【実施例1】
【0009】
本実施例の画像形成装置としてのプリンタを
図1の第1の実施例におけるプリンタの構成を示す概略図に基づいて説明する。
図1において、プリンタ100は、色材としての顔料を含む樹脂からなるトナーにより、画像データをもとに印字媒体上に画像を形成する。
プリンタ100には、印字媒体としての用紙101を貯留する給紙カセット60が装着され、用紙101を給紙カセット60から取り出す給紙ローラ61を備え、用紙101を給紙して搬送する搬送ローラ62、63が配置される。
【0010】
本発明におけるプリンタ100は、カラー電子写真方式であり、プリンタ100内には画像形成部としてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する静電潜像担持体としての感光体ドラム41、その感光体ドラム41に形成された静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する現像器5、その現像器5にトナーを供給するトナーカートリッジ51が用紙101の搬送路に沿って並べて配置されている。
【0011】
また、感光体ドラム41の表面に電荷を供給して帯電させる帯電ローラ42、光学ヘッドとしてのLED(Light Emitting Diode)ヘッド3が、感光体ドラム41の表面に対向するように配置され、LEDヘッド3は帯電ローラ42で帯電された感光体ドラム41の表面に画像データをもとに選択的に光を照射して静電画像を形成する。
【0012】
さらに、感光体ドラム41上に形成され、トナーにより静電潜像を可視化した像であるトナー像を用紙101上に転写する転写ローラ80が、転写部で用紙101を搬送する転写ベルト81を挟むように感光体ドラム41に対向して配置され、また用紙101が転写部を通過した後の感光体ドラム41の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレード43が感光体ドラム41の表面に接触して配置されている。
【0013】
転写部の下流には用紙101上に形成されたトナー像を熱および圧力で定着させる定着器9が配置され、その定着器9を通過した用紙101を搬送する搬送ローラ64、その搬送ローラ64により搬送され、画像が形成された用紙101を貯留する排出部7へ排出する排出ローラ65が配置される。
【0014】
また、帯電ローラ42および転写ローラ80には図示しない電源により所定の電圧が印加される。そして、転写ベルト81、感光体ドラム41および各ローラはそれぞれ図示しないモータと図示しない駆動を伝達するギアにより回転駆動される。さらに、現像器5、LEDヘッド3、定着器9、および図示しない各モータには、それぞれ電源および制御装置が接続されている。
【0015】
プリンタ100は、外部装置から印刷データを受信する外部インターフェースを有し、その外部インターフェースで受信した印刷データをもとに印字媒体上に画像を形成する。
このように構成されたプリンタ100は、制御プログラムをメモリ等の記憶部に記憶し、その制御プログラムに基づいて全体を制御する制御手段および演算手段としての制御部を備えている。
【0016】
次に、LEDヘッドの構成を
図2、
図3、
図4および
図5を用いて説明する。
図2は第1の実施例におけるLEDヘッドの長手方向における断面図であり、
図3は第1の実施例におけるLEDヘッドの短手方向における断面図である。なお、
図2は、
図3におけるBB断面図であり、
図3は、
図2におけるAA断面図である。
【0017】
図2において、LEDヘッド3は長尺のユニットであり、LEDヘッド3の長手方向が図面の水平方向(Y方向)、また発光素子としてのLED素子30が図面の下方、結像面としての感光体ドラム41が図面の上方となるように示されている。
図3において、LEDヘッド3の長手方向が図面の表裏方向、LEDヘッド3の短手方向が図面の水平方向(X方向)、またLED素子30が図面の下方、結像面としての感光体ドラム41が図面の上方となるように示されている。
【0018】
