(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901307
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
F24C 15/00 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
F24C15/00 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-10824(P2012-10824)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-148315(P2013-148315A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】作田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】牛田 善久
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−110876(JP,U)
【文献】
実開昭58−036422(JP,U)
【文献】
特開平10−111726(JP,A)
【文献】
特開2007−188761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作軸を操作することで所定機能が切換または調整される制御手段を操作パネルの内部側に配置し、
前記操作パネルに穿設された軸孔を貫通する軸部を具備する操作つまみを、前記操作パネルの外部側に配置し、
前記軸部と前記操作軸との間を連結部材によって連結し、
前記軸部と前記連結部材と前記操作軸とを、夫々の中心軸が一致する形態で同一直線上に配置して、
前記操作つまみを操作することによって前記所定機能が切換または調整される操作装置であって、
前記軸部より前記操作軸が下方に位置するように、前記中心軸を鉛直方向に対して傾斜する傾斜姿勢に配置し、
前記連結部材には、前記連結部材の前記中心軸方向の両端部の間に、径方向外方へ張り出す鍔を前記連結部材と一体に形成し、
前記両端部のうち、前記軸部と連結される側の第1の端部において、前記軸部の外径が前記連結部材の外径より大きい第1の段差を形成し、
前記両端部のうち、前記操作軸と連結される側の第2の端部において、前記連結部材の外径が前記操作軸の外径より大きい第2の段差を形成し、
前記第1の段差における、前記軸部の前記中心軸に沿う方向の外周面と前記軸部の端面との交差線である第1の稜線の下端、および、前記第2の段差における、前記連結部材の前記中心軸に沿う方向の外周面と前記連結部材の端面との交差線である第2の稜線の下端が、平面視において、前記制御手段の投影形状の外側に位置することを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記制御手段の上方には、前記第1の稜線の下端又は前記第2の稜線の下端から落下する液体を、平面視において、前記制御手段の投影形状の外側に誘導する傾斜面を有するカバー部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体の天板や操作プレートの上面に、軸部に取り付けられた操作つまみが露出して設けられる操作装置において、例えば煮汁等が軸部へ流入することがある調理器具等に好適に適用可能な操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調理器具の天板の上面に軸部に取り付けられた操作つまみが露出する構成の器具の操作装置では、煮こぼれ対策が必要であり、このために、天板部の操作軸部が挿通する透孔の周縁に、上方に突出する環状凸部を形成し、この環状凸部よりも大きな直径の円盤部を具備する操作つまみが、前記透孔に挿通される前記操作軸部に連設一体化されているものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、天板に流下した煮こぼれが、前記環状凸部によって遮断され、また、操作軸部の外周の間隙部は操作つまみの円板部によって遮断され、煮こぼれが、操作軸部の外周間隙から器具内部に流入する不都合が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−116048号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の操作装置では、天板部の操作軸部挿通用の透孔周縁に環状凸部を備え、これを高く設けることにより煮こぼれによる不都合が解消されものの、この環状凸部を上方の操作つまみ側へ突出させる為には加工上の限度があり、この環状凸部を上方の操作つまみ側への突出高さが高く出来ない場合があり、操作つまみ側からの煮こぼれの流入を完全には防止できない。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、操作つまみ側から流入した煮汁等が、操作つまみから軸部を介しこれに連結される制御手段へ到達するという不都合を解消することができる操作装置を提供すること、かつ、装置の簡素化を図った操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、操作軸を操作することで所定機能が切換または調整される制御手段を操作パネルの内部側に配置し、前記操作パネルに穿設された軸孔を貫通する軸部を具備する操作つまみを、前記操作パネルの外部側に配置し、前記軸部と前記操作軸との間を連結部材によって連結し、前記軸部と前記連結部材と前記操作軸とを、夫々の中心軸が一致する形態で同一直線上に配置して、前記操作つまみを操作することによって前記所定機能が切換または調整される操作装置であって、前記軸部より前記操作軸が下方に位置するように、前記中心軸を鉛直方向に対して傾斜する傾斜姿勢に配置し、前記連結部材には、前記連結部材の前記中心軸方向の両端部の間に、径方向外方へ張り出す鍔を前記連結部材と一体に形成し、前記両端部のうち、前記軸部と連結される側の第1の端部において、前記軸部の外径が前記連結部材の外径より大きい第1の段差を形成し、前記両端部のうち、前記操作軸と連結される側の第2の端部において、前記連結部材の外径が前記操作軸の外径より大きい第2の段差を形成し
