特許第5901063号(P5901063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901063
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】搬送物の位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   B65G1/14 B
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-77965(P2012-77965)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203548(P2013-203548A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸尚
【審査官】 中島 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−010205(JP,A)
【文献】 実開昭63−157013(JP,U)
【文献】 特開2002−145425(JP,A)
【文献】 特開平07−251907(JP,A)
【文献】 実開昭51−056773(JP,U)
【文献】 特開2011−219246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 − 1/133; 1/14 − 1/20
B65G 47/52 ; 47/56 − 47/62 ; 47/66
B65G 13/00 − 13/12 ; 39/00 − 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向で定義される三次元空間において搬送される搬送物の設置位置を決める位置決め装置であって、前記搬送物の一部と接触して回転する回転部材と、前記回転部材の回転を支える回転支持部と、前記回転支持部を軸支するフレームと、を備え、前記回転部材の半径は、前記X軸方向および前記Y軸方向の少なくとも一つにおける、前記搬送物の設置位置を決定し、前記X軸方向および前記Y軸方向は、三次元空間における平面方向を定義し、前記Z軸方向は、三次元空間における鉛直方向を定義し、前記搬送物は、前記Z軸方向において上昇および下降の少なくとも一方によって、前記設置位置に搬送される場合に、前記回転部材の外周は、前記搬送物のX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方の側面の少なくとも一部に接触し、前記回転支持部は設置位置に対して固定されており、前記搬送物の移動は前記設置位置に対して自由であり、前記回転部材は、前記搬送物の少なくとも一部と接触して回転することで搬送軌跡を変化させ、前記設置位置に対して固定されている回転支持部を基準に、前記搬送物の位置を前記設置位置に調整し、前記回転部材は、前記X軸方向に沿って設けられ、前記搬送物は、前記フレームによって、前記Y軸方向の位置が固定されると共 に、前記回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、前記X軸方向の位置が調整され、前記回転部材が接触する前記搬送物の一部は、搬送するために前記搬送物に取り付けられたアームの少なくとも一部を含み、前記フレームは受け口およびステージを備え、前記アームは円形であって、前記受け口は前記アームの外周にあわせた凹状の形状を有しており、前記アームは前記受け口に収まると共に、前記アームの前記X軸方向の端面と前記回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、前記搬送物の前記X軸方向の位置を調整し、前記受け口および前記アームによって前記搬送物の前記Y軸方向の位置を決定し、前記ステージによって前記搬送物の前記Z軸方向の位置を決定する、搬送物の位置決め装置。
【請求項2】
前記回転部材は、前記搬送物のX軸方向の両端のそれぞれに対応して設けられる、請求項記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記回転部材の半径は、可変である、請求項1又は記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記搬送物に接触する突出部を、その回転外周に有する、請求項1からのいずれか記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記搬送物に対してテーパー状を、その回転外周に有する、請求項1からのいずれか記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記回転支持部は、複数の前記回転部材を備え、複数の前記回転部材の少なくとも2以上が、前記搬送物に接触可能である、請求項1からのいずれか記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイストやスタッカクレーンなどを用いて搬送する搬送物の設置位置を決める位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の製品を製造する工場、製品を流通させる流通センター、製品の集積・配送を行う集積倉庫などにおいては、ホイストやスタッカクレーンなどの搬送装置を用いて様々な搬送物を搬送する。例えば、搬送装置は、製造の終わった製品を、パレットに積載するために搬送する。このとき、パレットに積載する際の製品の設置位置には、非常に高い精度が要求される。パレットに積載される製品の設置位置が相互にずれてしまうと、荷崩れを起こしたり、積載量が制限されたりするからである。
【0003】
ここで、搬送装置としてのホイストやスタッカクレーンは、搬送物に取り付けられたフレームを支えながら、搬送物を搬送する。例えば、搬送物の上面に水平方向にフレームが取り付けられ、このフレームの両端は、搬送物の側面に対して、それぞれ突出する。ホイストやスタッカクレーンは、アームをこのフレームの突出している部分にあてがって抱え、搬送物を所定位置に搬送する。
【0004】
ここで、多数の搬送物がパレットなどに積載される必要があるので、搬送部物に取り付けられるフレームの突出余地は非常に小さい。フレームの突出量が大きくなると、隣接する搬送物の距離を大きく取る必要があり、積載の効率低下をもたらすからである。この結果、フレームの突出部分を支えて搬送する際の位置決め精度は、非常に高いものが要求される。搬送物の種類や搬送現場の特性によっても位置決め精度は異なるが、場合によっては、1mm〜10mm程度の位置決め精度が要求されることがある。
【0005】
搬送装置は、搬送物を抱えた状態で、搬送物を上方から下方に下ろしながら位置決めを行なう。すなわち、平面方向をX軸およびY軸で表し、平面方向に対する鉛直方向をZ軸で表すX軸、Y軸、Z軸の三次元空間で、搬送物の搬送空間を定義する。この定義において、搬送装置は、搬送物を、Z軸方向の上方から下方に下ろしながら位置決めを行なう。搬送物の設置位置は、Z軸における座標、X軸における座標およびY軸における座標によって定められる。
【0006】
