(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気事業者が、電力供給者から供給される電力を送配電系統を利用して電力購入者に託送することで、当該電力購入者に対する電力の販売が行われる電力販売システムにおいて、前記送配電系統での同時同量の制約を達成させることを目的とする前記電力供給者と前記電力購入者との間での需給計画を事前に作成するとき、将来の調整対象時間区間において、前記電力供給者からの予定供給電力が前記電力購入者による予定需要電力と比べて不足しないように前記需給計画を調整し、前記調整対象時間区間において、前記電力供給者からの前記予定供給電力が前記電力購入者による前記予定需要電力と比べて不足し、その不足を解消するために必要な第1必要電力が予測されたとき、前記予定需要電力を減少させる行為の実施予定者を前記電力購入者の中から募集するために、前記電力購入者に対して、少なくとも前記調整対象時間区間に関する情報を含む募集情報を通知する募集情報通知手段と、前記募集情報に対して応募してくる前記電力購入者から、前記調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅に関する情報を含む応募情報を受け付ける応募情報受付手段と、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力以上であると判定したとき、前記需要電力の予定減少幅の合計に対応する需給調整が行われる調整計画を決定する調整計画決定手段とを備える需給調整支援装置によって調整された前記需給計画に従って前記電力購入者に対する電力の販売が販売該当日に行われた後、前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅が、前記応募情報に係る前記調整対象時間区間での前記需要電力の予定減少幅に対して充足する程度を導出する充足程度導出手段を備え、
前記充足程度導出手段は、前記調整対象時間区間での基準需要電力から、前記販売該当日における前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の値を減算して得られる値を、前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅として導出し、
前記調整対象時間区間での前記基準需要電力は、前記販売該当日よりも前の複数日のそれぞれの前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の値の平均値であり、前記複数日のそれぞれの前記調整対象時間区間において、前記応募情報に基づく需要電力の減少が前記電力購入者によって行われていた場合、当該調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅が無かったものとして、前記基準需要電力を導出する需給調整評価装置。
前記調整計画決定手段は、前記判定手段が、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力に対して不足すると判定したとき、その不足を解消するために必要な第2必要電力を、前記電力供給者の前記予定供給電力を増加させることで賄う需給調整が行われる前記調整計画を決定する請求項1に記載の需給調整評価装置。
前記応募情報受付手段は、前記募集情報に対して前記電力購入者から応募してきた時期の早い順に、前記電力購入者毎の前記需要電力の予定減少幅を合計し、当該需要電力の予定減少幅の合計値が前記第1必要電力に達すると前記募集情報に対する応募を締め切る請求項1又は2に記載の需給調整評価装置。
前記電力購入者は、電力消費装置と自身が運用可能な自家発電装置とを備え、前記電力消費装置による消費電力及び前記自家発電装置による発電電力の少なくとも何れか一方を調整することで、前記需要電力を調整可能である請求項1〜3の何れか一項に記載の需給調整評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の需給計画では、電力供給者の予定供給電力を増加させる変更は行われているが、電力購入者による予測需要電力を変更することは行われていない。
そのため、電力供給者は、電力購入者の予測需要電力の合計が非常に大きくなったとしても、その予測需要電力の合計を上回る予定供給電力を計上できるように、供給余力を大きく持っておく必要があった。さもないと、電力供給者の予定供給電力の合計が、電力購入者の予測需要電力の合計以上となるような需給計画を立案できず、必然的に電力不足が発生してしまうこととなっていた。
【0005】
更に、需給計画の立案段階では、電力供給者の予定供給電力の合計を、電力購入者の予測需要電力の合計以上とすることができても、実際に電力需給が行われる当日に急遽、需要電力が増加することもある。その場合、電力購入者による実際の需要電力が、電力供給者による実際の供給電力を上回ってしまうと、その上回った分の需要電力を賄うために、電気事業者及び電力供給者から、高価(割高)な電力の供給を受ける必要が生じていた。
【0006】
このように、電力の需給バランスを調整することを電力供給者のみで行うことは経済的な合理性を欠く部分があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力供給者による電力の供給余力が残るようにしながら需給計画を調整可能な需給調整支援装
