(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなるチップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備してなる水性ボールペンであって、前記インキ収容筒の内部に、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を直詰めしてなる水性ボールペンであって、前記ボールが、超硬合金材からなることを特徴とする水性ボールペン。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特徴としては、水性インキ組成物中で、擬塑性付与剤の平均粒子径が0.1〜5.0μmであり、前記擬塑性付与剤の含有量が0.6〜3.5質量%であるともに、20℃環境下、剪断速度1000(sec
-1)で、インキ粘度が100mPa・s以下とする。
【0009】
擬塑性付与剤の平均粒子径については、0.1〜5.0μmを用いる必要がある。理由は定かでは無いが、平均粒子径5.0μm以上の場合、水性インキ中において、前記擬塑性付与剤の粒子は、高分子が多く存在し、該高分子同士が、お互いくっついたり、絡まりあって、粒子を形成した状態である。前記擬塑性付与剤の粒子の高分子は、筆記時ボールとボール座の間を通ることで、引き伸ばされたり、解かれたり、引きちぎられたりするため、ボールを転がす力に対して抵抗となる。しかし、平均粒子径5.0μm以下の場合は、前記擬塑性付与剤の粒子は、高分子の量は少なく、該高分子同士が、お互いに絡まりあってはいるものの、それを引き伸ばしたり、解いたり、引きちぎる力は、より小さくなる。そのため、平均粒子径5.0μm以下であれば、ボールとボール座の摩擦抵抗を軽減し、筆感を向上することが可能になると推測する。
【0010】
さらに、擦過性を向上するためには、擬塑性付与剤の平均粒子径は、0.1〜5.0μmが良い。これは、平均粒子径5.0μm以下の状態で存在していることで、筆記後の紙面上の繊維に引っかかることなく、浸透するため、擦過性能を向上する効果があるためである。また、擬塑性付与剤の平均粒子径0.1μm未満のものでは、平均粒子径が小さすぎて生産効率性が悪いため、実用的ではない。
なお、擬塑性付与剤の平均粒子径は、光学顕微鏡の位相差で観察し、写真の二次元形状において、任意の10個の擬塑性付与剤の長径の平均として求めることができる。
【0011】
また、よりボールとボール座の摩擦抵抗を軽減し、筆感を向上しやすい傾向や、生産効率性を考慮すれば、擬塑性付与剤の平均粒子径は、3.0〜5.0μmが好ましく、最も好ましくは、3.0〜4.0μmが好ましい。
【0012】
また、擬塑性付与剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.6〜3.5質量%を含有する必要がある。これは、0.6質量%未満であると、粘度が低すぎてしまう為、所望の筆感が得られず、3.5質量%を越えると、20℃環境下、剪断速度1000(sec
-1)で、インキ粘度が100mPa・sを越えてしまい、ボールとボール座の摩擦抵抗を軽減できず、筆感が重くなってしまうためである。さらに、ボールとボール座の摩擦抵抗を軽減し、筆感を向上する傾向を考慮すれば、1.2〜3.0質量%を含有する方が好ましく、最も好ましくは、1.2〜2.5質量%である。
【0013】
また、前記擬塑性付与剤は、凝集状態(凝集粒子)である方が好ましい。従来の擬塑性付与剤は、インキ中で三次元網目構造を形成することで、インキ粘度調整剤や顔料分散剤などの用途で用いられていたが、このように擬塑性付与剤が三次元網目構造の場合では、ボールとボール座の間を通過する際、三次元網目結合を破壊するために、多くの摩擦抵抗がかかりやすく、筆感に影響が出やすい傾向がある。それに比べ、本発明のように、擬塑性付与剤が凝集状態では、高分子の分子鎖同士がお互いくっついたり、絡まったりしているだけなので、ボールとボール座の間を通過する際、前記分子鎖を引き伸ばされたり、解かれたりするだけであるため、摩擦抵抗が小さい傾向があり、筆感を向上する傾向があるため、好ましい。
また、特に擬塑性付与剤は、高分子の分子鎖をインキ中で広く伸ばしているため、ボールとボール座の間を通過する際に前記分子鎖の結合が引きちぎられやすい傾向があり、影響が出やすいため、凝集状態である方が摩擦抵抗は下がりやすく、筆感が向上し易いため、好ましい。
【0014】
また、前記擬塑性付与剤が、凝集状態であると、筆記後の紙面上の繊維に引っかりづらく、浸透しやすい傾向があり、擦過性能を向上する傾向があるため好ましい。
【0015】
また、擬塑性付与剤としては、多糖類として、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムや、ポリアクリル酸などの樹脂や、ソルビタン脂肪酸エステルとしてソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステルなどによる界面活性剤分散させたものが挙げられる。その中でも、多糖類は、擬塑性付与剤の分子鎖同士がくっつき合って、凝集状態になりやすいため、筆感や擦過性能を向上する傾向があるため、多糖類を用いる方が好ましい。さらに、筆跡にボテがあると、擦過性能が遅くなる要因となるが、キサンタンガムは、泣きボテが発生しづらくすることで、擦過性能を向上する傾向があるため、最も好ましい。
【0016】
また、より潤滑性を向上することで、滑らかな筆感を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いる方が好ましい。これは、リン酸基が、金属類に対して吸着力があり、ボールやチップ本体に対して吸着することで、他の種類の界面活性剤よりも、潤滑性があり、良好な潤滑効果を有するためである。特に、本発明において、平均粒子径が0.1〜5.0μmの擬塑性付与剤と含有する場合では、擬塑性付与剤の凝集粒子とリン酸基が、ボールとボール座の間において、相乗的な潤滑効果を奏し、より摩擦抵抗を軽減し、筆感を向上する傾向があるため、好ましい。
