【実施例】
【0026】
[試験例1]
<保存効力試験用実施例の調製>
α遮断薬もしくはβ遮断薬(カルテオロール塩酸塩、ベタキソロール塩酸塩、ニプラジロール、チモロールマレイン酸塩、ブナゾシン塩酸塩)のうち1種類を選択し、所定量を秤量し、さらに所定量のホウ酸と共に滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。溶解しない場合は2Nの塩酸を添加し、溶解した。ここに、最終的に調製された製剤の浸透圧比が0.95〜1.04になるように所定量のNaClを添加し溶解した。さらに、1N水酸化ナトリウムを添加し、β遮断薬を含有する水溶液のpHは6.9に、ブナゾシン塩酸塩を含有する水溶液のpHは6.0に調整した。ここに滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、実施例の点眼用水性組成物を調製した。
【0027】
<比較例の調製:ホウ酸を添加しない薬液>
ホウ酸を使用しないこと以外は、上に記載した実施例の点眼用水性組成物を調製したのと同様にして比較例の点眼用水性組成物を調製した。
【0028】
<比較例の調製:ホウ酸基剤>
所定量のホウ酸を滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。ここに、最終的に調製された製剤の浸透圧比が0.95〜1.04になるように所定量のNaClを添加し溶解した。さらに、1N水酸化ナトリウムを添加し、β遮断薬の比較用製剤とする場合はpH6.9に、ブナゾシン塩酸塩の比較用製剤とする場合はpH6.0に調整した。ここに滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、比較用の点眼用水性組成物を調製した。
【0029】
前述で調製した5種類の薬剤をそれぞれ含む点眼用水性組成物の保存効力は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠して評価した。調製した点眼ボトル中の組成物(実施例1及び比較例1〜3)1mL当たり10
5〜10
6個の生菌数になるように指標菌5株、Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus aureus, Candida albicans, Aspergillus nigerを接種、混合した。次に点眼ボトルを遮光下で20〜25℃に保存し、14日後及び28日後に生菌数を測定した。指標菌5株の生菌数において、細菌あるいは真菌の判定基準は次のように従った。細菌であるEscherichia coli, Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus aureusについては、14日後に接種菌数の0.1%以下であり、かつ28日後に、14日後のレベルと同等もしくはそれ以下の場合を適合とした。真菌であるCandida albicans, Aspergillus nigerについては、14日後に接種菌数と同レベルもしくはそれ以下であり、かつ28日後においても、接種菌数と同レベル若しくはそれ以下の場合を適合とした。細菌及び真菌の両方において適合である場合に、保存効力試験に適合し、保存効力を有すると判断した。
各組成物のαもしくはβ遮断薬濃度、ホウ酸濃度及び保存効力試験の結果を表1〜5に示した。表1〜5では、試験菌であるEscherichia coli, Pseudomonas aeruginosaをそれぞれE.coliあるいはP.aeruginosaと略記した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
表1〜表5に示されるように、αもしくはβ遮断薬あるいはホウ酸のいずれか一方しか含まない場合は、保存効力を示さなかった。αもしくはβ遮断薬とホウ酸とを配合した場合に保存効力を示した。
なお、検討した各組成物において、Pseudomonas aeruginosaあるいはEscherichia coliのいずれか一方に保存効力を示した組成物は、Staphylococcus aureus、 Candida albicans及び Aspergillus nigerの3種すべてにも保存効力を示した。
【0036】
本発明のβ遮断薬とホウ酸を含む組成物において、次のようなことが示された。
0.25w/v%のβ遮断薬と0.4w/v%のホウ酸を配合した組成物は、Pseudomonas aeruginosaとEscherichia coliの両方に保存効力を示した。しかし、1.0w/v%のβ遮断薬のみもしくは1.5w/v%のホウ酸のみの組成物では、Pseudomonas aeruginosaとEscherichia coliのいずれにも保存効力を示さなかった。
β遮断薬とホウ酸を組み合わせることによって、予期せぬ優れた保存効力を示すことが明らかとなった。
【0037】
0.14w/v%のブナゾシン塩酸塩と0.4w/v%のホウ酸を配合した組成物はPseudomonas aeruginosaとEscherichia coliの両方に保存効力を示したが、0.3w/v%のブナゾシン塩酸塩単独添加もしくは1.5w/v%のホウ酸単独添加の組成物では保存効力を示さなかった。
α遮断薬とホウ酸を組み合わせることによって、予期せぬ優れた保存効力を示すことが明らかとなった。
