(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901153
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】半導体デバイスの冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20160324BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20160324BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H01L23/40 F
H05K7/20 Q
H05K7/20 M
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-129732(P2011-129732)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2011-258956(P2011-258956A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】61/353,316
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10165504.1
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591060898
【氏名又は名称】アイメック
【氏名又は名称原語表記】IMEC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・オプリンス
(72)【発明者】
【氏名】バルト・ファンデフェルデ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・フィオリーニ
(72)【発明者】
【氏名】エリク・ベイネ
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ・デ・フォス
(72)【発明者】
【氏名】ビヴラグ・マジェード
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−042214(JP,A)
【文献】
特表2008−509550(JP,A)
【文献】
特表2008−507129(JP,A)
【文献】
特開2005−030527(JP,A)
【文献】
特開2005−175398(JP,A)
【文献】
特表2006−514734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 1/00− 7/04
B81C 1/00−99/00
F04B 43/00−47/14
H01L 23/29
H01L 23/34−23/473
H01L 25/00−25/18
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの表面を冷却するための装置であって、
冷却対象の表面に対して非平行である複数のチャネル(3’)を備え、各チャネルは、各チャネルの長さ方向に沿って配置された複数の導電エリアを備え、
あるシーケンスに従って前記導電エリアに電圧を印加するための手段を備え、あるいは該手段と接続可能であり、
前記シーケンスは、チャネル内の冷却液の液滴(6)が1つの導電エリアから次の導電エリアへ移動して、これにより液滴をチャネルの上部から下部へまたは下部から上部へ輸送し、液滴が冷却対象の表面に対して交差する方向に移動し、衝突するようにした装置。
【請求項2】
ベース基板(25,36)と、前記ベース基板の上に接着剤(2)によって相互に接合されたスタック層(1)とを備え、前記各層(1)には複数の孔(3)が設けられ、
前記層(1)は、孔が相互接続されてスタック上部からスタック下部へ細長いチャネル(3’)を形成するように組み立てられ、
各層(1)での各孔(3)には、1つ又はそれ以上の前記導電エリアが設けられ、
前記ベース基板(25,36)は、冷却対象の表面に装着されるように構成され、
前記ベース基板は、1つ又はそれ以上の空洞(23)または冷却ゾーン(35)を備え、液滴がチャネル(3’)から前記空洞(23)または冷却ゾーン(35)の中に現れるように構成された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
各層(1)での各孔(3)の表面には、絶縁層(4)が設けられ、
分離電極(5)が、前記導電エリアとして、前記絶縁層の中に埋め込まれ、または前記絶縁層(4)と接触するように設けられる、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記層(1)は半導体材料から生産され、前記孔(3)の内面には分離電極が存在しない、請求項2記載の装置。
【請求項5】
