特許第5901384号(P5901384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901384凍結防止構造及び凍結防止構造を備えるレベル検出用配管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901384
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】凍結防止構造及び凍結防止構造を備えるレベル検出用配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/147 20060101AFI20160324BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20160324BHJP
   F16L 53/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   F16L59/147
   F16L57/00 D
   F16L53/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-71978(P2012-71978)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-204639(P2013-204639A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596133119
【氏名又は名称】中電プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山本 光一
(72)【発明者】
【氏名】網田 信次
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−004389(JP,U)
【文献】 特開2002−130610(JP,A)
【文献】 特開2006−046486(JP,A)
【文献】 特開平02−147917(JP,A)
【文献】 特開昭53−077374(JP,A)
【文献】 実開昭62−153497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L59/00−59/22
F16L53/00
F16L57/00
F22B 5/00− 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントのボイラ内のドラムに接続される、蒸気側のレベル検出用配管と給水側のレベル検出用配管とに用いられる凍結防止構造であって、
前記蒸気側のレベル検出用配管及び前記給水側のレベル検出用配管を共に覆う第1耐熱性断熱材と、
前記第1耐熱性断熱材の外側における、前記蒸気側のレベル検出用配管及び前記給水側のレベル検出用配管から等距離の位置に付設された加温用配管と、
前記加温用配管をさらに覆う第2耐熱性断熱材と、
を備え
前記加温用配管は、前記第1耐熱性断熱材の外側に、前記レベル検出用配管の軸方向と略平行に付設され、前記蒸気側のレベル検出用配管と前記給水側のレベル検出用配管から等距離の位置にあるように、前面に付設された前面の加温用配管と、後面に付設された後面の加温用配管と、の合計2本の加温用配管から構成される、凍結防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の凍結防止構造を備えるレベル検出用配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル検出用配管の凍結防止構造及び凍結防止構造を備えるレベル検出用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気を用いるスチームトレースは、凍結防止や加温を目的として、配管の近傍に付設され、付設されたスチームトレース配管に蒸気が供給されると近傍の配管等を加温する。
【0003】
このスチームトレースは、火力発電プラントにおいて、例えば、汽水分離用ドラムのドラムレベルを検出するためのレベル検出用配管の凍結防止用に用いられている。図4は、汽水分離用ドラム201においてドラムレベル211を検出するためのレベル検出用配管203a,203b,204a,204bについての概要を示す図である。このドラムレベル211を検出する装置202a,202bは、蒸気側のレベル検出用配管203a,203bによる圧力と、給水側のレベル検出用配管204a,204bによる圧力との差圧(ΔP)を求め、求めた差圧によりドラムレベル211を検出する。ここで、レベル検出用配管203a,203b,204a,204bには、凍結防止のためのスチームトレース配管221が付設されている。このスチームトレース配管221に通気すると、スチームトレース配管221によりレベル検出用配管203a,203b,204a,204bが加熱され、レベル検出用配管203a,203b,204a,204b内の圧力に偏差が生じドラムレベル211が変動する場合がある。例えば、蒸気側の基準圧力に対して、給水側のレベル検出用配管204a,204bがスチームトレース配管221により加熱されて偏差が生じると、給水側のレベル検出用配管204a,204b内の圧力が上昇(水頭圧(ドラムレベル211)の増加と同じ現象)し、ドラムレベル211が高く誤検出される。また、蒸気側のレベル検出用配管203a,203bがスチームトレース配管221により加熱されて偏差が生じると、基準圧力が上昇し、給水側との差圧が大きくなり、ドラムレベル211が低く誤検出される。このような問題を解決する技術として、特許文献1が開示する技術が知られている。
【0004】
特許文献1に開示されたレベル検出用配管の凍結防止構造は、環境条件の如何にかかわらず、レベル検出用配管内の水を沸騰させることなく凍結を防止できるようにするために、レベル検出用配管の管本体を耐熱性断熱材で囲繞し、該耐熱性断熱材の外側に、スチームトレース配管を配設し、さらに、その外側を外装材で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−46486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された凍結防止構造は、スチームトレース配管によってレベル検出用配管内の水を沸騰させることなく均一に加温する方法であるため、レベル検出用配管のそれぞれを均一に加温することができる。しかしながら、蒸気側のレベル検出用配管と給水側のレベル検出用配管とを別々に加温するため、蒸気側のレベル検出用配管の加温状態と、給水側のレベル検出用配管の加温状態とが均一にならない場合がある。その結果、蒸気側と給水側との圧力差により検出されるレベルは、実際とは異なるレベルとなる場合がある。
