(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901415
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】研削盤ラインおよび研削盤ライン生産システム
(51)【国際特許分類】
B24B 19/12 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
B24B19/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-107474(P2012-107474)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233617(P2013-233617A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】道吉 和則
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖夫
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−322270(JP,A)
【文献】
特開2004−345010(JP,A)
【文献】
特開2003−094288(JP,A)
【文献】
特開2007−313596(JP,A)
【文献】
特開平01−306166(JP,A)
【文献】
特開平10−217070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B19/12
B24B5/18
B24B5/42
B23Q15/013
B23Q41/04−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸支されるジャーナル部と、このジャーナル部の回転中心に対して偏心した偏心部と、を有する偏心シャフトを加工する研削盤ラインであって、
前記ジャーナル部を研削する心無研削盤と、
前記ジャーナル部を支持した状態で前記偏心シャフトを回転させながら前記偏心部を研削する砥石を進退移動させて当該偏心部を研削する偏心部研削盤と、を備え、
前記心無研削盤により前記ジャーナル部を研削するジャーナル粗研工程と、
前記偏心部研削盤により前記偏心部を研削する偏心部研削工程と、を実行し、
この偏心部研削工程の後工程で、前記ジャーナル粗研工程を行った前記心無研削盤に戻ってジャーナル仕上研工程を実行すること、
を特徴とする研削盤ライン。
【請求項2】
前記ジャーナル粗研工程、前記偏心部研削工程、および前記ジャーナル仕上研工程における前記偏心シャフトの加工姿勢がいずれの工程でも長手方向が平行になるようにそれぞれ、前記心無研削盤および前記偏心部研削盤が配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載の研削盤ライン。
【請求項3】
前記心無研削盤、および前記偏心部研削盤の2台の研削盤でライン構成し、
前記心無研削盤により前記ジャーナル粗研工程を実行した後に、前記偏心部研削盤により前記偏心部研削工程を実行し、再度戻って前記心無研削盤により前記ジャーナル仕上研工程を実行することを特徴とする請求項2に記載の研削盤ライン。
【請求項4】
前記2台の研削盤からなる請求項3に記載の研削盤ラインを複数配列して構成したことを特徴とする偏心シャフトの研削盤ライン生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心シャフトを加工する研削盤ラインおよび研削盤ライン生産システムに係り、特に、心無研削盤と偏心部研削盤を備えた研削盤ラインおよび研削盤ライン生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャーナル部、および偏心部からなるコンプレッサシャフト等の偏心シャフトを研削する研削方法としては、ジャーナル部を基準として偏心部を偏心部研削盤(いわゆる偏心ピン研削盤)で研削する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1に記載の加工方法では、工作物が回転する回転軸(C軸)と、このC軸に対して垂直なX軸方向の砥石台の往復運動とを正確に同期させることにより(
図8参照)、偏心した円筒ピンを高精度の真円に研削加工する。
【0003】
偏心シャフトを研削する研削盤ラインでは、例えば、ジャーナル部の基準加工を心無研削盤(例えば、特許文献2参照)で行ってから(粗研削工程)、ジャーナル部を基準として偏心部を偏心部研削盤で行い(偏心部研削工程)、心無研削盤でジャーナル部の仕上研削を行う(仕上研削工程)。
【0004】
このため、従来の研削盤ラインでは、通常、第1工程を心無研削盤による粗研削工程、第2工程を偏心部研削盤による偏心部研削工程、第3工程を心無研削盤による仕上研削工程として、心無研削盤、偏心部研削盤、および心無研削盤を直列にライン構成する。