LEDヘッド3は、発光素子としてのLED素子30が略直線状に複数配列された基板31と、LED素子30の倒立縮小像を形成する第1のレンズ板11と、そのLED素子30の倒立縮小像を拡大倒立して結像する第2のレンズ板14と、第1のレンズ板11と第2のレンズ板14との間に配置された第1の遮光部材としての遮光板21と、LED素子30と第1のレンズ板11との間に配置された第2の遮光部材としてのマスク23と、マスク23と結像面としての感光体ドラム41との距離を調整する調整部材35と、基板31と第1のレンズ板11と第2のレンズ板14と遮光板21とマスク23とを固定するホルダ32とにより構成される。
基板31、第1のレンズ板11、第2のレンズ板14、遮光板21、およびマスク23は、すべて長尺の部材で形成され、
図2に示すとおり、それぞれの部材の長手方向がすべて平行になるように、水平方向(Y方向)に配置される。
【0019】
LED素子30は、間隔PDで略直線に配列され、1インチ(約25.4mm)当り、600個のLED素子30が配列されていることを示す600dpi(dot per inch)のLEDヘッド3の場合、LED素子30の間隔PDは0.04233mmとなっている。また、1インチ当り、1200個のLED素子30が配列されていることを示す1200dpiのLEDヘッド3の場合、LED素子30の間隔PDは0.02117mmとなっている。さらに、1インチ当り、2400個のLED素子30が配列されていることを示す2400dpiのLEDヘッド3の場合、LED素子30の間隔PDは0.01058mmとなっている。
【0020】
また、
図2において、LED素子30の配列方向はLEDヘッド3の長手方向である水平方向(Y方向)である。41は静電潜像が形成される感光体ドラムであり、AXRは感光体ドラム41の回転軸である。この回転軸AXRは、LED素子30の配列方向と平行し、水平方向(Y方向)に配置される。
【0021】
35は調整部材であり、マスク23と感光体ドラム41との面間隔を調整でき、
図2の水平方向全体にわたってマスク23と感光体ドラム41との面間隔が一定となるようにマスク23に配置されている。この調整部材35は、例えば偏心カムで構成される。
39は摺動部材であり、感光体ドラム41が回転しても感光体ドラム41の表面と調整部材35との間隔が一定となるように、感光体ドラム41の表面に沿って配置される。
【0022】
図3において、水平方向(X方向)をLEDヘッド3、第1のレンズ板11および第2のレンズ板14の幅方向(短手方向)とし、第1のレンズ板11および第2のレンズ板14の幅方向における中心線をCLとすると、
図3に示すとおり、中心線CLを外挿した直線上にLED素子30および感光体ドラム41の回転軸AXRが配置される。第1のレンズ板11および第2のレンズ板14のマイクロレンズの光軸は中心線CLと平行であり、
図3の鉛直方向(Z方向)となっている。
【0023】
図4は第1の実施例におけるLEDヘッドの分解斜視図である。
図4において、第1のレンズ板11のマイクロレンズである第1のレンズ12および第2のレンズ板14のマイクロレンズである第2のレンズ15の光軸が鉛直方向(Z方向)となるように、また図中の下方にLED素子30、図中の上方に第2のレンズ板14となるように、第1のレンズ板11、第2のレンズ板14およびLED素子30が配置され、LED素子30の結像は図中の上方に形成される。
【0024】
LEDヘッド3は、図中下方から、基板31(LED素子30)、マスク23、第1のレンズ板11、遮光板21、第2のレンズ板14の順で配置されている。第1のレンズ板11には、第1のレンズ12が2列に配列され、第2のレンズ板14には、第2のレンズ15が2列に配列され、遮光板21には第1の絞り22が2列に配列され、マスク23には第2の絞り24が2列に配列され、第1のレンズ12の光軸と第2のレンズ15の光軸と第1の絞り22と第2の絞り24との位置が略一致するように、それぞれ略同一の間隔で配列されている。
【0025】
つまり、LEDヘッド3は、光軸が一致するように配列されたマイクロレンズからなる2枚のレンズ対を光軸に対して直交する方向に略直線に配置した構成となっている。なお、遮光板21およびマスク23は、LED素子30の光線を遮光する素材により形成されている。
