記に説明した迷光割合(=迷光領域の光束/(照射領域の光束+迷光領域の光束))が1%以下となる出射角度θ2を用いて規定できる。θ2は、例えば、
図48に示すような照度分布が得られる場合、上記迷光割合が1%となる角度としてθ2=38°が、照度の測定により決定される。
【0305】
この出射角度θ2を用いて、フード長さ下限L2sは、下記の式によって求められる。
L2s=Rf/tanθ2−Lf1
【0306】
フードが下限L2sよりも短い場合、照射領域の周辺に到達する光のうち、フードによって遮光される光がほとんどない。このため、下限L2y以下の長さのフードでは、照射領域の周辺で生じる迷光を遮光することがほとんどできない。
【0307】
以上のように、フード単体の長さL2f(あるいは、面光源からフード端までの光軸上での距離L1f+L2f)は、下記の式を満たすように設定されることが好ましい。
Rf/tanθ2−Lf1<Lf2<Rf/tanθ1−Lf1
【0308】
以下に例を挙げると、θ1=25°、θ2=38°、Lf1=28mm、Rf=50mmの場合において、36.0mm<Lf2<79.2mmに設定すれば、光利用効率を低下させずに、照射領域周辺の迷光を効果的に防止することが可能になる。なお、光源からフード先端までの距離Lf1+Lf2に書き直すと、64.0mm<Lf1+Lf2<107.2mmを満たすように、フードの長さ等を適宜設定することが好ましい。
【0309】
このように、本実施形態の照明装置では、配光特性がガウシアン分布ではなく、迷光領域と照射領域が区別されるので、フードの形状を適切な構成とすることにより迷光のみを効率よく低減させることができることができる。
【0310】
<実施の形態4−5:レンズ面に反射層を設ける形態>
本実施形態では、
図49に示すように、照明装置450に設けられた第1レンズL1の光入射側面および/または光出射側面において、また、第2レンズL2の両側面において反射防止層50(以下、AR層50と呼ぶことがある)を設ける形態を説明する。
【0311】
以下の表7に、第1レンズL1の出射側面、第1レンズL1の入射側面、第2レンズL2の両側面の少なくともいずれかにおいてAR層50を設けたときの、迷光割合、光利用効率などを示す。なお、表7におけるカップ反射率とは、第1レンズL1および第2レンズL2を収容する筺体47の内側面の反射率を示しており、本実施形態では特に反射防止処理を施していないため、全ての実施例で90%に設定されている。
【0312】
また、比較例5として、第1レンズL1および第2レンズL2のいずれにもAR層を設けていない形態を示す。AR層を設けない場合、レンズ面の反射率は4%であることが示されている。
【0313】
実施例5(a)〜5(c)では、第1レンズL1の出射側面の反射率が2%、1%、および、0.5%のそれぞれになるようにAR層50が設けられている。なお、表に記載の反射率は、D65光源における正面反射率である。
【0314】
また、実施例5(d)〜5(f)では、第1レンズL1の出射側面および入射側面の両方の反射率が2%、1%、および、0.5%のそれぞれになるようにAR層50が設けられている。
【0315】
さらに、実施例5(g)〜5(i)では、第1レンズL1の出射側面および入射側面の両方、および、第2レンズL2の出射側面および入射側面の両方の反射率が2%、1%、および、0.5%のそれぞれになるようにAR層50が設けられている。
【0317】
また、本実施形態における各レンズの設計例は下記の表8に示す通りである。
【0319】
本実施形態では、第1レンズL1は、光源に最も近いレンズである。なお、
図49には、第1レンズL1としてメニスカスレンズを用いた形態が示されているが、これに限られない。第1レンズL1として凹凸2枚のレンズからなるアクロマートレンズが用いられている場合は、一体化されたものを第1レンズL1として考えることができる。また、3枚以上のレンズを用いて光学系が構成されている場合、光源に最も近いレンズを第1レンズL1として考え、その他のレンズのどちらか一方を第2レンズL2として考えればよい。
【0320】
図49からわかるように、本実施形態の照明装置450において、レンズと空気と界面は少なくとも4箇所存在する。また、一般に反射防止層を設置することは製造工程の増加、コスト増大の要因になる。
【0321】
最も反射防止層を設けることが好ましい面を特定するために、迷光の発生源を解析した結果、約80%以上の迷光が、第1レンズL1の出射側面のレンズ−空気界面における反射によって生じていることがわかった。このため、少なくとも第1レンズL1の照射面側に反射防止層を設けることが好ましい。
【0322】
上記表7の実施例5(a)〜(c)に示したように、第1レンズL1の照射面側にのみ反射防止層を設置することによって、迷光割合を十分に低下させながら、製造コストの上昇を防ぐことができる。これらの構成は、特に、蒸着法によるAR層を形成する場合、製造コスト面で、有利な構成であると言える。
