(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901095
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ポリマー、ポリマー・マイクロファイバ、ポリマー・ナノファイバ、およびフィルタ構造を含む適用例
(51)【国際特許分類】
C08L 57/00 20060101AFI20160407BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20160407BHJP
C08L 27/00 20060101ALI20160407BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20160407BHJP
D01F 6/80 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
C08L57/00
C08K5/13
C08L27/00
C08L29/04 B
D01F6/80 311A
D01F6/80 311B
【請求項の数】14
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2002-525679(P2002-525679)
(86)(22)【出願日】2001年8月9日
(65)【公表番号】特表2004-508447(P2004-508447A)
(43)【公表日】2004年3月18日
(86)【国際出願番号】US2001024948
(87)【国際公開番号】WO2002020668
(87)【国際公開日】20020314
【審査請求日】2008年8月8日
【審判番号】不服2013-21452(P2013-21452/J1)
【審判請求日】2013年11月1日
(31)【優先権主張番号】60/230,138
(32)【優先日】2000年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】09/871,583
(32)【優先日】2001年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】チュング, ホー, ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホール, ジョン, アール., ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴギンズ, マーク, エー.
(72)【発明者】
【氏名】クロフット, ダグラス, ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイク, トーマス, エム.
【合議体】
【審判長】
栗林 敏彦
【審判官】
渡邊 豊英
【審判官】
渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−192520(JP,A)
【文献】
特開平3−167306(JP,A)
【文献】
特開平11−319427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 57/00,C08K 5/13,C08L 27/00,C08L 29/04,D01F 6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体層とファインファイバ層とを含むフィルタ媒体であって、
前記ファインファイバ層は、付加ポリマーを含むファイバを含み
、 前記ファインファイバ層は、前記ファイバのランダム分布を含み、
前記ファイバは、0.001〜2ミクロンの直径を有し、
前記基体層は、濾過性能と、2〜900m/分の透過率と、0.4mm以上の厚さとを有するフィルタ基体層であり、
前記ファイバは、2〜25重量%の添加剤をさらに含み、
前記添加剤は、分子量が500〜3000で芳香族の特性を有する樹脂状物質を含み、
前記添加剤は、前記付加ポリマーと混和性であることを特徴とするフィルタ媒体。
【請求項2】
基体層とファインファイバ層とを含むフィルタ媒体であって、
前記ファインファイバ層は、縮合ポリマーを含むファイバを含み、
前記ファインファイバ層は、前記ファイバのランダム分布を含み、
前記ファイバは、0.001〜2ミクロンの直径を有し、
前記基体層は、濾過性能と、2〜900m/分の透過率と、0.4mm以上の厚さとを有するフィルタ基体層であり、
前記ファイバは、2〜25重量%の添加剤をさらに含み、
前記添加剤は、分子量が500〜3000で芳香族の特性を有する樹脂状物質を含み、
前記添加剤は、前記縮合ポリマーと混和性であることを特徴とするフィルタ媒体。
【請求項3】
フィルタ媒体であって、
請求項1又は請求項2に記載のファインファイバ層と、
8〜200g/m2の坪量を有する基体層と、
を含み、
前記ファイバは、0.01〜0.5ミクロンのファイバ直径を有することを特徴とするフィルタ媒体。
【請求項4】
前記フィルタ媒体は、60℃(140°F)の温度と100%の相対湿度を有する空気流に曝されたとき、前記ファイバの50%を超える量が16時間よりも長い時間にわたって濾過目的のために残存することを特徴とする請求項3に記載のフィルタ媒体。
【請求項5】
前記基体層は、セルロース、ガラス、ポリマー、金属、およびその組合せから選択されたファイバを含む不織布を含むことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ媒体。
【請求項6】
不織布の前記基体層は、セルロースファイバを含むことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ媒体。
【請求項7】
不織布の前記基体層は、合成ポリマーファイバを含むことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ媒体。
【請求項8】
前記ファイバは、前記ファイバの1〜40重量%のポリビニルアルコールポリマー及び架橋剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルタ媒体。
【請求項9】
前記縮合ポリマーは、ナイロン6を含むことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ媒体。
【請求項10】
前記縮合ポリマーは、ポリウレタンポリマーを含むことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ媒体。
【請求項11】
前記付加ポリマーは、ポリ塩化ビニルポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ媒体。
【請求項12】
前記付加ポリマーは、ポリビニルアルコールポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ媒体。
【請求項13】
ポリビニルアルコールポリマーと架橋剤との反応生成物を含むことを特徴とする請求項12に記載のフィルタ媒体。
【請求項14】
媒体複合体を含むフィルタエレメントであって、
前記媒体複合体は、複数のひだを有する基体層を含み、前記基体層は、セルロース基体、合成基体、またはセルロース基体と合成基体の混合基体を含み、前記ひだは、第1端部から第2端部まで延びている長さを有し、前記基体層は、濾過性能と、2〜900m/分の透過性と、0.4mm以上の厚さとを有するフィルタ媒体を含み、
前記媒体複合体は、円筒形カートリッジまたは平らなパネルを含み、
前記基体層は、請求項3に記載のファインファイバ層で少なくとも部分的に被覆されており、
前記ファインファイバ層は、0.005〜0.2mg/cm2の坪量と、0.01〜3ミクロンの厚さとを有し、
前記フィルタエレメントは、2〜900m/分の透過性と、6.1m/分(20fpm)で測定される、0.78μmの単分散ポリスチレン球状粒子を用いるASTM−1215−89規格によって測定される場合に20%以上の濾過性能とを有することを特徴とするフィルタエレメント。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国内の企業であり米国に居所を有するDonaldson Company,Inc.の名義で、米国を除く全ての国を指定国として2001年8月9日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、かつ2000年9月5日出願の米国出願第60/230,138号および2001年5月31日出願の米国出願第09/871,583号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、熱、湿度、反応性物質、および機械的応力に対する環境安定性を高めた状態で製造することができるポリマー材料にも関する。そのような材料は、安定性および強度が高められたマイクロファイバやナノファイバ材料などのファインファイバを形成する際に使用することができる。ファイバのサイズが小さくなるにつれ、材料の残存性が徐々に大きい問題になりつつある。そのようなファインファイバは様々な適用例で有用である。ある適用例では、このファインファイバ技術を使用してフィルタ構造を作製することができる。本発明は、ポリマー、ポリマー組成物、ファイバ、フィルタ、フィルタ構造、およびフィルター方法に関する。本発明の適用例は、特に、流体の流れ、例えば空気の流れや液体(例えば非水性または水性)の流れから粒子を取り除く(濾過する)ことに関する。記述される技法は、フィルタ媒体(メディア:media/medium)中に1つまたは複数のファインファイバ層を有する構造に関する。組成物およびファイバのサイズは、性質および残存性の組合せに対して選択される。
【0003】
(発明の背景)
本発明は、ファイバ、マイクロファイバ、ナノファイバ、ファイバ・ウェブ、ファイバ・マット、膜やコーティング、被膜などの透過性構造の形成を含む様々な適用例で使用することが可能な、性質が改善されたポリマー組成物に関する。本発明のポリマー材料は、様々な物理的形状または形態をとるポリマー材料に対し、湿度、熱、空気流、化学物質、および機械的な応力または衝撃による劣化の影響に耐える力を与えることが可能な、物理的性質を有する組成物である。また本発明は、一般に、ガス状および液状の材料を含む流体を濾過するための、フィルタ・タイプの媒体(メディア:media/medium)の分野にも関する。フィルタ媒体は、少なくともマイクロファイバ・ウェブ層またはナノファイバ・ウェブ層を基体材料と組み合わせて機械的に安定なフィルタ構造内に含んでいる。これらの層は一体となって、気体や液体などの流体がフィルタ媒体を通過するときに最小限の流量制限で、非常に多くの粒子が捕捉される優れたフィルター効率をもたらす。基体は、流体の流れの中で、内層の上流、下流、または内部に位置決めすることができる。様々な産業において、近年の多大な関心は、フィルター、すなわち気体や液体などの流体から望ましくない粒子を除去するといったフィルター用のフィルタ媒体を使用することに向けられている。一般的なフィルタープロセスでは、空気の流れやその他の気状の流れを含む流体から、または作動液や潤滑油、燃料、水流、またはその他の流体などの液体の流れから、微粒子を除去する。そのようなフィルタープロセスは、マイクロファイバおよび基体材料が機械的強度、化学的物理的安定性を有することを必要とする。フィルタ媒体は、広範囲に及ぶ温度条件、湿度、機械的振動および衝撃、流体の流れの中に混入した反応性および非反応性の研磨性または非研磨性の微粒子に曝される可能性がある。さらに、フィルタ媒体は、フィルタ媒体を逆圧パルス(微粒子の表面コーティングを除去するために、流体の流れを単時間逆転させる)に曝す自浄能力、または混入した微粒子をフィルタ媒体の表面から除去することができるその他のクリーニング機構をしばしば必要とする。そのような逆方向クリーニングによって、パルス・クリーニング後の圧力低下を大幅に改善し、すなわち、小さくすることができる。粒子捕捉効率は、一般にパルス・クリーニング後には改善されないが、パルス・クリーニングは圧力低下を小さくして、フィルタ動作用のエネルギーが節約される。そのようなフィルタを使用中に取り外し、水性または非水性クリーニング組成物中でクリーニングすることができる。そのような媒体はしばしば、ファインファイバを紡糸し、次いでマイクロファイバが絡み合ったウェブを多孔質基体上に形成することによって製造される。紡糸プロセスでは、ファイバが、そのファイバ間に物理結合を形成することができ、それによって、ファイバ・マットを一体化層に絡み合わせることができる。次いでそのような材料を、カートリッジや平らなディスク、キャニスタ、パネル、バッグ、ポーチなどの所望のフィルタ形態に作製することができる。そのような構造内では、媒体に十分にひだ(pleat)を付け、ロール状にし、または他の方法で基体構造上に位置決めすることができる。
【0004】
不織布ファインファイバフィルタ媒体の形成には、ガラス繊維、金属、セラミックス、および広範囲にわたるポリマー組成物を含む様々な材料が使用されている。直径が小さいマイクロファイバおよびナノファイバの製造には、様々な技法が使用されている。ある方法は、材料を、溶融材料として、または後で蒸発させる溶液中に溶かした状態で、微細なキャピラリまたは開口に通すことを含む。ファイバは、ナイロンなど合成繊維の製造に一般的な「紡糸口金」を使用することによって形成することもできる。静電紡糸も知られている。そのような技法は、皮下針、ノズル、キャピラリ、または可動エミッタの使用を含む。これらの構造によれば、後で高電圧静電場によって収集ゾーンに引き付けられるポリマー溶液が得られる。材料がエミッタから引き離され、静電ゾーン内で加速するにつれ、ファイバは非常に細くなり、溶媒蒸発によってファイバ構造に形成することができる。
【0005】
フィルタ媒体にはより厳しい用途が考えられるので、100°Fから250°F、最高300°Fまでの高温、10%から90%、最高100%RHまでの高湿度、気体と液体の両方が高流量で、ミクロンおよびサブミクロンの微粒子(約0.01ミクロンから10ミクロンを超える範囲)を濾過し、研磨性および非研磨性で反応性および非反応性の微粒子を流体の流れから除去するという過酷な条件に耐えられるように、著しく改善された材料が必要である。
