(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の関連技術に係る高密度微細気泡液生成装置1の概略構成を示す図である。
図2は、所望の密度にて微細気泡を含む液体を(以下、「微細気泡液」という。)生成する工程を示す図である。
図2には、高密度にて微細気泡を含む液体(以下、「高密度微細気泡液」という。)を生成する工程(ステップS15)が含まれる。高密度微細気泡液生成装置1は、微細気泡液生成部11と、気化部12と、第1貯溜部13と、第2貯溜部14とを含む。微細気泡液生成部11は、機械的に水と空気とを混合し、超微細気泡(ウルトラファインバブル)と呼ばれる微細気泡を含む液体91を生成する(ステップS11)。超微細気泡は、「ナノバブル」とも呼ばれる。以下、この液体91を「初期液体」と呼ぶ。初期液体91は、第1貯溜部13に貯溜される。
【0015】
本実施の形態における「微細気泡」とは、直径が1μm未満の気泡を指す。ただし、実際には直径が500μm未満の微細気泡が多数生成されるため、直径が500μm未満の気泡が、本実施の形態における微細気泡と定義されてもよい。また、微細気泡の「密度」とは、単位体積当たりに液体が含有する微細気泡の個数を指す。
【0016】
初期液体91が準備されると、作業者は、得たい微細気泡液における微細気泡の密度を設定する(ステップS12)。以下、この密度を「目標密度」という。目標密度は、初期液体91の生成前に定められてもよい。作業者は、初期液体91の気泡密度を測定する(ステップS13)。初期液体91の気泡密度が目標密度未満の場合(ステップS14)、初期液体91は、気化部12に搬入される。気化部12にて初期液体91の一部が気化することにより、高密度微細気泡液92が取得される(ステップS15)。後述するように、微細気泡液の気泡数は、一部の気化によっては大きくは変化しない。したがって、気化部12にて気化させる液量は、事前に計算により求めることができる。高密度微細気泡液92は、第2貯溜部14に貯留される。
【0017】
初期液体91の気泡密度が目標密度以上の場合、初期液体91に微細気泡を含まない液体が加えられ、初期液体91が希釈される(ステップS16)。これにより、微細気泡液の気泡密度が低下する。この場合も、加えるべき液体の量は事前に計算により求めることができる。初期液体91の気泡密度が目標密度以上の場合、気化部12は利用されない。なお、正確には、初期液体91の気泡密度と目標密度との差が許容範囲内の場合、ステップS15およびS16は実行されない。
【0018】
図3は、微細気泡液生成部11を示す図である。微細気泡液生成部11は、気体と液体とを混合して、当該気体の微細気泡を含む液体を生成する。本実施の形態では、混合前の対象液90として水が使用される。水と混合される気体として、空気が使用される。微細気泡液生成部11は、微細気泡生成ノズル2と、加圧液生成部3と、送出配管41と、補助配管42と、戻し配管43と、ポンプ44と、液貯留部45とを備える。液貯留部45には対象液90が貯留される。微細気泡液生成部11を稼動することにより、対象液90が初期液体91となる。
【0019】
送出配管41は、加圧液生成部3と微細気泡生成ノズル2とを接続する。加圧液生成部3は、気体を加圧溶解させた加圧液71を生成し、送出配管41を介して微細気泡生成ノズル2に供給する。微細気泡生成ノズル2の噴出口は、液貯留部45内に位置し、送出配管41は、実質的に加圧液生成部3と液貯留部45とを接続する。
【0020】
微細気泡生成ノズル2から加圧液71を対象液90中に噴出することにより、対象液90中に微細気泡が生成する。本実施の形態では、空気の微細気泡が対象液90中に生成する。
図1では、理解を容易にするために、対象液90等の流体に破線にて平行斜線を付す。
【0021】
補助配管42は、送出配管41と同様に、加圧液生成部3と液貯留部45とを接続する。補助配管42は、加圧液生成部3にて余剰の気体を分離する際に余剰の気体と共に排出される液体を液貯留部45へと導く。戻し配管43にはポンプ44が設けられ、ポンプ44により、戻し配管43を経由して、対象液90が液貯留部45から加圧液生成部3へと戻される。
【0022】
加圧液生成部3は、混合ノズル31と、加圧液生成容器32とを備える。混合ノズル31の気体流入口からは、レギュレータや流量計等を介して空気が流入する。混合ノズル31では、ポンプ44により圧送された液体と、空気とが、混合ノズル31により混合され、加圧液生成容器32内に向けて噴出される。
【0023】
加圧液生成容器32内は加圧されて大気圧よりも圧力が高い状態(以下、「加圧環境」という。)となっている。混合ノズル31から噴出された液体と気体とが混合された流体(以下、「混合流体72」という。)は、加圧液生成容器32内を加圧環境下にて流れる間に、気体が液体に加圧溶解した加圧液71となる。
【0024】