【0323】
また、上記表7の実施例5(d)〜(i)に示したように、さらに他のレンズ面にもAR層を設けることで、迷光割合をさらに低下させ得る。なお、これらの構成は、特にDIP法によってAR層を形成する場合には、製造コストを大幅に上昇させることないので、有利な構成であると言える。
【0324】
<実施の形態4−6:コバや筺体内部に光吸収層を設ける形態>
図50に示す本実施形態の照明装置460において、第1レンズL1および第2レンズL2のコバに吸収層Lsaが設けられている。なお、コバとは、レンズの縁の側面部分(典型的には円筒側面をなす面)を意味する。また、吸収層Lsaは、レンズのコバを黒塗りすることによって形成している。
【0325】
下記表9に、実施例および比較例を示す。比較例6は、レンズ面のAR層およびコバの吸収層を設けない構成である。また、実施例6(a)は、実施例5(b)の構成において、さらにコバに吸収層を設けた構成である。実施例6(b)、(c)は、実施例5(e)、実施例5(h)の構成において、さらにコバに吸収層Lsaを設けた構成である。また、実施例6(d)、(e)、(f)は、実施例5(c)、(f)、(i)の構成において、さらにコバに吸収層を設けた構成である。また、実施例6(g)、(h)、(i)は、実施例6(b)、(e)、(h)の構成において、さらにカップ(筺体内部)に吸収層を設けた構成である。カップに吸収層を設けることで、反射率は5%に低下する。
【0327】
表9の結果からわかるように、コバに吸収層を設けることで、さらに迷光を低減することができ、迷光割合を1.6%以下にすることができる。なお、コバに吸収層を設ける代わりに、コバの表面を散乱させることによっても迷光を低減させることができる。また、コバに設ける吸収層の反射率は10%以下に設定することが好ましい。さらに筺体内部の反射率を小さくすることによっても迷光を低減させることができる。
【0328】
以下、実施形態4−4〜実施形態4−6の組み合わせによる形態を説明する。
図51に示す照明装置462のように、実施形態4−4に示したフードを設けるとともに、さらに、実施形態4−5および4−6に示したようにレンズ面に反射層を設ける、及び/又は、コバに吸収層を設けてもよい。
【0329】
下記の表10に各実施例7(a)〜(h)と比較例7とを示している。レンズ面にAR層を設け、コバおよびカップに吸収層を設け、さらにフードを併用することによって(実施例7(h))、迷光割合を相当に低減することができる。
【0331】
また、
図52に示す照明装置464のように筺体内部を黒塗りすることによって迷光を低減することができ、迷光割合を1.5%以下にすることができる。下記表11には、各実施例8(a)〜(l)と比較例8とを示している。筺体内部を黒塗りすることによって、カップ反射率は、90%から5%に低下している。
【0333】
以上、照射領域の周辺部で発生するイエローリングや迷光を抑制するための種々の形態を説明したが、各実施形態を任意に組み合わせても良いことは言うまでもない。
【0334】
以下、本発明のさらに別の実施形態を説明する。
【0335】
〔レンズを構成する材料を選択することによって色ムラの発生の抑制する形態〕
上記のように凸レンズおよびメニスカスレンズの組み合わせを用いた場合、レンズを構成する材料が適切に選択されていないと、照射エリアの端部が、中心付近と異なる色を呈する現象(色づき現象)が生じてしまう可能性があることを本発明者らは見出した。
【0336】
以下、このような色づき現象を防止するための形態を説明する。
【0337】
<実施の形態5−1>
本実施形態の照明装置は、
図1に示した照明装置と同様の構成を有している。すなわち、照明装置は、
図1に示すように、光源(発光部)1と、光源1の光取り出し側である、光出射面側の光軸Ax上に配置された光学レンズ部2aとを含み、光源1で発光された光を、光学レンズ部2(第1光学レンズ部)aを通して光照射するようになっている。
【0338】
(光源1)
光源1は、面発光を行う面発光体であるLED発光体からなる。なお、面発光を行う面発光体であれば、LED発光体に限定されるものではない。例えば、発光部として蛍光体を含む発光部を用い、光源と発光部とを分離したリモートフォスファー構造を採用しても良い。なお、本実施形態のLED発光体(面発光体)の発光面の形状は矩形形状であり、この矩形の面積は6mm×6mm程度である。
【0339】
(光学レンズL1)
光学レンズL1は、少なくとも光源1の発光面の最大幅よりも大きな直径を有しており、光源1側の面が凹面形状となった光学レンズからなる。
【0340】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:5.0mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:12.0mm、入射面(凹)の曲率半径:9.2mm、出射面(凸)の曲率半径:6.0mmである。
