(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
列方向に配列された複数のカムフォロアを備える第一部材と、
前記カムフォロアが係合する係合溝を外周面に有する回転可能なカムを備える第二部材であって、前記カムが回転して前記係合溝に複数の前記カムフォロアを順次係合させることにより、前記列方向に前記第一部材に対して相対移動する第二部材と、を有するカム装置であって、
前記第二部材は、前記カムと係合し該カムを回転させるためのギヤを有し、
前記ギヤの第一歯と噛合する第二歯が前記カムの前記外周面に設けられていることを特徴とするカム装置。
【0011】
かかる場合には、駆動力伝達のための伝達剛性が高いカム装置が実現される。
【0012】
また、前記第二部材は、前記ギヤを駆動して前記カムを回転させるためのモーターを有し、
前記カムのカム中心軸の軸方向と前記モーターのモーター中心軸の軸方向は、前記列方向に沿っており、
前記モーター中心軸の前記カムフォロアからの最短距離は、前記カム中心軸の前記カムフォロアからの最短距離よりも大きいこととしてもよい。
かかる場合には、モーターを選択する際の制約が少なくなる。
【0013】
また、前記第一部材は、前記列方向に配置された複数のカムフォロアからなるカムフォロア列を二つ備え、
二つの前記カムフォロア列は、前記第二部材の前記相対移動を案内することとしてもよい。
かかる場合には、効率的な構成を有するカム装置が実現される。
【0014】
また、前記第一部材は、前記列方向に配置された複数のカムフォロアからなるカムフォロア列を備え、
前記第一部材は、複数のセグメントに分割可能に構成されており、
前記複数のセグメントの各々には、前記カムフォロア列に属するサブカムフォロア列が備えられていることとしてもよい。
かかる場合には、フレキシブルな第一部材を提供することが可能となる。
【0015】
===カム装置10の構成について===
ここでは、カム装置10の構成について、
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
図1は、カム装置10の上面図である。
図2は、カム装置10の側面図である。
図3は、
図2のA−A断面図である。
図4は、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35の噛合状態等を示した断面図である。
【0016】
カム装置10は、第一部材の一例としての基台20と、第二部材の一例としての移動体30(本実施の形態においては、リニアローラースクリュー。なお、移動体30が、リニアローラースクリューの他にガイド機能を有する部材を備える形態について、後に説明する)と、を備えており、第一部材である基台20に対して第二部材である移動体30が相対移動する(本実施の形態においては、移動体30が絶対移動する)ことができるように構成されている。
【0017】
基台20は、床面に固設され、上面が水平となっている台である。この基台20は、カムフォロア22を備えており、当該カムフォロア22を保持する役割を果たす。
【0018】
カムフォロア22は、後述する円筒カム32と協働して、移動体30を基台20に対して移動させるためのものである。
【0019】
このカムフォロア22は、転動のための回転軸(以下、転動軸と言う)としての略円柱状の軸体と、ニードルベアリングを介して当該軸体の一端側を覆う円筒状の外輪23と、を備えた周知構成のものである。
【0020】
また、前記軸体の他端側には雄ネジが形成されている。そして、この雄ネジが基台20の上面にねじ込み締結されており、このことによってカムフォロア22は、
図3に示すように、基台20の上面に立設固定されている。また、当該固定状態において、外輪23は転動軸回りに回転自在となっている。
【0021】
このようなカムフォロア22は、複数設けられており、複数のカムフォロア22は、
図1に示すように、列方向に配列されている。すなわち、複数のカムフォロア22は、互いの転動軸を平行に揃えつつ一直線上に等間隔に配列されており、一直線上に配列された複数のカムフォロア22は、一つのカムフォロア列25を形成している。
【0022】
また、本実施の形態においては、
図1及び
図2に示すように、列方向に配置された複数のカムフォロア22からなるこのようなカムフォロア列25が二つ(二列)備えられている(二つのカムフォロア列25を、それぞれ、第一カムフォロア列25a、第二カムフォロア列と呼ぶ)。つまり、本実施の形態においては、カムフォロア22の構成が所謂複列配置となっており、したがって、移動体30は所謂複列移動体(複列リニアローラースクリュー)となっている。
【0023】
具体的に説明すると、
