特許第5901232号(P5901232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901232機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御装置及びその方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901232
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御装置及びその方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   E04H6/18 610
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-242364(P2011-242364)
(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2013-96188(P2013-96188A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】井川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】天野 信雄
(72)【発明者】
【氏名】大倉 一政
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−303787(JP,A)
【文献】 特開2007−092424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御装置であって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させる機械式駐車装置の制御装置。
【請求項2】
前記他段から取り出した前記空きパレットに前記車両を載置した前記パレットを前記特定段に入庫させるのは、前記他段の前記空き領域の個数より前記特定段の前記空き領域の個数が多い場合とする請求項1に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項3】
入庫車両が増えて前記特定段の前記空き領域の個数が、前記所定の閾値になった場合には、それ以上、前記特定段に前記パレットを格納させず、前記他段に前記車両を入車した前記パレットを入庫させる入庫処理をする円滑モードを有する請求項1または請求項2に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項4】
前記機械式駐車装置は、2つ以上の前記他段を備えており、
前記円滑モードによって前記入庫処理させていた前記他段の前記空きパレットがない場合には、前記円滑モードを解除し、全ての前記格納庫で前記空き領域が均一になるまで前記特定段及び前記他段に対し、順に入庫させる請求項3に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項5】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御装置であって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、
前記特定段の前記空きパレットがなく、かつ、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両を出庫させた後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納させる機械式駐車装置の制御装置。
【請求項6】
前記所定の枚数は、前記所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対する前記所定の閾値に基づいて決定される請求項5に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項7】
前記特定段が複数ある場合において、前記特定段の重みづけを設定し、該重みづけに基づいて前記車両の入出庫を制御する請求項1から請求項6のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項8】
複数の前記特定段が、前記車両の種類に応じて設けられる場合において、
前記特定段の前記重みづけは、前記車両の種類に応じて設定される請求項7に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項9】
前記車両を入出庫させる入出庫部に距離が近い前記特定段から順に、前記重みづけを大きく設定する請求項7または請求項8に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項10】
前記重みづけは、前記車両の入出庫の予約状況、及び前記車両の入出庫の動作状況のうち少なくともいずれか一方に応じて決定される請求項7から請求項9のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項11】
前記重みづけは、複数の前記特定段に格納される前記車両の台数に基づいて決定される請求項7から請求項10のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項12】
前記特定段及び前記他段における前記空きパレットの枚数が、入出庫動作の期間、及び該入出庫動作の予約がない空き時間のうち、どちらか一方の期間において調整される請求項1から請求項11のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項13】
前記特定段及び前記他段における前記空きパレットの枚数は、前記昇降装置によって前記パレットを昇降させることにより調整される請求項1から請求項12のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の制御装置を備える機械式駐車装置。
【請求項15】
前記特定段が、複数設けられる請求項14に記載の機械式駐車装置。
【請求項16】
前記特定段は、前記車両の種類に応じて設けられる請求項14または請求項15に記載の機械式駐車装置。
【請求項17】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御方法であって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させる機械式駐車装置の制御方法。
