【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明1は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定に用いられるカラム充填剤であって、少なくとも、非イオン性の架橋性単量体と反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体とを含有する単量体混合物を、上記単量体混合物は溶解するが上記単量体混合物を重合して得られた非イオン性の親水性架橋重合体は溶解しない溶媒中において、重合開始剤の存在下で分散重合することにより非イオン性の親水性架橋重合体を得る工程と、上記非イオン性の親水性架橋重合体に、上記非イオン性の親水性架橋重合体が有する反応性官能基と反応するイオン交換基を有する化合物を反応させてカラム充填剤を得る工程とにより製造されたものであり、上記非イオン性の架橋性単量体は、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類からなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルであり、かつ、上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、及び、アルデヒド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルであるヘモグロビン類測定用カラム充填剤である。
【0010】
本発明2は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定に用いられるカラム充填剤であって、少なくとも、非架橋性高分子粒子に、非イオン性の架橋性単量体と反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体とを含有する単量体混合物を吸収させた後、重合開始剤の存在下で重合することにより非イオン性の親水性架橋重合体を得る工程と、上記非イオン性の親水性架橋重合体に、上記非イオン性の親水性架橋重合体が有する反応性官能基と反応するイオン交換基を有する化合物を反応させてカラム充填剤を得る工程とにより製造されたものであり、上記非イオン性の架橋性単量体は、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類からなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルであり、かつ、上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、及び、アルデヒド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルであるヘモグロビン類測定用カラム充填剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、特定の構造を有する単量体を含有する単量体混合物を重合して得られる、粒子径の均一な非イオン性の架橋性重合体を、イオン交換基を有する化合物と反応させることにより、粒度分布が均一化したヘモグロビン類測定用カラム充填剤を得ることができ、得られたカラム充填剤を用いることで、ヘモグロビン類の測定において高い測定精度及び高いカラム耐久性を発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明のヘモグロビン類測定用カラム充填剤は、非イオン性の親水性架橋重合体とイオン交換基とを有する化合物とを反応させて得られる。
上記非イオン性の親水性架橋重合体は、非イオン性の架橋性単量体と反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体とを含有する単量体混合物を重合反応させて得られる。
【0013】
上記非イオン性の架橋性単量体は、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類からなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルである。
なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
上記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の本発明に用いられるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)−ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ウレタン(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデガン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
【0016】
上記分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
上記非イオン性の架橋性単量体としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、アルキロールアルカン(メタ)アクリレート類が好適であり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、及び、アルキロールアルカン(メタ)アクリレート類がより好適である。
【0018】
上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、及び、アルデヒド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。なかでも、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、及び、2級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好適であり、水酸基、エポキシ基、及び、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることがより好適である。
