特許第5901402号(P5901402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901402内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901402
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/16 20060101AFI20160324BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   F02B37/16 B
   F02B37/00 302F
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-93807(P2012-93807)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-221453(P2013-221453A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩樹
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−151085(JP,A)
【文献】 実開平03−008622(JP,U)
【文献】 特開2005−268051(JP,A)
【文献】 特開2010−265854(JP,A)
【文献】 特開昭63−043081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F16K 31/06−31/11、49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁と、
前記電磁弁の凍結が推定されるときに、前記電磁弁の駆動部へ開弁用の駆動電流の通電を開始した後に前記駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに前記電磁弁が凍結しているとの凍結判定を行い、前記凍結判定を行った後に前記駆動電流の電流値が定常値より低下したときに前記電磁弁が解凍したとの解凍判定を行う凍結解凍判定手段と、
前記凍結解凍判定手段が前記解凍判定を行った後であって前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の内部を掃気するように制御する掃気制御手段と、
を有すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1の内燃機関の制御装置において、
前記過給機により過給を行う過給域にあるときは前記駆動電流の通電を中断すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2の内燃機関の制御装置において、
前記掃気制御手段は、前記駆動電流の通電が開始されてから前記解凍判定が行われるまでの解凍制御時間、または、始動時水温、または、外気温に応じて、前記電磁弁の内部を掃気する回数を規定すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの内燃機関の制御装置において、
前記過給機のタービンの下流側から前記コンプレッサの上流側へEGRガスを還流させるEGRシステムを有し、
前記掃気制御手段は、前記EGRシステムにより前記EGRガスが還流されていないときに前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項乃至のいずれか1つの内燃機関の制御装置において、
前記掃気制御手段は、イグニッションスイッチがオフにされたときに前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁の凍結が推定されるときに、前記電磁弁の駆動部へ開弁用の駆動電流の通電を開始した後に前記駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに前記電磁弁が凍結しているとの凍結判定を行い、前記凍結判定を行った後に前記駆動電流の電流値が定常値より低下したときに前記電磁弁が解凍したとの解凍判定を行い、前記解凍判定を行った後であって前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、
を特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項7】
過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁と、
前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の開弁と閉弁を繰り返して前記電磁弁の内部を掃気するように制御する掃気制御手段と、
を有すること、
を特徴とする内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給機を有する内燃機関の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機付き内燃機関においては、減速時のサージングの発生を防止するため、吸気通路のバイパス通路内にエアバイパスバルブが設けられる技術が存在する。このエアバイパスバルブとして、図18に示すような電磁弁100が使われている。この電磁弁100は、圧力バランス室102を備えており、弁体104の中央部に圧力バランス室102に連通する圧力調整用の穴106を備えている。そして、この穴106は、軸受108とシャフト110(固定軸)との摺動部にも連通している。そのため、吸気通路内の凝縮水が、穴106から前記の摺動部へ浸入するおそれがある。このように、前記の摺動部に凝縮水が浸入した状態で低温となると、凝縮水が凍結して軸受108とシャフト110とを固着させることにより、軸受108が固定されているアーマチャ112が移動できず、アーマチャ112と一体の弁体104が作動しないおそれがある。したがって、電磁弁100は、凝縮水の凍結物が解凍されるまでエアパイパスバルブとしての機能を果たせなくなってしまう。
【0003】