【請求項18】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御プログラムであって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させることをコンピュータに実行させるための機械式駐車装置の制御プログラム。
【請求項19】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御方法であって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、
前記特定段の前記空きパレットがなく、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が、所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両が出庫された後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納する機械式駐車装置の制御方法。
【請求項20】
複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御プログラムであって、
複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、
前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、
前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、
前記特定段の前記空きパレットがなく、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が、所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両が出庫された後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納することをコンピュータに実行させるための機械式駐車装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御装置及びその方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
N行×M列の格子状に配置され、車両を格納する格納棚を有する格納庫を備え、格納棚に車両を載置して搬送するための複数のパレットが配置され、該パレットが格納棚間を水平面内の縦方向及び横方向に移動することで、格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置が開発されている。より具体的には、上記機械式駐車装置は、格納棚として、パレットが配置された格納棚と、パレットが配置されず空き領域となる格納棚とがあり、空き領域の格納棚へパレットを送ることで、パレットを移動させる。機械式駐車装置は、このようなパレットの移動動作を繰返し行うことにより、目的のパレットを指定した位置の格納棚へ移動させる。
【0003】
車両の入庫時には、機械式駐車装置の乗入階にある入出庫部で、入庫させる車両が停車され、乗員が車両から降りる。そして、機械式駐車装置は、昇降装置(以下、「リフト」という。)上のパレットに車両を載せ、該パレットを格納庫まで搬送し、車両が載置されたパレットをリフトから格納庫へ移動させることで、車両を格納する。一方、出庫時には、機械式駐車装置は、格納庫内のパレットを移動させて、出庫させる車両の載置されたパレットをリフトへ移動させ、当該パレットをリフトによって乗入階の入出庫部へ搬送することで、車両を出庫させる。
【0004】
このような機械式駐車装置において、パレットが空き領域に送られることにより格納庫内を移動するため、空き領域の数が多いほど、多くの棚間を一度に移動でき、入出庫に要する時間が短縮できる。一方で、空き領域を多くすることは、機械式駐車装置に格納できる車両の台数を低減させ、設備としての収容効率を低下させることになるので、機械式駐車装置の空き領域の数と格納できる車両の台数とは、収容効率と利便性のトレードオフによって決定される必要があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、出庫車両が載置されているパレットに隣接するパレットを他の段に移動させ、各段で空きスペースを調整することにより、出庫車両の載置されているパレットの移動時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4282041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、補助リフトによって各段のパレット数を調整し、主リフトによって入出庫の制御をしているので、補助リフト設置のための設置スペースが必要で収容台数が減り、設備が高価になり、かつ、機械式駐車装置が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡便な構成で入出庫の円滑性を向上させ、入出庫にかかる時間を低減する機械式駐車装置の制御装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御装置であって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させる機械式駐車装置の制御装置を提供する。
【0010】
このような構成によれば、制御装置は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両が載置されたパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の段に配置された複数の格納棚、及びパレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚を含む格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置に設けられる。また、複数の段に対応する格納庫のうち、所定の円滑性を有する空き領域の個数が設定される格納庫を特定段とし、特定段の空きパレットがある場合には、特定段の空きパレットに車両を入車して特定段に入庫し、特定段の空きパレットがない場合には他段から取り出した空きパレットに車両を入車して特定段に入庫する。ここで、円滑性とは、パレットの移動のし易さを意味し、所定の円滑性を有するとは、他段と比較して移動をし易くして早く入出庫が行えるように多くの空き領域を有することである。また、入車とは、パレットに車両が載置されることであり、入庫とは、車両が載置されたパレットが格納庫の所望の格納棚に配置されることである。
