(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の分割型(2)が夫々つくるキャビティ用凹部(20)の型面(21)に夫々フィットする袋主要部(30)を設け、さらに型割面(25)に載るフランジ部(35)を延設させた一対のフィルム製袋状体(3)を予備成形し、且つ両袋状体(3)の少なくとも片方は、型面(21)へのセットで、相手型側を上とした場合、該フランジ部(35)に、凹部外周縁(22)寄りの型割面(25)から凹部(20)側へ向けて上昇傾斜面(38a)を有する浮き上がり部分(38)が凹部外周縁(22)に沿って設けられると共に、該袋主要部(30)には、該浮き上がり部分(38)の先端(38d)につながるよう、凹部の外周縁(22)又は外周縁近くから、凹部(20)の上方へ向けて内方傾斜する延在部分(31)が凹部外周縁(22)に沿って設けられる一方、該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)は該凹部外周縁(22)沿いの一部分でなくすことにより余剰発泡ガスの逃し路(39)が形成されて、
両分割型(2)に一対の該袋状体(3)をセットした後、該袋主要部(30)の袋内に発泡原料(5a)を注入し、その後、型閉じで、前記浮き上がり部分(38)をその形状付勢力に抗して凹部(20)側へ倒し型割面(25)に当接させて、発泡成形し、しかる後、脱型し、前記袋状体(3)を剥がして発泡成形品(5)を得ることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
型閉じにより発泡成形品(5)のキャビティ(4)を形成する一対の分割型(2)と、両分割型(2)に係るキャビティ用凹部(20)の型面形状に夫々沿う袋主要部(30)を設け、さらに該凹部(20)の外周縁(22)を越えて分割型(2)の型割面(25)へと延在するフランジ部(35)を設けて予備成形された一対のフィルム製袋状体(3)と、を備える袋状体付き発泡型であって、
一対の前記袋状体(3)の少なくとも片方は、型面(21)へのセットで、相手型側を上とした場合、フランジ部(35)が前記凹部(20)の外周縁(22)に近い部位を起点(381)に型割面(25)から浮き上がって、凹部(20)側へ向け上昇傾斜面(38a)を有して、その先端(38d)が凹部(20)の上方域に達する浮き上がり部分(38)を形成すると共に、前記袋主要部(30)には該先端(38d)につながるよう、凹部の外周縁(22)又は外周縁近くから、凹部の上方へ向けて内方傾斜する延在部分(31)が設けられ、且つ該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)が、該凹部の外周縁(22)に沿って配設される一方、該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)の一部分はなくして余剰発泡ガスの逃し路(39)が形成されたことを特徴とする発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1,2は、いずれもフィルムを使って離型剤がいらないようにするが、以下のような問題があった。発泡成形時に、分割型の型割面側へ発泡原料が依然として漏れ出し、バリが発生する問題を解消できなかった。特許文献3は、その請求項2で「前記分割型の型割面において前記樹脂シートと前記一方の型との間には弾性シール材が弾性変形するように構成された」成形方法を開示するが、弾性シール材が別途必要になり、さらに実際に該弾性シール材を設置するには、詳細な説明に記載のごとく型割面にキャビティを一周するシール材用リング溝を形成しなければならず、型構造が複雑化するなど高コストになる傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、離型剤塗布を不要にし、さらに弾性シール材等の別部材に頼らず、バリをなくす発泡成形品の製造方法及び発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、一対の分割型(2)が夫々つくるキャビティ用凹部(20)の型面(21)に夫々フィットする袋主要部(30)を設け、さらに型割面(25)に載るフランジ部(35)を延設させた一対のフィルム製袋状体(3)を予備成形し、且つ両袋状体(3)の少なくとも片方は、型面(21)へのセットで、
