(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様に成形加工およびリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが幅広い分野で多用されている。
【0003】
例えば、1,3−ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン単量体の重合体、または、共役ジエン単量体と、当該共役ジエン単量体と共重合可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体と、の共重合体は、耐衝撃性透明樹脂またはポリオレフィンおよびポリスチレン樹脂の改質剤として非常に重要である。
【0004】
また、上記共役ジエン系重合体に含まれるオレフィン性二重結合部分に水素を付加させた水添重合体は、耐候性に優れるという特徴を有する。この特徴を活かし、水添重合体は、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履物などに使用されている。
【0005】
一般的に、上記共役ジエン系重合体は、アルキルリチウムなどを開始剤としたリビングアニオン重合によって製造される。さらに、水添重合体を得る場合には、重合後に周期律表第VIII族もしくは第IV族金属を触媒としてオレフィン性二重結合部分に水素添加反応(以下、「水素化反応」とも言う。)を行う。
【0006】
オレフィン性二重結合を有する重合体を水素化させる方法については様々な方法が報告されており、例えば、周期律表第VIII族金属、特に、ニッケルまたはコバルトの化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用した水素化の方法が知られている。他にも、周期律表第IV族金属であるチタンの化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用し、共役ジエン系重合体の不飽和二重結合を水素化する方法が知られている。
【0007】
以上のように、熱可塑性エラストマー、特に、上記したような共役ジエン系重合体や、その水添重合体には、開始剤や水素添加触媒などに由来する金属残渣(以下、「触媒残渣」とも言う。)が含まれることになる。重合体溶液中の金属残渣は、製品のブツ、表面肌荒れ、着色、濁りなど様々な品質低下に繋がるため、製造工程で効率的に除去しなければならない。
【0008】
そこで、重合体溶液中に残存する金属残渣を除去する方法として、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1では、噛み合せ構造を有する回転分散機を用いて、重合体溶液と水とを激しく混合することによって、重合体溶液中のリチウム残渣を除去する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、酸化剤とジカルボン酸を用いてニッケルをはじめとする周期律表第VIII族金属の残渣を除去する方法が開示されている。さらに、特許文献3では、ケイ酸塩に吸着させる方法が開示されている。上記以外にも、リチウムや周期律表第VIII族金属の除去については、これまでに多数の先行文献で開示されている。
【0010】
一方、チタン残渣を除去する方法に関してはこれまで殆ど報告されていなかった。例えば、特許文献4に、無機酸とアルコールと水とを用いたチタン残渣の除去が開示されている。特許文献5に、有機酸とアルコールと水とを用いたチタン残渣の除去が開示されている程度である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0019】
〔重合体溶液の精製方法〕
本実施形態の、リビングアニオン重合によって得られた、共役ジエン系重合体溶液の精製方法は、
少なくとも、リチウム及び/又はチタンを含む重合体溶液を調製する工程1と、
前記重合体溶液に有機系凝集剤を添加・混合する工程2と、を含む。
【0020】
〔工程1〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程1は、少なくとも、リチウム及び/又はチタンを含む重合体溶液を調製する工程である。
【0021】
(リチウム及び/又はチタンを含有する重合体溶液)
本実施形態で精製される重合体溶液は、リビングアニオン重合によって得られた、共役ジエン系重合体溶液であり、少なくとも、リチウム若しくはチタン又はこれらの両方を含有するものであり、更にアルミニウムを含んでいてもよい。このような重合体溶液を調製する方法は、特に制限されないが、例えば、リチウム系重合触媒によって重合した共役ジエン系重合体に、チタン化合物と各種還元剤とから成る触媒下で水素化反応を行い、水素化された共役ジエン系共重合体溶液を調製する方法が挙げられる。また、本実施形態では、精製される重合体溶液として水素化反応前の共役ジエン系重合体溶液を調製することもできる。
【0022】
(共役ジエン系重合体)
前記共役ジエン系重合体はリビングアニオン重合によって得られたものであれば特別に限定されないが、具体的には、数平均分子量500〜1,000,000である共役ジエンホモポリマー、または共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体とのランダム、テーパー若しくはブロック共重合体などを使用することができる。また、これらの共役ジエン単位の不飽和二重結合に対して水素添加をした重合体も使用可能である。本実施態様では、リビングアニオン重合に用いられた触媒残渣、水素化反応に用いられた触媒残渣を効率よく除去することができる。