図2に示すように、基台20の上面には、二つの側部(第一側部26a及び第二側部26b)と底部26cとを備える溝26が形成されており、当該二つの側部(第一側部26a及び第二側部26b)の各々に、第一カムフォロア列25a(に属するカムフォロア22)と、第二カムフォロア列25b(に属するカムフォロア22)とがそれぞれ立設固定されている。したがって、
図2から明らかなように、第一カムフォロア列25aに属するカムフォロア22の転動軸方向と第二カムフォロア列25bに属するカムフォロア22の転動軸方向とが互いに交差した状態で、第一カムフォロア列25a及び第二カムフォロア列25bとが溝26に設けられている。
【0024】
移動体30は、カムの一例としての円筒カム32と、ギヤの一例としてのピニオンギヤ42と、モーターの一例としてのサーボモーター52と、これらの部材を収容するためのハウジング62と、を有している。
【0025】
円筒カム32は、前述したカムフォロア22と協働して、移動体30を基台20に対して移動させるためのものである。
【0026】
この円筒カム32は、
図1に示すように、回転可能な円柱体であり、当該円筒カム32の回転軸方向(中心軸方向)における両端部32aが、
図3に示すように、ボールベアリングやテーパーローラベアリング等の軸受け部材38を介してハウジング62に回転自在に軸支されている。また、円筒カム32は、カムフォロア22が係合する係合溝34を外周面33に備えている。
【0027】
この係合溝34は、
図1に示すように、螺旋状溝であり、円筒カム32の回転軸方向(中心軸方向)における円筒カム32の全長に亘って連続形成されている。そして、当該回転軸方向(中心軸方向)における係合溝34の一端はカムフォロア22を係合溝34へ導くための入口としての機能を、他端はカムフォロア22を係合溝34から出すための出口としての機能を、それぞれ有している。
【0028】
そして、円筒カム32が回転して係合溝34に複数のカムフォロア22を順次係合させることにより、移動体30が前記列方向に基台20に対して相対直進移動するようになっている(したがって、移動方向は前記列方向に沿っている)。すなわち、円筒カム32が回転すると、カムフォロア22は順次前記入口から係合溝34へ入って回転軸方向(中心軸方向)に送られ、その後出口へと移動する。このことにより、カムフォロア22(が備えられている基台20)と円筒カム32(が備えられている移動体30)とが相対直進移動することとなる。但し、本実施の形態においては、基台20は床面に固設されているため、基台20の方は移動せず、移動体30のみが直進移動することとなる。
【0029】
なお、係合溝34は、
図1に示すように、互いに対向する一対の内側面(第一内側面34a及び第二内側面34b) と、これらの内側面を繋ぐ底面34cとを備えている。そして、カムフォロア22が円筒カム32の回転により係合溝34内で回転軸方向(中心軸方向)に送られる際には、第一内側面34a、第二内側面34bが転動面として機能して、すなわち、第一内側面34a及び第二内側面34bの一方にカムフォロア22の前記外輪23が当接して、カムフォロア22が転動するようになっている。
【0030】
さらに、
図1及び
図4に示すように、円筒カム32の外周面33には(より具体的には、外周面33のうちの係合溝34が備えられていない箇所には)、後述するピニオンギヤ42の歯(第一歯に相当。説明の便宜上、以下では、ピニオンギヤ歯44と呼ぶ)と噛合する歯(第二歯に相当。説明の便宜上、以下では、円筒カム歯35と呼ぶ)が設けられている。なお、本実施の形態においては、外周面33のうちの係合溝34が備えられていない箇所全てに円筒カム歯35が設けられているわけではない。すなわち、外周面33には、係合溝34が備えられている箇所と、円筒カム歯35が備えられている箇所と、係合溝34及び円筒カム歯35の両方とも備えられていない箇所(便宜上、円筒カム非加工箇所36と呼ぶ)とがある(
図1参照)。
【0031】
また、移動体30の上述した直進移動を実現すべく、円筒カム32は、
図1及び
図2に示すように、その中心軸方向(カム中心軸の軸方向に相当)が前記列方向に沿うように、カムフォロア22上に位置している。
【0032】
また、円筒カム32における係合溝34の螺旋形状は、移動体30の移動パターンに応じて適宜変更可能である。例えば、円筒カム32を等速回転することによって移動体30を等速直進移動させる場合には、前記係合溝34の螺旋形状を、回転軸方向(中心軸方向)における溝位置が円筒カム32の回転量に正比例して変位する等変位曲線にすればよい。また、移動体30を間欠移動させる場合には、すなわち円筒カム32を等速回転することによって、移動体30の直進移動および停止を繰り返すようにする場合には、前記係合溝34の所定位置に、回転しても回転軸方向(中心軸方向)に溝位置が変位しない形状の溝を形成すればよい。
【0033】
ピニオンギヤ42は、円筒カム32と係合して円筒カム32を回転させるものである。
【0034】