相手型側を上とした場合、該フランジ部(35)に、凹部外周縁(22)寄りの型割面(25)から凹部(20)側へ向けて上昇傾斜面(38a)を有する浮き上がり部分(38)が
凹部外周縁(22)に沿って設けられ
ると共に、該袋主要部(30)には、該浮き上がり部分(38)の先端(38d)につながるよう
、凹部の外周縁(22)又は外周縁近くから、凹部(20)の上方へ向けて内方傾斜する延在部分(31)が
凹部外周縁(22)に沿って設けられる
一方、
該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)は該凹部外周縁(22)沿いの一部分でなくすことにより余剰発泡ガスの逃し路(39)が形成されて、両分割型(2)に一対の該袋状体(3)をセットした後、該袋主要部(30)の袋内に発泡原料(5a)を注入し、その後、型閉じで、前記浮き上がり部分(38)を
その形状付勢力に抗して凹部(20)側へ倒し型割面(25)に当接させて、発泡成形
し、しかる後、脱型し、前記袋状体(3)を剥がして発泡成形品(5)を得ることを特徴とする発泡成形品の製造方法にある。請求項2の発明たる発泡成形品の製造方法は、請求項1で、一対の前記フィルム製袋状体(3)の両方に、前記浮き上がり部分(38)及び延在部分(31)が形成されることを特徴とする。請求項3に記載の発明の要旨は、型閉じにより発泡成形品(5)のキャビティ(4)を形成する一対の分割型(2)と、両分割型(2)に係るキャビティ用凹部(20)の型面形状に夫々沿う袋主要部(30)を設け、さらに該凹部(20)の外周縁(22)を越えて分割型(2)の型割面(25)へと延在するフランジ部(35)を設けて予備成形された一対のフィルム製袋状体(3)と、を備える袋状体付き発泡型であって、一対の前記袋状体(3)の少なくとも片方は、型面(21)へのセットで、
相手型側を上とした場合、フランジ部(35)が前記凹部(20)の外周縁(22)に近い部位を起点(381)に型割面(25)から浮き上がって、凹部(20)側へ向け上昇傾斜面(38a)を有して、その先端(38d)が凹部(20)の上方域に達する浮き上がり部分(38)を形成する
と共に、前記袋主要部(30)には該先端(38d)につながるよう
、凹部の外周縁(22)又は外周縁近くから、凹部の上方へ向けて内方傾斜する延在部分(31)が設けられ、且つ該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)が、該凹部の外周縁(22)に沿って配設される
一方、該延在部分(31)及び前記浮き上がり部分(38)の一部分はなくして余剰発泡ガスの逃し路(39)が形成されたことを特徴とする発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型にある。
【0007】
請求項1,3の発明のごとく、浮き上がり部分,延在部分を設けた袋状体であると、それらの予備成形に伴う形状付勢力に抗して倒し型閉じすることになるので、復元力が働き、浮き上がり部分,延在部分によるシール力が高まる。したがって、その後の発泡成形過程で、浮き上がり部分からの発泡原料の漏出が抑えられる。袋状体に自己シール性が付与されるので、弾性シール材及びこれを設置するリング溝等を別途要しない。本発明のごとく、凹部外周縁寄り型割面から凹部側へ向けて上昇傾斜面や、凹部の外周縁又は外周縁近くから、凹部の上方へ向けて内方傾斜する延在部分が設けられると、型閉じで、浮き上がり部分,延在部分の形状を崩すことなく、浮き上がり部分を上昇傾斜面の傾斜方向に円滑に倒すことができる。脱型後、浮き上がり部分,延在部分は、予備成形されたときの形状に難なく復元可能になる。袋状体は繰り返し使用に耐える。
そして、ポリウレタン原料等の接着性発泡原料であっても、該袋主要部を介在させ、その袋内に発泡原料を注入し発泡成形するので、従来のような離型剤塗布はいらなくなる。
請求項2の発明のごとく、フィルム製袋状体の両方に、前記浮き上がり部分及び延在部分が形成されると、型閉じで、両浮き上がり部分が備わることによってシール性が一段と高まるので、バリレスが強化され、バリ除去等の後作業をなくし且つ製品の品質向上を果たす。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡成形品の製造方法及び発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型は、袋状体に浮き上がり部分及び延在部分を設けることによって、離型剤塗布を不要にするにとどまらず、袋状体に自己シール性が付与され、弾性シール材等の別部材に頼らずにバリを極力なくすことができ優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜
図9は本発明の発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型の一形態で、
図1は発泡成形品の製法に用いる発泡型と袋状体の断面図、
図2は
図1の分割型に袋状体をセットした断面図、
図3は
図2の分割型に発泡原料を注入し型閉じした断面図、
図4は型閉じする様子を示した拡大図、
図5は
図3の型閉じ後、発泡成形品を発泡成形した断面図、
図6は
図2のVI-VI線矢視図、
図7は
図5の後の脱型で取り出した発泡成形品の斜視図、
図8は(イ)が
図4の袋状体で、型閉じ直前の拡大図、(ロ)が(イ)で一方の袋状体にのみ浮き上がり部分と延在部分を設けた拡大図、
図9は実施例で用いた袋状体の部分拡大図である。尚、各図は袋状体を判り易くするため、その厚みを大きく描く。
【0011】
(1)発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型
発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型は、一対の分割型2とフィルム製袋状体3とを具備する(
図1)。ここでは、
図7のような発泡成形品5を製造する上下対称の袋状体付き発泡型1とする。
【0012】
発泡型は一対の分割型2からなり、一の分割型たる下型2aと、他の分割型たる上型2bとを備え、下型2aに対し上型2bがヒンジ2cを支点に回動自在とする。両分割型2が夫々キャビティ用凹部20を有し、型閉じにより発泡成形品5のキャビティ4を形成する。発泡型自体は公知である。
【0013】
袋状体3は、予備成形で、フィルムから両分割型2の夫々のキャビティ用凹部20の型面形状に沿う袋主要部30を設け、さらに該凹部外周縁22を越えて分割型2の型割面25へと延在するフランジ部35を設けた立体賦形品である。一対の分割型2が夫々つくるキャビティ用凹部20の型面21に夫々フィットする袋主要部30を設けて、両分割型2に対応させた一対の袋状体3とする。
そうして、少なくとも一方の袋状体3は、型面21へのセットにより、フランジ部35がパーティング面たる型割面25から浮き上がるよう設定される。凹部20の外周縁22に近い部位を起点381に、凹部20側へ向け上昇傾斜面38aを有して、先端38dが凹部20の上方域に達する浮き上がり部分38が設けられる。また、型面21への袋状体3のセットで、袋主要部30には、該先端38dにつながるよう、袋主要部30が凹部20の外周縁22又は外周縁近くから凹部20の上方へ向けて内方傾斜する延在部分31が設けられる。フィルムから袋状体3を造る真空成形や圧空成形等の予備成形で、該浮き上がり部分38と該延在部分31とからなる突条膨らみ部3Tが一緒に成形されている。突条膨らみ部3Tは、分割型2への袋状体3のセットで、その大半が凹部外周縁22沿いの型割面25側に配設される。
【0014】
ここで、上型用袋状体3bに関しては、開口201が下向きになっており、本発明でいう「型割面25から凹部20側へ向けて上昇傾斜面38aを有する」とは、型割面25から凹部20側へ進むのに伴い
、凹部開口201よりも外方に在る地点を目指し、
凹部開口201から離れていく傾斜面を有するを指す。下型用袋状体3aに関していえば、「凹部20側へ向け上昇傾斜面38a」は、
図2の円内拡大図で水平配設される型割面25に対し、図面左側に在る凹部20に向け、文字通り左肩上がりの上昇傾斜面になる。また、「凹部の外周縁22又は外周縁近くから上方へ向けて凹部20側へ内方傾斜する」は、凹部の外周縁22又は外周縁近くから、凹部20よりも突き出して配される袋主要部30の先端30aが、そのつながる浮き上がり部分先端38dへ向けて凹部20中央側へ傾倒することを指す。
【0015】
一対の袋状体3には、凹部外周縁22に沿う環状の突条膨らみ部3Tが夫々設けられる(
図2,
図6)。但し、突条膨らみ部3Tは両方共に凹部20寄りの型割面25で、凹部20を全周に亘って取り囲むことはなく、両突条膨らみ部3Tの少なくとも片方に、
図6のごとく凹部外周縁22に沿う突条膨らみ部3Tの一部分をなしにし、ここに発泡成形時の余剰発泡ガスの逃し路39を形成する。
【0016】