【0011】
このように、特定段は、車両を優先的に入庫させる格納庫として使用され、特定段の空き領域の個数が所定の円滑性を有する個数に設定され最適化されているので、車両入庫時の円滑性が向上する。また、特定段は、空きパレットが不足している場合には他段から取り出した空きパレットを使用して入庫を受け入れるように、駐車状況に応じて空き領域の個数が更新されるため、車両の収容台数を減らすことなく、円滑性を向上させることができる。
また、本発明は、通常の入出庫で使用される昇降装置を利用し、従来の機械式駐車装置のソフトウェア的な入庫制御方法において車両が載置されたパレットを配置する先(段)の変更によって簡易に実現できるので、導入コストを抑えることができる。さらに、補助リフト等の追加の設備が不要となるので、補助リフト等を設ける場合と比較して機械式駐車装置の複雑さを低減することができ、補助リフトスペースに格納棚を設けて収容台数を増やすことができる。
【0012】
上記機械式駐車装置の制御装置は、前記他段から取り出した前記空きパレットに前記車両を載置した前記パレットを前記特定段に入庫させるのは、前記他段の前記空き領域の個数より前記特定段の前記空き領域の個数が多い場合とすることが好ましい。
これにより、特定段に格納される車両が増えた場合であっても、特定段の所定の円滑性は他段以上であることを確実に保つことができる。
【0013】
上記機械式駐車装置の制御装置は、入庫車両が増えて前記特定段の前記空き領域の個数が、前記所定の閾値になった場合には、それ以上、前記特定段に前記パレットを格納させず、前記他段に前記車両を入車した前記パレットを入庫させる入庫処理をする円滑モードを有することが好ましい。
【0014】
入庫車両が増えて特定段の空き領域の個数が所定の閾値となる場合には、特定段に入庫されることがなく、他段に車両が入庫され、他段への車両の入庫が繰り返される。これにより、特定段の所定の円滑性が悪化することがなく、特定段の所定の円滑性を保つことができる。
【0015】
上記機械式駐車装置の制御装置において、前記機械式駐車装置は、2つ以上の前記他段を備えており、前記円滑モードによって前記入庫処理させていた前記他段の前記空きパレットがない場合には、前記円滑モードを解除し、全ての前記格納庫で前記空き領域が均一になるまで前記特定段及び前記他段に対し、順に入庫させることとしてもよい。
このように、入庫を受け入れた他段の空きパレットもない場合には、円滑モードが解除され、空き領域数を更新するので、駐車状況に応じて、特定段及び他段は閾値を超えて入庫を受け入れられることとなり、機械式駐車装置全体として収容台数を減らすことがない。
【0016】
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御装置であって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、前記特定段の前記空きパレットがなく、かつ、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両を出庫させた後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納させる機械式駐車装置の制御装置を提供する。
【0017】
このような構成によれば、制御装置は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両が載置されたパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の段に配置された複数の格納棚、パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置に設けられる。また、複数の段に対応する格納庫のうち、所定の円滑性を有する空き領域の個数が設定される格納庫を特定段とし、特定段の空きパレットがなく、車両が載置されたパレットの枚数が所定の枚数になっている場合には、特定段から出庫させた後の空きパレットを他段に格納する。ここで、円滑性とは、パレットの移動のし易さを意味し、具体的には、所定の円滑性を有するとは、他段と比較して多くの空き領域を有することである。
【0018】
このように、特定段の空きパレットがなく、特定段におけるパレットの枚数が所定の枚数になっている場合、換言すると、空き領域が所定の個数となっている場合には、特定段から出庫された後の空きパレットは他段に格納されるので、特定段の空き領域が増え、特定段の円滑性が向上する。
また、本発明は、通常の入出庫で使用される昇降装置を利用し、従来の機械式駐車装置のソフトウェア的な制御方法の変更によって実現できるので、導入コストを抑えることができる。さらに、補助リフト等の追加の設備が不要であるので、補助リフト等を設ける場合と比較して機械式駐車装置の複雑さを低減することができる。
【0019】
上記機械式駐車装置の制御装置の前記所定の枚数は、前記所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対する前記所定の閾値に基づいて決定されることとしてもよい。
特定段の空きパレットがない状態であっても、特定段の所定の円滑性は保たれる。
【0020】
上記機械式駐車装置の制御装置において、前記特定段が複数ある場合において、前記特定段の重みづけを設定し、該重みづけに基づいて前記車両の入出庫を制御することとしてもよい。
複数の特定段に設定された重みづけに基づいて、車両の入出庫が制御されるので、複数の特定段がある場合であっても、所望の円滑性を保つことができる。
【0021】
上記機械式駐車装置の制御装置の複数の前記特定段が、前記車両の種類に応じて設けられる場合において、前記特定段の重みづけは、前記車両の種類に応じて設定されることとしてもよい。
車両の種類(以下「車種」という)とは、車高や車長等の相違に基づいて分けられる種類であり、例えば、ハイルーフ車、普通車、ワゴン等に分けられる。このように、車種に応じて特定段を設けることにより、車種毎に入出庫の円滑性が偏ることがなく、いずれの車種であっても、入出庫の円滑性が保たれる。
【0022】
上記機械式駐車装置の制御装置の前記車両を入出庫させる入出庫部に距離が近い前記特定段から順に、前記重みづけを大きく設定することとしてもよい。
