(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る流体温度調整装置を有する半導体ウエハー処理装置の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る流体温度調整装置が有する冷却加熱装置の図である。
図1に示す半導体ウエハー処理装置100は、半導体デバイスの製造工程において、シリコン等の半導体ウエハーWを、加熱した純水等の流体Lで洗浄する装置である。半導体ウエハー処理装置100は、流体温度調整装置1と、制御装置2と、液槽3と、流体配管4A〜4Gと、ポンプ5と、弁6A〜6Cと、洗浄部7とを含む。
【0019】
流体温度調整装置1は、半導体ウエハーWを洗浄するための流体Lを加熱又は冷却して、その温度を調整する装置である。本実施形態において、流体Lは純水等の液体であるが、流体Lは液体に限定されるものではなく、気体であってもよい。流体Lの種類は問わず、純水以外であってもよい。
【0020】
<液体温度調整装置>
流体温度制御装置10は、制御部11と、ヒーター駆動部12と、ペルチェ駆動部13とを含む。制御部11は、例えば、マイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)の演算装置とメモリ等の記憶装置とを有している。ヒーター駆動部12及びペルチェ駆動部13は、例えば、スイッチング素子を含むドライバ回路である。
【0021】
制御部11は、例えば、制御装置2から又はオペレーターのマニュアル操作により入力される操作量に基づいて、ヒーター駆動部12とペルチェ駆動部13との少なくとも一方の動作を制御する。また、制御部11は、冷却加熱装置20を保護するため、操作量に上限値を設ける制御を実行する。制御部11は、演算装置が記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムの命令を実行することにより、これらの制御を実現する。
【0022】
ヒーター駆動部12とペルチェ駆動部13との少なくとも一方は、制御部11から送信された指令値に基づき、冷却加熱装置20が有するヒーター22とペルチェモジュール23との少なくとも一方を駆動する。上述した操作量とは、冷却加熱装置20と流体Lとの間で交換される熱エネルギーの量に相当する指標である。操作量は、例えば、制御装置2が、流体Lの目標温度に基づいて求める。
【0023】
本実施形態において、制御部11は、流体Lを加熱することにより目標温度に維持するための総熱エネルギーを、ヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分とに分割して、ヒーター22とペルチェモジュール23との両方から流体Lに与える。ヒーター22の供給分とは、ヒーター22の最大加熱能力に対するヒーター22の加熱出力の比率であり、ペルチェモジュール23の供給分とは、ペルチェモジュール23の最大加熱能力に対するペルチェモジュール23の加熱出力の比率である。供給分は、いわゆる操作量に相当する。このようにすることで、ペルチェモジュール23とヒーター22とを有する流体温度調節装置1において、流体Lを目標温度にするまでの時間を短縮することができる。また、制御部11は、流体Lを冷却する場合、ペルチェモジュール23のみを駆動して、流体Lから熱エネルギーを除去し、流体Lを冷却する。なお、制御部11は、流体Lを目標温度に維持する場合に限らず、例えば、新たな流体Lが供給されたときに流体Lを昇温するために加熱する場合にも、ヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分とに分割して、ヒーター22とペルチェモジュール23との両方から流体Lに与えることができる。
【0024】
図1、
図2に示すように、冷却加熱装置20は、流体通路21を通過する流体Lを加熱するヒーター22と、流体通路21を通過する流体Lを加熱又は冷却するペルチェ素子のモジュールであるペルチェモジュール23とを含む。ペルチェモジュール23は、複数のペルチェ素子を有する。流体通路21は、本体部20B内に形成される。本体部20Bは、流体Lに接触した場合に不純物を発生させにくく、酸又はアルカリ等によって冒されにくい材料が用いられる。このような材料としては、例えば、フッ素樹脂がある。本実施形態において、本体部20Bは、フッ素樹脂で作られている。流体通路21は、本体部20Bの内部に形成されるので、流体通路21を流れる流体Lは、フッ素樹脂と接触することになる。上述したように、フッ素樹脂は、不純物を発生させにくいので、不純物を極力排除したい半導体製造プロセスに冷却加熱装置20を適用する場合には特に好適である。
【0025】
ヒーター22は、流体通路21側に設けられた伝熱部材(伝熱板)24の内部に取り付けられている。ペルチェモジュール23は、伝熱部材24の表面に取り付けられており、伝熱部材24よりも流体通路21から離れた位置に配置される。すなわち、冷却加熱装置20は、流体通路21から近い順に、ヒーター22、ペルチェモジュール23となる。