図4は、混合ノズル31を拡大して示す断面図である。混合ノズル31は、上述のポンプ44により圧送された液体が流入する液体流入口311と、気体が流入する気体流入口319と、混合流体72を噴出する混合流体噴出口312とを備える。混合流体72は、液体流入口311から流入した液体および気体流入口319から流入した気体が混合されることにより生成される。液体流入口311、気体流入口319および混合流体噴出口312はそれぞれ略円形である。液体流入口311から混合流体噴出口312に向かうノズル流路310の流路断面、および、気体流入口319からノズル流路310に向かう気体流路3191の流路断面も略円形である。流路断面とは、ノズル流路310や気体流路3191等の流路の中心軸に垂直な断面、すなわち、流路を流れる流体の流れに垂直な断面を意味する。また、以下の説明では、流路断面の面積を「流路面積」という。ノズル流路310は、流路面積が流路の中間部で小さくなるベンチュリ管状である。
【0025】
混合ノズル31は、液体流入口311から混合流体噴出口312に向かって順に連続して配置される導入部313と、第1テーパ部314と、喉部315と、気体混合部316と、第2テーパ部317と、導出部318とを備える。混合ノズル31は、また、内部に気体流路3191が設けられた気体供給部3192を備える。
【0026】
導入部313では、流路面積は、ノズル流路310の中心軸J1方向の各位置においてほぼ一定である。第1テーパ部314では、液体の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。喉部315では、流路面積はほぼ一定である。喉部315の流路面積は、ノズル流路310において最も小さい。なお、ノズル流路310では、喉部315において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部315と捉えられる。気体混合部316では、流路面積はほぼ一定であり、喉部315の流路面積よりも少し大きい。第2テーパ部317では、下流側に向かって流路面積が漸次増大する。導出部318では、流路面積はほぼ一定である。気体流路3191の流路面積もほぼ一定であり、気体流路3191は、ノズル流路310の気体混合部316に接続される。
【0027】
混合ノズル31では、液体流入口311からノズル流路310に流入した液体が、喉部315で加速されて静圧が低下し、喉部315および気体混合部316において、ノズル流路310内の圧力が大気圧よりも低くなる。これにより、気体流入口319から気体が吸引され、気体流路3191を通過して気体混合部316に流入し、液体と混合されて混合流体72が生成される。混合流体72は、第2テーパ部317および導出部318において減速されて静圧が増大し、混合流体噴出口312を介して加圧液生成容器32内に噴出される。
【0028】
図3に示すように、加圧液生成容器32は、上下方向に積層される第1流路321と、第2流路322と、第3流路323と、第4流路324と、第5流路325とを備える。以下の説明では、第1流路321、第2流路322、第3流路323、第4流路324および第5流路325をまとめて指す場合、「流路321〜325」と呼ぶ。流路321〜325は、水平方向に延びる管路であり、流路321〜325の長手方向に垂直な断面は略矩形である。本実施の形態では、流路321〜325の幅は、約40mmである。
【0029】
第1流路321の上流側の端部(すなわち、
図3中の左側の端部)には、混合ノズル31が取り付けられており、混合ノズル31から噴出された後の混合流体72は、加圧環境下にて
図3中の右側に向かって流れる。本実施の形態では、第1流路321内の混合流体72の液面より上方にて混合ノズル31から混合流体72が噴出され、噴出された直後の混合流体72は、第1流路321の下流側の壁面(すなわち、
図3中の右側の壁面)に衝突する前に上記液面に直接衝突する。混合ノズル31から噴出された混合流体72を液面に直接衝突させるためには、第1流路321の長さを、混合ノズル31の混合流体噴出口312(
図4参照)の中心と第1流路321の下面との間の上下方向の距離の7.5倍よりも大きくすることが好ましい。
【0030】
加圧液生成部3では、混合ノズル31の混合流体噴出口312の一部または全体が、第1流路321内の混合流体72の液面よりも下側に位置してもよい。これにより、上述と同様に、第1流路321内において、混合ノズル31から噴出された直後の混合流体72が、第1流路321内を流れる混合流体72に直接衝突する。
【0031】
