(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901078
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
A61M25/00 550
A61M25/00 620
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-62106(P2014-62106)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-181787(P2015-181787A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134326
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 允祥
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝之
【審査官】
藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−196275(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0108974(US,A1)
【文献】
米国特許第5762637(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ルーメンを有する内層と、前記内層の外周に巻回された金属からなるコイル体と、前記コイル体の外周を被覆した外層と、からなる本体部と、
前記第一ルーメンに連通した第二ルーメンを有し、前記本体部の先端に形成された金属からなる先端チップと、を備え、
前記先端チップは、前記コイル体の先端及び前記コイル体の先端部の内周面に接合していることを特徴としたカテーテル。
【請求項2】
前記コイル体の前記先端部では、前記コイル体を構成する素線が互いに接合されており、前記コイル体の前記先端部の前記内周面は、前記先端チップと接合していない前記コイル体の内周面よりも平坦であること特徴とした請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記コイル体の前記先端部の前記内周面と接合した前記先端チップは、後端ほど厚みが薄いテーパ形状を有していることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬い狭窄部や骨内を通過可能なカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、胆管、膵管等の内部に形成された硬い狭窄部(例えば、石灰化した狭窄部)に挿入する治療用カテーテルや、骨内に挿入して骨髄を吸引する骨髄吸引用カテーテルには、カテーテルを硬い狭窄部や骨内に挿入させるために、カテーテルシャフトの先端に剛性を有した金属からなる先端チップが取り付けられている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1のカテーテルでは、外層を剥がして露出したブレードに金属からなる先端チップを接合させることで、先端チップとカテーテルシャフトとの接合強度を確保している。
【0004】
しかし、特許文献1のカテーテルでは、金属からなる先端チップがブレードの外周面に接合されているため、先端チップの外径がカテーテルシャフトの外径よりも大きくなり、硬い狭窄部や骨内へのカテーテルの挿入性が悪くなるという問題があった。また、硬い狭窄部が血管、胆管、膵管等の末端に形成されているとき、血管、胆管、膵管等に挿入されたカテーテルは、強く湾曲させられるため、どうしても先端チップの後端とブレードとの接合部に負荷が集中する。この状態でカテーテルを回転させると、金属からなる先端チップの後端がブレードから一部外れてしまう場合がある。特に、カテーテルが強く湾曲し、かつ、先端チップが硬い狭窄部や骨内に引っ掛かった状態で、カテーテルを回転させると、先端チップの後端とブレードとの接合部に負荷が集中して、金属からなる先端チップの後端がブレードから外れてしまう。ブレードから外れた先端チップの後端は、外層を突き破って正常な血管、胆管、膵管等を損傷してしまう、又は、先端チップ自体がカテーテルシャフトから破断されて血管、胆管、膵管等に取り残されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−244492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、金属からなる先端チップをコイル体の先端及びコイル体の先端部の内周面に接合することで、先端チップの外径をカテーテルシャフトの外径よりも大きくすることなく、先端チップとコイル体の先端部との接合強度を確保したカテーテルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下に列挙される手段により解決がなされる。
【0008】
本発明の態様1は、第一ルーメンを有する内層と、前記内層の外周に巻回された金属からなるコイル体と、前記コイル体の外周を被覆した外層と、からなる本体部と、前記第一ルーメンに連通した第二ルーメンを有し、前記本体部の先端に形成された金属からなる先端チップと、を備え、前記先端チップは、前記コイル体の先端及び前記コイル体の先端部の内周面に接合していることを特徴としたカテーテル。
【0009】
本発明の態様2は、前記コイル体の前記先端部では、前記コイル体を構成する素線が互いに接合されており、前記コイル体の前記先端部の前記内周面は、前記先端チップと接合していない前記コイル体の内周面よりも平坦であること特徴とした態様1に記載のカテーテル。
【0010】