ここで、電磁弁などの制御弁においてこのような凍結が生じた場合に解凍を行う技術として、特許文献1の技術が存在する。この特許文献1の技術は、吸気制御弁およびバイパス弁に凍結が生じた場合に、排気制御弁を所定開度だけ開弁して第2過給機のタービンに排気を供給するように制御することにより、各々の弁で解凍を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、吸気制御弁およびバイパス弁に凍結が発生したと判定されたときに、解凍制御を所定時間実行して、その後、弁の作動を確認することにより解凍されたか否かを判定しているので、吸気制御弁およびバイパス弁における解凍の判定が効率良く行われていない。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、電磁弁における凍結および解凍を効率良く確実に判定できる内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、内燃機関の制御装置において、過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路と、前記バイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁と、前記電磁弁の凍結が推定されるときに、前記電磁弁の駆動部へ開弁用の駆動電流の通電を開始した後に前記駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに前記電磁弁が凍結しているとの凍結判定を行い、前記凍結判定を行った後に前記駆動電流の電流値が定常値より低下したときに前記電磁弁が解凍したとの解凍判定を行う凍結解凍判定手段と、前記凍結解凍判定手段が前記解凍判定を行った後であって前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の内部を掃気するように制御する掃気制御手段と、を有すること、を特徴とする。
【0008】
この態様によれば、開弁用の駆動電流の電流値の挙動に基づき電磁弁の凍結および解凍
の判定を行うので、電磁弁の凍結および解凍を効率良く確実に判定できる。また、電磁弁の内部に残存する凝縮水を掃気できる。そのため、電磁弁の内部に残存する凝縮水により電磁弁の凍結が発生することを防止できる。
【0009】
上記の態様においては、前記過給機により過給を行う過給域にあるときは前記駆動電流の通電を中断すること、が好ましい。
【0010】
この態様によれば、過給域において過給圧の低下を防止できる。
【0013】
上記の態様においては、前記掃気制御手段は、前記駆動電流の通電が開始されてから前記解凍判定が行われるまでの解凍制御時間、または、始動時水温、または、外気温に応じて、前記電磁弁の内部を掃気する回数を規定すること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、電磁弁の凍結状況に応じて解凍後の電磁弁の内部に残存する凝縮水を効果的に掃気できる。
【0015】
上記の態様においては、前記過給機のタービンの下流側から前記コンプレッサの上流側へEGRガスを還流させるEGRシステムを有し、前記掃気制御手段は、前記EGRシステムにより前記EGRガスが還流されていないときに前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、が好ましい。
【0016】
この態様によれば、電磁弁の内部を掃気するときに、電磁弁の内部へEGRガスに含まれる凝縮水が浸入することを防止できる。そのため、EGRガスに含まれる凝縮水を起因とする電磁弁の内部の凍結が発生することを防止できる。
【0017】
上記の態様においては、前記掃気制御手段は、イグニッションスイッチがオフにされたときに前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、が好ましい。
【0018】
この態様によれば、エンジンを停止するときに電磁弁の内部に存在しうる凝縮水を排出するので、次にエンジンを始動するときに電磁弁が凍結していることを防止できる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、内燃機関の制御方法において、過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁の凍結が推定されるときに、前記電磁弁の駆動部へ開弁用の駆動電流の通電を開始した後に前記駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに前記電磁弁が凍結しているとの凍結判定を行い、前記凍結判定を行った後に前記駆動電流の電流値が定常値より低下したときに前記電磁弁が解凍したとの解凍判定を行い、前記解凍判定を行った後であって前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の内部を掃気するように制御すること、を特徴とする。
【0020】
この態様によれば、開弁用の駆動電流の電流値の挙動に基づき電磁弁の凍結および解凍の判定を行うので、電磁弁の凍結および解凍を効率良く確実に判定できる。また、上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、内燃機関の制御装置において、過給機のコンプレッサの上流側と下流側に接続するバイパス通路と、前記バイパス通路を流れる気体の流量を制御する電磁弁と、前記過給機により過給を行わない非過給域にあるときに、前記電磁弁の開弁と閉弁を繰り返して前記電磁弁の内部を掃気するように制御する掃気制御手段と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法によれば、電磁弁における凍結の発生および解凍の実行を効率良く確実に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】内燃機関の制御装置の構成図である。
図2】実施例1で実行されるルーチンを示す図である。
図3】XABV_coldフラグイニシャルセットルーチンを示す図である。
図4】過給域判定ルーチンを示す図である。
図5】エンジン運転状態が過給域にあるか否かを判定する際に使用するマップを示す図である。
図6】実施例1のタイムチャート図である。
図7】過給域でエアバイパスバルブを開弁することによる不具合を示す図である。
図8】実施例2で実行されるルーチンを示す図である。
図9】実施例2で実行されるルーチンを示す図である。
図10】始動時水温をもとにエアバイパスバルブの掃気回数を求める際に使用するマップを示す図である。
図11】外気温をもとにエアバイパスバルブの掃気回数を求める際に使用するマップを示す図である。
図12】実施例2のタイムチャート図である。
図13】イグニッションスイッチがオフにされたときに実行されるルーチンを示す図である。
図14】実施例3で実行されるルーチンを示す図である。
図15】実施例4で実行されるルーチンを示す図である。
図16】始動時水温をもとに凍結判定水温を求める際に使用するマップを示す図である。
図17】実施例4のタイムチャート図である。
図18】従来より使用されている電磁弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔内燃機関の制御装置の構成〕
まず、本発明の内燃機関の制御装置1の構成について説明する。内燃機関の制御装置1は、図1に示すように、主に、ECU10と、エアフィルタ12と、吸気通路14と、過給機16と、インタークーラ18と、スロットルバルブ20と、エアバイパス通路22と、エアバイパスバルブ24と、エンジン(内燃機関)26と、排気通路28と、DPF30と、マフラ32と、EGR通路34と、EGRクーラ36と、EGRバルブ38と、LPL−EGRシステム40と、水温センサ56と、過給圧センサ58と、を有する。