ホルダ32は、基板31と第1のレンズ板11と第2のレンズ板14と遮光板21とマスク23とを固定するものであり、LEDヘッド3の長手方向全体にわたって形成され、マスク23と一体に形成されている。
【0026】
図5は第1の実施例におけるレンズの動作を示す説明図である。
図5(a)は第1のレンズ板11および第2のレンズ板14の側面図であり、第1のレンズ板11および第2のレンズ板14の長手方向が図中水平方向であり、図中の下方にLED素子30aが配置され、結像30caは図中の上方に形成される。
図5(b)は第1のレンズ板11の正面図であり、第1のレンズ板11の長手方向が図中の水平方向(Y方向)であり、図面の手前側にLED素子30aが配置され、第2のレンズ板14は図面の奥側に配置され
、結像30caは図面の奥側に形成される。なお、
図5(b)における第1のレンズ12a、12bおよび12cの図面の水平方向の位置は、
図5(a)における第1のレンズ12a、12bおよび12cの素面の水平方向の位置と一致する。
【0027】
図5(a)に示すように、LED素子30aが配置された面である物体面OPと第1のレンズ12までの距離はLOに設定され、第1のレンズ12と第2のレンズ15との面の間隔はLSに設定され、第2のレンズ15と結像面IPとの面の間隔はLIに設定され、第1のレンズ12の厚さはLT1、第2のレンズ15の厚さはLT2に設定されている。
図5(a)において、第1のレンズ12aは、光軸AXLa方向に距離LO1の位置にある物体30aの結像として中間像30baを、光軸AXLa方向に距離LI1離れた中間像面IMP上に形成する。このとき、中間像30baは、物体30aの倒立縮小像になっている。
【0028】
第2のレンズ15aは、距離LO2の位置にある中間像30baの結像30caを、光軸AXLa方向にLI2隔てた結像面IP上に結像する。このとき、結像30caは、物体30aの正立等倍像になっている。
物体面OPから第1のレンズ12までの距離LOは距離LO1と等しく設定され、第1のレンズ12と第2のレンズ15との間隔LSは、LS=LI1+LO2に設定され、第2のレンズ15から結像面IPまでの距離LIは、距離LI2と等しく設定される。
【0029】
図5(b)を用いて第1のレンズ板11の形状について説明する。
図5(b)において、水平方向(Y方向)が第1のレンズ板11の長手方向になっている。第1のレンズ板11には、複数の第1のレンズ12が長手方向に平行する2列に千鳥状に交互に配置され、図に示すように、第1のレンズ12aおよび第1のレンズ12cは同列に配置され、第1のレンズ12bは第1のレンズ12aと第1のレンズ12cとの間の他列に配置されている。ここで、AXLaは第1のレンズ12aの光軸であり、AXLSは第1のレンズ12bの光軸であり、AXLcは第1のレンズ12cの光軸である。
【0030】
第1のレンズ12の1列あたりの配列間隔は2×PYである。そして、第1のレンズ12bについては、同一列内で隣接する第1のレンズ12に対してY方向に距離sずれており、同一列内で隣接する第1のレンズ12との配列間隔は2×PY+sおよび2×PY−sとなっている。
このため、第1のレンズ板11の長手方向における第1のレンズ12aと第1のレンズ12bとの配列間隔はPY+sであり、第1のレンズ12bと第1のレンズ12cとの配列間隔はPY−sとなっている。
【0031】
さらに、LED素子30の配列間隔をPD、第1のレンズ12から距離LO1の位置にある物体面OP上の物体の大きさに対する、第1のレンズ12から距離LI1の位置にある中間像面IMP上の第1のレンズ12による結像の大きさを、第1のレンズ12の倍率mとすると、第1のレンズ12bの位置ずれs(距離s)は式1を満たす。
【0032】
0<s<(m÷(1−m)×PD) ・・・(式1)
隣接する2つの第1のレンズ12の間に平坦部は形成されず、隣接する2つの第1のレンズ12は境界で接し、隙間なく緻密に配置されている。つまり、第1のレンズ板11の長手方向における、第1のレンズ12の半径はPYになっている。また、第1のレンズ12の半径RLはPYより大きくなっている。
【0033】