【0006】
したがって、高温・高湿度で流量が大きく前記ミクロンおよびサブミクロンの粒状物質を含む流れを濾過するために、改善された性質をもたらすポリマー材料、ミクロファイバおよびナノファイバ材料とフィルタ構造が、非常に求められている。
【0007】
(発明の概要)
本発明は、改善されたポリマー材料を提供する。このポリマーは、改善された物理的化学的安定性を有する。ポリマー・ファインファイバ(ミクロファイバおよびナノファイバ)は、有用な製品形態に作り上げることができる。ナノファイバは、直径が200ナノメータ未満、すなわち0.2ミクロン未満のファイバである。ミクロファイバは、直径が0.2ミクロンより大きいが10ミクロン以下のファイバである。このファインファイバは、改善された多層のミクロフィルター媒体(メディア:media/medium)構造の形に作製することができる。本発明のファインファイバ層は、結合して絡み合った状態のネットを形成することができるファインファイバのランダム分布を含む。微粒子の通過をファインファイバが阻む結果、高いフィルター性能が得られる。剛性、強度、透過性といった構造上の性質は、ファインファイバが接着される基体によって得られる。ファインファイバが絡み合った網状組織は、重要な特徴として、マイクロファイバまたはナノファイバの形をとるファインファイバと、そのファイバ間にある比較的小さいスペースとを有する。そのようなスペースは一般に、ファイバ間において、約0.01ミクロンから約25ミクロンに及び、またはしばしば約0.1ミクロンから約10ミクロンに及ぶ。ファインファイバ層およびセルロース層を含むフィルタ製品は薄く、適切な基体の選択の余地がある。ファインファイバに基体を加えたフィルタ媒体全体の厚さは、ファインファイバによって1ミクロン未満だけ増加する。使用中、フィルタは、ファインファイバ層を通過して流入する微粒子を止めることができ、捕捉された粒子による実質的な表面負荷を得ることができる。ダストまたはその他の流入微粒子を含む粒子は、ファインファイバの表面にダスト・ケーキを素早く形成し、微粒子を除去するための初期効率と全体効率とを高く維持する。粒径が約0.01〜約1ミクロンの比較的微細な汚染物質であっても、ファインファイバを含むフィルタ媒体は、非常に高いダスト容量を有する。
【0008】
本明細書に開示されるポリマー材料は、熱、湿度、高流量、逆パルス・クリーニング、動作上の摩耗、サブミクロン粒子、使用中のフィルタのクリーニング、およびその他の厳しい条件による望ましくない影響に対する抵抗性が、大幅に改善された。改善されたマイクロファイバおよびナノファイバの性能は、このマイクロファイバまたはナノファイバを形成するポリマー材料の特性を改善することによって得られる。さらに、本発明の改善されたポリマー材料を使用した本発明のフィルタ媒体は、研磨性微粒子と、ばらばらのファイバまたはフィブリルを含まない滑らかな外面の存在下、高効率、低い流量制限、高い耐久性(応力に関係する、または環境に関係する)を含めた、いくつかの有利な特徴をもたらす。フィルタ材料の構造全体は、全体的により薄い媒体を提供し、単位体積当たりの媒体面積が広くなり、媒体を通る速度が遅くなり、フィルター効率が高くなり、かつ流量制限が低くなる。
【0009】
本発明の好ましい形態は、第1のポリマーと、これとは異なる第2のポリマー(ポリマーのタイプ、分子量、または物理的性質が異なる)であって、高温で調製されまたは処理されたものを含むポリマー・ブレンドである。ポリマー・ブレンドは、反応させて単一の化学種に形成することができ、またはアニール・プロセスによって物理的に結合(combined)させ、それによってブレンド済みの組成物にすることができる。アニールとは、結晶化度や応力緩和、配向などの、物理的変化を意味する。示差走査熱量計分析によって単一のポリマー材料であることが明らかにされるように、好ましい材料を化学的に反応させて単一のポリマー種にする。そのような材料は、好ましい添加剤材料と合わせた場合、疎油性、疎水性、または高温多湿の厳しい動作条件に接触させたときにその他の関連する改善された安定性をもたらす添加剤の表面コーティングを、マイクロファイバの表面に形成することができる。このクラスの材料のファインファイバは、直径が2ミクロンから0.01未満でよい。そのようなマイクロファイバは、部分的にポリマー表面に溶解しまたはポリマー表面とアロイ状態になり、あるいはその両方の状態になる、添加剤材料の別個の層または添加剤材料の外部コーティングを含んだ滑らかな表面を有することができる。ブレンド・ポリマー系で使用される好ましい材料には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン(6−66−610)コポリマー、およびその他の直線状の、一般に脂肪族のナイロン組成物が含まれる。好ましいナイロンコポリマー樹脂(SVP−651)の分子量を、末端基滴定により分析した(J.E.WalzおよびG.B.Taylor、determination of the molecular weight of nylon、Anal.Chem.Vol.19、Number 7、第448〜450ページ(1947))。数平均分子量(W
n)は、21,500から24,800の間であった。組成物を、3成分ナイロン、すなわちナイロン6が約45%、ナイロン66が約20%、ナイロン610が約25%の溶融温度の状態図によって評価した(第286ページ、Nylon Plastics Handbook、Melvin Kohan編、Hanser Publisher、New York(1995))。
【0010】
報告されたSVP651樹脂の物理的性質は、以下の通りである。
【0012】
そのようなポリマー系には、加水分解の程度が87〜99.9+%のポリビニルアルコールを使用することができる。これらは架橋していることが好ましい。またこれらは、相当な量の疎油性および疎水性の添加材料に架橋して結合していることが最も好ましい。
【0013】
本発明の別の好ましい形態は、ファイバの寿命または動作上の性質が改善されるよう、添加剤組成物に結合した単一のポリマー材料を含む。本発明のこの態様に有用な好ましいポリマーには、ナイロン・ポリマー、ポリ塩化ビニリデンポリマー、ポリフッ化ビニリデンポリマー、ポリビニルアルコールポリマーが含まれ、特に、疎油性および疎水性が高い添加剤と合わせた場合にはこれら列挙された材料が含まれ、添加剤材料がファインファイバの表面にコーティングして形成されているマイクロファイバまたはナノファイバを得ることができる。この場合も、同様のナイロン、同様のポリ塩化ビニルポリマーのブレンド、ポリ塩化ビニリデンポリマーのブレンドが、本発明では有用である。さらに、異なるポリマーのポリマー・ブレンドまたはアロイも本発明により企図される。この点に関しては、相溶性あるポリマーの混合物が、本発明のマイクロファイバ材料を形成する際に有用である。フッ素系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、低分子量樹脂(例えば分子量が約3000未満の第3級ブチルフェノール樹脂など)の添加剤組成物を使用することができる。この樹脂は、メチレン架橋基が存在しない状態でフェノール核同士がオリゴマー結合していることを特徴とする。ヒドロキシル基および第3ブチル基の位置は、その環の周りにランダムに位置決めすることができる。フェノール核同士の結合は常にヒドロキシル基の隣で生じ、ランダムではない。同様に、ポリマー材料は、ビスフェノールAから形成されたアルコール可溶性の非直線状ポリマー樹脂と組み合わせることができる。そのような材料は、アルキレン基やメチレン基などのいかなる架橋基も存在しない状態で芳香族環と芳香族環を直接結び付けるオリゴマー結合を使用して形成される点が、上述の第3級ブチルフェノール樹脂と同様である。
【0014】
本発明の特に好ましい材料は、寸法が約0.01〜2ミクロンのマイクロファイバ材料を含む。最も好ましいファイバのサイズは、0.05ミクロン〜0.5ミクロンの範囲である。そのような好ましいサイズのファイバは、優れたフィルタ機能をもたらし、逆パルス・クリーニングおよびその他の態様を容易にする。本発明の非常に好ましいポリマー系は、セルロース系基体に接触したときに、その基体にしっかりと結合して逆パルス・クリーニングおよびその他の機械的応力による層剥離に耐えることができるようその基体に十分な強度で接着するような、接着特性を有する。そのような形態では、ポリマー材料は、フィルタ構造上で逆方向であること以外は典型的なフィルター条件に実質上等しいパルス・クリーン入力を受けながら、基体に接着されたままでなければならない。そのような接着は、ファイバが基体に接触するときのファイバ形成時の溶媒効果により、または基体上のファイバを熱または圧力で後処理することにより、行うことができる。しかしポリマー特性は、水素結合のような特定の化学的相互作用、Tgよりも高くまたは低い温度で生じるポリマーと基体との接触、添加剤を含むポリマー形成などの接着性を決定する際に、重要な役割を果たすと考えられる。接着時に溶媒または水蒸気で可塑化したポリマーは、接着性を増大させることができる。
【0015】
本発明の重要な態様は、フィルタ構造に形成されたそのようなマイクロファイバまたはナノファイバ材料を有効利用できることである。そのような構造では、本発明のファインファイバ材料をフィルタ基体上に形成して接着させる。スパン・ボンデッド・ファブリック、合成繊維の不織布、セルロース系と合成物とガラス繊維とのブレンドから作製された不織布、ガラス不織および織布、押し出されかつ穴があけられた材料のようなプラスチック・スクリーン、有機ポリマーのUFおよびMF膜など、天然繊維および合成繊維の基体を使用することができる。流れの中に懸濁しまたは混入した微粒子をその流れから除去するため、シート状基体またはセルロース系不織ウェブを、空気の流れまたは液体の流れを含めた流体の流れの中に配置されるフィルタ構造に形成することができる。フィルタ材料の形状および構造は、設計技術者いかんによる。形成後のフィルタ要素の1つの重要なパラメータは、熱、湿度、またはその両方の影響に対する抵抗性である。本発明のフィルタ媒体の一態様は、長時間にわたる温水への浸漬に耐えられるかどうか、試験をすることである。浸漬試験は、ファインファイバが高温多湿の条件に耐えられるかどうか、また、強力なクリーニング用界面活性剤および強アルカリ性材料をかなりの割合で含有する可能性のある水溶液中でのフィルタ要素のクリーニングに耐えられるかどうかに関し、価値ある情報を提供することができる。本発明のファインファイバ材料は、基体の表面に形成されたファインファイバを少なくとも50%保ちながら、温水への浸漬に耐えられることが好ましい。少なくとも50%のファインファイバが保たれることによって、フィルター能力を失うことなく、または背圧を増大させることなく、十分なファイバ効率を維持することができる。少なくとも75%保たれることが、最も好ましい。
【0016】
ファインファイバ・フィルタ構造は2重層構造または多層構造を含むが、この構造は、フィルタが、1つまたは複数のファインファイバ層を、1つまたは複数の合成物、セルロース系、またはブレンドされたウェブと組み合わせて、またはそのようなウェブとは別個に含むものである。別の好ましいモチーフは、ファインファイバを他のファイバのマトリックスまたはブレンド中に含む構造である。
【0017】
本発明者等は、フィルタ構造内のファイバおよびマイクロファイバ層の重要な特徴は、特にマイクロファイバが高温で湿度、水分、または溶媒に接触する場合に、耐熱性、耐湿性または防湿性、および耐溶媒性に関係すると考える。さらに、本発明の材料の第2の重要な性質は、その材料の基体構造への接着性に関係する。マイクロファイバ層の接着性は、フィルタ材料の重要な特徴であり、例えば、マイクロファイバ層が基体から層剥離することなく材料を製造することができるように、また、著しい層剥離を引き起こすことなく、マイクロファイバ層に基体を加えたものを加工してひだ付きのロール形材料を含むフィルタ構造およびその他の構造を作製できるようにするものである。本発明者等は、1つのポリマー材料の溶融温度またはその溶融温度付近であるがそのすぐ下の温度まで、すなわち典型的な場合では最も低い溶融温度よりも低い溶融温度まで温度を上昇させる製造プロセスの加熱ステップによって、ファイバ同士の接着およびファイバと基体との接着性が大幅に改善されることを見出した。溶融温度またはそれよりも高い温度では、ファインファイバの繊維状構造がばらばらになる可能性がある。また、加熱速度を制御することも極めて重要である。ファイバがその結晶化温度に長時間曝される場合、やはり繊維状構造がバラバラになる可能性がある。慎重に熱処理を行うことによって、やはりポリマーの性質は改善されるが、その性質は、添加剤材料が表面に移行してファイバ表面の疎水基または疎油基に曝され、外側に添加剤層が形成されることによって得られるものである。
【0018】
性能の基準は、材料が、30%、50%、80%、または90%というフィルター効率を保持しながら、その最終用途に応じて様々な動作温度、すなわち140°F、160°F、270°F、300°Fで1時間または3時間にわたり無傷の状態で残存可能なことある。別の性能の基準は、材料が、その最終用途に応じて30%、50%、80%、または90%という有効なファインファイバをフィルタ層中に保持しながら、その最終用途に応じて様々な動作温度、すなわち140°F、160°F、270°F、300°Fで1時間または3時間にわたり無傷の状態で残存可能なことある。これらの温度に耐えられることは、低湿度、高湿度、および水が飽和した空気中において重要である。本発明のマイクロファイバおよびフィルタ材料は防湿性があると考えられ、これらの材料は、約5分よりも長い時間にわたって効率を維持しながら、160°Fよりも高い温度での浸漬に耐えることができる。同様に、本発明のマイクロファイバ材料およびフィルタ材料の耐溶媒性は、50%の効率を維持しながら、約5分よりも長い時間、70°Fで、エタノールや炭化水素、動作流体、芳香族溶媒などの溶媒との接触に耐えることができる材料から得られる。
【0019】