【0341】
光学レンズL1の構成材料は、透光性および/または耐熱性を有する樹脂材料またはガラス材料が好ましく、本実施形態では、PMMA(ポリメチルメタクリレート:アッべ数ν=58)を用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては高アッべ数のレンズ材料であるクラウンガラス(例えばSchott社製のBK7:アッべ数64.7など)や、オレフィン系樹脂(例えば日本ゼオン社製のZEONEX、JSR社製のARTON、三井化学社製のAPL:アッべ数56程度)などがある。これらは高アッべ数かつ耐熱性と透明性を両立しているためPMMAよりも好ましい。
【0342】
(光学レンズL2)
光学レンズL2は、少なくとも1枚目の光学レンズである光学レンズL1の最大径よりも大きな直径を有しており、光射出面側は凸形状となったレンズからなる。
【0343】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:10.5mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:35.0mm、入射面:平面、出射面(凸)の曲率半径:21mm、出射面(凸)のコーニック定数:−0.28、非球面係数4次:−5.2×10
-7、非球面係数6次:−1.9×10
-8、非球面係数8次:3.5×10
-10、非球面係数10次:−9.7×10
-13、非球面係数12次:2.6×10
-16である。
【0344】
光学レンズL2の構成材料は、本実施形態では、光学レンズL1と同様PMMAを用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては上記のクラウンガラスや、オレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0345】
白色LEDパッケージ、1枚目の光学レンズL1、および2枚目の光学レンズL2の中心がそれぞれ光軸上と一致するように配置させ、かつ、光軸上における白色LEDパッケージの発光面と1枚目の光学レンズL1の光入射面との距離を1.5mm、また、光軸上における1枚目の光学レンズL1の光射出面と2枚目の光学レンズL2の入射面との距離を2.0mmとして配置させた。
【0346】
このとき、光学レンズL1、L2の焦点距離はそれぞれ23.05mm、42.47mmであり、合成焦点距離は16.14mmであった。また、各光学レンズL1、L2の焦点位置f1、f2、および合成焦点位置f1+f2の位置は、光源部の発光面を0(原点)として、出射方向を+方向に軸を取った場合、それぞれ−15.20mm、−26.94mm、−6.44mmであった。一方、各光学レンズL1、L2によって発生する虚像(L1虚像、L2虚像)の位置を計算により導出した結果、L1虚像は−1.26mm、L2虚像は−8.76mmであった。
【0347】
ここで、本実施形態の照明装置において、光学レンズL1、L2のぞれぞれは、比較的高いアッベ数(ν=54以上)の構成材料のものを採用することが好ましい。
【0348】
より具体的には、本実施形態では、上記のようにレンズの構成材料としてPMMAを用いており、この場合、波長587.6nm、486.1nm、および656.3nmの光に対する屈折率を、それぞれ、nd、nF、nCとすると、アッベ数ν=(nd−1)/(nF−nC)=58となる。
【0349】
また、上記のように、光学レンズL1、L2のぞれぞれの構成材料は、透光性を有する材料であれば良く、必ずしも無色透明である必要はない。
【0350】
また、上記のように、光学レンズL1、L2のそれぞれの構成材料は、耐熱性を有する材料であることが好ましい。これにより、光学レンズL1、L2のそれぞれの周辺の温度上昇によりレンズが変形してしまうことを抑制することができる。
【0351】
次に、上記のように適切にアッベ数が選択されたレンズを用いることの利点を説明する。
【0352】
本発明者は、上記特許文献1の光源にて照射面を均一に近づけると、照射エリアの端部が中心付近と異なる色となる現象(色づき現象)が生じてしまうことを新たに見出した。そこで、本発明者が上記の色づき現象が生じる原因について鋭意検討したところ、レンズの構成材料のアッベ数が低いほど、色づきの程度が大きいことが新たに判明した。これは、定性的には、アッベ数が低いほど、レンズを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が大きくなるからであると考えられる。
【0353】