、前記第1の段差における、前記軸部の前記中心軸に沿う方向の外周面と前記軸部の端面との交差線である第1の稜線の下端、および、前記第2の段差における、前記連結部材の前記中心軸に沿う方向の外周面と前記連結部材の端面との交差線である第2の稜線の下端が、平面視において、前記制御手段の投影形状の外側に位置する点を特徴とする。
【0007】
本発明によると、操作パネルに穿設された、操作パネルの外部側に配置された操作つまみの軸部が貫通する軸孔から、煮こぼれ等の液体が操作つまみの軸部を伝って操作パネルの内部側に浸入した場合にも、操作つまみの軸部の外径が連結部材の外径より大きく形成されている第1の段差における、軸部の中心軸に沿う方向の外周面と軸部の端面との交差線である第1の稜線の下端において、上記第1の稜線を伝って流下する上記煮こぼれ等の液体の一部または全部を落下させることができ、連結部材側に移動する煮こぼれ等の液体の量が減少する。
【0008】
また、連結部材には径方向外方へ張り出す鍔が形成してあるから、連結部材側に移動した煮こぼれ等の液体のうち、連結部材における制御手段の操作軸との連結箇所の側に移動する煮こぼれ等の液体の量はさらに減少する。
【0009】
さらに、煮こぼれ等の液体が鍔を乗り越えて連結部材における制御手段の操作軸との連結箇所の側に移動した場合にも、連結部材の外径が制御手段の操作軸の外径より大きくなっている第2の段差における、連結部材の中心軸に沿う方向の外周面と連結部材の端面との交差線である第2の稜線の下端において、第2の稜線を伝って流下する煮こぼれ等の液体の一部または全部を落下させることができ、操作軸に移動する煮こぼれ等の液体の量はさらに減少させることが可能となり、制御手段への、煮こぼれ等の液体の浸入を抑制することが出来る。
【0010】
つまり、請求項1記載の発明によれば、連結部材に径外に張り出す鍔を設け、操作つまみの軸部から連結部材へと段落ちとなる段差を形成して操作つまみの軸部と連結部材とを連結し、連結部材から制御手段の操作軸へと段落ちとなる段差を形成して連結部材と制御手段の操作軸とを連結し、操作つまみの軸部より制御手段の操作軸が下方に位置するように傾斜姿勢に配置するだけの簡単な構成で、操作パネルに穿設された軸孔から浸入した煮こぼれ等の液体の、制御手段への浸入を抑制することが出来る。
【0012】
また、請求項1記載の発明によれば、上記第1の稜線の下端や上記第2の稜線の下端から落下した煮こぼれ等の液体が、制御手段上に落下することが抑制されるから、操作パネルに穿設された軸孔から浸入した煮こぼれ等の液体の、制御手段への浸入
を効果的に抑制することが出来る。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記制御手段の上方には、前記第1の稜線の下端又は前記第2の稜線の下端から落下する液体を、平面視において、前記制御手段の投影形状の外側に誘導する傾斜面を有するカバー部材が配置されている点を特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、制御手段の上方には、上記第1の稜線の下端又は上記第2の稜線の下端から落下する液体を、平面視において、制御手段の投影形状の外側に誘導する傾斜面を有するカバー部材が配置されているから、上記第1の稜線の下端や上記第2の稜線の下端から落下した煮こぼれ等の液体が、制御手段上に落下することが抑制され、操作パネルに穿設された軸孔から浸入した煮こぼれ等の液体の、制御手段への浸入を、請求項1記載の発明の効果に加えて、さらに効果的に抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明によれば、操作パネルに穿設された軸孔から浸入した煮こぼれ等の液体が制御手段に浸入することを、簡単な構成で、効果的に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である一口型ガスコンロの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態の操作装置を備えたガス器具の一例である一口型のガスコンロが示されている。このガスコンロは、箱形に形成されたコンロ本体01の上端に矩形パレット状のトッププレート02を連結し、キッチンカウンターの上面に形成された矩形開口にコンロ本体01を上方から嵌め込み装着してトッププレート02の周部をキッチンカウンターに載置支持して設置される、いわゆるドロップイン式に構成されたものであり、コンロ本体01に組み付けられたコンロバーナ03がトッププレート02の中央開口に臨んで配備され、また、トッププレート02上には五徳04が載置されている。
【0019】
トッププレート02は、プレス加工した薄鋼板の表面全体に琺瑯処理が施されたものであり、その前側一部が局部的に上方向に膨出されて、ここに斜め前方上方に向かう操作パネル05がトッププレート02と一体に形成されている。
【0020】
操作パネル05の外側には、コンロバーナ03の点/消火および火力調節を行う操作つまみ06が左右回動操作可能に装備されると共に、その操作位置を示す操作位置表示用の表示部材07が装着されている。なお、操作つまみ06は射出成型による樹脂成型品により形成されている。
【0021】
図2は本発明に係る主要部を示す上記ガスコンロの縦断側面図であり、