第1のレンズ板11の長手方向と直交する幅方向(X方向)における第1のレンズ12の配列間隔はPXとなっている。このとき、第1のレンズ12のX方向における配列間隔PXは、Y方向における配列間隔(2×PY)より小さくなっている。なお、第1のレンズ板11は、発光部としてのLED素子30aの光線を透過する素材により構成されている。
【0034】
第2のレンズ板14は、第1のレンズ板11と同形状に形成されている。また、第2のレンズ15は、第1のレンズ12と略同形状に形成され、配列されている。
図5(a)に示すように、第2のレンズ15aの光軸は、第1のレンズ12aの光軸AXLaと一致するように配置される。また、第2のレンズ15bの光軸AXLbは、第2のレンズ板14の長手方向において第1のレンズ12bの光軸AXLSと距離sずれて配置される。さらに、第2のレンズ15cの光軸は、第1のレンズ12cの光軸AXLcと一致するように配置される。
【0035】
また、第2のレンズ板14の長手方向における第2のレンズ15aと第2のレンズ15bとの配列間隔および第2のレンズ15bと第2のレンズ15cとの配列間隔はPYとなっている。なお、第1のレンズ板11は、発光部としてのLED素子30aの光線を透過する素材により構成されている。
【0036】
上述した構成の作用について説明する。
まず、プリンタ100の動作を
図1に基づいて説明する。
プリンタ100の感光体ドラム41表面は、図示しない電源装置により電圧が印加された帯電ローラ42により帯電される。続いて、感光体ドラム41が回転することによって帯電された感光体ドラム41表面がLEDヘッド3の付近に到達するとLEDヘッド3によって露光され、感光体ドラム41表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像器5により現像され、感光体ドラム41の表面にトナー像が形成される。
【0037】
一方、給紙カセット60にセットされた用紙101が給紙ローラ61によって給紙カセット60から取り出され、搬送ローラ62、63により、転写ローラ80および転写ベルト81の付近に搬送される。
感光体ドラム41が回転することにより、現像によって得られた感光体ドラム41表面上のトナー像が転写ローラ80および転写ベルト81の付近に到達すると図示しない電源装置により電圧が印加されている転写ローラ80および転写ベルト81によって、感光体ドラム41表面上のトナー像は用紙101上に転写される。
【0038】
続いて、表面にトナー像が形成された用紙101は、転写ベルト81の回転により定着器9へ搬送され、用紙101上のトナー像はその定着器9により加圧されながら加熱されることにより溶解し、用紙101上に固定される。トナー像が固定された用紙101は、搬送ローラ64および排出ローラ65により排出部7に排出されてプリンタ100の動作が終了する。
【0039】
次に、LEDヘッド3の動作を
図5(a)に基づいて説明する。
画像データをもとにプリンタの制御部により
図3に示すLEDヘッド3の制御信号が発信されると基板31上のドライバICはその制御信号に基づき任意の光量でLED素子30を発光する。
第1のレンズ12aは、中間像面IMP上に、物体30aの結像としての中間像30baを形成する。このとき、中間像30baは、物体30aの倒立縮小像になっている。
【0040】
第2のレンズ15aは、結像面IP上に、中間像30baの結像としての結像30caを結像する。このとき、結像30caは、物体30aの正立等倍像になっている。
第1のレンズ12bは、中間像面IMP上に、物体30aの結像としての中間像30bbを形成する。このとき、中間像30bbは、物体30aの倒立縮小像になっている。
第2のレンズ15bは、結像面IP上に、中間像30bbの結像としての結像30cbを結像する。このとき、結像30cbは、物体30aの正立等倍像になっている。
【0041】
第1のレンズ12cは、中間像面IMP上に、物体30aの結像としての中間像30bcを形成する。このとき、中間像30bcは、物体30aの倒立縮小像になっている。
第2のレンズ15cは、結像面IP上に、中間像30bcの結像としての結像30ccを結像する。このとき、結像30ccは、物体30aの正立等倍像になっている。