置によって決定された調整計画が適切に実施されたか否かを評価する需給調整評価装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る
需給調整評価装置の特徴構成は、電気事業者が、電力供給者から供給される電力を送配電系統を利用して電力購入者に託送することで、当該電力購入者に対する電力の販売が行われる電力販売システムにおいて、前記送配電系統での同時同量の制約を達成させることを目的とする前記電力供給者と前記電力購入者との間での需給計画を事前に作成するとき、将来の調整対象時間区間において、前記電力供給者からの予定供給電力が前記電力購入者による予定需要電力と比べて不足しないように前記需給計画を調整
し、前記調整対象時間区間において、前記電力供給者からの前記予定供給電力が前記電力購入者による前記予定需要電力と比べて不足し、その不足を解消するために必要な第1必要電力が予測されたとき、前記予定需要電力を減少させる行為の実施予定者を前記電力購入者の中から募集するために、前記電力購入者に対して、少なくとも前記調整対象時間区間に関する情報を含む募集情報を通知する募集情報通知手段と、前記募集情報に対して応募してくる前記電力購入者から、前記調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅に関する情報を含む応募情報を受け付ける応募情報受付手段と、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力以上であると判定したとき、前記需要電力の予定減少幅の合計に対応する需給調整が行われる調整計画を決定する調整計画決定手段
とを備える需給調整支援装置
によって調整された前記需給計画に従って前記電力購入者に対する電力の販売が販売該当日に行われた後、前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅が、前記応募情報に係る前記調整対象時間区間での前記需要電力の予定減少幅に対して充足する程度を導出する充足程度導出手段を備え、
前記充足程度導出手段は、前記調整対象時間区間での基準需要電力から、前記販売該当日における前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の値を減算して得られる値を、前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅として導出し、
前記調整対象時間区間での前記基準需要電力は、前記販売該当日よりも前の複数日のそれぞれの前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の値の平均値であり、前記複数日のそれぞれの前記調整対象時間区間において、前記応募情報に基づく需要電力の減少が前記電力購入者によって行われていた場合、当該調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅が無かったものとして、前記基準需要電力を導出する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、募集情報通知手段が、電力購入者に対して、少なくとも調整対象時間区間に関する情報を含む募集情報を通知し、応募情報受付手段が、その募集情報に対して応募してくる電力購入者から、調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅に関する情報を含む応募情報を受け付ける。そして、判定手段が、応募情報受付手段で受け付けた需要電力の予定減少幅の合計が上記第1必要電力以上であるか否かを判定し、応募情報受付手段で受け付けた需要電力の予定減少幅の合計が上記第1必要電力以上である場合には、調整計画決定手段が、その需要電力の予定減少幅の合計に対応する需給調整が行われる調整計画を決定する。このように、電力購入者自身からの自発的な応募による予測需要電力の減少を受け付けて、需給計画に対して、その予測需要電力の減少(即ち、上述した需要電力の予定減少幅)を踏まえた調整を行うことができる。
【0010】
ここで、上述した需要電力の予定減少幅は、電力購入者自身からの自発的な応募によるものであるので、実際に需要電力が減少される確度は高いと言える。また、先ずは、電力購入者による予定需要電力の減少変更を目的として、電力供給者からの予定供給電力が電力購入者による予定需要電力と等しくなるような需給計画の調整が行われ、電力供給者による予定供給電力の増大変更は目的とされない。つまり、電力供給者による電力の供給余力は積極的に残されることとなる。
上記需給調整支援装置によって決定された調整計画は、あくまでも電力購入者が応募した将来の需要電力の予定減少幅を含むものであるので、電力購入者が実際にその予定減少幅通りの需要電力削減を行うかどうかは不明確である。ところが本特徴構成に係る需給調整評価装置よれば、充足程度導出手段が、電力購入者に対する電力の販売が販売該当日に行われた後、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅が、応募情報に係る調整対象時間区間での需要電力の予定減少幅に対して充足する程度を導出する。つまり、電力購入者が応募した需要電力の予定減少幅の通りに、電力購入者が需要電力を実際に減少させたのか否かを判定、或いは、導出された充足程度に従って評価することができる。
