特許第5901179号(P5901179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901179
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20160324BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20160324BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20160324BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20160324BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20160324BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160324BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160324BHJP
【FI】
   G01N33/50 Z
   A61K8/64
   A61Q19/02
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 P
   G01N33/68
   C12Q1/68 A
   !C12N15/00 AZNA
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-184902(P2011-184902)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2013-44719(P2013-44719A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】本川 智紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政知
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−300048(JP,A)
【文献】 特表2005−524652(JP,A)
【文献】 特表2012−510959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドレノメジュリン(ADM:Adrenomedullin)、プロアドレノメジュリンN−末端20ペプチド(PAMP:proadrenomedullin N−terminal 20 peptide)、及びアドレノメジュリン2/インテルメジン(ADM2/IMD:Adrenomedullin2/Intermedin)からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドの産生抑制作用を評価する工程を含むメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法であって、
前記ペプチドの産生抑制作用の評価が、被験物質を添加した場合の細胞、及び被験物質を添加しない場合の細胞における前記ペプチドの産生量又は前記ペプチドに係る遺伝子発現量を比較して行われ
前記細胞が、角化細胞(ケラチノサイト)及び/又は色素細胞(メラノサイト)であることを特徴とする、メラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記細胞にADM等産生促進因子を付与する工程を含み、前記ADM等産生促進因子の付与が、紫外線照射及び/又はメラニン添加である、請求項1に記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記ペプチドに係る遺伝子発現量が、ADMmRNA発現量及び/又はADM2/IMDmRNA発現量である、請求項1または2に記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載のスクリーニング方法によりメラニン産生抑制剤をスクリーニングする工程、
前記工程によりメラニン産生抑制作用を有すると判別された成分を含有させる工程、を含むことを特徴とする、美白組成物の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に好適な、新規な作用機序を介しメラニン産生抑制効果を発揮するメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法、該メラニン産生抑制剤を含有する美白用組成物、並びにその美白用組成物の製造方法に関するものである。尚、本発明の説明において、化粧料との用語は、医薬部外品を含むものとして定義する。
【背景技術】
【0002】
紫外線暴露、炎症をはじめとする皮膚への刺激の結果生じる色素沈着は、日焼け等の一時的な皮膚色素沈着症状に留まらず、しみ、くすみ等の慢性的な皮膚色素沈着症状として加齢と共に顕在化する。また、この様な慢性的な皮膚色素沈着症状は、他人の見た目の印象に大きな影響を与えるため、肌に関する調査を実施した場合には、必ず肌トラブルとして上位にのぼる皮膚症状である。
【0003】
前述の皮膚色素沈着症状は、紫外線暴露や炎症等の刺激による情報伝達物質、サイトカイン、ホルモン等の分泌により表皮に存在する色素細胞(メラノサイト)のメラニン産生が亢進され、表皮にメラニンが過剰沈着することにより生じることが報告されている。この様な皮膚色素沈着症状に関する研究成果・情報を基礎とし、日焼け、しみ、くすみ等の色素沈着症状の予防又は改善を目的としたメラニン過剰産生及び蓄積等を抑制するメラニン産生抑制剤が見出され、化粧料等に配合されている。前記のメラニン産生抑制剤としては、チロシナーゼ酵素に対する阻害作用を有するレゾルシン誘導体、アルブチン及びハイドロキノン誘導体、チロシナーゼ活性発現に必須な銅イオンをキレートするエラグ酸及びコウジ酸、α−MSH(MSH:Melanocyte stimulating hormone)阻害作用を有するマメ科クララ(苦参)より得られる植物抽出物(例えば、特許文献1を参照)、メラノサイトのデンドライド伸長抑制作用を有するスイカズラ科スイカズラより得られる植物抽出物(例えば、特許文献2を参照)、エンドセリン−1産生抑制作用を有するハヤトウリ果実抽出物(例えば、特許文献3を参照)等の作用機序の異なるメラニン産生抑制剤が知られている。しかしながら、前記のメラニン産生抑制剤を含有する化粧料には、一定の美白効果が認められるものの、使用者が望むような高い美白効果又は持続性が十分に得られているとは言い難い。これは、メラニン産生機構が依然として十分に解明されておらず、既知の作用機序に基づいた美白作用だけでは、その効果が十分でないためであると考えられる。さらに、前記のメラニン産生抑制剤には、安全性又は安定性に課題を有するものも存する。
【0004】
一方、1993年にKitamura等によってアドレノメジュリン(ADM:Adrenomedullin)なる循環調節ペプチドが報告された(例えば、非特許文献1を参照)。ADMは、副腎髄質、心臓、血管、肺、脳、腎臓等の多くの組織に存在し、細胞内cAMP濃度を上昇させ、血圧降下(例えば、非特許文献2を参照)、血管新生又は再生促進作用(例えば、非特許文献3を参照)等の生理活性を発現することが報告されている。また、ADMは前駆体である185個のアミノ酸プレプロホルモンから連続的な酵素的分解及びアミド化反応を経由して生合成されるが、かかる前駆体のN末端領域からはプロアドレノメジュリンN−末端20ペプチド(PAMP:Proadrenomedullin N−terminal 20 peptide)と称されるペプチドが生合成されることも明らかにされ、かかるペプチドの生理活性も報告されている(例えば、特許文献4を参照)。さらに、ADMと同様にカルシトニン遺伝子関連ペプチドファミリーに属し、ADMと類似した構造を有するアドレノメジュリン2/インテルメジン(ADM2/IMD:Adrenomedullin2/Intermedin)なるペプチドも発見されている。ADM、ADM2/IMD、及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGR
