特許第5901089号(P5901089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5901089
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】認知症判定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0402 20060101AFI20160324BHJP
   A61B 5/0452 20060101ALI20160324BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   A61B5/04 310L
   A61B5/04 312C
   A61B5/04 312A
   A61B10/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-50850(P2015-50850)
(22)【出願日】2015年3月13日
【審査請求日】2015年10月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504254998
【氏名又は名称】株式会社クロスウェル
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】永谷 基
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244971(JP,A)
【文献】 特開2010−082057(JP,A)
【文献】 特開2012−045162(JP,A)
【文献】 特開2014−061079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症が疑われる被診断者の心電を測定する心電測定手段と、
前記被診断者に対して負荷試験を指示する指示手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出する副交感神経活動度指標算出手段と、
前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出する交感神経活動度指標算出手段と、
前記指示手段により負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させ、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備えた認知症判定装置。
【請求項2】
前記副交感神経活動度指標算出手段が、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける高周波帯域の積分値である高周波成分HFの値を算出して、前記副交感神経活動度指標とするHF成分算出手段である請求項1記載の認知症判定装置。
【請求項3】
前記副交感神経活動度指標算出手段が、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける高周波帯域の積分値である高周波成分HFの値、心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、
【数5】
という式により高周波成分変動係数CCV(HF)を算出して、前記副交感神経活動度指標とするCCV(HF)算出手段である請求項1記載の認知症判定装置。
【請求項4】
前記交感神経活動度指標算出手段が、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける低周波帯域の積分値である低周波成分LFの値、心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、
【数6】
という式により低周波成分変動係数CCV(LF)を算出して、前記交感神経活動度指標とするCCV(LF)算出手段である請求項1から3のいずれか1項記載の認知症判定装置。
【請求項5】
前記交感神経活動度指標算出手段が、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける低周波帯域の積分値である低周波成分LFの値を算出して、前記交感神経活動度指標とするLF成分算出手段である請求項1から3のいずれか1項記載の認知症判定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記指示手段により負荷試験が指示される前に算出された前記副交感神経活動度指標の値と、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記副交感神経活動度指標の値がともに予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性がより高い旨を前記表示手段に表示させる請求項1から5のいずれか1項記載の認知症判定装置。
【請求項7】
心電測定装置により測定された認知症が疑われる被診断者の心電データを受け付ける受付手段と、
前記被診断者に対して負荷試験を指示する指示手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記受付手段により受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出する副交感神経活動度指標算出手段と、