このピニオンギヤ42は、その外周面にピニオンギヤ歯44を有している。そして、ピニオンギヤ42は、
図1及び
図4に示すように、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35が噛合した状態で、当該ピニオンギヤ42の回転軸方向(中心軸方向)が円筒カム32の回転軸方向(中心軸方向)に沿うように、設置されている。
【0035】
また、本実施の形態においては、
図4に示すように、ピニオンギヤ42は、移動体30のサイズを小さくするために、円筒カム32の真上ではなく、当該真上から幅方向と下方向に少しずれた位置に設けられている(換言すれば、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35が噛合する噛合位置は、円筒カム32の真上ではなく、当該真上から幅方向と下方向に少しずれた位置に設けられている)。
【0036】
また、
図1及び
図4に示すように、ピニオンギヤ42には、その同軸上に、ピニオンギヤ42と一体となって回転しサーボモーター52の駆動力をピニオンギヤ42に伝達する第一変速ギヤ46が連結されている。第一変速ギヤ46は、その歯が後述する第二変速ギヤ54の歯と噛合することにより、第二変速ギヤ54からサーボモーター52の駆動力を受けてピニオンギヤ42に当該駆動力を伝える。
【0037】
なお、
図1に示すように、加工の利便性等の観点から、ピニオンギヤ42の全面にピニオンギヤ歯44が設けられているのではなく、回転軸方向(中心軸方向)においてピニオンギヤ42の第一変速ギヤ46とは反対側の端部には、ピニオンギヤ歯44が設けられていない箇所(便宜上、ピニオンギヤ非加工箇所45と呼ぶ)がある。そのため、前述したとおり、円筒カム32の外周面33には、前記円筒カム非加工箇所36が存在することとなる。
【0038】
サーボモーター52は、ピニオンギヤ42を駆動して、円筒カム32を回転させるためのものである。このサーボモーター52には、
図3に示すように、出力軸56が連結されており、また、当該出力軸56には、
図1及び
図4に示すように、その同軸上に、出力軸56と一体となって回転しサーボモーター52の駆動力をピニオンギヤ42に伝達する第二変速ギヤ54が連結されている。これらの部材(サーボモーター52、出力軸56、第二変速ギヤ54)は、モーター中心軸(
図3において、符号A1で示す)の軸方向(これは、出力軸56の軸方向でもある)が前記列方向に沿うように、設けられている。
【0039】
第二変速ギヤ54は、前述したとおり、その歯が第一変速ギヤ46の歯と噛合することにより、第一変速ギヤ46と係合している。そのため、第二変速ギヤ54は、サーボモーター52の駆動力を第一変速ギヤ46に伝えるようになっている。
【0040】
なお、理由については後述するが、本実施の形態においては、
図3から明らかなように、モーター中心軸(
図3において、符号A1で示す)のカムフォロア22からの最短距離は、カム中心軸(
図3において、符号A2で示す)のカムフォロア22からの最短距離よりも大きくなっている。
【0041】
次に、このように構成されたカム装置10の動作について説明する。
【0042】
サーボモーター52の回転により、出力軸56及び第二変速ギヤ54が駆動されると、出力軸56及び第二変速ギヤ54が回転する。第二変速ギヤ54が回転するとこれと係合している第一変速ギヤ46が回転し、これに接続されているピニオンギヤ42も回転する。そして、ピニオンギヤ42が回転するとこれと係合している円筒カム32が回転する。そして、円筒カム32が回転すると、係合溝34に複数のカムフォロア22が順次係合することにより、移動体30が前記列方向に基台20に対して直進移動する。
【0043】
このように、サーボモーター52の駆動力が、出力軸56、第二変速ギヤ54、第一変速ギヤ46、ピニオンギヤ42を経由して、円筒カム32に伝達され、駆動力を受けた円筒カム32が回転することにより、移動体30が直進移動することとなる。
【0044】
なお、第二変速ギヤ54から第一変速ギヤ46へ駆動力が伝達される際と、ピニオンギヤ42から円筒カム32へ駆動力が伝達される際には、減速が実行される。
【0045】
===本実施の形態に係るカム装置10の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るカム装置10は、列方向に配列された複数のカムフォロア22を備える基台20と、カムフォロア22が係合する係合溝34を外周面33に有する回転可能な円筒カム32を備える移動体30であって、円筒カム32が回転して係合溝34に複数のカムフォロア22を順次係合させることにより、前記列方向に基台20に対して相対移動する移動体30と、を有し、移動体30は、円筒カム32と係合し該円筒カム32を回転させるためのピニオンギヤ42を有し、ピニオンギヤ42のピニオンギヤ歯44と噛合する円筒カム歯35が円筒カム32の外周面33に設けられている。このことにより、伝達剛性が高いカム装置10を実現することが可能となる。