【0026】
流体通路21の流体入口21Iから流入した流体Lは、流体通路21を通過する過程でヒーター22及びペルチェモジュール23によって加熱され、昇温する。また、流体通路21を通過する流体Lは、ペルチェモジュール23によって冷却される。ペルチェモジュール23は、流体Lの冷却及び加熱の両方に用いられる。ヒーター22は、流体Lの加熱のみに用いられる。
【0027】
ヒーター22とペルチェモジュール23との少なくとも一方によって温度が調整された流体Lは、流体出口21Eから流出する。流体出口21Eの下流(流体Lの流れ方向下流)には、温度が調整された後の流体Lの温度を計測するための出口温度センサ31が設けられる。また、伝熱部材24には、伝熱部材24の温度を計測するための伝熱部材温度センサ32が設けられる。
【0028】
本実施形態においては、
図2に示すように、ペルチェモジュール23の外側に、ペルチェモジュール23を冷却するための吸放熱装置25が設けられる。吸放熱装置25は、ペルチェモジュール23の吸熱/放熱を促進させる。
図2に示すように、流体通路21の両側に、それぞれ2個ずつの伝熱部材24、ペルチェモジュール23及び吸放熱装置25が配置される。すなわち、冷却加熱装置20は、伝熱部材24、ペルチェモジュール23及び吸放熱装置25をそれぞれ4個有している。本実施形態において、1つの伝熱部材24は、3個のヒーター22を有している。
【0029】
次に、流体通路21について詳細に説明する。
図2に示すように、流体通路21は、分岐通路21Mと、複数の熱交換部21EXと、回収通路21Cとを含む。本体部20Bの外部から内部に導入された分岐通路21Mは、本体部20Bの内部で分岐して、複数(本実施形態では4個)の熱交換部21EXに接続される。また、それぞれの熱交換部21EXは、本体部20Bの内部で回収通路21Cに接続されている。それぞれの熱交換部21EXは、伝熱部材24と対向して配置されている。それぞれの熱交換部21EXは、伝熱部材24に、例えば、耐食性が高く不純物の発生が少ないアモルファスカーボン製の接液部材が配置されている。回収通路21Cは、本体部20Bの内部で1本になった後、本体部20Bの外部に引き出される。上述した出口温度センサ31は、熱交換部21EXよりも流体Lの流れ方向下流側であればよく、回収通路21Cに設けてもよい。
【0030】
流体通路21の流体入口21Iから分岐通路21Mに流入した流体Lは、分岐通路21Mからそれぞれの熱交換部21EXに導入される。熱交換部21EX内の流体Lは、伝熱部材24との間で熱交換する。熱交換部21EXで温度が上昇又は下降した流体Lは、回収通路21Cに流入した後、流体通路21の流体出口21Eから本体部20Bの外部へ流出する。このようにして、冷却加熱装置20は、流体Lを加熱又は冷却する。
【0031】
本実施形態において、ヒーター22とペルチェモジュール23とは、加熱能力(定格の加熱出力)が極端に異ならないことが好ましく、同等であることがより好ましい。本実施形態において、制御部11は、流体Lをその目標温度にするために加熱するにあたって、流体Lに供給する総エネルギーをヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分とに分割して流体Lに与える。ヒーター22とペルチェモジュール23との加熱能力が極端に異ならないようにすることで、流体Lに供給する総エネルギーの分割の制御が容易になる。また、ヒーター22及びペルチェモジュール23の加熱能力を、いずれも無駄なく有効に利用することができる。
【0032】
図1に示す半導体ウエハー処理装置100は、一枚毎に半導体ウエハーWを洗浄する洗浄部7を複数備えた、枚葉洗浄装置と呼ばれる種類の装置である。半導体ウエハー処理装置100は、半導体ウエハーWの洗浄時に流体温度調整装置1が流体Lを昇温させる。このため、流体温度調整装置1には、流体Lを必要な温度まで迅速に昇温させる機能が要求される。流体温度調整装置1は、ペルチェモジュール23とヒーター22との両方を用いて流体Lを加熱することができるので、流体Lを迅速に昇温させることができる。その結果、流体温度調整装置1で流体Lを昇温させる半導体ウエハー処理装置100は、処理速度を向上させ、半導体ウエハーWの開始から洗浄終了まで時間を短縮することができる。
【0033】
流体温度調整装置1は、ペルチェモジュール23とヒーター22との両方を用いて流体Lを加熱するが、ヒーター22は比較的安価であるとともに、コンパクトにすることができる。このため、冷却加熱装置20を小型化できるとともに、製造コストを低減できる。また、流体温度調整装置1は、ペルチェモジュール23とヒーター22との両方に、同等の加熱能力を発揮させるため、一方の加熱能力を無闇に大きくする必要はない。このため、ペルチェモジュール23又はヒーター22のいずれかの加熱性能が高いものを用いることによるコストの増加を抑制できる。さらに、ペルチェモジュール23は、加熱量又は冷却量を高精度に制御できるので、特に加熱量が小さい領域において流体Lの温度の安定性が低下することを抑制できる。