【0023】
本実施形態において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めることができる。
【0024】
使用可能な共役ジエン単量体は、特に限定されないが、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどのような4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエン系化合物を使用することができ、この中でも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンを使用することが好ましい。共役ジエン単量体と共重合が可能なビニル芳香族系単量体は、特に限定されないが、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、アルコキシ基で置換されたスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレンおよびアルキル基で置換されたビニルナフタレンなどのようなビニルアリル化合物を使用することができ、この中でも、スチレンおよびα−メチルスチレンを使用することが好ましい。
【0025】
このとき、共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体を混合して共重合体を製造する場合は、特に限定されないが、5:95〜95:5質量比を混合使用することができる。共役ジエン単量体の使用量が5質量比以上であれば、耐衝撃性が良好で、さまざまな用途に使用が可能となる。また、共役ジエン単量体の使用量が95質量比以下であれば、製品加工性が良好となる。そのため前記範囲を維持することが好ましい。
【0026】
このような共役ジエン系重合体はリビングアニオン重合により製造する。例えば、本実施形態では有機リチウム化合物を開始剤として利用したアニオン重合を行うことができる。有機リチウム化合物は、特に制限されないが、具体的には、n−ブチルリチウムやs−ブチルリチウムなどを使用することができる。このような開始剤の使用量は当分野で一般的に使用されるものであり、目的とする高分子の分子量により自由自在に調節が可能である。
【0027】
(水素化反応)
得られた重合体溶液に対して、その後、水素化反応を行うことで水素化された共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0028】
前記水素化反応に使用されるチタン化合物としては当分野で一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、具体的には、シクロペンタジエニルチタン化合物であり、例えば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物、シクロペンタジエニル(アルコキシ)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキル化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアリル化物およびビス(シクロペンタジエニル)ジアルコキシ化合物から選択されるものであり、単独または混合して使用することができる。
【0029】
前記チタン化合物は、共役ジエン系重合体100g当り0.01〜20mmolを使用することが好ましく、重合体100g当り0.05〜5mmolを使用することがより好ましい。触媒として使用するチタン化合物の使用量が0.01mmol以上であれば、水添反応が効率よく進行し、生産性に優れる。また、20mmol以下であれば、十分な触媒配合量となり経済性がよく、さらに、反応後に触媒除去のために過量の化学物質を使用することも抑制される。そのため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0030】
前記チタン化合物と共に使用することができる還元剤としては、当分野で一般的に使用される還元剤であれば特に限定されないが、具体的には、アルキルアルミニウム化合物、アルキルマグネシウム化合物、有機リチウム化合物、金属ヒドリドなどが挙げられ、単独でも複数種を組み合わせても使用することができる。
【0031】
上記チタン系触媒を用いた水素添加反応としては、特に限定されないが、具体的には、国際特許出願第00/08069号、米国特許第4,501,857号、第4,673,714号、第4,980,421号、第5,753,778号、第5,910,566号、第6,020,439号などに記載された方法を用いて実施することができる。
【0032】
前記水素化反応は不活性溶媒中で行うことができる。ここで、不活性溶媒とは重合反応や水素化反応の際のいずれの反応物とも反応しない溶媒を意味する。このような不活性溶媒は、特に限定されないが、具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンのような脂環族炭化水素類;およびジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類を挙げることができ、これらの中から選択して単独または混合して使用することができる。
【0033】
