【実施例】
【0017】
以下、本発明に係る噛合チェーンユニットを図面に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の一実施例に係る噛合チェーンユニットを組み込んだ噛合チェーン式進退作動装置の斜視図であり、
図2は、
図1における駆動用スプロケット近傍の拡大斜視図であり、
図3は、本発明の一実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、
図4は、相互に噛み合った外歯プレート同士の平面図であり、
図5は、凸状噛合面及び凹状噛合受面付近のプレート端面構成を示した平面図であり、
図6は、
図5に示したプレート端面構成の詳細図であり、
図7は、本発明の他の実施例に係る噛合チェーンユニットの斜視図であり、
図8は、
図7で相互に噛み合った外歯プレート同士の平面図である。
【0018】
まず、
図1に示すように、本発明の一実施例である噛合チェーンユニット100は、重量物などの被駆動物(図示しない)を搭載する昇降フレーム等の被駆動体MFを設置面GNDに対して垂直に昇降させるために、設置面GNDに据え置き状態で設置された噛合チェーン式進退作動装置Eに組み込まれて使用されるものである。
【0019】
図1及び
図2に示すように、噛合チェーン式進退作動装置Eは、設置面GNDに据え付けたベースフレームBFと、同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の同期歯車SGと、同一面内で対をなして対向することで駆動スプロケット対を構成する複数の駆動用スプロケットSと、これら駆動用スプロケットSにより駆動されて被駆動体MFを昇降駆動する噛合チェーン100A、100Aからなる噛合チェーンユニット100と、この噛合チェーンユニット100の上端に固定されて一体に昇降する被駆動体MFと、駆動用スプロケットSを駆動する駆動モータMと、減速機Gと、噛合チェーンユニット100の内股領域に配置されて噛合チェーン100A、100Aをガイドする内股ガイドIGと、チェーン収納ガイドRGとを基本的な装置構成として備えている。
【0020】
次に、
図3乃至
図6を参照しながら、噛合チェーンユニット100の構成を詳細に説明する。
なお、本実施例の噛合チェーンユニット100では、外歯プレート120を例示して説明し、内歯プレート110の具体的な形態については、この外歯プレート120の符号120番台の数字を110番台の数字に置き換えることによって、内歯プレート110の説明を省略する。
また、
図4乃至
図6では、複数の内歯プレート110及び複数の外歯プレート120の参照符号に小文字アルファベットa、b、cを付すことにより、複数の内歯プレート110及び複数の外歯プレート120のうちチェーン長手方向に沿って相互に隣り合う内歯プレート同士や外歯プレート同士を区別している。
【0021】
図3に示すように、本実施例の噛合チェーンユニット100は、左右一対で配置される内歯プレート110、110からなる内リンクユニット110Uとこの内リンクユニット110Uの外側に配置される外歯プレート120とを連結ピン130によりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された一対の噛合チェーン100A、100Aを備えている。
【0022】
また、噛合チェーン100Aは、外歯プレート120の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン130により内歯プレート110及び外歯プレート120をチェーン長手方向に多数連結したものである。
そして、噛合チェーン100Aは、連結ピン130を挿嵌するブシュ140とこのブシュ140を遊嵌するローラ150とを備えて構成されている。
噛合チェーンユニット100は、ローラ150に係合する駆動用スプロケットSにより駆動される。
【0023】
図4乃至
図6に示すように、噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン100A、100Aにおいて対向する内歯プレート110同士及び外歯プレート120同士で相互に噛み合う凸状噛合面121c、121a、111c、111a及び凹状噛合受面122a、122c、112a、112cが、対向する内歯プレート110c、110a同士及び外歯プレート120c、120a同士にそれぞれ形成され、対向する内歯プレート110c、110a同士および外歯プレート120c、120a同士をそれぞれ対向させて噛み合わせる。
【0024】
次に、
図4乃至
図6を参照しながら、本実施例の噛合チェーンユニット100が最も特徴とする内歯プレート110及び外歯プレート120の具体的な形態について説明する。
図4及び
図6に示すように、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、凸状噛合面121cの曲率が、凹状噛合受面122aの曲率より大きい、すなわち凸状噛合面121cの曲率半径Rcが、凹状噛合受面122aの曲率半径Raより小さくなっている。これにより、極端な偏荷重に起因した大きな引張応力が凹状噛合受面122aに作用しない。
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、凹状噛合受面122a及び凸状噛合面121cの上述した関係と同様に、極端な偏荷重に起因した大きな引張応力が凹状噛合受面122cに作用しないため、凹状噛合受面122cの底部122cBに凸状噛合面121aの先端部121aTが作用することによる応力集中が生じない。
