特許第5901378号(P5901378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901378
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】走行制御バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20160324BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20160324BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20160324BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   F16K11/07 M
   F16K31/122
   F15B11/17
   F15B11/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-68153(P2012-68153)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199977(P2013-199977A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100847(JP,A)
【文献】 特開2009−13753(JP,A)
【文献】 特開2010−156135(JP,A)
【文献】 実開平3−39670(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0240562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
F15B 11/02
F15B 11/17
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを操作する制御弁が少なくとも一つ接続されるとともに、その最上流にホィール系走行体を駆動する流体圧モータを制御するための走行用制御弁が備えられた第1回路系統と、この第1回路系統に接続された第1ポンプと、アクチュエータを操作する制御弁が少なくとも一つ接続された第2回路系統と、この第2回路系統に接続された第2ポンプとが備えられたパワーショベルに用いる走行制御バルブであって、バルブ本体には、上記走行用制御弁の上流において上記第1ポンプに接続される第1ポンプポートと、上記第1ポンプポートに連通されるとともに上記第1回路系統に接続される第1接続ポートと、上記第2回路系統の最上流に位置する制御弁の上流において上記第2ポンプに接続される第2ポンプポートと、上記第2ポンプポートに連通するとともに上記第2回路系統に接続される第2接続ポートとが備えられ、さらに、上記バルブ本体にはスプールが摺動可能に設けられるとともに、走行時に、第1回路系統の少なくとも一つの制御弁を切り換えたときに、上記スプールは、上記第1ポンプポートと上記第1接続ポートとの連通開度を、上記第2ポンプポートと上記第2接続ポートとの連通開度よりも小さく保つ小開度絞り位置から、小開度絞り位置における連通開度よりも連通開度を大きく保つ大開度絞り位置に切り換え可能にした走行制御バルブ。
【請求項2】
上記スプールには複数のノッチが形成され、これらノッチの合計開度で小開度絞りと大開度絞りの開度が決められる構成にした請求項1に記載された走行制御バルブ。
【請求項3】
上記バルブ本体には、上記第1ポンプポートに連通される第1環状溝と、上記第2ポンプポートに連通される第2環状溝と、上記第1環状溝を挟んで第2環状溝とは反対側に設けられた第3環状溝と、上記第2環状溝を挟んで上記第1環状溝とは反対側に設けられた第4環状溝と、上記第2環状溝と第4環状溝との間に設けられるとともに、上記第1接続ポートに連通された第5環状溝と、上記第1,2環状溝の間に設けられるとともに、上記第2接続ポートに連通された第6環状溝とが形成されるとともに、上記第3環状溝と第4環状溝とをブリッジ通路を介して連通する一方、上記スプールには、上記第1環状溝と第3環状溝とを常時連通させる環状凹部が形成されるとともに、第4環状溝と第5環状溝とを連通させる複数のノッチが形成された請求項1に記載された走行制御バルブ。
【請求項4】