P:Calcitonin gene−related peptide)は、共にカルシトニン受容体様受容体(CRLR:Calcitonin−receptor−like receptor)を共有し、生理活性を発現することが知られている。ほ乳類のCRLRは、受容体活性調節蛋白質(RAMP1−3:Receptor−activity−modyfying protein)と複合体を形成することにより受容体として機能するが、RAMPとの組み合わせによって、ADM、ADM2/IMD又はCRLRとの特異性が調整されることが明らかとされている。
【0005】
ADM又はADM関連ペプチドの作用については様々報告されており(例えば、特許文献5を参照)、皮膚外用剤に含有させることも既に報告されている(例えば、特許文献6を参照)。しかしながら、皮膚におけるADM又はADM関連ペプチドの生物活性はあまり詳しく研究されておらず、取り分け、ADM又はADM関連ペプチドと色素沈着症状との関連性については報告されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−067804号公報
【特許文献2】特開2003−081747号公報
【特許文献3】特開2008−094737号公報
【特許文献4】特開2006−290814号公報
【特許文献5】特開2007−145850号公報
【特許文献6】特開2003−104913号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kitamura K.et. al., Biochem.Biophys.Res.Commun,192,553−560(1993)
【非特許文献2】Shimosawa T.et.al., J.Clin.Invest.96,1672(1995)
【非特許文献3】Miyashita K.et.al.,FEBS Lett.,544,86−92(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の様な状況を鑑みてなされたものであり、優れた美白成分の発見に繋がる技術を確立することを課題とする。特に、既知の作用機序に基づいた美白作用に着目するだけでは、優れた美白成分を発見することは困難であると考えられる。
即ち、本発明は、新規な作用機序に基づいた美白作用を評価し得る方法を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、紫外線照射等のメラニン産生を亢進させる要因によって、ケラチノサイトのADM産生量(ADM遺伝子発現量)、及びADM様ペプチドであるADM2/IMD産生量(ADM2/IMD遺伝子発現量)が増加し、さらにADM量、PAMP量及びADM2/IMD量の増加に伴って、色素細胞(メラノサイト)のメラニン産生量が増加する事実を明らかにした。
これらの知見に基づき、本発明者らはさらに鋭意検討を重ね、これらのペプチドの産生を抑制する成分を精度よく、効率的に評価し得る方法を確立した。さらにかかる方法によって評価し、選択した成分を含有した組成物が、色素沈着予防又は改善作用を発揮することを確認した。即ち本発明は、以下に示す通りである。
【0010】
<1> アドレノメジュリン(ADM:Adrenomedullin)、プロアドレノメジュリンN−末端20ペプチド(PAMP:Proadrenomedullin N−terminal 20 peptide)、及びアドレノメジュリン2/インテルメジン(ADM2/IMD:Adrenomedullin2/Intermedin)からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドの産生抑制作用を評価する工程を含むメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法であって、
前記ペプチドの産生抑制作用の評価が、被験物質を添加した場合の細胞、及び被験物質を添加しない場合の細胞における前記ペプチドの産生量又は前記ペプチドに係る遺伝子発現量を比較して行われることを特徴とする、メラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
<2> 前記細胞にADM等産生促進因子を付与する工程を含む、<1>に記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
<3> 前記ADM等産生促進因子の付与が、紫外線照射及び/又はメラニン添加である、<2>に記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
<4>前記ペプチドに係る遺伝子発現量が、ADMmRNA発現量及び/又はADM2/IMDmRNA発現量である、<1>〜<3>の何れかに記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
<5> 前記細胞が、角化細胞(ケラチノサイト)及び/又は色素細胞(メラノサイト)である、<1>〜<4>の何れかに記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法。
<6> <1>〜<5>の何れかに記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法により選択されたメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする、美白用組成物。
<7> 皮膚外用剤である、<6>に記載の美白用組成物。
<8>化粧料(但し、医薬部外品を含む)である、<6>又は<7>に記載の美白用組成物。
<9> <1>〜<5>の何れかに記載のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法によりメラニン産生抑制作用を有すると判別された成分を含有させることを特徴とする、美白組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来明らかとされていなかったADM、PAMP又はADM2/IMD産生に起因したメラニン産生量の増加を抑制する新規なメラニン産生抑制剤を、精度よく、かつ簡便に選択することができる。また、かかるメラニン産生抑制剤を利用した美白用組成物、並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】紫外線照射によるケラチノサイトにおけるADM遺伝子発現量の検討結果を示す図である。
図2】メラニン添加によるケラチノサイトにおけるADM遺伝子発現量の検討結果を示す図である。
図3】紫外線照射によるケラチノサイトにおけるADM2/IMD遺伝子発現量の検討結果を示す図である。
図4】ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系におけるsi−RNA添加によるメラニン産生量及び細胞数変化の検討結果を示す図である。
図5】ADM添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討結果である。
図6】PAMP添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討結果を示す図である。