前記受付手段により受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出する交感神経活動度指標算出手段と、
前記指示手段により負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させ、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備えた認知症判定装置。
【請求項8】
心電測定装置により測定された認知症が疑われる被診断者の心電データを受け付けるステップと、
受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出するステップと、
受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出するステップと、
前記被診断者に対して負荷試験を指示するステップと、
負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を表示させ、負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を表示させるステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症が疑われる患者の認知症の種別を判定するための認知症判定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口の高齢化に伴い認知症の患者が増加して大きな問題となってきている。この認知症には、原因の違いにより様々な種別が存在している。認知症の種別のうち最も割合が多いのがアルツハイマー型認知症であり、次に多いのがレビー小体型認知症である。認知症には他にも脳血管性の認知症等の他のタイプの認知症も存在するが、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の2種類だけで認知症患者の約70%程度を占めている。
【0003】
そして、認知症の治療にはその種別により治療方法や投薬する薬の種類等が替わってくる。そのため、認知症の治療には、認知症の種別を確実に判定して、治療対象の患者がどの種別の認知症なのかを把握する必要がある。
【0004】
このような認知症の種別を判定するための方法の一例が、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている方法は、認知症が疑われる患者の交感神経皮膚反応の活動電位値が基準値以下であるかにより、認知症の種別がアルツハイマー型またはレビー小体型であると判定するものである。
【0006】
また、特許文献2に開示されている方法は、認知症が疑われる患者の心拍データから得られたLF/HF値が基準以下であるか否かにより、認知症の種別がアルツハイマー型またはレビー小体型であると判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−082057号公報
【特許文献2】特開2011−244971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したような先行技術では、患者の安静時の単一の値に基づいて、認知症の種別がアルツハイマー型であるのかまたはレビー小体型であるのかを判定するものであるため、かならずしも高い精度で認知症の種別を判定することができるものではなかった。
【0009】
認知症の診断を正確に行うためにはMRI装置等を用いた検査を行う必要がある。しかし、このような機器の導入には多くの費用が必要であり、また検査費用も高額なものとなる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高価な装置等を必要とすることなく、認知症が疑われる患者の認知症の種別を高い精度で判定することが可能な認知症判定装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[認知症判定装置]
上記目的を達成するために、本発明の認知症判定装置は、認知症が疑われる被診断者の心電を測定する心電測定手段と、
前記被診断者に対して負荷試験を指示する指示手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出する副交感神経活動度指標算出手段と、
前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出する交感神経活動度指標算出手段と、
前記指示手段により負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させ、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させる制御手段とを備えている。
【0012】
本発明では、認知症が疑われる被診断者の副交感神経活動度指標および交感神経活動度指標を測定しつつ、指示手段により被診断者に対して負荷試験を指示するだけで、安静時の副交感神経活動度指標によりアルツハイマー型認知症であるか否かを判定し、負荷試験前後の交感神経活動度指標の差である交感神経活動度指標変化量に基づいてレビー小体型認知症であるか否かが判定される。よって、本発明によれば、高価な装置等を必要とすることなく、認知症が疑われる患者の認知症の種別を高い精度で判定することが可能になる。
【0013】