第1流路321の下流側の端部の下面には、略円形の開口321aが設けられており、第1流路321を流れる混合流体72は、第1流路321の下方に位置する第2流路322へと開口321aを介して落下する。第2流路322では、第1流路321から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図3中の右側から左側へと流れ、第2流路322の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口322aを介して、第2流路322の下方に位置する第3流路323へと落下する。第3流路323では、第2流路322から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図3中の左側から右側へと流れ、第3流路323の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口323aを介して、第3流路323の下方に位置する第4流路324へと落下する。
図3に示すように、第1流路321〜第4流路324では、混合流体72は、気泡を含む液体の層と、その上方に位置する気体の層に分かれている。
【0032】
第4流路324では、第3流路323から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図3中の右側から左側へと流れ、第4流路324の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口324aを介して、第4流路324の下方に位置する第5流路325へと流入(すなわち、落下)する。第5流路325では、第1流路321〜第4流路324とは異なり、気体の層は存在しておらず、第5流路325内に充満する液体内において、第5流路325の上面近傍に気泡が僅かに存在する状態となっている。第5流路325では、第4流路324から流入した混合流体72が加圧環境下にて
図3中の左側から右側へと流れる。
【0033】
加圧液生成部3では、加圧液生成容器32の流路321〜325を、段階的に緩急を繰り返しつつ上から下に流れ落ちる(すなわち、水平方向への流れと下方向への流れとを交互に繰り返しつつ流れる)混合流体72において、気体が液体に徐々に加圧溶解する。第5流路325においては、液体中に溶解している気体の濃度は、加圧環境下における当該気体の(飽和)溶解度の60%〜90%にほぼ等しい。そして、液体に溶解しなかった余剰の気体が、第5流路325内において、視認可能な大きさの気泡として存在している。
【0034】
加圧液生成容器32は、第5流路325の下流側の上面から上方へと延びる余剰気体分離部326をさらに備え、余剰気体分離部326には混合流体72が充満している。余剰気体分離部326の上下方向に垂直な断面は略矩形であり、余剰気体分離部326の上端部は、圧力調整用の絞り部327を介して補助配管42に接続される。第5流路325を流れる混合流体72の気泡は、余剰気体分離部326内を上昇して混合流体72の一部と共に補助配管42に流れ込む。
【0035】
このようにして、混合流体72の余剰な気体が混合流体72の一部と共に分離されることにより、少なくとも容易に視認できる大きさの気泡を実質的に含まない加圧液71が生成され、第5流路325の下流側の端部に接続された送出配管41へと送出される。本実施の形態では、加圧液71には、大気圧下における気体の(飽和)溶解度の約2倍以上の気体が溶解している。加圧液生成容器32において流路321〜325を流れる混合流体72の液体は、生成途上の加圧液71と捉えることもできる。補助配管42に流入した混合流体72は、液貯留部45内の対象液90へと導かれる。補助配管42は、長時間ポンプ44を稼働した場合における対象液90の減少を防止するための補助流路として機能する。
【0036】
第1流路321の上方には、排気弁61も設けられる。排気弁61は、ポンプ44の停止時に開放され、混合流体72が混合ノズル31へと逆流することを防止する。
【0037】
図5は、微細気泡生成ノズル2を拡大して示す断面図である。微細気泡生成ノズル2は、送出配管41から加圧液71が流入する加圧液流入口21と、対象液90に向かって開口する加圧液噴出口22とを備える。加圧液流入口21および加圧液噴出口22はそれぞれ略円形であり、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かうノズル流路20の流路断面も略円形である。
【0038】
微細気泡生成ノズル2は、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かって順に連続して配置される導入部23と、テーパ部24と、喉部25とを備える。導入部23では、流路面積は、ノズル流路20の中心軸J2方向の各位置においてほぼ一定である。テーパ部24では、加圧液71の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。テーパ部24の内面は、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする略円錐面の一部である。当該中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αは、10°以上90°以下であることが好ましい。