本発明のファインファイバ材料は、集塵用のパルス・クリーンおよび非パルス・クリーン・フィルタ、ガス・タービンおよびエンジンの空気吸入または導入システム、ガス・タービンの吸入および導入システム、高荷重エンジンの吸入または導入システム、軽車両エンジンの吸入または導入システム、Zeeフィルタ、車内空気、オフロード車両の車内空気、ディスク・ドライブ・エア、フォトコピア−トナー除去、商用または住宅用のフィルター適用例の両方におけるHVACフィルタを含めた様々なフィルタの適用例で使用することができる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明のマイクロファイバまたはナノファイバを含有する層を構成するファインファイバは、ファイバでよく、直径は約0.001〜2ミクロン、好ましくは0.05〜0.5ミクロンでよい。典型的なファインファイバフィルター層の厚さはファイバ直径の約1〜100倍に及び、その坪量は約0.01〜240μg・cm
−2に及ぶ。
【0021】
空気や気体の流れなどの流体の流れは、その内部にしばしば粒子状物質を含有する。粒子状物質の一部または全ては、流体の流れから除去する必要がある。例えば、モータ作動式車両の客室(キャビン)への吸気流、コンピュータ・ディスク・ドライブ内の空気、HVACの空気、フィルタ・バッグ、バリア用布地、織布を使用したクリーン・ルームの換気および施工、モータ作動式車両用エンジンまたは発電装置への空気、ガス・タービンに向けられた気体の流れ、様々な燃焼炉への空気の流れは、その内部にしばしば粒子状物質を含んでいる。キャビンのエア・フィルタの場合、乗客が快適であるように、かつ/または美的な観点から、粒子状物質を除去することが望ましい。エンジン、ガス・タービン、および燃焼炉への空気および気体の吸入流に関しては、微粒子によって、関係する様々な機構の内部の仕組みにかなりの損傷が生じる可能性があるので、粒子状物質を除去することが望ましい。その他の場合、工業プロセスまたはエンジンからの生成ガスまたは排ガスは、その内部に粒子状物質を含有する可能性がある。そのようなガスは、様々な下流装置を通して大気中に排出することができ、または排出すべきであるが、その前に、これらの流れから粒子状物質を実質上除去することが望ましいと考えられる。
【0022】
エア・フィルタ設計の基本原理および問題のいくつかの一般的な理解は、以下のタイプのフィルタ媒体、すなわち表面負荷媒体と深さ媒体を考えることによって、理解することができる。これらのタイプの媒体のそれぞれは十分に研究されており、それぞれ広く利用されている。これらに関するある特定の原理が、例えば米国特許第5,082,476号、第5,238,474号、および第5,364,456号に記載されている。これら3つの特許の完全な開示を、参照により本明細書に組み込む。
【0023】
フィルタの「寿命」は、一般に、フィルタを横切る選択された限界の圧力低下によって定められる。フィルタを横切る端から端までの圧力増大は、その適用例またはデザインに応じて定められたレベルでの寿命を規定する。この圧力増大は負荷がかかることによって生じるので、システムの効率が等しい場合、より長い寿命であることは一般により高い能力に直接関連する。効率とは、媒体が微粒子を通過させるのではなくて捕捉する傾向をいう。一般に、気体流の流れから微粒子を除去する際のフィルタ媒体の効率が高いほど、概してフィルタ媒体はより素早く「寿命」圧力差に近付くことになる(他の変数は一定に保たれると仮定する)ことは明らかであろう。本願で、「フィルタ目的のために変化しない」という文言は、選択された適用例に必要とされるように、流体の流れから微粒子を除去するのに十分な効率が維持されることを指す。
【0024】
ペーパ・フィルタ要素(element)は、表面負荷媒体の、広く使用されている形である。一般に、ペーパ要素は、粒子状物質を含有する気体の流れを横断するように配向されたセルロースの、合成の、またその他の繊維からなる稠密なマットを含む。ペーパは一般に、気体流を透過させるように、また、十分微細な細孔径および適切な多孔度を有して選択されたサイズよりも大きい粒子がその内部を通過しないように、構成される。気体(流体)がフィルタ・ペーパを通過するにつれ、フィルタ・ペーパの上流側は、拡散および阻止により、気体(流体)の流れから選択されたサイズの粒子を捕捉して保持するよう作動する。粒子は、ダスト・ケーキとしてフィルタ・ペーパの上流側に収集される。時間と共に、ダスト・ケーキもフィルタとして動作し始め、効率を高める。これは、ときどき「シーズニング」と呼ばれ、すなわち初期効率よりも効率が高くなる。
【0025】
上述のような単一のフィルタ・デザインには、少なくとも2つのタイプの問題がある。第1は、比較的単純な欠陥であり、すなわちペーパが破れてシステムが故障する。第2は、粒子状物質がフィルタの上流側に薄いダスト・ケーキまたは層として急速に蓄積され、圧力低下を増大させる。ペーパ・フィルタなどの表面負荷フィルタ・システムの「寿命」を延ばすために、様々な方法が利用されている。1つの方法は、ひだ付き構造内に媒体を設け、それによって、気体流の流れに直面する媒体の表面積が、平らな非ひだ付き構造の場合に比べて増大するようにする。この構成によってフィルタ寿命は延びるが、依然としてかなりの制約がある。このため表面負荷媒体は、フィルタ媒体を比較的遅い速度で通過する適用例において、すなわち一般には約20〜30フィート/分以下の速度、典型的にはおよそ約10フィート/分以下の速度の適用例で、主に使用できることがわかった。ここで「速度」という用語は、媒体を通る平均速度のことである(すなわち媒体面積当たりの流量)。
【0026】
一般に、ひだ付きペーパ媒体を通る空気流速が増大するにつれ、フィルタ寿命は速度の2乗分の1に比例して減少する。このため、ひだ付きペーパの表面負荷フィルタ・システムは、十分な空気流を必要とするシステム用の微粒子フィルタとして使用され、フィルタ媒体に関しては比較的大きい表面積が必要とされる。例えば長距離輸送ディーゼル・トラックの典型的な円筒形ひだ付きペーパ・フィルタ要素は、その直径が約9〜15インチ、長さが約12〜24インチ、ひだの深さが約1〜2インチになる。したがってフィルター表面積(片側)は、一般に30〜300平方フィートである。
【0027】
多くの適用例、特に流量が比較的高いものでは、代替タイプのフィルタ媒体をときどき一般に「深さ」媒体と呼ぶ。典型的な深さ媒体は、比較的厚い繊維性材料の絡まりを含む。深さ媒体は一般に、その多孔度、密度、または固形分パーセントによって定義される。例えば、2〜3%個体性媒体は、全体積の約2〜3%が繊維性材料(固形分)を含み、残りが空気または気体のスペースであるように配置されたファイバの深さ媒体マットと考えられる。
【0028】
深さ媒体を定義するための別の有用なパラメータは、ファイバ直径である。固体性性パーセントが一定に保たれるがファイバ直径(サイズ)が減少する場合、細孔径またはファイバ間スペースが減少し、すなわちフィルタがより効率的になり、より効果的により小さい粒子を捕捉することになる。
【0029】
典型的な従来の深さ媒体フィルタは、深く、比較的一定(または均一)の密度の媒体であり、すなわち、深さ媒体の固体性性がその厚さ全体にわたって実質上一定に保たれるシステムである。本明細書で「実質上一定」とは、密度の変動があったとしても、媒体の深さ全体にわたって比較的わずかな変動しか見出されないことを意味する。そのような変動は、例えば、フィルタ媒体が位置決めされている容器によって、外部係合面がわずかに圧縮されることから生じる可能性がある。
【0030】
勾配密度深さ媒体の配置構成が開発されている。そのようないくつかの配置構成は、例えば米国特許第4,082,476号、第5,238,474号、および第5,364,456号に記載されている。一般に、深さ媒体の配置構成は、その体積または深さの実質上全体にわたって粒子状物質の「負荷」がかかるように設計することができる。このためそのような配置構成は、フィルタ寿命が終わりに近付いたときに、表面負荷システムに比べてより大量の粒子状物質の負荷がかかるように、設計することができる。しかし一般に、十分な負荷をかける場合には比較的固体性の低い媒体が望まれるので、上述のような配置構成では効率が犠牲になっていた。上記特許に示されるような勾配密度システムは、十分な効率およびより長い寿命が得られるように設計されている。ある場合には、表面負荷媒体をそのような配置構成における「研磨」フィルタとして利用する。
【0031】
ポリマー材料は、不織布および織布、ファイバおよびマイクロファイバに作製されてきた。ポリマー材料は、製品の安定性に必要とされる物理的な性質を提供する。これらの材料は、日光、湿度、高温、またはその他のネガティブな環境上の影響のもと、その寸法が大幅に変化してはならず、分子量が低下してはならず、可撓性が低下してはならず、あるいは応力亀裂または物理的劣化が生じてはならない。本発明は、環境内の光などの電磁放射線の入射、熱、湿度、およびその他の物理的な問題に直面した場合に物理的性質を維持することができる、改善されたポリマー材料に関する。
【0032】
本発明のポリマー組成物に使用することができるポリマー材料には、付加重合体(付加ポリマー)材料と縮合重合体(縮合ポリマー)の材料の両方が含まれ、例えばポリオレフィンやポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー、およびこれらの混合などが含まれる。これらの一般的なクラスに包含される好ましい材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(およびその他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびこれらの共重合体(コポリマー)(ABAタイプのブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、様々な程度に加水分解した(87%〜99.5%)ポリビニルアルコールであって、架橋した形および架橋していない形のものが含まれる。好ましい付加重合体は、ガラス状になる傾向がある(Tgが室温よりも高い)。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマーの組成物またはアロイの場合に生じ、ポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料の場合には結晶化度が低くなる。ポリアミド縮合重合体の1つのクラスは、ナイロン材料である。「ナイロン」という用語は、全ての長鎖合成ポリアミドの総称である。一般にナイロンという呼称には、出発材料がC
6ジアミンおよびC
6の2価の酸であることを示すナイロン6,6のように、一連の番号が含まれる(第1の桁はC
6ジアミンを示し、第2の桁はC
6ジカルボン酸を示す)。別のナイロンは、少量の水の存在下でε−カプロラクタムを縮重合することによって作製することができる。この反応によって、直線状ポリアミドであるナイロン6(環状ラクタムから形成され、ε−アミノカプロン酸とも呼ばれる)が形成される。さらに、ナイロンコポリマーも考えられる。コポリマーは、様々なジアミン化合物、様々な2価の酸の化合物、および様々な環状ラクタム構造を反応混合物で結合させ、次いでポリアミド構造中にランダムに位置決めされたモノマー材料でナイロンを形成することによって、作製することができる。例えばナイロン6,6−6,10の材料は、ヘキサメチレンジアミンと、C
6およびC
10の2価の酸のブレンドから製造されたナイロンである。ナイロン6−6,6−6,10は、ε−アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンと、C
6およびC
10の2価の酸の材料のブレンドから製造されたナイロンである。
【0033】
ブロックコポリマーは、本発明のプロセスにおいても有用である。そのようなコポリマーでは、物質を膨潤させる溶媒の選択が重要である。選択される溶媒は、両方のブロックを溶媒に溶解させるようなものである。一例は、ABA(スチレン−EP−スチレン)ポリマーまたはAB(スチレン−EP)ポリマーを塩化メチレン溶媒に溶解させたものである。1つの成分が溶媒に溶解しない場合、ゲルが形成される。そのようなブロックコポリマーの例として、Kraton(登録商標)タイプのスチレン−b−ブタジエン、スチレン−b−水素化ブタジエン(エチレンプロピレン)、Pebax(登録商標)タイプのe−カプロラクタム−b−エチレンオキシド、Sympatex(登録商標)のポリエステル−b−エチレンオキシド、エチレンオキシドとイソシアネートのポリウレタンがある。
【0034】
付加重合体、例えばポリフッ化ビニリデンやシンジオタクチックポリスチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルと、非晶質付加重合体、例えばポリ(アクリロニトリル)と、そのアクリル酸およびメタクリレートとのコポリマー、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、およびその様々なコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、およびその様々なコポリマーは、低圧および低温で可溶であるので、比較的容易に溶液紡糸することができる。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンのような高度に結晶化したポリマーは、それらを溶液紡糸する場合には高温高圧の溶媒を必要とする。したがって、ポリエチレンおよびポリプロピレンの溶液紡糸は非常に困難である。電界溶液紡糸(electrostatic solution spining)は、ナノファイバおよびマイクロファイバを作製する一方法である。
【0035】
本発明者等は、ポリマー混合物、アロイ形態中に、または架橋した化学結合構造中に2種以上のポリマー材料を含むポリマー組成物を形成することの相当な利点も見出した。本発明者等は、そのようなポリマー組成物がポリマーの属性を変えることによって物理的性質を改善すると考え、例えば、ポリマー鎖の柔軟性または鎖の移動性が改善され、全体的な分子量が増加し、ポリマー材料の網状組織の形成により強化されると考えている。
【0036】