【0019】
上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体としては、具体的には例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジアミノプロピル(メタ)アクリレート、シアノ(メタ)アクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。
【0020】
上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体の配合量は特に限定されないが、上記非イオン性の架橋性単量体100重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部である。上記非イオン性の親水性単量体の配合量が10重量部未満であると、反応性官能基量が少なくなるため、後述のイオン交換基の導入量が減少し、充分なイオン交換反応が行われない場合がある。上記非イオン性の親水性単量体の配合量が100重量部を超えると、重合反応の途中で凝集することがある。
【0021】
上記単量体混合物は、更に、非イオン性の非架橋性単量体を含有してもよい。
上記単量体混合物が上記非イオン性の非架橋性単量体を含有することにより、本発明のヘモグロビン類測定用カラム充填剤の化学的性能を変化させて、ピークの分離状態を適宜変えることができる。
【0022】
上記非イオン性の非架橋性単量体は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルであることが好適であり、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキル類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの非イオン性の非架橋性単量体は、単独で用いてもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0023】
上記非イオン性の非架橋性単量体の配合量は特に限定されないが、上記非イオン性の架橋性単量体100重量部に対して、好ましい上限は30重量部である。上記非架橋性単量体の配合量が30重量部を超えると、得られるカラム充填剤の耐圧性や耐膨潤性が低下することがある。上記非架橋性単量体の配合量のより好ましい上限は20重量部である。
【0024】
本発明1のヘモグロビン類測定用カラム充填剤における上記非イオン性の親水性架橋重合体を得る重合反応は、上記単量体混合物は溶解するが得られる非イオン性の親水性架橋重合体は溶解しない溶媒に、上記単量体混合物を溶解し、重合開始剤の存在下で重合を行う分散重合反応である。
上記溶媒は、上記単量体混合物が溶解し、得られる非イオン性の親水性架橋重合体が溶解しない液体であれば特に限定されず、上記単量体混合物の種類により適宜選択される。なかでも、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、芳香族炭化水素類等の有機溶媒類が好適である。
上記アルコール類は特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0025】
加温、放射線照射等によって上記重合開始剤がラジカルを発生する条件にすることにより、上記重合反応を行うことができる。
上記重合開始剤は特に限定されず、水溶性又は油溶性の公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記過硫酸塩は特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記有機過酸化物は特に限定されず、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
上記アゾ化合物は特に限定されず、例えば、2,2−アゾビスイソブヒロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる
【0026】
上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、単量体混合物100重量部に対して、好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5重量部である。上記重合開始剤の配合量が0.001重量部未満であると、重合反応が不充分となる場合や、重合反応に長時間要することがある。上記重合開始剤の配合量が5重量部を超えると、急激な反応の進行により、凝集物が発生することがある。
なお、上記重合開始剤は、上記単量体混合物に溶解させて用いることが好ましい。
【0027】
また、重合に際しては、必要に応じて、重合体にマクロポアを形成するための多孔質化剤、重合反応を制御するための各種連鎖移動剤、懸濁粒子を安定化されるための分散剤等の公知の各種添加剤を添加してもよい。
【0028】
上記イオン交換基を有する化合物は、上記非イオン性の親水性架橋重合体と反応することで、上記非イオン性の親水性架橋重合体にイオン交換基を導入する役割を有する。
【0029】
上記イオン交換基は、公知のイオン交換性を有する官能基を指し、カチオン交換基であってもよいし、アニオン交換基であってもよい。
上記カチオン交換基は特に限定されず、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
上記アニオン交換基は特に限定されず、例えば、3級アミノ基、4級アンモニウム基等が挙げられる。
なかでも、ヘモグロビンA1cの分離については、カチオン交換基であることが好適であり、特にスルホン酸基であることが好適である。
なお、上記イオン交換基を末端に有していれば、上記イオン交換基に付随する構造は特に限定されない。例えば、本明細書における「カルボキシル基」とは、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基等、カルボキシル基が結合する全ての官能基類を指す。