【0034】
<制御装置>
制御装置2は、半導体ウエハー処理装置100全体の動作を制御するための装置である。制御装置2は、例えば、マイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)の演算装置とメモリ等の記憶装置とを有している。制御装置2は、例えば、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムの命令を演算装置が実行することにより、冷却加熱装置20の操作量を求め、流体温度調整装置1の制御部11に送信する。操作量は、例えば、半導体ウエハーWの洗浄に対して適切な流体Lの温度(目標温度)と、冷却加熱装置20によって温度が調整された後の流体Lの温度との偏差に基づいて決定される。制御装置2が操作量を求める場合、例えば、制御装置2は、流体Lの目標温度と、冷却加熱装置20の流体出口21Eの下流に設けられた出口温度センサ31から取得した流体Lの温度との偏差を求め、これが0になるように操作量を求める。
【0035】
この他、制御装置2は、半導体ウエハー処理装置100が有するポンプ5及び弁6A〜6Cの動作を制御する。また、制御装置2は、液槽3に設けられた液槽温度センサ33から取得した、液槽3に貯められている流体Lの温度に基づき、液槽3内の流体Lの温度を制御する。
【0036】
<液槽、配管、ポンプ、弁及び洗浄部>
液槽3は、半導体ウエハーを洗浄するための流体Lを貯める装置である。液槽3と冷却加熱装置20の流体入口21Iとは配管4Aで接続されている。配管4Aは、液槽3内の流体Lを冷却加熱装置20に送る。冷却加熱装置20の流体出口21Eには配管4Bが接続されている。配管4Bの途中には、ポンプ5が設けられている。ポンプ5の吐出口側の配管4Bは、配管4Cに接続されている。配管4Cは、一方が液槽3に接続されるとともに、他方は複数の配管4Dに分岐している。それぞれの配管4Dには弁6が設けられている。
【0037】
それぞれの配管4Dの出口側で、洗浄対象の半導体ウエハーWが洗浄される。この部分が洗浄部7である。半導体ウエハーWを洗浄した後の流体Lは、配管4Eを通って配管4Fに集められる。配管4Fは、一端側が液槽3に接続されている。最も液槽3に近い洗浄部7よりも配管4Fの液槽3側には、弁6Bが設けられる。また、配管4Fの他端側は、配管4Gに接続されている。配管4Gには、弁6Cが設けられている。
【0038】
半導体ウエハーWを洗浄しないとき、制御装置2は、すべての弁6Aを閉じて流体Lがそれぞれの洗浄部7へ供給されないようにした状態で、ポンプ5を駆動する。このとき、制御装置2は、液槽3に貯められている流体Lの温度が所定の温度になるように流体温度調整装置1を制御する。このようにすることで、流体温度調整装置1と液槽3との間で流体Lが循環し、液槽3内の流体Lの温度が所定の温度に調整される。
【0039】
半導体ウエハーWを洗浄する場合、制御装置2はポンプ5を駆動するとともに、半導体ウエハーWを洗浄する洗浄部7の弁6Aを開く。このとき、制御装置2は、流体Lの温度が半導体ウエハーWの洗浄に適した温度になるように流体温度調整装置1を制御する。このようにすることで、流体温度調整装置1から、半導体ウエハーWの洗浄に適した温度に調整された流体Lが洗浄対象の半導体ウエハーWに供給される。
【0040】
洗浄後の流体Lは、まだ使用が可能である場合には、配管4F及び弁6Bを通って濾過された後、液槽3に戻される。洗浄後の流体Lに含まれる不純物等の量が増加してきた場合、制御装置2は、弁6Bを閉じ、弁6Cを開くことにより、流体Lを半導体ウエハー処理装置100の外部に排出する。次に、流体温度調整装置1を用いた流体Lの温度制御について説明する。
【0041】
<流体の温度制御>
図3は、本実施形態に係る流体温度調整装置が有する制御部の制御ブロック図である。
図4、
図5は、操作量の上限値の変化を示す図である。
図6は、ペルチェモジュールの操作量とヒーターの操作量との一例を示す図である。
【0042】
図1に示す流体温度調整装置1が、流体Lの温度を半導体ウエハーWの洗浄に適した温度に調整するにあたって、制御部11は、制御ブロックB1に示す操作量MVの入力を受ける。操作量MVは、例えば、
図1に示す制御装置2によるPID制御の操作量、すなわち、半導体ウエハーWの洗浄に対して適切な流体Lの目標温度と、冷却加熱装置20によって温度が調整された後の流体Lの温度との偏差に基づいて決定された操作量を用いることができる。また、操作量MVは、通信回線等によって外部から制御部11へ入力される操作量(外部操作量入力)であってもよい。
【0043】
冷却加熱装置20のシール部が過熱すると、シール部の耐久性が低下して密封性能が低下するおそれがある。このため、シール部の温度からリミット値(シール部保護上限値)を決定する。シール部保護上限値は、
図1、
図2に示す冷却加熱装置20のシール部を過熱から保護するためのものである。冷却加熱装置20のシール部は、シール機能を実現するために必要な部分であり、例えば、