【0046】
上記につき、本実施の形態(本件例とも呼ぶ)に係るカム装置10と従来例(第一比較例とする)に係るカム装置10とを比較しながら、
図5を用いて説明する。
図5は、
図3に対応する図であり、第一比較例に係るカム装置10の断面図である。
【0047】
図5に示すように、第一比較例に係るカム装置10には、本実施の形態に係るカム装置10と同様、列方向に配列された複数のカムフォロア22を備える基台20と、カムフォロア22が係合する係合溝34を外周面33に有する回転可能な円筒カム32を備える移動体30であって、円筒カム32が回転して係合溝34に複数のカムフォロア22を順次係合させることにより、前記列方向に基台20に対して相対移動する移動体30と、が備えられている。
【0048】
しかしながら、第一比較例に係るカム装置10においては、本実施の形態に係るカム装置10とは異なり、円筒カム32の外周面33には、円筒カム歯が設けられておらず、したがって、本件例において存在したピニオンギヤも備えられていない。
【0049】
すなわち、第一比較例において、円筒カム32には、
図5に示すように、その同軸上に、円筒カム32と一体となって回転する第一変速ギヤ146が連結されており、当該第一変速ギヤ146は、その歯が前述した第二変速ギヤ54の歯と噛合することにより、第二変速ギヤ54と係合している。したがって、第一比較例においては、円筒カム32が、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35の噛合により、ピニオンギヤ42からサーボモーター52の駆動力を受けるのではなく、その代わりに、円筒カム32の同軸上に設けられた第一変速ギヤ146が、その歯と第二変速ギヤ54の歯の噛合により、第二変速ギヤ54からサーボモーター52の駆動力を受けることとなる。
【0050】
すなわち、本件例と第一比較例とを比較すると、円筒カム32が駆動力を受ける位置に相違点がある。つまり、本件例においては、円筒カム32の外周面33(換言すれば、円筒カム歯35)が当該駆動力を受けるのに対し、第一比較例においては、円筒カム32の同軸上に設けられた第一変速ギヤ146の外周面が当該駆動力を受けることとなる。
【0051】
そして、かかる相違点に起因して、本件例は、第一比較例と比較して優位性を備えることとなる。この優位性について説明するために、先ず、第一変速ギヤ146と円筒カム32の径(中心軸から外周面までの距離)に着目する。第一変速ギヤ146の径(
図5において、r1で示す)は、カムフォロア22との物理的干渉が生じないように、十分小さな値とする必要がある。仮に、第一変速ギヤ146の径を円筒カム32の径(
図5において、r2で示す)と同じとするならば、第一変速ギヤ146はカムフォロア22と物理的に干渉してしまう。そのため、第一変速ギヤ146の径は円筒カム32の径よりも必ず小さくする必要がある。
【0052】
そして、第一変速ギヤ146の外周面が前記駆動力を受ける第一比較例においては、支点となる中心軸から力を受ける作用点となる外周面までの距離が小さいため、円筒カム32を回転させるために大きな力が必要となる。そのため、駆動力伝達のための伝達剛性が低くなるという問題が生じ得る。
【0053】
これに対し、本件例においては、円筒カム32の外周面33に円筒カム歯35が設けられ、当該円筒カム歯35と噛合するピニオンギヤ歯44を有するピニオンギヤ42が導入されることにより、円筒カム32の外周面33(換言すれば、円筒カム歯35)が前記駆動力を受けるような形態とした。そのため、支点となる中心軸から力を受ける作用点となる外周面までの距離が、比較例と比べてより大きくなり、円筒カム32を回転させるために小さな力で済むようになる。そのため、本件例においては、駆動力伝達のための伝達剛性が強くなるという優位性が生ずることとなる。
【0054】
また、本実施の形態に係るカム装置10においては、移動体30は、ピニオンギヤ42を駆動して円筒カム32を回転させるためのサーボモーター52を有し、円筒カム32のカム中心軸の軸方向とサーボモーター52のモーター中心軸の軸方向は、前記列方向に沿っており、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離は、カム中心軸のカムフォロア22からの最短距離よりも大きくなっている。そのため、物理的に大きいモーターを用いることができ、モーターを選択する際の制約が少なくなる。
【0055】
上記につき、本実施の形態(本件例)に係るカム装置10と従来例(第二比較例とする)に係るカム装置10とを比較しながら、
図6を用いて説明する。
図6は、
図3に対応する図であり、第二比較例に係るカム装置10の断面図である。
【0056】