また、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅は、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を電力購入者が全く試みなかった場合に計測されるであろう需要電力から、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を電力購入者が行った場合に計測される需要電力を減算した値に対応する。しかし、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を電力購入者が少しでも試みた場合、需要電力の削減を全く試みなかった場合の需要電力を計測することは不可能であり、その結果、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅として導出することは困難となる。ところが本特徴構成によれば、電力購入者が需要電力の削減を全く試みなかった場合の需要電力に対応するものとして、調整対象時間区間での基準需要電力を採用することで、調整対象時間区間での基準需要電力と、販売該当日における調整対象時間区間での需要電力の実際の値との比較から、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅として導出することができる。
加えて、上記特徴構成によれば、調整対象時間区間での基準需要電力は、販売該当日よりも前の複数日のそれぞれの調整対象時間区間での需要電力の実際の値の平均値で導出されるので、その基準需要電力の信頼性を確保できる。
尚、上記平均値の導出に用いる複数日のそれぞれの調整対象時間区間において、応募情報に基づく需要電力の減少が電力購入者によって行われていた場合、そのときに計測される調整対象時間区間での需要電力の実際の値は、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を電力購入者が全く試みなかった場合に計測されるであろう需要電力ではなく、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅を含むものとなる。つまり、応募情報に基づく需要電力の減少が行われたときの需要電力の実際の値を用いて上記基準需要電力を導出したのでは、その基準需要電力の信頼性が低くなる。ところが本特徴構成によれば、上記複数日のそれぞれの調整対象時間区間において、応募情報に基づく需要電力の減少が電力購入者によって行われていた場合、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅が無かったものとして、調整対象時間区間での基準需要電力を導出するので、その導出された基準需要電力の値の信頼性を高くすることができる。
従って、電力供給者による電力の供給余力が残るようにしながら需給計画を調整可能な需給調整支援装
置によって決定された調整計画が適切に実施されたか否かを評価する需給調整評価装置を提供できる。
【0011】
本発明に係る
需給調整評価装置の別の特徴構成は、前記調整計画決定手段は、前記判定手段が、前記応募情報受付手段が受け付けた前記需要電力の予定減少幅の合計が前記第1必要電力に対して不足すると判定したとき、その不足を解消するために必要な第2必要電力を、前記電力供給者の前記予定供給電力を増加させることで賄う需給調整が行われる前記調整計画を決定する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、応募情報受付手段が受け付けた電力購入者による需要電力の予定減少幅の合計が第1必要電力に対して不足したとしても、電力供給者の予定供給電力を増加させることでその不足を解消することを目的とする需給調整が行われる調整計画が決定される。つまり、先ずは、電力購入者による予定需要電力の減少変更によって需給調整が行われ、その電力購入者による予定需要電力の減少変更によっても解消できなかった不足電力のみが、電力供給者による予定供給電力の増大変更によって解消される。その結果、増加変更させる必要のある電力供給者の予定供給電力を少なくできる。
【0013】
本発明に係る
需給調整評価装置の更に別の特徴構成は、前記応募情報受付手段は、前記募集情報に対して前記電力購入者から応募してきた時期の早い順に、前記電力購入者毎の前記需要電力の予定減少幅を合計し、当該需要電力の予定減少幅の合計値が前記第1必要電力に達すると前記募集情報に対する応募を締め切る点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、応募情報受付手段が、上述のように需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達すると募集情報に対する応募を締め切ることで、電力購入者による需要電力の減少が必要以上に行われないようにできる。
【0015】
本発明に係る