冷却液(21)を収容するように構成され、前記チャネル(3’)の上部に配置され、これと連通した貯留部(20)をさらに備え、
前記ベース基板は、冷却対象の前記表面の上部に配置されるように構成された中央空洞(23)を有し、液滴がチャネル(3’)から前記空洞(23)の中に現れるようになり、
該装置は、ガス状物質を前記空洞(23)から排出するための手段(24)をさらに備える、請求項2〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記チャネル(3’)の上部に、これと連通したマニホールド構造(30)をさらに備え、
マニホールド構造は、冷たい冷却液のためのコレクタまたは複数のコレクタ(31)と、冷却表面から来る加熱された冷却液のためのコレクタまたは複数のコレクタ(32)とを備え、
前記チャネル(3’)は、第1グループのチャネル(33)と第2グループのチャネル(34)とを含み、
第1グループのチャネル(33)は、冷たい冷却液のためのコレクタ(31)と連通し、液滴を前記コレクタから、冷却対象の表面に輸送するように構成されており、
第2グループのチャネル(34)は、加熱された冷却液のためのコレクタ(32)と連通し、加熱された液滴を冷却対象の表面から、加熱された冷却液のための前記コレクタ(32)に輸送するように構成されており、
第1グループの各チャネルは、冷却対象の表面に近接して配置されるように構成された冷却ゾーン(35)を経由して第2グループのチャネルと連通し、
冷たい液滴が、第1グループのチャネル(33)から前記冷却ゾーン(35)の中に現れるようにし、加熱された液滴が第2グループのチャネル(34)を通って戻り輸送され、
マニホールド構造(30)は、冷たい冷却液のための入口(46a)と、加熱された冷却液のための出口(46b)とをさらに備え、
前記べース基板(36)は、前記冷却ゾーン(35)を規定するように構成された分離部分(37)を備える、請求項2または3記載の装置。
【請求項7】
前記冷却ゾーン(35)は、液体充填されるように構成でき、
第2グループのチャネル(34)の入口は、第1グループのチャネル(33)の出口より低く位置決めされる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記マニホールド構造は、冷たい冷却液のためのコレクタ(31)と連通した入口孔(46a)および、加熱された冷却液のためのコレクタ(32)と連通した出口孔(46b)がそれぞれ設けられたプレート(45)を備えた、請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
冷たい冷却液および加熱された冷却液のための前記コレクタ(31,32)は、外部の熱交換器(40)を備えた外部の冷却回路を介して相互接続される、請求項6〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
チャネル(3’)は、各チャネル内の液滴の移動が他のチャネルとは別個に駆動可能であるように構成される、請求項1,2,3,6のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
チャネル(3’)は、液滴の移動が全てのチャネル内で同時に起こるように構成される、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型デバイス、特に電子回路、特に集積電子回路の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代前半での導入以来(論文「"High-performance heat sinking for VLSI", Tuckerman&Pease, 5, 1981, IEEE Electron Device Letters, Vol. 2, p. 216」での説明を参照)、マイクロチャネルヒートシンクが、例えば、集積回路など、高い熱流束の用途での冷却用として大きな注目を集めている。従来のマイクロチャネル冷却器は、平行なチャネル配置をベースとしている。冷媒は、チップの一端(extreme)に位置する入口ポートから反対側の他端に位置する出口ポートへ流れる。こうした配置において、冷却は出口近傍よりも入口近傍でより効率的になり、温度勾配が形成される。さらに、流体フローは、相当の熱量を除去するために大きくする必要があり、チャネルは、流体とチップとの熱交換を最適化すめために狭くする必要がある。その結果、冷却器を動作させるのに必要な圧力が典型的には高くなり、コンパクトなポンプで提供することが困難である。動作圧力の減少及び/又は熱交換の向上のための種々の可能性が提案されているが、実際には何れもその問題を解決していない。平行チャネルをベースとした冷却手法が、熱負荷が位置に応じて変化する場合(例えば、ホットスポットの存在)にはとても非効率であることにも留意すべきである。
【0003】