【0017】
また、リン酸エステル系界面活性剤の中でも、より潤滑性を向上することで、滑らかな筆感とすることを考慮すれば、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤が好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系、短鎖アルコール系等があるが、この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいため、直鎖アルコール系のラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、短鎖アルコール系を用いる方が、好ましい。さらに、潤滑性能とインキ中での溶解安定しやすく、インキ経時が安定する傾向があるため、ラウリルアルコール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いる方が、最も好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0018】
リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株))の中から、プライサーフA212C(トリデシルアルコール系)、同A208B(ラウリルアルコール系)、同A213B(ラウリルアルコール系)、同A208F(短鎖アルコール系)、同A215C(トリデシルアルコール系)、同A219B(ラウリルアルコール系)等が挙げられる。これ等のリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
尚、HLBは、一般式として、HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求めることができる。
【0019】
また、リン酸エステル界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましい。含有量が、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、筆感が劣りやすく、筆跡にカスレ等が発生する傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になる傾向があるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましい。さらに、より潤滑性やインキ経時安定性を考慮すれば、0.5〜2.5質量%が最も好ましい。
【0020】
また、より擦過性能を向上するには、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から選ばれる1種以上の界面活性剤を選択し、含有することが好ましい。これは、表面張力を低減しやすく、さらに平均粒子径が0.1〜5.0μmの擬塑性付与剤の凝集粒子を紙面へ引っ張り込みやすくすることで、紙面への浸透性を高めることで、擦過性能をより向上させる傾向があるためである。また前記界面活性剤の中でも、擦過性能をより向上させるために、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、前記フッ素系界面活性剤は、最も表面張力を低減し、濡れ性を向上させる効果があり、インキを広がりやすくする傾向があり、さらに、前記擬塑性付与剤の凝集粒子を紙面へ引っ張り込みやすくする傾向があるためである。
【0021】
また、シリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、フッ素変性、ジメチル、メチルフェニルなどのシリコーンオイル等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロ基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。その中でも、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を用いる方が好ましい。これは、エチレンオキシドがあると、親水性が強いため、水に対して溶解しやすく、経時安定性が安定する傾向にあるためである。
【0022】
また、前記界面活性剤について、シリコーン系界面活性剤の具体例としては、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354、KF-355、KF-615、KF-618、KF−642、KF-643、KF-945、KF-6004(信越化学工業(株))、FZ−2104、FZ−2110、FZ2163、FZ−2191、FZ−7002、FZ−720、SILWETL−7001、L−7002、Y−7006、L−7604(東レ・ダウコーニング(株))、TSF4445(東芝シリコーン(株))が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、ダイノール604、サーフィノール104H、同104A、同104BC、同104DPM、同104PA、同104S、同420、同440、同SE、同SE−F、同61等(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、メガファックF−447、F−410、F−444、F−445、F−552、F−553、F−554(DIC(株))、DSN−403N(ダイキン工業(株))、FC−170C、FC−430、ノベックFC−4430、FC−4432(住友スリーエム(株))等が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩具体例としては、ネオコールSW−C、ネオコールYSW−CE、ネオコールYSK(第一工業製薬(株))、ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA(花王(株))、エアロールOB−70(東邦化学工業(株))、エアロゾ−ルMA−80、エアロゾ−ルAY−100(三井サイアナミド(株))、アデカコールEC((株)アデカ)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