この概念の一実施形態では、有益な性質を得るために、2つの関連するポリマー材料をブレンドすることができる。例えば、高分子量のポリ塩化ビニルを低分子量のポリ塩化ビニルとブレンドすることができる。同様に、高分子量のナイロン材料を低分子量のナイロン材料とブレンドすることができる。さらに、一般的なポリマーの種類の中でも異なる種類のものをブレンドすることができる。例えば高分子量のスチレン材料を、低分子量の耐衝撃性(high impact)ポリスチレンとブレンドすることができる。ナイロン6の材料は、ナイロン6;6,6;6,10コポリマーなどのナイロンコポリマーとブレンドすることができる。さらに、87%が加水分解したポリビニルアルコールのように、加水分解の程度が低いポリビニルアルコールは、加水分解の程度が98%から99.9%の間、またはそれ以上の、完全にまたは高度に加水分解したポリビニルアルコールとブレンドすることができる。混合物中のこれらの材料の全ては、適切な架橋機構を使用して架橋することができる。ナイロンは、アミド結合中の窒素原子と反応する架橋剤を使用して、架橋することができる。ポリビニルアルコール材料は、モノアルデヒドなど、例えばホルムアルデヒドや、尿素、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびその類似体、ホウ酸、およびその他の無機化合物、ジアルデヒド、2価の酸、ウレタン、エポキシ、およびその他の既知の架橋剤など、ヒドロキシル反応性材料を使用して架橋することができる。架橋技術は十分に知られており理解されている現象であって、架橋試薬が反応してポリマー鎖同士の間に共有結合を形成し、それによって、分子量、耐薬品性、全体強度、機械的劣化に対する抵抗力が大幅に改善されるものである。
【0037】
本発明者等は、添加された材料が、ファインファイバの形をとるポリマー材料の性質を著しく改善することを見出した。熱、湿度、衝撃、機械的応力の影響、およびその他の負の環境の影響に対する抵抗力は、添加された材料を存在させることによって著しく改善することができる。本発明者等は、本発明のマイクロファイバ材料を加工しながら、添加された材料が疎油性および疎水性を改善することができ、材料の化学的安定性の改善を助けることができるようになることを見出した。本発明者等は、これら疎油性および疎水性の添加剤が保護層被覆、融蝕性表面を形成し、またはその表面から若干の深さまで浸透してポリマー材料の性質を改善するので、これらの添加剤を存在させることによって、マイクロファイバの形をとる本発明のファインファイバの性質が改善されると考えている。本発明者等は、これらの材料の重要な特徴は、非常に疎水性の高い基であって好ましくは疎油性も有することができる疎水基が存在することであると考える。疎水性が非常に高い基には、フルオロカーボン基、疎水性炭化水素界面活性剤またはブロック、および実質上の炭化水素オリゴマー組成物が含まれる。これらの材料は、一般にポリマーとの物理的な結合または会合が得られるように、ポリマー材料に対して相溶性の傾向がある分子の一部を有する組成物に製造されるが、疎水性または疎油性が非常に高い基は、添加剤がポリマーと会合する結果、その表面に保護表面層を形成し、またはポリマー表面層とのアロイまたは混合物を形成するようになる。添加剤のレベルが10%の0.2ミクロンのファイバでは、添加剤が表面に向かって移行した場合、表面の厚さが50Å程度になるよう計算される。移行は、バルク材料中で疎油性または疎水性の基が非相溶性であることにより生じると考えられる。50Åの厚さは、保護コーティングに妥当な厚さであると考えられる。直径0.005ミクロンのファイバでは、50Åの厚さは20質量%に相当する。厚さ2ミクロンのファイバでは、50Åの厚さは2質量%に相当する。添加剤材料は、約2〜25重量%の量で使用されることが好ましい。本発明のポリマー材料と組み合わせて使用することができるオリゴマー添加剤には、フッ素系化学物質、非イオン性界面活性剤、および低分子量の樹脂またはオリゴマーを含む、分子量が約500〜約5000、好ましくは約500〜約3000のオリゴマーが含まれる。
【0038】
本発明で有用なフッ素系有機(fluoro−organic)湿潤剤は、式
R
f−G
で表される有機分子であり、ただしR
fはフルオロ脂肪族ラジカルであり、Gは、カチオン基、アニオン基、非イオン性基、または両性基など、少なくとも1個の親水基を含有する基である。非イオン性材料が好ましい。R
fは、少なくとも2個の炭素原子を含有する、フッ素化した1価の脂肪族有機ラジカルである。これは、飽和パーフルオロ脂肪族の1価の有機ラジカルであることが好ましい。しかし、水素原子または塩素原子を、骨格鎖上に置換基として存在させることができる。多数の炭素原子を含有するラジカルは十分に機能することができるが、大きいラジカルの場合、通常は骨格鎖が短い場合に可能であるよりもフッ素を十分に利用できないので、約20個以下の炭素原子を含有することが好ましい。R
fは、炭素原子を約2〜8個含有することが好ましい。
【0039】
本発明で使用されるフッ素系有機剤に使用可能なカチオン基には、アミンまたは第4級アンモニウムカチオン基であって、酸素を含まず(例えば−NH
2)または酸素を含有する(例えばアミンオキシド)ことができるものが含まれる。そのようなアミンおよび第4級アンモニウムカチオン親水基は、式−NH
2、−(NH
3)X、−(NH(R
2)
2)X、−(NH(R
2)
3)X、または−N(R
2)
2→Oで表すことができ、ただしxは、ハロゲン化物、水酸化物、スルフェート、重硫酸塩、またはカルボキシレートなどのアニオン性対イオンであり、R
2はHまたはC
1〜18アルキル基であり、各R
2は他のR
2基と同じかまたは異なるものにすることができる。R
2はHまたはC
1〜16アルキル基であり、Xはハロゲン化物、水酸化物、または重硫酸塩であることが好ましい。
【0040】
本発明で使用されるフッ素系有機湿潤剤に使用可能なアニオン基には、イオン化によってアニオンラジカルになることができる基が含まれる。アニオン基は、−COOM、−SO
3M、−OSO
3M、−PO
3HM、−OPO
3M
2、または−OPO
3HMなどの式を有することができ、ただしMはH、金属イオン、(NR
14)
+、または(SR
14)
+であり、各R
1は独立にH、あるいは置換されまたは置換されていないC
1〜C
6アルキルである。Mは、Na
+またはK
+であることが好ましい。本発明で使用されるフッ素系有機湿潤剤の好ましいアニオン基は、式−COOMまたは−SO
3Mを有する。アニオン性のフッ素系有機湿潤剤の基は、一般に、エチレン不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸モノマーであってそこにフルオロカーボン側基が結合しているモノマーから製造されるアニオン性ポリマー材料を含む。そのような材料には、3M社から得られるFC−430およびFC−431と呼ばれる界面活性剤が含まれる。
【0041】
本発明で使用されるフッ素系有機湿潤剤に使用可能な両性基には、上記定義された少なくとも1個のカチオン基と、上記定義された少なくとも1個のアニオン基を含有する基が含まれる。
【0042】
本発明で使用されるフッ素系有機湿潤剤に使用可能な非イオン性基には、親水性であるが農業で通常使用されるpH条件下ではイオン化しない基が含まれる。非イオン性基は、−O(CH
2CH
2)xOHであってxが1より大きいものや、−SO
2NH
2、−SO
2NHCH
2CH
2OH、−SO
2N(CH
2CH
2H)
2、−CONH
2、−CONHCH
2CH
2OH、または−CON(CH
2CH
2OH)
2などの式を有するものでよい。そのような材料の例には、以下の構造の材料が含まれる。
【0043】
F(CF
2CF
2)
n−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2O)
m−H
ただしnは2〜8であり、mは0〜20である。
【0044】
その他のフッ素系有機湿潤剤には、例えば米国特許第2,764,602号、第2,764,603号、第3,147,064号、および第4,069,158号に記載されているカチオン性フルオロケミカルが含まれる。そのような両性フッ素系有機湿潤剤には、例えば米国特許第2,764,602号、第4,042,522号、第4,069,158号、第4,069,244号、第4,090,967号、第4,161,590号、および第4,161,602号に記載されている両性フルオロケミカルが含まれる。そのようなアニオン性フッ素系有機湿潤剤には、例えば米国特許第2,803,656号、第3,255,131号、第3,450,755号、および第4,090,967号に記載されているアニオン性フルオロケミカルが含まれる。
【0045】
そのような材料の例には、duPont Zonyl FSNおよびduPont Zonyl FSO非イオン性界面活性剤がある。本発明のポリマーに使用することができる添加剤の別の態様には、一般構造が
CF
3(CX
2)
n−アクリレート
であり、ただしXが−Fまたは−CF
3、nが1〜7である、3MのScotchgard材料などの低分子量フルオロカーボンアクリレート材料が含まれる。
【0046】
さらに、低級アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、ノニルフェノールエトキシレートなどを含む非イオン性炭化水素界面活性剤も、本発明の添加剤材料として使用することができる。このような材料の例には、Triton X−100およびTriton N−101が含まれる。
【0047】
本発明の組成物の添加剤材料として使用するのに役立つ材料は、第3級ブチルフェノールオリゴマーである。そのような材料は、分子量が比較的低い芳香族フェノール樹脂になる傾向がある。そのような樹脂は、酵素酸化カップリングによって調製されたフェノールポリマーである。メチレン架橋が存在しないと、独自の化学的物理的な安定性が得られる。これらのフェノール樹脂は、様々なアミンおよびエポキシと架橋することができ、様々なポリマー材料に対して相溶性がある。これらの材料は一般に、フェノール基および芳香族基を有するメチレン架橋基が存在しない繰返しモチーフのフェノール材料を特徴とする、以下の構造式によって例示される。
【0049】
上式で、nは2〜20である。これらフェノール材料の例には、Enzo−BPA、Enzo−BPA/フェノール、Enzo−TBP、Enzo−COP、およびその他関連するフェノール類が含まれ、これらはオハイオ州ColumbusのEnzymol International Inc.から得られた。
【0050】
極めて広く様々な繊維状フィルタ媒体が種々の用途のため存在することを理解されたい。本発明で述べる耐久性あるナノファイバおよびマイクロファイバは、媒体のいずれかに付加することができる。本発明で述べるファイバは、これら既存の媒体のファイバ構成要素の代わりに使用することもでき、その直径が小さいので性能が改善されるという利点が得られ(効率が高まり、かつ/または圧力低下が減少する)、それと共に耐久性がより向上したことが示される。
【0051】
ポリマーナノファイバおよびマイクロファイバが知られているが、これらは表面積と体積の比が非常に大きいので、機械的応力に対して脆弱であり、また化学的な劣化を受け易く、そのためこれらファイバの用途には非常に制約があった。本発明で述べるファイバは、これらの制約に対処するものであり、したがって非常に広く様々なフィルター、織物、膜、およびその他多様な適用例で使用可能になる。
【0052】
本発明によるフィルタ媒体構造は、第1の面を有する透過性の粗い繊維状媒体または基体である第1の層を含む。透過性の粗い繊維状媒体の第1の層の第1の面には、ファインファイバ媒体の第1の層が固定される。透過性の粗い繊維状材料の第1の層は、その平均直径が少なくとも10ミクロンであることが好ましく、典型的な場合は約12(または14)〜30ミクロンであることが好ましい。また、透過性の粗い繊維状材料の第1の層は、好ましくは坪量が約200g/m
2以下、好ましくは約0.50〜150g/m
2、最も好ましくは少なくとも8g/m
2の媒体を含む。透過性の粗い繊維状媒体の第1の層は、好ましくは厚さが少なくとも0.0005インチ(12ミクロン)であり、典型的な場合は厚さが約0.001〜0.030インチ(25〜800ミクロン)であることが好ましい。
【0053】
好ましい配置構成では、透過性の粗い繊維状材料の第1の層は、フレージャー透水試験によってその構造の残りの部分とは別に評価した場合に、透過性が少なくとも1m/分であり、典型的にかつ好ましくは約2〜900m/分である材料を含む。本明細書において効率に関して述べる場合、特に明記しない限り、ASTM−1215−89に従って測定した場合の効率を意味し、0.78μmの単分散ポリスチレン球状粒子の場合は、以下に示すように20fpm(6.1m/分)である。
【0054】
透過性の粗い繊維状媒体層の第1の面に固定されたファインファイバ材料の層は、ナノファイバおよびマイクロファイバ媒体の層であることが好ましく、この場合、ファイバは、その平均ファイバ直径が約2ミクロン以下であり、一般にかつ好ましくは約1ミクロン以下であり、典型的かつ好ましくはファイバ直径が0.5ミクロンよりも小さく、約0.05〜0.5ミクロンの範囲内である。また、透過性の粗い繊維状材料の第1の層の第1の面に固定されたファインファイバ材料の第1の層は、その全体の厚さが約30ミクロン以下であることが好ましく、より好ましくは20ミクロン以下であり、最も好ましくは約10ミクロン以下であり、典型的にかつ好ましくは、層のファインファイバの平均直径の約1〜8倍(より好ましくは5倍以下)の範囲内の厚さである。
【0055】
本発明によるある好ましい配置構成は、全体的なフィルタ構造に一般的に定義されたフィルタ媒体を含む。そのような用途に向けたいくつかの好ましい配置構成は、円筒形のひだ付きの構成であってそのひだが一般には縦方向に、すなわち円筒形のパターンの縦軸と同じ方向に延びている構成の中に配置された媒体を含む。そのような配置構成では、従来のフィルタの場合と同様に、媒体をエンド(端末)・キャップに埋め込むことができる。そのような配置構成は、典型的な従来の目的のため、望むなら上流ライナおよび下流ライナを含んでよい。
【0056】