二相流(two phase flow)を使用した場合、即ち、チップ温度で蒸発する液体を使用した場合、冷却フローの体積は低減できる。蒸発比熱(specific heat)は、流体の熱容量×典型的な温度増加(50〜60℃)よりかなり大きい。従って、かなり少ない量の流体が使用でき、動作圧力は低くなり、ポンプへの要求は厳しくなくなる。しかしながら、マイクロチャネルを流れる二相流を制御することは極めて困難である。即ち、フローは、不安定になり、チャネル間で相違する傾向になる。マイクロチャネルでの二相流を安定化させるための確立した方法は存在しない。
【0004】
改善した冷却配置が、流入する冷たい流体および流出する暖かい流体の両方のための複数のフロー経路を、冷却対象のプレートに対して垂直に組み立てることにある。冷たい流体の入口および暖かい流体の出口は、チップ上で均等に分布しているため、チップ温度は均等である。この概念の種々の実装が、論文("Hierarchically Nested Channels for Fast Squeezing Interfaces with Reduced Thermal Resistance", Brunschwiler et al, IEEE Transactions on Components and Packaging Technologies, 30 (2), 2007, pp.226-234)、米国公開第2006207746号や米国特許第6538885号に存在する。これらの「衝突(impingement)」冷却器の動作は、典型的にはマイクロチャネルよりかなり小さな圧力で済むことから、ポンプへの要求は厳しくなくなる。直線的なチャネルの場合のように、 二相流での動作は自明でなく、ホットスポットに対処することは不可能である。
【0005】
ICの液体冷却において第3の問題が、適切な圧力および流量を供給する必要があるポンプのニーズである。理想的には、ポンプは、冷却チップに一体化され、最小体積を占めるマイクロポンプとすべきである。必要な圧力および流量がともに大きいと、こうした小型化したポンプの実装は困難である。
【0006】
エレクトロウェッティング(electrowetting)の原理は、先行技術で知られており、いろいろな研究、例えば、論文("Electrowetting-based actuation of droplets for integrated microfluidics", M. G. Pollack et al, 2002, The royal society of chemistry, Lab Chip, Vol. 2, pp. 96-101)の課題である。後者の論文は、いわゆる「誘電体へのエレクトロウェッティング」システム(EWOD)を開示しており、液滴が2つの平行な表面の間で駆動され、前記表面の壁には誘電体材料を備え、接地電極が誘電体の片側に埋め込まれ、複数の駆動電極が誘電体の別の側に埋め込まれている。次の電極に電圧を印加することによって、液滴がチャネル内で前方に移動する。この原理は、国際公開第2006/016293号に示すように、電子回路基板用の冷却システムでの使用に提案されている。これらの知られたシステムの全てにおいて、液滴は、冷却対象の表面に対して平行に、可能ならば複数のマイクロチャネル内で移動するが、連続フローの場合、入口と出口の間に温度勾配が存在する。従って、このシステムを用いたホットスポットの処置が依然として困難である。米国公開第2008/0047701号は、類似のシステムを記載しており、ホットスポットに向けてエレクトロウェッティングによって液滴が移動する。それでも、こうしたシステムでの液滴移動の制御は困難であり、ホットスポットからの熱除去に改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した不具合の少なくとも1つを解消した冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、添付請求項に開示したような冷却システムに関する。
【0009】
本発明は、集積回路などの半導体デバイスの表面を冷却するための装置に関するものであり、該冷却装置は、冷却対象の表面に対して非平行である複数のチャネルを備え、各チャネルは、各チャネルの長さに沿って配置された複数の分離電極または等価の導電エリアを備え、
該装置は、あるシーケンスに従って前記電極または導電エリアに電圧を印加するための手段を備え、あるいは該手段と接続可能であり、
該シーケンスは、チャネル内の冷却液の液滴が1つの電極から次の電極へ移動して、これにより液滴をチャネルの上部から下部へ輸送し、そこから液滴が冷却対象の表面に衝突するようにしている。
【0010】
好ましい実施形態によれば、本発明の装置は、ベース基板と、接着中間層によって前記ベース基板および相互に取り付けられたスタック層とを備え、前記各層には複数の孔が設けられ、
前記層は、孔が相互接続されてスタック上部からスタック下部へ細長いチャネルを形成するように、相互の上部に組み立てられ、
各層での各孔には、1つ又はそれ以上の電極または等価の導電ゾーンが設けられ、