前記界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.01〜5.0質量%が好ましい。この範囲より低いと、表面張力を十分に下げることができにくく、この範囲を越えると、筆跡に滲みが発生したり、インキ経時が不安定となりやすいため、0.01〜5.0質量%が好ましい。より筆跡滲みを向上する傾向を考慮すれば、0.1〜3.0質量%が好ましく、最も好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0024】
また、ボールペンのチップ本体の材質は、特に限定されるものではないが、本発明のように、リン酸エステル系界面活性剤を用いる場合では、ボールペンのチップ本体の材質は、ステンレス綱材が好ましい。それは、リン酸基がステンレス綱材に吸着しやすい傾向があり、リン酸エステル系界面活性剤の潤滑効果が一層得られるため、チップ本体の材質は、 ステンレス綱材を用いる方が好ましい。
【0025】
また、ボール材質は、特に限定されるものではないが、超硬合金、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア、ルビー、窒化珪素、樹脂などが挙げられる。特に、超硬合金ボールは、タングステンカーバイドを主成分とし、Fe、Co、Niなどの鉄系金属で焼結したものであり、リン酸基が吸着しやすい傾向があるため、リン酸エステル系界面活性剤の潤滑効果が一層得られるため、好ましい。
【0026】
なお、インキ粘度については、滑らかな筆感を考慮すると、TAインスツルメント社製レオメーターAR−G2粘度計(コーンプレート40mm・角度2°、測定温度20℃)を用いて、20℃の環境下で、100mPa・s以下にする必要であるが、より滑らかな筆感になりやすい傾向を考慮すれば、60mPa・s以下の方が好ましく、最も好ましくは、30mPa・s以下である。
【0027】
また、着色剤は、染料、顔料など、適宜併用して使用することができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1〜20質量%が好ましい。
【0028】
また、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、水溶性有機溶剤を使用しても良い。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、チオジグリコールなどのグリコール系溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。その中でも、本発明で用いる平均粒子径が0.1〜5.0μmの擬塑性付与剤が、インキ中での分散安定性を考慮すれば、グリコール系溶剤を用いる方が好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。水溶性有機溶剤の含有量は、溶解性、ドライアップ性能、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜40.0質量%が好ましい。
【0029】
その他として、着色剤の経時安定性を向上させるために、pH調整剤や、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤を添加することができる。また、水溶性樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等や、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等、を添加することができる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
ゲル状組成物配合例1
まず、加温しながら、エチレングリコール、水、キサンタンガムを投入してホモジナイザー攪拌機にて撹拌してゲル状組成物を作製する。その後、ゲル状組成物を、ナノマイザーYSNM−1500−5(吉田機械興行(株))で、200MPaの圧力を掛けることで、擬塑性付与剤の分子鎖をほどき、同時に分子鎖を凝集させて、ゲル状組成物を完成させた。なお、光学顕微鏡の位相差で観察したところ、擬塑性付与剤の状態は、分子鎖が凝集状態となっており、平均粒子径が3〜4μmであった。
【表1】
【0031】
次にゲル状組成物の配合例を説明する。
ゲル状組成物配合例2〜5
表1に示すように各成分を変更した以外は、ゲル状組成物配合例1と同様な手順で配合例2〜7のゲル状組成物を得た。また、光学顕微鏡の位相差で観察したところ、擬塑性付与剤の状態は、分子鎖が凝集状態となっており、平均粒子径が3〜4μmであった。
【0032】
ゲル状組成物配合例6
表1に示すように各成分を変更し、ゲル状組成物を、ナノマイザーで、140MPaの圧力を掛けること以外は、ゲル状組成物配合例1と同様な手順で配合例8のゲル状組成物を得た。また、光学顕微鏡の位相差で観察したところ、擬塑性付与剤の状態は、分子鎖が凝集状態となっており、平均粒子径が4〜5μmであった。
【0033】