図6に示すように、第二比較例に係るカム装置10においては、本実施の形態に係るカム装置10と同様、移動体30は、円筒カム32を回転させるためのサーボモーター52を有し、円筒カム32のカム中心軸の軸方向とサーボモーター52のモーター中心軸の軸方向は、前記列方向に沿っている。
【0057】
しかしながら、第二比較例に係るカム装置10においては、本実施の形態に係るカム装置10とは異なり、本件例において存在したピニオンギヤは備えられておらず、また、モーター中心軸(
図6において、符号A1で示す)のカムフォロア22からの最短距離とカム中心軸(
図6において、符号A2で示す)のカムフォロア22からの最短距離が等しくなっている。
【0058】
すなわち、
図6に示すように、第二比較例に係る円筒カム32は、ピニオンギヤ、第一変速ギヤ、第二変速ギヤを介して、サーボモーター52に接続されているのではなく、その同軸上でサーボモーター52に直結されている。したがって、円筒カム32のカム中心軸とサーボモーター52のモーター中心軸は一致している。そのため、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離とカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離が等しくなっている。
【0059】
すなわち、本件例と第二比較例とを比較すると、本件例においては、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離は、カム中心軸のカムフォロア22からの最短距離よりも大きいのに対し、第一比較例においては、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離とカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離が等しいこととなる。
【0060】
そして、かかる相違点に起因して、本件例は、第二比較例と比較して優位性を備えることとなる。すなわち、第二比較例においては、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離とカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離が等しいため、サーボモーター52がカムフォロア22と物理的に干渉しないようにすることを考慮すると、サーボモーター52の径(
図6において、r1で示す)は、カム中心軸のカムフォロア22からの最短距離(
図6において、r2で示す)よりも小さくする必要がある。そのため、物理的に大きいモーターを用いることができず、モーターを選択する際の制約が大きくなる。
【0061】
これに対し、本件例においては、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離がカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離よりも大きいため、サーボモーター52の径をカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離よりも小さくする必要がなくなる。そのため、第二比較例と比べて、物理的に大きいモーターを用いることができ、モーターを選択する際の制約が少なくなる。
【0062】
以上のように、本件例においては、
図1に示したように、円筒カム32の外周面33に円筒カム歯35が設けられ、かつ、当該円筒カム歯35と噛合するピニオンギヤ歯44を有するピニオンギヤ42が導入され、さらにこのことにより、モーター中心軸のカムフォロア22からの最短距離をカム中心軸のカムフォロア22からの最短距離よりも大きくすることも可能となる。そのため、本件例に係るカム装置10は、第一比較例が抱える伝達剛性に係る問題と第二比較例が抱えるモーター選択の際の制約に係る問題とを一挙に解決できるものとなっている。
【0063】
===カム装置10の他の構成について===
次に、上記実施形態(第一実施形態とする)とは異なるカム装置10の他の実施形態(第二実施形態とする)について、
図7乃至
図10を用いて説明する。
図7は、第二実施形態に係るカム装置10の上面図である。
図8は、
図7のA−A断面図である。
図9は、
図8のB−B断面図である。
図10は、
図8の円筒カム32を拡大した拡大図である。なお、これらの図においては、第一実施形態と同じ構成については同じ符号を付して示し、その同じ構成部分の説明は省略する。
【0064】
第二実施形態の第一実施形態との違いは、主に、カムフォロア22の構成に係る点(第一相違点)と、円筒カム歯35及びピニオンギヤ歯44に係る点(第二相違点)と、ピニオンギヤ42とサーボモーター52の連結構成に係る点(第三相違点)と、ピニオンギヤの配置に係る点(第四相違点)の4点である。
【0065】