そこで、本実施形態の照明装置では、光学レンズL1、L2のそれぞれの構成材料のアッベ数を54以上としている(比較的高いアッベ数;本実施形態では、PMMAを用いアッベ数58としている)。これにより、光学レンズ部2aを構成する光学レンズL1、L2のそれぞれを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が小さくなるため、波長の異なる複数の光の光線間のずれが小さくなる。このため、照射エリアの中心付近と端部の色変化を小さくすることができる。
【0354】
このように、本実施形態では、照射光の照射エリア(スポット)の中心付近と端部の色変化を小さくすることができるというさらなる効果が得られる。
【0355】
(
図2に示す照明装置と同様の構成)
また、本実施形態の照明装置は、
図2に示した照明装置と同様の構成であっても良い。以下、本構成において、上記のように適切にアッベ数が選択されたレンズを用いることの利点を説明する。
【0356】
図2に示す照明装置と同様の構成を採用する場合においても、光学レンズL1、L2のそれぞれの構成材料のアッベ数を54以上としている(比較的高いアッベ数;本実施形態では、PMMAを用いアッベ数58としている)。これにより、光学レンズ部2aを構成する光学レンズL1、L2のそれぞれを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が小さくなるため、波長の異なる複数の光の光線間のずれが小さくなる。このため、照射エリアの中心付近と端部の色変化を小さくすることができる。
【0357】
従って、照射光の照射エリア(スポット)の中心付近と端部の色変化を小さくすることができるというさらなる効果が得られる。
【0358】
以下、
図53を参照しながら、照射エリアの端部(周辺)の色づきと照明装置11aの光線の挙動との関係について説明する。
【0359】
図53(a)は、本実施形態の照明装置11aの光線挙動を示す図である。また、
図53(b)は、参考例(sample 2)の照明装置(コリメート光学系LC2)の光線挙動を示す図である。さらに、
図53(c)は、各レンズの構成材料と、屈折率またはアッベ数との関係を示す表である。
【0360】
ここでは、照明装置11aと、参考例の照明装置において、光源1から出射された赤色光(波長700nm;薄い実線)および青色光(波長435nm;濃い実線)の各光線の追跡結果を示す。
【0361】
図53(b)に示す参考例の照明装置では、高屈折率(=低アッべ数)の材料を使用しており、その波長分散性から赤色光と青色光の各光線が大きくずれていることがわかる。
【0362】
一方、
図53(a)に示す本実施形態の照明装置11aのように、アッべ数が高いレンズ材料を用いると、波長による屈折率の差が小さくなるため、赤色光と青色光の各光線のずれが少ないことがわかる。
【0363】
次に、
図54に基づき、本実施形態の照明装置11aの光学的特性について説明する。
図54(a)は、照明装置11aにおいて、照射光に電球色(3000K)、青色(波長435nm)、赤色(波長700nm)の3種類の光を含めたときの照度分布を示す。また、
図54(b)は、参考例のコリメート光学系LC2の照度分布を示す。さらに、
図54(c)は、
図54(a)に示す照明装置のカラーチャートを示す。
【0364】
図54(a)および(c)に示すように、照明装置11aについては、照度エリアは均一であり、さらに赤色光と青色光の照度エリアの差も1000mm先でもほとんどないため、照射エリア(スポット)の中心付近と端部の色変化はほとんどわからない。
【0365】
一方、レンズ位置・形状が照明装置11aと同じでも、コリメート光学系LC2の照明装置のように、低アッべ数の材料(光学レンズL1にポリカーボネイト(PC);アッべ数30)を使った場合、赤色光と青色光の各光線に差が発生するエリア(色変化の距離)が異なる。
【0366】
例えば、照明装置11aにおいて色変化の距離が70mm程度に対して、コリメート光学系LC2では、色変化の距離が120mm程度、すなわち、照射エリアの周辺の色づきエリアが大きくなる。
【0367】
次に、
図55に基づき、照射エリアの端部(周辺)の色づきとアッベ数との関係(臨界的意義)について説明する。
【0368】
図55(a)は、レンズの構成材料と、屈折率およびアッベ数との関係を示す表である。また、
図55(b)は、アッベ数と、照射エリアの端部(周辺)における色変化の距離との関係を示すグラフである。
【0369】
本発明者は、アッべ数の違いによる効果を確認するために、
図55(a)の表に示す各材料について、アッベ数と、照射エリアの端部(周辺)における色変化の距離との関係について評価した。
【0370】
その結果、
図55(b)のグラフに示されているように、アッべ数が54付近を境界として、色変化の距離が急激に変化することが判明した。
【0371】
同図では、アッベ数が54未満のとき、色変化の距離は、ほぼ112mm以上、もしくは、ほぼ120mm以上となっている。一方、アッベ数が54以上のとき、色変化の距離は、96mm以下、もしくは、ほぼ68mm以下となっている。