複数の特定段がある場合に、入出庫部との距離によって左右される入出庫にかかる時間の長短を重みづけで調整できる。例えば、入出庫部と特定段との距離が最も近い特定段を最も重みづけを大きくし、優先順位を高くする場合には、他の特定段と比較して、速やかに入出庫が制御できる。また、入出庫部と特定段との距離とは、例えば、段数で示される距離であり、入出庫部が第1段にある場合には、第2段にある特定段との距離は「1」、第5段にある特定段との距離は「4」となる。
【0023】
上記機械式駐車装置の制御装置における前記重みづけは、前記車両の入出庫の予約状況、及び前記車両の入出庫の動作状況のうち少なくともいずれか一方に応じて決定されることとしてもよい。
機械式駐車装置の入出庫の予約状況や入出庫の動作状況等に応じて特定段の重みづけが変更されるので、実際の運用状態に応じて入出庫の円滑性の向上が図れる。
【0024】
上記機械式駐車装置の制御装置の前記重みづけは、複数の前記特定段に格納される前記車両の台数に基づいて決定されることとしてもよい。
入庫車両の台数が時々刻々と変わる場合であっても、その時々の入庫される車両の台数に応じて特定段に対する重みづけが変更されることとなるので、運用状況に応じて入出庫の円滑性の向上が図れる。
【0025】
上記機械式駐車装置の制御装置における、前記特定段及び前記他段における前記空きパレットの枚数は、入出庫動作の期間、及び該入出庫動作の予約がない空き時間のうち、どちらか一方の期間において調整されることとしてもよい。
空きパレットの枚数調整は、入庫動作の期間及び空き時間のいずれかの期間で行うことができるので、適宜円滑性の向上が図れる。
【0026】
上記機械式駐車装置の制御装置における、前記特定段及び前記他段における前記空きパレットの枚数は、前記昇降装置によって前記パレットを昇降させることにより調整されることとしてもよい。
車両を載置して昇降する昇降装置によって特定段と他段とのパレット枚数を調整できるので、補助リフト等のパレット調整用設備を利用する場合と比較して、設備が複雑にならず、かつ、導入コストが低減できる。
【0027】
本発明は、上記いずれかに記載の制御装置を備える機械式駐車装置を提供する。
機械式駐車装置が、上述した制御装置を備えることにより、機械式駐車装置の円滑性が向上される。
【0028】
上記機械式駐車装置において、前記特定段が、複数設けられることとしてもよい。
【0029】
上記機械式駐車装置において、前記特定段は、前記車両の種類に応じて設けられることとしてもよい。
車両の種類(以下「車種」という)とは、車高や車長等の相違によって分けられる種類であり、例えば、ハイルーフ車、普通車、ワゴン車等に分けられる。このように、車種に応じて特定段を設けることにより、車種毎に入出庫の円滑性が偏ることがなく、いずれの車種であっても、円滑性が保たれる。また、車種が異なる場合であっても、パレットは共通のものを使用できることとする。
【0030】
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御方法であって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させる機械式駐車装置の制御方法を提供する。
【0031】
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御プログラムであって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、入庫させる前記車両は、前記特定段に前記空きパレットがある場合には、前記特定段の前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させ、前記特定段に前記空きパレットがない場合には、前記特定段以外の前記格納庫である他段から取り出された前記空きパレットに入車させて前記特定段に入庫させることをコンピュータに実行させるための機械式駐車装置の制御プログラムを提供する。
【0032】
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御方法であって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、前記特定段の前記空きパレットがなく、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が、所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両が出庫された後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納する機械式駐車装置の制御方法を提供する。
【0033】
本発明は、複数の段を有する構造物内に設置され、車両を載せて搬送するためのパレットが昇降する昇降装置、該昇降装置が昇降する昇降路に沿った複数の前記段に配設された複数の格納棚、及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の前記格納棚が格子状に配置された格納庫を備える機械式駐車装置の制御プログラムであって、複数の前記段に対応する前記格納庫のうち、所定の円滑性を有する前記空き領域の個数に対して所定の閾値が設定される前記格納庫を特定段とし、前記車両が載置されていない前記パレットを空きパレットとし、前記特定段以外の前記格納庫を他段とし、前記特定段の前記空きパレットがなく、前記特定段の前記車両が載置された前記パレットの枚数が、所定の枚数になっている場合には、前記特定段から前記車両が出庫された後、前記特定段から取り出した前記車両の出庫後の前記空きパレットは、前記他段に格納することをコンピュータに実行させるための機械式駐車装置の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、簡便な構成で入出庫の円滑性を向上させ、入出庫にかかる時間を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態に係る機械式駐車装置の概略構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る機械式駐車装置に入庫処理を説明する図である。
図4図3の入庫処理の続きを説明する図である。
図5図4の入庫処理の続きを説明する図である。
図6図5の入庫処理の続きを説明する図である。