ここで、Z軸の座標は、搬送物の設置平面の設定によって決定される。このため搬送装置は、搬送物を、この設置平面にまで降ろすことで、Z軸の座標での位置決めを行なうことができる。一方、平面方向における位置決めは、平面を定義するX軸およびY軸の座標によって定まるが、X軸もしくはY軸のそれぞれについては、設置平面に設けられる枠や搬送装置で決定される搬送軌跡によって定まる。例えば、Y軸については、予め定まっている枠や搬送装置の搬送軌跡で、搬送物の設置位置の座標は決定される。このため、平面方向のY軸については、搬送装置が、設定に従って搬送物を設置することで、位置決めが行なわれる。
【0007】
これらのように、三次元空間での搬送物の搬送において、Z軸およびY軸についての位置決めは、搬送装置の搬送によって設定される。しかしながら、例えばX軸の位置決め(X軸の座標決定)は、搬送装置を補助する位置決め装置によって定められる必要がある。搬送装置は、搬送物を所定の設置位置に大まかに合わせた場所に移動させた後、Z軸方向における上方から下方へおろすことが主たる機能であるので、高い精度でのX軸の位置決めを搬送装置だけで行なうことが難しいからである。
【0008】
もちろん、積載する設置場所の特性、搬送装置の特性、搬送物の特性によっては、Y軸方向の枠が無かったり、搬送軌跡を高い精度で制御できなかったりすることもある。この場合には、X軸およびY軸の両方の位置決めを補助する位置決め装置が必要となる。
【0009】
このようなX軸やY軸における位置決めにおいては種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−208945号公報
【特許文献2】特開2001−97669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、ホイストクレーン等で運ばれるコンテナを、コンテナ用台車に取り付けられたガイド棒で案内してコンテナ用台車上に位置決めして積みおろすコンテナセッティング装置を開示する。特許文献1に開示されるコンテナセッティング装置は、コンテナ用台車を、レールで案内してコア取り出し装置の真下に移動させ、コンテナ用台車に取り付けられた位置決め棒を床に設けられた穴に嵌め込んで位置決めする。この結果、コンテナが所定位置に設置される。
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されるコンテナセッティング装置は、コンテナ用台車で床上を移動するコンテナの位置決めには適用できるが、スタッカクレーンのように搬送物を抱えて三次元空間上を移動させる(搬送物を持ち上げて、所定位置に移動させる)場合には適用ができない。また、コンテナ用台車の位置決めによってコンテナの位置決めがなされるので、コンテナ用台車を用いない搬送には適用が困難である。
【0013】
特許文献2は、ガイドフリッパを備えたコンテナ多段積載用スプレッダにより積載するコンテナを把持し、コンテナを他のコンテナの上に積載する際に、コンテナ減速制御手段によって、あるコンテナが他のコンテナの上に積載される直前のコンテナの下降速度を減速することで、位置決めを行なうコンテナ多段積用スプレッダを開示する。特許文献2に開示される技術は、多段に積載されるコンテナを設置する際に、コンテナの下降速度を減速して、位置決め精度を向上させることを目的としている。
【0014】
しかしながら、特許文献2に開示される技術では、コンテナの下降速度を減少させたとしても、コンテナを搬送するクレーンなどによって位置決め制御を行う必要がある。クレーン側が、この位置決め制御を主体的に行うには、設置位置の座標に対してミリ単位でクレーンそのものの動作や搬送軌跡が制御される必要がある。このような制御をクレーンそのものが有するには、クレーンの負担が大きくなると共に、クレーンのコストが高まってしまう問題もある。
【0015】
特許文献2のように、搬送物を搬送する搬送装置の主体的な制御を必要とする技術では、搬送装置への要求精度が高まって、搬送装置そのもののコスト、搬送装置を用いた搬送作業のコストが高くなる問題を生じさせる。場合によっては、このような高機能・高精度の搬送装置が入手できないこともあり、搬送物の効率的な搬送や積載が難しくなることもある。
【0016】
このため、クレーンなどの搬送装置の制御に負担を掛けずに、受動的で簡易な方法で搬送物の位置決めを行なう位置決め装置が求められている。一方で、受動的な方法での位置決め装置であっても、特許文献1に開示される技術のように、平面方向での移動だけでなく、三次元空間での移動を伴う搬送においても適用できる位置決め装置が求められている。
【0017】
本発明は、これらの課題に鑑み、簡易な構成で受動的な位置決めであって、三次元空間で搬送される搬送物の位置決めを行なえる位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明の位置決め装置は、相互に直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向で定義される三次元空間において搬送される搬送物の設置位置を決める位置決め装置であって、搬送物の一部と接触して回転する回転部材と、回転部材の回転を支える回転支持部と、回転支持部を軸支するフレームと、を備え、回転部材の半径は、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一つにおける、搬送物の設置位置を決定し、X軸方向およびY軸方向は、三次元空間における平面方向を定義し、Z軸方向は、三次元空間における鉛直方向を定義し、搬送物は、Z軸方向において上昇および下降の少なくとも一方によって、設置位置に搬送される場合に、回転部材の外周は、搬送物のX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方の側面の少なくとも一部に接触し、回転支持部は設置位置に対して固定されており、搬送物の移動は設置位置に対して自由であり、回転部材は、搬送物の少なくとも一部と接触して回転することで搬送軌跡を変化させ、設置位置に対して固定されている回転支持部を基準に、搬送物の位置を設置位置に調整し、回転部材は、X軸方向に沿って設けられ、搬送物は、フレームによって、Y軸方向の位置が固定されると共 に、回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、X軸方向の位置が調整され、回転部材が接触する搬送物の一部は、搬送するために搬送物に取り付けられたアームの少なくとも一部を含み、フレームは受け口およびステージを備え、アームは円形であって、受け口はアームの外周にあわせた凹状の形状を有しており、アームは受け口に収まると共に、アームのX軸方向の端面と回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、搬送物のX軸方向の位置を調整し、受け口およびアームによって搬送物のY軸方向の位置を決定し、ステージによって搬送物のZ軸方向の位置を決定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の位置決め装置は、搬送装置の主体的な制御ではなく、搬送物を受けての受動的な位置決めを行なうことができる。このため、位置決め装置の構造や設置は簡易となり、位置決め装置に係るコストが低減される。当然ながら、クレーンなどの搬送装置に係るコストも低減されるので、工場や流通センターなどにおける搬送物の搬送、移動、積載に関する作業コストが低減できる。