【0372】
なお、アッベ数は、高ければ高いほど良いわけではなく、アッべ数が非常に高い材料(たとえばHOYA社製:FCDガラス;アッベ数82)では改善効果は収束する(不図示)。以上より、アッベ数は、54以上82以下、より好ましくは、56以上65以下であることが好ましい。
【0373】
<実施の形態5−2>
図56および
図57は本実施の形態に係る照明装置11cの概略構成を示す図である。
【0374】
(照明装置11cの構成)・・・
図56、57
照明装置11cは、上記の光学レンズ部2aの他に、さらに2枚の照射角度調整用レンズである光学レンズL3、L4からなる光学レンズ部2bが、光学レンズ部2aの光射出側に設けられている点で、上記の照明装置11a、11bと異なっている。
【0375】
光学レンズ部2aについては、上述したとおりなので、以下では、光学レンズ部2bについて説明する。
【0376】
(光学レンズ部2b)
光学レンズ部2bは、2枚の光学レンズL3、L4からなり、光学レンズ部2aの光出射側に近い側から順に、光学レンズL3、光学レンズL4が配置された構造となっている。なお、光学レンズL3、L4は、それぞれの中心が光軸Axを通るように配置されている。
【0377】
(光学レンズL3)
光学レンズL3は、少なくとも光学レンズL2の光軸Axに垂直な断面(最大)の直径よりも大きな直径を有しており、光学レンズL2側の面が凹面形状となった光学レンズからなる。
【0378】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:10mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:50mm、入射面(凹)の曲率半径:78mm、出射面(凸)の曲率半径:180mmである。
【0379】
光学レンズL3の構成材料は、光学レンズL1、L2と同様、高アッべ数のものが好ましく、本実施形態ではPMMAを用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては上記のクラウンガラスや、オレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0380】
また、光学レンズL2、L3間の距離は、光学レンズL2、L4と干渉しない範囲で可変となっており、
図57(a)および(b)に示すように、この距離を変化させることで照射角度調整して、広角または狭角への変更が可能となっている。
【0381】
なお、
図57(a)は、照明光の照射角度を狭角としたときの各レンズの配置を示す。また、
図57(b)は、照明光の照射角度を広角としたときの各レンズの配置を示す。
【0382】
(光学レンズL4)
光学レンズL4は、少なくとも1枚目の光学レンズである光学レンズL3の最大径よりも大きな直径を有しており、光射出面側は凸形状となったレンズからなる。
【0383】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:18mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:100mm、入射面(凹)の曲率半径:330mm、出射面(凸)の曲率半径:90mmである。
【0384】
光学レンズL4の構成材料は、本実施形態では、光学レンズL1と同様PMMAを用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては上記のクラウンガラスや、オレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0385】
なお、
図56に示す光学レンズL2〜L4の距離は、50mm程度である。
【0386】
(照明装置11cの効果)
照明装置11cによれば、発光部から出射される光のほぼ全ての光を利用することができ、高い光利用効率を実現するとともに、発光部の異なる場所から出射する光をほぼ等しい照射領域へ照射することが可能となり、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることができ、照射光の照射エリア(スポット)の中心付近と端部の色変化を小さくしながら、広角または狭角への変更が可能となる。
【0387】
次に、
図58および59に基づき、照明装置11cの光学的特性について説明する。
【0388】
図58(a)は、狭角のレンズ配置において、照射光に電球色(3000K)、青色(波長435nm)、赤色(波長700nm)の3種類の光を含めたときの照度分布を示す。また、
図58(b)は、カラーチャートを示す。一方、
図59(a)は、広角のレンズ配置において、照射光に電球色、青色、赤色の3種類の光を含めたときの照度分布を示す。さらに、