前記ベース基板は、冷却対象の表面に装着されるように構成され、
前記ベース基板は、1つ又はそれ以上の空洞または冷却ゾーンを備え、液滴がチャネルから前記空洞または冷却ゾーンの中に現れるように構成される。
【0011】
各層での各孔の表面には、絶縁層および、前記絶縁層の中に埋め込まれ、または前記絶縁層と接触した分離電極を設けてもよく、前記電極から、電圧を印加するための前記手段と接続可能なコンタクトパッドまでの電気接続を設けてもよい。
【0012】
一実施形態によれば、前記層は半導体材料から生産され、前記孔の内面には分離電極が存在しない。
【0013】
一実施形態によれば、本発明の装置は、冷却液を収容するように構成され、前記チャネルの上部に配置され、これと連通した貯留部(reservoir)をさらに備え、
該装置は、冷却対象の前記表面の上部に配置されるように構成され、中央空洞を有するベース基板をさらに備え、液滴がチャネルから前記空洞の中に現れるようになり、
該装置は、ガス状物質を前記空洞から排出するための手段をさらに備える。
【0014】
他の実施形態によれば、装置は、前記チャネルの上部に、これと連通したマニホールド(manifold)構造をさらに備え、マニホールド構造は、冷たい冷却液のためのコレクタまたは複数のコレクタと、冷却表面から来る加熱された冷却液のためのコレクタまたは複数のコレクタとを備え、
第1グループのチャネルは、冷たい冷却液のためのコレクタと連通し、液滴を前記コレクタから、冷却対象の表面に輸送するように構成されており、
第2グループのチャネルは、加熱された冷却液のためのコレクタと連通し、加熱された液滴を冷却対象の表面から、加熱された冷却液のための前記コレクタに輸送するように構成されており、
第1グループの各チャネルは、冷却対象の表面に近接して配置されるように構成された冷却ゾーンを経由して第2グループのチャネルと連通し、
冷たい液滴が、第1グループのチャネルから前記冷却ゾーンの中に現れるようにし、
加熱された液滴が第2グループのチャネルを通って戻り輸送され、
マニホールド構造は、冷たい冷却液のための入口と、加熱された冷却液のための出口とをさらに備え、
装置は、前記冷却ゾーンを規定するように構成された分離部分を備えたベース基板をさらに備える。
【0015】
前記冷却ゾーンは、液体充填されるように構成でき、第2グループのチャネルの入口は、第1グループのチャネルの出口より低く位置決めしてもよい。
【0016】
前記マニホールド構造は、 冷たい冷却液のためのコレクタおよび加熱された冷却液のためのコレクタを備えた蛇行(meander)構造でもよく、そして、前記蛇行構造の上部に配置され、冷たい冷却液のための入口孔および加熱された冷却液のための出口孔が設けられたプレートを備えてもよい。
【0017】
冷たい冷却液および加熱された冷却液のための前記コレクタは、外部の熱交換器を備えた外部の冷却回路を介して相互接続してもよい。
【0018】
チャネルは、各チャネル内の液滴の移動が他のチャネルとは別個に駆動可能であるように構成してもよい。
【0019】
他の実施形態によれば、チャネルは、液滴の移動が全てのチャネル内で同時に起こるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】有孔スタック層を備えた、本発明に係る冷却装置を示す。
【
図1b】
図1aの実施形態における1つの層内のチャネルの断面を示す。
【
図2】本発明に係る装置において、幾つかの層に向かう電気接続を示す。
【
図3】二相冷却に好適な、本発明に係る装置の概略図である。
【
図4】単相冷却および二相冷却に好適な、本発明に係る装置の概略図である。
【
図5】
図4の装置の外部冷却回路への組み込みを示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係るマニホールド構造を示す。
【
図7a】本発明の装置の特定の実施形態の立体図を示す。
【
図7b】本発明の装置の特定の実施形態の断面図を示す。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る装置を製造するための処理フローを示す。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る装置を製造するための処理フローを示す。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る装置を製造するための処理フローを示す。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る装置を製造するための処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るいずれの冷却装置も、管状チャネルでのエレクトロウェッティング(electrowetting)の原理をベースとしている。即ち、冷却対象の表面に対して非平行、好ましくは冷却対象の表面に対してほぼ垂直である複数のチャネルが設けられる。冷却液の液滴が、チャネルの長さに沿って配置された一連の電極(または等価の導電ゾーン、例えば、Si層の場合。さらに参照)の後続の駆動によって前記チャネル内部で伝搬し得る。電極の駆動は、液滴に対して伝搬力を作用するのに充分な電極への電圧印加を意味する。液滴は、チャネルを完全に充填する。各チャネルでの電極は、外部電圧源によって所定のシーケンスで駆動可能なように構成され、前記シーケンスは、液滴が1つの電極から次の電極へ移動し、そして、液滴がチャネルの上部から下部へ輸送され、そこから液滴が、冷却対象の表面に衝突するようにしている。