また、本発明の認知症判定装置では、前記副交感神経活動度指標算出手段を、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける高周波帯域の積分値である高周波成分HFの値を算出して、前記副交感神経活動度指標とするHF成分算出手段とするようにしても良い。
【0014】
また、本発明の認知症判定装置では、前記副交感神経活動度指標算出手段を、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける高周波帯域の積分値である高周波成分HFの値、心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、
【数1】
【0015】
という式により高周波成分変動係数CCV(HF)を算出して、前記副交感神経活動度指標とするCCV(HF)算出手段とするようにしても良い。
【0016】
また、本発明の認知症判定装置では、前記交感神経活動度指標算出手段を、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける低周波帯域の積分値である低周波成分LFの値、心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、
【数2】
【0017】
という式により低周波成分変動係数CCV(LF)を算出して、前記交感神経活動度指標とするCCV(LF)算出手段とするようにしても良い。
【0018】
また、本発明の認知症判定装置では、前記交感神経活動度指標算出手段を、前記心電測定手段により測定された心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける低周波帯域の積分値である低周波成分LFの値を算出して、前記交感神経活動度指標とするLF成分算出手段とするようにしても良い。
【0019】
また、本発明の認知症判定装置では、前記制御手段を、前記指示手段により負荷試験が指示される前に算出された前記副交感神経活動度指標の値と、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記副交感神経活動度指標の値がともに予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性がより高い旨を前記表示手段に表示させるようにしても良い。
【0020】
本発明によれば、負荷試験が指示される前に算出された診断者が安静時の副交感神経活動度指標の値だけでアルツハイマー型認知症であるか否かを判定するのではなく、負荷試験が指示された後に算出された副交感神経活動度指標の値を用いてアルツハイマー型認知症であるか否かを判定することにより、より高い精度で認知症が疑われる患者の認知症の種別を判定することが可能になる。
【0021】
また、本発明の他の認知症判定装置は、心電測定装置により測定された認知症が疑われる被診断者の心電データを受け付ける受付手段と、
前記被診断者に対して負荷試験を指示する指示手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記受付手段により受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出する副交感神経活動度指標算出手段と、
前記受付手段により受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出する交感神経活動度指標算出手段と、
前記指示手段により負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させ、前記指示手段により負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を前記表示手段に表示させる制御手段とを備えている。
【0022】
[プログラム]
また、本発明のプログラムは、心電測定装置により測定された認知症が疑われる被診断者の心電データを受け付けるステップと、
受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標を算出するステップと、
受け付けられた心電データにおける心拍変動を周波数解析した結果得られるパワースペクトルに基づいて、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標を算出するステップと、
前記被診断者に対して負荷試験を指示するステップと、
負荷試験が指示される前の前記被診断者が安静時状態において算出された前記副交感神経活動度指標の値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、当該被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高い旨を表示させ、負荷試験が指示された後に算出された前記交感神経活動度指標の値と、負荷試験が指示される前に算出された前記交感神経活動度指標の値との差である交感神経活動度指標変化量が予め設定された第2の基準値以下の場合に、当該被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高い旨を表示させるステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明したように、本発明によれば、高価な装置等を必要とすることなく、認知症が疑われる患者の認知症の種別を高い精度で判定することが可能になるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態の認知症判定装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態におけるLF、HFを算出する際の心拍変動測定方法を示す図である。