【0039】
喉部25は、テーパ部24と加圧液噴出口22とを連絡する。喉部25の内面は略円筒面であり、喉部25では、流路面積はほぼ一定である。喉部25における流路断面の直径は、ノズル流路20において最も小さく、喉部25の流路面積は、ノズル流路20において最も小さい。喉部25の長さは、好ましくは、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下であり、より好ましくは、1.5倍以上2倍以下である。なお、ノズル流路20では、喉部25において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部25と捉えられる。
【0040】
微細気泡生成ノズル2は、また、喉部25に連続して設けられ、加圧液噴出口22の周囲を加圧液噴出口22から離間して囲む拡大部27と、拡大部27の端部に設けられた拡大部開口28とを備える。加圧液噴出口22と拡大部開口28との間の流路29は、加圧液噴出口22の外部に設けられた流路であり、以下、「外部流路29」という。外部流路29の流路断面および拡大部開口28は略円形であり、外部流路29の流路面積はほぼ一定である。外部流路29の直径は、喉部25の直径(すなわち、加圧液噴出口22の直径)よりも大きい。
【0041】
以下の説明では、拡大部27の内周面の加圧液噴出口22側のエッジと加圧液噴出口22のエッジとの間の円環状の面を、「噴出口端面221」という。本実施の形態では、ノズル流路20および外部流路29の中心軸J2と噴出口端面221との成す角度は約90°である。また、外部流路29の直径は10mm〜20mmであり、外部流路29の長さは、外部流路29の直径におよそ等しい。微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21とは反対側の端部に、凹部である外部流路29が形成され、当該凹部の底部に、当該底部よりも小さい開口である加圧液噴出口22が形成されている、と捉えられる。拡大部27では、加圧液噴出口22と液貯留部45内の対象液90との間における加圧液71の流路面積が拡大される。
【0042】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21からノズル流路20に流入した加圧液71が、テーパ部24において徐々に加速されつつ喉部25へと流れ、喉部25を通過して加圧液噴出口22から噴流として噴出される。喉部25における加圧液71の流速は、好ましくは秒速10m〜30mであり、本実施の形態では、秒速約20mである。喉部25では、加圧液71の静圧が低下するため、加圧液71中の気体が過飽和となって微細気泡として液中に析出する。微細気泡は、加圧液71と共に拡大部27の外部流路29を通過して、液貯留部45中の対象液90中へと拡散する。微細気泡生成ノズル2では、加圧液71が外部流路29を通過する間にも、微細気泡の析出が生じる。微細気泡生成ノズル2にて生成される微細気泡は、直径が1μm未満の微細気泡である。なお、微細気泡生成ノズル2からの液体および微細気泡の噴出が停止されている場合、外部流路29は対象液90により満たされる。
【0043】
以上に説明したように、微細気泡生成ノズル2では、加圧液71の流れる方向に向かって流路面積が漸次減少するテーパ部24、および、ノズル流路20において流路面積が最も小さい喉部25が設けられることにより、微細気泡、特に、直径が1μm未満の微細気泡を安定して大量に生成することができる。ナノサイト社(NanoSight Limited)のLM10およびLM20による計測では、微細気泡生成ノズル2により、直径が約100nmを中心として1μm未満の範囲に分布する微細気泡が、対象液90中に1mL(ミリリットル)当たり1億個以上生成される。この値は、対象液を循環させることなく生成した場合の個数である。以下の説明では、微細気泡生成ノズル2により生成された微細気泡の1mL当たりの個数を、「微細気泡の生成密度」という。実際には、対象液を多数回循環させることにより、微細気泡の生成密度は上昇する。
【0044】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液噴出口22の周囲を囲む拡大部27が設けられることにより、液貯留部45内における対象液90の流れが、加圧液噴出口22から噴出された直後の加圧液71に対して影響を与えることを抑制することができる。これにより、加圧液噴出口22からの噴出直後の加圧液71においても、微細気泡の析出が安定して行われるため、微細気泡をより安定して大量に生成することができる。
【0045】