【0022】
図1aの実施形態に係る冷却装置は、ポリマー層2で分離されたスタック層1、典型的にはSi層を備える。各層は孔加工され、孔3が形成される。
図1bに詳細に示すように、孔の表面は、絶縁材料からなる層4で被覆されており、電極5が前記絶縁層の中に埋め込まれ、または前記絶縁層と接触している(しかし、チャネル内部を移動する液滴とは接触しない)。層が、ポリマー接着剤2を用いて互いの上部に積み上げられ、孔が複数の垂直マイクロチャネル3’を形成するようにしている。各垂直マイクロチャネルは、一連の電極を有し、これらは、一連の電極に次々と電圧を印加することによって、チャネルそれ自体に沿った静電駆動によって液滴6を輸送するために使用可能である。層スタックは、冷却対象のチップ10に接着される。金属電極5は、チップの外周に経路設定され(
図1bに金属部7で示すように)、電圧が電極に容易に印加できるようにしている。好ましい実施形態によれば、各マイクロチャネルは、独立に駆動可能である。他の実施形態によれば、同じ層内の全てのマイクロチャネルは、同時に駆動可能であり、液滴6の移動が全てのチャネル内で同時に起こる。本実施形態では、金属電極5は、厳密には必須でなく、層1は、高ドープのシリコンで製作可能であり、それ自体が電極として機能できる。これは、冷却装置の製造を著しく簡素化する。
【0023】
図2は、4つの層1を有する装置の場合に電気コンタクトを設置できる方法を示す。各チャネル3’につき、4つのコンタクト11a〜11dが設けられる。コンタクト11aは、上層1に配置され、一方、コンタクト11b〜11dは、ビア12(好ましくは、公知の手法に従って製造された「スルーシリコンビア」または「TSV(Through silicon via)」)を通って下地層に接続される。
図2の実施形態では、各チャネル3’は、独立に駆動可能である。本発明に係る種々の装置の製造に関する処理フローは、本明細書において後述している。
【0024】
本発明の装置において、同じ装置は、流体マイクロチャネルとポンプを組み合わせており、即ち、液滴に作用する推進力がチャネル自体で発生しているため、外部ポンプを必要としない。
【0025】
図3に示す特定の実施形態によれば、装置が「二相冷却」として提供される。この装置では、液滴は、上述のように、垂直マイクロチャネル3’内で上部から下部へ駆動され、続いて冷却対象の基板10に衝突し、そこで蒸発する。発生した気体は、対流(convection)によって装置から横方向に排出される。該装置は、上述のように、マイクロチャネル3’が設けられたスタック層1と、前記チャネルの壁に裏張り(lining)された電極または等価の導電ゾーン(目に見えない)とを備える。貯留部(reservoir)20がスタック層の上部に設けられ、入口22から供給された冷却液21が前記貯留部の中に存在している。貯留部からは、電極の駆動によって液滴がチャネル3’を通って下向きに駆動される。チャネルの端部で、液滴は冷却対象の表面に衝突する。液滴は、該表面との接触時に蒸発し、これにより表面を冷却する。冷却装置と冷却対象の表面との間の空間23には、出口24が設けられ、これを通じて気体は対流により排出される。前記空間23は、スタックをベース基板25の上に搭載することによって得られ、中央空洞を含む(前記空洞は空間23を形成する)。本発明の装置は、ベース基板25と、チャネル層1とを含む。
【0026】
図4に概略的に示す他の実施形態、「単相冷却」の実施形態によれば、液滴は、冷却対象の表面と接触したとき、蒸発せずに液体状態のままである。この接触により、液滴は、熱を取り上げて、衝突する液滴とは反対方向に追加のマイクロチャネルを通じて排出される。本実施形態では、装置は、チャネル層1の上部にマニホールド構造30を備え、前記マニホールドは、冷たい液滴のためのコレクタまたは複数のコレクタ31と、加熱された液滴のためのコレクタまたは複数のコレクタ32とを備える。冷たい液滴は、冷たい液滴のためのコレクタ31から第1群のマイクロチャネル33を通じて駆動され、表面に衝突して加熱され、その後、加熱された液滴は、第2群のマイクロチャネル34を通じて上向きに駆動される。第2群の各チャネルは、冷却対象の表面に近接した冷却ゾーン35によって、第1群のマイクロチャネルと接続されている。
【0027】