需給調整評価装置の更に別の特徴構成は、前記電力購入者は、電力消費装置と自身が運用可能な自家発電装置とを備え、前記電力消費装置による消費電力及び前記自家発電装置による発電電力の少なくとも何れか一方を調整することで、前記需要電力を調整可能である点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、電力消費装置による消費電力を減少させると電力購入者による需要電力が減少し、及び、自家発電装置による発電電力を増加させると電力購入者による需要電力が減少する。つまり、電力購入者は、需要電力を減少させるために利用できる複数の手段(電力消費装置及び自家発電装置)を備えているので、一つの手段しか備えていない場合に比べて、需要電力の予定減少幅を大きく確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照し
て需給調整支援装置10について説明する。
図1は、需給調整支援装置10が利用される電力販売システムの構成を説明する図である。
図1に示すように、需給調整支援装置10は、電気事業者4が、電力供給者1から供給される電力を、例えば他の電気事業者4の送配電系統3を利用して電力購入者2に託送することで、電力購入者2に対する電力の販売が行われる電力販売システムにおいて利用される。例えば、電気事業者4は、一般電気事業者、特定規模電気事業者、特定電気事業者などであり、電力供給者1は、電気事業者4に対して電力の卸売りを行う事業者である。
【0026】
この需給調整支援装置10は、送配電系統3での同時同量の制約を達成させることを目的とする電力供給者1と電力購入者2との間での需給計画を事前に作成するとき、将来の調整対象時間区間(例えば、特定の30分間)において、電力供給者1からの予定供給電力が電力購入者2による予定需要電力と比べて不足しないように需給計画を調整するものである。本実施形態では、電気事業者4が、送配電系統での同時同量の制約を達成させることを目的とする電力供給者1と電力購入者2との間での需給計画を事前に作成する。その結果、需給計画の対象とした将来の特定の日(例えば、翌日など)の特定の調整対象時間区間における、電力購入者による予定需要電力に対する電力供給者からの予定供給電力の不足の発生が明らかになる。
【0027】
そして、電気事業者4が作成した需給計画において、電力供給者1からの予定供給電力が電力購入者2による予定需要電力と比べて不足し、その不足を解消するために必要な第1必要電力が予測されたとき、その第1必要電力に関する不足情報が電気事業者4から需給調整支援装置10に伝達される。そして、需給調整支援装置10は、後述するように、電力購入者2の予定需要電力を減少させる対応、及び、電力供給者1の予定供給電力を増加させる対応の少なくとも何れか一方の可能性を探る。
【0028】
需給調整支援装置10は、募集情報通知手段11と、応募情報受付手段12と、判定手段13と、調整計画決定手段14とを備える。需給調整支援装置10は、更に、後述する記憶手段15を備えてもよい。需給調整支援装置10が備える上記各手段は、1台又は複数台のコンピュータが備える情報処理機能、情報記憶機能、情報入出力機能、及び、外部との情報通信機能などによって実現できる。
【0029】
募集情報通知手段11は、電気事業者4によって作成された需給計画において、上記第1必要電力が予測されたとき、予定需要電力を減少させる行為の実施予定者を電力購入者2の中から募集するために、電力購入者2に対して、少なくとも調整対象時間区間に関する情報を含む募集情報を通知する。
【0030】
例えば、翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の4つの調整対象時間区間(30分間)において、電力供給者1からの予定供給電力が電力購入者2による予定需要電力と比べて不足し、その不足を解消するために必要な第1必要電力が予測されたとき、募集情報通知手段11は、電力購入者2の連絡先情報(例えば、電子メールアドレスなど)を記憶手段15から読み出して、その連絡先に調整対象時間区間を明示した上で需要電力削減の募集に関する募集情報を通知する。例えば、上記第1必要電力の大きさに関わらず、「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に需要電力減少を募集します」というように、需要電力の減少幅を特定しない募集情報を電力購入者2に対して通知してもよい。
【0031】
或いは、募集情報が、調整対象時間区間に関する情報に加えて、需要電力の減少幅に関する情報を含むようにしてもよい。例えば、上記第1必要電力が300kWであるとき、「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に30kWの需要電力減少を募集します」というように、第1必要電力を分割した30kWの減少幅を指定して募集情報を電力購入者2に対して通知してもよい。また或いは、単に「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に300kWの需要電力減少を募集します」というように、第1必要電力の全体量を募集する募集情報を電力購入者2に対して通知してもよい。更に、後述する返信用(応募用)の需給調整支援装置10の連絡先に関する情報を併せて通知しておくこともできる。