袋状体3は、硬質又は軟質ポリウレタンからなる発泡成形品5に対して、接着性を有しないフィルムで造られる。例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等、又はこれらを混合させたポリオレフィン系の非極性樹脂素材で造られる。尚、本発明でいうフィルム製袋状体3の「フィルム」にはフィルムよりも厚みのあるシートを含む。
【0017】
(2)発泡成形品の製造方法
発泡成形品5の製造方法は、前記袋状体付き発泡型1を用いて、次のように行われる。
図7ごとくの発泡成形品5を以下のように製造する。
製造に先立ち、一対の前記分割型2と共に一対の前記袋状体3を準備する(
図1)。下型2a,上型2bが夫々つくるキャビティ用凹部20の型面21に夫々フィットする袋主要部30を設け、さらに型割面25に載るフランジ部35を延設させた一対のフィルム製袋状体3を予備成形し準備する。
ここで、両袋状体3のフランジ部35には、型面21へのセットで、凹部外周縁22寄り型割面25から凹部20側へ向けて上昇傾斜面38aを有する浮き上がり部分38を備える。また、該袋主要部30には、凹部外周縁22又は凹部外周縁22近くから、該上昇傾斜面38aの先端38dにつながる延在部分31が、凹部20の上方へ向け内方傾倒して延びる。袋状体3の予備成形で、浮き上がり部分38と延在部分31とからなる突条膨らみ部3Tが形成される。袋状体3は、型面21,型割面25にセットしても、凹部20周りの型割面25との間で隙間εを発生させ(
図2)、突条膨らみ部3Tが型割面25から浮き上がるよう予備成形される。
【0018】
本製法では、一の分割型たる下型2aの凹部20と他の分割型たる上型2bの凹部20が同形状で、且つ下型2a,上型2bに対応する一対の袋状体3も、突条膨らみ部3T,逃し路39を設けた同形状品とする。
【0019】
発泡成形品5の製造方法は、まず型開状態下、下型2a,上型2bに形成された夫々のキャビティ用凹部の型面21に、準備した一対の袋状体3をセットする(
図1)。型面21に袋状体3の袋主要部30が納まり、袋主要部30から凹部外周縁22を乗り越えるフランジ部35が型割面25に載ってセットされる(
図2)。
このとき、浮き上がり部分38が、
図2の円内拡大図のごとく型割面25から浮いた状態にある。フランジ部35は主部分36が型割面25に当接するが、凹部外周縁22に近づく地点で型割面25から離れて鋭角の角度θで凹部20へ向け上昇傾斜面38aを形成し、さらにその先で平坦面38bを形成して、平坦面先端(浮き上がり部分先端38d)が凹部20の上方域に達する。また、袋主要部30は凹部型面21にフィットして納まるが、前記延在部分31が凹部の外周縁22近くから型面21を離れ、凹部20の上方へ向け内方傾斜する。この延在部分31と前記浮き上がり部分38とがつながって出来る突条膨らみ部3Tは、凹部外周縁22寄りの型割面25から浮上し、凹部外周縁22に沿う堤状姿態になる。
【0020】
続いて、袋主要部30の袋内(具体的には下型2aの袋主要部30内)に発泡原料5aを注入する(
図2)。ここでは、下型2a,上型2bに対応する袋状体3を夫々セットした後、型開状態下、下型2aの凹部型面21にフィットさせた袋主要部30の袋口301へノズルNを移動し、該ノズルNから発泡原料5aを該袋主要部30内へ所定量注入する。
【0021】
次いで、ヒンジ2cを支点に上型2bを回動させ、該上型2bを下型2aに被せて型閉じする。予備成形に伴う浮き上がり部分38の形状付勢力に抗して、上型2bと下型2aとが型閉じし閉まることによって、両浮き上がり部分38が凹部20側に倒され型割面25に密着する。突条膨らみ部3Tの延在部分31は凹部20の上方へ向け内方傾斜し、且つ突条膨らみ部3Tの浮き上がり部分38が凹部20に向けて上昇傾斜面38aを有しているので、型閉じによって該浮き上がり部分38はそのまま上昇傾斜面38aの傾斜側、すなわち凹部20側へ倒れる。該浮き上がり部分38と型割面25との間にあった隙間εがなくなり、両者が当接する。浮き上がり部分38の先端38dが凹部20へ向けて少し突き出す格好になる(
図3)。
【0022】
図4で、型閉じに伴う突条膨らみ部3T周りの形状変化を、より詳しく説明する。尚、
図4は、
図1〜
図3に代えて、平坦面38bを形成した先にさらに屈曲点を介し下り面38cを形成した浮き上がり部分38とし、下り面先端38c(浮き上がり部分先端38d)が延在部分31につながる。