【0030】
本発明2のヘモグロビン類測定用カラム充填剤では、本発明1における上記重合反応によって得られる非イオン性の親水性架橋重合体の代わりに、上記重合反応と同様の単量体混合物及び重合開始剤を用い、以下の方法で行われる重合反応によって得られる非イオン性の親水性架橋重合体を用いる。すなわち、非架橋性高分子粒子に上記単量体混合物を吸収させ、重合開始剤の存在下にて重合することで、非イオン性の親水性架橋重合体が得られる。
【0031】
上記非架橋性高分子は、下記単量体混合物を吸収できるものであれば、低架橋性高分子からなるものであってもよい(以下、上記非架橋性高分子及び低架橋性高分子の両者を、単に非架橋性高分子ともいう)。
上記非架橋性高分子は、非架橋性単量体を重合して得られる高分子を意味し、上記低架橋性高分子は、非架橋性単量体と少量の架橋性単量体とを共重合して得られる高分子を意味する。
なお、上記低架橋高分子において、原料となる架橋性単量体の含有量は特に限定されないが、上記非架橋性単量体100重量部に対して、好ましい上限は10重量部である。
【0032】
上記の非架橋性高分子は、(メタ)アクリレート類の単独重合体又は共重合体であることが好ましい。これらの非架橋性高分子を構成する単量体は、(メタ)アクリレート類である上記非イオン性の非架橋性単量体又は上記非イオン性の架橋性単量体が用いられる。
【0033】
上記非架橋性高分子粒子に上記単量体混合物を吸収させる方法は特に限定されず、例えば、上記非架橋性高分子粒子を単量体混合物溶液に浸漬する方法等が挙げられる。上記非架橋性高分子粒子に上記単量体混合物を吸収させる際に、有機溶媒等を添加すると、吸収効率が増大する場合がある。また、上記非架橋性高分子粒子に上記単量体混合物を吸収させる際に、上記単量体混合物と共に、本発明1と同様の重合開始剤を吸収させることもできる。
【0034】
上記単量体混合物を吸収した非架橋性高分子粒子を、必要に応じて添加される分散剤等の各種の添加剤が添加された水、有機溶媒、又は、これらの混合物等の分散媒に分散させ、上記重合開始剤の存在下で加温等により重合反応を行うことにより、非イオン性の親水性架橋重合体が得られる。この際の添加剤としては、本発明1と同様の添加剤を用いることができる。
【0035】
上記のいずれかの方法により得られた非イオン性の親水性架橋重合体に、該非イオン性の親水性架橋重合体が有する反応性官能基と反応するイオン交換基を有する化合物を反応させることにより、本発明のカラム充填剤が得られる。
【0036】
上記非イオン性の親水性架橋重合体にイオン交換基を有する化合物を反応させる方法は、公知の化学反応による技術を用いることができる。下記に例示する方法は全て公知の化学反応であり、上記非イオン性の親水性架橋重合体の分解等の反応を伴わない条件であれば、公知の反応を限定なく用いることができる。
【0037】
上記非イオン性の親水性重合体の非イオン性の親水性基が水酸基である場合、例えば、ブロモエタンスルホン酸ナトリウム等のハロゲン化エタンスルホン酸や、クロロ酢酸ナトリウム等のハロゲン化酢酸等を、上記イオン交換基を有する化合物として用いれば、これらの化合物を水酸化アルカリ水溶液中で反応させることにより、上記非イオン性の親水性重合体に上記イオン交換基を導入することができる。
【0038】
上記非イオン性の親水性重合体の非イオン性の親水性基が水酸基である場合、例えば、イオン交換基を有するアルデヒド化合物を上記イオン交換基を有する化合物として用いれば、酸触媒下にてアセタール反応をさせることにより、上記非イオン性の親水性重合体に上記イオン交換基を導入することができる。
【0039】
上記非イオン性の親水性重合体の非イオン性の親水性基が水酸基である場合、例えば、トリカルバニル酸、ブタンテトラカルボン酸等の多官能カルボン化合物を上記イオン交換基を有する化合物として用いれば、水酸基の脱水反応によるエステル化反応をさせることにより、上記非イオン性の親水性重合体に上記イオン交換基を導入することができる。
【0040】
上記非イオン性の親水性重合体の非イオン性の親水性基が水酸基である場合、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等を上記イオン交換基を有する化合物として用いれば、これらの化合物を水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中で反応させることにより、上記非イオン性の親水性重合体にスルホン酸基を導入することができる。
【0041】
上記非イオン性の親水性重合体の非イオン性の親水性基がエポキシ基、グリシジル基、又は、アミノ基である場合、例えば、非イオン性の親水性重合体に、エピクロルヒドリンやトリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物を水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中で反応させてエポキシ化した後、硫酸ナトリウムやタウリン、グリコール酸等のカチオン交換基を有する化合物を反応させる方法や、三フッ化ホウ素エーテラートを結合した後、亜硫酸ナトリウム水溶液中で加熱処理する方法等により上記非イオン性の親水性重合体に上記イオン交換基を導入することができる。同様に、水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中に塩酸2−クロロトリエチルアミン水溶液を添加することにより、3級アミノ基を導入することができる。
なお、上記非イオン性の親水性架橋重合体がエポキシ基やグリシジル基を有する場合には、そのままイオン交換基を有する化合物と反応させてもよい。
【0042】
本発明のカラム充填剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は50μmである。上記平均粒子径が上記範囲外であると、ヘモグロビン類のピークがブロードになり易くなり、特に長期間使用した場合のブロード化現象が顕著になって測定精度が低下することがある。上記非イオン性の親水性架橋重合体の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は20μmである。