図59(b)は、カラーチャートを示す。
【0389】
これらの図に示すように、照明装置11cについては、照度エリアは均一であり、さらに赤色光と青色光の照度エリアの差も1000mm先でもほとんどないため、照射エリア(スポット)の中心付近と端部の色変化はほとんどわからない。
【0390】
<実施の形態5−3>
本発明のさらに他の実施の形態について説明すれば以下の通りである。ここでは、光学レンズ部2の2枚構成の光学レンズを一体化した例について説明する。
【0391】
(照明装置の構成)・・・
図60
図60は、本実施の形態に係る照明装置11dの概略構成を示す図である。
【0392】
同図に示すように照明装置11dは、光源1(発光部)と、2枚構成の光学レンズL1、L2が一体化された光学レンズ部2cとを備える。
【0393】
(光源1)
光源1は、面発光を行う面発光体であるLED発光体からなる。なお、面発光を行う面発光体であれば、LED発光体に限定されるものではない。例えば、発光部として蛍光体を含む発光部を用い、光源と発光部とを分離した構造を採用しても良い。なお、本実施形態のLED発光体(面発光体)の発光面の形状は、略円形状であり直径は2mmΦである。
【0394】
(光学レンズ部2c)
光源1の発光面に垂直な方向に射出する光は、光学レンズL2の各空気界面において、概ね垂直入射している。その為、同図に示すように、光学レンズL1、L2の各レンズの中央付近の一部を接触または接合させても、射出角度分布に大きな影響を及ぼすことなく、照射領域の均一性が実現される。
【0395】
(光学レンズL1)
光学レンズL1は、少なくとも光源1の発光面の最大幅よりも大きな直径を有しており、光源1側の面が凹面形状となった光学レンズからなる。
【0396】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:2.0mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:8.0mm、入射面(凹)の曲率半径:6.6mm、出射面(凸)の曲率半径:4.0mmである。
【0397】
光学レンズL1の構成材料は、本実施形態では、上記と同様PMMAを用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては上記のクラウンガラスや、オレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0398】
(光学レンズL2)
光学レンズL2は、少なくとも1枚目の光学レンズである光学レンズL1の最大径よりも大きな直径を有しており、光射出面側は凸形状となったレンズからなる。
【0399】
より具体的には、光軸Ax方向に対する厚み:4.0mm、光軸Axに垂直な断面(最大)の直径:16mm、入射面:平面、出射面(凸)の曲率半径:12mm、出射面(凸)のコーニック定数:−0.20である。
【0400】
光学レンズL2の構成材料は、本実施形態では、光学レンズL1と同様PMMAを用いているが、これに限定されない。例えば、PMMA以外の候補としては上記のクラウンガラスや、オレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0401】
(製造方法)
図60に示す照明装置11dでは、光学レンズL1、L2を一体成型または、光学レンズL1、L2を接合させて光学レンズ部2cとした例を示している。
(1)一体成型:具体的には、アクリル材質等の樹脂(本実施形態では、アッベ数58のPMMAを使用)を金型によって光学レンズL1、L2を一体成型して光学レンズ部2cとする。
(2)接合:一方、光源1の発光面に近いレンズ(光学レンズL1)と発光面から遠いレンズ(光学レンズL2)とをそれぞれ成型した後、各レンズの中心付近で接着させて光学レンズ部2cとしても良い。
【0402】
より具体的には、照明装置11dの製造方法は、以下の工程を含む。
(a)レンズ作成工程:アッベ数が54以上の透光性材料を用いて複数の光学レンズのそれぞれを作成するレンズ作成工程。
(b)接合工程:光学レンズ部2cを構成する各光学レンズのそれぞれの焦点位置が、各光学レンズによって発生するそれぞれの虚像に対して、発光部に対向する面とは反対側に存在するように、(a)のレンズ作成工程で作成した複数の光学レンズのそれぞれを、光軸調整を行って接合する。
【0403】
なお、本実施形態では、「接合」の一例として、接着剤を使用した接着によって、2枚構成の光学レンズを一体化しているが、これに限定されない。例えば、「接合」のその他の例として溶着、圧着などを挙示することができる。
【0404】
次に、
図61に基づき、照明装置11dの光学的特性について説明する。
図61(a)は、照射光に電球色(3000K)、青色(波長435nm)、赤色(波長700nm)の3種類の光を含めたときの照度分布を示す。また、