図1、
図2に示す伝熱部材24と流体通路21との間等に介在するOリング、バックアップリング、接着剤又は接液部材等である。一般に、シール部の温度は測定が困難なので伝熱部材24の温度から推定してもよい。
【0044】
本実施形態においては、制御部11が、
図4に示すシール部保護上限値MVslを伝熱部材温度PV3に基づいて設定する。制御部11は、設定したシール部保護上限値MVslと制御ブロックB1の出力(操作量)MVとを比較し、小さい方を出力MVsとする。したがって、制御ブロックB2の出力MVsは、制御ブロックB1の出力MVとMVslとのうち小さい方になる。
【0045】
図4に示すように、シール部保護上限値MVslは、−1から1までの間で変化する。また、シール部保護上限値MVslは、伝熱部材24の温度(伝熱部材温度)PV3に基づいて変化する。伝熱部材温度PV3は、伝熱部材24に設けられた伝熱部材温度センサ32が計測する。
【0046】
本実施形態において、伝熱部材温度PV3が所定の温度T4までは、シール部保護上限値MVsl=1である。このとき、制御ブロックB2の出力MVsは、MVs=MVとなる。伝熱部材温度PV3が温度T4を超えると、伝熱部材温度PV3の上昇とともにシール部保護上限値MVslは減少する。制御ブロックB2の出力MVsは、MVslとMVとのうち小さい方になる。伝熱部材温度PV3がT4以上の領域においては、操作量MVに上限値が設定される結果、制御ブロックB2の出力MVsが操作量MVよりも小さくなる。
【0047】
伝熱部材温度PV3がT4以上の領域において、シール部保護上限値MVslは、伝熱部材温度PV3の上昇とともに、一次関数にしたがってリニアに、かつ連続して減少する。この例において、伝熱部材温度PV3=T5(>T4)のとき、シール部保護上限値MVsl=0である。すなわち、制御ブロックB2の出力MVsは0になるので、ヒーター22及びペルチェモジュール23の操作量MVは0になる。
【0048】
伝熱部材温度PV3がT5を超えると、シール部保護上限値MVslは、伝熱部材温度PV3の上昇とともに、一次関数にしたがってリニアに、かつ連続して減少するので、負の値となる。シール部保護上限値MVslが負の値になると、制御ブロックB2の出力MVsが負の値になる。これは、冷却加熱装置20の冷却を意味する。制御部11は、出力MVsに基づいてペルチェモジュール23が冷却するように制御する。伝熱部材温度PV3がT6になると、シール部保護上限値MVslは−1、すなわち、負の最大値をとる。このとき、ペルチェモジュール23は、最大の冷却能力を発揮する。また、外乱等によりシール部温度が上昇した場合は、ペルチェモジュール23を冷却方向で駆動して、シール部を速やかに冷却することによりシール部を保護することができる。
【0049】
上述したように、シール部保護上限値は、冷却加熱装置20のシール部を保護するために設ける。シール部を保護するためには、シール部の温度を直接測定することが好ましい。しかし、温度計の取り付けが困難であることから、シール部の温度を直接測定することは困難である。このため、本実施形態では、シール部の温度と相関が高い伝熱部材温度PV3に基づいて、シール部保護上限値を設定する。
【0050】
このように、シール部の温度と相関の高い伝熱部材温度PV3を用いることで、シール部の温度をより正確に把握できるので、シール部をより確実に保護できる。また、シール部の温度をより正確に把握できるので、シール部の温度に余裕がある場合には、シール部保護上限値を大きくして、冷却加熱装置20の能力を最大限に発揮させることができる。さらに、流体Lの種類によっては熱が伝わり難いものがある(例えば、硫酸又はエチレングリコール等)。熱が伝わり難い流体Lを加熱する場合、出口温度PV1が低くても、伝熱部材温度PV3が高いことがある。本実施形態では、出口温度PV1に基づくモジュール保護上限値に加え、伝熱部材温度PV3に基づくシール部保護上限値を用いるので、熱が伝わり難い流体Lを加熱する場合であっても、シール部をより確実に保護できる。すなわち、本実施形態は、熱の伝わりやすさが異なる複数種類の流体Lを加熱する場合であっても、シール部を確実に保護することができる。
【0051】
操作量MVにシール部保護上限値が設定された出力MVsが得られたら、制御ブロックB3において、制御部11は、
図1、
図2に示す冷却加熱装置20の伝熱部材24が温度を調整した流体Lの温度(出口温度)PV1温度に基づいた、流体Lに供給する熱エネルギーの上限値(モジュール保護上限値)MVjlを設定する。
【0052】
流体Lの温度又は流量によっては、シール部保護上限値を適用してもペルチェモジュール23のジャンクション温度が過熱する場合がある。このため、本実施形態では、ジャンクションの温度を測定しモジュール保護上限値(リミット値)を決定する。ジャンクションとは、ペルチェ素子と電極との接合部をいう。操作量MVの入力を受けた制御部11は、制御ブロックB3において、
図1、