上述のように、微細気泡生成ノズル2では、テーパ部24の内面が、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする円錐面の一部であり、中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αが90°以下である。これにより、微細気泡をより安定して大量に生成することができる。また、微細気泡生成ノズル2の導入部23および喉部25の直径を維持しつつ微細気泡生成ノズル2の長さを短くするという観点からは、テーパ部24の内面の成す角度αは10°以上であることが好ましい。
【0046】
微細気泡生成ノズル2では、喉部25の長さが、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下である。喉部25の長さが直径の1.1倍以上であることにより、微細気泡をより安定して大量に生成することができる。例えば、喉部25の長さが直径の0.53倍である場合の微細気泡の生成密度(非循環時)は約5600万個であるのに対し、喉部25の長さが直径の1.57倍である場合の微細気泡の生成密度は約11000万個である。また、喉部25の長さが直径の10倍以下であることにより、喉部25において加圧液71に生じる抵抗が過剰に大きくなることを防止することができるとともに、喉部25の高精度な形成を容易とすることもできる。微細気泡をより一層安定して大量に生成するという観点からは、喉部25の長さが直径の1.5倍以上2倍以下であることが、さらに好ましい。
【0047】
微細気泡液生成部11にて生成される初期液体91としては、1mL当たり2000万個以上の微細気泡を含む液体であることが好ましい。初期液体91の段階で微細気泡の生成密度は高い方が好ましいため、初期液体91では、1mL当たり1億個以上の微細気泡を含むことがさらに好ましい。
【0048】
図6は、気化部12の構成を示す図である。気化部12は、初期液体91が注ぎ込まれる気化容器51と、気化容器51を加熱する加熱部52と、減圧部53とを備える。加熱部52は、ヒータ521と、加熱容器522と、温度調整部523と、温度計524とを備える。加熱容器522には、水などの液体が予め貯溜される。気化容器51は、加熱容器522内の液体に浸漬される。実際には、気化容器51を加熱容器522内にて回転させる回転部がさらに設けられる。加熱容器522には、液体の温度を測定する温度計524が配置される。温度調整部523は、温度計524からの測定値を参照してヒータ521の発熱を制御する。これにより、気化容器51の温度が一定に保たれる。減圧部53は、設定した圧力へと気化容器51の内部を減圧する。
【0049】
初期液体91が気化容器51に注入されると、気化容器51の回転が開始され、さらに、減圧部53による初期液体91の周囲の減圧および加熱部52による初期液体91の加熱が行われる。最初の段階では、気化容器51内の圧力は、目標値よりも大きな値に設定される。例えば、気化容器51内は、150mbar、60℃に維持される。気化容器51内では初期液体91からの脱気が生じる。その後、圧力は目標値、例えば、70mbarに設定される。初期液体91の周囲が70mbarに減圧された直後は、若干の沸騰が生じるが、やがて沸騰は生じなくなる。
【0050】
上記圧力および温度を維持することにより、沸騰することなく初期液体91の気化が継続される。初期液体91の体積は徐々に減少し、高密度微細気泡液92が取得される。沸騰させることなく水を気化させることにより微細気泡の密度が上昇する理由は不明であるが、上記手法により、従来得ることができなかった高密度微細気泡液を容易に取得することができる。また、減圧および加熱により効率よく気化を行うことができる。
【0051】
次に、気化により高密度微細気泡液が取得可能であることを証明する実験結果について説明する。
【0052】
図7は、初期液体を気化させた際の微細気泡の密度の変化を示すグラフである。菱形のドットは、測定値を示す。破線は、微細気泡の全数が変化しないと仮定した場合における、液体の体積の減少による微細気泡の密度の増加の理論値を示す。測定値と理論値とは非常によく一致する。このことから、微細気泡を含む液体を気化させて体積を減少させても、微細気泡の総数は減少しないことが判る。また、1mL当たり100億個を超える高密度微細気泡液が容易に取得可能であることも判る。なお、超純水にて200倍に希釈してからナノサイト社のNS500を使用して測定を行っている。
【0053】
図8.Aは、ナノサイト社の上記装置による初期液体の測定結果を示すグラフであり、
図8.Bは濃縮後の測定結果を示すグラフである。上記装置では、動的光散乱法により測定が行われる。符号61は、気泡径と単位体積当たりの個数(密度)との関係を示し、符号62は、気泡径に対する累積個数を示す。縦軸は、これらのグラフの高さが等しくなるように若干調整している。これらのグラフの形状がほぼ同じであることからも、微細気泡を含む水を気化させても微細気泡の総数がほぼ変化しないことが推定される。
【0054】