上記第1環状溝と上記第3環状溝とを常時連通させる上記環状凹部を第1環状凹部とし、さらに、上記スプールには上記第4環状溝と上記第5環状溝とを連通させる第2環状凹部が形成されるとともに、上記第2環状凹部を構成する一対のランドが上記スプールに形成され、上記一対のランドのうち、上記第5環状溝側に設けたランドの周囲に、スプールの軸方向に伸びる複数の長ノッチと、上記長ノッチよりも軸方向の長さを相対的に短くした短ノッチとが形成され、スプールがノーマル位置にあるとき、上記長ノッチのみが第5環状溝に開いて小開度絞りを構成し、上記スプールにパイロット圧が作用して切換位置に切り換わったとき、上記長ノッチ及び短ノッチの両方が第5環状溝に対して開いて、これら上記長ノッチ及び上記短ノッチで大開度絞りを構成する請求項3に記載された走行制御バルブ。
【請求項5】
上記スプールの一端をパイロット室に臨ませるとともに、このパイロット室には、アクチュエータに接続した作業機系の制御弁を切り換えるためのパイロット圧が導かれ、このパイロット圧の作用で上記スプールが切り換わったとき、上記大開度絞りが開く構成にした請求項1〜4のいずれかに記載された走行制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホィール系走行体を備えたパワーショベルにおいて、走行中に作業機系のアクチュエータを確実に作動させるための走行制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーショベルには、クローラ系走行体を備えたものと、ホィール系走行体を備えたものとがある。
そして、クローラ系走行体は、両側に設けられたクローラのそれぞれに流体圧モータが設けられ、これら流体圧モータが独立してクローラの駆動を受け持つ。
また、パワーショベルの流体圧回路は、第1,2ポンプが備えられ、第1ポンプには第1回路系統が接続され、第2ポンプには第2回路系統が接続される。
【0003】
そして、上記一方の流体圧モータは第1回路系統に設けられた走行用制御弁を介して第1ポンプに接続され、他方の流体圧モータは第2回路系統に設けられた走行用制御弁を介して第2ポンプに接続される。
このように流体圧モータを別々のポンプで駆動しながら、当該パワーショベルを直進させているとき、それぞれの流体圧モータに供給される圧流体の圧力などに差が生じたりすると、パワーショベルの走行直進に支障をきたすことがある。
【0004】
そこで、クローラ系走行体を備えたパワーショベルでは、走行直進時に、走行制御バルブによって流路を切り換え、両流体圧モータを第1ポンプに対してパラレルに接続し、一つのポンプで両流体圧モータを駆動するようにしている。
【0005】
一方、ホィール系のパワーショベルの場合には、一つの流体圧モータの駆動力を、デファレンシャルギアを介して両ホィールに伝達するので、走行直進時にクローラ系のパワーショベルのような問題は発生しない。
例えば、特許文献1に示すように、一つのポンプに対して走行用モータを並列に接続しているものがある。そのためにクローラ系とホィール系とのバルブブロックを変更する必要がある。
【0006】
そこでクローラ系のパワーショベルと、ホィール系のパワーショベルとで、アクチュエータを作動させるための制御回路を、同じバルブブロックに組み込んで、クローラ系のパワーショベルとホィール系のパワーショベルとの間で、互換性を持たせるようにしている。
【0007】
例えば、クローラ系走行体を備えたパワーショベルの場合は、図3及び図4に示す回路及び走行制御バルブV1を使用し、ホィール系走行体を用いたパワーショベルの場合は、図5及び図6に示す回路及び走行制御バルブV2を用いる。
そして、図6に示す固定スプール14を用いることで、バルブブロックVBの共用が可能になる。
【0008】
上記図3に示した回路は、バルブブロックVBに第1,2回路系統が設けられるとともに、走行制御バルブV1が図示の位置にあるとき、第1ポンプP1の吐出流体は、第1回路系統に設けられた走行用制御弁1に導かれ、上記走行制御バルブV1及び第1回路系統のパラレル通路2を介して各制御弁3〜6に導かれる。
また、第2ポンプP2の吐出流体は、第2回路系統に設けられた上記走行制御バルブV1を経由して走行用制御弁7に導かれるとともに、上記走行制御バルブV1の上流側からパラレル通路8を経由して各制御弁9〜11に導かれる。
【0009】
走行制御バルブV1が図面左側位置に切り換わると、両走行用制御弁1,7が第1ポンプP1に対して並列に接続されるとともに、第1,2回路系統のパラレル通路2,8が第2ポンプP2に対して並列に接続される。
したがって、第1ポンプP1の吐出流体は、両走行用制御弁1,7のみに供給され、第2ポンプP2の吐出流体は、第1,2回路系統の作業機系のアクチュエータを制御する制御弁3〜6及び9〜11に供給される。
【0010】