図7】ADM2/IMD添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0014】
<本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法>
本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法は、アドレノメジュリン(ADM:Adrenomedullin)、プロアドレノメジュリンN−末端20ペプチド(PAMP:Proadrenomedullin N−terminal 20 peptide)、及びアドレノメジュリン2/インテルメジン(ADM2/IMD:Adrenomedullin2/Intermedin)からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドの産生抑制作用を評価する工程を含むことを特徴とする。PAMPはADM前駆体ペプチドのN末端領域から生合成されるADM遺伝子関連ペプチドであり、ADM2/IMDはADMと同様にカルシトニン遺伝子関連ペプチドファミリーに属するADM様ペプチドである。ADMを含めたこれらのADM関連ペプチドは血圧低下等の共通した作用を発揮することが知られている。本発明者らは、ケラチノサイト等におけるこれらのペプチドの産生量が、紫外線照射等のメラニン産生を亢進する要因によって増加し、さらにこれらのペプチドの産生量の増加に伴って、メラノサイトのメラニン産生量が増加する事実を明らかにした。即ち、これらのペプチドの産生を抑制できる成分が、メラニン産生抑制剤となり得ることを明らかとしたのである。これらのペプチドに関連したメラニン産生抑制作用は、本発明者らの知る限り報告されておらず、かかるメラニン産生抑制作用を発揮する成分は、新規な作用機序に基づくメラニン産生抑制剤と言える。本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法は、かかるメラニン産生抑制剤を評価・選択することができるスクリーニング方法である。
【0015】
本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法は、メラニン産生抑制剤として評価される被験物質のADM、PAMP、及びADM2/IMDの何れかのペプチドの産生抑制作用を評価する工程を含むものであるが、かかる評価を、被験物質を添加した場合の細胞、及び被験物質を添加しない場合の細胞におけるADM、PAMP、若しくはADM2/IMDの産生量又はこれらのペプチドに係る遺伝子発現量を測定し、その値を比較して行う。ここで「比較」とは、被験物質のペプチド産生抑制作用を評価する上で、被験物質を添加しない場合の値を基準として評価することを意味している。ADM産生抑制作用を評価する場合を例に挙げて具体的に説明すると、被験物質を添加した場合の細胞、及び被験物質を添加しない場合のADM産生量又はADM遺伝子発現量を測定し、被験物質を添加した細胞のADM産生量又はADM遺伝子発現量が、被験物質を添加しない細胞に比べて小さい場合、被験物質によってADM産生が抑制されている、即ち被験物質にはADM産生抑制作用があると評価することができる。上述のようなADM産生抑制作用の評価は、PAMP産生抑制作用及びADM2/IMD産生抑制作用を評価する場合にも当てはまり、PAMP産生抑制作用を評価する場合にはPAMP産生量又はADM遺伝子発現量、ADM2/IMD産生抑制作用を評価する場合にはADM2/IMD産生量又はADM2/IMD産生量を測定することによって評価することができる。
【0016】
本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法は、上述の方法によって被験物質のADM、PAMP、及びADM2/IMDの何れかの産生抑制作用を評価する工程を含むものであれば、スクリーニングにおけるその他の工程は特に限定されない。被験物質にADM、PAMP、及びADM2/IMDの何れかの産生抑制作用があると評価された場合には、メラニン産生抑制作用がある、即ちメラニン産生抑制剤として選択されるほか、複数の被験物質についてADM等の産生抑制作用を定量的に算出し、これらを相対的に比較して、被験物質のメラニン産生抑制作用の強弱を判断するものであってもよい。さらに、ADM等の産生抑制作用についての判定基準を予め設けて置き、その判定基準以上のADM等の産生抑制作用が得られた被験物質をメラニン産生抑制剤と判断するものであってもよい。また、本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法は、被験物質のADM産
生抑制作用、PAMP産生抑制作用、及びADM2/IMD産生抑制作用の少なくとも1種を評価するものであればよく、2種或いは全てを評価するものであってもよい。
【0017】
以下、本発明のスクリーニング方法における工程について、ADM産生抑制作用を評価するスクリーニング方法を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の要旨を超えない限り、これらの方法に限定されるものではなく、さらに工程の内容はPAMP及びADM2/IMDの産生抑制作用を評価する場合に当てはめることができる。
【0018】
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程を含むものが挙げられる。
(i)評価に使用する細胞に、被験物質を添加する(比較対照として被験物質を添加しない細胞も用意する)
(ii)被験物質の添加及び非添加の場合のADM産生量又はADM遺伝子発現量を測定する
(iii)測定したADM産生量又はADM遺伝子発現量を比較して、被験物質のADM産生抑制作用を評価する
(iv)評価したADM産生抑制作用を、予め設定した基準に基づいて判定し、被験物質を判別する
【0019】
本発明のスクリーニング方法に使用する細胞は、ADM、PAMP又はADM2/IMDの産生量、又はこれらのペプチドに係る遺伝子発現量を測定できる細胞であれば特段限定されないが、例えばADM、PAMP及びADM2/IMDの産生量とメラニン産生抑制作用との関連性が明らかにされたケラチノサイト及びメラノサイトのほか、線維芽細胞、副腎髄質細胞、血管内皮細胞、単球/マクロファージ、心筋細胞等のADM産生細胞又は、更には、遺伝子導入等により作製されたADM(過剰)発現細胞等が好適なものとして例示できる。また、ケラチノサイト及びメラノサイトの共培養系を用いることもできる。これらの細胞の内、ケラチノサイトを使用することが好ましい。メラニン産生抑制剤を含有する組成物の使用形態が、主に皮膚外用剤であり、適応部位として皮膚が想定されるためである。
【0020】
本発明のスクリーニング方法は、評価に使用する細胞に、紫外線照射、メラニン添加、サイトカイン添加、その他メラニン産生を亢進する因子を付与する操作が含まれてもよい。かかる操作が含まれると、日焼け等のメラニン産生が亢進した状態に近い態様で評価することになり、スクリーニングをする上で有効である。実際、メラニン産生抑制剤のスクリーニング方法において、紫外線照射等の操作を加える方法が報告されている(例えば、特開2011−001326号公報を参照)。特に、試験例1、2及び3に示されるように、紫外線照射やメラニン添加等は、ADM産生及びADM2/IMD産生を促進する因子にもなる。従って、このような因子を付与した上で、ADM、PAMP若しくはADM2/IMDの産生量又は遺伝子発現量を測定すると、測定精度、測定感度、再現性等の実験操作面からも好ましくなる。本発明においては、紫外線等のADM、PAMP、又はADM2/IMDの何れかのペプチドの産生を促進する因子をADM等産生促進因子といい、本発明のスクリーニング方法は、ADM等産生促進因子を付与する工程が含まれることが好ましい。また、ADM等産生促進因子の付与は、本発明のスクリーニング方法における何れの段階で行われてもよく、細胞を培養する際、又は被験物質を添加した後であってもよい。