好ましくは、各冷却ゾーン35は液体で充填されており、そのため、冷たい液滴は、実際には前記ゾーンに存在する液体の液面38に衝突する。そして、第2チャネル34の入口は、第1群のチャネル33の出口より低く配置され、その結果、第2群のチャネル34の入口は、冷却ゾーン35に存在する液体の中に水没している。冷却ゾーン35は、先の実施形態のように、ベース基板36の空洞の内部に形成してもよい。複数の冷却ゾーン35は、ベース基板36の一部である分離部37によって互いに分離されている。第2チャネル34の出口の周りに部分39が存在しており、これは前記入口を第1チャネル33の出口より低い位置に保つためである。これらの部分39は、追加の層1から同じプロセスで製造でき、そして、これらは液滴の上向き運動を維持する電極を収容しても構わない。加熱された液滴は、装置の上部において熱い液滴のためのコレクタ32に回収され排出される。
【0028】
好ましくは、冷却装置は、
図5に示すように、閉ループ冷却システムの中に挿入される。熱い液滴は、外部の熱交換器40に向けて排出され、ここで冷却(二次冷却液41と熱交換)され、ここから冷却対象の表面に向けた再注入のために冷却装置に向けて方向転換される。
【0029】
図4に示した先の実施形態の装置は、二相冷却のためにも使用できる。この動作モードでは、衝突した液滴は蒸発し、気体が対流によって第2群の垂直チャネル34を通じて排出され、そこで気体が液滴に凝縮する。次に、液滴は静電気力によって押し上げられる。
図3に示した二相冷却について記載した第1実施形態に関して、これはより複雑であるが、ホットスポットに対応して選択的な冷却に対処できる。
図4の装置の二相の実施形態において、第2群のチャネル34の入口は、第1群のチャネル33の出口と同じレベルであってもよい(即ち、部分39は無くてもよい)。
【0030】
図6は、一実施形態に係るマニホールド30の立体図である。蛇行(meander)構造が、例えば、厚い写真印刷可能な接着層によって実現され、標準的なフォトリソグラフ法によってプレート45(例えば、ガラスプレート)の上に製作される。そこには、液体用のアクセス孔46a/46bが予め製作されており、即ち、1つのアクセス孔は流入する冷たい冷媒のためであり、1つは流出する加熱された冷媒のためである。この蛇行は、流入する(冷たい)冷媒および流出する(暖かい)冷媒のフローのためのチャネルを規定する。パターン化した接着層およびガラスからなる積層体(stack)は、層1のスタック47の上に接合でき、これにより冷却装置を形成する。
図4の領域36,37は、蛇行製作に用いた同じプロセスを用いて、層1のスタック上または冷却対象のチップ裏面上に製作できる。
【0031】
本発明に係る冷却装置を製造する幾つかのプロセスについて開示する。最初に、一方向の運動(
図3のようにチャネルの上部から下部へ)のみが要求される衝突二相冷却に使用可能な装置を製造するための方法を開示している。この簡略化した装置は、異なるチャネルの分離制御が可能でなく、ダイ単位(die to die)のボンディングをベースとしている。該装置の立体図および断面を
図7aと
図7bに示す。該装置は、4つの層1a〜1dからなり、層間に接着層2を有する。水平面の数は、例として4個だけに固定されている。異なる層の全てが、低抵抗率のシリコンで製作される。これにより、駆動電圧のための電気ラインの実装を回避している。チャネル3’は、図面においてコンタクトパッド50とともに見えている。層1は、サイズが相違しており、下部から上部へ行くにつれてより狭くなっているため、コンタクトパッド50は、各層のエッジでアクセス可能になる。本実施形態では、チャネルは、別々に駆動できず、即ち、上部から下部へ次々と、次の層のコンタクトパッドに電圧を印加することによって、全てのチャネルが同時に駆動される。電位が各層で均等であるため、冷媒フローは下方にのみ向いており、冷却の局所化制御は実施されない。チャネル層1a〜1dの下にはベース基板25があり、冷却対象の表面の上方に配置されるようにした空洞が設けられる。
図7の装置は、
図3に示した一般的な機構についてのより具体的な実装である。前記装置を製造するための方法を、以下に説明している。それは、3つのステップ、即ち、第1はベースウエハの用意であり、第2はいろいろな層の製造であり、第3は組み立てである。
【0032】
ベースウエハ25は、
図8aに概略的に示すように、下記の手順に従って製作される。
【0033】
a)酸化物99を低抵抗率のSiウエハ100の上に堆積する(例えば、3マイクロメータの酸化物)。ウエハは、接着剤102を用いて、キャリアウエハ101に仮に接合されている。接着剤は、薄い層((例えば、10マイクロメータ)にスピンコートされ、後にウエハを200℃超に加熱することによって除去できる。
【0034】
b)酸化物99をパターン化して、空洞規定のためのハードマスクを形成する。
【0035】
c)シリコンは、DRIE(深堀りRIE: Deep Reactive Ion Etching)によってエッチングされる。エッチングは、接着剤で停止する。