【0024】
ECU10は、内燃機関の制御装置1を制御するものであって、本発明における凍結解凍判定手段、掃気制御手段に相当する。
【0025】
なお、凍結解凍判定手段は、詳しくは後述するように、エアバイパスバルブ24が凍結していると推定されるときに、エアバイパスバルブ24のコイル42への開弁用の駆動電流の通電を開始した後に開弁用の駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに、エアバイパスバルブ24が凍結しているとの凍結判定を行う。また、凍結解凍判定手段は、詳しくは後述するように、凍結判定を行った後に開弁用の駆動電流の電流値が低下したときにエアバイパスバルブ24が解凍したとの解凍判定を行う。
【0026】
また、掃気制御手段は、詳しくは後述するように、凍結解凍判定手段が解凍判定を行った後であって過給機16により過給を行わない非過給域にあるときに、エアバイパスバルブ24の内部を掃気するように制御する。
【0027】
エアフィルタ12は、外部から取得されたエア(空気、吸気)を浄化して、吸気通路14に供給する。
【0028】
エアバイパス通路22は、過給機16のコンプレッサ44の上流側と下流側に接続する。
【0029】
エアバイパスバルブ24は、エアバイパス通路22を流れるエアの流量を制御する電磁弁である。このエアバイパスバルブ24は、例えば、前記の図18に示すような電磁弁であり、コイル42を備える。
【0030】
過給機16は、コンプレッサ44と、タービン46と、を備える。コンプレッサ44は吸気通路14に設けられ、タービン46は排気通路28に設けられている。
【0031】
インタークーラ18は、吸気通路14に設けられ、コンプレッサ44により昇圧された吸気を適温に冷却する。
【0032】
スロットルバルブ20は、吸気通路14に設けられ、アクセルペダル(不図示)の操作に連動して開閉することにより吸気量を調整する。
【0033】
EGR通路34は、一端が排気通路28に接続されており、他端が吸気通路14に接続されている。このEGR通路34は、排気ガス(EGRガス)を吸気系に還流するための通路である。具体的には、EGR通路34には、EGRクーラ36と、EGRバルブ38が設けられている。EGRクーラ36は、EGRガスを冷却する装置である。EGRバルブ38は、EGR通路34を通過するEGRガスの流量を調節する弁であり、吸気系に還流させるEGRガスの量を調節する弁である。
【0034】
DPF30は、排気通路28に設けられ、排気ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕捉する。
【0035】
LPL−EGRシステム40は、過給機16のタービン46の下流側からコンプレッサ44の上流側へEGRガスを還流させるシステムである。このLPL−EGRシステム40は、主に、EGR通路48と、EGRクーラ50と、EGRバルブ52と、排気絞り弁54と、を備える。EGR通路48は、一端が排気通路28における過給機16のタービン46の下流側に接続されており、他端が吸気通路14における過給機16のコンプレッサ44の上流側に接続されている。このEGR通路48は、排気ガス(EGRガス)を吸気系に還流するための通路である。具体的には、EGR通路48には、EGRクーラ50と、EGRバルブ52が設けられている。EGRクーラ50は、EGRガスを冷却する装置である。EGRバルブ52は、EGR通路48を通過するEGRガスの流量を調節する弁であり、吸気系に還流させるEGRガスの量を調節する弁である。
【0036】
マフラ32は、排気通路28に設けられ、排気音を消音する。
【0037】
〔内燃機関の制御装置の作用〕
次に、内燃機関の制御装置1の作用(内燃機関の制御方法)として、ECU10により実行されるエアバイパスバルブ24の制御の処理内容について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、エアバイパスバルブ24を「ABV」と表現することもある。また、「エアバイパスバルブ24が凍結している」とは、エアバイパスバルブ24において軸受108(図18参照)とシャフト110(図18参照)との摺動部に浸入した凝縮水が凍結して、弁体104(図18参照)が作動しない、ということを意味している。さらに、「エアバイパスバルブ24が解凍した」とは、エアバイパスバルブ24において軸受108とシャフト110との摺動部における凝縮水の凍結物が解凍して、弁体104が作動した、ということを意味している。
【0038】
<実施例1>
実施例1において、ECU10は、図2に示すABV制御ルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0039】
そこで、図2に示すルーチンの処理が開始されると、まず、ECU10は、水温センサ56からエンジン26の始動時水温thwsを取り込み(ステップS101)、減速条件でないか否かを判定する(ステップS102)。すなわち、ECU10は、車両が減速状態にないか否かを判定する。
【0040】
そして、減速条件でない場合には、ECU10は、始動時水温thwsが0℃未満であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0041】
そして、始動時水温thwsが0℃未満である場合には、エアバイパスバルブ24の凍結が推定される。すなわち、エアバイパスバルブ24において、前記のように、軸受108(図18参照)とシャフト110(図18参照)との摺動部に浸入した凝縮水が凍結して、軸受108とシャフト110とが固着していることが推定される。
【0042】
そして、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldが「1」であるか否かを判定する(ステップS104)。なお、ECU10は、図3に示すXABV_coldイニシャルセットルーチンにおいて、ステップS201でイグニッションスイッチがオフ(IG_OFF)からイグニッションスイッチがオン(IG_ON)とされた場合に、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「1」に設定する(ステップS202)。
【0043】
再び図2に示すルーチンに戻って、ステップS104でABV凍結初期条件フラグXABV_coldが「1」である場合には、ECU10は、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であるか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、ECU10は、エンジン運転状態が過給域にないか否かを判定する。
【0044】