【0032】
その後、応募情報受付手段12は、募集情報に対して応募してくる電力購入者2から、調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅に関する情報を含む応募情報を受け付ける。例えば、上記募集情報を受け付けた電力購入者2のうち、上記調整対象時間区間に自身の需要電力を減少しても良いと考えた電力購入者2が、上記返信用(応募用)の連絡先に対して、調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅を特定して応募する。その結果、応募情報受付手段12は、どの電力購入者2がどのような条件で(即ち、どの調整対象時間区間にどれだけの需要電力の予定減少幅で)、需要電力の減少を応募してきたかを知ることができる。応募情報受付手段12は、受け付けた情報を記憶手段15に記憶することができる。
【0033】
図1には、電力購入者2が、電力消費装置2aと、自身が運用可能な自家発電装置2bとを備えている場合を例示したが、電力購入者2は少なくとも電力消費装置2aを備えていればよい。そして、電力購入者2は、電力消費装置2aの消費電力を減少させるような節電を行うことで、需要電力(即ち、電気事業者4から購入する電力)を減少させることができる。また、電力購入者2が自家発電装置2bを備えていれば、電力消費装置2aの消費電力を減少させなくても、その自家発電装置2bの発電電力を増加させることで、送配電系統3を介して購入する需要電力を減少させることができる。尚、電力購入者2が、電力消費装置2aの消費電力の減少と、自家発電装置2bの発電電力の増加とを併せて行ってもよい。
【0034】
但し、電力購入者2が、電力消費装置2a及び自家発電装置2bの両方を備えていれば、電力消費装置2aによる消費電力を減少させることで電力購入者2による需要電力を減少させる調整、及び、自家発電装置2bによる発電電力を増加させることで電力購入者2による需要電力を減少させる調整の両方を行うことができる。つまり、電力購入者2は、需要電力を減少させるために利用できる複数の手段(電力消費装置2a及び自家発電装置2b)を備えているので、一つの手段しか備えていない場合に比べて、需要電力の予定減少幅を大きく確保することができる。
【0035】
本実施形態では、応募情報受付手段12は、募集情報に対して電力購入者2から応募してきた時期の早い順に、電力購入者2毎の需要電力の予定減少幅を合計し、その需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達すると募集情報に対する応募を締め切る。
例えば、上述したように、「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に需要電力減少を募集します」というように需要電力の減少幅を特定しない募集情報を電力購入者2に対して通知した場合、及び、上述したように、第1必要電力が300kWであるときに「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に300kWの需要電力減少を募集します」というように、第1必要電力の全体量を募集する募集情報を電力購入者2に対して通知した場合、応募情報受付手段12は、例えば需要電力の予定減少幅が100kWである応募情報を3つの電力購入者2から受け付けると、その時点で需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達したとして募集情報に対する応募を締め切る。
【0036】
或いは、上述したように、第1必要電力が300kWであるときに「翌日の時刻15:00〜時刻17:00の間の30分間毎に30kWの需要電力減少を募集します」という募集情報を電力購入者2に対して通知した場合、応募情報受付手段12は、30kWの予定減少幅で需要電力減少への応募者が10人に達すると、需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達したとして募集情報に対する応募を締め切る。
【0037】
このように、応募情報受付手段12が、需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達すると募集情報に対する応募を締め切るように構成することで、電力購入者2による需要電力の減少が必要以上に行われないようにできる。
【0038】
次に、判定手段13は、応募情報受付手段12が受け付けた需要電力の予定減少幅の合計が第1必要電力以上であるか否かを判定する。上述したように、応募情報受付手段12が、需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達したために募集情報に対する応募を締め切ったような場合は需要電力の予定減少幅の合計は上記第1必要電力を賄うのに充分であるが、電力購入者2からの応募情報における需要電力の予定減少幅の合計が上記第1必要電力を賄うのには不十分であることも起こり得る。そこで、例えば、電力購入者2が、特定の調整対象時間区間での需要電力の減少に応募してきて、記憶手段15にその情報を記憶した場合、判定手段13は、需要電力の予定減少幅の合計を導出して、その合計値が上記第1必要電力に達しているか否かを判定する。