図7図6の入庫処理の続きを説明する図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る機械式駐車装置において、特定段が複数設定されている場合を示した図の一例である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る機械式駐車装置において、特定段が車種に応じて設定されている場合を示した図の一例である。
図10】本発明の第4の実施形態に係る機械式駐車装置において、重みづけが可変設定された場合の入出庫処理を説明する図である。
図11図10の入出庫処理の続きを説明する図である。
図12図11の入出庫処理の続きを説明する図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る機械式駐車装置において、重みづけが入庫台数によって設定された場合の入出庫処理を説明する図である。
図14図13の入出庫処理の続きを説明する図である。
図15図14の入出庫処理の続きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明に係る機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御装置及びその方法並びにプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る機械式駐車装置10の概略構成図である。
図1に示されるように、機械式駐車装置10は、複数の段(階)を有する構造物内に設置され、車両12を入出庫させる入出庫部14と、車両12を載せて搬送するためのパレット(板状の台)16が昇降するリフト(昇降装置)22、リフト22が昇降する昇降路に沿った複数の段に配設された複数の格納棚18、及びパレット16が配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚を含む格納棚18が格子状(例えば、N行×M列)に配置された格納庫20を備えている。ここで、格子状に配置された格納庫とは、碁盤の目状に隙間なく格納棚が配置された状態だけでなく、特定の格納棚の領域が、建築物の柱、壁、機械設備等により塞がれて使用できなくなっている配置も含むこととするが、本発明の説明には直接関係しないので、明示的な記載をしていない。
【0038】
また、リフト22は、入出庫部14と格納庫20の間を昇降してパレット16を移動させる。空き領域は、パレット16が配置されていないので、隣接する格納棚18からパレット16を通過させたり、移動させることができる。また、車両12が載置されていないパレット16は、空きパレット16´とする。
【0039】
パレット16には、各々異なる番号が予め付加されており、機械式駐車装置10は、付加されている番号によって各パレット16を識別する。
入出庫部14には、扉26と操作盤28とが設けられている。
操作盤28は、機械式駐車装置10の利用者が操作可能なように、入出庫部14の外側に設けられ、例えば、スイッチ等を介して各種操作(入庫又は出庫の指示等)の入力を受け付けるとともに、液晶ディスプレイ装置等の画像表示装置によって、種々の情報を利用者のために表示する。
【0040】
そして、機械式駐車装置10は、パレット16を、格納棚18間で水平面内の縦方向及び横方向に移動(循環)させることで、格納庫20内で車両12の搬送を行う。すなわち、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、パレット16を水平循環させるパズル式の機械式駐車装置である。
【0041】
機械式駐車装置10は、複数の段に対応する格納庫20のうち、所定の円滑性を有する空き領域の個数(以下「閾値」という)が設定される格納庫20を特定段20aとし、特定段20a以外の格納庫20を他段20bとする。ここで、円滑性とは、パレットの移動のし易さを意味し、所定の円滑性を有するとは、他段20bと比較して多くの空き領域を有することである。特定段20aと他段20bは、運用方法を考慮した上で、制御プログラムにおいて設定される。また、以下の操作により特定段20aと他段20bとの設定が、変更されることとしてもよい。例えば、機械式駐車装置10の管理者によって、操作盤28を介して各格納棚20の空き領域の個数が指定されて変更される、或いは、保守員によって制御装置24の制御プログラムにおいて直接指定して変更される等の方法がある。
【0042】
また、閾値は、複数設けることとしてもよい。例えば、第2閾値より空き領域の個数を多く設定する第1閾値を設定しておき、入庫車両が増えて特定段の空き領域の個数が第1閾値になった場合には、それ以上特定段にパレットを格納させず、他段に車両を入車したパレットを入庫させる円滑モードとして運転させる。さらに、車両を入車したパレットが入庫された他段の空きパレットがなくなった場合には、円滑モードを解除し(つまり、閾値を第1閾値から第2閾値に変更し)、全ての格納庫で空き領域が均一になるまで(例えば、第2閾値まで)特定段及び他段に対し、順に入庫させる通常運転モードとして運転させる等の運用ができる。このように、複数の閾値を有することで、駐車台数が増加したことにより、第1閾値よりも緩い設定条件である第2閾値に切り替えて、駐車車両の台数を増やす等の対応をすることができる。
なお、閾値は、予め設定していても良いし、駐車状況に応じて変更されることとしてもよい。
【0043】
なお、特定段20aの設定数、配置位置等は、特に限定されない。つまり、特定段20aは、機械式駐車装置10に対して少なくともいずれか1つの段に設けられていればよく、例えば、機械式駐車装置10の複数の段に設けられていてもよい。本実施形態においては、特定段20aは機械式駐車装置10に1つの段に設けられる場合を例に挙げて説明する。
【0044】
図1に示される機械式駐車装置10おいて、格納庫20は3層(段)として示されているが、これは一例であって層数は特に限定されず、1層、2層、又は4層以上であってもよいこととする。また、格納庫20は、入出庫部14よりも下層段に配置されているが、これに限らず、格納庫20は、入出庫部14よりも上層段に配置されていてもよいし、入出庫部14よりも上層段及び下層段の両方に配置されてもよい。さらに、各段の格納棚18は、リフト22によって接続されており、各段のレイアウト(格納棚の数及び縦横比等)は、各々同じでも異なっていてもよい。
【0045】
図2は、機械式駐車装置10の制御装置24の電気的構成を示すブロック図である。