本発明の態様3は、前記コイル体の前記先端部の前記内周面と接合した前記先端チップは、後端ほど厚みが薄いテーパ形状を有していることを特徴とした態様1又は態様2に記載のカテーテル。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様1のカテーテルでは、金属からなる先端チップがコイル体の先端及びコイル体の先端部の内周面に接合されている。そのため、先端チップの外径をカテーテルシャフトの外径よりも大きくすることなく、先端チップとコイル体との接合強度を確保することができ、その結果、硬い狭窄部や骨内へのカテーテルの挿入性を向上させることができる。また、金属からなる先端チップがコイル体の先端のみならず内周面にも接合されているため、先端チップ自体がカテーテルシャフトから破断してしまう恐れを低減することができる。
【0012】
本発明の態様2のカテーテルでは、コイル体の先端部ではコイル体を構成する素線が互いに接合されており、かつ、コイル体の先端部の内周面が先端チップと接合していないコイル体の内周面よりも平坦になっている。コイル体の先端部でコイル体を構成する素線が互いに接合されているため、先端部におけるコイル体を構成する素線の動きが規制され、先端チップとコイル体の先端部との接合を容易かつ安定的に行うことができる。また、コイル体の先端部の内周面が平坦になっているため、先端チップとコイル体の先端部との接合面積が増えて、先端チップがコイル体から外れてしまう恐れを低減でき、その結果、先端チップ自体がカテーテルシャフトから破断してしまう恐れを低減することができる。
【0013】
本発明の態様3のカテーテルでは、コイル体の先端部の内周面と接合した先端チップが後端ほど厚みの薄いテーパ形状になっている。先端チップの後端から先端にかけて剛性を段階的に高くすることができるため、カテーテルが強く湾曲し、かつ、先端チップが硬い狭窄部や骨内に引っ掛かった状態で、カテーテルを回転させた場合でも、負荷が先端チップの後端とコイル体との境界に集中しにくいため、先端チップがコイル体から外れてしまう恐れをより低減でき、その結果、先端チップ自体がカテーテルシャフトから破断してしまう恐れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態のカテーテルの全体図である。
【
図5】
図5は、
図2の変形例であり、第2の実施の形態のカテーテルの拡大図である。
【
図6】
図6は、
図5の変形例であり、第3の実施の形態のカテーテルの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図4を参照しつつ、本実施の形態のカテーテル1を用いた場合を例として説明する。
図1及び
図2において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(近位側、基端側)である。
【0016】
カテーテル1は、例えば、心臓の血管、胆管、膵管内の狭窄部を治療する際、又は、骨内の骨髄を吸引する際に、用いられるものである。
図1に示すように、カテーテル1は、主にカテーテルシャフト10と、カテーテルシャフト10の後端に取り付けられたコネクタ14と、カテーテルシャフト10の先端に取り付けられた金属からなる先端チップ50と、からなる。
【0017】
図1のA部を拡大した
図2に示すように、カテーテルシャフト10は、本体部13と、先端部33と、からなる。カテーテルシャフト10の本体部13には、内層20と、補強体であるコイル体30と、外層40と、が設けられている。
【0018】
内層20は、樹脂から形成され、内部にガイドワイヤや他のカテーテルを挿入できるルーメン22を構成する。内層20を形成する樹脂材料は、特に限定されないが、内部に挿入するガイドワイヤや他のカテーテルの摺動性を考慮すると、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)が好ましい。
【0019】
内層20の外周には、金属からなるコイル体30が巻回されている。コイル体30は、素線31で構成されている。この素線31は、単線からなる素線でもよいし、複数の素線が撚られた撚線でもよい。カテーテル1の回転力を考慮すると、コイル体30の素線31として、撚線を用いることが好ましい。また、素線31に用いる金属材料は、特に限定されず、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、金、白金、タングステン、プラチナ、ニッケル、これらの元素からなる合金などを用いることができる。
【0020】
コイル体30の外周は、樹脂からなる外層40で被覆されている。外層40を形成する樹脂材料は、特に限定されず、ポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリエステル、ポリウレタン等を用いることができる。
【0021】
カテーテルシャフト10の先端には、金属からなる先端チップ50が取り付けられている。金属チップ50は、先端に向けてテーパ状に縮径化した外周面54と、内層20のルーメン22に連通して、内部にガイドワイヤや他のカテーテルを挿入できるルーメン52と、を有している。後述するように、ルーメン52は、内径がほぼ一定の直線部52aと、後端ほど先端チップ50の厚みが薄くなって内径が広がるテーパ部52bと、を備えている。また、金属チップ50に用いる金属材料は、特に限定されず、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、金、白金、タングステン、プラチナ、ニッケル、これらの元素からなる合金などを用いることができる。但し、放射線透視画像下でカテーテル1の先端の位置を把握できるように、金属チップ50とコイル体30とのうち少なくとも一方は、放射線不透過性を有する金属材料で形成することが好ましい。
【0022】
図3は、
図2のB−B断面図である。
図3に示すように、カテーテルシャフト10の本体部13は、半径方向に内側から順に内層20と、コイル体30と、外層40と、から形成されている。
【0023】
図4は、
図2のC−C断面図である。
図4に示すように、カテーテルシャフト10の先端部33は、半径方向に内側から順に先端チップ50と、コイル体30と、外層40と、から形成されている。