ここで、過給域判定フラグXHi_pmは、図4に示す過給機判定ルーチンの処理で設定される。図4に示すように、ECU10は、まず、エンジン回転数Neとエンジン負荷率klを取り込み(ステップS301)、取り込んだエンジン回転数Neとエンジン負荷率klをもとにエンジン運転状態が過給域にあるか否かを判定する(ステップS302)。ここで、ステップS302においてエンジン運転状態が過給域にあるか否かを判定する際には、図5に示すようなマップを使用する。なお、エンジン負荷率klとは、例えば、あるエンジン回転数における1サイクル当たりの最大吸気量に対する実吸気量の割合から求めることができる。そして、ステップS302でエンジン運転状態が過給域にある場合は、ECU10は、過給域判定フラグXHi_pmを「1」に設定する(ステップS303)。一方、ステップS302でエンジン運転状態が過給域にない場合は、過給域判定フラグXHi_pmを「0」に設定する(ステップS304)。以上のようにして、過給域判定フラグXHi_pmは設定される。
【0045】
再び図2に示すルーチンに戻って、ステップS105で過給域判定フラグXHi_pmが「0」である場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して加熱制御を実行する(ステップS106)。すなわち、ECU10は、エアバイパスバルブ24のコイル(駆動部)42への開弁用の駆動電流の通電を実行して、発熱させる。
【0046】
次に、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電が初期であるか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、ECU10は、後述する図6にてイグニッションスイッチをオンした直後のABV駆動電流の立ち上がり部分に示すように、イグニッションスイッチがオンされた後に開弁用の駆動電流の電流値が増加し続けており未だ定常値に達していないか否か、を判定する。なお、開弁用の駆動電流の電流値の定常値とは、エアバイパスバルブ24のコイル42(図18参照)への通電開始後に電流の変化が収束したときの電流値である。
【0047】
そして、ステップS107でエアバイパスバルブ24への通電が初期である場合には、ECU10は、電流値変化量Δaを取り込む(ステップS108)。ここで、電流値変化量Δaとは、開弁用の駆動電流の電流値における単位時間当たりの変化量である。
【0048】
次に、ECU10は、電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さいか否かを判定する(ステップS109)。ここで、閾値−Aとは、開弁用の駆動電流の電流値の低下を判定するための値である。さらに、詳しくは、閾値−Aとは、エアバイパスバルブ24が正常に開弁したときの電流値変化量の閾値である。
【0049】
そして、ステップS109で電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さい場合は、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定し(ステップS110)、エアバイパスバルブ24への通電を停止して加熱制御を停止し(ステップS111)、その後の処理を一旦終了する。すなわち、ステップS109で電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さい場合は、エアバイパスバルブ24の開弁が正常に行われ、エアバイパスバルブ24は凍結していないと考えられるので、前記の加熱制御を停止する。
【0050】
一方、ステップS109で電流値変化量Δaが閾値−A以上の場合は、ECU10は、ABV凍結有りフラグXABV_closeを「1」に設定し(ステップS112)、その後の処理を一旦終了する。
【0051】
また、図2に示すように、ステップS102で減速条件である場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行する(減速開弁制御を実行する)(ステップS113)。すなわち、車両が減速状態にある場合には、エアバイパスバルブ24を開弁してサージングを防止するため、ECU10は、エアバイパスバルブ24のコイル42に開弁用の駆動電流を通電させる。次に、ECU10は、電流値変化量Δaを取り込み(ステップS114)、電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さいか否かを判定する(ステップS115)。そして、ステップS115で電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さい場合は、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定し(ステップS116)、その後の処理を一旦終了する。一方、ステップS115で電流値変化量Δaが閾値−A以上の場合は、ECU10は、その後の処理を一旦終了する。
【0052】
また、図2に示すように、ステップS103で始動時水温thwsが0℃以上である場合には、エアバイパスバルブ24が凍結しているとは推定され難い。そこで、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定して(ステップS117)、エアバイパスバルブ24への通電を停止して(減速開弁制御を中断して)(ステップS118)、その後の処理を一旦終了する。
【0053】
また、図2に示すように、ステップS104でABV凍結初期条件フラグXABV_coldが「1」でない場合や、ステップS105で過給域判定フラグXHi_pmが「0」でない場合には、ECU10は、前記のステップS118の処理へ移行する。
【0054】
また、図2に示すように、ステップS107でエアバイパスバルブ24への通電が初期でない場合には、ECU10は、電流値変化量Δaを取り込んで(ステップS119)、電流値変化量Δaが閾値−Bよりも小さいか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、後述する図6における凍結判定後の時間帯として示すように、イグニッションスイッチがオンされた後に開弁用の駆動電流の電流値が既に定常値に達してエアバイパスバルブ24が凍結していると判定された後である場合には、電流値変化量Δaが閾値−Bよりも小さいか否かを判定する。ここで、閾値−Bとは、開弁用の駆動電流の電流値の低下を判定するための値である。さらに、詳しくは、閾値−Bとは、エアバイパスバルブ24が解凍して開弁したときの電流値変化量の閾値である。そして、ステップS120で電流値変化量Δaが閾値−Bよりも小さい場合は、エアバイパスバルブ24が解凍したと考えられるので、ECU10は、前記のステップS110の処理へ移行する。一方、ステップS120で電流値変化量Δaが閾値−B以上である場合は、ECU10は、その後の処理を一旦終了する。
【0055】
以上が図2に示すルーチンの説明である。
【0056】