図61(b)は、カラーチャートを示す。
【0405】
これらの図に示すように、照度エリアは均一であり、さらに赤色光と青色光の照度エリアの差も1000mm先でもほとんどないため中心付近と端部の色変化はほとんどわからなくなる。
【0406】
以上に説明したように、本実施形態の照明装置は、発光部の光取り出し側に、複数の光学レンズからなる光学レンズ部を配置した照明装置において、上記光学レンズ部は、各光学レンズのそれぞれの焦点位置が、上記各光学レンズによって発生するそれぞれの虚像に対して、上記発光部に対向する面とは反対側に存在しており、上記複数の光学レンズのそれぞれの構成材料のアッベ数が54以上であってよい。
【0407】
また、本実施形態の照明装置の製造方法は、発光部の光取り出し側に、複数の光学レンズからなる光学レンズ部を配置した照明装置の製造方法であって、アッベ数が54以上の透光性材料を用いて上記複数の光学レンズのそれぞれを作成するレンズ作成工程と、上記光学レンズ部を構成する各光学レンズのそれぞれの焦点位置が、上記各光学レンズによって発生するそれぞれの虚像に対して、上記発光部に対向する面とは反対側に存在するように、上記レンズ作成工程で作成した複数の光学レンズのそれぞれを、光軸調整を行って接合するレンズ接合工程と、を含んでいても良い。
【0408】
上記構成または方法によれば、各レンズによる虚像を発光部に近い位置で発生させることができる。
【0409】
これにより、光学レンズ部の光軸上に存在する発光部中心から射出される光と、発光部の中心から外れた位置から射出される光とを、ほぼ等しい角度分布で光学レンズ部から射出することが可能となるので、発光部中心から射出される光も発光部中心から外れた位置から射出される光も所定の照射領域の全域を同じように照射することができるので、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0410】
しかも、発光部中心から射出される光と発光部中心から外れた位置から射出される光は、ほぼ等しい角度分布で光学レンズ部から射出することが可能となるので、当該光学レンズ部に射出されない光を殆ど無くすことができ、この結果、高い光利用効率を実現することが可能となる。
【0411】
また、上記のように、本発明者は、上記特許文献1の光源にて照射面を均一に近づけると、照射エリアの端部が中心付近と異なる色となる現象(色づき現象)が生じてしまうことを新たに見出した。そこで、本発明者が上記の色づき現象が生じる原因について鋭意検討したところ、レンズの構成材料のアッベ数が低いほど、色づきの程度が大きいことが新たに判明した。これは、定性的には、アッベ数が低いほど、レンズを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が大きくなるからであると考えられる。
【0412】
そこで、上記の構成または方法では、複数の光学レンズのそれぞれの構成材料のアッベ数を54以上(比較的高いアッベ数)としている。これにより、光学レンズ部を構成する複数の光学レンズのそれぞれを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が小さくなるため、波長の異なる複数の光の光線間のずれが小さくなる。このため、照射エリアの中心付近と端部の色変化を小さくすることができる。
【0413】
従って、発光部から射出される光のほぼ全ての光を利用することができ、高い光利用効率を実現するとともに、発光部の異なる場所から射出する光をほぼ等しい照射領域へ照射することが可能となり、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることができ、照射光のスポットの中心付近と端部との色変化を小さくすることができる。
【0414】
また、本実施形態による照明装置は、発光部の光照射面側に、複数の光学レンズからなるレンズ部を配置した照明装置において、上記光学レンズ部を構成する各光学レンズの焦点を合成した合成焦点位置が、上記各光学レンズによって発生するそれぞれの虚像に対して、当該全ての虚像の上記発光部に対向する面とは反対側に存在していても良い。
【0415】
また、上記構成によれば、光学レンズ部を構成する各光学レンズの焦点を合成した合成焦点位置が、上記各光学レンズによって発生するそれぞれの虚像に対して、当該全ての虚像の上記発光部に対向する面とは反対側に存在していることで、各レンズによる虚像を発光部に、更に近い位置で発生させることができる。これにより、光学レンズ部から射出する光の角度を拡げることができるので、より広い照射領域の均一性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0416】