【0020】
また、固定されたガイド部材と異なり、本発明の位置決め装置は、回転部材を用いるので、耐久性に優れ劣化も少ない。劣化しないことで、位置決め精度も維持される。また、位置決め装置の交換時期も把握しやすいことで、搬送や積載作業でのエラーや不具合を生じさせないで済む。メンテナンスの負担も軽減できる。
【0021】
加えて、本発明の位置決め装置は、回転部材の直径や軸を可変とすることで、位置決めのバリエーションを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】参考例の位置決め装置の正面図である。
図2】参考例の位置決め装置の正面図である。
図3】ガイド部材102の劣化後の写真である。
図4】本発明の実施の形態1における搬送装置の全体正面図である。
図5】本発明の実施の形態1における位置決め装置の正面図である。
図6】本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。
図7】本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。
図8】本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。
図9】本発明の実施の形態1における位置決め装置をX軸方向から見た説明図である。
図10】本発明の実施の形態1における変形例1の場合の位置決め装置の説明図である。
図11】本発明の実施の形態1における変形例2に対応する位置決め装置の説明図である。
図12】本発明の実施の形態1における変形例3に対応する位置決め装置の説明図である。
図13】本発明の実施の形態2における回転部材の平面図である。
図14】本発明の実施の形態2における回転部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る位置決め装置は、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸で定義される三次元空間において搬送される搬送物の設置位置を決める位置決め装置であって、搬送物の一部と接触して回転する回転部材と、回転部材の回転を支える回転支持部と、回転支持部を軸支するフレームと、を備え、回転部材の半径は、X軸、Y軸およびZ軸の少なくとも一つにおける、搬送物の設置位置を決定する。
【0024】
この構成により、位置決め装置は、回転部材の回転によって、搬送物の搬送軌跡を変化させることができる。回転部材の回転による圧力の付与であるので、回転部材外周と搬送物の滑りが発生しにくいため搬送物への損耗や回転部材そのものの損耗が生じにくい。この結果、位置決め装置の耐久性が向上する。
【0025】
本発明の第2の発明に係る位置決め装置では、第1の発明に加えて、X軸およびY軸は、三次元空間における平面方向を定義し、Z軸は、三次元空間における鉛直方向を定義し、搬送物は、Z軸方向において上昇および下降の少なくとも一方によって、設置位置に搬送される場合に、回転部材の外周は、搬送物のX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方の側面の少なくとも一部に接触する。
【0026】
この構成により、回転部材は、搬送物が下降される間にX軸もしくはY軸方向の座標位置を調整できる。
【0027】
本発明の第3の発明に係る位置決め装置では、第2の発明に加えて、回転部材は、X軸方向に沿って設けられ、回転部材の外周は、搬送物のX軸方向の側面の少なくとも一部に接触して、搬送物のX軸方向の設置位置を調整する。
【0028】
この構成により、位置決め装置は、X軸の座標位置を調整できる。
【0029】
本発明の第4の発明に係る位置決め装置では、第2又は第3の発明に加えて、回転部材は、Y軸方向に沿って設けられ、回転部材の外周は、搬送物のY軸方向の側面の少なくとも一部に接触して、搬送物のY軸方向の設置位置を調整する。
【0030】
この構成により、位置決め装置は、Y軸の座標位置を調整できる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る位置決め装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、回転支持部は設置位置に対して固定されており、搬送物の移動は設置位置に対して自由であり、回転部材は、搬送物の少なくとも一部と接触して回転することで搬送軌跡を変化させ、設置位置に対して固定されている回転支持部を基準に、搬送物の位置を設置位置に調整する。
【0032】
この構成により、位置決め装置は、回転部材の回転によって、所定の軸における座標位置を調整できる。この結果、搬送物を滑らせずに位置変更でき、搬送物への損傷を生じさせにくい。
【0033】
本発明の第6の発明に係る位置決め装置では、第5の発明に加えて、回転部材は、X軸に沿って設けられ、搬送物は、フレームによって、Z軸の位置およびY軸の位置が固定されると共に、回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、X軸の位置が調整される。
【0034】
この構成により、位置決め装置は、X軸、Y軸、Z軸の全ての座標位置を調整でき、設置位置を決定できる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る位置決め装置では、第6の発明に加えて、回転部材は、搬送物のX軸方向の両端のそれぞれに対応して設けられる。
【0036】
この構成により、位置決め装置は、搬送物のX軸の両端のいずれからでも、その座標位置を調整できる。
【0037】
本発明の第8の発明に係る位置決め装置では、第5の発明に加えて、回転部材は、Y軸に沿って設けられ、搬送物は、フレームによって、Z軸の位置およびX軸の位置が固定されると共に、回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、Y軸の位置が調整される。
【0038】
この構成により、位置決め装置は、X軸、Y軸、Z軸の全ての座標位置を調整でき、設置位置を決定できる。
【0039】
本発明の第9の発明に係る位置決め装置では、第8の発明に加えて、回転部材は、搬送物のY軸方向の両端のそれぞれに対応して設けられる。
【0040】
この構成により、位置決め装置は、搬送物のY軸の両端のいずれからでも、その座標位置を調整できる。
【0041】
本発明の第10の発明に係る位置決め装置では、第5の発明に加えて、回転部材は、X軸およびY軸のそれぞれに沿って設けられ、搬送物は、フレームの少なくとも一部によって、Z軸の位置が固定されると共に、回転部材との接触による搬送軌跡の変化によって、X軸およびY軸のそれぞれの位置が調整される。
【0042】
この構成により、位置決め装置は、X軸およびY軸の座標位置を、同時に調整できる。
【0043】
本発明の第11の発明に係る位置決め装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、回転部材が接触する搬送物の一部は、搬送するために搬送物に取り付けられたアームの少なくとも一部を含む。
【0044】
この構成により、位置決め装置は、様々な搬送物の形態に対応できる。
【0045】