【0007】
そこで、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管の凍結を防止できる凍結防止構造が求められている。
【0008】
本発明は、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管の凍結を防止できる凍結防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
(1) 発電プラントのボイラ内のドラムに接続される、蒸気側のレベル検出用配管と給水側のレベル検出用配管とに用いられる凍結防止構造であって、前記蒸気側のレベル検出用配管及び前記給水側のレベル検出用配管を共に覆う第1耐熱性断熱材と、前記第1耐熱性断熱材の外側における、前記蒸気側のレベル検出用配管及び前記給水側のレベル検出用配管から等距離の位置に付設された加温用配管と、前記加温用配管をさらに覆う第2耐熱性断熱材と、を備える凍結防止構造。
【0010】
(1)の構成によれば、本発明に係るレベル検出用配管の凍結防止構造は、蒸気側のレベル検出用配管及び給水側のレベル検出用配管を第1耐熱性断熱材が共に覆い、第1耐熱性断熱材の外側における、蒸気側のレベル検出用配管及び給水側のレベル検出用配管から等距離の位置に加温用配管が付設され、その加温用配管を第2耐熱性断熱材がさらに覆う。
【0011】
すなわち、本発明に係るレベル検出用配管の凍結防止構造は、蒸気側のレベル検出用配管及び給水側のレベル検出用配管を第1耐熱性断熱材が共に覆い、第1耐熱性断熱材の外側における、蒸気側のレベル検出用配管及び給水側のレベル検出用配管から等距離の位置に加温用配管が付設されているので、両方のレベル検出用配管を同じ温度状態に保つと共に、加温用配管がレベル検出用配管を直接加熱することがなく、同等に熱の影響がおよぶ。さらに、その加温用配管を第2耐熱性断熱材が覆う構造なので、加温用配管は、第1耐熱性断熱材と第2耐熱性断熱材との中間層を加温し、レベル検出用配管を直接加温しないで、凍結を防止する。
したがって、本発明に係るレベル検出用配管の凍結防止構造は、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管の凍結を防止できる。
【0012】
(2) 前記加温用配管は、前記第1耐熱性断熱材の外周に、螺旋状に巻き付けられて付設されている、(1)に記載の凍結防止構造。
【0013】
したがって、(2)に係る凍結防止構造は、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、第1耐熱性断熱材と第2耐熱性断熱材との中間層を一様に加温し、レベル検出用配管の凍結をより効果的に防止できる。
【0014】
(3) 前記加温用配管は、前記第1耐熱性断熱材の外側に、前記レベル検出用配管の軸方向と略平行に付設されている、(1)に記載の凍結防止構造。
【0015】
したがって、(3)に係る凍結防止構造は、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管の凍結をより簡易に防止できる。
【0016】
(4) (1)に記載の凍結防止構造を備えるレベル検出用配管。
【0017】
したがって、(4)に係るレベル検出用配管は、(1)に記載の凍結防止構造によって凍結が防止され、凍結防止の影響をレベルの検出に与えない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レベル検出用配管を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管の凍結を防止できる。
さらに、レベル検出用配管内の水等を直接加温しないため、圧力変動等が発生せず、保温を2重で施しているため、万が一、加温(例えば、スチームトレース等)に不良があった場合にも配管内の凍結の危険性が軽減され、凍結防止機能を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る凍結防止構造を備えるレベル検出用配管の例を示す斜視図である。
図2図1の例の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る凍結防止構造を備えるレベル検出用配管の別の例を示す斜視図である。
図4】汽水分離用ドラムにおいてドラムレベルを検出するためのレベル検出用配管についての概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る凍結防止構造1を備えるレベル検出用配管2の例を示す斜視図である。図2は、図1の例の断面図である。
【0021】
凍結防止構造1は、発電プラントのボイラ内のドラムに接続される蒸気側のレベル検出用配管101と給水側のレベル検出用配管102とに用いられ、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102を共に覆う第1耐熱性断熱材103と、第1耐熱性断熱材103の外側における、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置に付設された加温用配管としてのスチームトレース配管104と、スチームトレース配管104をさらに覆う第2耐熱性断熱材105と、を備える。
【0022】
耐熱性断熱材は、熱がスチームトレース配管104からレベル検出用配管に伝導することを防ぎ、スチームトレース配管104の熱によって変化しないものであればよく、グラスウール等の耐熱性断熱材でよい。
【0023】
第1耐熱性断熱材103と、第2耐熱性断熱材105とは、同じものであってもよい。また、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102によるレベルの検出に影響を与えないように、第1耐熱性断熱材103に断熱効果の高いものを用い、第2耐熱性断熱材105に第1耐熱性断熱材103に比べて断熱効果の低いものを用いてもよい。
【0024】