ここで、実施例1において、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldと、過給域判定フラグXHi_pmと、電流値変化量Δaと、ABVの開弁・閉弁と、ABV制御電圧信号と、ABV駆動電流(エアバイパスバルブ24の開弁用の駆動電流)のタイムチャートを、図6に示す。
【0057】
まず、エアバイパスバルブ24の凍結が推定されるときに、図6に示すように、イグニッションスイッチがオンにされると、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「1」に設定し、ABV制御電圧信号をオフからオンに設定し、エアバイパスバルブ24への通電を開始する。なお、エアバイパスバルブ24の凍結が推定されるときとは、例えば、前記の図2に示すように始動時水温thwsが0℃未満であるときである。
【0058】
そして、エアバイパスバルブ24が凍結しておらずエアバイパスバルブ24が正常に開弁した場合には、アーマチャ112(図18参照)がコイル42(図18参照)の内側を移動することによりコイル42には誘導作用により逆起電力が発生するので、図6にて実線で示されるように、ABV駆動電流の立ち上がり時に領域αに示すABV駆動電流の電流値の低下が生じ、電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さくなる。この場合には、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定し、ABV制御電圧信号をオンからオフに設定し、エアバイパスバルブ24への通電を停止する。
【0059】
これに対し、エアバイパスバルブ24が凍結している場合には、エアバイパスバルブ24は開弁できないので、図6にて破線で示されるように、ABV駆動電流の立ち上がり時にABV駆動電流の電流値は低下することなく増加し続けて定常値に達し、電流値変化量Δaが閾値−Aよりも小さくならない。そこで、ECU10は、このようなABV駆動電流や電流値変化量Δaの挙動をもとに、エアバイパスバルブ24が凍結しているとの凍結判定を行う。
【0060】
そして、このように凍結判定を行った後、ECU10は、ABV駆動電流の電流値を定常値に保持する。このようにして、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を継続させて、エアバイパスバルブ24のコイル42を発熱させる加熱制御を行う。これにより、ECU10は、エアバイパスバルブ24の解凍を行う。
【0061】
ここで、図7に示すように、エンジン運転状態が過給域にないとき(XHi_pm=0のとき)は、ABV制御電圧信号をオンにしてエアバイパスバルブ24を開弁しても、エンジン負荷率kl(エンジントルク)の低下は発生しない。しかしながら、エンジン運転状態が過給域にあるとき(XHi_pm=1のとき)は、ABV制御電圧信号をオンにしてエアバイパスバルブ24を開弁すると、エンジン負荷率kl(エンジントルク)の低下が発生して、過給圧が低下してしまう。そこで、図6に示すように、過給域判定フラグXHi_pmが「1」に設定されてエンジン運転状態が過給域にあるときには、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を中断して、前記の加熱制御を中断し、エアバイパスバルブ24が開弁しないようにする。
【0062】
そして、図6に示すように、その後、過給域判定フラグXHi_pmが「0」に設定されてエンジン運転状態が過給域にないときには、ECU10は、再びABV駆動電流の電流値を定常値に保持して、前記の加熱制御を行い、エアバイパスバルブ24の解凍を行う。
【0063】
その後、エアバイパスバルブ24が解凍して開弁すると、アーマチャ112(図18参照)がコイル42(図18参照)の内側を移動することによりコイル42には誘導作用により逆起電力が発生するので、図6にて破線で示されるように、領域βにてABV駆動電流が定常値より低下して、電流値変化量Δaが閾値−Bよりも小さくなる。そこで、ECU10は、このようなABV駆動電流や電流値変化量Δaなどの挙動をもとに、エアバイパスバルブ24が解凍したとの解凍判定を行う。そして、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定し、ABV制御電圧信号をオンからオフに設定し、ABV駆動電流の通電を停止して、前記の加熱制御を停止する。
【0064】
このように、ECU10は、ABV駆動電流や電流値変化量Δaなどの挙動をもとに凍結判定と解凍判定を行う。そして、ECU10は、凍結判定を行った場合には、解凍判定を行うまで前記の加熱制御を行う。但し、エンジン運転状態が過給域にあるときは、エアバイパスバルブ24への通電を中断して、前記の加熱制御を中断する。
【0065】
以上のような実施例1において、内燃機関の制御装置1は、過給機16のコンプレッサ44の上流側と下流側に接続するエアバイパス通路22と、エアバイパス通路22を流れるエアの流量を制御するエアバイパスバルブ24を有する。そして、ECU10は、エアバイパスバルブ24の凍結が推定されるときに、エアバイパスバルブ24のコイル42へ開弁用の駆動電流の通電を開始した後に開弁用の駆動電流の電流値が低下することなく定常値に達したときに、エアバイパスバルブ24が凍結しているとの凍結判定を行う。また、ECU10は、凍結判定を行った後に開弁用の駆動電流の電流値が定常値より低下したときにエアバイパスバルブ24が解凍したとの解凍判定を行う。このように、開弁用の駆動電流の電流値の挙動に基づきエアバイパスバルブ24の凍結および解凍の判定を行うので、エアバイパスバルブ24の凍結および解凍を効率良く確実に判定できる。
【0066】
また、内燃機関の制御装置1は、過給機16により過給を行う過給域にあるときは開弁用の駆動電流の通電を中断する。これにより、エンジン運転状態が過給域にあるときに、過給圧の低下を防止できる。
【0067】
また、凍結判定を行う際に使用する判定値である閾値−Aと、解凍判定を行う際に使用する判定値である閾値−Bと、を異なる電流値にすることにより、エアバイパスバルブ24が正常に開弁したときと、エアバイパスバルブ24が解凍して開弁したときと、における電流値変化量Δaの挙動の違いに対応でき、凍結判定と解凍判定の精度が向上する。なお、図6に示す例においては閾値−Aは閾値−Bよりも小さくしたが、エアバイパスバルブ24のコイル42や弁体104(図18参照)の位置や構成によって、閾値−Aを閾値−Bと等しくすることや、閾値−Aは閾値−Bよりも大きくすることも考えられる。
【0068】
<実施例2>
次に、実施例2について説明する。実施例2では、前記の実施例1においてエアバイパスバルブ24が解凍した後に、一定条件下で、エアバイパスバルブ24の内部に浸入している凝縮水を排出するためにエアバイパスバルブ24の内部の掃気を行う。このような実施例2において、ECU10は、図8に示すABV制御ルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0069】