図9.Aは、37億個/mLの微細気泡が存在すると測定された段階での微細気泡の画像である。液体を希釈した後ににレーザを照射することにより、微細気泡のブラウン運動を直接観察することができる。
図9.Bは、110億個/mLの微細気泡が存在すると測定された段階で、液体を同様に希釈して得られる微細気泡の画像である。これらの画像からも、微細気泡の密度が増加していることが確認される。
【0055】
図10は、レーザ回折・散乱光法による測定結果を示すグラフである。符号63は初期液体91に対応し、符号64は高密度微細気泡液92に対応する。この測定方法では、希釈なしで微細気泡の密度を測定することができる。センサの素子番号66〜70に対応する値は、微細気泡の数に起因する出力値である。この測定結果においても、初期液体を10倍に濃縮することにより、出力値が約10倍となる。その結果、初期液体91の一部を気化しても微細気泡の総数は大きくは減少しないことが判る。
【0056】
図11は、本発明の一の実施の形態に係る高密度微細気泡液生成装置1を示す図である。微細気泡液の生成の流れは
図2と同様である。
【0057】
図11の高密度微細気泡液生成装置1は、微細気泡液生成部11と、濾過部15と、第1貯溜部13と、第2貯溜部14とを含む。微細気泡液生成部11は
図1と同様であり、初期液体91を生成する(ステップS11)。そして、目標密度が設定され(ステップS12)、初期液体91の気泡密度が測定される(ステップS13)。初期液体91の気泡密度が目標密度未満の場合(ステップS14)、初期液体91は、第1貯溜部13から濾過部15に導入され、高密度微細気泡液92が第2貯溜部14に得られる(ステップS15)。初期液体91の気泡密度が目標密度以上の場合、初期液体91に微細気泡を含まない液体が加えられ、目標密度の微細気泡液が取得される(ステップS16)。この場合、濾過部15は利用されない。正確には、初期液体91の気泡密度と目標密度との差が許容範囲内の場合、ステップS15およびS16は実行されない。
【0058】
図12は、濾過部15を示す図である。濾過部15は、第1導入路711と、第2導入路712と、後方排出路719と、第1フィルタ721と、第2フィルタ722とを備える。第1フィルタ721および第2フィルタ722は、濾過フィルタであり、例えば、メンブレンフィルタ、単孔膜、限外濾過フィルタ、精密濾過膜、逆浸透膜である(
図13のフィルタ721〜723において同様)。フィルタの特性としては、例えば、第1フィルタ721は、直径が200nmよりも大きい微細気泡を通さず、他の微細気泡を通す。第2フィルタ722は、直径が60nmよりも大きい微細気泡を通さず、他の微細気泡を通す。
【0059】
第1導入路711には、不要気泡排出路739と、第1洗浄流出路731とが接続される。第2導入路712には、微細気泡液排出路741と、第1洗浄流入路732と、第2洗浄流出路733とが接続される。後方排出路719には、第2洗浄流入路734が接続される。
【0060】
不要気泡排出路739、第1洗浄流出路731、第1洗浄流入路732、第2洗浄流出路733および第2洗浄流入路734には、それぞれ弁759、751〜754が設けられる。微細気泡液排出路741には、絞り弁761が設けられる。弁759、751〜754は、通常状態では閉じている。
【0061】
初期液体91は、第1貯溜部13から第1導入路711を経由して第1フィルタ721へと導かれる。第1フィルタ721では、径が大きい微細気泡は透過せず、径が小さい微細気泡のみが第1フィルタ721を透過して第2導入路712へと導かれる。径が大きい微細気泡は、不要気泡排出路739へと移動する。不要気泡排出路739上の弁759は定期的に開かれ、不要気泡排出路739に蓄積された気体が排出される。
【0062】
第1フィルタ721を透過した初期液体91は、第2導入路712により第2フィルタ722へと導かれる。第2フィルタ722の濾過粒度は、第1フィルタ721の濾過粒度よりも小さい。第2フィルタ722では、多くの微細気泡は透過せず、ほぼ液体のみが透過する。なお、フィルタの濾過粒度とフィルタが透過する微細気泡の直径とは一致するとは限らない。
【0063】
初期液体91の一部が第2フィルタ722を透過した後の初期液体91の残部は、微細気泡と共に微細気泡液排出路741へと導かれる。その結果、微細気泡液排出路741から、直径が60nm〜200nmの高密度微細気泡液が第2貯溜部14へと排出される。
図8.Aに示すように、本実施の形態における微細気泡液生成部11では、直径60nm〜200nmの範囲の微細気泡が最も多く生成されるため、高密度微細気泡液の気泡密度は極めて高くなる。
【0064】
第2フィルタ722を透過した液体は、後方排出路719から排出される。後方排出路719からの液体は、必要に応じて、超微細な気泡を含む液体として取得されてもよい。ここで、絞り弁761の開度が調整されることにより、第2フィルタ722を透過する液体の流量が制御される。これにより、高密度微細気泡液における微細気泡の密度が目標密度になるように制御することが実現される。具体的には、高密度微細気泡液の気泡密度が一定間隔で測定され、測定結果に基づいて絞り弁761の開度が適宜調整される。