ゲル状組成物配合例7、8
表1に示すように各成分を変更し、
ゲル状組成物を、ナノマイザーで、圧力負荷を掛けないこと以外は、配合例1と同様な手順で配合例7、8のゲル状組成物を得た。また、光学顕微鏡の位相差で観察したところ、擬塑性付与剤の状態は、分子鎖が三次元網目構造となっており、平均粒子径が8〜10μmであった。
【0034】
また、ナノマイザ−の圧力は、100MPa未満では、擬塑性付与剤の凝集状態にバラツキが生じやすく、摩擦抵抗を軽減効果が、劣る傾向があるため、擬塑性付与剤を添加後に100MPa以上の圧力を掛ける方が好ましく、より擬塑性付与剤の凝集状態のバラツキを抑え、摩擦抵抗の軽減効果を高めることを考慮すれば、水性ボールペン用インキ組成物の擬塑性付与剤を添加後に160MPa以上の圧力を掛ける方が最も好ましい。
【0035】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
水 39.0質量部
着色剤(カーボンブラック) 5.0質量部
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 15.0質量部
分散剤(アクリル系樹脂) 3.0質量部
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 3.0質量部
保湿剤 5.0質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
防菌剤(1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.5質量部
ゲル状組成物配合1 35.0質量部
【0036】
また、着色剤、エチレングリコール、水、潤滑剤、pH調整剤、保湿剤、防錆剤、防菌剤をマグネットホットスターラーで60℃加温撹拌してベースインキを作成した。
【0037】
上記作製したゲル状組成物配合1と、ベースインキを投入し60℃で、ホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで混合攪拌して分散させた後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。尚、実施例1のインキ粘度は、TAインスツルメント社製レオメーターAR−G2粘度計(コーンプレート40mm・角度2°、測定温度20℃)を用いて、20℃の環境下で、剪断速度1000(sec
-1)にてインキ粘度を測定したところ、30mPa・sであった。
【0038】
実施例2〜13
表1〜3に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜13の水性インキ組成物を得た。表1〜3に測定、評価結果を示す。
【表2】
【表3】
【0039】
比較例1〜4
表3に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で比較例1〜4の水性インキ組成物を得た。表2に測定、評価結果を示す。
【表4】
【0040】
なお、本発明の製造方法については、上記のようなゲル状組成物配合例や実施例に限定されるものではない。例えば、本発明では、擬塑性付与剤の分子鎖をほどき、分子鎖を凝集させるために、ナノマイザーにて圧力負荷を掛けるが、その圧力負荷を掛ける段階としては、ゲル状組成物配合例のようにゲル状組成物を作成時にナノマイザーにて圧力負荷を掛けても良く、また、ゲル状組成物を作成しないで、最終的に水性ボールペン用インキ組成物を作成後に、ナノマイザーにて圧力負荷を掛けても良く、インキを製造するどの段階でも圧力負荷を掛けても良い。その中でも、筆感を考慮すれば、ゲル状組成物を作成時にナノマイザーにて圧力負荷を掛ける方が、摩擦抵抗を下げ易い傾向があるため、最も好ましい。
【0041】
試験および評価
実施例1〜13及び比較例1〜4で作製した水性インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール径が0.5mm超硬合金ボールのボールを回転自在に抱持したステンレス綱材のチップ本体をチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G−knock)に装着して、本発明の水性ボールペンを得た。尚、筆感、擦過性能試験の評価は、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、以下のような試験方法で評価を行った。
【0042】
筆感:ボールペン用レフィルを室温の環境下、2週間放置後に、手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重く、滑りが悪いもの ・・・×
【0043】
擦過性能試験:紙面上に筆記後、指で擦過し、筆跡乾燥性を観察した。
筆記5秒未満で、筆跡が乾燥したもの ・・・◎
筆記5秒以上、10秒未満で、筆跡が乾燥したもの ・・・○
筆記10秒以上、20秒未満で、筆跡が乾燥したもの ・・・△
筆記20秒以上経過しても、筆跡が乾燥しなかったもの ・・・×
【0044】
表2、3の結果より、実施例1〜13では、筆感、擦過性能ともに良好もしくは、実用上問題のないレベルの性能が得られた。
【0045】
表4の結果より、比較例1、2では、平均粒子径が5.0μm越える擬塑性付与剤を用いたため、筆感がやや重く、筆跡乾燥性が劣っていた。
【0046】
比較例3では、擬塑性付与剤の含有量が少なかったため、筆感がやや重かった。
【0047】
比較例4では、擬塑性付与剤の含有量が多かったため、筆感が悪かった。
【0048】
さらに、ボール径が0.4mm以下のボールを用いたボールペンは、ボールとボール座の接触面積が小さく、単位面積に掛かる荷重が高くなることによる筆感の劣化やボール座の摩耗が進行しやすいので本発明の効果は顕著である。