【0042】
物体面OP上の物体に対する第1のレンズ12による中間像面IMP上の結像の大きさm、中間像面IMP上の中間像の大きさに対する第2のレンズ15による結像面IP上の結像の大きさをMとする。本実施例の光学系は正立等倍像を形成するから、物体面OP上の物体に対する結像面IP上の結像の大きさは“1”であるから、
m×M=1であり、M=1/m ・・・(式101)
である。
【0043】
次に、本実施例のレンズ配列間隔のずれs(距離s)による結像位置のずれについて、
図5(a)および
図5(b)を用いて説明する。
レンズ板11の長手方向(Y方向)における物体30aの光軸AXLaからの距離YAaが、
YAa=y ・・・(式102)
であるとすると、レンズ板11の長手方向(Y方向)における中間像30baの光軸AXLaからの距離YBaは上記式102より、
YBa=m×YAa=m×y
である。
【0044】
そして、レンズ板11の長手方向(Y方向)における中間像30caの光軸AXLaからの距離YCaは上記式101より、
YCa=M×YBa=M×m×y ・・・(式103)
である。
【0045】
一方、第1のレンズ12aと第1のレンズ12bの配列間隔がPY+sであるから、第1のレンズ板11の長手方向(Y方向)における物体30aの光軸AXLSからの距離YASは、上記式102より、
YAS=YAa−(PY+s)=y−PY−s ・・・(式104)
である。
【0046】
第1のレンズ板11の長手方向(Y方向)における中間像30bbの光軸AXLSからの距離YBSは、
YBS=m×YAS=m×(y−PY−s) ・・・(式105)
である。
【0047】
また、第1のレンズ板11の長手方向(Y方向)における中間像30bbの光軸AXLbからの距離YBbは、上記式105より、
YBb=YBS+s=m×(y−PY−s)+s ・・・(式106)
である。
【0048】
そして、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30cbの光軸AXLbからの距離YCbは、上記式101および式106より、
YCb=M×YBb=M×(m×(y−PY−s)+s)
=y−PY−s−s/m ・・・(式107)
である。
【0049】
よって、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30cbの光軸AXLaからの距離YOCbは、第2のレンズ15aと第2のレンズ15bとの配列間隔がPYであるから、上記式107より、
YOCb=PY+YCb=y−s−s/m
=y−s(1−1/m) ・・・(式108)
である。
【0050】
したがって、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30caに対する結像30cbの位置ずれの大きさSiは、上記式102および式108より、
Si=YOCb−YCa=s(1/m−1) ・・・(式109)
である。
【0051】
ところで、同列で隣接する第1のレンズ12aと第1のレンズ12cの配列間隔が2×PYであるから、第1のレンズ板11の長手方向(Y方向)における物体30aの光軸AXLcからの距離YAcは、上記式102より、
YAc=YAa−2×PY=y−2PY ・・・(式110)
である。
【0052】
また、第1のレンズ板11の長手方向(Y方向)における中間像30bbの光軸AXLcからの距離YBcは、上記式110より、
YBc=m×YAc=m×(y−2PY) ・・・(式111)
である。
【0053】
そして、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30ccの光軸AXLcからの距離YCcは、上記式101および式111より、
YCc=M×YBc=M×m×(y−2PY)
=y−2PY ・・・(式112)
である。
【0054】
よって、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30ccの光軸AXlaからの距離YOCcは、第2のレンズ15aと第2のレンズ15cの配列間隔が2×PYであるから式112より、