本発明の第12の発明に係る位置決め装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、回転部材の半径および回転支持部の位置の少なくとも一つは、可変である。
【0046】
この構成により、位置決め装置は、搬送物の大きさや設置位置の変化に、柔軟に対応できる。
【0047】
本発明の第13の発明に係る位置決め装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、回転部材は、搬送物に接触する突出部を、その回転外周に有する。
【0048】
この構成により、回転部材は、搬送物を確実に移動させることができる。
【0049】
本発明の第14の発明に係る位置決め装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、回転部材は、搬送物に対してテーパー状を、その回転外周に有する。
【0050】
この構成により、回転部材は、搬送物の搬送軌跡を、確実に変更できる。
【0051】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0052】
(参考例)
まず、受動的な位置決めを行なう位置決め装置の参考例を説明する。参考例は、従来技術として開示されているものではないが、本発明のメリットを明確にするために、説明される。
【0053】
図1図2は、参考例の位置決め装置の正面図である。図1は、参考例の位置決め装置を正面から見ており、鉛直方向であるZ軸に沿って、搬送物200が搬送されている状態を示している。また、図2は、図1の状態が進んだ状態を示しており、搬送物200が、ガイド部材102によって位置決めされている状態を示している。
【0054】
参考例の位置決め装置100は、フレーム101、ガイド部材102を備えている。フレーム101は、ガイド部材102を設けており、図示していないが、搬送物200が設置される枠を備えている。搬送物200は、クレーン(図示せず)によって運搬されて、フレーム101が設定する搬送位置に搬送物200を搬送する。このとき、クレーンが搬送物200を把持できるように、搬送物200にはアーム201が取り付けられている。アーム201は、搬送物200の両端のそれぞれから突出し、クレーンは、この両端から突出するアーム201を把持して、搬送物200を搬送する。
【0055】
また、ガイド部材102は、搬送物200のX軸方向の両端に設けられる。ガイド部材102は、Z軸の上方から下方に進むにつれて突出するように斜めになっている(図1図2の通り)。ガイド部材102は、その表面を、アーム201もしくは搬送物200の外周に接触させるので、アーム201や搬送物200の外周を損耗させないように、樹脂や木材で形成されていることが好ましい。
【0056】
クレーンは、アーム201を把持した状態で、Z軸方向に搬送物200を下降させる。図1は、この下降が開始された状態を示している。下降が進むと、図2に示されるように、アーム201がガイド部材102に接触する。このとき、ガイド部材102は、搬送物200を挟んで一対である。一対のガイド部材102同士の距離は、搬送物200の大きさや設定する位置決めに従って、定められる。通常は、アーム201もしくは搬送物200は、一対のガイド部材102の一方に接触する。図2では、アーム201の左側が、左側に設けられているガイド部材102に接触する。
【0057】
ガイド部材102は、上述の通り、下方に従って斜めに突出している。クレーンが搬送物200を下降させるに従って、アーム201は、ガイド部材102の斜め方向に沿って滑るように移動する。すなわち、搬送物200は、ガイド部材102の斜め角度に従って、搬送軌跡を形成する。クレーンが搬送物200を、設置面まで下降させると、搬送物200の位置決めが完了する。ガイド部材102は、設置面と自身の底部の位置との関係から、必要な位置へ搬送物200を導くように設定されているからである。
【0058】
すなわち、参考例の位置決め装置100は、斜めとなっているガイド部材102の表面上を搬送物200やアーム201を滑らせながら、ガイド部材102と床面との交差位置で定まる所定位置に、搬送物200を導く。このため、ガイド部材102には、繰り返し搬送物200やアーム201が接触あるいは衝突する上、その表面には圧力が掛かることになる。特に、搬送物200は、Z軸に沿ったベクトル上を搬送されてきているのに、ガイド部材102は、Z軸に交差する斜め方向に強制的に搬送軌跡を変更する。すなわち、搬送物200は、斜めとなっているガイド部材102に従って直線的に搬送軌跡を変更させられる。このことからも、ガイド部材102には、大きな負荷が掛かってしまう。この結果、ガイド部材102は、大きな劣化を生じさせる。
【0059】
図3は、ガイド部材102の劣化後の写真である。実際に用いられたガイド部材102の状態を示す。樹脂で形成されたガイド部材102は、その表面を凹ませたり、割れ目を生じさせたりしている。劣化部分102Aは、このような凹みや割れ目が生じたままで使用が継続されると、当然ながら搬送物200の搬送軌跡を狂わせてしまう。ガイド部材102の途中に数mm〜数10mmの凹みや割れ目が生じてしまうと、搬送物200の設置位置にも数mm〜数10mm(あるいはそれ以上の)偏差が生じてしまう。これでは、位置決め装置としての機能を発揮できない。
【0060】
また、搬送の作業者がガイド部材102の劣化を気付かないと、搬送物200の搬送位置エラーを生じさせてしまう問題もある。搬送位置エラーを生じさせないためには、頻繁にガイド部材102の劣化がチェックされなければならない。これは、搬送業務において余分な手間となる。
【0061】
以上のように、参考例の位置決め装置100は、ガイド部材102の劣化による搬送精度の劣化や搬送業務の手間が掛かる問題がある。
【0062】
(実施の形態1)
【0063】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0064】
(全体概要)
図4は、本発明の実施の形態1における搬送装置を持つ立体自動倉庫の全体上面図である。立体自動倉庫50は、搬送物200を収納する棚51、搬送物200を搬送するスタッカクレーン52(=搬送装置)、スタッカクレーン52が搬送する搬送路53,搬送物200の入出荷場60を備えている。棚51は、位置決め装置1などを備える。スタッカクレーン52は、入出荷場60から搬送物200を搬送して、所定の棚51に設置する。このとき、スタッカクレーン52は、棚51の設置領域56に、搬送物200を搬送する。この設置領域56に搬送される際に、搬送物200の設置位置が高い精度で設置されることが必要である。この設置領域56において、搬送物200のアーム201の両端位置を(図4では、搬送物200のX軸方向の両端)位置決め装置1によって決める。
【0065】
スタッカクレーン52は、搬送路53の外側にある入出荷場に置かれている搬送物200を把持する。このとき、スタッカクレーン52は、搬送物200を直接的に把持しても良い。あるいは、搬送物200にアーム201が取り付けられており(アーム201は、取り外しも可能)スタッカクレーン52は、このアーム201を把持しても良い。スタッカクレーン52は、把持した搬送物200を、棚51内の設置領域56に搬送する。スタッカクレーン52は、設置領域56の上方から床面に下降させることで、搬送物200を所定位置に設置する。すなわち、スタッカクレーン52は、Z軸に沿って搬送物200を移動させる。