先ず、第一相違点について説明する。第一実施形態においては、
図1及び
図2に示したように、列方向に配置された複数のカムフォロア22からなるカムフォロア列25が二つ(二列)備えられていた。つまり、第一実施形態においては、カムフォロア22の構成が所謂複列配置となっており、したがって、移動体30は所謂複列移動体(複列リニアローラースクリュー)となっていた。
【0066】
これに対し、第二実施形態においては、
図7及び
図10に示すように、カムフォロア列25が一つ(一列)のみ備えられている。つまり、第二実施形態においては、カムフォロア22の構成が所謂単列配置となっており、したがって、移動体30は所謂単列移動体(単列リニアローラースクリュー)となっている。
【0067】
つまり、
図9及び
図10に示すように、基台20の上面には、第一実施形態に係る基台が備えていたような溝は形成されておらず、カムフォロア22は、当該カムフォロア22の転動軸方向が上下方向に沿うように、当該上面に立設固定されている。
【0068】
次に、第二相違点について説明する。第一実施形態においては、
図1に示したように、ピニオンギヤ42の全面にピニオンギヤ歯44が設けられているのではなく、回転軸方向(中心軸方向)においてピニオンギヤ42の第一変速ギヤ46とは反対側の端部には、ピニオンギヤ歯44が設けられていないピニオンギヤ非加工箇所45があった。そして、これに対応して、円筒カム32の外周面33には、係合溝34及び円筒カム歯35の両方とも備えられていない円筒カム非加工箇所36が存在していた。
【0069】
これに対し、第二実施形態においては、
図7に示すように、ピニオンギヤ42の全面にピニオンギヤ歯44が設けられており(したがって、第一実施形態に係るピニオンギヤが備えていたようなピニオンギヤ非加工箇所は存在しない)、これに対応して、円筒カム32の外周面33のうちの係合溝34が備えられていない箇所全てに円筒カム歯35が設けられている(したがって、第一実施形態に係る円筒カムが備えていたような円筒カム非加工箇所は存在しない)。
【0070】
次に、第三相違点について説明する。第一実施形態においては、
図1に示したように、ピニオンギヤ42には、その同軸上に第一変速ギヤ46が連結されており、サーボモーター52(具体的には、その出力軸56)には、その同軸上に第二変速ギヤ54が連結されていた。そして、サーボモーター52からピニオンギヤ42への駆動力の伝達は、第一変速ギヤ46と第二変速ギヤ54を介して行われていた。
【0071】
これに対し、第二実施形態においては、
図7及び
図8に示すように、第一実施形態に係るカム装置が備えていたような第一変速ギヤ及び第二変速ギヤは存在せず、ピニオンギヤ42とサーボモーター52は出力軸56を介して同軸上に備えられている(すなわち、ピニオンギヤ42の中心軸とサーボモーター52の中心軸とは一致している)。すなわち、サーボモーター52には、出力軸56が連結されており、また、当該出力軸56には、その同軸上に、ピニオンギヤ42が連結されている。これらの部材(サーボモーター52、出力軸56、ピニオンギヤ42)は、中心軸の軸方向が前記列方向に沿うように、設けられている。
【0072】
次に、第四相違点について説明する。第一実施形態においては、
図2に示したように、ピニオンギヤ42は、円筒カム32の真上ではなく、当該真上から幅方向と下方向に少しずれた位置に設けられていた(換言すれば、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35が噛合する噛合位置は、円筒カム32の真上ではなく、当該真上から幅方向と下方向に少しずれた位置に設けられていた)。
【0073】
これに対し、第二実施形態においては、
図8及び
図9に示すように、ピニオンギヤ42は、円筒カム32の真上に設けられている(換言すれば、ピニオンギヤ歯44と円筒カム歯35が噛合する噛合位置は、円筒カム32の真上に設けられている)。これは、
図8から理解されるように、第二実施形態においてはピニオンギヤ42とサーボモーター52が同軸上に備えられていることを考慮して、ピニオンギヤ42をカムフォロア22から最も離した位置(つまり、ピニオンギヤ42の中心軸のカムフォロア22からの最短距離が最も大きくなる位置)に位置させることにより、物理的に大きいモーターを導入できるようにするためである。
【0074】
そして、このような第二実施形態においても、
図7乃至
図10に示すように、移動体30は、円筒カム32と係合し該円筒カム32を回転させるためのピニオンギヤ42を有し、ピニオンギヤ42のピニオンギヤ歯44と噛合する円筒カム歯35が円筒カム32の外周面33に設けられているため、伝達剛性が高いカム装置10を実現することが可能となるという前述した効果が奏される。
【0075】
また、第二実施形態においても、モーター中心軸(