図3】本発明の一実施形態におけるLF、HFを算出する際のスペクトル分析した一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態における被診断者の状態変化を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態における認知症判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】アルツハイマー型認知症か否かの判定方法の詳細を説明するためのフローチャートである。
図7】レビー小体型認知症か否かの判定方法の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8】アルツハイマー型認知症の患者の測定データ例を示す図である。
図9】レビー小体型認知症の患者の測定データ例を示す図である。
図10】健常者の測定データ例を示す図である。
図11図8に示した測定データに基づく表示部22の表示例を示す図である。
図12図9に示した測定データに基づく表示部22の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態の認知症判定装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態の認知症判定装置は、図1に示されるように、認知症が疑われる被診断者の心電データを測定するための心電図モニタ(心電測定手段)14と、制御部18と、測定データや等を記憶する記憶部20と、算出された生体情報等や認知症種別の判定結果を表示するための表示部22と、周波数解析部24と、CCV(LF)(Coefficient of Component Variance of Low Frequency power)算出部26、CCV(HF)(Coefficient of Component Variance of High Frequency power)算出部27とから構成されている。
【0027】
心電図モニタ14は、被診断者の例えば喉元にマイナス電極を、左脇腹にプラス電極を、右脇腹にボディアースをそれぞれ装着し、心臓の動きを電気信号として得て心電データとして記録する。
【0028】
周波数解析部24は、心電図モニタ14により測定された心電データに基づいて心拍変動の周波数解析を行うことにより、高周波成分HF、低周波成分LFを求める。
【0029】
つまり、周波数解析部24は、心電モニタ14により測定された心電データを周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける高周波帯域の積分値である高周波成分HFの値を算出して、副交感神経活動度指標とするHF成分算出手段である。
【0030】
また、周波数解析部24は、心電図モニタ14により測定された心電データを周波数解析した結果得られるパワースペクトにおける低周波帯域の積分値である低周波成分LFの値を算出して、交感神経活動度指標とするLF成分算出手段である。
【0031】
次に、周波数解析部24が高周波成分HF、低周波成分LFを算出する具体的な算出方法を説明する。まず、周波数解析部24は、心電図モニタ14から入力された心電データから心拍変動を算出する。この心拍変動の算出は、図2A及びBに示すように、R波と次のR波との間隔をとってR−R間隔を測定し、次に図2C及びDに示すように、測定したR-R間隔データを後方のR波の時間的位置にプロットし、これを補間した後に、等間隔(図2Cの点線)で再サンプリングしたデータを作成することにより行う。そして、周波数解析部24は、作成されたデータに対してスペクトル分析(周波数変換)を行う。ここで、スペクトル分析した一例を図3に示す。次に、周波数解析部24は、低周波成分LF及び高周波成分HFを求める。ここで、低周波成分LFは、0.04〜0.15Hzのパワースペクトル成分の積分値である。また、高周波成分HFは、0.15〜0.40Hzのパワースペクトル成分の積分値である。
【0032】
このようにして周波数解析部24は、心電図モニタ14により測定された心電データから、心拍変動の低周波成分LFおよび高周波成分HFを求める。
【0033】
CCV(LF)算出部26は、周波数解析部24により求められたパワースペクトルのうちの高周波成分LF、および心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、下記の式により低周波成分変動係数CCV(LF)を、交感神経の活動度合いを示す交感神経活動度指標として算出する。
【数3】
【0034】
CCV(HF)算出部27は、周波数解析部24により求められたパワースペクトルのうちの高周波成分HF、および心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、下記の式により高周波成分変動係数CCV(HF)を、副交感神経の活動度合いを示す副交感神経活動度指標として算出する。
【数4】
【0035】
制御部18は、例えばコンピュータからなり、被診断者に対して表示部22を介して、起立負荷等の負荷試験の指示を行う指示手段として機能する。
【0036】