【0066】
ここで、設置領域56においては、搬送物200の設置位置に対応させた位置決め装置1が設けられている。位置決め装置1は、搬送物200のX軸方向の両端に設けられているので、位置決め装置1は、搬送物200のX軸方向の端部もしくはアーム201に接触する。この接触によって、位置決め装置1は、搬送物200のX軸方向の設置位置を調整する。
【0067】
(位置決め装置の全体概要)
図5は、本発明の実施の形態1における位置決め装置の正面図である。図5は、位置決め装置1を上から見た状態を示している。位置決め装置1は、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸で定義される三次元空間において搬送される搬送物200の設置位置を決める。図5では、X軸およびY軸が示されているが、Z軸は図示の都合上示していない。しかし、Z軸は、図の平面を貫く方向(X軸、Y軸に対して直交する)を定義する。搬送物200は、Z軸方向を降下しながら、設置領域56に搬送される。
【0068】
位置決め装置1は、搬送物200の一部およびアーム201の少なくとも一部に接触して回転する回転部材4を備える。更に、回転部材4の回転を支える回転支持部3と、回転支持部3を軸支するフレーム2を備える。フレーム2は、回転支持部3(間接的には回転部材4)の固定だけではなく、位置決め装置1全体の骨格を形成したり、搬送装置の骨格を形成したりする。
【0069】
回転部材4は、搬送物200およびアーム201の少なくとも一部と接触して回転する。この回転によって、搬送物200およびアーム201の少なくとも一部に圧力を付与することになる。この圧力によって、回転部材4は、搬送物200の搬送軌跡を変化させることができる。このとき、図5では、回転部材4は、X軸に沿っている(X軸に沿って回転する、言い換えればY軸に垂直に回転する)ので、回転部材4と接触する搬送物200は、X軸に沿って搬送軌跡を変化させるようになる。この搬送軌跡の変化によって、搬送物200は、定められた所定位置に調整されて保管される。
【0070】
図5に示される回転支持部3は、回転部材4の回転軸を形成する。回転支持部3が回転軸を形成する場合には、回転部材4は、この回転軸に対応して回転する。このように回転部材4が回転軸である回転支持部4を基準に回転する場合には、回転部材4は、その外周をランダムに搬送物200に接触させる。このため、回転部材4は、搬送物200との接触による劣化が少なくて済む。
【0071】
ここで、回転部材4の回転によって与えられる圧力によって、搬送物200はその位置を調整する。このため、回転部材4の回転半径(半径)は、この搬送物200の設置位置を決定する。すなわち、この回転半径によって、図5の場合には、X軸における搬送物200の設置位置が定められる。回転部材4の先端が、X軸における搬送物200の設置位置の座標となる。もちろん、回転部材4がY軸に沿って設けられている場合には、回転部材4の先端(回転半径で決まる)が、Y軸における搬送物200の設置位置の座標となる。
【0072】
位置決め装置1は、回転部材4の回転によって搬送物200の搬送軌跡を変更させる。参考例の斜め状のガイド部材と異なり、直線的に搬送物200の搬送軌跡を変化させる。一方、位置決め装置1は、段階的かつ立体的に搬送物200の搬送軌跡を変化させる。特に回転によって変化させることで、搬送物200への負荷が小さく、搬送物200の損耗が少なくなる。当然ながら、回転部材4は自在に回転するので,搬送物200と接触する位置は固定されていないので、特定の部位への負荷が大きくなることも無く、損耗が少ない。
【0073】
また、回転部材4の損耗がほとんど生じないと、回転部材4の直径が変化しにくい。位置決め装置1は、回転部材4の直径によってその位置を制御できる。この直径が変化しにくいことで、位置決め装置1が繰り返し使用されても、その設置位置を変化させにくい。すなわち、位置決め装置1は、長期間にわたって使用されても、搬送物200の設置位置を変動させることが無く、高い耐久性を発揮できる。もちろん、長期間使用されても設置位置に変動を来たさないことで、位置決め装置1の使用者は、安心して位置決め装置1や搬送装置50を使用することができるようになる。
【0074】
(位置決め装置の動作説明)
次に、位置決め装置1の動作を、図6図9を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。図6は、搬送物200が、位置決め装置1に向かって下降を開始した状態を示している。例えば、スタッカクレーンが、搬送物200のアーム201A、201Bを把持した状態で、位置決め装置1に向けて搬送物200を下降させる(搬送物200は、Z軸に沿って移動する)。位置決め装置1は、搬送物200の設置領域に設置されており、位置決め装置1は、X軸方向に沿った方向に回転部材4A、4Bを備えている。すなわち、回転部材4A、4Bは、搬送物200のX軸座標の位置を制御する。
【0075】
位置決め装置1は、ステージ5を備えている。ステージ5は、フレーム2の一部であって、回転部材4A、4BによるX軸方向の位置決めを受けながら下降する搬送物200を受ける。このため、搬送物200は、ステージ5に到達するまで下降する。言い換えれば、ステージ5が、搬送物200のZ軸座標の位置を決定する。ステージ5は、フレーム2の一部であればよいので、ステージ5は、金属、合金、樹脂などで形成されている。また、搬送物200を受けるので、搬送物200の形状に合わせて平面を形成していることも好適である。
【0076】
回転部材4A、4Bのそれぞれは、回転支持部3A,3Bを軸として回転可能である。回転部材4A,4Bのそれぞれは、樹脂、金属、合金、ゴム、合皮などの素材で形成されていることが適当である。回転部材4A、4Bのそれぞれは、回転支持部3A、3Bのそれぞれを基準に回転可能であれば良いので、回転支持部3A,3Bは、搬送物200の設置位置に合わせて固定されていればよい。例えば、回転車輪やキャスターなどが、回転支持部3A、3Bを有する回転部材4A,4Bとして、位置決め装置1に取り付けられても良い。
【0077】
回転部材4A,4Bのそれぞれは、フレーム2に取り付けられた回転支持部3A、3Bによって接続される。このとき、回転支持部3A,3Bと回転部材4A,4Bの外周との距離が、搬送物200のX軸座標の設置位置を決定するので、回転支持部3A,3Bのそれぞれの取り付け位置(および回転部材4A,4Bの直径)は、この設置位置に合わせて決定される。このため、搬送物200の大きさや形状に柔軟に対応できるように、回転支持部3A,3Bの取り付け位置が可変であったり、フレーム2がX軸方向に伸縮可能であったりすること(伸縮によって、対向する一対の回転部材4A、4Bの対向距離が変化する)も好適である。あるいは、回転部材4A,4Bの交換が容易であることも好適である。いずれの場合も、位置決め装置1のX軸座標の設置位置を変化させることができる。
【0078】
このように、X軸の設置位置に合わせて設けられている回転部材4A、4Bに向かって下降してきた搬送物200は、回転部材4A,4Bに近づく。図7は、本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。図7は、図6の状態から更に進んで搬送物200が下降した状態を示している。下降が進むことで、搬送物200の一部もしくはアーム201の一部が、回転部材4に接触する。