【0038】
[実施例1]
チモロールマレイン酸塩、ホウ酸、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウム、NaClをそれぞれ所定量滅菌精製水70 mLに添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムもしくは1N塩酸を添加し、pH7.4に調整した。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例1)を調製した。なお、浸透圧比は1.0であった。
【0039】
[比較例1及び2]
チモロールマレイン酸塩もしくはホウ酸、及びリン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウム、NaClをそれぞれ所定量滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムもしくは1N塩酸を添加し、pH7.4に調整した。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、比較例の点眼用水性組成物(比較例1及び2)を調製した。なお、浸透圧比は1.0であった。
【0040】
[比較例3]
リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウム、NaClをそれぞれ所定量滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムもしくは1N塩酸を添加し、pH7.4に調整した。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、比較例の点眼用水性組成物(比較例3)を調製した。なお、浸透圧比は1.0であった。
【0041】
[試験例2]
実施例1および比較例1〜3の点眼用水性組成物の保存効力は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠して試験例1と同様に評価した。各組成物の処方と保存効力試験の結果を表6に示した。
【0042】
【表6】
【0043】
チモロールマレイン酸塩とホウ酸を含む本発明の点眼用組成物は保存効力試験に適合したが、チモロールマレイン酸塩もしくはホウ酸のいずれか一方を含む、あるいは両方とも含まない比較例の点眼用組成物は保存効力試験に適合しなかった。この結果より、β遮断薬とホウ酸を配合した点眼用水性組成物は、保存剤を含まなくても保存効力があることが示された。
【0044】
[実施例2〜4]
カルテオロール塩酸塩、ホウ酸をそれぞれ所定量滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、所定のpHに調整した。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例2〜4)を調製した。なお、浸透圧比は1.0であった。
【0045】
[試験例3]
実施例2〜4の点眼用水性組成物の保存効力は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠して、試験例1と同様に評価した。各組成物の処方と保存効力試験の結果を表7に示した。カルテオロール塩酸塩とホウ酸を含む本発明の点眼用水性組成物はいずれも保存効力試験に適合した。
【0046】
【表7】
【0047】
[実施例5A]
ニプラジロールとホウ酸をそれぞれ所定量滅菌精製水70mLに添加し、さらに1N塩酸をニプラジロールが溶解するまで添加した。ここに所定量のホウ砂を添加し、溶解した。そして1N水酸化ナトリウムを添加し、pH7.0に調整した。浸透圧比は1.0であった。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例5A)を調製した。
【0048】
[実施例5B]
チモロールマレイン酸塩、ドルゾラミド塩酸塩、ホウ酸をそれぞれ所定量滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、pH5.9に調整した。ここにさらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。なお、浸透圧比は1.0であった。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例5B)を調製した。
【0049】
[実施例6及び7]
所定量のメチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトローズ(登録商標)、品種:SM、粘度グレード(mPa・s):4、以下、SM-4と表示。)に85℃に加熱した滅菌精製水70 mLを添加し攪拌することでメチルセルロースを滅菌精製水中に分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。ここに所定量のチモロールマレイン酸塩、ドルゾラミド塩酸塩(実施例7)、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、マンニトール(以下、マンニットと表示。) 、ポリビニルピロリドン (以下、PVP K25と表示) を添加し、溶解するまで撹拌した。さらに、所定量のヒドロキシエチルセルロース(和光純薬製、以下HECと略す。) を添加し、溶解するまで撹拌した。すべての成分の溶解を確認後、ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、pH6.9に調整した。さらに、滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例6及び7)を調製した。