【0039】
調整計画決定手段14は、判定手段13が、応募情報受付手段12が受け付けた需要電力の予定減少幅の合計が第1必要電力以上であると判定したとき、受け付けたその需要電力の予定減少幅の需給調整が行われる調整計画を決定する。
但し、調整計画決定手段14は、判定手段13が、応募情報受付手段12が受け付けた需要電力の予定減少幅の合計が第1必要電力に対して不足すると判定したとき、その不足を解消するために必要な第2必要電力を、電力供給者1の予定供給電力を増加させることで賄う需給調整が行われる調整計画を決定する。そして、需給調整支援装置10から、何れかの電力供給者1に対して、調整対象時間区間及び第2必要電力が通知される。
【0040】
以上のように、本実施形態の需給調整支援装置10は、電力購入者2自身からの自発的な応募による予測需要電力の減少を受け付けて、需給計画に対して、その予測需要電力の減少(即ち、上述した需要電力の予定減少幅)を踏まえた調整を行うことができる。ここで、上述した需要電力の予定減少幅は、電力購入者2自身からの自発的な応募によるものであるので、実際に需要電力が減少される確度は高いと言える。また、先ずは、電力購入者2による予定需要電力の減少変更を目的として、電力供給者1からの予定供給電力が電力購入者2による予定需要電力と等しくなるような需給計画の調整が行われ、電力供給者1による予定供給電力の増大変更は目的とされない。つまり、電力供給者1による電力の供給余力が積極的に残される。従って、電力供給者による電力の供給余力が残るようにしながら需給計画を調整可能な需給調整支援装置を提供できる。
【0041】
更に、応募情報受付手段12が受け付けた電力購入者2による需要電力の予定減少幅の合計が第1必要電力に対して不足したとしても、次に、電力供給者1の予定供給電力を増加させることでその不足を解消することを目的とする需給調整が行われる調整計画が決定される。つまり、先ずは、電力購入者2による予定需要電力の減少変更によって需給調整が行われ、その電力購入者2による予定需要電力の減少変更によっても解消できなかった不足電力のみが、電力供給者1による予定供給電力の増大変更によって解消される。その結果、増加変更させる必要のある電力供給者1の予定供給電力を少なくできる。
【0042】
以下に説明するのは、
上述した需給調整支援装置10によって決定された調整計画が電力購入者2によって適切に実施されたか否かを評価する需給調整評価装置20である。需給調整支援装置10によって決定された調整計画は、あくまでも電力購入者2が応募した将来の需要電力の予定減少幅を含むものであるので、電力購入者2が実際にその予定減少幅通りの需要電力削減を行うかどうかは不明確である。従って、需給調整評価装置20は、後述するように、電力購入者2が実際に予定減少幅通りの需要電力削減を行ったか否かを評価する。
【0043】
図2は、需給調整支援装置10及び需給調整評価装置20が設けられる電力販売システムの構成を説明する図である。
需給調整評価装置20は、上記需給調整支援装置10によって調整された前記需給計画に従って前記電力購入者2に対する電力の販売が販売該当日に行われた後、前記調整対象時間区間での前記需要電力の実際の減少幅が、前記応募情報に係る前記調整対象時間区間での前記需要電力の予定減少幅に対して充足する程度を導出する充足程度導出手段21を備える。本実施形態では、充足程度導出手段21は、調整対象時間区間での基準需要電力から、販売該当日における調整対象時間区間での需要電力の実際の値を減算して得られる値を、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅として導出する。需給調整評価装置20は、上記需給調整支援装置10と同様に、1台又は複数台のコンピュータなどによって実現できる。
【0044】
図3は、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅の導出例を示す図である。
図3には、時刻15:00〜時刻17:00の間の、4つの調整対象時間区間(各30分間)での需要電力の実際の減少幅を導出する例を示す。この例では、特定の電力購入者2が、4つの調整対象時間区間の全てに対して、30kWの予定減少幅での需要電力減少を応募していた場合について説明する。また、
図3において、需要電力の実際の値は実線で示し、基準需要電力は破線で示し、基準需要電力から予定減少幅を減算した値は一点鎖線で示す。
【0045】
充足程度導出手段21は、電力購入者2が応募した各調整対象時間区間での基準需要電力を導出する。この基準需要電力は、電力購入者2が、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を行わない場合に予測される需要電力、即ち、電力消費装置2aで通常通りの電力消費が行われ及び自家発電装置2bで通常通りの発電運転が行われた場合に予測される需要電力に対応すると見なすことができる。本実施形態において、この基準需要電力は、電力の販売該当日よりも前の複数日のそれぞれの調整対象時間区間での需要電力の実際の値の平均値である。記憶手段22には、各電力購入者2の過去の需要電力が、調整対象時間区間毎に記憶されている。従って、充足程度導出手段21は、記憶手段22に記憶されている特定の電力購入者2の過去の需要電力に関する情報を読み出して、上記基準需要電力を導出できる。
