(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
〔1.フィルタの構成〕
図1は、比較例としてのラダー型フィルタの回路図である。
図2は、実施例としてのラダー型フィルタの回路図である。
図3は、
図1及び
図2に示す各ラダー型フィルタにおける通過特性を示す。
図3における特性(a)〜(d)は、それぞれ
図1(a)〜(d)に示すラダー型フィルタの特性である。
【0013】
図1(a)〜(c)に示すラダー型フィルタは、直列腕に直列共振器S1及びS2が接続され、並列腕に並列共振器P1〜P3が接続されている。直列共振器S1、S2、および並列共振器P1〜P3は、例えば、それぞれFBARで実現することができる。各共振器の定数は、例えば、端子間容量と音響回路の等価容量との比で表される容量比γ=16、共振Q=680、反共振Q=1100を有する。直列共振器S1及びS2の共振周波数は、例えば3.7GHzである。並列共振器P1〜P3の共振周波数は、例えば3.5GHzである。
図1(b)に示すラダー型フィルタは、並列共振器P1に対して並列にインダクタL1が接続されている。
図1(c)に示すラダー型フィルタは、並列共振器P1に対して並列にインダクタL1が接続され、並列共振器P3に対して並列にインダクタL2が接続されている。インダクタL1及びL2の値は、例えば4.6nHである。
【0014】
図1(d)に示すラダー型フィルタは、直列腕に直列共振器S3及びS4が接続され、並列腕に並列共振器P1〜P3が接続されている。
図1(d)に示すラダー型フィルタは、直列共振器S4に対して並列にインダクタL3が接続されている。直列共振器S3の共振周波数は、例えば3.75GHzである。直列共振器S4の共振周波数は、例えば3.6GHzである。並列共振器P1〜P3の共振周波数は、例えば3.5GHzである。インダクタL3の値は、例えば2nHである。
【0015】
図1(a)に示すラダー型フィルタでは、
図3における特性(a)に示すように通過帯域の中央付近の周波数帯域の信号が大きく減衰し、損失が大きくなる。これに対して、
図1(b)〜(d)に示すようにラダー型フィルタに含まれる共振器にインダクタを接続することによって、
図3における特性(b)〜(d)に示すように通過帯域の中央付近の周波数帯域の減衰量を、特性(a)における減衰量に比べて、低減することができる。しかし、
図3における特性(b)〜(d)は、低損失な通過特性とは言い難い。
【0016】
図2に示すラダー型フィルタは、並列共振器P11に対して並列にインダクタL11が接続され、直列共振器S12に対して並列にインダクタL12が接続されている。インダクタL11は、直列共振器S11と並列共振器P11との間の経路上に接続されている。インダクタL12は、直列共振器S12と並列共振器P12との間の経路上と、直列共振器S12と並列共振器P13との間の経路上とに接続されている。すなわち、インダクタL11の間の経路上とインダクタL12の間の経路上とは異なる位置にある。直列共振器S11の共振周波数は、例えば3.75GHzである。直列共振器S12の共振周波数は、例えば3.6GHzである。並列共振器P11〜P13の共振周波数は、例えば3.5GHzである。インダクタL11の値は、例えば4.6nHである。インダクタL12の値は、例えば2nHである。
【0017】
図1に示す比較例としてのラダー型フィルタと、
図2に示す実施例としてのラダー型フィルタとの違いは、複数のインダクタのうち一方のインダクタが直列腕に接続され、他方のインダクタが並列腕に接続されている点である。
図2に示すラダー型フィルタでは、
図3における特性Aに示すように、通過帯域の中央付近の周波数帯域の減衰を特性(a)〜(d)に比べて抑えることができ、損失を低減することができる。また、
図3における特性Aに示すように、通過帯域の帯域幅を特性(a)〜(c)に示す帯域幅に比べて拡大することができる。
【0018】
なお、フィルタの通過特性は、インダクタをラダー型フィルタにおける直列腕と並列腕とにそれぞれ接続するだけでなく、インダクタを接続する箇所によって通過特性が変わる。以下、インダクタの接続箇所とラダー型フィルタの通過特性との関係について説明する。
【0019】
図4(a)に示すように、並列共振器P11に対して並列にインダクタL11が接続され、直列共振器S12に対して並列にインダクタL12が接続されているラダー型フィルタである。
図4(b)は、並列共振器P21に対して並列にインダクタL21が接続され、直列共振器S21に対して並列にインダクタL22が接続されているラダー型フィルタである。インダクタL21及びL22は、直列共振器S21と並列共振器P21との間の経路上に接続されている。
図4(c)は、並列共振器P31に対して並列にインダクタL31が接続され、直列共振器S31に対して並列にインダクタL32が接続され、並列共振器P33に対して並列にインダクタL33が接続されているラダー型フィルタである。インダクタL31及びL32は、直列共振器S31と並列共振器P31との間の経路上に接続されている。
図4に示すラダー型フィルタにおいて、各共振器及びインダクタの定数は、
図1または