【0021】
上記(ii)の工程におけるADM産生量又はADM遺伝子発現量の測定は、被験物質のADM産生抑制作用を評価するために利用される測定値である。ADM産生量又はADM遺伝子発現量を測定する方法としては、例えば、ADM遺伝子発現量を測定する方法(特表2006−518031号公報参照)、標識抗体等を用いADM産生量を直接測定する方法(特開平07−196693号公報参照)が挙げられる。また、ADM産生抑制作用
を評価できる測定値であれば、ADM産生量又はADM遺伝子発現量と関連性が高い物性値を測定して代用してもよい。例えば、ADM産生関連酵素(合成又は分解酵素)活性を測定する方法が挙げられる。ADM産生量又はADM遺伝子発現量の測定方法は特に限定されないが、測定感度、操作の簡便性、再現性等の理由により、ADM遺伝子発現量を測定することが好ましく、ADMmRNA発現量を測定することが特に好ましい。
【0022】
ADM遺伝子発現量を測定する方法としては、mRNA遺伝子発現量を測定可能なノーザンブロット法(Northern blotting)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR:Reverse Transcription Polymerase
Chain Reaction)法、リアルタイムPCR(Real time PCR)法、更には、リアルタイムPCRとRT−PCRを組み合わせた測定方法等が挙げられる。測定感度及び測定の簡便性などの面より、リアルタイムPCR法によってADMmRNA遺伝子発現量を測定する方法が好ましい。かかる方法は、被験物質の添加、並びに、紫外線照射、メラニン添加等のメラニン産生促進要因の影響を受けることなく精度よく、簡便に測定することができる。ADMmRNA遺伝子発現量の測定は、市販の簡易測定キットを使用することにより簡便に行うことができる。例えばQIAGEN社より販売されているRNeasy Mini Kitを使用してmRNAを抽出し、Invitrogen社より販売されているSuperScript VILO cDNA synthesis Kitを用いてc−DNA(プライマー配列非公開)を合成した後、リアルタイムPCR法により、目的とするADMmRNA遺伝子発現量を測定する方法が好適なものとして例示できる。
ADM2/IMD遺伝子発現量を測定する場合には、上記ADM遺伝子発現量を測定する方法で記載した測定方法を当てはめて測定するほか、公知の方法を適宜利用することができる。
【0023】
ADM産生量を測定する方法としては、酵素イムノアッセイ(EIA/ELISA)法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、又はウェスタンブロット(Westenblot)法等の抗原抗体反応を利用した公知の測定方法が挙げられる。また、PAMP及びADM2/IMD産生量を測定する場合にも適用することができ、これらのADM関連ペプチドの質量の測定は、市販されているキットを利用して好適に実施することができる。市販されているキットとしては、Phenix Pharmaceuticals,Inc製の以下の測定キットが好適なものとして例示出来る。
・ADM測定キット
Adrenomedullin(1−52)(Human)−EIA Kit
Adrenomedullin(1−52)(Human)−Fluorescent
EIA KIT
Adrenomedullin(1−52)(Human)−RIA Kit
・PAMP測定キット
Adrenomedullin N−20,Pro/PAMP−20/Prodepin(Human)−EIA Kit
Adrenomedullin N−20,Pro/PAMP−20/Prodepin(Human)−RIA Kit
・ADM2/IMD測定キット
Intermedin/Adrenomedullin−2(Human)−EIA Kit
Intermedin/Adrenomedullin−2(Human)−RIA Kit
【0024】
上記(iii)工程における被験物質のADM産生抑制作用を評価する方法も特段限定されず、例えば以下の式[数1]を用いて算出する方法が挙げられる。
【数1】
また、ADM産生抑制作用を評価に使用する測定値(ADM産生量又はADM遺伝子発現量)も1種類に限定されず、上記複数種類の測定値を用い、任意の処理方法によってADM産生抑制作用を評価してもよい。
さらに、上記(ii)の工程において測定されたADM産生量又はADM遺伝子発現量を直接用いて、スクリーニングを行ってもよく、上記(iii)の工程を必要としないものでもよい。
PAMP又はADM2/IMD産生抑制作用を評価する場合は、PAMP産生量、ADM2/IMD産生量若しくは遺伝子発現量の数値を[数1]の式に当てはめることによって評価することができる。
【0025】
上記(iv)の工程の判定に用いる基準も特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、実施例1の条件、即ち被験物質添加群及び被験物質非添加群のADMmRNA遺伝子発現量を[数1]の式に代入した場合、メラニン産生抑制剤としては、ADM産生抑制作用が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また、実施例2の条件、即ち紫外線照射後の被験物質投与群及び被験物質非添加群のADMmRNA遺伝子発現量を[数1]の式に代入した場合、メラニン産生抑制剤としては、ADM産生抑制作用が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。さらに実施例3の条件、メラニン添加後の被験物質投与群及び被験物質非添加群のADMmRNA遺伝子発現量を[数1]の式に代入した場合、メラニン産生抑制剤としては、ADM産生抑制作用が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。かかる値を示すメラニン産生抑制剤を含有する組成物は、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。従って、判定に用いる基準も上記範囲に基づいて設定されることが好ましい。
PAMP又はADM2/IMD産生抑制作用を評価する場合も、判定に用いる基準は特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。
【0026】
本発明のスクリーニング方法の対象となる被験物質は、単純な化学物質、動植物由来の抽出物等の混合組成物等の何れであってもよい。動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販(丸善製薬株式会社等)されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位は全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位のみを使用することできるが、予めこれらを粉砕或いは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示出来る。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0027】