そこで、図8に示すルーチンの処理が開始されると、まず、ECU10は、始動時水温thwsを取り込み(ステップS401)、減速条件でないか否かを判定する(ステップS402)。
【0070】
そして、減速条件でない場合には、ECU10は、ABV凍結有りフラグXABV_closeが「1」であるか否かを判定する(ステップS403)。
【0071】
そして、ABV凍結有りフラグXABV_closeが「1」である場合には、ECU10は、ABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」であるか否かを判定する(ステップS404)。
【0072】
そして、ABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」である場合には、ECU10は、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であるか否かを判定する(ステップS405)。
【0073】
そして、過給域判定フラグXHi_pmが「0」である場合には、ECU10は、LPL−EGRシステム40がオフの状態にあるか否かを判定する(ステップS406)。
【0074】
そして、LPL−EGRシステム40がオフの状態にある場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過したか否かを判定する(ステップS407)。すなわち、ECU10は、開弁用の駆動電流の通電を開始してから1秒が経過したか否かを判定する。
【0075】
そして、エアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を停止する(ステップS408)。そして、その後、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過した否かを判定する(ステップS409)。すなわち、ECU10は、開弁用の駆動電流の通電を開始してから1秒が経過した場合には、開弁用の駆動電流の通電を停止し、その後、開弁用の駆動電流の通電を停止してから1秒が経過したか否か、を判定する。
【0076】
そして、エアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行する(ステップS410)。すなわち、ECU10は、開弁用の駆動電流の通電を停止してから1秒が経過した場合には、開弁用の駆動電流の通電を実行する。
【0077】
次に、ECU10は、始動時水温thwsによる掃気回数nを求める(ステップS411)。ここで、始動時水温thwsをもとにエアバイパスバルブ24の掃気回数nを求める際には、図10に示すマップを使用する。
【0078】
なお、ステップS407においてエアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過していない場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(ステップS412)、前記のステップS411の処理に移行する。また、ステップS409においてエアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過していない場合には、ECU10は、前記のステップS411の処理に移行する。
【0079】
次に、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電の実行と停止をn回繰り返したか否かを判定する(ステップS413)。すなわち、掃気回数がn回に達したか否かを判定する。そして、エアバイパスバルブ24への通電の実行と通電の停止をn回繰り返した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を完了させて、ABV掃気完了フラグXABV_o&cを「1」に設定し(ステップS414)、その後の処理を一旦終了する。一方、エアバイパスバルブ24への通電の実行と通電の停止をn回繰り返していない場合には、ECU10は、その後の処理を一旦終了する。
【0080】
また、ステップS402において、減速条件である場合には、ECU10は、減速初期でないか否かを判定する(ステップS415)。例えば、減速開始後1秒以降か否かを判定する。そして、減速初期でない場合には、ECU10は、前記のステップ403の処理に移行する。一方、減速初期である場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(減速開弁制御を実行して)(ステップS416)、その後の処理を一旦終了する。
【0081】
また、ステップS403でABV凍結有りフラグXABV_closeが「1」でない場合には、ECU10は、後述する図9に示す制御を実行する。
【0082】
また、ステップS404においてABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」でない場合や、ステップS405において過給域判定フラグXHi_pmが「0」でない場合や、ステップS406においてLPL−EGRシステム40がオフの状態にない場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を停止して(減速開弁制御を中断して)(ステップS417)、その後の処理を一旦終了する。
【0083】
ここで、図9について説明する。図9に示す処理では、ABV凍結有りフラグXABV_closeが「0」である場合であっても、外気温が低い場合には、一定条件下で、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を実行する。
【0084】
そこで、前記の図8のステップS403でABV凍結有りフラグXABV_closeが「1」でない場合には、図9に示すように、ECU10は、まず、外気温tha_outを取り込み(ステップS501)、外気温tha_outが5℃未満であるか否かを判定する(ステップS502)。そして、外気温tha_outが5℃未満である場合には、ECU10は、ABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」であるか否かを判定する(ステップS503)。そして、ABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」である場合には、ECU10は、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であるか否かを判定する(ステップS504)。そして、過給域判定フラグXHi_pmが「0」である場合には、ECU10は、LPL−EGRシステム40がオフの状態にあるか否かを判定する(ステップS505)。
【0085】