そして、図4に示した走行制御バルブV1は、バルブ本体12に組み込まれたスプール13が図示の位置にあるとき、図3の回路図の右側位置を保ち、第1回路系統の各制御弁1及び3〜6に接続されたアクチュエータは、第1ポンプP1の吐出流体で作動される状態になり、第2回路系統の各制御弁7及び9〜11に接続されたアクチュエータは、第2ポンプP2の吐出流体で作動される状態になる。
また、スプール13が図面左方向に移動したときには、走行制御バルブV1が図3の回路図の左側位置を保つ構成にしている。
【0011】
図5に示した回路図は、ホィール系走行体を用いたパワーショベルの回路図ある。以下に図5について説明するが、図3と同一の構成要素については同一の符号を用いて説明する。
上記走行制御バルブV2は、第1ポンプP1が第1回路系統に設けられた走行用制御弁1とパラレル通路2とに常時連通され、第2ポンプP2も第2回路系統に設けられた走行用制御弁7とパラレル通路8とに常時連通される構成にしている。
【0012】
そして、図6に示した走行制御バルブV2は、バルブ本体12に組み込まれたスプール14が図示の位置に固定され、図5の回路図に示されたように走行制御バルブV2、第1ポンプP1と第1回路系統に設けられたパラレル通路2との通路過程に絞り15を設け、第2ポンプP2と第2回路系統に設けられた走行用制御弁7との流通過程を自由流れの状態にしている。
【特許文献1】特開2006−341732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のようにした従来の走行制御バルブV2では、第1ポンプP1が、作業機系の制御弁3〜6に対して、常に絞り15を介して連通するので、走行中に負荷の大きいアクチュエータ、例えば旋回モータを駆動しようとしたとき、旋回モータに圧力流体が供給されにくくなる。なぜなら、旋回モータの負荷は、走行用の流体圧モータの負荷よりも多少大きいのが通常だからである。
【0014】
そのために、ホィール系走行体を備えたパワーショベルにおいて、従来の走行制御バルブV2を用いると、走行中に、特に負荷の大きい旋回モータを駆動させにくくなるという問題があった。
この発明の目的は、走行中においても、負荷の大きいアクチュエータを確実に作動させることができる走行制御バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、アクチュエータを操作する制御弁が少なくとも一つ接続されるとともに、その最上流にホィール系走行体を駆動する流体圧モータを制御するための走行用制御弁が備えられた第1回路系統と、この第1回路系統に接続された第1ポンプと、アクチュエータを操作する制御弁が少なくとも一つ接続された第2回路系統と、この第2回路系統に接続された第2ポンプとが備えられたパワーショベルに関する。
【0016】
第1の発明は、バルブ本体に、上記走行用制御弁の上流において上記第1ポンプに接続される第1ポンプポートと、上記第1ポンプポートに連通されるとともに上記第1回路系統に接続される第1接続ポートと、上記第2回路系統の最上流に位置する制御弁の上流において上記第2ポンプに接続される第2ポンプポートと、上記第2ポンプポートに連通するとともに上記第2回路系統に接続される第2接続ポートとが備えられている。
さらに、上記バルブ本体には、スプールが摺動可能に設けられるとともに、走行時に、第1回路系統の少なくとも一つの制御弁を切り換えたときに、このスプールは、上記第1ポンプポートと上記第1接続ポートとの連通開度を上記第2ポンプポートと上記第2接続ポートとの連通開度よりも小さく保つ小開度絞り位置から、小開度絞り位置における連通開度よりも連通開度を大きく保つ大開度絞り位置に切り換え可能にしている。
【0017】
第2の発明は、上記スプールに複数のノッチが形成され、これらノッチの合計開度で小開度絞りと大開度絞りの開度が決められる構成にしている。
【0018】
第3の発明は、上記バルブ本体に、上記第1ポンプポートに連通される第1環状溝と、上記第2ポンプポートに連通される第2環状溝と、上記第1環状溝を挟んで第2環状溝とは反対側に設けられた第3環状溝と、上記第2環状溝を挟んで上記第1環状溝とは反対側に設けられた第4環状溝と、上記第2環状溝と第4環状溝との間に設けられるとともに、上記第1接続ポートに連通された第5環状溝と、上記第1,2環状溝の間に設けられるとともに、上記第2接続ポートに連通された第6環状溝とが形成されている。
そして、上記第3環状溝と第4環状溝とをブリッジ通路を介して連通する一方、上記スプールには、上記第1環状溝と第3環状溝とを常時連通させる環状凹部が形成されるとともに、第4環状溝と第5環状溝とを連通させる複数のノッチが形成されている。
【0019】