図2に示すペルチェモジュール23のジャンクションを保護するために、流体Lに供給する熱エネルギーの上限値(モジュール保護上限値)MVjlを設定する。本実施形態において、制御部11は、
図5に示す流体Lの温度(出口温度)PV1とモジュール保護上限値MVjlとの関係に基づいて、モジュール保護上限値MVjlを設定する。そして、制御部11は、設定したモジュール保護上限値MVjlと制御ブロックB2の出力MVsとを比較し、小さい方を出力MVjとする。したがって、制御ブロックB3の出力MVjは、モジュール保護上限値MVjlと制御ブロックB2の出力MVsとのうち小さい方になる。
【0053】
図5に示すように、モジュール保護上限値MVjlは、0から1までの間で変化する。また、モジュール保護上限値MVjlは、冷却加熱装置20によって温度が調整された後(加熱においては加熱後)の流体Lの温度(出口温度)PV1に基づいて変化する。したがって、モジュール保護上限値も、冷却加熱装置20によって温度が調整された後(加熱においては加熱後)の出口温度PV1に基づいて変化する。出口温度PV1は、冷却加熱装置20の流体出口21Eの下流に設けられた出口温度センサ31が計測する。出口温度PV1を用いるのは、一般に、ジャンクションの温度を直接測定するのは困難なので、出口温度PV1から推定するためである。
【0054】
本実施形態において、出口温度PV1が所定の温度T1までは、モジュール保護上限値MVjl=1である。このとき、制御ブロックB3の出力MVjは、MVj=MVsとなる。出口温度PV1が温度T1を超え、温度T2になるまでは、出口温度PV1の上昇とともにモジュール保護上限値MVjlは減少する。制御ブロックB3の出力MVjは、出口温度PV1がT1以上の領域において、操作量MVsとモジュール保護上限値MVjlとの小さい方が選択される。
【0055】
出口温度PV1がT1以上の領域において、モジュール保護上限値MVjlは、出口温度PV1の上昇とともに、一次関数にしたがってリニアに、かつ連続して減少する。この例において、出口温度PV1=T2(>T1)のとき、モジュール保護上限値MVjl=0.15である。モジュール保護上限値MVjlは、出口温度PV1がT2を超えると出口温度PV1がT2を超える前よりも急激に減少し、出口温度PV1=T3(>T3)で0になる。ここでは制限値(モジュール保護上限値MVjl)がリニアに減少するとしているが、ジャンクション温度を一定以下に制限することが目的であるから、ジャンクション温度の余裕度によって制限値はモジュール保護上限値MVjlを部分的に増減させてもよい(以下同様)。
【0056】
ジャンクション温度を一定以下にすることによりペルチェモジュール23を保護する。ジャンクションを保護するためには、ジャンクションの温度を直接測定することが好ましい。しかし、温度計の取り付けが困難であること、ヒーター22の影響を受けやすいことから、ジャンクションの温度を直接測定することは困難である。ここではヒーター22の影響を大きく受けるが、ジャンクション温度と一定の相関がある出口温度PV1からペルチェモジュール23を保護するための制限値(モジュール保護上限値)を決定する。ペルチェモジュール23の操作量とヒーター22の操作量との間に一定の関係を持たせることで、ヒーター22温度の影響を考慮したペルチェモジュール23の操作量の制限値、すなわち、モジュール保護上限値を決定することができる。
【0057】
このように、ジャンクションの温度と相関の高い出口温度PV1を用いることで、ジャンクションの温度をより正確に把握できるので、ジャンクションをより確実に保護できる。また、ジャンクションの温度をより正確に把握できるので、ジャンクションの温度に余裕がある場合には、モジュール保護上限値を大きくして、ペルチェモジュール23の能力を最大限に発揮させることができる。
【0058】
ペルチェモジュール23は、加熱に用いた場合、発熱量が大きくなるとジャンクションの温度も高くなる。本実施形態において、モジュール保護上限値MVjlは、出口温度PV1が上昇するにしたがって小さくなる。すなわち、出口温度PV1が上昇するにしたがって、制御ブロックB3の出力MVjが小さくなる。出口温度PV1は、ペルチェモジュール23の発熱量が大きくなるにしたがって高くなるので、上述したように、出口温度PV1が上昇するにしたがって、モジュール保護上限値を小さくすることで、ジャンクションをより確実に保護することができる。
【0059】
このように、本実施形態では、操作量MVと、シール部保護上限値MVslと、モジュール保護上限値MVjlとのうち最も小さいものをヒーター22及びペルチェモジュール23操作量MVjとする。上述した例では、シール部保護上限値MVsl、モジュール保護上限値MVjlの順にこれらを設定したが、これらを求める順序を逆にしてもよい。
【0060】
本実施形態では、制御部11は、制御ブロックB3の出力、すなわち操作量MVjを、制御ブロックB1における制御装置2によるPID制御にフィードバックしている。このように、上限値が設定された操作量MVjを前記PID制御にフィードバックすることで、前記PID制御における不要な積分を停止させ、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制することができる。