具体的には、本実施形態の認知症判定装置では、認知症の判定対象の被診断者が座っている安静(座位)状態で測定を開始する。そして、制御部18は、図4に示されるように、一定時間、例えば3分間が経過した時に被診断者に対して起立指示を行う。この起立指示が行われるまでの被診断者の状態は安静(座位)状態であるため、この起立指示が行われるまでの測定データは、安静時の測定データとして記憶される。
【0037】
そして、この起立指示に基づき被診断者により起立動作が行われるため、起立指示が行われてから所定の期間、例えば1分間が経過するまでの間は、被診断者の状態は起立時であるものとして扱われる。つまり、この起立指示が行われてから所定期間が経過するまでに測定された測定データは、起立時の測定データとして記憶される。
【0038】
そして、起立指示が行われてから所定時間が経過すると、被診断者の状態は立位状態(または立位安静状態)であるものとして扱われ、この期間において測定された測定データは立位時の測定データとして記憶される。
【0039】
そして、制御部18が、被診断者に対して着席指示を行うと、この着席指示に基づき被診断者が着席動作を行うため、着席指示が行われてから所定の期間が経過するまでの測定データは着席時の測定データとして記憶される。
【0040】
制御部18は、上述したような起立指示および着席指示を出すことにより被診断者に対して起立負荷試験を実施し、この起立負荷試験中のLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)を記憶部20に記憶しておき、これらの値に基づいて被診断者の認知症の種別の判定を行う。
【0041】
なお、本実施形態の認知症判定装置では、副交感神経活動度指標として高周波成分HFを用い、交感神経活動度指標として低周波成分変動係数CCV(LF)を用いて認知症の種別を判定する場合を用いて説明する。
【0042】
ただし、副交感神経活動度指標として高周波成分変動係数CCV(HF)を用いたり、交感神経活動度指標として低周波成分LFを用いるようにしても、同様な方法により認知症の種別の判定を行うことが可能である。
【0043】
なお、本実施形態において、副交感神経活動度指標として高周波成分HFを用い、交感神経活動度指標として低周波成分変動係数CCV(LF)を用いて認知症の種別を判定するようにしている理由については後述する。
【0044】
本実施形態における制御部18は、起立負荷試験を指示する前の被診断者が安静時状態において算出された安静時HFの値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、この被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高いと判定して、その旨を表示部22に表示させる。
【0045】
また、制御部18は、起立負荷試験を指示した後に算出された低周波成分変動係数CCV(LF)の値と、起立負荷試験を指示する前に算出された低周波成分変動係数CCV(LF)の値との差であるΔCCV(LF)を交感神経活動度指標変化量として算出し、このΔCCV(LF)が予め設定された第2の基準値以下の場合に、この被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高いと判定して、その旨を表示部22に表示させる。
【0046】
なお、高周波成分HFと比較する第1の基準値やΔCCV(LF)と比較する第2の基準値は、被診断者の年齢に応じて変化させることが望ましい。
【0047】
ただし、第2の基準値については、年齢による変化が大きくないため、例えば、ΔCCV(LF)が0より小さい場合、つまり起立時CCV(LF)<安静時CCV(LF)の場合に、制御部18は、この被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高いと判定するようにしても良い。そのため、以下の説明においては、制御部18は、ΔCCV(LF)<0であるか否かにより、被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高いか否かを判定するものとして説明する。
【0048】
なお、HFの値と比較する第1の基準値としては、被診断者の年齢に応じて変化させることが望ましいため、記憶部20には、HFの年齢別の基準値を記憶させておくようにして、制御部18は、記憶部20を参照して、被診断者の年齢に応じて第1の基準値を設定して、被診断者がアルツハイマー型認知症の可能性があるか否かの判定を行うようにする。
【0049】
次に、本実施形態における認知症判定装置の動作を図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0050】
まず、自律神経評価の処理を開始する前に、初期設定として被診断者の氏名、年齢、ID番号、性別等の患者情報が制御部18に入力される。すると、制御部18は、記憶部20から被診断者の年齢、性別等に対応したHFの基準値を読み込んで第1の基準値として設定する。
【0051】
そして、被診断者が座っている安静状態において、周波数解析部24は、心電図モニタ14により測定された心電データに基づいて心拍変動の周波数解析を行うことにより、高周波成分HF、低周波成分LFを求める。また、CCV(LF)算出部26は、周波数解析部24により求められた高周波成分LF、および心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、安静時の低周波変動係数CCV(LF)を算出する。また、CCV(HF)算出部27は、周波数解析部24により求められた高周波成分HF、および心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRに基づいて、安静時の高周波変動係数CCV(HF)を算出する(ステップS101)。