【0005】
一方、従来の3つの工程からなる研削盤ラインにおいて、各工程のサイクルタイム(加工時間)を比較すると、第1工程と第3工程における心無研削盤による加工時間が第2工程の偏心部研削盤よりも小さいので、偏心部研削盤をさらに1台追加して2台にして偏心部研削工程の生産能力を高めてサイクルタイムを平準化して、生産性を高めることが考えられる。
【0006】
つまり、偏心部研削盤をさらに1台追加して2台にした場合には、従来の研削盤ライン200は、
図3と
図4に示すように、第1工程におけるジャーナル部W11,W12の粗研削工程を第1心無研削盤210によって行い、第2工程における偏心部W2の偏心部研削工程を第1偏心部研削盤220と第2偏心部研削盤230の2台の偏心部研削盤220,230のいずれかによって行い、第3工程におけるジャーナル部W11,W12の仕上研削工程を第2心無研削盤240によって行う直列に配列した4台の研削盤による3工程の研削加工工程からなるライン構成となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−94288号公報(
図1、
図8)
【特許文献2】特開2007−313596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近時、コンプレッサシャフト等の偏心シャフトは、ニーズが多様化して仕様のバリエーションが豊富になり、生産形態も多品種少量生産型に移行する傾向にあるところ、従来の4台の研削盤による3工程の研削盤ライン200では、多様なニーズに柔軟に対応しにくいという問題があった。
つまり、従来の4台3工程による研削盤ライン200では、第1に、一方向のワーク搬送方向Lに流れるラインであるため、作業者(不図示)がワークの種類に応じて段取り替えをする際に4台の研削盤のうちの1台を停止すると他の3台も停止するので、段取り替えが頻繁に発生するほど著しく生産性が低下するという問題があった。
【0009】
第2に、従来の直列に配列した4台3工程による研削盤ライン200では、
図3に示すように、作業者(不図示)がラインのワーク搬送方向Lに沿って移動するため、各工程の研削盤を作業者側に向けて配列すると、ワークWの投入姿勢が第1工程(第1心無研削盤210)と第4工程(第2心無研削盤240)では、ラインのワーク搬送方向Lに直交する方向であり、第2工程(第1偏心部研削盤220)と第3工程(第2偏心部研削盤230)では、ラインのワーク搬送方向Lに平行する方向となってしまい次工程への搬送方向とワークWの投入方向が異なるため、作業性が悪く、自動化する場合にもワークWの回転動作が必要になって取り扱いが複雑になり搬送工数が増大し生産性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ライン構成を簡素化し、しかも段取り替えを円滑かつ迅速にして生産性を向上させ、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることが可能な偏心シャフトの研削盤ライン、およびこの研削盤ラインを複数配列して構成した研削盤ライン生産システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、軸支されるジャーナル部と、このジャーナル部の回転中心に対して偏心した偏心部と、を有する偏心シャフトを加工する研削盤ラインであって、前記ジャーナル部を研削する心無研削盤と、前記ジャーナル部を支持した状態で前記偏心シャフトを回転させながら前記偏心部を研削する砥石を進退移動させて当該偏心部を研削する偏心部研削盤と、を備え、前記心無研削盤により前記ジャーナル部を研削するジャーナル粗研工程と、前記偏心部研削盤により前記偏心部を研削する偏心部研削工程と、を実行し、この偏心部研削工程の後工程で、前記ジャーナル粗研工程を行った前記心無研削盤に戻ってジャーナル仕上研工程を実行すること、を特徴とする。
【0012】
本発明の請求項1に係る研削盤ラインは、前記ジャーナル部を研削する心無研削盤と、前記偏心部を研削する偏心部研削盤と、からなる研削ラインを構築することで、ライン構成を簡素化しながら研削加工を効率的に行うことが可能となる。
また、偏心部研削工程を実行した後で、前記ジャーナル粗研工程を行った前記心無研削盤に戻ってジャーナル仕上研工程を行うことで、粗研工程と仕上研工程を別個の心無研削盤で行う場合よりも心無研削盤の台数を削減して、ライン構成を簡素化することができる。そして、削減した心無研削盤で他のワークの加工を行うことができるため、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることができる。また、従来の研削盤ライン200(
図3参照)よりもライン構成を簡素化したことで、ワークの形状等の変更による段取り替えによる稼働率の低下を抑制することができる。