図2に示す共振器、インダクタの定数と同等としている。
【0020】
図5は、
図4(a)〜(c)に示すラダー型フィルタの通過特性を示す。
図4(a)に示すように、インダクタL11とインダクタL12とがそれぞれ異なる経路上(直列腕と並列腕との間の経路上)に接続されている場合、
図5における特性(a)に示すように通過帯域の中央付近において減衰量が大きくならず、低損失の通過特性が得られる。
【0021】
一方、
図4(b)に示すように、インダクタL21とインダクタL22とが同じ経路上に接続されている場合、
図5における特性(b)に示すように通過帯域の中央付近における減衰量が特性(a)に比べて大きくなり、損失が大きくなってしまう。
【0022】
また、
図4(c)に示すように、インダクタL31とインダクタL32とが同じ経路上に接続され、インダクタL32とインダクタL33とが異なる経路上に接続されている場合(すなわち、
図4(b)に示すラダー型フィルタにおける並列腕にインダクタを追加した場合)、
図5における特性(c)に示すように通過帯域の中央付近における減衰量を特性(b)に比べて小さくできる。しかし、通過帯域の中央付近における減衰量は、特性(a)に示す減衰量よりも大きい。したがって、特性(c)は低損失であるとは言い難い。
【0023】
図4(a)に示すように、並列腕に接続するインダクタL11と直列腕に接続するインダクタL12とを、それぞれ異なる経路上(直列腕と並列腕との間の経路上)に接続することにより、低損失のラダー型フィルタを実現することができる。
【0024】
以下、
図4(a)に示すラダー型フィルタで得られる効果をさらに詳しく説明する。
【0025】
図6(a)は、
図4(a)に示すラダー型フィルタにおける入力側の2段分のラダー型フィルタを示す。
図6(b)は、
図4(a)に示すラダー型フィルタにおける出力側の2段分のラダー型フィルタを示す。
図6(c)は、
図4(b)に示すラダー型フィルタにおける入力側の2段分のラダー型フィルタを示す。
図6(d)は、
図4(b)に示すラダー型フィルタにおける出力側の2段分のラダー型フィルタを示す。なお、ラダー型フィルタの段数は、一つの直列共振器と一つの並列共振器とで1段分とカウントする。例えば、
図6(a)において直列共振器S11と並列共振器P11とで構成されるラダー型フィルタが1段目のラダー型フィルタであり、直列共振器S11と並列共振器P12とで構成されるラダー型フィルタが2段目のラダー型フィルタである。
【0026】
図7は、
図6(a)〜(d)に示すラダー型フィルタの通過特性を示す。
図7における特性(a)〜(d)は、それぞれ
図6(a)〜(d)に示すラダー型フィルタの通過特性に対応している。
図6(a)に示すラダー型フィルタと
図6(b)に示すラダー型フィルタとを備えたラダー型フィルタでは、
図7に示す特性(a)と特性(b)とを合わせた通過特性となる。一方、
図6(c)に示すラダー型フィルタと
図6(d)に示すラダー型フィルタとを備えたラダー型フィルタでは、
図7に示す特性(c)と特性(d)とを合わせた通過特性となる。すなわち、
図6(a)に示すラダー型フィルタと
図6(b)に示すラダー型フィルタとを備えたラダー型フィルタ、つまり
図4(a)に示すラダー型フィルタによれば、入出力間のインピーダンスを整合することができるので、低損失化及び広帯域化が可能となる。一方、
図6(c)に示すラダー型フィルタと
図6(d)に示すラダー型フィルタとを備えたラダー型フィルタ、つまり
図4(b)に示すラダー型フィルタによれば、入出力間のインピーダンスを整合することが難しく、低損失化及び広帯域化が困難となる。
【0027】
なお、本実施の形態では、各共振器はFBARで実現しているが、SAWデバイスで実現したとしても本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0028】
〔2.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0029】
図8は、本実施の形態のフィルタを備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54には、本実施の形態におけるフィルタが含まれている。
【0030】
本実施の形態にかかるフィルタをデュープレクサに採用することにより、低損失かつ広帯域のデュープレクサを実現することができる。
【0031】
なお、
図8に示す受信フィルタ54は、出力側がバランス型になっているが、シングルエンドでも良い。
【0032】
〔3.通信モジュールの構成〕
図9は、本実施の形態にかかるデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。
図9に示すように、デュープレクサ52は、受信フィルタ54と送信フィルタ55とを備えている。また、受信フィルタ54には、例えばバランス出力に対応した受信端子56が接続されている。また、送信フィルタ55は、パワーアンプ74を介して送信端子57に接続している。ここで、受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるフィルタを備えている。