【0046】
図4は、電力購入者2による調整対象時間区間での基準需要電力の導出例を示す図である。
図4に示す例では、過去三日間の、それぞれの調整対象時間区間での需要電力の実際の値の平均値を基準需要電力としている。
図4では、過去の需要電力の実際の値を実線で示し、導出される基準需要電力の値を破線で示す。
図4について具体的に説明すると、水曜日の夜の時点で、翌日の木曜日における調整対象時間区間の基準需要電力を導出するため、木曜日より前の三日間(水曜日、火曜日、月曜日)のそれぞれの調整対象時間区間での需要電力の実際の値の平均値を基準需要電力としている。基準需要電力を導出するに当たっては、同じ属性の日の需要電力の実際の値の平均値を導出する。この例では、属性が平日となる日の基準需要電力を導出するので、同様に属性が平日である過去三日間(水曜日、火曜日、月曜日)での需要電力の実際の値の平均値を導出している。
【0047】
尚、充足程度導出手段21は、基準需要電力を導出するに当たっては、少なくとも1以上の属性を考慮できる。つまり、上述した平日及び休日という属性だけでなく、他の属性、例えば曜日という属性を併せて考慮してもよい。平日及び休日という属性に加えて曜日という属性を考慮する場合、属性が平日及び木曜日である日の基準需要電力は、1週間前の木曜日(平日)の実際の需要電力と、2週間前の木曜日(平日)の実際の需要電力と、3週間前の木曜日(平日)の実際の需要電力とを平均した値から導出される。尚、上記記憶手段22には、電力購入者2の過去の需要電力に関する情報が、属性と関連付けられて記憶されているものとする。
【0048】
図4に示す例では、時刻15:00〜時刻15:30の間の調整対象時間区間の基準需要電力は460kWとなり、時刻15:30〜時刻16:00の間の調整対象時間区間の基準需要電力は500kWとなり、時刻16:00〜時刻16:30の間の調整対象時間区間の基準需要電力は490kWとなり、時刻16:30〜時刻17:00の間の調整対象時間区間の基準需要電力は480kWとなる。本実施形態では、このように導出された基準需要電力の値を、
図3で示す基準需要電力の値として用いている。
【0049】
尚、基準需要電力の導出に用いる上記複数日のそれぞれの調整対象時間区間において、応募情報に基づく需要電力の減少が電力購入者2によって行われていた場合、そのときに計測される調整対象時間区間での需要電力の実際の値は、応募情報で決定された予定減少幅での需要電力の削減を電力購入者2が全く試みなかった場合に計測されるであろう需要電力ではなく、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅を含むものとなる。つまり、応募情報に基づく需要電力の減少が行われたときの需用電力の実際の値を用いて上記基準需要電力を導出したのでは、その基準需要電力の信頼性が低くなる。
【0050】
ところが本実施形態では、複数日のそれぞれの調整対象時間区間において、応募情報に基づく需要電力の減少が電力購入者2によって行われていた場合、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅が無かったものとして、調整対象時間区間での基準需要電力を導出するので、その導出された基準需要電力の値の信頼性を高くすることができる。
具体的には、応募情報に基づく需要電力の減少が電力購入者2によって行われていた場合、そのときに計測される調整対象時間区間での需要電力の実際の値に対して、後述のように導出する調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅を加算する補正を行なえばよい。この補正により、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅が無かったものとされる。そして、その補正後の需要電力の実際の値を記憶手段22に記憶しておき、必要に応じて調整対象時間区間での基準需要電力の導出に用いればよい。
【0051】
一例として、
図3において、需要電力の実際の値は実線で示し、基準需要電力は破線で示し、基準需要電力から予定減少幅を減算した値は一点鎖線で示す。また、予定減少幅を充足している部分は濃く示している。
図3に示すように、販売該当日における調整対象時間区間での需要電力の実際の値が、上記基準需要電力の値よりも低ければ、それは電力購入者2が需要電力を減少させたことによるものであると見なしてもよい。また、応募情報では、どの調整対象時間区間にどれだけの予定減少幅で需要電力を減少させる予定であるのかが特定されている。従って、充足程度導出手段21は、例えば、需要電力の実際の値が、上記基準需要電力の値よりも予定減少幅だけ減少した値に等しければ、調整対象時間区間での需要電力の実際の減少幅が、応募情報に係る調整対象時間区間での需要電力の予定減少幅に対して充足する程度は100%であると導出できる。
【0052】
図3について具体的に説明すると、時刻15:00〜時刻15時30分の間の調整対象時間区間における需要電力の実際の値は430kWであるので、基準需要電力(460kW)と比べて−30kW(実際の減少幅)となっている。従って、予定減少幅(30kW)を充足する程度は100%となる。