第4の発明は、上記第1環状溝と上記第3環状溝とを常時連通させる上記環状凹部を第1環状凹部とし、さらに、上記スプールには上記第4環状溝と上記第5環状溝とを連通させる第2環状凹部が形成される。さらに、上記第2環状凹部を構成する一対のランドが上記スプールに形成され、上記一対のランドのうち、上記第5環状溝側に設けたランドの周囲に、スプールの軸方向に伸びる複数の長ノッチと、上記長ノッチよりも軸方向の長さを相対的に短くした短ノッチとが形成されている。そして、スプールがノーマル位置にあるとき、上記長ノッチのみが第5環状溝に開いて小開度絞りを構成し、上記スプールにパイロット圧が作用して切換位置に切り換わったとき、上記長ノッチ及び短ノッチの両方が第5環状溝に対して開いて、これら上記長ノッチ及び上記短ノッチで大開度絞りを構成する。
【0020】
第5の発明は、上記スプールの一端をパイロット室に臨ませるとともに、このパイロット室には、アクチュエータに接続した作業機系の制御弁を切り換えるためのパイロット圧が導かれ、このパイロット圧の作用で上記スプールが切り換わったとき、上記大開度絞りが開く構成にしている。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、第1ポンプを第1回路系統に接続し、第2ポンプを第2回路系統に接続しながら、第1ポンプポートと第1接続ポートとの連通開度を小さく保つ小開度絞り位置と、その連通開度を大きく保つ大開度絞り位置に切り換え可能にしたので、第1,2回路系統を備えた従来のバルブブロックを利用しつつ、必要とする作業機系のアクチュエータを確実に作動させることができる。
【0022】
第2の発明によれば、スプールに形成された複数のノッチによって、小開度絞りと大開度絞りとを構成したので、スプールに簡単な加工を施すだけで、絞り開度を制御できるようになる。
【0023】
第3の発明によれば、バルブ本体には、第1〜6環状溝を形成したので、従来の走行制御バルブのバルブ本体をそのまま用いることができる。
【0024】
第4の発明によれば、スプールには、長ノッチと短ノッチとを形成し、スプールの移動位置に応じて、これらノッチの合計開度で絞りの開度を制御できるようにしたので、スプールのノッチ加工が簡単になる。
【0025】
第5の発明によれば、優先作動させるアクチュエータに接続した作業機系の制御弁を切り換えたとき、大開度絞りが開くので、走行中にも、その優先作動させるアクチュエータを確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施形態を示す回路図である。
図2】この発明の実施形態を示す走行制御バルブの断面図である。
図3】クローラ系走行体を備えた従来のパワーショベルの回路図である。
図4】クローラ系走行体を備えた従来のパワーショベルに用いる走行制御バルブの断面図である。
図5】ホィール系走行体を備えた従来のパワーショベルの回路図である。
図6】ホィール系走行体を備えた従来のパワーショベルに用いる走行制御バルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態を示す図1におけるパワーショベルの制御回路では、バルブブロックVBに設けられたポンプ通路21に第1ポンプP1が接続され、ポンプ通路22に第2ポンプP2が接続されている。そして、上記第1ポンプP1は、ポンプ通路21を介して第1回路系統に接続され、第2ポンプP2は、ポンプ通路22を介して第2回路系統に接続されている。
上記第1回路系統には、その上流側から順に、一方の流体圧モータを制御する走行用制御弁23、予備のアクチュエータを制御する予備用制御弁24、旋回モータを制御する旋回用制御弁25、ブームシリンダの2速制御をするブーム2速用制御弁26及びアームシリンダの1速制御をするアーム1速用制御弁27を接続している。
【0028】
なお、上記走行用制御弁23以外の制御弁24〜27を、以下には一括して作業機系の制御弁24〜27という。ただし、これら作業機系の制御弁24〜27に接続した各アクチュエータは図示していない。
【0029】
上記走行用制御弁23及び作業機系の制御弁24〜27は、センターバイパス通路28を介してタンデムに接続されるとともに、これら作業機系の制御弁24〜27のそれぞれはパラレル通路29を介して並列に接続されている。
なお、図中符号30は、走行用制御弁23と予備用制御弁24との間におけるセンターバイパス通路28を、上記パラレル通路29に連通するための通路で、この通路30にはセンターバイパス通路28からパラレル通路29への流通のみを許容するチェック弁31が設けられている。
【0030】
また、上記ポンプ通路21には迂回通路32が接続されているが、この迂回通路32には走行制御バルブVが接続されている。
この走行制御バルブVは、第1,2ポンプポート33,34と、第1,2接続ポート35,36とが設けられている。