YOCc=2×PY+YCc=y
である。
したがって、第2のレンズ板14の長手方向(Y方向)における結像30caと結像30ccの位置ずれはなく、一点に形成される。
【0055】
次に、結像の位置ずれSi(距離Si)の大きさと印刷画像の品質不良について説明する。
本実施例のレンズユニットは、正立等倍像を形成するため、LED素子30の結像は
図2に示すLED素子30の間隔PDと等間隔に形成する。よって、第1のレンズ12bの位置ずれsによる結像30cbの位置ずれSiが間隔PDより大きいと、LED素子30aと同列で隣接するLED素子の結像と、他列で隣接する結像30cbが重なり合うことになり、結像のコントラストが低下して印刷画像上に筋や濃度斑(濃度ムラ)などが発生する。
【0056】
したがって、第1のレンズ12の倍率m、第1のレンズ12bの位置ずれs、LED素子30の配列間隔PD、結像の位置ずれSiとしたとき、上記式109より、
0<Si=s(1/m−1)<PD
であるとき、結像のコントラストは低下しない。
よって、第1のレンズ12bの位置ずれsが、上述した式1を満たすことによって、印刷画像の品質低下は発生しない。
【0057】
さらに、本実施例の画像形成装置を用いて印刷画像を評価したところ、第1のレンズ板11の長手方向における配列間隔の位置ずれsが上述した式1を満たすレンズの個数が、第1のレンズ12全数の80%以上であれば、印刷画像に品質不良が見られないことが分かった。
【0058】
評価に用いた画像形成装置は、解像度が600dpiのLEDプリンタであり、LED素子30の配列間隔PDは0.04233mmであった。また、第1のレンズ12bの位置ずれsが0.042mm以下のレンズの数がレンズ全数の80%あり、0.042mmより大きいレンズの数がレンズ全数の20%であった。さらに、第1のレンズ12の倍率mは0.5であった。
【0059】
すなわち、上述した式1の右辺が、m/(1−m)×PD=0.5/0.5×0.04233=0.04233(mm)であるから、評価に用いた画像形成装置は、第1のレンズ12の全数に対して80%のレンズが上述した式1を満たしており、式1を満たさないレンズは第1のレンズ12の全数に対して20%あっても印刷画像に筋または濃度斑(濃度ムラ)は見られなかった。
【0060】
画像形成装置の画像の評価は、
図8(a)または(b)に示す画像を印刷したときの筋または濃度斑の発生の有無を評価した。
図8(a)(b)において、801はトナーが付着して色が付いたドットであり、802はトナーが付着しない空白ドットである。全ドットの配列間隔PDは0.04233mmであり、ドット801の配列間隔PPは0.08466mmである。すなわち、LED素子30を1つおきに点灯させて作成した灰色画像である。なお、ドット801の間隔PPは、2×PDである。
【0061】
以上説明したように、第1の実施例では、上述したようにレンズアレイを構成したことにより、レンズアレイの形成を容易にすることができるとともに、レンズアレイの形状精度が低下しても、コントラストの高い結像を形成することができ、画像形成装置においては印刷画像に筋や濃度斑(濃度ムラ)が発生することがなく、高品質な画像を得ることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0062】
第2の実施例の構成を
図6の第2の実施例における読取装置の構成を示す概略図に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図6において、500は、原稿を読取って画像データとしての電子データを生成する読取装置としてのスキャナである。
【0063】
スキャナ500は、読取ヘッド400、ランプ501、原稿台502、レール503、駆動ベルト505、モータ506等で構成されている。
読取ヘッド400は、照明装置としてのランプ501により照射され、原稿600の表面で反射した光線を取り込み電子データに変換するものである。ランプ501は、照射した光が原稿600の表面で反射し、読取ヘッド400内に取り込まれるように配置されている。