制御部18は、この安静時のLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)の値を記憶部20に記憶させる。
【0052】
そして、制御部18は、表示部22等を介して被診断者に対して起立指示を行う(ステップS102)。
【0053】
この制御部18からの起立指示に基づいて被診断者が起立動作を行うため、制御部18は、その際に周波数解析部24により測定された低周波成分LF、高周波成分HFを起立時のLF、HFとし、その際にCCV(LF)算出部26により算出されたCCV(LF)の値を起立時のCCV(LF)とし、CCV(HF)算出部27により算出されたCCV(HF)の値を起立時のCCV(HF)として記憶部20に記憶させる(ステップS103)。
【0054】
そして、一定時間が経過すると(ステップS104)、制御部18は、同様にして周波数解析部24およびCCV(LF)算出部26、CCV(HF)算出部27により測定された値を、それぞれ立位時のLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)として記憶部20に記憶させる(ステップS105)。
【0055】
そして、制御部18は、表示部22等を介して被診断者に対して着席指示を行う(ステップS106)。
【0056】
すると、制御部18は、同様にして周波数解析部24およびCCV(LF)算出部26、CCV(HF)算出部27により測定された値を、それぞれ着席時のLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)として記憶部20に記憶させる(ステップS107)。
【0057】
次に、一連の測定が終了すると、測定部18は、記憶部20に記憶されている、安静時、起立時、立位時、着席時のLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)に基づいて被診断者の認知症の種別判定を行い(ステップS108)、その測定結果・判定結果を表示部22に表示する(ステップS109)。
【0058】
ただし、本実施形態では、制御部18は、安静時、起立時、立位時、着席時のHFの値を副交感神経活動度指標として用いてアルツハイマー型認知症か否かの判定を行い、安静時と起立時のCCV(LF)の値を交感神経活動度指標として用いてレビー小体型認知症か否かの判定を行うものとして説明する。
【0059】
次に、アルツハイマー型認知症か否かの判定方法の詳細を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
なお、以下の説明では被診断者の年齢に応じた第1の基準値が10.0[msec2]に設定されている場合に基づいて説明を行う。
【0061】
先ず、制御部18は、認知症であると疑われる被診断者の安静時のHFの値が10.0以下であるか否かの判定を行う(ステップS301)。
【0062】
そして、安静時のHFの値が10.0より大きい場合(ステップS301においてno)、制御部18は、被診断者はアルツハイマー型認知症ではないと判定する(ステップS302)。
【0063】
そして、安静時のHFの値が10.0以下の場合(ステップS301においてyes)、制御部18は、起立時、立位時、着席時のHFの値も全て10.0以下であるか否かの判定を行う(ステップS302)。
【0064】
そして、起立時、立位時、着席時のHFの値のいずれかが10.0より大きく全ての値が10.0以下というわけではない場合(ステップS302においてno)、制御部18は、被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性があると判定する(ステップS304)。
【0065】
また、起立時、立位時、着席時のHFの値も全て10.0以下である場合(ステップS302においてyes)、制御部18は、被診断者は重症なアルツハイマー型認知症である可能性があると判定する(ステップS305)。
【0066】
つまり、制御部18は、安静時のHFの値が10.0以下であれば、被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性があると判定し、起立時、立位時、着席時のHFの値も全て10.0以下である場合には、被診断者はより重症なアルツハイマー型認知症である可能性があると判定する。
【0067】
なお、本実施形態では、安静時のHFの値のみの判定と、起立時、立位時、着席時のHFの値を用いた判定の2段階で判定を行っているが、本発明はこのような2段階での判定に限定されるものではなく、安静時のHFの値のみを用いてルツハイマー型認知症か否かの判定を行うようにしても良い。
【0068】
次に、レビー小体型認知症か否かの判定方法の詳細を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
なお、以下の説明では第2の基準値が0である場合を用いて説明を行うため、制御部18は、起立時CCV(LF)−安静時CCV(LF)が0より小さいマイナスである場合、つまり起立時CCV(LF)<安静時CCV(LF)の場合に、被診断者はレビー小体型認知症の可能性があると判定する。
【0070】