いくつかの適用例では、本発明による媒体は、全体的なフィルター性能または寿命を改善するために、他の媒体、例えば従来の媒体と併せて使用することができる。例えば、本発明による媒体を従来の媒体に積層することができ、スタック状の配置構成で使用することができ、または、従来の媒体の1つまたは複数の領域を含んだ媒体構造に組み込む(一体化機構)ことができる。これは、そのような媒体の上流で、良好な負荷を得るために使用することができ、かつ/または従来の媒体の下流で、高効率の研磨フィルタとして使用することができる。
【0057】
本発明によるある配置構成は、液体フィルタ系、すなわち濾過される粒子状物質が液体中に含まれる系で利用することもできる。また、本発明によるある配置構成は、ミスト・コレクタ、例えば空気から微小なミストを取り除く(濾過する)ための配置構成に使用することができる。
【0058】
本発明によれば、フィルター方法が提供される。この方法は一般に、濾過が有利になるように、記述された媒体を利用することを含む。以下の記述および実施例からわかるように、本発明による媒体は、比較的効率的なシステムに比較的長い寿命が与えられるよう特に有利に構成して組み立てることができる。
【0059】
様々なフィルタのデザインが、フィルタ材料と共に使用されるフィルタ構造の様々な態様を開示し請求する特許に示されている。Engel他の米国特許第4,720,292号は、略円筒形のフィルタ要素デザインを有するフィルタ・アセンブリ用のラジアル・シール・デザインを開示しており、このフィルタ要素は、円筒形の、半径方向内側を向いた面を有する比較的柔らかいゴム状のエンド・キャップで封止されるものである。Kahlbaugh他の米国特許第5,082,476号は、本発明のマイクロファイバ材料と組み合わせたひだ付き構成要素を備えたフォーム基体を含む、深さ媒体使用したフィルタ・デザインを開示している。Stifelman他の米国特許第5,104,537号は、液体フィルタ媒体に有用なフィルタ構造に関する。液体はフィルタ・ハウジング内に包含され、フィルタの外部を通過して環状コア内に入り、次いで構造内に戻って積極的に使用される。そのようなフィルタは、作動液を濾過するのに非常に有用である。Engel他の米国特許第5,613,992号は、典型的なディーゼル・エンジンの吸気フィルタ構造を示す。この構造は、液状水分を含有してもよくまたは含有しなくてもよい空気をハウジングの外面から得る。空気はフィルタを通過するが、液状水分はハウジングの底部に移動して、このハウジングから排出させることができる。Gillingham他の米国特許第5,820,646号はZフィルタ構造を開示しており、この構造は、適正なフィルター性能を得るために、「Z」形の通路内の少なくとも1層のフィルタ媒体を流体が通過する必要がある塞がった通路を含む、特定のひだ付きフィルタ・デザインを使用している。ひだ付きZ形の態様に形成されたフィルタ媒体は、本発明のファインファイバ媒体を含むことができる。Glen他の米国特許第5,853,442号は、本発明のファインファイバ構造を含むことができるフィルタ要素を有するバッグ・ハウス構造を開示している。Berkhoel他の米国特許第5,954,849号はダスト・コレクタ構造を示しているが、この構造は、加工中の製品を加工することによってかなりのダスト負荷が周囲空気中に生じた後、一般にダスト負荷が大きい空気を処理する際に、空気の流れからダストを取り除く(濾過する)のに有用なものである。最後にGillinghamの米国意匠特許第425,189号は、Zフィルタ・デザインを使用するパネル・フィルタを開示している。
【0060】
(図面の詳細な説明)
このユニットのマイクロファイバまたはナノファイバは、静電紡糸プロセスによって形成することができる。ファイバの形成に適切な装置を
図1に示す。この装置は、ファインファイバを形成するポリマー溶液が入っているリザーバ80と、ポンプ81と、ポリマー溶液が送出される回転式放出装置またはエミッタ40を含む。エミッタ40は一般に、回転ユニオン41と、複数のオフセット・ホール44を含む回転部分42と、前面部分および回転ユニオンを接続するシャフト43とからなる。回転ユニオン41によって、ポリマー溶液は、中空シャフト43を通して前面部分42に導入される。ホール44は、前面部分42の周辺の周りに間隔を空けて配置されている。あるいは、回転部分42を、リザーバ80およびポンプ81によって供給されたポリマーのリザーバに浸漬することができる。次いで回転部分42はリザーバからポリマー溶液を得、その部分が電場内で回転するにつれ、溶液の小滴が静電場によって、以下に論じる収集媒体70に向けて加速される。
【0061】
エミッタ40に面するように、しかしそこから間隔を空けて、略平面グリッド60が配置されており、その表面には収集媒体70(すなわち基体または結合基体)が位置決めされている。空気は、このグリッドを通して引き込むことができる。収集媒体70は、グリッド60の両端に隣接して位置決めされたローラ71および72の周りを通過する。エミッタ40とグリッド60の間では、適切な静電圧電源61と、それぞれがグリッド60およびエミッタ40に接続される接続62および63とによって、高圧静電電位が維持される。
【0062】
使用中、ポリマー溶液は、リザーバ80から回転ユニオン41またはリザーバに送出される。前面部分42は回転するが、このとき液体はホール44から出ていき、またはリザーバから引き上げられ、エミッタの外縁からグリッド60上に位置決めされている収集媒体70に向かって移動する。具体的には、グリッド60とエミッタ40との間の静電電位によって材料に電荷が与えられ、そこから液体が細いファイバとして放出されてグリッド60に向かって引き出され、そこに到達すると基体12または効率層14上に収集される。溶融状態のポリマーの場合、溶媒は、ファイバがグリッド60に飛ばされる間にファイバから蒸発し、したがってファイバは、基体12または効率層14に到達する。ファインファイバは、グリッド60で最初に出会った基体ファイバに結合する。静電場の強度は、エミッタから収集気体70へと加速されるにつれて、ポリマー材料が確実に得られるように選択されるが、この加速は、材料を非常に細いマイクロファイバまたはナノファイバ構造にするのに十分なものである。収集媒体の前進速度を速め、または遅くすることによって、放出されたファイバを形成媒体上に多かれ少なかれ成膜(deposite)させることができ、それによって、その媒体上に成膜した各層の厚さを制御することが可能になる。回転部分42は、様々な有益な位置を有することができる。回転部分42は、回転平面内に、すなわちその平面が収集媒体70の表面に垂直になるように、または任意のどのような角度でも位置決めされるように、回転平面内に配置することができる。回転媒体は、平行な向きに平行に、またはその向きからわずかにずれた状態で、位置決めすることができる。
【0063】
図2は、シート状基体または媒体上にファインファイバ層を形成するためのプロセスおよび装置の概略図である。
図2で、シート状基体は、ステーション20で巻き解かれる。次いでシート状基体20aをスプライシング・ステーション21に向け、そこで複数の長さの基体を、連続動作のためにスプライスすることができる。連続した長さのシート状基体を、
図1の紡糸技術を含むファインファイバ技術ステーション22に向け、そこで紡糸装置によりファインファイバを形成し、そのファインファイバを、シート状基体上のフィルター層に重ねる。形成ゾーン22内でファインファイバ層をシート状基体上に形成した後、ファインファイバ層および基体を、熱処理ステーション23に向け、適切な処理を行う。次いでシート状基体およびファインファイバ層を、効率モニタ24で試験し、必要な場合はニップ・ステーション25でニップ処理する。次いでシート状基体およびファインファイバ層を適切な巻きステーションに送り、そこで適切なスピンドルに巻き付けて、さらに処理26および27を行う。
【0064】
図3は、典型的なセルロース媒体の細孔径および典型的なファインファイバ構造での細孔径に対する、直径が約2ミクロンと約5ミクロンの典型的なダスト粒子の関係を示す、走査電子顕微鏡写真である。
図3(a)では、典型的な粒子径よりもかなり大きく示されている細孔径を有するセルロース媒体33中に、2ミクロン粒子31および5ミクロン粒子32があることを示している。これとは全く対照的に、
図3(b)では、2ミクロン粒子31はファイバ・ウェブ35のファイバ間の典型的な開口にほぼ等しいかそれよりも大きく見えるが、5ミクロン粒子32は、ファインファイバ・ウェブ35の開口のいずれよりも大きく見える。
【0065】
本発明のポリマー材料の様々な態様、マイクロファイバとナノファイバの両方を含む本発明のファインファイバ材料、および本発明のファインファイバ材料から得られる有用なフィルタ構造の構成に関する上記概略的な記述は、本発明の作用の一般的技術原理の理解をもたらすものである。以下の特定の例示的な材料は、本発明のファインファイバ材料の形成に使用することができる材料の例であり、以下の材料は、最良の形態を開示する。以下の例示的な材料は、以下の特徴およびプロセス条件を念頭において製造した。電界紡糸(electrospinning)による直径が10ミクロン未満の小さいファイバは、ポリマー・ジェットを非常に微細なフィラメントに延伸するための引張り力として働く強電場からの静電力を使用して得られる。この電界紡糸では溶融ポリマー(plymer melt)を使用することができるが、1ミクロンよりも小さいファイバが、ポリマー溶液から最良の状態で形成される。ポリマーの塊が引き出されてより小さい直径になるにつれ、溶媒が蒸発してファイバ・サイズの縮小に寄与する。溶媒の選択はいくつかの理由で極めて重要である。溶媒の乾燥が速すぎると、ファイバは平らになり、かつ直径が大きくなりがちである。溶媒の乾燥が遅すぎると、形成されたファイバが再び溶媒に溶解することになる。したがって、乾燥速度とファイバ形成との釣合いをとることが極めて重要である。生成速度が速いと、大量の排気流が、引火性雰囲気の防止および火災のリスクの低下を助ける働きをする。可燃性ではない溶媒が有用である。製造環境では、処理装置をときどきクリーニングする必要がある。毒性の低い安全な溶媒によって、有害な化学物質への作業者の曝露が最小限に抑えられる。静電防止は、エミッタ当たり1.5ml/分の流量、目標距離8インチ、エミッタ電圧88kV、エミッタrpmが200、および相対湿度45%で行うことができる。
【0066】
ポリマー系の選択は、所与の適用例では重要である。パルス・クリーニングの適用例の場合、極めて薄いマイクロファイバ層は圧力損失を最小限に抑えるのを助けることができ、粒子の捕捉および解放のための外面を提供することができる。直径が2ミクロン未満、好ましくは直径が0.3ミクロン未満の薄いファイバ層が好ましい。マイクロファイバまたはナノファイバと、このマイクロファイバまたはナノファイバが成膜される基体とが良好に接着することが重要である。フィルタが、基体とマイクロファイバおよびナノファイバの薄層との複合体で作製される場合、そのような複合体は、自己清浄性の適用例に向けて優れたフィルタ媒体を形成する。逆パルシングによる表面のクリーニングは、フィルタ媒体を繰り返し新品同様にする。その表面に大きい力がかかると、基体への接着性に乏しいファインファイバは、フィルタ内部から基体を経てマイクロファイバに至る逆パルスによって、層剥離する可能性がある。したがって、良好なマイクロファイバ間の凝集力(cohesion)と、基体ファイバと電界紡糸ファイバとの接着性は、首尾良く使用するために極めて重要である。
【0067】
上記要件に適合する製品は、異なるポリマー材料から作製されたファイバを使用して得ることができる。接着性が良好な小さいファイバは、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどのポリマーと、ナイロン6やナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、およびこれらのコポリマーなど、様々なナイロンを含むポリマーおよびコポリマーから作製することができる。優れたファイバは、PVDFから作製することができるが、ファイバ直径を十分小さくするには、塩素化溶媒が必要である。ナイロン6、ナイロン66、およびナイロン6,10は、電界紡糸することができる。しかし、ギ酸やm−クレゾール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールなどの溶媒は、その取扱いが難しく、または非常に高価である。好ましい溶媒には、その毒性が低いことから、水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、およびN−メチルピロリドンが含まれる。そのような溶媒系に対して相溶性を有するポリマーを、広範囲にわたって評価した。本発明者等は、PVC、PVDC、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、PMMA、PVDFから作製されたファイバが、構造上の性質を得るために追加の接着手段を必要とすることを見出した。また本発明者等は、ポリマーを水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メタノール、およびこれらの混合物に溶かして首尾良くファイバを作製したときに、そのファイバが基体に対して優れた接着性を有し、それによって自己清浄性の適用例に向けた優れたフィルタ媒体が作製されることを見出した。逆空気パルスまたはツイストを介した自己清浄は、フィルタ媒体を非常に高いダスト濃度で使用する場合に有用である。そのような適用例では、アルコール可溶性ポリアミドおよびポリ(ビニルアルコール)から得られたファイバを首尾良く使用した。アルコール可溶性ポリアミドの例には、HenkelのMacromelt 6238、6239、および6900、duPontのElvamide 8061および8063、Shakespeare Monofilament CompanyのSVP 637および651が含まれる。別の群のアルコール可溶性ポリアミドは、タイプ8ナイロン、アルコキシアルキル変性ナイロン66である(参考文献、第447ページ、Nylon Plastics handbook、Melvin Kohan編、Hanser Publisher、New York、1995)。ポリ(ビニルアルコール)の例には、日本の(株)クラレからのPV−217、224と、Products and Chemical CompanyのVinol 540が含まれる。
