特許第5901480号(P5901480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901480
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】管内損傷部封止バンド
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/162 20060101AFI20160331BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F16L55/162
   E03C1/122 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-202980(P2012-202980)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-58995(P2014-58995A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】593143142
【氏名又は名称】株式会社昇和産業
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】三戸 常次
(72)【発明者】
【氏名】▲今▼関 祐司
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−144824(JP,A)
【文献】 特開平5−147702(JP,A)
【文献】 特開2005−147294(JP,A)
【文献】 特開2005−344905(JP,A)
【文献】 特開平4−266688(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公告第1218233(DE,B)
【文献】 特開2007−40398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/16 − 55/179
E03C 1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドにおいて、
円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って敷設されるように薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと、
前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された隙間に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔とを有し、
前記バンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔には敷設後に封止剤を封入する孔を形成したことを特徴とする管内損傷部封止バンド。
【請求項2】
管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドにおいて、
円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って複数個に分割した薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと
前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された前記隙間に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔を有し、
前記それぞれのバンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔には敷設後に封止剤を封入する孔を形成したことを特徴とする管内損傷部封止バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道や下水などの配水管あるいは工業用の排水管などにおける管内の損傷部を補修するための、管内損傷部封止バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道や下水などの配水管あるいは工業用の排水管などにおける管内の損傷部を補修するため、補修用の部品や補修方法が提案されており、さらに工事現場では各種の補修方法が用いられてきた。
【0003】
そして、損傷部分を部分的に補修する方法や、損傷部を含む全域を総合的に補修する補修部品や方法が提案されている。すなわち、水中で硬化するセメントや接着剤が開発され、損傷部分の周囲を抉り取るとともに、当該部分に当該接着剤を注入する方法などが知られている。
【0004】
具体的には、例えば特開2011−12787号公報には、配管1を流れる流体の漏洩を生じさせる欠陥を封止する配管補修方法であって、配管1の外周面11に欠陥を包囲するように枠体2を配置する工程と、配管1の周方向に沿う部分の枠体2の開口縁部を配管1に押圧する第1治具3を取り付ける工程と、配管1の軸方向に沿う部分の枠体2の開口縁部を配管1に押圧する第2治具4を取り付ける工程と、第1治具3及び第2治具4が取り付けられた状態で、枠体2の開口20に硬化型の封止剤Q1を充填する工程と、封止剤が充填された枠体2の開口20を蓋で塞ぐ工程と、蓋で塞ぐ工程の後に封止剤を硬化させる工程と、封止剤を硬化させる工程の後に枠体及び蓋を取り外す工程とを有する配管補修方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−12787号公報(図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、損傷部分の周囲を抉り取るとともに、当該部分に接着剤を注入して損傷部を封止する方法では、抉り取る作業が容易でないばかりではなく、効率的な作業が行えず経費が嵩むため経済的ではない。さらに、損傷部を封止したことによる接着剤の剥離など信頼性に乏しい面がある。
【0007】
また、特開2011−12787号公報に開示された方法では、特殊な治具が必要であるために経費が嵩むとともに、治具を取り外したあとの固定部の封止の持続性及びその安定性に不安が残る。
【0008】
このような状況下において補修作業が簡便であって補修の手間が掛からず、かつ補修部分が安定して封止効果が持続可能な補修部品及び補修方法が求められている。
【0009】
この発明は、前記のような課題を解決するものであり、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドを管内面の損傷部を含む部位に敷設し、当該バンドを管内面に密着させた上で封止剤を注入して、損傷部を補修する管内損傷部封止バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため請求項1に記載の発明によれば、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドにおいて、円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って敷設されるように薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと、前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された隙間に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔とを有し、前記バンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔には敷設後に封止剤を封入する孔を形成したことを特徴とする。
【0011】