ADM産生系に働き掛けるメラニン産生抑制剤の作用機序解明には、ADM遺伝子発現を特異的に抑制するsi−RNAが有用である。本願におけるsi−RNAは、ADM産生遺伝子発現を特異的に抑制する作用を有するsi−RNAを意味し、具体的には、QIAGEN社より販売されているHs ADM 6 FlexiTube si RNAにより作製されるsi−RNA(プライマー配列は配列表2に記載)等が好適なものとして例示できる。本願では、ADM産生とメラニン産生量との関連性を明らかにするためにsi−RNAを用いている(試験例4参照)。即ち、紫外線照射によってケラチノサイトのADM産生量(ADM遺伝子発現量)は増加し(試験例1参照)、それと共にメラニン産生量は増加するが、ADM産生遺伝子発現を特異的に阻害するsi−RNAを添加した後、紫外線照射を行った場合には、si−RNAを添加せずに紫外線照射を行った場合に比べてメラニン産生量が低くなることが明らかとなった(試験例4参照)。即ち、ケラチノサイトにおけるADM産生量を抑制することにより、メラノサイトにおけるメラニン産生量を減少させることができることを示している。このように、si−RNAをADM産生系とメラニン産生量との関連性の解明(メラニン産生抑制剤の作用機序解明)に使用することは、発明者の知る限り報告されていない。かかる技術は、ADM産生系に係るメラニン産生抑制剤の作用機序解明に有効な技術である。
【0028】
以下に、ケラチノサイトのADM産生量(ADM遺伝子発現量)及びADM2/IMD産生量(ADM2/IMD遺伝子発現量)に対する紫外線照射又はメラニン添加の影響、並びにADM、PAMP、及びADM2/IMDとメラニン産生量との関係性について検証した結果を示す。
【0029】
<試験例1:紫外線照射によるケラチノサイトにおけるADM遺伝子発現量の検討>
以下の手順に従い、ケラチノサイトのADM遺伝子発現量に与える紫外線照射の影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、7.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、24時間培養した。
2)東芝FL20・E−30/DMRランプを使用し、65mJ/cm2のUV−Bを照射した後、24時間培養した。
3)再度、東芝FL20・EL−30/DMRランプを使用し、65mJ/cm2のUV−Bを照射し、6時間培養後、Buffer RLT(QIAGEN社)により細胞を溶解し回収した。
4)細胞回収後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VIOL cDNA sythesis Kit(Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列は非公開)を合成し、Hs ADM 1 SG QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社)を用い、リアルタイムPCR法によりADM遺伝子発現量を測定した(紫外線照射群)。紫外線照射群のADM遺伝子発現量は、TBP(TBP:TATA Binding Protein、内在性コントロール、TATA box結合因子であり、ハウスキーピング遺伝子の一種、プライマー配列は配列表1に記載)のmRNA発現量を測定し、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
5)紫外線非照射サンプルのADMmRNA発現量を同様に測定し、測定された紫外線非照射サンプルのADMmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
【0030】
結果を図1に示す。紫外線照射によって、ケラチノサイトのADMmRNA発現量が増加することが確認された。即ち、メラニン産生を亢進する要因によって、ケラチノサイトのADM産生量が増加することが明らかである。
【0031】
<試験例2:メラニン添加によるケラチノサイトにおけるADM産生遺伝子発現量の検討

以下の手順に従い、ケラチノサイトのADM遺伝子発現量に与えるメラニン添加の影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、3.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、播種と同時に、ジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethylsulfoxide、和光純薬工業株式会社)に懸濁した合成メラニン(SIGMA社)を最終濃度1.5×10-3(%)になるように添加し、6時間培養後、Buffer RLT(QIAGEN社)により細胞を溶解し回収した。
2)細胞回収後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VIOL cDNA sythesis Kit(Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列は非公開)を合成し、Hs ADM 1 SG QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社)を用い、リアルタイムPCR法によりADM遺伝子発現量を測定した。メラニン添加サンプルのADMmRNA発現量は、TBP(内在性コントロール、プライマー配列は配列表1に記載)のmRNA発現量を測定し、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
3)メラニン非添加サンプルのADMmRNA発現量を同様に測定し、測定されたメラニン非添加サンプルのADMmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
【0032】
結果を図2に示す。メラニン添加によって、ケラチノサイトのADMmRNA発現量が増加することが確認された。試験例1の紫外線照射と同様に、メラニン添加によって、ケラチノサイトのADM産生量が増加することが明らかである。
【0033】
<試験例3:紫外線照射によるケラチノサイトにおけるADM2/IMD産生遺伝子発現量の検討>
以下の手順に従い、ケラチノサイトのADM2/IMD遺伝子発現量に与える紫外線照射の影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、7.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、24時間培養した。
2)東芝FL20・E−30/DMRランプを使用し、65mJ/cm2のUV−Bを照射した後、24時間培養した。
3)再度、東芝FL2.0・EL−30/DMRランプを使用し、65mJ/cm2のUV−Bを照射し、6時間培養後、Buffer RLT(QIAGEN社)により細胞を溶解し回収した。
4)細胞回収後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VIOL cDNA sythesis Kit(Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列は非公開)を合成し、HS ADM2 1 SG QuantiTest Primer Assay(QIAGEN社)を用い、リアルタイムPCR法により遺伝子発現量を測定した(紫外線照射群)。紫外線照射群のADM2/IMD遺伝子発現量は、TBP(TBP:TATA Binding Protein、内在性コントロール、TATA box結合因子であり、ハウスキーピング遺伝子の一種、プライマー配列は配列表1に記載)のmRNA発現量を測定し、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
5)紫外線非照射サンプルのADM2/IMDmRNA発現量を同様に測定し、測定された紫外線非照射サンプルのADM2/IMDmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。
【0034】