【0050】
[実施例8]
所定量のSM-4に85℃に加熱した滅菌精製水70mLを添加し攪拌することでSM-4を滅菌精製水中に分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。ここに所定量のチモロールマレイン酸塩、ドルゾラミド塩酸塩、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、マクロゴール4000を添加し、溶解するまで撹拌した。すべての成分の溶解を確認後、ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、pH6.9に調整した。さらに、滅菌精製水を添加し、100mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例8)を調製した。
【0051】
[試験例4]
実施例5A,5B,6〜8の点眼用水性組成物の保存効力は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠し、試験例1と同様に評価した。各組成物の処方と保存効力試験の結果を表8に示した。本発明の点眼剤は何れも保存効力試験に適合した。
【0052】
【表8】
【0053】
[実施例9〜11]
ラタノプロスト、トラボプロストあるいはビマプロストをそれぞれ所定量と、0.5gのポリソルベート80を滅菌精製水70mLに添加し、溶解した。そして、0.68gのチモロールマレイン酸塩及び1.6gのホウ酸を添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、所定のpHに調整した。さらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。なお、浸透圧比は1.0であった。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例9〜11)を調製した。
【0054】
[実施例12]
0.5gのポリソルベート80及び0.12gのイソプロピルウノプロストンを滅菌精製水70mLに添加し、50℃に加温しながら溶解し、溶解後室温まで放冷した。そして、0.68gのチモロールマレイン酸塩及び1.6gのホウ酸を添加し、溶解した。ここに1N水酸化ナトリウムを添加し、pH6.0に調整した。さらに、滅菌精製水を添加し、100 mLとし、メンブレンフィルターでろ過をした。なお、浸透圧比は1.0であった。これを5 mLずつプラスチック製点眼ボトルに充填し、本発明の点眼用水性組成物(実施例12)を調製した。
【0055】
[試験例5]
実施例9〜12の点眼用水性組成物の保存効力は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠し、試験例1と同様に評価した。各組成物の処方と保存効力試験の結果を表9に示した。本発明の点眼剤は何れも保存効力試験に適合した。
【0056】
【表9】
【0057】
[試験例6]
sofZia
TM(ALCON)は、ホウ酸、ソルビトール及び塩化亜鉛を含有し、塩化ベンザルコニウムなど一般的な保存剤を含まないイオン性緩衝系であり、下記5菌株に対する保存効力が評価されている。
本発明の組成物においても、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に適合するだけでなく、次の菌株に対しても保存効力を示すかどうかを確認した。
【0058】
<試験菌>
Staphylococcus epidermidis JCM2414 (以下、S. epidermidis)
Haemophilus influenziae ATCC49766 (以下、H. influenziae)
Ralstonia pickettii JCM5969 (以下、R. pickettii)
Streptococcus pneumoniae ATCC6303(以下、S. pneumoniae)
Fusarium solani JCM11488 (以下、F. solani)
上記のうち、S. epidermidis、H.influenzae、S. pneumoniae、Fusarium solaniは眼科感染症の原因菌として著名である。S. epidermidisは、主として鼻腔や表皮に存在し、慢性涙嚢炎の原因菌である。H.influenzaeは、乳幼児の急性涙嚢炎の原因菌である。S. pneumoniae は、成人及び3歳以上の小児において細菌性眼窩蜂巣炎の原因菌となる。F. solaniは、角膜真菌症の原因菌である。
Ralstonia pickettiiは、0.2μmフィルターを通過可能であり、院内感染の原因菌として報告されている。
【0059】
<試験菌液の調製>
S. epidermidis, H. influenziae, R. pickettii、S. pneumoniaeの4種は細菌であり、 F. Solaniは真菌である。