【0065】
濾過部15では、定期的にフィルタの洗浄が行われる。第1フィルタ721の洗浄時には、第1導入路711の入口および後方排出路719の出口が閉じられ、さらに、第1洗浄流出路731および第1洗浄流入路732の弁751,752が開けられ、他の弁が閉じられる。第1洗浄流入路732から第1洗浄流出路731へと洗浄用の液体(例えば純水)が流されることにより、第1フィルタ721に付着している物質が第1洗浄流出路731から排出される。
【0066】
同様に、第2フィルタ722の洗浄時には、第1導入路711の入口および後方排出路719の出口が閉じられ、さらに、第2洗浄流出路733および第2洗浄流入路734の弁753,754が開けられ、他の弁が閉じられる。第2洗浄流入路734から第2洗浄流出路733へと洗浄用の液体が流されることにより、第2フィルタ722に付着している物質が第2洗浄流出路733から排出される。
【0067】
濾過部15ではフィルタを利用することにより、微細気泡の密度が高い液体を容易かつ安価に生成することができる。
【0068】
図13は、濾過部15の他の例を示す図である。濾過部15では、互いに大きさの異なる微細気泡を含む複数種類の高密度微細気泡液が取得される。
図13の例では、3つの大きさの微細気泡を含む高密度微細気泡液が3つの第2貯溜部14(図示省略)にそれぞれ取得される。
【0069】
濾過部15は、第1導入路711と、第2導入路712と、第3導入路713と、後方排出路719と、第1フィルタ721と、第2フィルタ722と、第3フィルタ723とを備える。第1フィルタ721、第2フィルタ722および第3フィルタ723は、濾過フィルタである。例えば、第1フィルタ721は、直径が500nmよりも大きい微細気泡を通さず、他の微細気泡を通す。第2フィルタ722は、直径が200nmよりも大きい微細気泡を通さず、他の微細気泡を通す。第3フィルタ723は、直径が60nmよりも大きい微細気泡を通さず、他の微細気泡を通す。
【0070】
第1導入路711には、第1洗浄流出路731と、第1微細気泡液排出路741とが接続される。第2導入路712には、第1洗浄流入路732と、第2洗浄流出路733と、第2微細気泡液排出路742とが接続される。第3導入路713には、第2洗浄流入路734と、第3洗浄流出路735、第3微細気泡液排出路743とが接続される。後方排出路719には、第3洗浄流入路736が接続される。
【0071】
第1洗浄流出路731、第1洗浄流入路732、第2洗浄流出路733、第2洗浄流入路734、第3洗浄流出路735および第3洗浄流入路736には、それぞれ弁751〜756が設けられる。第1微細気泡液排出路741、第2微細気泡液排出路742および第3微細気泡液排出路743には、それぞれ絞り弁761〜763が設けられる。弁751〜756は、通常状態では閉じている。
【0072】
初期液体91は、第1貯溜部13から第1導入路711を経由して第1フィルタ721へと導かれる。第1フィルタ721では、径が大きい微細気泡は透過せず、径が小さい微細気泡のみが第1フィルタ721を透過して第2導入路712へと導かれる。初期液体91の一部が第1フィルタ721を透過した後の初期液体91の残部は、微細気泡と共に第1微細気泡液排出路741へと導かれる。その結果、第1微細気泡液排出路741から高密度微細気泡液が排出される。
【0073】
第1フィルタ721を透過した初期液体91(以下、「濾液」という。)は、第2導入路712により第2フィルタ722へと導かれる。第2フィルタ722の濾過粒度は、第1フィルタ721の濾過粒度よりも小さい。第2フィルタ722では、相対的に径が大きい微細気泡は透過しない。第1フィルタ721からの濾液の一部が第2フィルタ722を透過した後の濾液の残部は、微細気泡と共に第2微細気泡液排出路742へと導かれる。その結果、第2微細気泡液排出路742から高密度微細気泡液が排出される。
【0074】
第2フィルタ722を透過した後の濾液は、第3導入路713により第3フィルタ723へと導かれる。第3フィルタ723の濾過粒度は、第2フィルタ722の濾過粒度よりも小さい。第3フィルタ723では、多くの微細気泡は透過せず、ほぼ液体のみが透過する。濾液の一部が第3フィルタ723を透過した後の濾液の残部は、微細気泡と共に第3微細気泡液排出路743へと導かれる。その結果、第3微細気泡液排出路743から高密度微細気泡液が排出される。
【0075】