【0079】
ここで、位置決め装置1は、一対の回転部材4A、4Bを備えている。搬送物200は、回転部材4Aもしくは回転部材4Bのいずれかに偏って下降してくる(X軸方向でいずれかに偏っている)。このため、搬送物200やアーム201の一部は、回転部材4Aもしくは回転部材4Bのいずれかに接触する。例えば、搬送物200が、X軸方向において、回転部材4Aに偏っている状態であれば、アーム201A(もしくは搬送物200)が、回転部材4Aに接触する。逆に、搬送物200が、X軸方向において、回転部材4Bに偏っている状態であれば、アーム201B(もしくは搬送物200)が、回転部材4Bに接触する。ここでは、アーム201Aが回転部材4Aに接触することを前提に説明する。
【0080】
図8は、本発明の実施の形態1における位置決め装置の動作説明図である。図8は、回転部材4Aによって位置決めが終了した搬送物200を示している。図7に続いて、回転部材4Aは、アーム201Aに接触する。接触によって、回転部材4Aは回転を行う。図8の回転部材4Aに示される矢印は、回転部材4Aの回転方向を示す。回転部材4Aは、アーム201Aとの接触によって回転する。この回転によって、回転部材4Aは、搬送物200に圧力を付与できる。この圧力の付与によって、回転部材4Aは、搬送物200の搬送軌跡を変化させる。搬送物200は、図6に示されるように、Z軸に沿った搬送軌跡で搬送される。次いで、回転部材4Aがアーム201Aに接触して回転することで、Z軸に加えてX軸方向に向けて、搬送物200の搬送軌跡が変化する。このときの搬送軌跡の変化は、参考例の技術と異なり、直線的ではなく、Z軸とX軸のベクトルの合成となって、搬送物200が回転体の外周に沿って円弧状に移動するようになる。
【0081】
回転部材4Aの回転によってアーム201AのX軸の端面は、回転部材4Aの外周位置に合わせられる。この結果、位置決め装置1は、搬送物200のX軸の座標位置を、決定できる。回転部材4Aが図8のようにX軸に沿って設置されている場合には、回転部材4Aの回転が、搬送物200のX軸の座標位置を決定できる。
【0082】
このとき、回転支持部3Aは、搬送物200の目標となる設置位置に対して固定されており、搬送物200は、設置位置に対して自由に移動できる。このように、自由移動可能な搬送物200の一部(もしくはアーム201A)に回転部材4Aが接触して回転することで、搬送物200には、回転による移動方向の変化への圧力が付与される。この圧力によって、搬送物200の搬送軌跡が変化する。例えば、搬送物200はZ軸方向のみに沿った搬送軌跡で移動されていた場合に、回転部材4Aとの接触によって、X軸方向に沿った搬送軌跡が加えられる。この結果、搬送物200は、Z軸に加えてX軸の搬送軌跡にもよって搬送される。
【0083】
もちろん、回転部材4Aとの接触が無ければ(あるいは接触が無くなれば)、搬送物200の搬送軌跡は、Z軸のみに沿ったままである。このため、回転部材4Aの回転支持部3Aからの距離(回転部材4Aの半径(直径))にあわせた位置に、搬送物200は調整される。すなわち、回転部材4Aの半径(直径)は、搬送物200の設置位置を調整できる。
【0084】
一方、ステージ5まで搬送物200が到達することによって、位置決め装置1は、搬送物200のZ軸の座標位置を決定できる。すなわち、ステージ5を備えるフレーム2が、Z軸の座標位置を決定できる。
【0085】
更に、位置決め装置1は、Y軸の座標位置を、図9に示される受け口7によって決定できる。
【0086】
図9は、本発明の実施の形態1における位置決め装置をX軸方向から見た説明図である。図9に示されるように位置決め装置1は、受け口7を備えている。受け口7は、アーム201の外周にあわせた凹状の形状を有している。この受け口7が、アーム201Aの外周にあてがわれることで、位置決め装置1は、搬送物200のY軸の座標位置を決定できる。例えば、アーム201Aが円形であって、受け口7が、図9のように凹状であれば、アーム201Aは、所定位置に収まるからである。この結果、位置決め装置1は、搬送物200のY軸の座標位置を決定できる。もちろん、受け口7は、フレーム2の一部として把握されても良いので、フレーム2が、Y軸の座標位置を決定すると把握しても良い。
【0087】
以上のように、位置決め装置1は、スタッカクレーンによる搬送物200の搬送において、搬送物200の設置位置を決定できる。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの座標位置が、目標の設置位置に決定されることで、搬送物200は、目標となる設置位置に設置される。
【0088】
(変形例1)
図7図9では、搬送物200にアーム201が取り付けられている場合について説明した。スタッカクレーンなどは、搬送物200を移動させるに際して、搬送物200を直接的に把持するよりも、アーム201を把持するほうが都合よいことが多い。しかしながら、搬送物200の形状や構造によっては、アーム201が搬送物200に取り付けられにくいこともある。この場合には、スタッカクレーンは、搬送物200を、直接的に把持して搬送する。
【0089】
図10は、本発明の実施の形態1における変形例1の場合の位置決め装置の説明図である。図10は、アーム201が取り付けられていない搬送物200が、位置決め装置1によって設置位置を決定する状態を示している。搬送物200は、図7図9を用いて説明したように、Z軸方向に沿って下降する。回転部材4A,4BがX軸方向に沿った搬送物200の両端に対応して設けられている。
【0090】
搬送物200が下降する過程で、回転部材4Aは、搬送物200の一部と接触する。この接触によって、回転部材4Aは、回転する。回転によって搬送物200には搬送軌跡を変更する圧力が付与される。すなわち、回転部材4Aは、X軸方向の搬送軌跡を生じさせて、回転部材4Aの半径で定まるX軸の座標位置に搬送物200を移動させる。
【0091】
また、Y軸およびZ軸は、フレーム2によって、その座標位置が決定される。図10では、フレーム2が受け口7A,7Bを有しており、この受け口に搬送物200の両端が嵌ることで、搬送物200のY軸とZ軸の座標位置が決定される。図10では、X軸、Y軸、Z軸の全ての設置位置が決定された後の状態を示している。搬送物200は、回転部材4による位置決め(X軸での位置決め)と、受け口7による位置決め(Y軸、Z軸での位置決め)が、完了した状態である。
【0092】
このように、搬送物200がそのままで搬送される場合でも、位置決め装置1は、搬送物200の設置位置を決定できる。もちろんこの場合も、回転部材4による搬送軌跡の変化に基づくので、搬送物200を損傷させることが無い。当然に回転部材4の損耗も少なく、位置決め装置1の耐久性、使用期間も向上する。耐久性や使用期間性が高いことで、位置決め装置1の位置決め精度の劣化も少なく、搬送物200の搬送作業における余分な管理負担が減少する。
【0093】
(変形例2)
次に、変形例2について説明する。
【0094】