S. epidermidisおよびS. pnuemoniaeは、GAM液体培地5mLに接種し、35℃で18時間培養した。
H. influenziaeは、5% FILDES EXTRACTを添加したMueler Hinton broth 5 mLに接種し、35℃で18時間培養した。
R. pickettiiは、Mueler Hinton broth 5 mLに接種し、30℃で18時間培養した。
前記4菌種を培養終了後、遠心して菌体を集めた。5 mL滅菌生理食塩水にて菌体を懸濁後、再び遠心し菌体を集めた。菌体を10 mLの滅菌生理食塩水に懸濁し、試験菌液とした。
F. solaniは、サブローブドウ糖寒天培地に接種し、25℃で5日間培養後、0.05 % Tween80を添加した滅菌生理食塩水5 mLで胞子を集め、胞子懸濁液を調製し、試験菌液とした。
【0060】
<実施例の調製方法>
試験に使用した実施例の成分を表10に示す。実施例13-16の組成物は実施例6と同様にして調製した。
比較例4はリズモン(登録商標)TG点眼薬0.25%(わかもと製薬(株)製品)、比較例5はニプラジロール点眼液0.25%「わかもと」(わかもと製薬(株)製品)を用いた。比較例4は、薬液中に、チモロールマレイン酸0.25%の他、メチルセルロース、マクロゴール4000、クエン酸ナトリウム水和物、pH調節剤、防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含む。比較例5は、ニプラジロール0.25%、ホウ酸、ホウ砂、エデト酸ナトリウム水和物、希塩酸を含む。
実施例13-16及び比較例4は5 mL ポリプロピレン製点眼容器に封入し、比較例5はフィルターを兼ね備えた無菌容器である5 mL ポリプロピレン製点眼容器(NP容器)に封入してあった。
【0061】
【表10】
【0062】
<試験手順>
比較例4,5及び実施例13-16の薬液5 mL中に、菌数約10
5から10
6CFU/mLになるように試験菌液を添加した。いずれも点眼容器を遮光下、25℃で保存した。試験開始から0、14および28日後に生菌数を測定した。生菌数測定は、第十五改正 日本薬局方解説書 一般試験法 微生物限度試験法 生菌数試験におけるカンテン平板混釈法に準拠した。試験液は、0.05 mLを滅菌生理食塩水4.95mLに添加するという操作(100倍希釈)を繰り返し希釈し、生菌数測定用寒天培地に接種した。生菌数測定用寒天培地は、S. epidermidisはブドウ球菌寒天培地、H. influenziaeは、5% FILDES EXTRACT添加したMueler Hinton broth寒天培地、R. pickettiiは、Mueler Hinton broth寒天培地、F. solaniは、サブローブドウ糖寒天培地を用いた。培養温度は、S. epidermidisおよびH. influenziaeは35℃で24時間、R. pickettiiは30℃で24時間、F. solaniは25℃で3日間培養後、検出されたコロニー数をカウントし、生菌数を算出した。
【0063】
<試験判定>
試験例1で用いた第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠して評価した。細菌である、S. epidermidis 、H. influenziae、S. pneumoniae、R. pickettiiにおいては、 14および28日後の生菌数について、接種菌数の0.1%以下である場合を適合とした。真菌であるF. solaniは、接種した菌数と同レベルもしくはそれ以下に留まった場合を適合とした。
【0064】
実施例13-16は、いずれもすべての菌に対して、適合であった。比較例4及び比較例5も同様に全ての菌に対して適合であった。本発明の組成物である実施例13-16は、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を含んでおらず、通常の点眼容器に充填したものである。本発明の組成物は、市販製品と同等の保存効力を示し、また、保存効力試験に定められた一般的な試験菌だけでなく、眼科感染症として著名な原因菌や、院内感染の原因菌となる微生物に対しても十分な保存効力を示すことが明らかとなった。
【0065】
[試験例7]
次に、臨床分離株である12種類の菌株に対して保存効力試験を行なった。
【0066】
<試験菌>
Candida parapsilosis (以下、C. parasilosis)
Candida guilliermondii (以下、C. gulliermondii)
Kocuria kristinae (以下、K. kristinae)
Citrobacter freundi (以下、C. freundi)
Brevibacterium sp.
Stenotrophomonas maltophilia (以下、S.maltophilia)
Alcaligenes xylosoxidans (以下、A. xylosoxidans)
Staphylococcus warneri (以下、S. warneri)
Staphylococcus aureus (以下、S. aureus)
Staphylococcus capitis (以下、S. capitis)
Bacillus sp.