【0013】
また、1台の心無研削盤で粗研工程と仕上研工程の2つの工程を行うことで、心無研削盤および偏心部研削盤における加工工数が同じになるようにしてサイクルタイムを平滑化して、生産性を向上させることができる。
【0014】
このようにして、本発明の請求項1に係る研削盤ラインは、ライン構成を簡素化し、しかも段取り替えを円滑かつ迅速にして生産性を向上させることができるため、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることができる。
【0015】
なお、「研削盤ライン」の用語は、心無研削盤および偏心部研削盤を備えて構成された研削加工工程を含む生産ラインの意であり、マシニングセンタ等の他の工作機械による加工工程を排除するものではない。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の研削盤ラインであって、前記ジャーナル粗研工程、前記偏心部研削工程、および前記ジャーナル仕上研工程における前記偏心シャフトの加工姿勢(軸の方向)がいずれの工程でも長手方向が平行になるようにそれぞれ、前記心無研削盤および前記偏心部研削盤が配置されていること、を特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、前記いずれの工程でも長手方向が平行になるように向きを揃えてそれぞれ前記心無研削盤および前記偏心部研削盤を配置することで、ワークである偏心シャフトの搬送方向、並びに投入および払い出しの方向を一致させることができるため、作業者の作業性をよくして生産性を向上させ、さらに研削盤ラインにおける自動化を円滑に実現することが容易となる。
【0018】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の研削盤ラインであって、前記心無研削盤、および前記偏心部研削盤の2台の研削盤でライン構成し、前記心無研削盤により前記ジャーナル粗研工程を実行した後に、前記偏心部研削盤により前記偏心部研削工程を実行し、再度戻って前記心無研削盤により前記ジャーナル仕上研工程を実行することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、前記心無研削盤、および前記偏心部研削盤の2台の研削盤でライン構成したことで、従来の研削盤ライン200(
図3参照)よりもライン構成をより簡素化して、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることができる。
【0020】
本発明の請求項4に係る発明は、前記2台の研削盤からなる請求項3に記載の研削盤ラインを複数配列して構成したことを特徴とする偏心シャフトの研削盤ライン生産システムである。
【0021】
かかる構成によれば、従来の研削盤ライン200(
図3参照)よりもライン構成を簡素化した2台の研削盤からなる研削盤ラインを適宜複数配列して構成したことで、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることができる。
【0022】
つまり、前記2台の研削盤からなる請求項3に記載の研削盤ライン(以下、「最小単位セル」という。)の生産性を基準として、要求された生産量や規格の種類に応じて、最小単位セルの数を増設することで、多品種少量生産に好適に対応する研削盤ライン生産システムを簡易かつ迅速に構築することができる。
また、最少単位セルでラインを構成することで、搬送手段や投入払い出し手段を簡素化してコンパクトな自動化した研削盤ライン生産システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ライン構成を簡素化し、しかも段取り替えを円滑かつ迅速にして生産性を向上させ、多品種少量生産型の生産形態に好適に対応させることが可能な偏心シャフトの研削盤ライン、およびこの研削盤ラインを複数配列して構成した研削盤ライン生産システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る研削盤ライン生産システムの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る研削盤ラインの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るワークである偏心シャフトWの研削盤ライン生産システム100について適宜
図1と
図2を参照しながら詳細に説明する。
なお、参照する
図1と
図2は、説明の便宜上、主要な構成を図示し、制御盤や加工室カバー等の視認性を妨げる部材、並びに、ワークストッカや搬送装置、および投入払出装置等の自動化装置も省略して表示する。
【0026】
研削盤ライン生産システム100は、