【0061】
操作量MVに上限値を設定する処理(制御ブロックB2、B3の処理)が終了したら、制御ブロックB4において、制御部11は、制御ブロックB2及び制御ブロックB3で上限値が設定された操作量MV、すなわち、制御ブロックB3の出力である操作量MVj(以下、MVcという)を、ヒーター22の操作量(ヒーター操作量)MVhとペルチェモジュール23の操作量(モジュール操作量)MVmとに分割する(操作量分割)。制御ブロックB3の出力である操作量MVjは、流体Lを加熱するための熱エネルギーに相当する。操作量分割することで、特に流体Lを加熱することにより目標温度に維持する場合は、ヒーター22及びペルチェモジュール23の両方から流体Lへ熱エネルギーを与えることができる。その結果、両者の加熱能力を有効に利用して、流体Lを目標温度にするまでの時間を短縮することができる。
【0062】
操作量分割は、
図6に示すモジュール用操作量分割係数MVmkを用いる。操作量を分割する前においては、流体温度調整装置1の最大・最小操作量を±1で表す。また、操作量を分割した後においては、ペルチェモジュール23の最大・最小操作量を±1で表す。ヒーターの最大操作量を+1で表す。モジュール用操作量分割係数MVmkは、出力MVcのうち、モジュール操作量MVm(流体Lを加熱するための熱エネルギーのうちペルチェモジュール23の供給分に相当する)に対応する係数である。モジュール用操作量分割係数MVmkは、0以上1以下である。
【0063】
出力MVcの範囲が0以上1以下である場合、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhの範囲も0以上1以下になる。モジュール用操作量分割係数MVmkを用いると、モジュール操作量MVmは、2×MVc×MVmk(ただし、0≦MVm≦1)となる。また、出力MVcのうち、ヒーター操作量MVh(流体Lを加熱するための熱エネルギーのうちヒーター22の供給分に相当する)は、2×MVc×(1−MVmk)(ただし、0≦MVc≦1)となる。
【0064】
ただし、モジュール用操作量分割係数MVmkは、1−1/(2×MVc)以上1/(2×MVc)以下、かつ0以上1以下である。
図6に示す破線が、モジュール用操作量分割係数MVmkの上限と下限とを示している。なお、上述したモジュール用操作量分割係数MVmkの範囲は、ペルチェモジュール23の定格の加熱出力とヒーター22の定格の加熱出力とが等しい場合である。両者が異なる場合は、それぞれの加熱能力の比率を考慮する必要がある。
【0065】
モジュール用操作量分割係数MVmkを、1−1/(2×MVc)以上1/(2×MVc)以下、かつ0以上1以下の範囲で設定することにより、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhを0以上1以下の範囲に設定することができる。モジュール用操作量分割係数MVmkが出力MVcの変化に対して一定であれば、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとの比率も、出力MVcの変化に対して一定である。すなわち、流体Lを加熱するための熱エネルギーのうち、ヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分との比率は、流体Lに供給する熱エネルギーの大きさによって変化しない。
【0066】
本実施形態では、制御部11は、流体Lを加熱するための総熱エネルギーのうち、ヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分との比率を、流体Lに供給する熱エネルギーの大きさに基づいて変化させる。このため、モジュール用操作量分割係数MVmkを出力MVcの変化に対して変化させることにより、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとの比率を出力MVcの変化に対して変化させる。その結果、流体Lを加熱するための熱エネルギーのうち、ヒーター22の供給分とペルチェモジュール23の供給分との比率が、流体Lに供給する熱エネルギーの大きさの変化とともに変化する。上述した比率とは、流体Lを加熱するために供給される熱エネルギーに対するヒーター22とペルチェモジュール23との比率である。
【0067】
本実施形態では、次の点(1)〜(5)を考慮してモジュール用操作量分割係数MVmkを設定することにより、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとを分割した。