また請求項2に記載の発明によれば、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドにおいて、円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って複数個に分割した薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと、前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された前記隙間に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔を有し、前記それぞれのバンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔には敷設後に封止剤を封入する孔を形成したことを特徴とする管内損傷部封止バンド。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って敷設されるように薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと、前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された隙間を埋に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔とを有し、前記バンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔に形成した孔に封止剤を封入することにより、管内損傷部を補修することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドにおいて、円周方向の両端が楔状に隙間を有し管内の内周面全周囲に亘って複数個に分割した薄板で帯状に形成されるとともに円筒方向の両端側に弾性を有する封止パッキンを敷設したバンドと、前記バンドの円周方向の両端に楔状に形成された前記隙間に挿入されて前記バンドを管内周面に密着させるように構成された打ち込み楔を有し、前記それぞれのバンドと前記打ち込み楔との各接合部は円周方向であって楔の打ち込み方向に沿って一方の接合部を凸面に他方の接合部を凹面にそれぞれ形成し、前記バンドおよび/または前記打ち込み楔に形成した孔に敷設後に封止剤を封入することにより、管内損傷部を補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の一形態による管内損傷部封止バンドの設置断面図である。
図2図1における中央部の縦方向断面図である。
図3】この発明の管内損傷部封止バンドを敷設管に使用する要部の拡大断面図である。
図4】この発明の管内損傷部封止バンドを複数に分割した実施形態の一つの形状を示す図面である。
図5】この発明の管内損傷部封止バンドの両端側の隙間に設置する打ち込み楔の形状図である。
図6】従来例の損傷部補修方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。図1は、既設の排水管21等の内部に、この発明による損傷部封止バンド22,23,24を設置した場合の断面図である。既設の排水管21等は、例えば内径が1100ミリメートルのヒューム管などで製作され設置されている。この排水管21等の接合部の水漏れや部分的な欠損などが生じることがあり、このような損傷部分21aの補修が必要になる場合の解決策の一つである。
【0016】
こうした損傷部分21aを補修するために、図2に示すように損傷部分2を含む円周方向内面に、厚さが5ミリメートルで幅が200ミリメートルのステンレス鋼板で形成された損傷部封止バンドBが貼り付けられる。この損傷部封止バンドBは一枚で構成しても良いが、運搬などの都合上から本実施例では三枚22、23、24で構成している。
【0017】
また、損傷部封止バンド22,23,24の両側終端の接合部分には、図4及び図5に示すように打ち込み楔25を挿入するために一方が広口25bで他方が狭口25aとなるように構成される。即ち、図1に示すように損傷部封止バンドは、三枚のバンド22、23、24を連結して構成され、上側に構成される両側終端の接合部分には、打ち込み楔25を挿入する隙間28が形成されている。
【0018】
打ち込み楔25は、図5に示すように封止バンド22,24の両側終端の接合部分を埋めるような傾斜した楔状に形成され、図5(a)に示すように一方が狭く25aそして他方が広い幅25bを有する楔状になっている。そして、傾斜した楔状の端面両側には図5(b)、(c)に示すように細長い突起25cが形成されている。この端面両側の細長い突起25cは、図4(a)に示すように封止バンド22、24の両側終端の接合部分に打ち込み楔25が挿入される際に、両側終端の接合部分に形成された薄い幅の溝22a、24aが嵌合される。
【0019】
損傷部封止バンド22、23、24は、図4に拡大して示すように円周方向の両端が楔状に隙間28を有し、管内の内周面全周囲に亘って敷設されるように帯状に形成される。つまり、図4に示す中央部分がバンド22、24の両側終端の接合部を表わし、接合部の一方である打ち込み楔25には細長い突起25c、25cが形成され、他方である封止バンド22、24にはこれと噛合う薄い幅の溝22a、24aが形成されている。また、図3に示すように断面で円筒方向の左右両端側にクボミ溝22a、22aが形成され、そのクボミの中に弾性を有する封止パッキン22b、22bがそれぞれ敷設されている。
【0020】
損傷部封止バンドの敷設には、三枚のバンド22、23、24を連結して排水管21等の内面に仮止めされ、最後に打ち込み楔25が排水管21等の内面で円筒方向から両側終端の接合部分の隙間28に挿入される。即ち、円筒方向の一方の広口部分から他方の狭口部分に向かって、打ち込み楔25の狭い幅の部分25aから隙間28に挿入されると、順次封止バンド22、24の両端を引き離すように作用する。つまり、バンド全体の内径が大きく膨らむことを意味し、それによって封止バンド22、23、24を排水管21等の内面に密着させるように作用する。
【0021】
このようにして、打ち込み楔25が封止バンド22、24の隙間28に挿入されることによって、封止バンド22、23、24が排水管21等の内面に密着され、円筒方向の両端側に形成されたクボミ溝22a、22aの中に敷設された弾性を有する封止パッキン22bが排水管21等の内面に圧接される。封止パッキン27は水によって膨張する特性を有する特殊ゴムを用いて形成される。そして、封止バンド22、23、24と排水管21等の内面との間に、封止パッキン22bによって密封された狭い空間が形成される。
【0022】
一方、封止パッキン22bおよび打ち込み楔25には数箇所に小穴26が形成されており、この小穴26から封止パッキン22bによって密封された狭い空間内に、特殊治具を用いてウレタン系の樹脂27が注入され、排水管21等の内面に生じた損傷部分21aを完全に密封して水漏れなどの不都合を修理できる。小穴26は図5に示されているが、封止バンド22、23、24にも形成されているけれども他の図面においては省略されている。
【0023】
図3は、このようにしてウレタン系の樹脂27が封止パッキン22bによって密封された狭い空間内に注入され、排水管21等の内面に生じた損傷部分21aを完全に密封した状態を示している。
【0024】
ここで、三枚の損傷部封止バンド22、23、24のそれぞれの接合部には、円筒方向の位置ずれを防止するために、図4(b)および(c)に示すように一方の端面の形状を凹面に、そして他方の端面の形状を凸面に形成され、それぞれ凹凸面を嵌め合わせて接合を確実にしている。さらに、損傷部封止バンド22、23、24および打ち込み楔25を確実に排水管21等の内面に固定するために、図5に打ち込み楔25について例示するようにねじ穴29が形成されており、このねじ穴29にアンカーボルト(図示していない)を取り付けて締め付けると、位置ずれを生じ難くなり強固に固定できる。損傷部封止バンド22、23、24については図示していないが、図5に例示するねじ穴29と同様のねじ穴が形成され、アンカーボルトによって排水管21等の内面に確実に固定される。
【0025】
なお、上記実施例では封止パッキン22bによって密封された狭い空間内に、ウレタン系の樹脂27が注入されて排水管21等の内面に生じた損傷部分21aを密封しているが、注入する材料としてはこれに限定されることなく、水膨張性を有する素材など損傷部封止剤を適宜置換できることは言うまでもない。また、上記実施例では三枚の損傷部封止バンド22、23、24に分割しているが、部品単体の重量が運搬上の障害になる場合には、四枚または五枚など適宜分割数を変えることができる。さらに、損傷部封止バンド22、23、24はステンレス素材に限定されず、適宜先端技術に基づく適正な素材を適用できる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜実施形態を変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0027】
21;既設の排水管
21a;損傷部分
22,23,24;損傷部封止バンド
25;打ち込み楔
26;小穴
27;損傷部封止剤(ウレタン系の樹脂)
図1
図2
図3
図4
図5
図6