図4(イ)の白抜き矢印方向に向かう型閉じで、まず両型が近づき、突条膨らみ部3T同士が接触する。本実施形態の両袋状体3は同形状であり、最初に平坦面38b同士が当たる。その後、型閉じ進行で、両型がさらに近づくことによって、
図4(ロ)のように両突条膨らみ部3Tの上昇傾斜面38a,平坦面38b,下り面38cの接続部分で折れ曲がっていた箇所が押し広げられる。
突条膨らみ部3Tには、凹部20側へ向けて上昇傾斜面38aを有する浮き上がり部分38があるので、型閉じ進行に伴い、浮き上がり部分38が型割面25へ押え付けられ凹部20側に倒れる。また袋主要部30の延在部分31は、凹部外周縁22近くから凹部20の上方へ向け内方傾斜するので、浮き上がり部分38の動きに合わせて内方傾斜角度を大きくして傾倒する。
さらに進むと、当初、上昇傾斜面38aと平坦面38bと下り面38cが夫々の接続箇所で折れ曲っていたのが、
図4(ハ)のごとく略まっすぐに伸び、浮き上がり部分38が型割面25に当接,密着する一方、延在部分31は凹部20内へより大きく傾倒する。該浮き上がり部分38と延在部分31が折り畳まれる格好になって、型閉じが完了する。斯かる型閉じ状態下、予備成形で突条膨らみ部3Tは、
図4(イ)の形状に賦形されていることから、元の状態に戻ろうとする復元付勢力が働いている。
【0023】
型閉じ後、
図7ごとくのウレタン発泡成形品5を成形する。発泡成形で、発泡圧を伴った発泡原料5aが袋状体3からフランジ部35側へ漏出しようとしても、型閉じで押し倒され、元の状態に戻ろうとしている突条膨らみ部3Tの復元力がシール機能を高めて阻止する。突条膨らみ部3Tは凹部の外周縁22沿いに配設しており、突条膨らみ部3Tが在る凹部外周縁22でのバリ発生をなくす。
尚、下型2a,上型2bへの袋状体3のセット時に、型面21と袋主要部30との間に空気が入り込んでいても、発泡成形過程の発泡圧でその空気を下型2a,上型2bの隙間から追い出し、袋主要部30が夫々の型面21に密着する。また、袋主要部30内に余剰の発泡ガスが発生しても、逃し路39からガス抜きが円滑に行われて(
図6)、所望のウレタン発泡成形品5が発泡成形される。
【0024】
発泡成形を終え、発泡硬化の確認後、発泡成形品5を発泡型から取り出す。ヒンジ2cを中心に上型2bを回動させ型開して、発泡成形品5を脱型する。袋状体3を剥がして、所望の発泡成形品5を得る。
脱型時に、型閉じで押し倒されていた突条膨らみ部3Tは、予備成形に伴う弾性復元力で起き上がり、元の
図1,
図2の状態に戻る。その後、前記手順を繰り返し、発泡成形品5を次々と製造していくこととなる。
【0025】
袋状体3に関しては、
図1〜
図7の上記実施形態に代え、
図8(ロ)のような袋状体3も採用できる。例えば、
図8(イ)は
図4の型閉じ直前図を示し、本実施形態は突条膨らみ部3Tを一対の袋状体3の両方に設けていたが、
図8(ロ)のように片方の袋状体3にのみ突条膨らみ部3Tを設けてもよい。片方の袋状体3に突条膨らみ部3Tを設けただけでも、両方のときに比べ多少弱まるが、前記シール機能を高められるからである。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の一実施例について
図9で説明する。一対の分割型2は
図1〜
図6と同形状とし、一対の袋状体3は突条膨らみ部3T以外、
図1〜
図3のものと同形状する。突条膨らみ部3Tは、
図9(イ)のごとく浮き上がり部分38の全てが上昇傾斜面38aになっており、
図2や
図4のものよりも単純化させたものである。浮き上がり部分38の起点381から凹部外周縁22までの距離hを約20mm、上昇傾斜面38aが凹部20に突き出す距離iを約2mm、型割面25から上昇傾斜面38aの先端(浮き上がり部分先端38d)までの高さeを約1mm、セット時に袋主要部30の延在部分31が型面から離れる地点から凹部20外周面までの距離fを約2mmとした。
この突条膨らみ部3Tを有する袋状体3は、ポリプロピレン樹脂にポリエチレン樹脂を部分混合させたオレフィン系材料の0.5mm厚フィルムを用いて、真空成形で予備成形したものである。
【0027】
前記発泡成形品の製造方法と同じく、一対の分割型2に一対の上記袋状体3を夫々セットした後(
図9のイ)、袋主要部30の袋内に発泡原料5aを注入し、型閉じし、