そして、LPL−EGRシステム40がオフの状態にある場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過したか否かを判定する(ステップS506)。そして、エアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を停止して(ステップS507)、エアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過したか否かを判定する(ステップS508)。そして、エアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(ステップS509)、外気温tha_outによる掃気回数nを求める(ステップS510)。ここで、外気温tha_outをもとに掃気回数nを求める際には、図11に示すマップを使用する。
【0086】
なお、ステップS506でエアバイパスバルブ24への通電を実行後1秒経過していない場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(ステップS511)、前記のステップS510の処理に移行する。また、ステップS508でエアバイパスバルブ24への通電を停止後1秒経過していない場合には、ECU10は、前記のステップS510の処理に移行する。
【0087】
次に、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電の実行と停止とをn回繰り返したか否かを判定する(ステップS512)。そして、エアバイパスバルブ24への通電の実行と停止とをn回繰り返した場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を完了させて、ABV凍結有りフラグXABV_closeを「1」に設定し(ステップS513)、その後の処理を一旦終了する。一方、エアバイパスバルブ24への通電の実行と停止とをn回繰り返していない場合には、ECU10は、その後の処理を一旦終了する。
【0088】
また、ステップS502で外気温tha_outが5℃未満でない(外気温tha_outが5℃以上である)場合や、ステップS503でABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」でない場合や、ステップS504で過給域判定フラグXHi_pmが「0」でない場合や、ステップS505でLPL−EGRシステム40がオフの状態にない場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を停止して(減速開弁制御を中断して)(ステップS514)、その後の処理を一旦終了する。
【0089】
ここで、実施例2において、ABV凍結有りフラグXABV_closeと、ABV掃気完了フラグXABV_o&cと、過給域判定フラグXHi_pmと、ABV制御電圧信号のタイムチャートを、図12に示す。
【0090】
図12に示すように、ECU10は、ABV凍結有りフラグXABV_closeが「1」に設定され、ABV掃気完了フラグXABV_o&cが「0」に設定され、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であって過給域にないときに、エアバイパスバルブ24の掃気制御を開始する。その後、ECU10は、エアバイパスバルブ24の掃気回数がn回(図12に示す例では、一例として10回)に達すると、ABV凍結有りフラグXABV_closeを「0」に設定し、ABV掃気完了フラグXABV_o&cを「1」に設定して、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を終了する。なお、図12に示すように、ECU10は、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であって過給域にない条件のもとで行う。
【0091】
このように実施例2では、ECU10は、エアバイパスバルブ24が解凍して解凍判定を行った後であって、エンジン運転状態が過給域にない(非過給域にある)ときに、エアバイパスバルブ24の開弁と閉弁を繰り返して、エアバイパスバルブ24の内部の掃気を行う。これにより、エアバイパスバルブ24に浸入した凝縮水を排出することができ、その後、エアバイパスバルブ24が凍結することを防止できる。このとき、エアバイパスバルブ24が解凍するまでに要した時間が長いほど、エアバイパスバルブ24の掃気回数nを多くすることが望ましい。但し、エンジン運転状態が過給域にあるときには、エアバイパスバルブ24の掃気は行わない。
【0092】
また、ECU10は、エンジン運転状態が過給域になく、かつ、LPL−EGRシステム40がオフの状態にある場合に、エアバイパスバルブ24の掃気を行う。これにより、LPL−EGRシステム40からのEGRガスに含まれる凝縮水が、エアバイパスバルブ24に浸入することを抑制できる。
【0093】
また、ECU10は、図13に示すイグニッションスイッチをオフした時(IG_OFF時)のABV制御ルーチンを実行してもよい。図13に示すように、ECU10は、まず、イグニッションスイッチがオンからオフにされた(IG_ON⇒OFF)か否かを判定する(ステップS601)。そして、イグニッションスイッチがオンからオフにされた場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(ステップS602)、エアバイパスバルブ24を開弁した後に、イグニッションスイッチがオンからオフにされてから0.5秒後(IG_ON⇒OFF_0.5秒後)にエンジン26を停止させ(ステップS603)、その後の処理を一旦終了する。一方、ステップS601でイグニッションスイッチがオンからオフにされていない場合には、その後の処理を一旦終了する。このようにして、イグニッションスイッチをオフした時にエアバイパスバルブ24の内部の掃気を行ってもよい。
【0094】
実施例2によれば、ECU10は、解凍判定を行った後であって過給機16により過給を行わない非過給域にあるときに、エアバイパスバルブ24の内部を掃気するように制御する。これにより、エアバイパスバルブ24の内部に残存する凝縮水を排出できる。そのため、エアバイパスバルブ24が凍結することを防止できる。
【0095】
また、ECU10は、開弁用の駆動電流の通電が開始されてから解凍判定が行われるまでの解凍制御時間、または、始動時水温thws、または、外気温tha_outに応じて、エアバイパスバルブ24の内部を掃気する掃気回数nを規定する。これにより、エアバイパスバルブ24の凍結状況に応じて、解凍後のエアバイパスバルブ24の内部に残存する凝縮水を効果的に排出できる。
【0096】
また、内燃機関の制御装置1は、過給機16のタービン46の下流側からコンプレッサ44の上流側へEGRガスを還流させるLPL−EGRシステム40を有する。そして、ECU10は、LPL−EGRシステム40によりEGRガスが還流されていないときに、エアバイパスバルブ24の内部を掃気するように制御する。これにより、エアバイパスバルブ24の内部を掃気するときに、エアバイパスバルブ24の内部へLPL−EGRシステム40から還流されるEGRガスに含まれる凝縮水が浸入することを防止できる。そのため、EGRガスに含まれる凝縮水を起因としてエアバイパスバルブ24が凍結することを防止できる。