制御装置24は、CPU(Central Processing Unit)40、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)42、CPU40による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)44、各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)46を備えている。
【0046】
なお、HDD46には、機械式駐車装置10の利用者を特定できる識別情報(例えば、暗証番号を示す暗号番号情報等)が記憶されている。そして、車両12が入庫される場合は、利用者の暗証番号と利用者の車両12を載置するパレット16の番号とが関係付けられて格納情報としてHDD46に記憶される。これにより、利用者と利用者の車両12とを関連付けすることができる。
【0047】
また、HDD46の代わりに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップ付きのSRAM(Static Random Access Memory)等の記憶素子を用いてもよく、プログラム、利用者情報、及び設定値等のデータの種類に応じて記憶素子を使い分けて記憶させてもよい。
さらに、制御装置24は、パレット16やリフト22等を駆動させるためのモータ(不図示)を制御するモータ制御部48、及びパレット16やリフト22等の動作状態を検知するセンサ(不図示)からの信号を受信するセンサ信号受信部50を備えている。
【0048】
これらCPU40、ROM42、RAM44、HDD46、モータ制御部48、及びセンサ信号受信部50、並びに操作盤28は、システムバス52を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU40は、ROM42、RAM44、及びHDD46へのアクセス、操作盤28に対する操作状態の把握及び画像の表示、モータ制御部48を介したモータの駆動、並びにセンサ信号受信部50を介したパレット16やリフト22等の動作状態の把握を行なうことができる。
【0049】
次に、機械式駐車装置10の制御装置24における車両12の入庫方法について説明する。
制御装置24は、特定段20aに空きパレット16´がある場合には、入庫させる車両12を特定段20aの空きパレット16´に入車させて特定段20aに入庫させ、特定段20aに空きパレット16´がない場合には、特定段20a以外の格納庫である他段20bから取り出された空きパレット16´に入車させて特定段20aに入庫させる。また、他段20bから取り出した空きパレット16´に車両12を載置したパレット16を特定段20aに入庫させるのは、他段20bの空き領域の個数より特定段の空き領域の個数が多い場合とする。
【0050】
ここで、入車とは、パレットに車両が載置されることであり、入庫とは、車両が載置されたパレットが格納庫20の所望の格納棚18に配置されることである。特定段20aには、空き領域が、閾値の範囲内で、車両12を載置したパレット16を格納させる。
制御装置24は、入出庫動作の期間、及び入出庫動作の予約がない空き時間のうち、どちらか一方の期間において、リフト22を用いて、空きパレットの枚数を調整する。
【0051】
より具体的に、図3から図7を用いて、車両12を入庫する場合の制御装置24の作用について説明する。
図3は、3層の機械式駐車装置10において、第1段を特定段20aとし、第2段を他段20b1、第3段を他段20b2とする。図3に示されるように、(0)初期状態においては、他段20b1,20b2は、空き領域がなく、空きパレット16´が11枚配置されており、特定段20aは、空き領域が5個及び空きパレット16´が5枚配置されており、特定段20aに空き領域が集中している。また、各段における1箇所はリフト22の配置スペースLがある。なお、各段の呼称は、本実施形態で説明する上での呼称であって、実用化時には別の呼称を用いることとしてもよい。
【0052】
また、機械式駐車装置10には、所定の第1閾値(例えば、閾値=3)が設定されている。設定される所定の第1閾値は、特定段20aに対し、所定の円滑性を有する空き領域の個数として設定される値である。
【0053】
図3に示されるように、(0)初期状態では、特定段20aに空きパレット16´があるので、制御装置24は、特定段20aから取り出した空きパレット16´に車両12を入車させて特定段20aに入庫させ、特定段20aの空きパレット16´がなくなるまで(例えば、5台入庫するまで)、入庫を繰り返す。入庫を繰り返し、図4の(1)入庫処理1に示されるように、特定段20aの全てのパレット16が入車状態となり、空きパレット16´がない場合には、他段20b1(または、他段20b2)から空きパレット16´を取り出し、取り出した空きパレット16´に入車させ、特定段20aに入庫させる。このように、特定段20aの空き領域の個数が第1閾値(例えば、3個)になるまで、同様に入庫を繰り返す。
【0054】
図5の(2)入庫処理2に示されるように、特定段20aの空き領域の個数が所定の第1閾値(例えば、3)となり、かつ、特定段20aの全てのパレット16が入車状態となった場合には、他段20b1(または、他段20b2)から取り出した空きパレット16´に入車させたパレットを、他段20b1(パレット16の取り出しを他段20b2から行っていた場合には、他段20b2)に入庫させる(図6(3)入庫処理3参照)。
このように、特定段20aの空き領域が第1閾値となり、全パレット16が入車状態となった後には他段20b1(または、他段20b2)への車両12の入庫が繰り返されることにより、特定段20aの円滑性が悪化することなく、特定段20aの円滑性を保つことができる(円滑モード)。
【0055】
さらに、車両12を入車したパレット16が入庫された他段20b1の空きパレット16´がなく、全てのパレット16が入車状態となった場合には、円滑モードを解除し、全ての格納庫(特定棚20a、他段20b1、及び他段20b2)で、空き領域が均一になる第2閾値まで、特定段20a及び他段20b1に、順に入庫させる。つまり、特定段20aは、第1閾値を超えて入庫を受け入れ、特定段20aと他段20b1と他段20b2との空き領域が均一になるまで、車両12の入庫が繰り返される(図7(4)入庫処理4参照)。
このように、入庫処理させていた他段の空きパレットがない場合には、各格納庫20の空き領域数を更新(閾値を第1閾値から第2閾値に変更)するので、駐車状況に応じて、特定段及び他段は初めに設定されていた閾値を超えて入庫を受け入れることとなり、収容台数を減らすことがない。