(1)出力MVcが0から1まで変化する間において、流体Lに与える総熱エネルギーが単調増加を維持するように、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhも前記範囲において単調増加させる。流体Lに与える総熱エネルギーが減少する領域があると、出力MVc(操作量)が増加したにも関わらず、流体Lに与える総熱エネルギーが減少することがあり、その結果、流体Lの温度がハンチングするおそれがある。上述したようにすることで、流体Lに与える総熱エネルギーを単調増加させて、流体Lの温度がハンチングするおそれを低減することができる。
【0068】
(2)モジュール操作量MVmを滑らかに変化させる。このようにすることで、ペルチェモジュール23のジャンクションの温度が過度に変動しないようにすることができる。その結果、出力MVc(操作量)の変化が小さい場合において、ペルチェモジュール23の温度、特にジャンクションの温度の急激な変化を抑制できるので、ペルチェモジュール23の耐久性低下を抑制できる。
【0069】
(3)流体Lに与える総熱エネルギーが所定の値よりも小さいときには、流体Lを加熱するための総熱エネルギーのうち、ペルチェモジュール23の供給分の方がヒーター22の供給分よりも大きくなるようにする。具体的には、出力MVc(操作量)が所定の値よりも小さい領域(例えば、出力MVcが0.5〜0.6よりも小さい領域)では、モジュール操作量MVmをヒーター操作量MVhよりも大きくする。
【0070】
ペルチェモジュール23を加熱に用いる場合、ペルチェ効果によりヒーター22と比較して加熱の効率が高くなる。このため、モジュール操作量MVmをヒーター操作量MVhよりも大きくすることで、流体Lの加熱効率が向上する。その結果、消費電力を抑制することができる。特に、出力MVc(操作量)が小さい領域において、前記加熱効率の差は大きくなるので、このような領域においては、ペルチェモジュール23のみで流体Lを加熱することが好ましい。
【0071】
なお、ペルチェモジュール23の電源にスイッチング電源を用いる場合、電源に対する負荷が小さい領域においては効率が低下する。このため、極端に出力MVc(操作量)が小さい領域(例えば、モジュール操作量MVmが0.2以下)では、スイッチング電源の効率が低下する。本実施形態では、極端に出力MVc(操作量)が小さい領域では、ペルチェモジュール23のみで流体Lを加熱する。このようにすると、ヒーター22で流体Lを加熱する分をペルチェモジュール23で賄うため、それだけスイッチング電源の負荷が大きくなるので、スイッチング電源の効率が低い領域を極力使用しないようにすることができる。本実施形態においては、例えば、出力MVc(操作量)が0.1以下(モジュール操作量MVmは0.2以下に相当)ではペルチェモジュール23のみで加熱することで、スイッチング電源の効率が低い領域の使用を抑制できる。
【0072】
また、モジュール操作量MVmをヒーター操作量MVhよりも大きくすることで、流体Lを加熱する際の制御性が向上する。例えば、サイクル制御等のような出力が階段状に変化する電力制御方式によってヒーター22を制御している場合、ペルチェモジュール23の方がヒーター22よりも出力分解能は小さく、出力分解能の劣るヒーター22で加熱することによる流体Lの温度制御精度低下を効果的に抑制することができる。
【0073】
(4)流体Lに与える総熱エネルギーが所定の値以上になったときには、流体Lを加熱するための総熱エネルギーのうち、ヒーター22の供給分の方が、ペルチェモジュール23の供給分よりも大きくなるようにする。具体的には、出力MVc(操作量)が所定の値以上の領域(例えば、出力MVcが0.5〜0.6以上の領域)では、ヒーター操作量MVhをモジュール操作量MVmよりも大きくする。その結果、流体Lに供給する総熱エネルギーの増加にともない、ペルチェモジュール23によって流体Lに供給される熱エネルギーがヒーター22によって流体Lに供給される熱エネルギーをよりも大きい状態から、ヒーター22によって流体Lに供給される熱エネルギーがペルチェモジュール23によって流体Lに供給される熱エネルギーよりも大きい状態になる。すなわち、流体Lに供給する総熱エネルギーの増加にともない、ペルチェモジュール23の最大加熱能力に対してヒーター22の最大加熱能力が大きい状態になる。このように、本実施形態では、ヒーター22によって流体Lに供給される熱エネルギーとペルチェモジュール23によって流体Lに供給される熱エネルギーとの大小が切り替えられる。すなわち、ヒーター22の操作量とペルチェモジュール23の操作量との大小が切り替えられる。
【0074】
このようにすることで、出力MVc(操作量)が所定の値以上の領域では、流体Lに供給する総熱エネルギーをより多くヒーター22に負担させることにより、ペルチェモジュール23の負担を低減することができる。その結果、ペルチェモジュール23のジャンクションの温度上昇を抑制して、ペルチェモジュール23、より具体的にはジャンクションの耐久性低下を効果的に抑制することができる。
【0075】