図1及び図2が示す様に、第1耐熱性断熱材103が、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102を共に覆っている。すなわち、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102は同じ温度状態が保たれる。そして、第1耐熱性断熱材103は、スチームトレース配管104が、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102を、直接加熱することを防いでいる。スチームトレース配管104は、第1耐熱性断熱材103の外側における、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置に付設されて、管内に供給される蒸気により、熱を提供する。第2耐熱性断熱材105は、スチームトレース配管104を覆うことによって、スチームトレース配管104が提供する熱を、保持する。
【0025】
図1及び図2が示す様に、凍結防止構造1において、スチームトレース配管104は、第1耐熱性断熱材103の外周に、螺旋状に巻き付けられて付設されている。第1耐熱性断熱材103の外側に螺旋状に巻き付けられて付設されているスチームトレース配管104は、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にある。螺旋の間隔は、第1耐熱性断熱材103の断熱効果と、第1耐熱性断熱材103と第2耐熱性断熱材105との間の保温効果と、設置環境等とに基づいて、適切な間隔が選択される。
【0026】
さらに、第2耐熱性断熱材105は、外装材106によって覆われる。外装材106は、外部からの衝撃等から第2耐熱性断熱材105等を保護する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態に係る凍結防止構造1を備えるレベル検出用配管2の別の例を示す斜視図である。図3が示す様に、凍結防止構造1において、スチームトレース配管104は、第1耐熱性断熱材103の外側に、レベル検出用配管の軸方向と略平行に付設されている。付設されるスチームトレース配管104は、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にある。なお、付設されるスチームトレース配管104は、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にあるように、図3において示されている前面のスチームトレース配管104の他に、後面のスチームトレース配管(図示せず)が付設され、合計2本のスチームトレース配管が付設されてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、凍結防止構造1は、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102を第1耐熱性断熱材103が共に覆い、第1耐熱性断熱材103の外側における、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にスチームトレース配管104が付設されているので、両方のレベル検出用配管101,102を同じ温度状態に保つと共に、スチームトレース配管104がレベル検出用配管101,102を直接加熱することがなく、同等に熱の影響がおよぶ。さらに、そのスチームトレース配管104を第2耐熱性断熱材105が覆う構造なので、第1耐熱性断熱材103と第2耐熱性断熱材105との中間層を加温し、レベル検出用配管101,102を直接加熱しないで、凍結防止を行うことができる。したがって、凍結防止構造1は、レベル検出用配管101,102を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管101,102の凍結を防止できる。
【0029】
さらに、凍結防止構造1は、スチームトレース配管104が、第1耐熱性断熱材103の外周に、螺旋状に巻き付けられて付設されている。したがって、凍結防止構造1は、レベル検出用配管101,102を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、第1耐熱性断熱材103と第2耐熱性断熱材105との中間層を一様に加温し、レベル検出用配管101,102の凍結をより効果的に防止できる。
【0030】
また、凍結防止構造1は、第1耐熱性断熱材103の外側における、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にスチームトレース配管104がレベル検出用配管101,102の軸方向と略平行に、1本又は2本が付設されていてもよい。凍結防止構造1は、レベル検出用配管101,102を用いて検出されるレベルに影響を与えることなく、レベル検出用配管101,102の凍結をより簡易に防止できる。
【0031】
本実施形態によれば、凍結防止構造1を備えるレベル検出用配管2は、蒸気側のレベル検出用配管101と給水側のレベル検出用配管102とを第1耐熱性断熱材103が共に覆い、第1耐熱性断熱材103の外側における、蒸気側のレベル検出用配管101及び給水側のレベル検出用配管102から等距離の位置にスチームトレース配管104が付設され、そのスチームトレース配管104を第2耐熱性断熱材105が覆う構造である。したがって、凍結防止構造1を備えるレベル検出用配管2は、両方のレベル検出用配管101,102を同じ温度状態に保つと共に、スチームトレース配管104がレベル検出用配管101,102を直接加熱することがなく、同等に熱の影響がおよび、スチームトレース配管104が、第1耐熱性断熱材103と第2耐熱性断熱材105との中間層を加温し、レベル検出用配管101,102を直接加温しないで、凍結を防止する。その結果、凍結防止構造1を備えるレベル検出用配管2は、蒸気側と給水側との圧力差により検出されるレベルが、実際のレベルを示す。
【0032】
なお、本実施形態では、レベル検出用配管101,102を同じ温度状態に保つために、加温用配管としてスチームトレース配管104を用いたが、スチームトレースに限らず、電気トレース等の加温用材料でも適用可能である。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 凍結防止構造
101 蒸気側のレベル検出用配管
102 給水側のレベル検出用配管
103 第1耐熱性断熱材
104 スチームトレース配管
105 第2耐熱性断熱材
106 外装材
図1
図2
図3
図4