結果を図3に示す。紫外線照射によって、ケラチノサイトのADM2/IMD遺伝子発
現量が増加することが確認された。即ち、メラニン産生を亢進する要因によって、ADM2/IMDの産生量も増加することが確認された。
【0035】
<試験例4:ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系におけるsi−RNA添加によるメラニン産生量及び細胞数変化の検討>
以下の手順に従い、ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系における紫外線照射によるメラニン産生量変化を検討した。更に、ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系における紫外線照射により増加したメラニン産生量に対するADM産生遺伝子発現を特異的に阻害するsi−RNA添加の影響を調べた。
1)48穴プレートに、正常ヒトケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、7.0×104(cells/well)の密度で、また、正常ヒトメラノサイト(NHEM)(倉敷紡績株式会社)を2.6×104(cells/well)の密度でHumedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて播種し、24時間培養した(U紫外線非照射群)。
2)si−RNA溶液を、Hs ADM 6 FlexiTube siRNA(QIAGEN社、プライマー配列は配列2に記載)を用い作製した後、上記細胞に添加した。
3)si−RNA溶液添加24時間、48時間後に東芝FL20S・E−30/DMRランプで65mJ/cm2の紫外線(UV−B)を照射した(紫外線照射+si−RNA添加群)。その後14C−thiouracilを0.25μCi/well添加した。
4)比較対照群として、紫外線照射を行い、si−RNAを添加しない群(紫外線照射群)を設定した。
5)さらに48時間培養後Cell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)を用い、細胞数を測定後、液体シンチレーションカウンター(アロカ株式会社)により14Cの取り込みを測定した。メラニン産生量は、紫外線照射群から回収した細胞の放射線量を100%とした場合の、紫外線非照射群又は紫外線照射+si−RNA添加群から回収した細胞の放射線量の百分率として算出した。即ち、各細胞内に取り込まれた放射線量が小さい程、メラニン量が小さいと判断することができる。
【0036】
結果を図4に示す。ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系における紫外線照射群のメラニン産生量は、紫外線非照射群に比較して多いことが明らかである。この場合、細胞数には大きな変化は認められなかった。一方、ケラチノサイト及びメラノサイト共培養系にsi−RNAを添加した後に、紫外線照射した場合にはsi−RNAを添加せずに紫外線照射した紫外線照射群と比較してメラニン産生量が少ないことが確認された。即ち、ADM産生遺伝子発現を特異的に抑制するsi−RNAの添加によって、メラニン産生量が減少することが確認された。このことは、ケラチノサイトにより産生されたADMがメラノサイトのメラニン産生量を調節していることを示しており、ADM産生を抑制することによりメラニン産生も抑制できることを示している。
【0037】
<試験例5:ADM添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討>
以下の手順に従い、ADM添加によるメラノサイトの産生量及び細胞数への影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ヒトメラノサイト(NHEM)(倉敷紡績株式会社)1.5×104(cells/well)の密度での密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、24時間培養した。
2)合成ADM(ペプチド研究所)を2(μM)になる様に添加し、その後14C−thiouracilを0.25μCi/well添加した。
3)CO2インキュベーターにて72時間培養後、Cell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)を用い、細胞数を測定後、液体シンチレーションカウンター(アロカ株式会社)により14Cの取り込みを測定した。メラニン産生量は、ADMを添加した細胞の放射線量を、ADMを添加しない細胞の放射線量の比率で算出した。即
ち、各細胞内に取り込まれた放射線量が小さい程、メラニン量が小さいと判断することができる。
【0038】
結果を図5に示す。ADMを添加することによりメラノサイトのメラニン産生量が増加することが確認された。このことは、ADM産生を抑制することにより、メラニン産生も抑制できることを示していると言える。
【0039】
<試験例6:PAMP添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討>
以下の手順に従い、PAMP添加によるメラノサイトの産生量及び細胞数への影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ヒトメラノサイト(NHEM)(倉敷紡績株式会社)1.5×104(cells/well)の密度での密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、24時間培養した。
2)合成PAMP(ペプチド研究所)を2(μM)になる様に添加し、その後14C−thiouracilを0.25μCi/well添加した。
3)CO2インキュベーターにて72時間培養後、Cell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)を用い、細胞数を測定後、液体シンチレーションカウンター(アロカ株式会社)により14Cの取り込みを測定した。メラニン産生量は、PAMPを添加した細胞の放射線量を、PAMPを添加しない細胞の放射線量の比率で算出した。即ち、各細胞内に取り込まれた放射線量が小さい程、メラニン量が小さいと判断することができる。
【0040】
結果を図6に示す。PAMPを添加することによりメラノサイトのメラニン産生量が増加することが確認された。このことは、PAMP産生を抑制することにより、メラニン産生も抑制できることを示していると言える。
【0041】
<試験例7:ADM2/IMD添加によるメラノサイトのメラニン産生量及び細胞数に関する検討>
以下の手順に従い、ADM2/IMD添加によるメラノサイトの産生量及び細胞数への影響を検討した。
1)48穴プレートに正常ヒトメラノサイト(NHEM)(倉敷紡績株式会社)1.5×104(cells/well)の密度での密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて、播種し、24時間培養した。
2)合成ADM2/IMD(ペプチド研究所)を2(μM)になる様に添加し、その後14C−thiouracilを0.25μCi/well添加した。
3)CO2インキュベーターにて72時間培養後、Cell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)を用い、細胞数を測定後、液体シンチレーションカウンター(アロカ株式会社)により14Cの取り込みを測定した。メラニン産生量は、ADM2/IMDを添加した細胞の放射線量を、ADM2/IMDを添加しない細胞の放射線量の比率で算出した。即ち、各細胞内に取り込まれた放射線量が小さい程、メラニン量が小さいと判断することができる。
【0042】