よって、制御部18は、一連の測定が終了後、起立時CCV(LF)<安静時CCV(LF)であるか否かを判定し(ステップS401)、起立時CCV(LF)が安静時CCV(LF)より小さくなっている場合には、レビー小体型認知症の可能性があると判定し(ステップS402)、そうでない場合にはレビー小体型認知症では無いと判定する(ステップS403)。
【0071】
つまり、被診断者が起立指示を受けて起立動作を行ったにもかかわらずCCV(LF)の値が大きくならずに、逆に小さくなった場合には、被診断者のカテコラミン機能が低下していると判定して、レビー小体型認知症の可能性があると判定する。
【0072】
次に、実際の認知症の患者および認知症ではない健常者から測定された測定データを図8図10に示し、測定結果、判定結果を表示する具体的な表示例を図11図12に示す。
【0073】
先ず、アルツハイマー型認知症の患者の測定データ例を図8に示す。この図8に示した例では、安静時、起立時、立位時、着席時のHFの値が全て10[msec2]以下となっている。そのため、この図8に示した測定データに基づいて判定処理が行われた場合、例えば、図11に示すように被診断者はアルツハイマー型認知症の可能性がある旨が表示される。
【0074】
なお、図8に示したデータ例では、起立時CCV(LF)から安静時CCV(LF)を減算したΔCCV(LF)の値は0.0でありマイナスの値にはなっていないため、レビー小体型認知症の可能性があるとは判定されていない。
【0075】
次に、レビー小体型認知症の患者の測定データ例を図9に示す。この図9に示した例では、起立時CCV(LF)から安静時CCV(LF)を減算したΔCCV(LF)の値が−0.4となっており、0より小さい値となっている。そのため、この図9に示した測定データに基づいて判定処理が行われた場合、例えば、図12に示すように被診断者はレビー小体型認知症の可能性がある旨が表示される。
【0076】
なお、図9に示したデータ例では、安静時、起立時、立位時、着席時のHFの値は全て10[msec2]より大きな値となっているため、アルツハイマー型認知症の可能性があるとは判定されていない。
【0077】
最後に、健常者のデータ例を図10に示す。図10に示したデータ例では、安静時、起立時、立位時、着席時のHFの値が全て10[msec2]より大きな値となっており、起立時CCV(LF)から安静時CCV(LF)を減算したΔCCV(LF)の値が0.4と0以上の値となっている。
【0078】
そのため、図10に示したデータ例では、被診断者は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症のいずれでもないと判定される。
【0079】
[アルツハイマー型認知症の判定が可能となるメカニズム]
本実施形態の認知症判定装置では、安静時のHFの値、および起立時、立位時、着席時のHFの値を用いてアルツハイマー型認知症の可能性があるか否かの判定を行っている。
【0080】
以下において、このような値の測定によりアルツハイマー型認知症の可能性が判定可能になる理由を説明する。
【0081】
アルツハイマー型認知症の患者の脳内では、神経伝達物質の1つであるアセチルコリンの減少が見られる。そして、このアセチルコリンは、自律神経のうちの副交感神経を刺激する機能があることが知られている。
【0082】
そのため、認知症の疑いがある被診断者の安静時のHFの値を副交感神経機能の活動度指標として測定して、その値が通常よりも小さいことを検出すれば、その被診断者の体内においてアセチルコリンが減少していることが推定され、アルツハイマー型認知症である可能性が高いと判定することができる。
【0083】
そして、安静時のHFの値だけでなく、各種負荷を与えた後の起立時、立位時、着席時のHFの値も用いて判定を行うことにより、ルツハイマー型認知症の可能性があるか否かの判定をより高い精度で行うことが可能となるのである。
【0084】
[レビー小体型認知症の判定が可能となるメカニズム]
また、本実施形態の認知症判定装置では、起立時CCV(LF)−安静時CCV(LF)の値が0より小さい場合に、レビー小体型認知症の可能性があるか否かの判定を行っている。
【0085】
以下において、このような値の測定によりレビー小体型認知症の可能性が判定可能になる理由を説明する。
【0086】
レビー小体型認知症では、脳内の神経細胞内にレビー小体と呼ばれる特殊なタンパク質が大脳皮質全体に出現することが確認されていて、アルツハイマー型認知症とは異なる種別の認知症であることが知られている。
【0087】
そして、このレビー小体型認知症では、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン等のカテコラミンの機能の低下、異常が起こると言われている。
【0088】
このカテコラミン機能は人体の体位変換によって反応し、このカテコラミン機能の反応は心拍変動解析のCCV(LF)成分、つまり交感神経の反射機能として現れる。そのため、本実施形態の認知症判定装置のように、交感神経の活動度指標としてCCV(LF)を用い、被診断者に起立負荷等の体位変換を伴う負荷を与えて、その前後のCCV(LF)の変化量を測定することにより、安静時だけでは分からないカテコラミンの機能の評価を行うことが可能となる。
【0089】
なお、被診断者のカテコラミン機能が正常であれば、起立した際にCCV(LF)は増加するはずである。そのため、被診断者に起立負荷を与えた場合にCCV(LF)が減少しているのであれば、カテコラミン機能が異常であると判定することができ、レビー小体型認知症である可能性が高いとの判定が可能となる。
