【実施例】
【0027】
以下、実施例、比較例をあげて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
半導体製造におけるバックグラインド工程より発生する金属シリコンスラッジを乾燥後、解砕することで平均粒子径2〜3μmの金属シリコン粉末を得た。この金属シリコン粉末5kgを炭化ケイ素と窒化ケイ素の複合焼結体製の容器に充填し、それをバッチ式窒化炉に入れ、窒素雰囲気に置換した後、窒素雰囲気下、100℃/hrで昇温した。1150℃に達した時点で炉内の窒素雰囲気ガスの一部をアルゴンで置換し、昇温速度を10℃/hrに変更し1300℃まで昇温させた後、1300℃で保持させた。これにより反応速度を最大2.4%/hまで徐々に高めていった。累積窒化率が75%に達した後、昇温速度10℃/hrで1450℃まで昇温させた後、1450℃で3hr保持させた。
室温まで冷却後に窒化インゴットを取り出し、ジョークラッシャー及びロールクラッシャーで粗粉砕、ジェットミルで微粉砕を行い、窒化ケイ素粉末を製造した。
得られた窒化ケイ素粉末を、撹拌しながら水に添加し、30質量%のスラリー(粘度10cP)を調製した。
【0028】
実施例2
半導体製造におけるインゴット切断工程より排出される金属シリコン屑を粉砕することで平均粒子径6〜7μmの金属シリコン粉末を得た。これ以降の工程は実施例1と同じである。
【0029】
実施例3
半導体製造におけるバックグラインド工程より発生する金属シリコンスラッジを乾燥後、ボールミルで粉砕することで平均粒子径1〜1.5μmの金属シリコン粉末を得た。これ以降の工程は実施例1と同じである。
【0030】
実施例4
反応速度を最大1.2%/hに調整した以外は、実施例1と同じである。
【0031】
実施例5
反応速度を最大3.6%/hに調整した以外は、実施例1と同じである。
【0032】
実施例6〜12
実施例1〜5で作製した窒化ケイ素粉末を、分級機(日清エンジニアリング社製商品名「エアロファインクラシファイア」、セイシン企業社製商品名「クラッシール」)を用いて、もしくは異なる分級粉末同士を所定割合混合することで、表1の物性を満たす窒化ケイ素粉末を作製した。
【0033】
比較例1
半導体製造におけるインゴット切断工程より排出される金属シリコン屑を粉砕することで平均粒子径10〜11μmの金属シリコン粉末を得た。これ以降の工程は実施例1と同じである。
【0034】
比較例2
半導体製造におけるバックグラインド工程より発生する金属シリコンスラッジを乾燥後、ボールミルで粉砕することで平均粒子径1〜1.5μmの金属シリコン粉末を得た。これ以降の工程は実施例1と同じである。
【0035】
比較例3
反応速度を最大0.8%/hに調整した以外は、実施例1と同じである。
【0036】
比較例4
反応速度を最大4.0%/hに調整した以外は、実施例1と同じである。
【0037】
比較例5〜12
実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した窒化ケイ素粉末を、分級機(日清エンジニアリング社製商品名「エアロファインクラシファイア」、セイシン企業社製商品名「クラッシール」)を用いて、もしくは異なる分級粉末同士を所定割合混合することで、表1の物性を満たす窒化ケイ素粉末を作製した。
【0038】
比較例13
実施例1で作製した窒化ケイ素粉末を、鉄ボールを充填したボールミルで30分混合し、表を満たす窒化ケイ素粉末を作製した。
【0039】
<測定方法>
90%粒子径、粒度分布 :純水200ml中にヘキサンメタリン酸ナトリウム20%水溶液2mlと測定サンプル60mgを添加し、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、商品名「US−300T」)で3分間分散させた後、マイクロトラック(日機装製、商品名「MT3300EXII」)により測定した。90%粒子径、粒度分布は、粒子の体積(%)を基準に測定を行った。
α相 :粉末X線回折装置(リガク製 、商品名「UltimaIV」)にて2θ=32〜38°の範囲で測定し、その間に現れるピークの強度より次式にて算出した。
α化率={(I
a102+I
a210)/(I
a102+I
a210+I
b101+I
b210)}
I
a102:α相(102)面のピーク強度
I
a210:α相(210)面のピーク強度
I
b101:β相(101)面のピーク強度
I
b210:β相(210)面のピーク強度
鉄含有量 :蛍光X線分析装置(リガク製、商品名「ZSX−PrimusII」)にて測定した。
【0040】
<塗膜特性評価方法>
ステンレス製(SUS304)の板に30mmの幅で300mm塗布した後、塗膜を120℃×1時間乾燥した。
(塗布性)
塗膜の塗りムラ状態を目視にて評価した。
◎:塗りムラが見られない
○:塗りムラが塗布面積全体の10%以下
△:塗りムラが塗布面積全体の50%以下
×:塗りムラが塗布面積全体の50%を超える
(密着性)
塗膜の密着性(ひび割れ、はがれ)を目視にて評価した。
○:ひび割れ、はがれが見られない
×:ひび割れ、はがれが見られる
<シリコンインゴット不純物混入量>
上述の30質量%スラリーを、底面220×220mm、高さ300mmの石英ルツボの内壁に、乾燥後の厚みが0.3mmとなるようにスプレー塗布し、120℃×1時間の条件で加熱乾燥した。
その後、高純度シリコン粉末(純度7N)を10kg投入し、アルゴン雰囲気中で1480℃×10時間維持した後冷却した。
生成した高純度シリコンインゴットを取り出した後、特に不純物が混入するインゴット上面について、以下の式より不純物混入率を算出した。
不純物混入率(%)={(不純物混入部分の面積)/(シリコンインゴット上部面積)}×100
なお、不純物の大部分は、シリコン粉末の溶解収縮時に石英ルツボ内壁より脱落した離型剤から由来したものであることを確認済みである。
結果を表1に示す。表1の実施例と比較例から、本発明の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いると、石英ルツボからの多結晶シリコンインゴットへの不純物の混入を低減することができた。また、石英ルツボへの離型剤の塗布性が改善され、塗布時の作業性が向上した。
【0041】
【表1】