【0097】
また、ECU10は、イグニッションスイッチがオフにされたときに、エアバイパスバルブ24の内部を掃気するように制御する。これにより、エンジン26を停止するときにエアバイパスバルブ24の内部に存在しうる凝縮水を排出するので、次にエンジン26を始動するときにエアバイパスバルブ24が凍結していることを防止できる。
【0098】
なお、エアバイパスバルブ24の内部を掃気する時機(タイミング)は、例えば、車両の走行中において、一定時間経過し、かつ、諸条件が整ったとき毎に行うこととしてもよい。
【0099】
<実施例3>
次に、実施例3について説明する。実施例3では、エンジン26の始動後に水温が所定温度以上になるまで、エアバイパスバルブ24への通電を継続して、エアバイパスバルブ24を解凍する。このような実施例3において、ECU10は、図14に示すABV制御ルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0100】
そこで、図14に示すルーチンの処理が開始されると、まず、ECU10は、始動時水温thwsを取り込み(ステップS701)、減速条件でないか否かを判定する(ステップS702)。
【0101】
そして、減速条件でない場合には、ECU10は、始動時水温thwsが0℃未満であるか否かを判定する(ステップS703)。
【0102】
そして、始動時水温thwsが0℃未満である場合には、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldが「1」であるか否かを判定する(ステップS704)。
【0103】
そして、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldが「1」である場合には、ECU10は、水温thwを取り込み(ステップS705)、エンジン26の現在の水温thwが30℃未満であるか否かを判定する(ステップS706)。
【0104】
そして、水温thwが30℃未満である場合には、ECU10は、過給域判定フラグXHi_pmが「0」であるか否かを判定する(ステップS707)。
【0105】
そして、過給域判定フラグXHi_pmが「0」である場合には、エアバイパスバルブ24への通電を実行して加熱制御を実行し(ステップS708)、その後の処理を一旦終了する。
【0106】
また、ステップS702で減速条件である場合には、ECU10は、エアバイパスバルブ24への通電を実行して(減速開弁制御を実行して)(ステップS709)、その後の処理を一旦終了する。また、ステップS703で始動時水温thwsが0℃未満でない(0℃以上である)場合には、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定して(ステップS710)、エアバイパスバルブ24への通電を停止して(減速開弁制御を中断して)(ステップS711)、その後の処理を一旦終了する。また、ステップS706で水温thwが30℃以上である場合には、ECU10は、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldを「0」に設定して(ステップS712)、前記のステップS711へ移行する。また、ステップS707で過給域判定フラグXHi_pmが「0」でない場合には、ECU10は、前記のステップS711へ移行する。
【0107】
このように実施例3では、エンジン26の始動後に、水温が所定温度以上になるまで、エアバイパスバルブ24への通電を継続する。これにより、エアバイパスバルブ24を解凍する。但し、過給域にあるときは一旦エアバイパスバルブ24への通電を停止して、過給域でのエアバイパスバルブ24の開弁による過給圧低下を回避する。
【0108】
<実施例4>
次に、実施例4について説明する。実施例4では、実施例3における所定温度を始動時水温thwsに応じて設定する。このような実施例4において、ECU10は、図15に示すABV制御ルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0109】
実施例4では、実施例3と異なる点として、ECU10は、始動時水温thwsに応じた加熱判定水温thwabvを求め(ステップS806)、水温thwが加熱判定水温thwabvよりも低いか否かを判定する(ステップS807)。ここで、始動時水温thwsに応じた加熱判定水温thwabvを求める際には、図16に示すマップを使用する。なお、その他のステップは、実施例3と共通する。
【0110】
ここで、実施例4において、ABV凍結初期条件フラグXABV_coldと、ABV制御電圧信号と、水温(エンジン水温)のタイムチャートを、図17に示す。図17の実線に示すように、始動時水温thwsが0℃よりも低いときには、エアバイパスバルブ24が凍結していると推定し、イグニッションスイッチがオンされた(IG_ON)ときにエアバイパスバルブ24への通電を実行する。そして、その後、水温が加熱判定水温thwabvよりも大きくなったときに、エアバイパスバルブ24が解凍されたと判定し、エアバイパスバルブ24への通電を停止する。一方、図17の破線に示すように、始動時水温thwsが0℃以上のときには、エアバイパスバルブ24が凍結していないと推定し、イグニッションスイッチがオンされた(IG_ON)ときにエアバイパスバルブ24への通電を実行しない。
【0111】
このように実施例4では、実施例3と同等に、エンジン26の始動後に水温が所定温度以上になるまでエアバイパスバルブ24への通電を継続するが、始動時水温thwsが低いほど、すなわち吸気温が低いほど、前記の所定温度を高く設定する。これにより、エアバイパスバルブ24を確実に解凍する。なお、始動時水温thwsが低いほど、水温が所定温度に到達してからの積算吸入空気量(積算Ga)や積算時間を大きくしてもよい。
【0112】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0113】
1 内燃機関の制御装置
10 ECU
14 吸気通路
16 過給機
22 エアバイパス通路
24 エアバイパスバルブ
26 エンジン
28 排気通路
40 LPL−EGRシステム
42 コイル
44 コンプレッサ
46 タービン
48 EGR通路
50 EGRクーラ
52 EGRバルブ
56 水温センサ
thws 始動時水温
XABV_cold ABV凍結初期条件フラグ
XHi_pm 過給域判定フラグ
Δa 電流値変化量
XABV_close ABV凍結有りフラグ
−A 閾値
−B 閾値
XABV_o&c ABV掃気完了フラグ
tha_out 外気温
thw 水温
thwabv 加熱判定水温
図1
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