図8において、符号A1で示す)のカムフォロア22からの最短距離は、カム中心軸(
図8において、符号A2で示す)のカムフォロア22からの最短距離よりも大きくなっている。そのため、物理的に大きいモーターを用いることができ、モーターを選択する際の制約が少なくなるという前述した効果が奏される。
【0076】
===移動体30の移動をガイドするためのガイド部材について===
上記において、移動体30が基台20に対して移動するカム装置10について説明したが、移動体30をスムーズに移動させるためには、当該移動をガイドするためのガイド部材を設ける必要がある。
【0077】
以下では、先ず、従来例に係るガイド部材について
図11及び
図12を用いて説明し、その後、本実施の形態(本件例)に係るガイド部材について
図13乃至
図15を用いて説明する。これに引き続いて、本件例の従来例に対する優位性について述べる。
【0078】
図11は、従来例に係るガイド部材を説明するための第一説明模式図である。
図12は、従来例に係るガイド部材を説明するための第二説明模式図である。
図13は、本件例に係るガイド部材を説明するための説明模式図である。
図14は、
図13の部分拡大図である。
図15は、
図14のカム装置10を白矢印の方向から見た図である。
【0079】
先ず、
図11に着目する。
図11に示すように、移動体30は、リニアローラースクリュー202の他に、リニアローラースクリュー202を収容するための直方体形状の収容部212を備えている。そして、当該収容部212の下面、かつ、当該収容部212の幅方向における両端部には、前記列方向に沿った溝部212aが設けられている。
【0080】
一方、基台20の当該溝部212aに対応する位置には、移動体30の移動をガイドするためのガイド部材としてのガイドレール220が設けられている。すなわち、このガイドレール220は、前記列方向に沿っており、基台20の幅方向における両端部に配置されている。ガイドレール220は、基台20の上面に設けられており、当該上面から上方へ突出した突出部を形成している。
【0081】
そして、移動体30が基台20に対して移動する際には、溝部212aがガイドレール220に嵌った状態で移動体30が移動することにより、ガイドレール220により移動体30がガイド(案内)されることとなる。
【0082】
図12には、
図11に示した基台20と移動体30を有するカム装置10を複数組み合わせて、工具222を前後、左右、上下方向に動かせるようにした工作機械が表されている。すなわち、符号B1で示した部材が基台20に、符号B2で示した部材が移動体30に、それぞれ対応するカム装置10で工具222の前後方向の動きを実現し、符号B2で示した部材が基台20に、符号B3で示した部材が移動体30に、それぞれ対応するカム装置10で工具222の左右方向の動きを実現し、符号B3で示した部材が基台20に、符号B4で示した部材が移動体30に、それぞれ対応するカム装置10で工具222の上下方向の動きを実現している。そして、
図12から明らかなように、これらの三つのカム装置10のいずれにも、前述した溝部212a及びガイドレール220が備えられており、ガイドレール220により移動体30がガイド(案内)されることとなる。
【0083】
なお、
図11と
図12には、前述した第二実施形態に対応するカム装置10が表されているが、カム装置10が第一実施形態に対応するものであっても、上述したガイド部材を適用可能である。
【0084】
次に、本件例に係るガイド部材について説明する。
図13に示すように、移動体30は、
図11の例と同様、リニアローラースクリューの他に、リニアローラースクリューを収容するための直方体形状の収容部312を備えている。なお、
図13においては、リニアローラースクリューの図示を省略しているが、当該リニアローラースクリューは、収容部312の切り欠き部分312aに収容され、かつ、固定されている。
【0085】
また、当該収容部312の長手方向における両端には、後述するガイド溝316に嵌る嵌合凸部315(
図14及び
図15参照)を備える部材(当該部材を、便宜上、被ガイド部314と呼ぶ)が固定されている。嵌合凸部315は、
図14及び
図15に示すように、被ガイド部314の下面、かつ、当該被ガイド部314の幅方向における中央部に設けられ、下方に向かって突出している。
【0086】
一方、基台20の構成は、第一実施形態に係るカム装置10の既述の構成と同じものとなっている。すなわち、
図14及び
図15に示すように、基台20には、カムフォロア列25が二つ(二列)備えられており、カムフォロア22の構成が複列配置となっている。そして、基台20の上面には、二つの側部(第一側部26a及び第二側部26b)と底部26cとを備える溝26が形成されており、当該二つの側部(第一側部26a及び第二側部26b)の各々に、第一カムフォロア列25a(に属するカムフォロア22)と、第二カムフォロア列25b(に属するカムフォロア22)とがそれぞれ立設固定されている。