Propionibacterium acnes(以下、P. acnesとする)
【0067】
Candida属はヒトの口腔、腸管、および皮膚の常在菌である。
C. parapsilosisは、Candida albicansほど頻繁に分離されるものではないが、カンジダ症の原因菌の1つである。
C. gulliermondiiは、無形成貧血症患者から分離された報告はあるが、病原菌としてはまれである。
K. kristinaeは人の頭皮に存在し、頭皮の水分調節やpHバランスに関与する常在菌として知られている。
C. freundiiはヒト、動物の腸内および自然界に広く分布し、日和見感染を起こす。尿路感染、呼吸器感染、手術部位感染、血流感染を起因する。
Brevibacterium sp.は、主に海水に生息するグラム陽性細菌であり、耐塩性に優れている。
S.maltophiliaは、土壌及び汚水に存在する多剤耐性菌であり、人工呼吸器から感染することが確認されている肺炎菌である。
A. xylosoxidansは、グラム陰性、非発酵性、運動性菌で、環境に広く分布し、感染患者の水環境から分離される。
S. warneri は起炎菌としての頻度は高くないものの,感染性心内膜炎や骨髄炎,脳脊髄液シャント感染,外傷後髄膜炎など重篤な感染症を起こすことが知られている.
S.aureusは、眼角眼瞼結膜炎、急性涙嚢炎、眼窩蜂巣炎の原因菌であり、また難治性の結膜炎を引き起こすMRSAとしての報告もある。
S.capitisは、表皮ブドウ球菌として頭皮の常在菌である。また、肺炎や尿路感染症の原因菌としての報告もある。
Bacillus sp.は、好アルカリ性細菌である。
Propionibacterium acnesは、外傷による嫌気性菌眼内炎の原因菌として検出頻度が高い。
【0068】
<試験菌液の調製>
P. acnesを除く上記細菌である9株(K. kristinae、C. freundi、Brevibacterium sp.、 S.maltophilia、A. xylosoxidans、S. Warneri、S. aureus、S. capitis、Bacillus sp.)及びC. parapsilosis、C. guilliermondiiの真菌2種は、Brain Heart Infusion液体培地5mLに接種し、35℃で24時間培養した。P. acnesは、GAM液体培地5mLに接種し、35℃で24時間培養した。培養終了後、遠心し菌体を集めた。
5mL滅菌生理食塩水にて菌体を懸濁後、再び遠心し菌体を集めた。菌体を10 mLの滅菌生理食塩水に懸濁し試験菌液とした。
【0069】
<実施例の調製>
試験例6に示した実施例13-16の組成物を用いて試験を実施した。
【0070】
<試験手順>
それぞれの本発明の組成物5mL液中に試験菌液を菌数約10
5から10
6CFU/mLになるように接種した。サンプルは遮光下、25℃で保存した。0、14および28日後に生菌数を測定した。生菌数測定は、第十五改正 日本薬局方解説書 一般試験法 微生物限度試験法 生菌数試験におけるカンテン平板混釈法に準拠した。試験菌液は、0.05mLを滅菌生理食塩水4.95mLに添加するという操作(100倍希釈)を繰り返し希釈し、生菌数測定用寒天培地に接種した。生菌数測定用寒天培地は、P. acnesを除く上記細菌9株あるいはC. parapsilosis、C. guilliermondiiの真菌2種は、5 % 馬脱繊血を添加したトリプチケース・ソイブロス寒天培地、P. acnesは、GAM寒天培地を用いて、35℃で24時間培養した。P. acnesは、35℃で48時間嫌気培養した。
その後、いずれにおいても検出されたコロニー数をカウントし、生菌数を算出した。
【0071】
<判定基準>
試験例1で用いた第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験に準拠して評価した。細菌は、14および28日後の生菌数について、接種菌数の0.1%以下の場合を合格とした。真菌は、接種した菌数と同レベルもしくはそれ以下に留まった場合を適合とした。
【0072】
<試験結果の判定>
本発明のいずれの組成物もすべての菌に対して合格となった。本発明の組成物は、第十五改正 日本薬局方解説書の参考情報に記載されている保存効力試験における試験菌だけでなく、複数の臨床分離株に対しても保存効力を示すことが明らかとなった。
これは、本発明の組成物が医薬品として普及した場合において、実際の使用に基づき懸念される汚染や微生物の混入があった場合であっても、十分な保存効力を保持していることを示す。
つまり、本発明において、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を添加しないβ遮断薬あるいはα遮断薬とホウ酸の組成物を汎用の点眼容器(内容液を無菌的に吐出可能とするような構造上の工夫を施していないもの)に充填した場合に、広範囲の微生物において保存効力を維持することが可能であった。