【0064】
原稿台502は、電子データが生成される原稿600を載置するものであり、可視光線を透過する素材で形成されている。
レール503は、原稿台502の下方に配置され、読取ヘッド400を移動可能にするものであり、読取ヘッド400は、その一部が複数の滑車504により張架された駆動ベルト505に接続され、モータ506で駆動された駆動ベルト505によりレール503上を移動可能に構成されている。
【0065】
次に、読取ヘッド400の構成を
図7の第2の実施例における読取装置の読取りヘッドの構成を示す概略図に基づいて説明する。
図7(a)は、レンズユニット1の長手方向と直交する平面による断面図であり、レンズユニット1の長手方向が図面の表裏方向、ミラー402が図面の下方、ラインセンサ401が図面の上方となるように示されている。
図7(b)は、
図7(a)におけるBB断面図であり、レンズユニット1の長手方向が図面の水平方向(Y方向)、ミラー402が図面の下方、ラインセンサ401が図面の上方となるように示されている。
図7において、読取ヘッド400は、レンズユニット1、ラインセンサ401およびミラー402で構成されている。
【0066】
レンズユニット1は、第1の実施例の構成と同様であり、図中上方から、マスク23、第2のレンズ板14、遮光板21、第1のレンズ板11の順で配置されている。また、
図4に示すように、第1のレンズ板11には、第1のレンズ12が2列に配列され、第2のレンズ板14には、第2のレンズ15が2列に配列され、遮光板21には第1の絞り22が2列に配列され、マスク23には第2の絞り24が2列に配列され、第1のレンズ12の光軸と第2のレンズ15の光軸と第1の絞り22と第2の絞り24との位置が略一致するように、それぞれ略同一の間隔で配列されている。
【0067】
ホルダ32は、第1のレンズ板11と第2のレンズ板14と遮光板21とマスク23とを固定するものであり、レンズユニット1の長手方向全体にわたって形成され、マスク23と一体に形成されている。
ミラー402は、原稿600で反射された光線の光路を折り曲げてその光線をレンズユニット1に入射させるものである。
ラインセンサ401は、複数の受光素子が間隔PRで直線に配置されており、レンズユニット1により形成された原稿画像の結像を電気信号に変換するものである。
【0068】
本実施例においては、
図5に示すレンズアレイ1の物体面OPが原稿600となるように、また結像面IPがラインセンサ401となるように配置される。
本実施例のレンズユニット1は、第1の実施例の構成と同様であり、
図7(b)に示すラインセンサ401の受光素子の配列間隔をPR、第1のレンズ12の倍率をmとしたとき、第1のレンズ12bの位置ずれsは、式2を満たすように構成される。
0<s<(m÷(1−m)×PR) ・・・(式2)
【0069】
上述した構成の作用について説明する。
まず、読取装置の動作を
図6に基づいて説明する。
ランプ501が点灯し、原稿600の表面を照射することにより、原稿600の表面で反射した光線が読取ヘッド400内に取り込まれる。モータ506により、駆動ベルト505が駆動して読取ヘッド400とランプ501が
図8における左右方向に移動し、読取ヘッド400は原稿600の全面から反射した光線を取り込む。
【0070】
次に、読取ヘッド400の動作を
図7に基づいて説明する。
原稿600で反射された光線は、原稿台502を透過し、ミラー402で光路が折り曲げられ、レンズユニット1に入射する。レンズユニット1により結像された原稿画像の結像はラインセンサ401上に形成され、ラインセンサ401は形成された原稿画像の結像を電気信号に変換して電子データを生成する。
【0071】
本実施例による読取装置を用いて原稿から画像データを形成したところ、原稿と同一の良好な画像データが得られた。
また、本実施例のようにレンズアレイを構成することにより、レンズアレイの形状精度を緩めても結像のコントラストを十分に高めることができる。
以上説明したように、第2の実施例では、読取装置においても第1の実施例と同様の効果が得られ、原稿と同一の画像データを読取ることができるという効果が得られる。