上記第1ポンプポート33は、迂回通路32及びポンプ通路21を介して第1ポンプP1に接続され、第2ポンプポート34はポンプ通路22を介して第2ポンプP2に接続されている。
【0031】
上記のようにした走行制御バルブVは、通常はスプリング37のばね力で図面右側位置を保持する一方、上記スプリング37とは反対側に設けたパイロット室38にパイロット圧が作用したとき、図面左側の切換位置に切り換わる。
さらに、上記第1接続ポート35は、通路39を介して第1回路系統のパラレル通路29に接続され、第2接続ポート36は通路40を介して第2回路系統に接続されている。
【0032】
そして、上記第2回路系統は、その上流側から順に、他方の流体圧モータを制御する走行用制御弁41、バケットシリンダを制御するバケット用制御弁42、ブームシリンダを1速制御するブーム1速用制御弁43及びアームシリンダの2速制御をするアーム2速用制御弁44を接続している。
なお、上記走行用制御弁41以外の制御弁42〜44を、以下には一括して作業機系の制御弁42〜44という。ただし、これら作業機系の制御弁42〜44に接続した各アクチュエータは図示していない。
【0033】
上記走行用制御弁41及び作業機系の制御弁42〜44は、センターバイパス通路45を介してタンデムに接続されるとともに、作業機系の制御弁42〜44はパラレル通路46を介して並列に接続されている。
なお、図中符号47は、ポンプ通路22をパラレル通路46に常時連通させる接続通路である。48は通路40を上記パラレル通路46に導く通路で、この通路48にはパラレル通路46から通路40への流通のみを許容するチェック弁49を設けている。
また、符号50は第1回路系統に設けた各制御弁23〜27のタンクポートをタンクに導くタンク通路、符号51は第2回路系統に設けた各制御弁41〜44のタンクポートをタンクに導くタンク通路である。
【0034】
上記した走行制御バルブVの具体的な構成は、図2に示すとおりである。
すなわち、走行制御バルブVのバルブ本体52にはスプール53が摺動可能に組み込まれているが、このスプール53はその一端をパイロット室38に臨ませている。なお、このパイロット室38は、キャップ55内に形成されるとともに、このキャップ55に形成したパイロットポート56からパイロット圧が導かれるようにしている。そして、この実施形態では、旋回モータを制御する旋回用制御弁25を切り換えるときのパイロット圧が、このパイロット室38に導かれる構成にしている。
【0035】
また、上記パイロット室38とは反対側にはキャップ57を設けるとともに、このキャップ57内に設けたスプリング37のばね力をスプール53に作用させ、このスプリング37のばね力の作用で、上記スプール53が図1に示した右側位置に保たれるようにしている。
【0036】
また、バルブ本体52には、上記スプール53の軸線方向において間隔を保った第1〜6環状溝59〜64が形成されている。
上記第1環状溝59は図1に示した第1ポンプポート33に連通され、上記第2環状溝60は第2ポンプポート34に連通されている。
【0037】
そして、第1環状溝59を挟んで、上記第2環状溝60とは反対側に第3環状溝61が形成されている。これら第1,3環状溝59,61は、上記スプール53に形成された第1環状凹部65を介して常時連通している。したがって、第3環状溝61も上記第1ポンプポート33に常時連通する。
【0038】
さらに、第2環状溝60を挟んで上記第1環状溝59とは反対側に第4環状溝62が形成されるとともに、これら第2環状溝60と第4環状溝62との間に第5環状溝63が形成されている。
そして、上記第4環状溝62は、バルブ本体52に形成したブリッジ通路66を介して第3環状溝61と常時連通している。したがって、この第4環状溝62は、ブリッジ通路66、第3環状溝61、第1環状凹部65及び第1環状溝59を介して、図1に示した第1ポンプポート33に常時連通されている。
【0039】
また、上記第5環状溝63は図1に示した第1接続ポート35に連通されている。
さらに、上記スプール53には、第2環状凹部67を構成する一対のランド68,69が形成されるとともに、ランド68の円周方向には、複数の長ノッチ70と複数の短ノッチ71とが形成されている。そして、上記長ノッチ70は、第4環状溝62に常時連通するとともに、スプール53が図示のノーマル位置にあるとき、上記長ノッチ70は、第5環状溝63にも連通する。また、短ノッチ71は、第4環状溝62に常時連通するが、スプール53がノーマル位置にあるときには、短ノッチ71は第5環状溝63に対して閉状態に保たれる。
【0040】