【0036】
各活性層1a〜1dが、
図8bに概略的に示すように、下記ステップに従ってウエハを処理することによって製作される。
【0037】
a)酸化物199を低抵抗率のSiウエハ200の上に堆積する(例えば、3マイクロメータの酸化物)。酸化物をパターン化する。
【0038】
b)酸化物を、シリコンをDRIEでエッチングするためのハードマスクとして使用する。エッチングの深さは、装置を形成する層の厚さより僅かに大きい。
【0040】
d)例えば、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)からなる電気絶縁層201を堆積する。
【0041】
e)金属コンタクトのためのアクセス孔202をTEOS層に開ける。
【0042】
f)金属コンタクト203を堆積し、パターン化する。コンタクト用にアルミニウムが使用できる。
【0043】
g)ウエハは、裏面がアクセス可能なように、キャリアウエハ204に仮に接合される。このステップでは、ベースウエハの処理に使用したのと同じ接着剤が使用される。
【0044】
h)ウエハは、研磨され、チャネルを形成することになる孔205を開ける。
【0045】
i)第2酸化物層206を低い温度で堆積し、研磨した表面および、酸化物が研磨中に損傷したチャネルのエッジのために電気絶縁を設ける。
【0046】
j)接着材料(例えば、ベンゾシクロブテンBCB)からなる層207をスピンコートし、パターン化する。
【0047】
最後に、
図8cに概略的に示すように、冷却装置の組み立てを下記ステップに従って行う。
【0048】
a)ダイ(die)が、ベースウエハから単一化(singulated)される。
【0049】
b)ダイは、ダイ#1と称され、活性ウエハから単一化される。
【0050】
c)ダイは、ダイ#2と称され、活性ウエハから単一化される。それは、ダイ#1より小さな表面を有する。
【0051】
d)ベースダイは、キャリアから剥離される。
【0052】
e)ダイ#1は、キャリアから剥離され、約250℃の温度でベースに接合される。
【0053】
f)ダイ#2は、キャリアから剥離され、約250℃の温度でベースおよびダイ#1のアセンブリに接合される。
【0054】
このプロセスは、任意の数のダイについて繰り返して、
図7aと
図7bに示した装置を達成することが可能である。
【0055】
図9〜
図12は、本発明に係る装置を製造するための処理フローを示すものであり、各チャネルが個別に駆動可能である。
図9は、1つのチャネル300および、上部層および前記上部層の下方に位置した2つの層にそれぞれ接続された3つのコンタクト301の例示の構成を示す。2つのビア302は、上部層の下方にある2つの層と接触するために設けられる。図面を簡略化するために、チャネル300およびビア302は、同じプレーンで中央断面を有するように描いている。これは、上述した実施形態の典型的な配置ではない。さらに、層数は、図面を簡略化するために、3つに限定しているが、実際の実施形態ではより多い数である。下記は、3つの層の各々の製造プロセス、および本発明の装置を形成するためのこれらの組み立ての説明である。
【0056】
最初に、上述したように、孔がシリコン基板310に製作され、酸化物311でコートされる(
図10(A))。そして、シード層312がスパッタ成長される(
図10(A))。メッキレジスト313がスピンコートされ、パターン化され、コンタクトエリアを規定する(
図10(B))。等角(conformal)なメッキを行って、銅コンタクト314を製作する(
図10(C))。シード層を除去して、保護酸化物315を堆積し、パターン化して、コンタクトエリアを開ける(
図10(D))。ウエハは、キャリアウエハ316に接着し(
図10(E))、研磨して前にエッチングした空洞を開ける(
図10(F))。保護酸化物317を堆積する(
図10(F))。
【0057】
処理の第2部分において、いろいろな層と接続するために、ビア400が製作される。このビア製作プロセスは、以前の特許および参考文献、例えば、国際公開第2009115449号に記載されている。
【0058】
実装したビアを
図11Aに示している。銅は、ウエハから突出していることに留意する。異なる層を接合するために、
図11Bに示すように、接着ポリマー401がスピンコートされ、パターン化される。
図12は、上述したように製造した3つの層を示すもので、まだこれらのキャリア316が付着している。各層には異なる量のビアが設けられ、上部層は2つのビア、中間層は1つ、下部層はビア無しである。
【0059】
下記の方法に従って、組み立てが進行する。3つの層は、ベース基板、例えば、
図8aの処理フローで説明したのと同じベース基板に接合される。最初に、下部層は、熱圧着プロセスによってベースに接合される。そして、キャリアウエハ316は除去される。そして、中央層は接合され、キャリアウエハは除去される。上部層は、同じプロセスに従って搭載される。