【0090】
[CCV(LF)の値を交感神経活動度指標として用いている理由]
なお、本実施形態では、交感神経活動度指標としてCCV(LF)の値を用いて、レビー小体型認知症である可能性があるか否かの判定を行っている。
【0091】
上記で説明したように、CCV(LF)は、低周波成分LFの平方根の値を心電データにおけるR−R間隔の平均値AVRRにより割った値である。
【0092】
そして、カテコラミン機能が正常な被診断者であれば、起立動作を行うことにより、心拍数、LFの値もともに増加する。そして、心拍数が増加したことによりR−R間隔は短くなり、AVRRの値も小さくなる。つまり、計算式の分母がAVRRであるCCV(LF)の値は起立動作に伴いより大きく反応することになる。
【0093】
また、統計的にも起立動作前後のLFの値は個人間でのばらつきが大きく評価をし難いが、起立動作前後のCCV(LF)の値は統計処理をすると年齢毎に正規分布しており、また下限値が0近辺であり扱い易いという理由がある。
【0094】
そのため、起立負荷前後のカテコラミン機能を評価する際の交感神経活動度指標としては、LFよりもCCV(LF)の方が適している。
【0095】
ただし、レビー小体型認知症であるか否かの判定にはCCV(LF)の値を用いるが、起立動作前後のLFの変化量の情報も合わせて評価することにより、重症度の評価が可能になる。
【0096】
[その他]
なお、本実施形態においては、副交感神経活動度指標としてHFを用いるものとして説明したが、CCV(HF)算出部27により算出された高周波成分変動係数CCV(HF)を副交感神経活動度指標として用いて、アルツハイマー型認知症か否かの判定を行うようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態において、交感神経活動度指標としてCCV(LF)を用いるものとして説明したが、周波数解析部24により算出された低周波成分LFを交感神経活動度指標として用いて、レビー小体型認知症か否かの判定を行うようにしてもよい。
【0098】
さらに、本実施形態においては、心電図データを測定するための心電図モニタ14が本発明の認知症判定装置内部に設けられている場合を説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。心電図モニタ14を設けることなく、認知症判定装置内部に外部からの心電図データを受け付けるための受付手段を設け、この受付手段が外部から受け付けた心電データからLF、HF、CCV(LF)、CCV(HF)等の値を算出するという構成にすることもできる。このような構成にすることにより、認知症判定装置には、心電図モニタ14のような心電測定装置を設ける必要がなくなる。
【0099】
さらに、本実施形態では、高周波変動係数を、CCV(HF)と標記しているが、文献によってはC−CV(HF)、CCVHFと標記される場合もある。しかし、これらは標記方法が異なるだけであり同一の値を示すものである。同様に、低周波変動係数CCV(LF)も、C−CV(LF)、CCVLFと標記される場合もあるが同一の値を示すものである。
【0100】
また、本実施形態では、被診断者の心電データを測定し、その心電データから得られた心電図R−R間隔に基づいて算出された各指標の値を2次元表示するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。一般的に心電データを測定するためには複数の電極を被診断者に装着する必要がある。そのため、より手軽で簡便に測定ができるように、簡易的な方法ではあるが、心電データの替わりに被診断者の脈波を測定し、その脈波データから脈波間隔を得て、心電データの場合と同様に周波数解析を行うことによっても、各指標の値を2次元表示することが可能である。
【0101】
具体的には、例えば生体の橈骨動脈に当てられた圧力センサを用いて被診断者の脈波を測定するような脈波測定器を、心電図モニタ14の替わりに用いるような構成とすることにより、本願発明の認知症判定装置を構成することが可能となる。そして、このような構成の場合には、周波数解析部24は、脈波データに基づいてLF及びHFを算出することとなる。
【符号の説明】
【0102】
14 心電図モニタ
18 制御部
20 記憶部
22 表示部
24 周波数解析部
26 CCV(LF)算出部
27 CCV(HF)算出部
【要約】      (修正有)
【課題】高価な装置等を必要とすることなく、認知症が疑われる患者の認知症の種別を高い精度で判定する装置を提供する。
【解決手段】制御部18は、起立負荷試験を指示する前の被診断者が安静時状態において算出された安静時HFの値が予め設定された第1の基準値以下の場合に、この被診断者はアルツハイマー型認知症である可能性が高いと判定して、その旨を表示部22に表示させる。また、制御部18は、起立負荷試験を指示した後に算出された低周波成分変動係数CCV(LF)の値と、起立負荷試験を指示する前に算出された低周波成分変動係数CCV(LF)の値との差であるΔCCV(LF)を交感神経活動度指標変化量として算出し、このΔCCV(LF)が予め設定された第2の基準値以下の場合に、この被診断者はレビー小体型認知症である可能性が高いと判定して、その旨を表示部22に表示させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12