【0056】
続いて、機械式駐車装置10の制御装置24における車両12の出庫方法について説明する。
制御装置24は、特定段20aの空きパレット16´がなく、かつ、特定段20aの車両12が載置されたパレット16の枚数が所定の枚数になっている場合には、特定段20aから車両12を出庫させた後、特定段20aから取り出した車両12の出庫後の空きパレット16´は、他段20bに格納させる。所定の枚数は、所定の円滑性を有する空き領域の個数に基づいて決定される。具体的には、所定の枚数は、格納庫20に配置できる全てのパレット枚数(例えば、15枚)から、所定の円滑性を有する空き領域の個数(例えば、3個)を減算した枚数(15−3=12枚)である。
このようにすることで、特定段20aの空き領域が所定の閾値になっている場合には、空き領域を生成し、パレット16の移動スペースを確保することができる。
【0057】
以上説明してきたように、本実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置24によれば、複数の段に対応する格納庫20のうち、所定の円滑性を有する空き領域の個数が設定される格納庫を特定段20aとし、特定段20aの空きパレット16´がある場合には、特定段20aの空きパレット16´に車両12を入車して特定段20aに入庫し、特定段20aの空きパレット16´がない場合には他段20bから取り出した空きパレット16´に車両12を入車して特定段20aに入庫する。このように、特定段20aは、車両12を優先的に入庫させる格納庫20として使用され、特定段20aの空き領域の個数が所定の円滑性を有する閾値に設定され最適化されているので、車両入庫時の円滑性が向上する。
【0058】
また、特定段20aは、空きパレット16´が不足している場合には他段20bから取り出した空きパレット16´を使用して入庫を受け入れるように、駐車状況に応じて空き領域の個数が更新(閾値が変更)されるため、車両12の収容台数を減らすことなく、円滑性を向上させることができる。
また、本発明は、通常の入出庫で使用されるリフト(昇降装置)22を利用し、特定段20a及び他段20bにおけるパレット16の配置を調整して最適化するので、従来の機械式駐車装置10のソフトウェア的な入庫制御方法において車両が載置されたパレットを配置する先(段)の変更によって簡易に実現でき、導入コストを抑えることができる。さらに、補助リフト等の追加の設備が不要となるので、補助リフト等を設ける場合と比較して機械式駐車装置の複雑さを低減することができ、補助リフトスペースに格納棚を設けて収容台数を増やすことができる。
【0059】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置及び方法並びにプログラムについて図8を用いて説明する。
本実施形態に係る機械式駐車装置は、第1の実施形態における構成に加え、特定段が複数備えられている点で、上述の第1の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る機械式駐車装置10´について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0060】
機械式駐車装置の特定段が複数ある場合には、制御装置において、特定段に対する重みづけを予め設定しておき、重みづけに基づいて車両の入出庫を制御する。
制御装置に設定される重みづけは、例えば、入出庫部との距離が近い特定段から順に重みづけが大きく設定される。ここで、入出庫部と特定段との距離とは、例えば、段数で示される距離であり、入出庫部が第5段にある場合には、第4段にある特定段との距離は「1」、第3段にある特定段との距離は「2」となる。例えば、図8に示されるように、機械式駐車装置10は4層とし、特定段と他段とをそれぞれ2段ずつ設け、格納庫20のうち入出庫部14に近い順に、特定段20a1、特定段20a2、他段20b1、他段20b2と配置されている場合には、特定段20a1の重みづけを特定段20a2の重みづけより大きく設定する。
【0061】
制御装置24に予め設定する重みづけは、機械式駐車装置10の導入時、或いは、導入後の定期点検時等に行われる初期設定(イニシャル設定)のタイミングで設定される。また、重みづけの設定方法は、制御装置24の制御プログラムにおいて設定する、運転中の機械式駐車装置10を保守モードに切り替え、操作盤の設定画面から設定する等の方法がある。
【0062】
このように、複数の特定段がある場合でも、入出庫部14との距離を考慮して重みづけが予め設定(固定設定)されることにより、入出庫にかかる時間が調整できる。つまり、入出庫部14との距離が最も近い特定段20a1を最も重みづけを大きくし、優先順位を高くすれば、距離が最も近い特定段20a1が優先的に使用され、速やかに入出庫処理されるので、入出庫にかかる時間を低減できる。
【0063】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置及び方法並びにプログラムについて図9を用いて説明する。
本実施形態に係る機械式駐車装置は、第1の実施形態、第2の実施形態における構成に加え、特定段が車種に応じて備えられている点で、上述の第1の実施形態、第2の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る機械式駐車装置10について、第1の実施形態、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0064】
本実施形態の機械式駐車装置10は4層とし、特定段と他段をそれぞれ2段ずつ設け、入庫する車両の種類(以下「車種」という)に応じて特定段を設定する場合を例に挙げて説明する。ここで、車両の種類(以下「車種」という)とは、車高や車長等の相違に基づいて分けられる種類であり、例えば、ハイルーフ車、普通車、ワゴン車等に分けられる。具体的には、図9に示されるように、特定段20a1及び他段20b1がハイルーフ車用、特定段20a2及び他段20b2が普通車用として設定される。
このように、車種毎に特定段と他段とをそれぞれ設定することにより、ハイルーフ車または普通車等のいずれの車種の車両が入庫される場合であっても、車種毎に入出庫の円滑性が偏ることがなく、入出庫の円滑性が保たれる。
【0065】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置及び方法並びにプログラムについて図10を用いて説明する。