【0068】
本発明者等は、フィルタが極端な環境条件に曝される可能性があることを見出した。サウジアラビアの砂漠でのフィルタは、150゜F以上ほどに高い温度に曝さらされる可能性がある。インドネシアまたは米国の湾岸に設置されたフィルタは、90%RHを超える高い湿度および100゜Fという温度に曝される可能性がある。または、それらのフィルタは雨に曝される可能性がある。本発明者等は、自動車やトラック、バス、トラクタなどの移動機器および建設用機器のフード下で使用されるフィルタが、高温(+200゜F)、高相対湿度、およびその他の化学的環境に曝される可能性があることを見出した。本発明者等は、過酷な条件下でのマイクロファイバ系の残存性を評価する試験方法を開発した。フィルタ媒体サンプルを温水(140゜F)中に5分間浸し、または高湿、高温、および空気流に曝す。
【0069】
(実験)
以下の材料を、以下の電界紡糸プロセス条件を使用して生成した。
【0070】
以下の材料を、回転エミッタ・システムまたはキャピラリ・ニードル・システムを使用して紡糸した。いずれも実質上同じ繊維性材料を生成することがわかった。
【0071】
流量は、エミッタ当たり1.5mil/分、目標距離8インチ、エミッタ電圧88kV、相対湿度45%、回転エミッタ35rpmであった。
【0072】
実施例1:
ファイバのサイズの効果
ファインファイバ・サンプルをナイロン6、66、610のコポリマーから調製し、ナイロンコポリマー樹脂(SVP−651)の分子量について、末端基滴定により分析をした(J.E.WalzおよびG.B.Taylor、determination of the molecular weight of nylon、Anal.Chem.Vol.19、Number 7、第448〜450ページ(1947))。数平均分子量は、21,500から24,800の間であった。組成物は、3成分ナイロン、すなわちナイロン6 約45%、ナイロン66 約20%、およびナイロン610 約25%の溶融温度の状態図によって推定した(第286ページ、Nylon Plastics Handbook、Melvin Kohan編、Hanser Publisher、New York(1995))。報告されたSVP 651樹脂の物理的性質は、以下の通りであり、
【0073】
【表2】
直径0.23ミクロンおよび0.45ミクロンのファイバが生成された。サンプルを室温の水に浸し、空気乾燥し、その効率を測定した。
図12のグラフからわかるように、ファイバが大きいほど劣化にかかる時間は長く、劣化のレベルは低かった。ある特定に理論に拘泥するものではないが、表面/体積の比がより大きい、より小さいファイバが、環境の作用に起因して劣化し易くなるようである。しかし、より大きいファイバは効率的なフィルタ媒体を形成しない。
【0074】
実施例2:
ナイロン・ファイバとフェノール樹脂およびエポキシ樹脂との架橋
ファイバの耐薬品性を改善するため、ナイロン・ファイバの化学的架橋を試みた。既述のコポリアミド(ナイロン6、66、610)を、Georgia Pacific 5137であるフェノール樹脂と混合し、紡糸してファイバにした。ナイロン:フェノール樹脂の比、およびそのブレンドの溶融温度を以下に示す。
【0076】
このブレンドからは、比較可能なファイバを生成することができた。50:50のブレンドは、熱を介して繊維性構造が破壊されたので架橋することができなかった。65:35のブレンドを90℃よりも低い温度で12時間加熱することにより、得られたファイバの耐薬品性が改善され、その結果、アルコールに溶解しにくくなった。ポリアミドとエポキシ樹脂、例えばShellのEpon 828やEpi−Rez510などとのブレンドを使用することができる。
【0077】
実施例3:
フッ素系添加剤(Scotchgard(登録商標))撥水剤による表面改質
3M社のアルコール混和性Scotchgard(登録商標)FC−430および431をポリアミドに添加した後、紡糸した。添加量は固形分10%であった。Scotchgardの添加は、ファイバ形成を妨げなかった。THCベンチでは、Scotchgard状の高分子量撥水剤による仕上げによって、耐水性が改善されなかったことを示す。Scotchgardを添加したサンプルを、製造業者から示されるように、300゜Fで10分間加熱した。
【0078】
実施例4:
カップリング剤による改質
ポリマー・フィルムを、Kenrich Petrochemicals,Inc.のチタニウム系カップリング剤と共にポリアミドから成膜した。このカップリング剤には、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(KRTTS)、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)フォスファトチタネート(LICA12)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート(NZ44)が含まれる。成膜フィルムを沸騰水に浸した。カップリング剤を含まない対照サンプルはその強度をすぐに失ったが、カップリング剤を添加したサンプルは、その形を最長10分間維持した。これらのカップリング剤を添加したサンプルを紡糸してファイバにした(0.2ミクロンファイバ)。
【0079】
実施例5:
低分子量p−tert−ブチルフェノールポリマーによる改質
分子量が400〜1100の範囲のp−tert−ブチルフェノールのオリゴマーを、オハイオ州コロンバスのEnzymol Internationalから購入した。これら低分子量ポリマーを、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコールに溶解した。これらのポリマーを既述のコポリアミドに添加し、悪い結果をもたらすことなく0.2ミクロンのファイバに電界紡糸した。一部のポリマーおよび添加剤は電界紡糸プロセスを妨げる。実施例2で述べた従来のフェノール樹脂とは異なり、本発明者等は、この群のポリマーがファイバ形成プロセスを妨害しないことを見出した。
【0080】
本発明者等は、グラフに見られるように、この群の添加剤が、ファインファイバを湿潤環境から守ることを見出した。
図13〜16は、オリゴマーが、140°Fおよび100%の相対湿度で非常に良好な保護をもたらすことを示し、その性能は、160゜Fで非常に良くないことを示している。この添加剤を、使用されるポリマーの5%から15%の量で添加した。本発明者等は、それらの添加剤が、ファイバが140゜Fで高い湿度に曝されるのを等しく効果的に防止することを見出した。また本発明者等は、ファイバを短時間150℃に曝すことによって、性能が高められることを見出した。
【0081】
表1は、添加量10%のポリアミド・ファイバの、温度および時間暴露の影響を示す。
【0083】
これは驚くべき結果であった。この種類の添加剤に関しては、耐水性の劇的な向上が見られた。この群の添加剤がどのように働くかを理解するため、ファインファイバ・マットをESCAと呼ばれる表面分析技法で分析した。表1に示される添加量10%のサンプルを、ミネソタ大学でESCAを用いて分析したが、その結果を表2に示す。
【0085】
初めに、添加剤の表面濃度がバルク濃度の2倍よりも高いことを見出したことは理屈に合わないと思われた。しかし本発明者等は、このことを、添加剤の分子量によって説明することができると考える。約600という添加剤の分子量は、主体となるファイバ形成ポリマーの分子量よりも非常に小さい。添加剤はサイズがより小さいので、蒸発する溶媒分子に合わせて移動することができる。したがって、添加剤の表面濃度をより高くすることができる。さらに処理することによって、保護添加剤の表面濃度が増大する。しかし、10分間、150℃に曝すと、濃度は増大しなかった。これは、長鎖ポリマーが動き回るための時間があるので、コポリアミドとオリゴマー分子の2成分混合が生じていることを示すと考えられる。この分析により教示されることは、後処理の時間および温度を適正に選択することによって性能を高めることができるが、暴露が長すぎると悪影響が生じる可能性がある、ということである。
【0086】
さらに、飛行時間SIMSと呼ばれる技法を使用して、このような添加剤を含んだマイクロファイバの表面について試験をした。この技法は、対象物に電子を衝突させることを含み、その表面から何が来るかを観察する。添加剤を含まないサンプルは、電子を衝突させると有機窒素種が取れることを示す。これは、ポリアミド種が取れることを示している。また、ナトリウムやシリコーンなど、少量の不純物が存在することも示している。熱処理をしない、添加剤を含むサンプル(表面の添加剤濃度23%)は、大部分を占める種がt−ブチル断片であることを示し、小さいがはっきりとしたポリアミドのピークが観察される。また、質量差148amuで高い質量ピークも観察され、これはt−ブチルフェノールに相当する。150℃で10分間処理したサンプル(ESCA分析による表面添加剤濃度50%)の場合、検査によって、その大部分をt−ブチル断片が占め、存在するとしても、ポリアミドを示す非常に小さいピークが示されるだけである。これは、t−ブチルフェノールおよびそのポリマー全体に関連するピークを示していない。またこれは、C
2H
3O断片に関連するピークも示している。
【0087】
飛行時間SIMS分析は、剥き出しのポリアミド・ファイバが、イオン衝撃によって、露出したポリマー鎖から破断した窒素断片を放出し、表面に汚染物質が生じることを示している。熱処理をしない添加剤はコーティングが不完全であることを示すが、これは、添加剤が表面の一部を覆わないことを示している。t−ブチルオリゴマーは、表面上に緩く組織化される。イオン・ビームがその表面にぶつかると、分子全体が不安定なt−ブチル断片と共に取れる可能性がある。熱処理した添加剤は、表面の完全なコーティングを促進させる。さらに分子は、t−ブチルや、あるいはCH=CH−OHなど、不安定な断片のみが外れて、t−ブチルフェノールの分子全体は外れないように、緊密に配置される。ESCAと飛行時間SIMSは、表面の異なる深さを見る。ESCAは、100オングストロームまでのより深い面を見るが、飛行時間SIMSは、10オングストロームの深さだけを見る。これらの分析は一致する。
【0088】
実施例6:
表面コーティングされたインターポリマーの開発
コーティングおよび接着剤の適用例に向けた可溶性および架橋可能な樹脂を調製するために、初めにタイプ8ナイロンを開発した。このタイプのポリマーは、酸の存在下、ポリマー66とホルムアルデヒドおよびアルコールとの反応によって形成する(参考文献 Cairns,T.L.;Foster,H.D.;Larcher,A.W.;Schneider,A.K.;Schereiber,R.S. J.Am.Chem.Soc.1949、71、651)。このタイプのポリマーは、電界紡糸することができ、架橋することができる。しかし、このポリマーからのファイバ形成はコポリアミドよりも劣り、架橋しにくくなる可能性がある。
【0089】
タイプ8ナイロンを調製するため、10ガロンの高圧反応器に以下の比で投入した。
【0091】
次いで反応器に窒素を流し、加圧下で、少なくとも135℃に加熱した。所望の温度に達したら、少量の酸を触媒として添加した。酸性触媒には、トリフルオロ酢酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、リン酸、クエン酸、およびこれらの混合物が含まれる。Nafion(登録商標)ポリマーも触媒として使用することができる。触媒を添加した後、反応を最長30分間進行させる。粘性の均質ポリマー溶液をこの段階で形成する。指定された反応時間が経過した後、高圧容器の内容物を、メタノール、水、水酸化アンモニウムや水酸化ナトリウムなどの塩基が入っている浴に移して、反応を抑止する。溶液を十分に急冷した後、その溶液を脱イオン水中に沈殿させる。綿毛状のポリマー顆粒が形成される。次いでポリマー顆粒を遠心分離し、真空乾燥する。このポリマーは、水が様々な割合で含まれるメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびこれらの混合物に溶解する。これらは異なるアルコールのブレンドにも溶解する。
【0092】
このように形成されたアルコキシアルキル変性タイプ8ポリアミドは、エタノール/水の混合物に溶解する。ポリマー溶液は、Barrisの米国特許第4,650,516号に記載した手法で電界紡糸される。ポリマー溶液の粘度は、時間と共に増大する傾向がある。ポリマーの粘度は、ファイバのサイズを決定する際に大きな影響を与えることが、一般に知られている。そのため、商用規模の連続生産において、そのプロセスを制御することが困難である。さらに、同じ条件下で、タイプ8ポリアミドはコポリアミドほど効率的にマイクロファイバを形成しない。しかし、トルエンスルホン酸や無水マレイン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クエン酸、アスコルビン酸などの酸性触媒を添加して溶液を調製し、ファイバ形成後にファイバ・マットを慎重に熱処理する場合、得られるファイバは非常に良好な耐薬品性を有する(
図13)。架橋段階中は、繊維性構造が破壊されないように注意を払わなければならない。
【0093】
本発明者等は、タイプ8ポリアミド(ポリマーB)とアルコール可溶性コポリアミドとをブレンドする場合に驚くべき結果を見出した。アルコキシアルキル変性ポリアミド66 30重量%を、SVP 637または651(ポリマーA)、Elvamide 8061などのアルコール可溶性コポリアミドに代えることによって、相乗効果があることを見出した。ブレンドのファイバ形成は、いずれかの成分単独の場合よりも効率的である。エタノールに浸漬し、フィルター効率を測定することによって、98%よりも良好なフィルター効率が保持されることが示され、THCベンチ試験では、タイプ8ポリアミド単独の場合に匹敵する結果を示す。このタイプのブレンドは、効率的なファイバ形成およびコポリアミドの優れたフィルター特性の利点を、架橋したタイプ8ポリアミドの優れた耐薬品性の利点と共に得ることができることを示す。アルコール浸漬試験は、非架橋性コポリアミドが架橋に寄与してフィルター効率98%が維持されることを、強く示している。