【0087】
そして、前述した被ガイド部314の嵌合凸部315は、
図15に示すように、第一カムフォロア列25a(に属するカムフォロア22)と第二カムフォロア列25b(に属するカムフォロア22)との間の空間に嵌っている。すなわち、溝26のうちの第一カムフォロア列25a(に属するカムフォロア22)と第二カムフォロア列25b(に属するカムフォロア22)との間に位置する部分は、移動体30の移動(被ガイド部314)をガイドするためのガイド部材としてのガイド溝316としての機能を発揮する。
【0088】
このように、基台20の嵌合凸部315に対応する位置には、ガイド溝316が設けられている。そして、このガイド溝316は、前記列方向に沿っており、基台20の幅方向における中央部に配置されている。
【0089】
そして、移動体30が基台20に対して移動する際には、嵌合凸部315がガイド溝316に嵌った状態で移動することにより、移動体30がガイド溝316によりガイド(案内)されることとなる。換言すれば、当該移動体30の移動の際には、嵌合凸部315が二つのカムフォロア列25に挟持されることにより、移動体30が二つのカムフォロア列25によりガイド(案内)されることとなる。
【0090】
このように、本件例に係るガイド部材においては、二つのカムフォロア列25が、移動体30の相対移動を案内する。そのため本件例においては、当該二つのカムフォロア列25が、円筒カム32との協働により移動体30を移動させる機能と、移動体30をガイドする機能の双方を有することになる(移動体30を移動させるための二つのカムフォロア列25が、ガイド機能も兼ねる)。そのため、効率的な構成を有するカム装置10を実現することが可能となる。
【0091】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係るカム装置等を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0092】
また、上記においては、リニアローラースクリューが備えられている第二部材の方が移動し、他方の第一部材は移動しないこととしたが、これに限定されるものではなく、例えば、リニアローラースクリューが備えられている第二部材は移動せず、他方の第一部材の方が移動する構成であってもよい。
【0093】
また、基台20が複数のセグメント402に分割可能に構成されていてもよい。かかる構成について、
図16及び
図17を用いて説明する。
図16及び
図17は、基台20が複数のセグメント402に分割可能に構成されている様子を示した図である。
図16は、カムフォロア22の構成が複列配置となっているケースに、
図17は、カムフォロア22の構成が単列配置となっているケースに、それぞれ対応している。
【0094】
図16及び
図17に示すように、当該実施形態においては、基台20がN個のセグメント402に分割可能に構成されている。そして、各々のセグメント402には、カムフォロア列25に属するサブカムフォロア列404が備えられている(したがって、N個のサブカムフォロア列404が存在し、N個のサブカムフォロア列404が前記列方向に並ぶことによりカムフォロア列25が形成されていることとなる)。
【0095】
つまり、各セグメント402が、サブカムフォロア列404の列方向がカムフォロア列25の列方向(換言すれば、移動体の移動方向)に沿うように並べられることにより(繋げられることにより)、基台20が形成されるようになっている。
【0096】
なお、本実施の形態においては、セグメント製造の簡素化を考慮して、どのセグメント402にも、10個の(同じ数の)カムフォロア22からなるサブカムフォロア列404が備えられていることとした。しかしながら、これに限定されるものではなく、複数のセグメント402の中に、互いに異なる数のカムフォロア22が備えられているセグメント402があってもよい。
【0097】
そして、基台20を以上のように分割可能な構成とすることにより、以下の優位性が生ずる。すなわち、基台20が複数のセグメント402に分割できない場合においては、発注者の要望に応じた長さの基台20をその都度製造する必要がある。また当該要望が急に変更になったときに(すなわち、設計変更が急に生じたときに)、製造中の基台20を諦めて別の長さの基台20を改めて製造しなければならない等急な対応が困難である。
【0098】
これに対し、当該実施形態においては、発注者の要望に関わらず、セグメント402を製造すればよく、また、当該要望が急に変更になったときには(すなわち、設計変更が急に生じたときには)、並べる(繋げる)セグメント402の数を減らしたり増やしたりすることで即座に対応できる。つまり、本実施形態においては、フレキシブルな基台20を提供することが可能となる。