溶媒に対する共役ジエン系重合体の濃度は、特に制限されないが、5〜50質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。重合体濃度が前記範囲内であると、取り扱いし易い重合体溶液粘度に調製でき、且つ、生産性が良好となるので好ましい。
【0034】
一方、水素化反応は、重合体溶液を水素やヘリウム、アルゴン、窒素のような不活性気体雰囲気下で一定温度に維持した後、撹拌または未撹拌状態で水素化触媒を添加し、水素ガスを一定圧力で注入することで行うことが好ましい。さらに、水素化反応の温度は30〜150℃、圧力は2〜30kg/cm
2の範囲で行うことが好ましい。
【0035】
前記温度が30℃以上であれば、反応性が高く、十分な反応収率を得ることができる。また、150℃以下であれば、高分子の熱老化による副反応が抑制される。さらに、圧力が2kg/cm
2以上であれば、反応速度が速く、反応時間が短くなる。またさらに、30kg/cm
2以下であれば、反応器に投資する費用が抑えられ、経済性の観点から好ましい。そのため、前記範囲を維持するのが好ましい。
【0036】
上記のような水素化触媒により、数平均分子量500〜1,000,000の共役ジエン系重合体、または共役ジエン単量体とビニル芳香族系モノマーとのランダム、テーパー、若しくはブロック共重合体の共役ジエン単位の不飽和二重結合に対して選択的に水素化が可能である。
【0037】
水素化反応前の共役ジエン系重合体溶液、又は水素化反応後の共役ジエン系重合体溶液から、金属残渣を除去する方法を以下に詳述する。
【0038】
〔工程2〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程2は、前記重合体溶液に有機系凝集剤を添加・混合する工程である。
【0039】
(有機系凝集剤)
本実施形態では、水素化反応前の共役ジエン系重合体溶液又は水素化された共役ジエン系重合体溶液に、有機系凝集剤を添加する。有機系凝集剤を添加することで、重合体溶液中の触媒残渣が肥大化し、その沈降速度を速くすることが可能となる。
【0040】
本実施形態で用いられる有機系凝集剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、1,000〜20,000,000であることが好ましく、1,000,000〜20,000,000であることがより好ましく、3,000,000〜12,000,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1,000以上であれば、金属残渣の捕集能力がより向上する。また、分子量が20,000,000以下であれば、粘度及び溶解のし易さの面で取り扱いが容易となる。
【0041】
有機系凝集剤の種類としては、特に制限されないが、カチオン性凝集剤、アニオン性凝集剤、両性凝集剤、ノニオン性凝集剤から選ばれる1種又は2種以上の有機系高分子凝集剤が好適に使用される。このような有機系凝集剤としては、特に制限されないが、具体的には、アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物等のカチオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体等のアニオン性高分子凝集剤;アクリル酸4級アンモニウム塩とアクリル酸ナトリウムとの共重合体等の両性高分子凝集剤;アクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等のノニオン性高分子凝集剤等が挙げられる。
この中でも、カチオン性高分子凝集剤が金属残渣との相互作用が特に良好であるため、より効率よく金属残渣を除去することが可能となる。
【0042】
中でも、より効率よく金属残渣を除去するには、上記カチオン性高分子凝集剤で、重量平均分子量が1,000,000〜20,000,000であることがより好ましく、3,000,000〜12,000,000であることがさらに好ましい。
【0043】
(有機系凝集剤の配合量)
また、有機系凝集剤の配合量は、特に制限されないが、重合体溶液中の重合体の質量に対して、0.0001質量部〜10質量部添加することが好ましく、0.001質量部〜5質量部添加することがより好ましく、0.01質量部〜1質量部添加することがさらに好ましい。配合量が0.0001質量部以上であれば触媒残渣除去のし易さの観点から好ましい。また、配合量が10質量部以下であれば、水に溶解せず、配管のつまり、または製品中への異物混入等の原因を防止する観点から好ましい。
【0044】
(添加方法)
有機系凝集剤の添加方法は、特に制限されないが、重合体溶液に対してそのまま添加しても、水溶液の状態で添加してもよい。この中でも、重合体溶液に対する分散性の観点から、水溶液として添加することが好ましい。
【0045】
(混合方法)
本実施形態における共役ジエン系重合体溶液と有機系凝集剤の混合方法は特に限定されないが、共役ジエン系重合体溶液中の触媒残渣と有機系凝集剤を十分に接触させるために、大きなせん断力・衝突力、摩擦力を与えられる混合方法が好ましい。せん断力を加えるための具体的な装置としては、攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、あるいはポンプ等を挙げることができる。衝突力あるいは摩擦力を加えるための具体的な装置としては、ボールミルあるいはロッドミル等のミル、あるいは高圧粉砕ロール等が挙げられる。
【0046】
中でも、特開平6−136034のような噛み合せ構造を有する回転分散機を用いて、P/V値≧3×10