【0025】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、内歯プレート110及び外歯プレート120に形成された凸状噛合面111、121と凹状噛合受面112、122とが、直線状平坦面114、124を介して連なっている。
これにより、噛合チェーンユニット100は、対向する直線状平坦面114、124同士で荷重を分散してプレート端面全体の面圧を低減している。
より具体的には、本実施例では、内歯プレート110a、110c及び外歯プレート120a、120cに注目してみると、内歯プレート110a、110c及び外歯プレート120a、120cをピン軸方向Daから見た際に直線形状を形成しているとともに内歯プレート110c及び外歯プレート120cのそれぞれに形成された同一プレート内の凸状噛合面111c、121c及び凹状噛合受面112c、122cを相互に繋ぐ直線状平坦面114c、124cが、内歯プレート110c及び外歯プレート120cに形成され、内歯プレート110a、110c及び外歯プレート120a、120cをピン軸方向Daから見た際に直線形状を形成しているとともに内歯プレート110a及び外歯プレート120aのそれぞれに形成された同一プレート内の凸状噛合面111a、121a及び凹状噛合受面112a、122aを相互に繋ぐ直線状平坦面114a、124aが、内歯プレート110a及び外歯プレート120aに形成されている。
これにより、噛合チェーンユニット100は、極端な偏荷重が負荷された場合に、上述したような凸状噛合面と凹状噛合受面との噛合いに加えて、対向する直線状平坦面同士(114c、124c)、(114a、124a)の接触によって荷重を分担してそれぞれのプレート端面全体にそれぞれ作用する面圧を低減するため、応力集中による破損や繰り返し荷重による疲労破壊の一因となるプレート端面の摩耗を抑制している。
【0026】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、凸状噛合面111a、111c、121a、121c及び凹状噛合受面112a、112c、122a、122cの当接部分111cP、121cP、112aP、122aP、111aP、121aP、112cP、122cPが、凸状噛合面111c、121c、111a、121aの先端部111cT、121cT、111aT、121aT及び凹状噛合受面112a、122a、112c、122cの底部112aB、122aB、112cB、122cBより直線状平坦面114a、124a、114c、124cに近い部分を占めている。
これにより、凸状噛合面111c、121c、111a、121aの先端部111cT、121cT、111aT、121aTが楔状態で凹状噛合受面112a、122a、112c、122cの底部112aB、122aB、112cB、122cBに接触することを確実に防ぐことで、極端な偏荷重等に起因した大きな引張応力が凸状噛合面111c、121c、111a、121aの先端部111cT、121cT、111aT、121aTから凹状噛合受面112a、122a、112c、122cの底部112aB、122aB、112cB、122cBに作用しないため、凹状噛合受面112a、122a、112c、122cの底部112aB、122aB、112cB、122cBに対して凸状噛合面111c、121c、111a、121aの先端部111cT、121cT、111aT、121aTが作用することによる応力集中が全く発生せず、偏荷重等により生じる高い負荷に対する噛合チェーン100Aの耐久性をより一層高めるようになっている。
このようにして得られた噛合チェーンユニット100は、凸状噛合面121cの曲率が、凹状噛合受面122aの曲率より大きいことにより、極端な偏荷重等が負荷された場合であっても、凹状噛合受面に対して引張応力が大きく作用しなくなり、凸状噛合面121cの先端部121cTによる凹状噛合受面122aの底部122aBへの応力集中が抑制され、内歯プレート110及び外歯プレート120の破損や繰り返し荷重による疲労破壊を防止し、偏荷重等により生じる高い負荷に対する噛合チェーン100Aの耐久性を高めることができるばかりでなく、内歯プレート110及び外歯プレート120に形成された凸状噛合面111、121と凹状噛合受面112、122とが、直線状平坦面114、124を介して連なっていることにより、応力集中による破損や繰り返し荷重による疲労破壊の一因となるプレート端面の摩耗を抑制することができるなど、その効果は甚大である。
【0027】
次に、
図7及び
図8を参照しながら、本発明の他の実施例に係る噛合チェーンユニット200を説明する。
なお、本変形例に係る噛合チェーンユニット200は、上述の噛合チェーンユニット100と比較すると、左右一対の内歯プレート210間にブシュを設けずに、内歯プレート210のプレート側方端面215と外歯プレート220のプレート側方端面225とに駆動スプロケットを係合させて駆動する点でのみ相違しているため、上述の噛合チェーンユニット100と共通する部分の参照符号を100番台から200番台に付け替えてその詳細な説明を省略している。
【0028】
図7及び
図8に示すように、本変形例に係る噛合チェーンユニット200では、上述の噛合チェーンユニット100と同様に、凸状噛合面221の曲率が、凹状噛合受面222の曲率より大きくなっている。
これにより、極端な偏荷重等に起因した大きな引張応力が凹状噛合受面222に作用しないため、噛合チェーンユニット200は、凹状噛合受面222の底部に凸状噛合面221の先端部が作用することによる応力集中が生じない状態で内歯プレート210及び外歯プレート220の破損や疲労破壊を防いで偏荷重等により生じる高い負荷に対する噛合チェーン200Aの耐久性を高めることができるなど、その効果は甚大である。