時刻15:30〜時刻16:00の間の調整対象時間区間における需要電力の実際の値は480kWであるので、基準需要電力(500kW)と比べて−20kW(実際の減少幅)となっている。従って、予定減少幅(30kW)を充足する程度は67%である。
時刻16:00〜時刻16:30の間の調整対象時間区間における需要電力の実際の値は450kWであるので、基準需要電力(490kW)と比べて−40kW(実際の減少幅)となっている。従って、予定減少幅(30kW)を充足する程度は133%である。
時刻16:30〜時刻17:00の間の調整対象時間区間における需要電力の実際の値は500kWであるので、基準需要電力(480kW)と比べて+20kW(実際の減少幅)となっている。従って、予定減少幅(30kW)を充足する程度は−67%である。
【0053】
充足程度導出手段21が以上のように導出した、電力購入者2の各調整対象時間区間における予定減少幅を充足する程度は、記憶手段22に記憶される。この予定減少幅を充足する程度の値は、電力購入者2が、需給計画の調整においてどの程度貢献したのかを示す値に対応する。従って、記憶手段22に記憶されている、電力購入者2の各調整対象時間区間における予定減少幅を充足する程度の情報を読み出して、その充足する程度に応じた金銭、電力料金の割引、商品などの特典を電力購入者2に対して与えることを行ってもよい。
【0054】
その際、予定減少幅を充足する程度に基づいてどのような特典及びペナルティを与えるかについては適宜設定可能である。例えば、予定減少幅を充足する程度の値が0%〜100%の間であるときにのみ、その割合に応じた特典を電力購入者2に与え、他の割合の場合には特典及びペナルティの何れも電力購入者2に与えない場合や、予定減少幅を充足する程度の値が100%を超えるときにもその割合に応じた特典を与える場合、予定減少幅を充足する程度の値がマイナス値のときはその割合に応じたペナルティを与える場合など、様々な例が考えられる。
【0055】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、
図1及び
図2を参照して電力販売システムの構成を例示したが、その構成は図示したものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、需給調整支援装置10が電気事業者4と一体であってもよい。更に、電気事業者4と電力供給者1とが一体、或いは、需給調整支援装置10と電気事業者4と電力供給者1とが一体であってもよい。
同様に、需給調整評価装置20が、電気事業者4と一体であってもよい。更に、需給調整評価装置20と電気事業者4と電力供給者1とが一体、或いは、需給調整評価装置20と電気事業者4と電力供給者1と需給調整支援装置10とが一体であってもよい。
【0056】
<2>
上記実施形態において、募集情報通知手段11が、応募する動機付けとなる情報を電力購入者2に対して予め通知してもよい。例えば、募集情報に応募して実際に需要電力の削減を行った場合に得られる上記特典等についての情報を電力購入者2に対して予め通知してもよい。
【0057】
<3>
上記実施形態では、応募情報受付手段12が、募集情報に対して電力購入者2から応募してきた時期の早い順に、電力購入者2毎の需要電力の予定減少幅を合計し、その需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力に達すると募集情報に対する応募を締め切る処理を行なう例を説明したが、他の処理を行なうように変更してもよい。例えば、応募情報受付手段12が、電力購入者2からの応募を所定の応募期間に全て仮受付し、その後、応募を仮受付した全電力購入者2による需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力を上回る場合には、複数の電力購入者2による需要電力の予定減少幅の合計値が第1必要電力と等しくなる又は近似するように抽選等によって電力購入者2の選抜を行うことができる。或いは、電力購入者2から受け付ける応募情報が、調整対象時間区間及び需要電力の予定減少幅に関する情報に加えて、その予定減少幅の需要電力の減少を行うにあたってどれだけの特典(例えば、電力料金の割引)を希望するのかについての申し出(例えば、「時刻・・・時〜時刻・・・時の間の30分間に・・・kWの予定減少幅を行った場合の割引特典を・・・円/kWで」など)に関する情報を含む場合であれば、電力購入者2が希望している特典が小さい順に(例えば、需要電力の減少を行った場合に生じる電力料金の割引額の低い順に)電力購入者2の選抜を行ってもよい。
【0058】
<4>
上記実施形態において、電力購入者2が、自身の需要電力を減少させてマイナスの値とするような応募を行ってもよい。例えば、電力購入者2が自家発電装置2bを備えている場合、自家発電装置2bの発電電力が電力消費装置2aの消費電力を上回れば、電力購入者2の需要電力はマイナスの値となる。
【0059】
<5>
上記実施形態において、
図3及び
図4を参照して本発明に係る需給調整評価装置20について説明したが、
図3及び
図4は単に例示目的で記載したものであり、本発明がそれらの例示内容に限定されることはない。