4(kw/m
3)、周速(2πr・n)≧5(m/s)の条件で混合を行うことが好ましい。これにより、強力なせん断を与えることができる。ここでP(kw)とは分散機の動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。V(m
3)は混合部の空間容積であり、溶液にせん断力を与える部分の空間容積である。また、r(m)とは、ロータ最外歯の半径であり、n(s
-1)とはロータの回転数である。P/V値が3×10
4(kw/m
3)以上で、周速が5(m/s)以上であれば、触媒残渣と有機系凝集剤とが十分に接触し、下流工程での触媒残渣の除去効率が向上する。
【0047】
(除去方法)
本実施形態においては、工程2で添加した有機系凝集剤の効果により、重合体溶液に含まれる金属残渣は凝集・肥大化しており、除去されやすい状態になっている。凝集・肥大化した金属残渣の除去方法に関しては、当分野において一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、濾過、静置分離、遠心分離などの物理的な方法で容易に除去することが可能である。
【0048】
中でも、前記共役ジエン系重合体溶液と有機系凝集剤とを混合した後、混合された重合体溶液に遠心加速度を付与することで効率的に有機系凝集剤と金属残渣を除去することが可能である。遠心加速度を付与する方法としては特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。この中でも、工業的に触媒残渣の除去を行うには連続式の方が好ましい。連続式の装置としては、特に限定されないが、デカンター型やディスク型などの遠心分離機がある。この中でも、工程2の混合後に、ディスク型遠心分離機を用い、有機系凝集剤と混合された重合体溶液に対して、500G以上の相対加速度を付与することが好ましい。高い分離能力を有するディスク型遠心分離機としては、例えば、アルファ・ラバル社製やウエストファリア社製の装置が挙げられる。このような装置を用いて500G以上の相対加速度を付与することで、触媒残渣の除去効率が向上する。
【0049】
なお、相対遠心加速度(RCF:Rerative Centrifugal Force)は、下記一般式で求めることができる。
RCF=1118×r×N
2×10
-8(G)
r:回転半径(cm)
N:1分間当たりの回転数(rpm)
【0050】
本実施形態においては、相対遠心加速度が高ければ高いほど触媒残渣の除去効率が向上する。そのため、相対遠心加速度は500G以上が好ましく、3000G以上がより好まく、4000G以上がさらに好ましい。
【0051】
(精製後の重合体溶液)
以上のようにして得られた精製後の重合体溶液は、精製前の重合体溶液と比べ触媒残渣が少ないものとなる。そのため、透明性に優れ、色相の良好な重合体溶液となりうる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
〔製造例1〕
アルキルリチウムを開始剤とした従来公知のアニオン重合法によって、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(スチレン含量:30.0質量%、ブタジエン含量:70.0質量%、数平均分子量:50,000)の重合体溶液(A)を得た。その後、真空乾燥させ得られた固体状の重合体(A)中に含まれる金属量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析(株式会社島津製作所社製、ICPS―7510。以下、同じ。)を通じて高分子内に存在する金属量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
〔製造例2〕
製造例1によって得られた、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(スチレン含量30.0%、ブタジエン含量70.0%、数平均分子量50,000)400gを含むシクロヘキサン溶液2800gを5Lオートクレーブ反応器に入れ400rpmで60℃に加熱した。その後、トリエチルアルミニウム1.5mmolとビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライド0.8mmolを添加して10kg/cm
2の水素で加圧して水素化反応を行うことで水素化ポリマー溶液Bを得た。このように水素化された高分子をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%以上の二重結合の水素化を確認した。本実施形態で言う数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた数平均分子量である。(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)
【0055】
重合体溶液を真空乾燥させ、得られた固体状の重合体を誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて高分子内に存在する金属量を測定した。該測定結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
〔実施例1〕