結果を図7に示す。ADM2/IMDを添加することによりメラノサイトのメラニン産生量が増加することが確認された。このことは、ADM2/IMD産生を抑制することにより、メラニン産生も抑制できることを示していると言える。
【0043】
<本発明の美白用組成物及び美白用組成物の製造方法>
上述した本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法によって、メラニン産生抑制効果に優れるメラニン産生抑制剤を選択することができるが明らかであるが、本スクリ
ーニング方法により選択されたメラニン産生抑制剤を用い調製された美白用組成物、及び本スクリーニング方法を利用して美白用組成物を製造する方法も本発明である。
本発明の美白用組成物及び美白用組成物の製造方法は、上述したスクリーニング方法によって選択されたメラニン産生抑制剤を用いるものであれば、その他の構成については特に限定されず、公知の調製方法を適宜用いることができる。
【0044】
本発明の美白用組成物及び美白用組成物の製造方法における、メラニン産生抑制剤の量は特段限定されないが、美白用組成物全量に対し、0.00001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜10質量%、さらに好ましくは、0.001質量〜5質量%含有させることが好ましい。メラニン産生抑制剤の含有量が少なすぎると、目的とする色素沈着予防又は改善効果が低下する傾向にあり、多すぎても効果が頭打ちになる傾向があり、この系の自由度を損なう場合がある。
また、美白用組成物に含有させるメラニン産生抑制剤の種類も1種類に限定されず、2種類以上を含有させてもよい。
【0045】
本発明の美白用組成物の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチトールやソルビトールなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示出来る。経皮投与組成物であれば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。製造は、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
【0046】
本発明の組成物としては、医薬品、化粧品、食品、飲料などが好適に例示でき、日常的に摂取できることから、食品、化粧品等に適応することが好ましい。その投与経路も、経口投与、経皮投与の何れもが可能であるが、皮膚における色素沈着予防又は改善作用を発揮するためには、皮膚への貯留性、標的部位への到達効率等を考慮し、経皮投与を採用することが好ましい。
【0047】
また、後述する実施例に記載の本発明のメラニン産生抑制剤であるシソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシより得られる植物抽出物、シナノキ科シナノキ属シナノキより得られる植物抽出物は、丸善製薬株式会社より購入した植物抽出物を使用した。シソ科ハナハッカ属マジョラムは、エジプト、地中海沿岸を原産地とする多年草であり、香辛料、精油等に使用されてい
る。また、前記の精油や植物抽出物には、沈静、抗不安作用等が存することが知られている。トクサ科トクサ属スギナは、日本、北半球の温暖地域を原産地とする多年草であり、日本においては、本州、四国、九州の山野、湿地に自生する。また、中国名を問荊と呼ばれ、漢方薬等に使用され、利尿作用、解熱作用、鎮咳作用、皮膚病治療作用等の作用があるとされている。マメ科クララ属は、東アジアを原産地とする多年草であり、本州、四国、九州の日当たりのよい草原等に自生する。根は、苦参(クジン)と呼ばれ、生薬として日本薬局方に収載されている。また、薬理作用としては、消炎、鎮痒、苦味健胃作用等が知られている。アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシは、欧州、中央アジアを原産地とする多年草であり、日本各地の水中や湿地に自生する。別名クレソンとも呼ばれ、食用として用いられる。シナノキ科シナノキ属シナノキは、日本を原産地とする落葉高木であり、本州に自生する。街路樹などに見られるシナノキの樹皮は、繊維が強くロープの材料などに使用される。
【0048】
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0049】
<実施例1:本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法1>
以下の手順に従い、メラニン産生抑制剤のスクリーニング操作を行った。
1)48穴プレートに、正常ケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、7.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて播種し、24時間培養した。
2)被験物質の植物抽出物を最終濃度1%となる様に、培地中に添加した。
3)24時間後にCell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)溶液を各ウェルに添加した。CO2インキュベーター内で1時間呈色反応を行った後に、マイクロプレートリーダーを用い、450nm(参照波長:600nm以上)の吸光度を測定し細胞数を測定した。細胞数を測定後、細胞をBuffer RLT(QIAGEN社)により溶解し、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit(Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列非公開)を合成し、Hs ADM 1 SG QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社)を用いリアルタイムPCR法によりmRNA発現量を測定した。
4)TBP(内在性コントロール、プライマー配列は配列表に記載)のmRNA発現量を測定し、被験物質添加及び非添加時のADMmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。被験物質のADM産生抑制作用は、下記[数2]の式に被験物質添加及び非添加時のADMmRNA発現量(TBPのmRNA発現量との比率)を代入して算出した。
【数2】
【0050】
ADM産生抑制作用を評価した結果、シソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物は12%、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物は10%、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物は14%、アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシより得られる植物抽出物は36%、シナノキ科シナノキ属シナノキより得られる植物抽出物は85%であった。上記の結果より、シソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシより得られる植物抽出
物、シナノキ科シナノキ属シナノキより得られる植物抽出物には、ADM産生抑制作用に基づくメラニン産生抑制効果が期待できる。
【0051】
<実施例2:本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法2>
以下の手順に従い、メラニン産生抑制剤のスクリーニング操作を行った。