本実施形態に係る機械式駐車装置は、上記実施形態における構成に加え、特定段の重みづけが可変である点で、上述の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る機械式駐車装置10´について、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0066】
制御装置には、入出庫の予約状況及び機械式駐車装置の運転状態の少なくともどちらか一方に応じて、特定段に対する重みづけが設定される。具体的には、機械式駐車装置の円滑性が良くなるか否かに応じて重みづけの大きさ(つまり、優先順位の高さ)が決定され、制御装置の制御プログラムにて特定段に対する重みづけが設定される。
【0067】
図10から図12を用いて、入出庫の予約状況及び運転状態に応じて重みづけが設定され、制御される場合の制御装置24の作用を説明する。
図10に示されるように、機械式駐車装置が4層であり、特定段20a1及び特定段20a2に備えられるパレットには全て車両が載置されており、空きパレット16´がなく、また、他段20b1には空きパレット16´が11枚配置され、他段20b2には空きパレット16´が3枚及び空き領域が8個配置されている。また、機械式駐車装置の第1予約では、車両の入庫予約があり、第2予約では、特定段20a2に入庫されている車両の出庫予約がある。
【0068】
第1予約では、車両の入庫予約があるが、特定段20a1及び特定段20a2にはそれぞれ空きパレット16´がないため、他段20b2から空きパレット16´を取り出し、入出庫部14において取り出した空きパレット16´に車両を入車させる。また、第2予約では、特定段20a2からの出庫予約があるので、出庫させる車両が載置されているパレットが特定段20a2から呼び出される(図11参照)。
制御装置24は、第1予約の処理において、円滑性がよくなるか否かを判定指針(例えば、次の処理である第2予約に備えて動作していない格納庫を選定することが円滑性がよいと判定)とし、判定指針によって選定される特定段である特定段20a1に対し、重みづけを大きく設定する。
【0069】
制御装置24は、重みづけの情報に基づいてパレット16を制御し、第1予約の入庫車両を重みづけを大きく設定された特定段20a1に、入庫させる。特定段20a2で待機していた第2予約の出庫車両が載置されたパレットは、入出庫部14に取り出され、車両が出庫される(図12参照)。
このように、制御装置24は、円滑性を判定指針として、重みづけを大きくする特定段を逐次設定することにより、入出庫予約状況や機械式駐車装置の動作状況に応じた円滑性を有する制御が可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置24及び方法並びにプログラムによれば、複数ある特定段20a1,20a2の中から車両の入出庫の予約状況や機械の動作状況に応じて、優先度の高い特定段20aを選定し、選定した特定段20aの重みづけを大きく設定して、パレットを制御する。このように、重みづけの大きい特定段20aの選定を運用状態に応じて可変とする可変設定にすることにより、運用状態に応じた入出庫の円滑性向上が図れる。
【0071】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置及び方法並びにプログラムについて図13を用いて説明する。
本実施形態に係る機械式駐車装置は、上述した実施形態における構成に加え、機械式駐車装置の入庫状況に応じて特定段の重みづけを変更する点で、上述の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る機械式駐車装置10について、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0072】
制御装置には、特定段に格納される車両の台数に基づいて、重みづけが決定される。具体的には、入庫されている車両の台数が少ない特定段に対して、入庫されている車両の台数が多い特定段よりも重みづけを大きく設定することにより、入庫台数が少ない特定段に優先的に車両を入庫させる。
【0073】
図13から図15を用いて、格納庫20の入庫台数に応じて重みづけが設定され、制御される場合の制御装置24の作用を説明する。
図13に示されるように、機械式駐車装置が4層であり、特定段20a1及び特定段20a2に備えられるパレットには全て車両が載置されており、空きパレット16´がなく、また、他段20b1には空きパレット16´が11枚配置され、他段20b2には空きパレット16´が3枚及び空き領域が8個配置されている。また、機械式駐車装置の第1予約及び第2予約では、それぞれ車両の入庫予約がある。
【0074】
第1予約では、車両の入庫予約があるが、特定段20a1及び特定段20a2にはそれぞれ空きパレットがないため、他段20b2から空きパレット16´を取り出し、入出庫部14において取り出した空きパレットに車両を入車させる。また、第2予約では、新たな入庫予約があるので、他段20b1から空きパレット16´が呼び出される(図14参照)。
第1予約の入庫処理においては、特定段20a1及び特定段20a2の入庫台数は5台ずつであり等しいので、入出庫部に近い特定段20a1に入庫させる。第2予約の入庫処理においては、特定段の入庫状況を判定指針(例えば、特定段20a1は入庫数6台、特定段20a2は入庫数5台)とし、制御装置24は、判定指針によって選定される特定段である特定段20a2に対し、重みづけを大きく設定する。
【0075】
第2予約の入庫処理においては、制御装置24は設定した重みづけに基づいて、特定段20a2に対し、入庫させる。
このように、複数の特定段において入庫済みの車両の台数に基づいて重みづけを設定して入庫処理することで、複数の特定段の円滑性を均一に確保することができる。
また、2件以上の連続的な処理の予約がある場合等には、上述した第4の実施形態及び本第5の実施形態で記述した方法を併用することとしてもよい。併用することにより、複数ある特定段を有効的に使用し、円滑性が偏らないようにすることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 機械式駐車装置
12 車両
14 入出庫部
16 パレット
16´ 空きパレット
20 格納庫
20a、20a1、20a2 特定段
20b、20b1、20b2 他段
24 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図15