【0024】
金属チップ50は、カテーテルシャフト10の先端部33において、コイル体30の先端32とコイル体30の内周面34とに接合されている(
図2及び
図4を参照)。カテーテルシャフト10の先端部33の長さは、適宜調整することができる。
図2では、カテーテルシャフト10の先端部33の長さ(言い換えると、先端チップ50と接合するコイル体30の長さ)は、コイル体30を構成する素線31の4個分に相当する。金属チップ50とコイル体30との接合強度を大きくする必要がある場合は、例えば、コイル体30を構成する素線31の6個分に相当する長さまで先端部33を長くすればよい。逆に、金属チップ50とコイル体30との接合強度が確保されている場合には、先端部33の長さを短くすればよい。
【0025】
このように、カテーテル1は、金属チップ50に接合させるカテーテルシャフト10の先端部33の長さを自由に調整することできる。そのため、先端チップ50の外径をカテーテルシャフト10の外径よりも大きくすることなく、先端チップ50とコイル体30との接合強度を確保することができ、その結果、硬い狭窄部や骨内へのカテーテル1の挿入性を向上させることができる。また、金属からなる先端チップ50が、コイル体30の先端32のみならず内周面34にも接合されているため、先端チップ50自体がカテーテルシャフト10から破断してしまう恐れを低減することができる。
【0026】
また、
図2に示すように、カテーテルシャフト10の先端部33において、コイル体30の内周面34と接合した先端チップ50は、後端50aで最も厚みが薄くなるように後端ほど厚みの薄いテーパ部52bを有している。カテーテルシャフト10の先端部33において、先端チップ50の後端50aから先端方向に向かって剛性を段階的に高くすることができるため、カテーテル1が強く湾曲し、かつ、先端チップ50が硬い狭窄部や骨内に引っ掛かった状態で、カテーテル1を回転させた場合でも、負荷が先端チップ50の後端50aとコイル体30との境界60に集中しにくいため、先端チップ50がコイル体30から外れてしまう恐れをより低減でき、その結果、先端チップ50自体がカテーテルシャフト10から破断してしまう恐れを低減することができる。
【0027】
次に、
図5を参照しつつ、第2の実施の形態のカテーテル1aについて、説明する。なお、
図5は、
図1及び
図2と同様に、左側が体内に挿入される先端側(遠位側)を、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(近位側、基端側)を、表している。
【0028】
図2に示したカテーテル1との相違点のみを説明すると、
図5に示すように、カテーテル1aでは、カテーテルシャフト10の先端部33において、コイル体30を構成する素線31が互いに接合された接合部36が形成されている。接合部36は、コイル体30を構成する素線31にレーザ等で溶融して形成される。金属チップ50は、接合部36の先端32aと接合部36の内周面34aとに接合されている。このように、コイル体30を構成する素線31が互いに接合された接合部36を形成することで、カテーテルシャフト10の先端部33において、コイル体30を構成する素線31の動きが規制され、先端チップ50とコイル体30との接合を容易かつ安定的に行うことができる。
【0029】
また、カテーテル1aでは、接合部36の内周面34aは、カテーテルシャフト10の本体部13におけるコイル体30の内周面35(言い換えると、先端チップ50と接合していないコイル体30の内周面35)よりも平坦になっている。接合部36の内周面34aを平坦にすることで、先端チップ50とコイル体30との接合面積を増やすことができ、先端チップ50がコイル体30から外れてしまう恐れを低減でき、その結果、先端チップ50自体がカテーテルシャフト10から破断してしまう恐れを低減することができる。
【0030】
次に、
図6を参照しつつ、第3の実施の形態のカテーテル1bについて、説明する。なお、
図6は、
図1、
図2、及び
図5と同様に、左側が体内に挿入される先端側(遠位側)を、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(近位側、基端側)を、表している。
【0031】
図5に示したカテーテル1aとの相違点のみを説明すると、
図6に示すように、カテーテル1bでは、カテーテルシャフト10の本体部13に、内層20とコイル体30との間にブレード70が長手方向に埋設されている。そのため、カテーテルシャフト10の本体部13の剛性を高くすることができ、手技者による先端方向の押し込み力を先端チップ50まで伝達しやすくなる。また、
図6には図示していないが、金属チップ50の後端50aをコイル体30のみならずブレード70に接合させることで、先端チップ50がコイル体30及びブレード70から外れてしまう恐れを低減でき、その結果、先端チップ50自体がカテーテルシャフト10から破断してしまう恐れをより低減することができる。
【0032】
このように、カテーテル1、1a、1bでは、金属チップ50がコイル体30の先端32、32a及びコイル体30の内周面34、34aに接合されているため、先端チップ50の外径をカテーテルシャフト10の外径よりも大きくすることなく、先端チップ50とコイル体30との接合強度を確保することができ、その結果、硬い狭窄部や骨内へのカテーテル1の挿入性を向上させることができる。また、先端チップ50自体がカテーテルシャフト10から破断してしまう恐れを低減することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、1a、1b カテーテル
10 カテーテルシャフト
13 本体部
14 コネクタ
20 内層
22 ルーメン
30 コイル体
31 素線
32、32a 先端
33 先端部
34、34a、35 内周面
36 接合部
40 外層
50 金属チップ
52 ルーメン
52a 直線部
52b テーパ部
60 境界
70 ブレード