図1に示すように、心無研削盤2Aおよび偏心部研削盤3Aからなる研削盤ライン100A(第1の最小単位セル)と、心無研削盤2Bおよび偏心部研削盤3Bからなる研削盤ライン100B(第2の最小単位セル)と、を並べて2つの研削盤ライン(最小単位セル)100A,100Bから構築した偏心シャフトWの生産システムである。
【0027】
研削盤ライン生産システム100は、ワークである偏心シャフトW(WA,WB,Wa,Wb,Wc)を研削する加工システムである。偏心シャフトWは、ワーク姿勢(長手方向の向き)を説明するため、それぞれ心無研削盤2A,2Bで加工中の状態を拡大して抜き出して符号WAで示し、偏心部研削盤3A,3Bで加工中の状態を拡大して抜き出して符号WBで示す。
また、投入および払い出しの状態においても、心無研削盤2A,2Bに投入する状態を符号Waで示し、心無研削盤2A,2Bから払い出す状態および偏心部研削盤3A,3Bに投入する状態を符号Wbで示し、偏心部研削盤3A,3Bから払い出す状態を符号Wcで示す。また、ワークである偏心シャフトW(WA,WB,Wa,Wb,Wc)を総称する場合には、符号Wで示す。
【0028】
偏心シャフトWは、コンプレッサシャフト等のいわゆる偏心ピンが形成されたクランク機構を構成するシャフトであり、軸支されるジャーナル部W1と、このジャーナル部の回転中心に対して偏心した偏心ピンである偏心部W2と、を備えている。
ジャーナル部W1は、一方の端部を含む短軸ジャーナル部W11と、他方の端部を含む長軸ジャーナル部W12と、を備えている。偏心部W2は、短軸ジャーナル部W11と長軸ジャーナル部W12の間に形成されている。偏心部W2の中心は、ジャーナル部W1の回転軸に対して偏心している。
【0029】
研削盤ライン100Aおよび研削盤ライン100Bは、互いに独立したラインであるが、立案された生産計画に応じて、ワークである偏心シャフトWが同じであってもよいし、偏心シャフトWのジャーナル部W1の径や長さ、および偏心部W2の径や位置が異なる場合であってもよい。研削盤ライン100Aのワーク搬送方向を符号LAで示し、研削盤ライン100Bのワーク搬送方向を符号LBで示す。
以下、研削盤ライン100Aおよび研削盤ライン100Bは、最小単位セルのライン構成自体は同様であるので、研削盤ライン100A(第1の最小単位セル)について説明し、研削盤ライン100B(第2の最小単位セル)についての詳細な説明は省略する。
【0030】
研削盤ライン100Aは、偏心シャフトWのジャーナル部W1を研削する心無研削盤2A、および偏心部W2を研削する偏心部研削盤3Aの2台の研削盤を隣接してライン構成されている。
心無研削盤2Aは、偏心シャフトWA(
図2(a)を併せて参照)のジャーナル部W1を研削する研削砥石車21と、研削砥石車21を回転駆動する駆動部22(
図2(a)参照)と、偏心シャフトWの下方に配設されて偏心シャフトWAを下方から支持するブレード23(
図2(a)参照)と、偏心シャフトWの側方に配設されて偏心シャフトWAを側方から支持する調整車24と、調整車24を回転駆動する駆動部25と、調整車24を研削砥石車21に対して近接離間させる移動機構26と、を備えている。
【0031】
心無研削盤2Aは、ブレード23と調整車24で偏心シャフトWA(
図2(a)参照)を支持しながら回転駆動させた研削砥石車21と調整車24の間にジャーナル部W1(W1,W2)を挟み込むようにして研削する研削盤である。研削砥石車21と調整車24の間隔は移動機構26により調整車24を移動させて調整し、ジャーナル部W1を要求された寸法公差で研削することができる。研削砥石車21と調整車24には、それぞれ偏心部W2に接触しないように逃がした隙間δ1,δ2(
図2(a)参照)が設けられ、研削砥石車21を短軸ジャーナル部W11と長軸ジャーナル部W12に同時に押し付けて研削できるようになっている。なお、心無研削盤2Aは、ワークである偏心シャフトWの形状等に応じて種々の態様が設定され特に限定されるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0032】
偏心部研削盤3Aは、
図1と
図2(b)に示すように、ワークである偏心シャフトWBを回転駆動させるワーク主軸31と、ワーク主軸31に偏心シャフトWをクランプするチャック装置32と、偏心シャフトWの偏心部W2を研削する研削砥石33と、研削砥石33を回転駆動する駆動部34と、研削砥石33をワークに進退させる移動機構35と、作業者(不図示)が操作する操作盤36と、を備えている。
【0033】
偏心部研削盤3Aは、
図2(b)に示すように、ジャーナル部W1(W12)をチャック装置32で支持した状態でワーク主軸31を回転させながら、ワーク主軸31の回転に同期させて研削砥石33を移動機構35によって進退移動させて偏心部W2を研削することができる偏心研削機能を備えた研削盤である。偏心部研削盤3Aは、いわゆる偏心ピン加工用の研削盤であり、ワークの形状に応じて種々の態様が設定され特に限定されるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0034】