図2に示すように、コンロ本体01の内側で操作パネル05の内部側には、コンロバーナ03に燃料ガスを供給したりコンロバーナ03への燃料ガスの供給量を調節したりするための制御手段(ガス量制御装置)15が配置されており、制御手段(ガス量制御装置)15に具備する操作軸14を回動操作することで燃料ガスを供給、しゃ断したりコンロバーナ03への燃料ガスの供給量を調節したりする所定機能が切換または調整される。
【0022】
操作つまみ06の軸部09が、操作パネル05に穿設された軸孔08を貫通して、操作パネル05の内部側で、射出成型による樹脂成型品により形成された連結部材10の第1の端部11と連結されており、連結部材10の第2の端部13が制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14と連結されており、操作つまみ06を回動操作することによって制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14が回動して燃料ガスを供給、しゃ断したりコンロバーナ03への燃料ガスの供給量を調節したりする所定機能が切換または調整される。
【0023】
なお、操作つまみ06の軸部09と連結部材10と制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14は、夫々の中心軸が一致する形態で同一直線上に配置されており、操作つまみ06の軸部09より制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14が下方に位置するように、操作つまみ06の軸部09、連結部材10、制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14夫々の中心軸を鉛直方向に対して傾斜する傾斜姿勢に配置し、連結部材10には、第1の端部11と第2の端部13の両端部の間に、径方向外方へ張り出す鍔12が一体に形成されている。
【0024】
また、連結部材10の第1の端部11において、操作つまみ06の軸部09の外径が連結部材10の外径より大きい第1の段差を形成し、連結部材10の第2の端部13において、連結部材10の外径が制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14の外径より大きい第2の段差を形成している。
【0025】
上記第1の段差における、操作つまみ06の軸部09の中心軸に沿う方向の外周面と操作つまみ06の軸部09の端面との交差線である第1の稜線の下端18、および、上記第2の段差における、連結部材10の中心軸に沿う方向の外周面と連結部材10の端面との交差線である第2の稜線の下端19は、平面視において、制御手段(ガス量制御装置)15の投影形状の外側に位置している。
【0026】
上述のように構成してあるから、操作パネル05の外部側に配置された操作つまみ06の軸部09が貫通する、操作パネル05に穿設された軸孔08から煮こぼれ等の液体が操作つまみ06の軸部09を伝って操作パネル05の内部側に浸入した場合にも、連結部材10の第1の端部11において操作つまみ06の軸部09の外径が連結部材10の外径より大きくなって形成されている上記第1の段差では、第1の稜線の下端18において、第1の稜線を伝って流下する上記煮こぼれ等の液体の一部または全部を落下させることができ、連結部材10の側に移動する煮こぼれ等の液体の量が減少する。
【0027】
また、連結部材10には径方向外方へ張り出す鍔12が形成してあるから、連結部材10の側に移動した煮こぼれ等の液体のうち、連結部材10の第1の端部11から第2の端部13側に移動する煮こぼれ等の液体の量はさらに減少する。
【0028】
さらに、煮こぼれ等の液体が鍔12を乗り越えて連結部材10の第2の端部13の側に移動した場合にも、連結部材10の外径が制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14の外径より大きくなっている上記第2の段差における、第2の稜線の下端19において、第2の稜線を伝って流下する煮こぼれ等の液体を落下させることができ、制御手段(ガス量制御装置)15の操作軸14に移動する煮こぼれ等の液体の量はさらに減少させることが可能となり、制御手段(ガス量制御装置)15への、煮こぼれ等の液体の浸入を抑制することが出来る。
【0029】
また、制御手段(ガス量制御装置)15の上方には、第2の稜線の下端19から落下する煮汁等の液体を、平面視において制御手段(ガス量制御装置)15の投影形状の外側に誘導する傾斜面16を有し制御手段(ガス量制御装置)15の上方全体を覆うカバー部材17が配置されており、コンロ本体01が多少傾いて設置されたときにも、操作パネル05に穿設した軸孔08から煮汁等の液体がコンロ本体01内に浸入して、第2の端部13から落下しても、制御手段(ガス量制御装置)15への煮汁等の液体の流動が抑制され好都合である。
〔別実施形態〕
【0030】
(1)上記実施形態では、カバー部材17が制御手段(ガス量制御装置)15の上方全体を覆うように構成されているが、カバー部材17が制御手段(ガス量制御装置)15の上方全体を覆うようには構成されていない実施形態であってもよい。
【0031】
(2)上記実施形態では、本発明が一口型ドロップイン式ガスコンロに適用される場合を示したが、適用される製品には限定されず、種々の製品に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
01 コンロ本体
02 トッププレート
03 コンロバーナ
04 五徳
05 操作パネル
06 操作つまみ
07 表示部材
08 軸孔
09 軸部
10 連結部材
11 第1の端部
12 鍔
13 第2の端部
14 操作軸
15 制御手段(ガス量制御装置)
16 傾斜面
17 カバー部材
18 第1の稜線の下端
19 第2の稜線の下端