1)48穴プレートに正常ヒトケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、3.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて播種した。播種と同時にジメチルスルホキシド(DMSO,和光純薬工業株式会社)に懸濁した合成メラニン(SIGMA社)を最終濃度1.5×10-3(%)となる様に添加した。
2)細胞播種6時間後に植物抽出物を、最終濃度1%となる様に培地中に添加した。
3)添加24時間後に細胞回収し、Cell Counting Kit−8(株式会社
同仁化学研究所)を用い、細胞数を測定後、細胞を回収し、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit (Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列非公開)を合成し、Hs ADM 1 SG QuantiTect Primer Assay (QIAGEN社)を用いリアルタイムPCR法により発現量を測定した。
4)TBP(内在性コントロール、プライマー配列は配列表に記載)のmRNA発現量を測定し、被験物質添加及び非添加時のADMmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。被験物質のADM産生抑制作用は、上記[数2]の式に算出した被験物質添加及び非添加時のADMmRNA発現量(TBPのmRNA発現量との比率)を代入して算出した。
【0052】
メラニンを添加した場合のADM産生抑制作用を評価した結果、シソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物は37%、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物は45%、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物は26%、アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシより得られる植物抽出物は39%、シナノキ科シナノキ属シナノキより得られる植物抽出物は68%であった。上記の結果より、シソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、アブラナ科オランダカラシ属オランダカラシより得られる植物抽出物、シナノキ科シナノキ属シナノキより得られる植物抽出物には、ADM産生抑制作用に基づくメラニン産生抑制効果が期待できる。
【0053】
<実施例3:本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法3>
以下の手順に従い、メラニン産生抑制剤のスクリーニング操作を行った。
1)48穴プレートに、正常ケラチノサイト(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を、7.0×104(cells/well)の密度で、Humedia−KG2培地(倉敷紡績株式会社)を用いて播種し、24時間培養した。
2)被験物質の植物抽出物を最終濃度1%となる様に、培地中に添加した。
3)24時間後にCell Counting Kit−8(株式会社 同仁化学研究所)溶液を各ウェルに添加した。CO2インキュベーター内で1時間呈色反応を行った後に、マイクロプレートリーダーを用い、450nm(参照波長:600nm以上)の吸光度を測定し細胞数を測定した。細胞数を測定後、細胞をBuffer RLT(QIAGEN社)により溶解し、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用いmRNAを抽出、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit(Invitrogen社)を用いcDNA(プライマー配列非公開)を合成し、HS ADM2 1 SG QuantiTest Primer Assay(QIAGEN社)を用いリアルタイムPCR法によりADM2/IMDmRNA発現量を測定した。
4)TBP(内在性コントロ−ル、プライマー配列は配列表1に記載)のmRNA発現量
を測定し、被験物質添加及び非添加時のADM2/IMDmRNA発現量を、TBPのmRNA発現量との比率で算出した。被験物質のADM2/IMD産生抑制作用は、[数2]の式(ただし、ADMmRNAはADM2/IMDmRNAに読み替える)に被験物質添加及び非添加時のADM2/IMDmRNA発現量(TBPのmRNA発現量との比率)を代入して算出した。
【0054】
ADM2/IMD産生抑制作用を評価した結果、オリーブ葉抽出液は20%、ファーメンテージ セイヨウナシ抽出物は42%、ファルコックス レモングラスB、57%であった。上記の結果より、オリーブ葉抽出液、ファーメンテージ セイヨウナシ抽出物、ファルコックス レモングラスBには、ADM2/IMD産生抑制作用に基づくメラニン産生抑制効果が期待できる。
【0055】
<実施例4:本発明のメラニン産生抑制剤を含有する組成物(皮膚外用剤)>
以下の手順に従い、本発明のメラニン産生抑制剤のスクリーニング方法により選択されたメラニン産生抑制剤を含有する組成物(皮膚外用剤)を作製した。即ち、表1の処方成分(A)に記載の各成分を合わせ、室温下に溶解した。一方、処方成分(B)に記載された各成分を室温下に溶解し、これを前記(A)に記載された成分の混合物を加え可溶化し、本発明の美白用組成物(皮膚外用剤1)を得た。また、本発明のシソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物を水に置換した比較例1を作製した。
【0056】
【表1】
【0057】
<試験例8:本発明の組成物(皮膚外用剤)の色素沈着改善作用評価>
実施例4に記載の方法に従い製造された本発明の組成物(皮膚外用剤1)及び比較例1に関し、以下の手順に従い色素沈着抑制作用を評価した。自由意思で参加したパネラーの上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を合計3ヶ所設けた。最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を設けた部位に1日1回、3日連続して3回照射した。試験1日目の紫外線照射終了時(一回目照射終了後)より、1日1回35日連続してローション50μLを塗布した。3部位のうち1部位は無処置部位とした。35回の塗布終了24時間後に色彩色差計(CR−300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、処理部位のL*値と無処理部位L*値の差(ΔL*値=処理部位のL*値−無処理部位L*値)を算出した。ΔL*値は、色素沈着の程度が大きいほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きいほど、色素沈着が改善されたと判断することが出来る。結果を
表2に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤1は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。これは、皮膚外用剤1に含有されるメラニン産生抑制剤(シソ科ハナハッカ属マジョラムより得られる植物抽出物)のADM産生抑制作用によって、メラニン産生が抑制されたものと考えられる。
【0058】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、食品、医薬品、化粧料等に応用出来る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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