図9(ロ)のごとく突条膨らみ部3Tの浮き上がり部分38を凹部20内側に倒し、型割面25へ押え付けて発泡成形した。その後、脱型し、発泡成形品5を取り出した。突条膨らみ部3Tを設けた箇所の発泡成形品5にはバリが見られなかった。型閉じ,発泡成形時に、凹部外周縁22周りに設けた突条膨らみ部3Tの復元付勢力によってシール機能が高められ、バリレスになったと考えられる。
また、脱型で、型が開いた時に、押え付けられ面状になっていた突条膨らみ部3Tが、再び
図9(イ)の立体形状に復起し、次の発泡成形のスタンバイ状態になるのを視認した。さらに、同一袋状体3を使って、50〜60ショット程度繰り返したが、いずれもバリレスの発泡成形品5を成形できた。フィルム状袋状体3は60ショット程度で老朽化し交換した。その交換時点まで、突条膨らみ部3Tの弾性復元力を維持でき、シール機能が発揮された。
【0028】
(3)効果
このように構成した発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型1は、一対の分割型2と一対の袋状体3を備えて、袋主要部30の袋内に発泡原料5aを注入して発泡成形するので、離型剤塗布を要しない。接着性発泡原料5aであっても、ポリプロピレン樹脂等の非極性樹脂フィルムを使って予備成形された袋状体3が介在し、型に発泡原料5aが直接接することがないので、型面に離型剤を塗布しなくても済む。
【0029】
また、上昇傾斜面38aを有する浮き上がり部分38と内方傾斜する延在部分31とが設けられた袋状体3の形状に立体賦形されているので、型閉じに伴い、浮き上がり部分38が凹部20側へ円滑に倒れ、型割面25に当接する。仮に、斯かる構成に代え、
図2の円内拡大図で上昇傾斜面38aを垂直起立させ、また延在部分31も垂直起立させて断面冂形にすると、型閉じで押し潰されてシワになり、後述する脱型時に元の状態への復起が困難となる。上昇傾斜面38aや延在部分31があることで、浮き上がり部分38がそのまま凹部20側へ倒れ易くなっている。浮き上がり部分38と延在部分31とのつなぎ部分が屈折しているので、ここで折り畳まれていく。浮き上がり部分38に上昇傾斜面38a、平坦面38bや下り面38cが存在しても、型閉じで、それらが真っ直ぐに延び平坦化するだけである。立体付形された浮き上がり部分38や延在部分31が、型閉じでその形状が大きく壊されたり崩されたりすることはない。
【0030】
そして、予備成形に伴う浮き上がり部分38,延在部分31の形状付勢力に抗して、浮き上がり部分38を凹部20側へ倒し型割面25に当接させて型閉じするので、型閉じ下、浮き上がり部分38,延在部分31は元の立体形状に戻ろうとする復元力が働く。浮き上がり部分38と延在部分31とからなる突条膨らみ部3Tが、型閉めに伴い弾性変形し、その反力で相手方袋状体3を押圧する。袋状体3を型面にセットし、型閉じすると、袋状体3に設けた突条膨らみ部3Tが弾性変形し自己シール性を発揮する。したがって、その後の発泡成形では、突条膨らみ部3Tの元に戻ろうとする反力がシール性を高め、発泡原料5aの漏出を防ぐ。凹部外周縁22に沿う環状の突条膨らみ部3Tが設けて、バリを極力なくすことができる。
【0031】
しかも、突条膨らみ部3Tは袋状体3の予備成形時に一体成形できるので、別途新たな部材は必要ない。特許文献3のごとく、別体の弾性シール材を設け、さらに弾性シール材取付け用のリング溝を要しない。本発明は低コスト対応できる。
加えて、別体の弾性部材の場合は耐性寿命で交換が必要になるが、袋状体3に一体成形で突条膨らみ部3Tが組み込まれているので、袋状体3の交換に伴い、自動的に新品の突条膨らみ部3Tとなる。袋状体3付き発泡型1を用いた発泡成形品5の製造方法は、60ショット程度で袋状体3を交換するので、袋状体3の交換に伴って突条膨らみ部3Tが新たになり、自己シール性を永続して発揮でき極めて合理的,有益な発明になっている。
【0032】
尚、得られた発泡成形品5には、
図7のごとく本体51に突条膨らみ部3Tによる線状窪み52ができるが、バリ92のように本体51から突出するのでなく、ヘッドレスト,アームレストの軟質発泡体にあっては後被せで隠れるので、何ら問題ない。エネルギ吸収材としての硬質発泡体も、製品内部,部品内部に組み込まれるので、問題にならない。
【0033】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。分割型2,袋状体3,袋主要部30,フランジ部35,発泡成形品5等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。