スプール53がパイロット室38に導かれたパイロット圧の作用で、スプリング37のばね力に抗して移動すると、上記短ノッチ71も第5環状溝63に対して連通する。
そして、上記長ノッチ70のみが第5環状溝63に連通している状態にあるとき、この長ノッチ70が、図1における小開度絞り72を構成し、長ノッチ70及び短ノッチ71の両方が第5環状溝63に対して連通している状態にあるとき、これら長ノッチ70及び短ノッチ71が相まって図1における大開度絞り73を構成する。
【0041】
一方、第1,2環状溝59,60間には、第6環状溝64が形成されているが、この第6環状溝64は図1に示した第2接続ポート36に連通されている。
そして、スプール53がいずれの位置にあっても、スプール53に形成された第3環状凹部74を介して第2環状溝60と第6環状溝64とが常時連通する構成にしている。
したがって、上記第2ポンプポート34は、第2環状溝60及び第6環状溝64を介して第2接続ポート36に常時連通している。
【0042】
次に、この走行制御バルブVの作用について説明する。
この走行制御バルブVが図1に示す右側位置、すなわちスプール53が図2に示すノーマル位置にあるとき、第1ポンプポート33は、第1環状溝59、第1環状凹部65、第3環状溝61、ブリッジ通路66、第4環状溝62、第2環状凹部67、ランド68に形成された長ノッチ70及び第5環状溝63を介して第1接続ポート35に連通する。
このときには、上記したように短ノッチ71は第5環状溝63には連通しないので、上記第1ポンプポート33と第1接続ポート35とは、図1に示す小開度絞り72を介して連通することになる。言い換えると、走行制御バルブVは図1の右側位置である小開度絞り位置を保つことになる。
【0043】
上記のように第1ポンプポート33と第1接続ポート35とが小開度絞り72を介して連通しているときには、通路39及びパラレル通路29を経由して供給される流量は相対的に少なくなり、走行用制御弁23に接続した流体圧モータに、第1ポンプP1の吐出流体が優先的に供給される。
なお、走行用制御弁23が中立位置に保たれているとき、すなわち走行用の流体圧モータに圧力流体を供給せず、当該パワーショベルを止めているときには、第1ポンプP1の吐出流体は、通路30を通ってパラレル通路29に導かれるので、走行制御バルブVによる圧力損失は問題にならない。
【0044】
そして、当該パワーショベルの走行中に、例えば旋回モータを制御する旋回用制御弁25を切り換えると、そのときのパイロット圧が、走行制御バルブVのパイロット室38に導かれ、スプール53はスプリング37のばね力に抗して図2の右方向に移動する。
このようにスプール53が移動すれば、ランド68に形成した短ノッチ71も、長ノッチ70とともに第5環状溝63に連通する。したがって、この走行制御バルブVは、図1における左側位置である大開度絞り位置に切り換わる。
【0045】
上記のように走行制御バルブVが大開度絞り位置に切り換われば、第1ポンプP1の吐出流体は、大開度絞り73、通路39及びパラレル通路29を通るので、通路39及びパラレル通路29には小開度絞り72を経由する場合よりも多い吐出流体が供給される。
したがって、走行中であっても、負荷が走行モータよりも大きい旋回モータにも十分に圧力流体が供給され、当該旋回モータを確実に作動させることができる。
【0046】
なお、図4及び図6に示した従来の走行制御バルブV1,V2のバルブ本体12とこの発明の実施形態における走行制御バルブVのバルブ本体52とは、それらの構成を同じにしているので、図4及び図6におけるバルブ本体12の各構成要素には、図2のバルブ本体52と同一の符号を付する。
【0047】
上記のようにしたこの実施形態によれば、クローラ系走行体を備えたパワーショベルのバルブブロックVBと、ホィール系走行体を備えたパワーショベルのバルブブロックVBとの互換性を維持しながら、比較的負荷の大きな旋回モータを、走行中であっても確実に作動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、クローラ系走行体を備えたパワーショベルと、ホィール系走行体を備えたパワーショベルとの間で、互換性を保つのに最適である。
【符号の説明】
【0049】
P1,P2 第1,2ポンプ
23〜27 制御弁
33,34 第1,2ポンプポート
35,36 第1,2接続ポート
38 パイロット室
41〜44 制御弁
52 バルブ本体
53 スプール
59〜64 第1〜第6環状溝
65,67 第1,2環状凹部
66 ブリッジ通路
70 長ノッチ
71 短ノッチ
74 第3環状凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6