【0094】
ポリマーAおよびBのブレンドのDSC(
図17〜20参照)は、250℃に加熱された後、ポリマーA単独でのDSCと区別できなくなっており、(完全に架橋された状態で)明確な溶融温度を示さない。このことは、ポリマーAおよびBのブレンドが、ポリマーBがポリマーAと架橋したことによって、完全に一体化されたポリマーになっていることを強く示している。これは、完全に新しい種類のポリアミドである。
【0095】
同様に、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(ブチレンテレフタレート)とのメルトブレンドは、同様の性質を持つ。どちらかの成分の溶融温度よりも高い温度で溶融処理を行う間、エステル基の交換が引き起こされ、PETとPBTのインターポリマーが形成される。さらに、本発明者等の架橋温度はいずれかの単一成分よりも低い。そのような基の交換がこの低い温度で生じるとは予想され難い。したがって本発明者等は、タイプAとタイプBのポリアミドの溶液ブレンドと、ぃずれかの成分の融点よりも低い温度での架橋によって、新しい種類のポリアミドを見出したと考える。
【0096】
本発明者等は、t−ブチルフェノールオリゴマー(添加剤7)10重量%を添加し、架橋温度に必要な温度で熱処理した場合、さらに良好な結果が得られることを見出した。本発明者等は、t−ブチルフェノールオリゴマーのヒドロキシル官能基が、タイプ8ナイロンの官能基との反応に寄与する可能性があると理論付けた。本発明者等が見出したことは、この成分系では、ファイバ形成が良好であり、高温高湿に対する耐性が改善され、ファインファイバ層の表面に疎水性がもたらされるということである。
【0097】
ポリマーAとポリマーBの混合物サンプル(サンプル6A)、ポリマーA、ポリマーB、および添加剤の混合物サンプル(サンプル6B)を調製した。次いで電界紡糸プロセスによってファイバを形成し、ファイバ・マットを300゜Fに10分間暴露し、ESCA表面分析によって表面組成を評価した。
【0099】
ESCAは、水素濃度以外の表面組成に関する情報を提供する。ESCAは、炭素、窒素、および酸素に関する情報を提供する。添加剤7は窒素を含有しないので、窒素濃度を比較することによって、窒素含有ポリアミドと窒素を含有しない添加剤との比を推定することができる。追加の定量的情報は、535eVから527eVの間の結合エネルギーのO 1s スペクトルを試験することによって、入手可能である。C=O結合は、531eV付近の結合エネルギーを有し、C−O結合は、533eV付近の結合エネルギーを有する。これら2つのピークのピーク高さを比較することによって、ポリアミドの相対的な濃度を推定することができ、大部分を占めるのがC=O基であり、追加としてC−O基だけ存在する。ポリマーBは変性によりC−O結合を有し、架橋すると、C−O濃度は低下することになる。ESCAはそのような反応が実際に生じたことを確認し、C−O結合が相対的に減少したこを示している(
図4は、熱処理していないポリマーAとポリマーBの混合ファイバに関し、
図5は、ポリマーAとポリマーBの熱処理済み混合ファイバに関する)。添加剤7の分子が表面に存在する場合、C−O結合がより多いと予想することができる。これは実際に、
図6および7に見られるようなケースである(
図6は、ポリマーA、ポリマーB、および添加剤7の紡糸状態の混合ファイバに関する。
図7は、ポリマーA、ポリマーB、および添加剤7の熱処理済み混合ファイバに関する)。
図6は、実施例7に関してC−O結合の濃度が増大することを示す。これらの調査結果は、
図8から
図11までのXPS多重スペクトルに基づく表面濃度に一致している。
【0100】
t−ブチルオリゴマー分子はファインファイバの表面に向かって移行し、約50Åの疎水性コーティングを形成することが明らかである。タイプ8ナイロンは−CH
2OHや−CH
2OCH
3などの官能基を有し、これらは本発明者等が、t−ブチルフェノールの−OH基と反応すると予想したものである。このため本発明者等は、より少ないオリゴマー分子がファイバ表面に見られると予想した。本発明者等は、自らの仮説が正しくなく、インターポリマーの表面に薄い被膜があることを見出した。
【0101】
サンプル6A、6Bおよびセクション5で述べたサンプルの繰返しを、160°F、100%RHのTHCベンチにかけた。前述のセクションでは、サンプルを140°Fおよび100%RHに暴露した。このような条件下、t−ブチルフェノールは、ターポリマーコポリアミドが劣化するのを防止した。しかし、100%RFで温度が160°Fまで上昇すると、t−ブチルフェノールオリゴマーは、下に在るターポリマーコポリアミドファイバを十分に保護することができない。これらのサンプルについて、160°F、100%RHで比較した。
【0103】
表は、サンプル6Bが、高温高湿への暴露を防止するのに役立つことを示している。
【0104】
より著しい相違は、ファイバ・マット上の水滴に曝したときに見られる。DI水の小滴をサンプル6Aの表面に置くと、その水滴はすぐファイバ・マット全体に広がり、基体ペーパまで濡らす。一方サンプル6Bの表面に水滴を置くと、水滴はビーズを形成し、マット表面上に広がらない。p−t−ブチルフェノールのオリゴマーを添加することによって、サンプル16の表面が疎水性になるよう改質した。このタイプの製品は、水滴がサンプル6Bのファインファイバの表層を通り抜けないので、ウォータ・ミスト・エリミネータとして使用することができる。
【0105】
サンプル6A、6Bおよびセクション5の繰返しサンプルを、温度を310°Fに設定した炉内に置いた。表は、サンプル6Aおよび6Bの両方が無傷のままであり、セクション5のサンプルはひどい損傷を受けたことを示している。
【0107】
ポリマーAのみにオリゴマーを添加すると、ファインファイバ層の耐熱性が向上するが、添加剤7を添加した場合には、高温暴露に対してはっきりした効果がない。
【0108】
ターポリマーコポリアミド、アルコキシアルキル変性ナイロン66、およびt−ブチルフェノールのオリゴマーの混合物は、ターポリマーコポリアミドとt−ブチルフェノールオリゴマーの混合物、またはターポリマーコポリアミドとアルコキシアルキル変性ナイロン66の混合物よりも、製造の際の生産性を改善した状態で過酷な環境下のファインファイバを助けるのにより優れた製品を提供することが、明らかに示された。これら2成分の混合物も、単一成分系より改善されている。
【0109】
実施例7:
ポリアミドとビスフェノールAポリマーの相溶性ブレンド
新しい種類のポリマーは、フェノール環の酸化カップリングによって調製することができる(Pecora,A;Cyrus,W. 米国特許第4,900,671号(1990)およびPecora,A;Cyrus,W.;Johnson,M. 米国特許第5,153,298号(1992))。特に興味深いのは、Enzymol Corp.から販売されているBisphenol A(ビスフェノールA)で作製したポリマーである。大豆ペルオキシダーゼの触媒作用によるビスフェノールAの酸化は、ビスフェノールAの2つの−OH基のどちらの側からも開始することができる。直線状の、ビスフェノールAをベースとしたポリカーボネートとは異なり、このタイプのビスフェノールAポリマーは、高度に枝分かれしたポリマーを形成する。このポリマーは高度に枝分かれする性質を持つので、ポリマー・ブレンドの粘度を低くすることができる。
【0110】
本発明者等は、このタイプのビスフェノールAポリマーとポリアミドを溶液ブレンドできることを見出した。ナイロンに関して報告されたハンセンの溶解度パラメータは、18.6である(第317ページ、Handbook of So1ubility Parameters and other cohesion parameters、A.Barton編、CRC Press、Boca Raton Florida、1985)。溶解度パラメータを計算する場合(第61ページ、Handbook of Solubility Parameters)、計算された溶解度パラメータは28.0である。溶解パラメータに差があるので、双方が互いに対して混和性であると予想することができない。しかし本発明者等は、双方が完全に混和性を有し、予期しない性質をもたらすことを見出した。
【0111】
エタノール溶液中に、分子量3,000のビスフェノールAとコポリアミドが50:50のブレンドを形成した。溶液中の全濃度は10%であった。コポリアミド単独では、ファイバ直径が0.2ミクロンになった。ブレンドの場合、約1ミクロンのファイバの厚い層になった。分子量7,000のビスフェノールAは、コポリアミドと共にあるときには安定でなく、沈殿する傾向がある。
【0112】
50:50のブレンドのDSCは、溶融温度が不十分であることを示す。コポリアミドの溶融温度は約150℃であり、ビスフェノールA樹脂はTgが約100のガラス状ポリマーである。このブレンドは、明確な溶融が不十分であることを示す。ファイバ・マットを100℃に暴露すると、ファイバ・マットは消失する。このブレンドは、上限使用温度があまり高くなく、圧力低下が低い必要がある場合に、優れたフィルタ媒体を作製すると考えられる。このポリマー系は、妥当な手法で架橋することができなかった。
【0113】
実施例8:
ビスフェノールAの、ブレンドにおける溶媒および固体としての2重の役割
ビスフェノールAポリマー・ブレンドの驚くべき特徴とは、溶液の形態の場合にはビスフェノールAポリマーが溶媒のように振る舞い、固体の形態ではそのポリマーが固体として機能することである。本発明者等は、ビスフェノールAポリマーの2重の役割が、全く固有のものであることを見出した。
【0116】
このブレンドの粘度は、ブルックフィールド粘度計によれば32.6センチポアズであった。全ポリマー濃度は19.2%であった。19.2%でのポリマーBの粘度は200センチポアズを超える。同様の溶媒中、12%ポリマーB単独での粘度は、約60センチポアズである。これは、溶液全体の粘度が予想よりも低いので、ビスフェノールA樹脂が溶媒のように振る舞う明らかな例である。得られるファイバの直径は0.157ミクロンであった。ポリマーBのみがファイバの配合に寄与したなら、予想されるファイバのサイズは0.1ミクロン未満になる。言い換えれば、ポリマーCがファイバの配合に寄与したのである。このように、成分が劇的な2重の役割をする、他のどのようなケースも知られていない。サンプルをエタノールに浸漬した後、フィルター効率およびファイバ・サイズを測定した。アルコール浸漬後、85.6%というフィルター効率が保持され、ファイバ・サイズに変化はなかった。これは、ポリマーCが、ポリマー固体のように架橋動作に寄与したことを示している。
【0118】
このブレンドの粘度は90.2センチポアズであった。これは、固体24%の場合、非常に低い粘度である。これは、ポリマーCが、溶液中では溶媒のように振る舞うことも示している。しかし、電界紡糸を行ってファイバにする場合、ファイバ直径は0.438ミクロンになる。ポリマーB単独の15%溶液は、約0.2ミクロンのファイバを生成すると考えられる。最終の状態では、ポリマーCが寄与することによってファイバ・サイズが大きくなる。やはりこの例でも、このタイプの枝分かれポリマーが溶液中では溶媒として働き、最終の状態では固体として働くことを示している。エタノール溶液に浸漬した後、77.9%というフィルター効率が保持され、ファイバ・サイズに変化はなかった。
【0119】
実施例9:
架橋されたポリアミド/ビスフェノールAポリマー・ブレンドの開発
樹脂、アルコール、および水を合わせ、60℃で2時間撹拌することによって、3つの異なるサンプルを調製した。溶液を室温に冷却し、触媒を溶液に添加して、その混合物をさらに15分間撹拌した。その後、溶液の粘度を測定し、紡糸してファイバにした。
【0122】
本発明者等は、このブレンドがファイバを効率的に生成し、ポリマーA配合に比べてファイバの質量が約50%多くなることを見出した。さらに、得られるポリマー・マイクロファイバは、耐薬品性がより高いファイバを生成する。アルコール浸漬後、本質的に架橋可能なポリマーが固体組成物のわずか44%であっても、これらのファイバから作製されたフィルタは90%よりも高いフィルター効率を維持し、ファイバ直径に変化はなかった。このコポリアミド、アルコキシアルキル変性ナイロン66、およびビスフェノールAの3成分ポリマー組成物は、優れたファイバを形成する、化学的に耐久力のある材料を生成する。
【0123】
実施例10:
ナイロン66とナイロン46の、アルコキシアルキル変性コポリマー
10ガロン高圧反応器で以下の反応を行い、得られたポリマーについて分析した。反応温度に達した後、触媒を添加して15分間反応させた。その後、ポリマー溶液を急冷し、沈殿させ、洗浄して乾燥させた。
【0125】
ナイロン46およびナイロン66で形成したポリマーのDSCは、変性ナイロン46の溶融温度(241℃)または変性ナイロン66の溶融温度(210℃)よりも低い、ブロードな単一の溶融温度を示す。これは、反応中に、両方の成分がポリマー鎖に沿ってランダムに分布することを示す。したがって、アルコキシアルキル変性により、ナイロン46とナイロン66のランダムコポリマーが得られたと考えられる。これらのポリマーはアルコールに溶解し、また、アルコールと水の混合物に溶解する。
【0127】
両方とも結晶化度が高く、共通のアルコールに溶解しない。
【0128】
出所:Modern Plastics Encyclopedia 1998
実施例11:
コポリアミドとアルコキシ変性ナイロン46/66コポリマーのインターポリマーの開発、および電界紡糸ファイバの形成
実験10Bおよび10Dのサンプルを、上述の方法によってファイバに作製した。アルコキシアルキル変性ナイロン46/66(ポリマーD)のみを首尾良く電界紡糸した。ポリマーDとポリマーAをブレンドすることによって、下記の表に見られるようにポリマーDの架橋性を犠牲にすることなく、より効率的にファイバを形成することができ、より大きいファイバを作製することができるという追加の利益を得ることができる。
【0130】