<偏心シャフトの加工姿勢>
研削盤ライン100Aにおける偏心シャフトWの加工姿勢(加工中の偏心シャフトWの長手方向の向き)、並びに各工程における投入および払い出しの姿勢について説明する。
心無研削盤2Aにおける加工時のワーク姿勢は、
図2(a)に示すように、ワークである偏心シャフトWAの軸L2の方向が研削盤ライン100Aにおけるワーク搬送方向LAに平行に支持された状態で研削される。
また、心無研削盤2Aに投入する状態の偏心シャフトWaの軸L1の方向、および心無研削盤2Aから払い出す状態の偏心シャフトWbの軸L3の方向は、同様に研削盤ライン100Aにおけるワーク搬送方向LAに平行である。
【0035】
偏心部研削盤3Aにおける加工時のワーク姿勢は、
図2(b)に示すように、偏心シャフトWBの軸L4が研削盤ライン100Aにおけるワーク搬送方向LAに平行に支持された状態で研削される。
また、偏心部研削盤3Aに投入する状態の偏心シャフトWbの軸L3の方向、および偏心部研削盤3Aから払い出す状態の偏心シャフトWその軸L5の方向は、同様に研削盤ライン100Aにおけるワーク搬送方向LAに平行である(
図1参照)。
【0036】
このように、研削盤ライン100Aを構成する心無研削盤2Aおよび偏心部研削盤3Aは、それぞれ偏心シャフトW(WA,WB,Wa,Wb,Wc)の各軸線方向(長手方向)L1,L2,L3,L4,L5がいずれも互いに平行になるように配設されている。
このため、研削盤ライン100Aでは、偏心シャフトWを搬送方向、ならびに投入および払い出しの方向を一致させることで、偏心シャフトWの投入、研削加工、および払い出しにおける加工ラインの自動化を容易に実現することができる。
【0037】
<加工工程>
続いて、本発明の実施形態に係る研削盤ライン100Aにおける偏心シャフトWの加工工程について
図1と
図2を参照しながら説明する。研削盤ライン100Aは、心無研削盤2Aによりジャーナル部W1を研削するジャーナル粗研工程(第1工程)と、偏心部研削盤3Aにより偏心部W2を研削する偏心部研削工程(第2工程)と、を実行した後に、心無研削盤2Aに戻ってジャーナル仕上研工程(第3工程)を実行する。
【0038】
このため、研削盤ライン100Aは、1台の心無研削盤2Aによりジャーナル粗研工程とジャーナル仕上研工程の2つの工程を行うことで、ライン構成を簡素化し、サイクルタイムを平滑化することができる。また、ライン構成を簡素化したことで、偏心シャフトWの形状等の変更による段取り替えによる稼働率の低下を抑制して、生産性を向上させることができる。
【0039】
したがって、研削盤ライン100Aは、ライン構成を簡素化し、しかも段取り替えを円滑かつ迅速にして生産性を向上させることができるため、多品種少量生産に好適に対応することができる。
また、研削盤ライン100Aおよび研削盤ライン100Bを並べて構築した研削盤ライン生産システム100は、同一または2種類の異なる偏心シャフトWに同時に対応できるため、要求された生産量や規格の種類に応じて生産量を簡易かつ迅速に増大して生産性を向上させ、しかも多品種少量生産に好適に対応することができる。
例えば、研削盤ライン100Aおよび研削盤ライン100Bを並べて構築した場合には、作業者が研削盤ライン100Aの段取り替えを行っている場合には研削盤ライン100Bを稼動し、研削盤ライン100Bの段取り替えを行っている場合には研削盤ライン100Aを稼動することができるため、稼働率の低下を抑制して生産性を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した各実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、研削盤ライン100Aと研削盤ライン100Bとからなる2ラインで構成したが、これに限定されるものではなく、偏心シャフトWの規格の種類や要求された生産量等に応じて適宜ライン数(最小単位セル数)を増設することで、需要の変動に対して簡易かつ迅速柔軟に対応することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、研削盤ライン100Aをそれぞれ心無研削盤2Aと偏心部研削盤3Aの2台の研削盤で構成したが、これに限定されるものではなく、マシニングセンタ(不図示)等の工作機械を組み込んでラインを編成してもよい。研削盤ライン100B、および他の増設した研削盤ラインでも同様である。
【符号の説明】
【0042】
2A,2B 心無研削盤
3A,3B 偏心部研削盤
100 研削盤ライン生産システム
100A,100B 研削盤ライン
W 偏心シャフト
W1 ジャーナル部
W2 偏心部
W11 短軸ジャーナル部
W12 長軸ジャーナル部