【0043】
本発明のカラム充填剤の粒子径のCV値は特に限定されないが、好ましい上限は10%である。上記粒子径のCV値が10%を超えると、ヘモグロビン類のピークがブロードになり易くなり、特に長期間使用した場合のブロード化現象が顕著になって測定精度が低下することがある。上記粒子径のCV値のより好ましい上限は5%である。
なお、本明細書において粒子径のCV値とは、下記式(1)により求められる数値のことである。
粒子径のCV値(%)=(σ/Dn)×100 (1)
上記式(1)中、σは粒子径の標準偏差を表し、Dnは平均粒子径を表す。
【0044】
ヘモグロビン類測定用カラム充填剤を製造する方法であって、少なくとも、非イオン性の架橋性単量体と反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体とを含有する単量体混合物を、上記単量体混合物は溶解するが上記単量体混合物を重合して得られた非イオン性の親水性架橋重合体は溶解しない溶媒中において、重合開始剤の存在下で重合することにより非イオン性の親水性架橋重合体を得る工程と、上記非イオン性の親水性架橋重合体に、上記非イオン性の親水性架橋重合体が有する反応性官能基と反応するイオン交換基を有する化合物を反応させてカラム充填剤を得る工程とを有するものであり、上記非イオン性の架橋性単量体は、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類からなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルであり、かつ、上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、及び、アルデヒド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルであるヘモグロビン類測定用カラム充填剤の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0045】
ヘモグロビン類測定用カラム充填剤を製造する方法であって、少なくとも、非架橋性高分子粒子に非イオン性の架橋性単量体と反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体とを含有する単量体混合物を吸収させた後、重合開始剤の存在下で重合することにより非イオン性の親水性架橋重合体を得る工程と、上記非イオン性の親水性架橋重合体に、上記非イオン性の親水性架橋重合体が有する反応性官能基と反応するイオン交換基を有する化合物を反応させてカラム充填剤を得る工程とを有するものであり、上記非イオン性の架橋性単量体は、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類からなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルであり、かつ、上記反応性官能基を有する非イオン性の親水性単量体は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、及び、アルデヒド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルであるヘモグロビン類測定用カラム充填剤の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0046】
本発明のヘモグロビン類測定用カラム充填剤を用いる液体クロマトグラフィーによるヘモグロビンA1cの測定方法もまた、本発明の1つである。
本発明のヘモグロビン類測定用カラム充填剤を充填したカラムを、溶離液送液用のポンプ、サンプラ、検出器等を備えた公知のHPLCシステムに接続し、血液試料を用いることで ヘモグロビンA1cの測定を行なうことができる。
【0047】
本発明のヘモグロビンA1cの測定方法に用いる溶離液は特に限定されないが、公知の緩衝液を用いることが好ましい。
上記緩衝液は特に限定されず、例えば、有機酸及び有機酸の塩類、アミノ酸類、無機酸及びその塩類、グッドの緩衝液類等が挙げられる。
上記有機酸は特に限定されず、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
上記アミノ酸類は特に限定されず、例えば、グリシン、タウリン、アルギニン等が挙げられる。
上記無機酸は特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等が挙げられる。
また、上記緩衝液は、必要に応じて、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物等を適宜添加してもよい。
【0048】
上記緩衝液の塩濃度は特に限定されないが、好ましい下限は10mmol/L、好ましい上限は1000mmol/Lである。上記緩衝液の塩濃度が10mmol/L未満であると、イオン交換反応が行なわれず、ヘモグロビン類を分離することができなくなることがある。上記緩衝液の塩濃度が1000mmol/Lを超えると、塩が析出しシステムに悪影響を及ぼすことがある。
【0049】
本発明のヘモグロビンA1cの測定方法を用いれば、ヘモグロビンA1cに加えて、ヘモグロビンAo、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)、ヘモグロビンA2等のヘモグロビン類を分離することができる。
また、上記のヘモグロビン類に加えて、異常ヘモグロビン類を測定することができる。
本発明のヘモグロビン類測定用カラム充填剤を用いる液体クロマトグラフィーによるヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法もまた、本発明の1つである。
上記異常ヘモグロビン類としては、具体的には例えば、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC等が挙げられる。