ファイバ質量比を、(ファイバの全長×断面積)によって計算した。保持効率保持は、フィルタ・サンプルをエタノールに浸漬して測定した。ファイバ・サイズは、アルコール浸漬によって変化しなかった。
【0131】
実施例12:
架橋電界紡糸PVA
PVA粉末を、Aldrich Chemicalsから購入した。この粉末を、水、またはエタノールと水が50/50の混合物に溶解した。これらを架橋剤およびトルエンスルホン酸触媒と混合して、電界紡糸した。得られたファイバ・マットを150℃の炉内で10分間架橋し、その後、THCベンチにかけた。
【0133】
実施例13
従来のセルロース・エア・フィルタ媒体を基体として使用した。この基体の坪量は、3000平方フィート当たり67ポンドであり、フレージャー透過率は、水の圧力低下が0.5インチで1分当たり16フィートであり、厚さが0.012インチであり、LEFS効率が41.6%であった。実施例1のファインファイバ層を、0.2ミクロンの公称ファイバ直径について述べたプロセスを使用して、表面に付加した。得られた複合体のLEFS効率は63.7%であった。100%相対湿度で140Fの空気に1時間暴露した後、基体のみのサンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は36.5%であった。100%相対湿度で140Fの空気に1時間暴露した後、複合体サンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は39.7%であった。記述した数式を使用すると、1時間暴露した後に保持されるファインファイバ層の効率は13%であり、保持される有効なファインファイバの数は11%であった。
【0134】
実施例14
従来のセルロース・エア・フィルタ媒体を基体として使用した。この基体の坪量は、3000平方フィート当たり67ポンドであり、フレージャー透過率は、水の圧力低下が0.5インチで1分当たり16フィートであり、厚さが0.012インチであり、LEFS効率が41.6%であった。実施例5のファインファイバ層を、0.2ミクロンの公称ファイバ直径について述べたプロセスを使用して、表面に付加した。得られた複合体のLEFS効率は96.0%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、基体のみのサンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は35.3%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、複合体サンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は68.0%であった。記述した数式を使用すると、3時間暴露した後に保持されるのファインファイバ層の効率は58%であり、保持される有効なファインファイバの数は29%であった。
【0135】
実施例15
従来のセルロース・エア・フィルタ媒体を基体として使用した。この基体の坪量は、3000平方フィート当たり67ポンドであり、フレージャー透過率は、水の圧力低下が0.5インチで1分当たり16フィートであり、厚さが0.012インチであり、LEFS効率が41.6%であった。実施例6で述べたポリマーAとポリマーBのブレンドのファインファイバ層を、0.2ミクロンの公称ファイバ直径について述べたプロセスを使用して、表面に付加した。得られた複合体のLEFS効率は92.9%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、基体のみのサンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は35.3%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、複合体サンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は86.0%であった。記述した数式を使用すると、3時間暴露した後に保持されるのファインファイバ層の効率は96%であり、保持される有効なファインファイバの数は89%であった。
【0136】
実施例16
従来のセルロース・エア・フィルタ媒体を基体として使用した。この基体の坪量は、3000平方フィート当たり67ポンドであり、フレージャー透過率は、水の圧力低下が0.5インチで1分当たり16フィートであり、厚さが0.012インチであり、LEFS効率が41.6%であった。実施例6で述べたポリマーA、ポリマーB、t−ブチルフェノールオリゴマーのファインファイバ層を、0.2ミクロンの公称ファイバ直径について述べたプロセスを使用して、表面に付加した。得られた複合体のLEFS効率は90.4%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、基体のみのサンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は35.3%であった。100%相対湿度で160Fの空気に3時間暴露した後、複合体サンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は87.3%であった。記述した数式を使用すると、3時間暴露した後に保持されるのファインファイバ層の効率は97%であり、保持される有効なファインファイバの数は92%であった。
【0137】
実施例17
従来のセルロース・エア・フィルタ媒体を基体として使用した。この基体の坪量は、3000平方フィート当たり67ポンドであり、フレージャー透過率は、水の圧力低下が0.5インチで1分当たり16フィートであり、厚さが0.012インチであり、LEFS効率が41.6%であった。実施例12で架橋したPVAとポリアクリル酸のファインファイバ層を、0.2ミクロンの公称ファイバ直径について述べたプロセスを使用して、表面に付加した。得られた複合体のLEFS効率は92.9%であった。100%相対湿度で160Fの空気に2時間暴露した後、基体のみのサンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は35.3%であった。100%相対湿度で160Fの空気に2時間暴露した後、複合体サンプルを冷却して乾燥した結果、そのLEFS効率は83.1%であった。記述した数式を使用すると、2時間暴露した後に保持されるのファインファイバ層の効率は89%であり、保持される有効なファインファイバの数は76%であった。
【0138】
実施例18
以下のフィルタ媒体を、実施例1〜17で述べた方法により作製した。
【0142】
媒体は、平らな、波形の、ひだ付きの、波形かつひだ付きの状態で、フラットシート、ひだ付きフラット・パネル、ひだ付きラウンド・フィルタ、およびZeeフィルタに使用した。
【0143】
試験方法
温水浸漬試験
構造内に有効かつ機能的に保持されるファインファイバの数を測定する際の、フィルター効率の使用には、SEM評価などその他の可能な方法に勝るいくつかの利点がある。
【0144】
フィルター測定では、SEM顕微鏡写真に見られるわずかな面積(通常、0.0001平方インチ未満)よりも良好な平均を得る、数平方インチの媒体を評価する。
【0145】
フィルター測定では、構造内で機能的であり続けるファイバの数を定量する。変化した構造内にそのまま残されるが凝集しまたは別の態様で存在するこれらのファイバは、その測定された有効性および機能性に関してのみ含まれる。
【0146】
それにもかかわらず、フィルター効率が容易に測定されない繊維性構造では、残されたファイバのパーセントを測定するためにその他の方法を使用することができ、50%保持基準に照らして評価することができる。
【0147】
説明:この試験は、フィルタ媒体の防湿性を加速的に示すものである。この試験は、LEFS試験ベンチを使用して、水中に浸漬したときのフィルタ媒体性能の変化を測定する。水温は、極めて重要なパラメータであり、検査中の媒体の残存性履歴、試験時間を最小限に抑えたいという要望、媒体のタイプを識別する試験能力に基づいて選択される。典型的な水温は、70゜F、140゜F、または160゜Fである。
【0148】
手順:
直径4インチのサンプルを媒体から切り取る。20FPMで動作するLEFS(LEFS試験の説明に関しては、ASTM規格F1215−89参照)ベンチで、0.8μmラテックス球を試験用汚染物質として使用して、試験片の粒子捕捉効率を計算する。次いでサンプルを、蒸留水中に5分間沈める(典型的な場合、140゜F)。次いでサンプルを乾燥ラック上に置き、室温で乾燥させる(典型的な場合、一晩)。サンプルが乾燥したら、初期計算を行った場合と同じ条件を使用して、LEFSベンチ上で効率を再試験する。
【0149】
ファインファイバを含まないファインファイバ基体に関し、前のステップを繰り返す。
【0150】
上述の情報から、ファインファイバのみに起因する効率成分と、水による損傷に起因する効率損失を、計算することができる。ファインファイバによる損失効率が決定されると、保持される効率の量を計算することができる。
【0151】
計算:
ファインファイバ層の効率:
E
i=初期複合体効率;
E
s=初期基体効率;
F
e=ファインファイバ層
F
e=1−EXP(Ln(1−Ei)−Ln(1−Ex))
保持されるファインファイバ層効率:
F
i=初期ファインファイバ層効率;
F
x=浸漬後のファインファイバ層効率;
F
r=保持されるファインファイバ
F
r=F
x/F
i
有効な機能性を備えた状態で保持されるファインファイバのパーセンテージも、
%=log(1−F
x)/log(1−F
i)
によって計算することができる。
【0152】
合格/不合格基準:>50%効率保持
ほとんどの工業用パルス・クリーニング・フィルタへの適用例において、フィルタは、少なくとも50%のファインファイバ効率が保持される場合、十分に機能すると考えられる。
【0153】
THCベンチ(温度、湿度)
説明:このベンチの目的は、動的流動条件下での高温高湿の影響に対するファインファイバ媒体の抵抗力を評価することである。試験は、工業用濾過の適用例、ガス・タービン吸気口の適用例、または高荷重エンジンの空気取入れ環境の極端な作動条件をシミュレートすることを目的とする。間隔をおいて、サンプルを取り出し、乾燥させ、LEFS試験を行う。このシステムはたいていの場合、高温高湿条件を刺激するために使用されるが、温/冷乾燥状態を刺激するためにも使用することができる。
【0154】
温度 −31〜390°F
湿度 0 〜100%RH(100%RHの場合に最高温度は160°Fであり、この条件での最長連続所要時間は16時間である)
流量 1〜35FPM
手順:
直径4インチのサンプルを媒体から切り取る。
【0155】
20FPMで動作するLEFSベンチで、0.8μmラテックス球を試験用汚染物質として使用して、試験片の粒子捕捉効率を計算する。次いでサンプルを、THC媒体チャックに挿入する。試験時間は、試験条件に応じて数分から数日にすることができる。次いでサンプルを乾燥ラック上に置き、室温で乾燥させる(典型的な場合、一晩)。サンプルが乾燥したら、初期計算を行った場合と同じ条件を使用して、LEFSベンチ上で効率を再試験する。ファインファイバを含まないファインファイバ基体に関し、前のステップを繰り返す。上述の情報から、ファインファイバのみに起因する効率成分と、アルコールによる損傷に起因する効率損失を、計算することができる。ファインファイバによる損失効率が決定されると、保持される効率の量を計算することができる。
【0156】
合格/不合格基準:>50%効率保持
ほとんどの工業用パルス・クリーニング・フィルタへの適用例において、フィルタは、少なくとも50%のファインファイバ効率が保持される場合、十分に機能すると考えられる。
【0157】
アルコール(エタノール)浸漬試験
説明:この試験は、室温のエタノールに浸漬したときのフィルタ媒体性能の変化を測定するために、LEFS試験ベンチを使用する。
【0158】
手順:
直径4インチのサンプルを媒体から切り取る。20FPMで動作するLEFSベンチで、0.8μmラテックス球を試験用汚染物質として使用して、試験片の粒子捕捉効率を計算する。次いでサンプルを、アルコール中に1分間沈める。
【0159】
次いでサンプルを乾燥ラック上に置き、室温で乾燥させる(典型的な場合、一晩)。サンプルが乾燥したら、初期計算を行った場合と同じ条件を使用して、LEFSベンチ上で効率を再試験する。ファインファイバを含まないファインファイバ基体に関し、前のステップを繰り返す。上述の情報から、ファインファイバのみに起因する効率成分と、アルコールによる損傷に起因する効率損失を、計算することができる。ファインファイバによる損失効率が決定されると、保持される効率の量を計算することができる。
【0160】
合格/不合格基準:>50%効率保持
上述の仕様、実施例、およびデータは、本発明を説明するものである。しかし、開示された本発明に関し、多くの変形例および実施形態を提示することができる。本発明は、上述の特許請求の範囲において具体化される。
【図面の簡単な説明】
【
図1】 本発明のファインファイバを生成するための、典型的な静電エミッタ駆動装置を示す図である。
【
図2】 ファインファイバをフィルタ基体上に導入し、さらに
図1に示されるファインファイバ形成技術に導くのに使用される装置を示す図である。
【
図3】 小さい粒子状物質、すなわち2および5ミクロンの粒子状物質と比較した、支持材料の典型的な内部構造を示す図および本発明のファインファイバ材料を示す別の図である。
【
図11】 実施例13に関する分析ESCAスペクトルを示す図である。
【
図12】 実施例5から得られた本発明の0.23および0.45マイクロファイバ材料の安定性を示す図である。
【
図16】 非変性ナイロンコポリマー溶媒可溶性ポリアミドと比較した場合の、実施例5および6の材料の、改善された温度および湿度安定性を示す図である。
【
図20】 熱処理してから添加剤に結合させた2つのコポリマー、ナイロンホモポリマーとナイロンコポリマーのブレンドが、2つの別個のポリマー材料の区別可能な特徴を示さずに、架橋しまたは別の方法で化学的に接合された単一相であることがわかる、単一成分材料を形成することを示す図である。