第3フィルタ723を透過した液体は、後方排出路719から排出される。後方排出路719からの液体は、必要な場合は、超微細な気泡を含む液体として取得されてもよい。上記作用により、第1微細気泡液排出路741から最も大きい微細気泡を含む高密度微細気泡液が排出され、第2微細気泡液排出路742から次に大きい微細気泡を含む高密度微細気泡液が排出され、第3微細気泡液排出路743から最も小さい微細気泡を含む高密度微細気泡液が排出される。これらの高密度微細気泡液は、3つの第2貯溜部14にそれぞれ貯溜される。
【0076】
ここで、絞り弁761〜763の開度が調整されることにより、第1ないし第3フィルタ721〜723を透過する液体の流量が制御される。これにより、各高密度微細気泡液における微細気泡の密度を制御することが実現される。なお、
図12の場合と同様に、さらに前段にフィルタを設け、径が非常に大きい不要な微細気泡が予め不要気泡排出路から除去されてもよい。
【0077】
濾過部15では、定期的にフィルタの洗浄が行われる。
図12の場合と同様に、第1フィルタ721の洗浄時には、第1導入路711の入口および後方排出路719の出口が閉じられ、さらに、第1洗浄流出路731および第1洗浄流入路732の弁751,752が開けられ、他の弁が閉じられる。第1洗浄流入路732から第1洗浄流出路731へと洗浄用の液体(例えば純水)が流されることにより、第1フィルタ721に付着している物質が第1洗浄流出路731から排出される。
【0078】
同様に、第2フィルタ722の洗浄時には、第2洗浄流出路733および第2洗浄流入路734の弁753,754が開けられ、他の弁が閉じられる。第2洗浄流入路734から第2洗浄流出路733へと洗浄用の液体が流される。第3フィルタ723の洗浄時には、第3洗浄流出路735および第3洗浄流入路736の弁755,756が開けられ、他の弁が閉じられる。第3洗浄流入路736から第3洗浄流出路735へと洗浄用の液体が流される。
【0079】
濾過部15ではフィルタを利用することにより、所望の大きさの微細気泡を高い密度で含む液体を容易かつ安価に生成することができる。
【0080】
以上、高密度微細気泡生成装置および微細気泡生成方法について説明したが、この技術は様々な変形が可能である。
【0081】
混合ノズル31にて気体と混合される液体は、完全な水には限定されず、水を主成分をする液体であってもよい。例えば、添加物や不揮発性の液体が添加された水であってもよい。また、液体は、例えば、エチルアルコールなども利用可能と考えられる。微細気泡を形成する気体は、空気には限定されず、窒素や他の気体でもよい。もちろん、液体に対して不溶性または難溶性の気体であることは必要である。
【0082】
微細気泡液生成部11の構造は様々に変更されてよく、さらには、異なる構造のものが使用されてもよい。例えば、微細気泡生成ノズル2は、複数の加圧液噴出口22を備えてもよい。微細気泡生成ノズル2と加圧液生成部3との間に圧力調整弁が設けられ、微細気泡生成ノズル2に与えられる圧力が高精度にて一定に維持されてもよい。加圧液生成容器32の流路の断面形状は、円形でもよい。気体と液体との混合には、機械的攪拌等の他の手段が利用されてもよい。
【0083】
初期液体91は、購入等により他者から供給されてもよい。初期液体91の生成と濃縮とは、地理的に離れた場所で行われてもよい。この場合、高密度微細気泡液生成装置1では、微細気泡液生成部11は不要である。
【0084】
微細気泡の密度は、液体の気化により高くなるが、液体の沸騰は避けることが好ましい。ただし、完全に沸騰が避けられる必要はなく、微細気泡の消滅が抑制されるのであれば多少の沸騰は許容される。例えば、液体の気化に要する時間の一部において、または、液体の極一部において、沸騰が生じてもよい。換言すれば、ステップS15では、初期液体91の一部を沸騰させることなく気化することにより、高密度微細気泡液92が得られる。
【0085】
濾過部15では、濾過粒度の異なる4以上のフィルタが用いられてもよい。初期液体91の質によっては、
図13のように不要気泡排出路739は、適宜省かれてよい。
【0086】
濾過部15では、フィルタには初期液体91が流れるようにして供給される必要はない。例えば、貯溜部の下部にフィルタを設け、貯溜部に初期液体91を貯留する。初期液体91の一部がフィルタを透過することにより、高密度微細気泡液がフィルタ上に得られる。
【0087】
高密度微細気泡液は、従来の微細気泡液に対してこれまでに提案されている様々な用途に利用されてよい。新規な分野に利用されてもよく、想定される利用分野は多岐に亘る。例えば、食品、飲料、化粧品、薬品、医療、植物栽培、半導体装置、フラットパネルディスプレイ、電子機器、太陽電池、二次電池、新機能材料、放射性物質除去等である。また、高密度微細気泡液を輸送先にて希釈することにより、微細気泡を含む液の輸送コストを削減することができる。
【0088】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0089】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。