図11は、本発明の実施の形態1における変形例2に対応する位置決め装置の説明図である。図11の位置決め装置1は、Y軸方向に沿って、回転部材4を備えている。Y軸に沿って、搬送物200の両端に対応して、回転部材4A,4Bが設けられている。搬送装置50や搬送領域の都合によっては、Y軸の位置が、定められにくいことがある。この場合には、位置決め装置1は、Y軸に沿って回転部材4を有していることで、Y軸の座標位置を定めることが好適である。
【0095】
位置決め装置1は、フレーム2を備えており、フレーム2は、ステージ5や受け口7を有している。このフレーム2は、X軸およびZ軸の座標位置を、決定できる。一方、Y軸に沿って設けられている回転部材4A、4Bのいずれかが、搬送物200もしくはアーム201に接触する。この接触によって、回転部材4A、4Bのいずれかが回転し、搬送物200の搬送軌跡が変化する。具体的には、搬送物200にY軸方向に沿った搬送軌跡が加えられる。この結果、回転部材4A,4Bは、その半径に従ったY軸の座標位置に、搬送物200の設置位置を調整する。
【0096】
以上のように、回転部材4がY軸に沿って(特に、Y軸に沿った搬送物200の両端に対応して)設けられることで、位置決め装置1は、Y軸に対応する設置位置の細かな調整を可能とできる。
【0097】
なお、回転部材4がY軸に沿って設けられる場合でも、回転部材4による回転で搬送物200の設置位置が制御されるので、搬送物200の損傷や回転部材4の損耗は少ない。この結果、位置決め装置1の耐久性や使用期間性が向上する。
【0098】
(変形例3)
次に、変形例3について説明する。変形例3の位置決め装置1は、回転部材4を、X軸およびY軸のそれぞれに沿って備える。
【0099】
図12は、本発明の実施の形態1における変形例3に対応する位置決め装置の説明図である。図12の位置決め装置1は、X軸に沿った回転部材4XとY軸に沿った回転部材4Yと、を備える。例えば、搬送領域や搬送物200の構造上の都合によっては、フレーム2によって、Z軸の座標位置しか決定できない場合がある。この場合には、位置決め装置1は、X軸およびY軸のそれぞれの座標位置を、回転部材4によって定める必要がある。このような場合に、図12のように、X軸にそった回転部材4XとY軸に沿った回転部材4Yとが、X軸およびY軸の座標位置を同時に調整できる。
【0100】
X軸に沿った回転部材4Xは、搬送物200のX軸に沿った端部に接触して回転する(もちろん、アーム201が備わっている場合には、回転部材4Xがアーム201に接触する)。回転部材4Xは、X軸に沿って回転する。このX軸に沿った回転によって、回転部材4Xは、搬送物200にX軸に沿った搬送軌跡を付与できる。この結果、スタッカクレーンなどでZ軸方向にそって下降されている最中の搬送物200は、X軸に沿った搬送軌跡を有するようになる。最終的に、回転部材4Xの回転が生じなくなるまで、搬送物200は、X軸に沿って移動する。すなわち、回転部材4Xは、その半径(直径)によって定まる目標となるX軸の座標位置に、搬送物200の位置を制御できる。
【0101】
一方、Y軸に沿った回転部材4Yは、搬送物200のY軸に沿った端部に接触して回転する(もちろん、アーム201が備わっている場合には、回転部材4Yがアーム201に接触する)。回転部材4Yは、Y軸に沿って回転する。このY軸に沿った回転によって、回転部材4Yは、搬送物200にY軸に沿った搬送軌跡を付与できる。この結果、スタッカクレーンなどでZ軸方向にそって下降されている最中の搬送物200は、Y軸に沿った搬送軌跡を有するようになる。最終的に、回転部材4Yの回転が生じなくなるまで、搬送物200は、Y軸に沿って移動する。すなわち、回転部材4Yは、その半径(直径)によって定まる目標となるY軸の座標位置に、搬送物200の位置を制御できる。
【0102】
このように、X軸に沿った回転部材4XとY軸に沿った回転部材4Yとを備える位置決め装置1は、搬送物200のX軸およびY軸の座標位置を、同時に調整できる。Z軸においては、フレーム2によって定まるので、位置決め装置1は、X軸、Y軸、Z軸の全ての座標位置を調整できる。この結果、搬送物200は、目標となる設置位置に搬送される。
【0103】
また、X軸およびY軸のそれぞれに沿った回転部材4X、4Yを備える位置決め装置1は、X軸およびY軸の座標位置を同時に調整するだけでなく、いずれか一方だけを調整しても良い。例えば、搬送物200の都合によっては、X軸の座標位置のみを調整するだけでも良いことがある。この場合には、回転部材4Yは、搬送物200に接触しないような位置に配置される。この結果、位置決め装置1は、回転部材4Xのみを搬送物200に接触させることができる。この場合には、位置決め装置1は、回転部材4Xによって搬送物200のX軸の座標位置を決定できる。
【0104】
あるいは、X軸に沿った回転部材4Xが、搬送物200と接触しない位置に配置され、Y軸に沿った回転部材4Yが、搬送物200と接触する位置に配置されることもよい。この場合には、Z軸方向に下降する搬送物200は、回転部材4Yのみと接触する。この結果、位置決め装置1は、Y軸の座標位置のみを調整できる(フレーム2によるX軸、Z軸の座標位置の調整は別途行われる)。
【0105】
いずれの場合も、フレーム2が伸縮可能であることで、回転部材4Xおよび回転部材4Yの設置位置が変更されることで実現される。
【0106】
このように、図12に示されるようにX軸およびY軸のそれぞれに沿った回転部材4X,4Yが備わることで、位置決め装置1は、X軸およびY軸の座標位置を同時に調整したり、一方のみを調整したりできる。このため、図12に示される位置決め装置1は、様々な状態に対応できるようになる。
【0107】
以上のように、実施の形態1における位置決め装置1は、搬送物200の搬送軌跡を変化させることで、搬送物200を滑らさず設置位置に調整する。加えて、回転部材4による調整によって、回転部材4の損耗が少なく、位置決め装置1の耐久性は高い。この結果、位置決め装置1のメンテナンス負担が軽くなり、搬送物200の搬送を必要とするシステムにおけるコストが低減できる。
【0108】
(実施の形態2)
【0109】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、位置決め装置1の要素の展開例などについて説明する。
【0110】
(回転部材のフレキシビリティ)
回転部材4は、その半径(直径)によって、搬送物200の設置位置を決定できる。回転部材4と搬送物200が接触している間は回転部材4が回転して、搬送物200の搬送軌跡が変更されるからである。このため、回転部材4の半径および回転支持部3の位置の少なくとも一つが可変であることも好適である。
【0111】
回転部材4の半径が可変であれば、位置決め装置1は、搬送物200の設置位置を変更できるからである。同様に、回転支持部3の位置が可変であれば、回転部材4の半径が可変でなくとも、位置決め装置1は、搬送物200の設置位置を変更できるからである。
【0112】
搬送物200の設置位置は、搬送物の種類や搬送先の変化に応じて、変化させる必要がある場合もある。例えば、搬送物200が小さくなる場合には、設置位置が回転部材4よりも遠い位置となることもある。この場合に、回転部材4のフレキシビリティが無いことは、搬送物200の位置決めにとって好ましくない。このような場合に、回転部材4の半径が変更可能であったり回転支持部3の位置が変更可能であったりすれば、搬送物200の設置位置の変化に対応できる。
【0113】