さらに、上記構成によっても、各レンズによる虚像を発光部に近い位置で発生させることができるので、発光部から射出される光のほぼ全ての光を利用することができ、高い光利用効率を実現するとともに、発光部の異なる場所から射出する光をほぼ等しい照射領域へ照射することが可能となり、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることができる。また、上記構成によっても、光学レンズ部を構成する複数の光学レンズのそれぞれを通過する波長の異なる複数の光の波長の違いによる屈折率の差が小さくなるため、波長の異なる複数の光の光線間のずれが小さくなる。このため、照射エリアの中心付近と端部の色変化を小さくすることができる。
【0417】
上記複数の光学レンズのそれぞれの構成材料が、耐熱性を有する材料であっても良い。
【0418】
上記構成によれば、複数の光学レンズのそれぞれの周辺の温度上昇によりレンズが変形してしまうことを抑制することができる。
【0419】
また、本実施形態による照明装置は、上記光学レンズ部を第1光学レンズ部としたとき、上記第1光学レンズ部の光射出側に、第2光学レンズ部が設けられていても良い。
【0420】
上記構成によれば、第1光学レンズ部から射出された光の射出角を、第2光学レンズ部によって変更することが可能となる。つまり、第2光学レンズ部の光学特性を調整することにより、第1光学レンズ部から射出された光の射出角を狭めたり、あるいは拡げたりすることが可能となる。
【0421】
これにより、第2光学レンズ部の設計の仕方によって、光の照射領域の面積を自由に変更させることができる。
【0422】
また、本実施形態による照明装置は、上記第2光学レンズ部は、第1光学レンズ部に一番近いレンズを凹レンズ、次に近いレンズを凸レンズで構成されていても良い。
【0423】
このように、凹レンズと凸レンズとの組み合わせにより、各レンズで発生する収差を補正し合うことができるので、第1光学レンズ部から射出される光の特性を壊さないようにすることができる。
【0424】
これにより、第1光学レンズ部から射出される光の射出角が調整可能で、且つ、発光部から射出される光のほぼ全ての光を利用することができ、高い光利用効率を実現するとともに、発光部の異なる場所から射出する光をほぼ等しい照射領域へ照射することが可能となり、照射領域の均一性を飛躍的に向上させることができる。
【0425】
また、本実施形態による照明装置は、上記光学レンズ部は、上記各レンズ界面の一部が一体的に形成されていても良い。
【0426】
このように、光学レンズ部を構成している各レンズの一部が一体的に形成されていることで、発光部の発光面と光学レンズ部との位置合わせを簡単にできる。
【0427】
また、発光部と光学レンズ部との固定も簡単に行うことができる。
【0428】
2枚レンズの一体的な形成方法としては、樹脂による一体成型、接着剤による接着が考えられる。
【0429】
また、本実施形態による照明装置は、上記2枚レンズが樹脂により一体成型されていても良い。
【0430】
この場合、2枚レンズが樹脂により一体成型されていることで、光学レンズ部を形成する際の成型回数を2回(レンズ2枚の場合)から1回に減らすことができるため、製造コストの低下を図ることができる。
【0431】
また、本実施形態による照明装置は、上記光学レンズ部を構成するレンズのうち、上記発光部に最も近いレンズ面を、当該発光部に向かって窪んだ凹面とする第1光学レンズ、上記発光部の発光面から光軸上の第1光学レンズの界面までの距離をd、上記第1光学レンズの内側レンズ曲率半径をR、上記発光部の上記光軸上の配置範囲をhとしたとき、h≦2√(d(2R−d))を満たしていても良い。
【0432】
このように、発光部を上記配置範囲h内に配置することで、当該発光部から射出される光が全て第1光学レンズに取り込まれるようになり、光利用効率を向上させることができる。
【0433】
また、本実施形態による照明装置は、上記光学レンズ部の中心から、発光部の発光面までの距離をa、上記光学レンズ部の中心から焦点位置までの距離をfとしたとき、a<f/2を満たしていても良い。
【0434】
このように、光学レンズ部の中心から、発光部の発光面までの距離aを、光学レンズ部の中心から焦点位置までの距離fの半分より短くすることによって、常に、虚像位置を光学レンズ部の焦点位置よりも相対的に光学レンズ部へ近付けることができる。
【0435】
また、本実施形態による照明装置は、上記発光部は、複数の発光体からなっていても良い。
【0436】
この場合、発光部の発光面には、複数の発光体が配置されることになるが、各発光体の発光量にバラツキがあっても、照射面では、これらのバラツキを吸収するようにして光が照射される。つまり、どの発光体においても、同じ照射領域に光を照射するようになっているので、発光体の発光量にバラツキがあっても、このバラツキが吸収されることになる。
【0437】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。