(5)モジュール用操作量分割係数MVmkを連続して変化させる。このようにすることで、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとを連続して変化させることができる。そして、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとが変化しても、ペルチェモジュール23が流体Lに供給する熱エネルギーとヒーター22が流体Lに供給する熱エネルギーとが滑らかに変化する。その結果、モジュール操作量MVmとヒーター操作量MVhとを変化させても、流体Lの温度の急激な変化が抑制されるので、流体Lで洗浄される半導体ウエハーWの品質に与える影響を小さくすることができる。
【0076】
図6は、上述した(1)〜(4)にしたがってモジュール用操作量分割係数MVmkを設定した一例を示している。例えば、出力MVc(操作量)が0.1程度までの領域では、モジュール操作量MVmが0よりも大きく、ヒーター操作量MVhは0になる。このため、ペルチェモジュール23のみで流体Lを加熱することになる。出力MVc(操作量)が0.1程度を超え、0.8程度までの領域では、モジュール用操作量分割係数MVmkは単調に減少する。この領域では、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhはともに0よりも大きくなる。このため、ヒーター22及びペルチェモジュール23の両方で流体Lを加熱することになる。
【0077】
出力MVc(操作量)が0.53程度で、モジュール用操作量分割係数MVmkは0.5になる。このとき、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhはともに0.5になる。このため、ヒーター22及びペルチェモジュール23の両方で流体Lを加熱するとともに、両者が流体Lに与える熱エネルギーは、それぞれが等しくなる。
【0078】
出力MVc(操作量)が0.8程度を超えると、モジュール用操作量分割係数MVmkは単調増加に転じ、出力MVc(操作量)が1で0.5になる。この領域では、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhは単調に増加するが、ヒーター操作量MVhの増加割合はMVmkが0.8よりも小さい領域よりも小さくなる。MVc=1では、モジュール用操作量分割係数MVmk=0.5のとき、ヒーター22及びペルチェモジュール23は、両者とも最大の出力で流体Lに熱エネルギーを与え、これを加熱する。
【0079】
なお、制御部11は、流体Lに供給する熱エネルギーが変化したとき、ペルチェモジュール23の最大加熱能力に対する加熱出力の比率(操作量)とヒーター22の最大加熱能力に対する加熱出力の比率(操作量)との比率を一定に保ちつつ、それぞれが供給する熱エネルギーを変化させてもよい。このようにすると、
図6においてMVm=MVh=MVcになる。
【0080】
このように、モジュール用操作量分割係数MVmkが設定されることにより、制御部11は、ペルチェモジュール23の操作量とヒーター22の操作量とを切り替えて、冷却加熱装置20を、流体Lに供給する総熱エネルギーの増加にともない、ペルチェモジュール23によって流体Lに供給される熱エネルギーがヒーター22によって流体Lに供給される熱エネルギーをよりも大きい状態から、ヒーター22によって流体Lに供給される熱エネルギーがペルチェモジュール23によって流体Lに供給される熱エネルギーよりも大きい状態に制御することができる。その結果、制御性向上、ペルチェモジュール23のジャンクションの温度上昇を抑制するという効果を効果的に得ることができる。また、制御部11は、制御ブロックB1で操作量が決定されれば、流体Lを目標温度に制御するので、操作が容易である。その結果、流体温度調整装置1は、誤操作による不具合を誘発しにくく、半導体ウエハーWの洗浄不良を引き起こすおそれは極めて低い。以上は、ペルチェモジュール23とヒーター22との加熱能力が等しい場合について説明した。ペルチェモジュール23とヒーター22との加熱能力が異なる場合は、各々の最大加熱能力に対する供給加熱能力の比と読み替えてもよい。
【0081】
制御部11は、モジュール用操作量分割係数MVmkに基づいて出力MVcを操作量分割することにより、モジュール操作量MVm及びヒーター操作量MVhを設定する。その後、制御部11は、ヒーター操作量MVhに基づき、ヒーター22に供給する電力をサイクル制御又はデューティー制御する。ヒーター22に供給される電力をサイクル制御又はデューティー制御することにより、ヒーター22の加熱量を容易に制御することができる。
【0082】
サイクル制御は、交流電源の半波又は1周期単位で前記交流電源をON/OFFすることにより、ヒーター22に供給する電力を制御する方法である。デューティー制御は、所定時間(例えば、1秒)における前記交流電源のON時間を変更することにより、ヒーター22に供給する電力を制御する方法である。サイクル制御又はデューティー制御は、単なるON/OFF制御と比較して、ヒーター22に供給する電力を精度よく制御できるので、ヒーター22の加熱量を精度よく制御することができる。