製造例1で得られたポリマー溶液Aに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液、及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、得られた固体状の重合体を誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて高分子内に存在する金属の量を測定した。
【0058】
また、得られた固体状の重合体を180℃でロール混練した後に、200℃の熱プレスにより2mmのシート状に成形した。この試験片を用いて比色計よりb*値を測定した。b*値は−60〜60の値を持ち、−60は青色を示し、60は黄色を示す。(日本電色株式会社製 NDJ−400−2)
【0059】
さらに、上記2mmシートを用いて濁度計よりポリマーのヘイズを測定した。ヘイズとは濁度を表す値であり、ランプにより照射され試料中を透過した全透過率Tと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Dにより、濁度(H)=D/T×100として求められる。
該測定結果を表2に示す。(日本電色株式会社製 1001DP)
【0060】
〔実施例2〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリルアミド系アニオン性凝集剤であるAP−105(ハイモ株式会社製 重量平均分子量12,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0061】
〔実施例3〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0062】
〔実施例4〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリルアミド系ノニオン性凝集剤であるSS−200H(ハイモ株式会社製 重量平均分子量12,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0063】
〔実施例5〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系両性凝集剤であるMS−882(ハイモ株式会社製 重量平均分子量7,500,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0064】
〔実施例6〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたカチオン性凝集剤であるポリエチレンイミン10000(純正化学株式会社製 重量平均分子量10,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0065】
〔実施例7〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、ポリマー溶液を遠心分離機(アルファ・ラバル社製ディスク型遠心分離機、相対遠心加速度3000G)に流量2.0T/hrで通し、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0066】
〔実施例8〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により上記ポリマー溶液及び凝集剤を溶解させた2容積倍の水を60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、ポリマー溶液を遠心分離機(アルファ・ラバル社製ディスク型遠心分離機、相対遠心加速度500G)に流量2.0T/hrで通し、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0067】
〔実施例9〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、撹拌器付き混合器に入れ、60℃で20分程激しく撹拌させて混合液を得た。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0068】
〔実施例10〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに対して、2容積倍の水に溶解させたポリアクリル酸エステル系カチオン性凝集剤であるMp−384(ハイモ株式会社製 重量平均分子量5,000,000)をポリマー量に対して0.1質量部添加した。次いで、撹拌器付き混合器に入れ、60℃で20分程激しく撹拌させて混合液を得た。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、ポリマー溶液を遠心分離機(アルファ・ラバル社製ディスク型遠心分離機、相対遠心加速度3000G)に流量2.0T/hrで通し、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0069】
〔比較例1〕
製造例2で得られたポリマー溶液Bに、2容積倍の水を噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010)により60℃、7600rpmで1sec混合した。この時のP/V値は25×10
4(kw/m
3)、周速は28(m/s)であった。その後、混合液は60℃に加温されたタンクに送り静置分離によって、水相の分離操作を行った後、分離したポリマー溶液を真空乾燥させ、実施例1と同様の方法で、重合体溶液中の金属残渣の量と、重合体の色相および濁度を測定した。該測定結果を表2に示す。
【0070】
【表2】