【0033】
受信動作を行う際、受信フィルタ54は、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子56から外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ55は、送信端子57から入力されてパワーアンプ74で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0034】
本実施の形態にかかるフィルタを通信モジュールに採用することにより、低損失かつ広帯域の通信モジュールを実現することができる。
【0035】
なお、
図9に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0036】
〔4.通信装置の構成〕
図10は、本実施の形態にかかるデュープレクサ、または前述の通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、
図10に示す通信装置は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、
図10に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、デュープレクサ52における受信フィルタ54は、本実施の形態にかかるフィルタを備えている。
【0037】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ52に出力するように切り換える。デュープレクサ52に入力される受信信号は、受信フィルタ54で所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA73に出力される。LNA73は、入力される受信信号を増幅し、LSI75に出力する。LSI75では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。
【0038】
一方、信号を送信する場合は、LSI75は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ74で増幅されて送信フィルタ55に入力される。送信フィルタ55は、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ55から出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0039】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI82に入力される。LSI82は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。一方、信号を送信する場合は、LSI82は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ80または81で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0040】
本実施の形態にかかるフィルタを通信装置に採用することにより、低損失かつ広帯域の通信装置を実現することができる。
【0041】
なお、
図10に示す通信装置の構成は一例であり、他の形態の通信装置に本実施の形態にかかるデュープレクサを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0042】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、低損失かつ広帯域のラダー型フィルタを実現することができる。すなわち、本実施の形態のラダー型フィルタは、入力側の並列共振器P11に対して並列にインダクタL11が接続され、出力側の直列共振器S12に対して並列にインダクタL12が接続されている。インダクタL11及びL12は、それぞれ異なる経路上(直列共振器と並列共振器との間の経路上)に接続されている。このような構成とすることにより、入出力間においてインピーダンス整合を行うことができるので、低損失かつ広帯域のラダー型フィルタを実現することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、ラダー型フィルタにおける入力側の並列共振器(例えば並列共振器P11)にインダクタL11が並列接続され、出力側の直列共振器(例えば直列共振器S12)にインダクタL12が並列接続されている構成としたが、入力側の直列共振器(例えば直列共振器S11)にインダクタL11が並列接続され、出力側の並列共振器(例えば並列共振器P13)にインダクタL12が並列接続されている構成としてもよい。
【0044】
また、本実施の形態における直列共振器S11、S12は、本発明の主共振器の一例である。本実施の形態における並列共振器P11、P12、P13は、本発明の副共振器の一例である。本実施の形態におけるインダクタL11は、本発明の主インダクタの一例である。本実施の形態におけるインダクタL12は、本発明の副インダクタの一例である。