回転部材4は、自動車のタイヤのように空気チューブを内蔵しており、この空気チューブの空気圧の変化によって、その半径を変化させることができる。あるいは、回転部材4の外周にトレッドゴムを取り付け可能であることで、その半径を変化させることができる。
【0114】
また、回転支持部3は、フレーム2に取り付けられるが、フレーム2に予め複数の回転支持部3の取り付け位置が設けられていることで、この取り付け位置が変更されることで、回転支持部3の位置が変更可能である。あるいは、フレーム2は、回転支持部3を装着するスリットを備えておき、回転支持部3が、このスリット上の任意の位置で固定されることで、回転支持部3の位置が変更可能である。
【0115】
このように、回転部材4の半径および回転支持部3の位置の少なくとも一方が可変であることで、搬送物200の都合に応じて、設置位置をフレキシビリティに変更できる。この結果、位置決め装置1は、様々な搬送物200に対応して、その設置位置を決定できる。
【0116】
なお、フレーム2が、搬送物200の設置面に沿って設けられることで、位置決め装置1は、搬送物200のZ軸の座標を調整できる。このとき、フレーム2の高さが可変であることで、Z軸の座標位置も可変にできる。
【0117】
(回転部材の形状)
また、回転部材4の形状が様々であることも、設置位置への調整にとって好適である。
【0118】
実施の形態1においては、回転部材4は、車輪やタイヤのように、一般的な円形の外周を有しているものを説明した。このような回転部材4は、搬送物200やアーム201と平面的に接触する。外周の断面は、回転支持部に平行な直線となるからである。搬送物200へ回転による圧力を付与することで、回転部材4は、搬送物200の搬送軌跡を変化させる。このとき、回転部材4の外周が回転支持部に平行な直線であることで、平面的かつ全体的に、搬送物200に圧力を付与できる。この結果、搬送物200に損傷を生じさせにくい。
【0119】
一方で、搬送物200の形状や重量によっては、回転部材4の回転による圧力が付与しにくい場合もある。搬送物200が非常に重い場合には、回転部材4の外周全体が接触するだけでは、十分に搬送物200の搬送軌跡を変化させられない懸念もある。このような場合に対応して、回転部材4は、搬送物200に接触する突出部を、回転外周に備えていることも好適である。
【0120】
図13は、本発明の実施の形態2における回転部材の平面図である。図13に示される回転部材4は、その外周に突出部41を備えている。突出部材41は、外周の一部から回転外側に突出している。このため、回転部材4は、この突出部41を、搬送物200に接触させる。突出部41が接触することで、回転部材4の外周全体が接触する場合よりも、より強い圧力で、搬送物200を押し出すことができ、所定方向への搬送軌跡を加えることができる。
【0121】
また、突出部41が搬送物200に接触することで、回転部材4の損耗が更に減少するメリットもある。
【0122】
あるいは、回転部材4は、搬送物に対してテーパー形状を、その外周に有することも好適である。図14は、本発明の実施の形態2における回転部材の平面図である。図14から明らかな通り、回転部材4は、外周断面がテーパー形状となっている。このようなテーパー形状を有していることで、回転部材4は、搬送物200に、回転支持部に平行な圧力を加えることと成り,センタリングができる。特に、搬送物200が細い形状で図14の回転部材のどちらか一方に接触する場合には、テーパー形状の一端が搬送物200に接触することになるので、搬送物200は、回転による圧力を確実に受けてその搬送軌跡を変化させる。
【0123】
これらのように、回転部材4の外周形状に種々の工夫が施されていると、搬送物200の特性に応じた、位置決めが可能となる。
【0124】
(回転部材の自在回転)
図4などでは、回転部材4は、回転支持部3によって回転軸が固定されているように示されている。しかしながら、いわゆる自在回転キャスターのように、回転部材4は、固定された回転軸に基づく回転だけでなく、自在回転する変形例が採用されても良い。この場合には、回転支持部3は、回転軸を固定せずに回転部材4を備える。例えば、回転部材4の外周の一部を覆うことで、位置決め装置1に回転部材4を取り付けつつ、回転部材4の回転を自在にさせる。
【0125】
回転部材4が、自在回転する場合には、搬送物200の搬送軌跡を変化させることはもちろん、回転部材4の搬送物200に接触する位置がランダムとなる。回転部材4の搬送物200に接触する位置がランダムとなることで、回転部材4の外周の劣化や損耗が生じにくくなる。特に、特定の部位のみが凹んだり、削れたりするなどで回転部材4の回転半径が変動することが防止されやすくなる。この結果、位置決め装置1の使用耐久性や使用期間を向上させることができる。
【0126】
また、図4などでも示すとおり、回転支持部3は、複数の回転部材4を備えることも好適である。図4などでは、2つの回転部材4が一つのセットとして取り付けられている。複数の回転部材4が備わることで、搬送物200の大きさや形状に係らず、位置決め装置1は、回転部材4を搬送物200に確実に接触させることができる。この結果、位置決め装置1は、確実に搬送物200の位置を決定できる。このとき、複数の回転部材4の少なくとも一つ以上の回転部材4が接触することでもよい。この場合にも、位置決め装置1は、搬送物200の位置を決定できる。
【0127】
また、複数の回転部材4が搬送物200に接触することで、回転部材4は、その回転方向だけでなく回転方向に交差する方向にも搬送物200を位置決めできる。例えば、図14に示されるように、回転部材4が内側に切れ込んでいくようなテーパー状を有している場合には、このテーパー状の挟み込みによって生じる空間に、搬送物200の一部を入り込ませることで、回転方向に交差する方向の位置も決定できる。
【0128】
例えば、回転部材4がY軸に沿って設けられている場合に(回転方向は、X軸となって、回転による搬送軌跡の変化を、X軸に沿って生じさせる場合)、回転部材4がテーパー状を有していることで、切れ込みに搬送物200を取り込む動作も同時に行える。この切れ込みに取り込む動作によって、位置決め装置1は、Y軸の位置決めも同時に行なえる。すなわち、一種のセンタリング機能を発揮できる。あるいは、テーパー状でなくても、2つの回転部材4が、Y軸において斜めに向き合うように設けられることで、回転によるX軸方向の位置決めと、回転部材4の間への取り込みによるY軸の位置決めとを、同時に行っても良い。
【0129】
このように、位置決め装置1は、複数の回転部材4を備えたり、テーパー状の回転部材を備えたりすることで、X軸およびY軸の位置を同時に決定できる。
【0130】
以上のように、実施の形態2における位置決め装置1は、様々な工夫によって、位置決めの精度を向上させたり、フレキシビリティを向上させたりできる。
【0131】
なお、実施の形態1〜2で説明された位置決め装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0132】
1 位置決め装置
2 フレーム
3 回転支持部
4 回転部材
41 突出部
5 ステージ
7 受け口
50 搬送装置
51 棚
52 スタッカクレーン
53 搬送路
200 搬送物
201 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14