(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901481
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】裁断装置
(51)【国際特許分類】
D06H 7/00 20060101AFI20160331BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
D06H7/00
B26D5/00 B
B26D5/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-203738(P2012-203738)
(22)【出願日】2012年9月15日
(65)【公開番号】特開2014-58752(P2014-58752A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591264474
【氏名又は名称】株式会社ナムックス
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】那須 信夫
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−218594(JP,A)
【文献】
特開平02−277878(JP,A)
【文献】
特開平08−120561(JP,A)
【文献】
特開平02−278377(JP,A)
【文献】
特開平07−075999(JP,A)
【文献】
特開平09−137314(JP,A)
【文献】
特開昭63−087857(JP,A)
【文献】
米国特許第05508936(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 7/00
B26D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材から採取すべきパターンピースの形状の型紙を配置可能に形成されたマーキング領域を有するマーキングボードと、
上記マーキングボードのマーキング領域の型紙の配置状態を読み取る読取装置と、
上記読取装置が読み取った上記マーキングボードの型紙の配置状態を示す配置画像を出力する画像出力手段と、
上記画像出力手段から出力された配置画像から、上記型紙の輪郭を抽出して裁断データを作製する裁断データ作製手段と、
上記裁断データ作製手段から出力された裁断データに基づいて、シート材を裁断してパターンピースを作製する裁断装置本体と
を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の裁断装置において、
上記裁断データ作製手段が、
上記配置画像の上記型紙の輪郭に対応する画素を抽出する輪郭抽出手段と、
上記輪郭抽出手段で抽出された画素を、これらの抽出された画素のうちの所定の画素を通る関数で表されるベクターデータに変換するラスター/ベクター変換手段と
を有することを特徴とする裁断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の裁断装置において、
上記裁断データ作製手段が、ベクターデータを編集するベクターデータ編集手段を有することを特徴とする裁断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の裁断装置において、
上記マーキングボードが、上記マーキング領域に形成された吸引開口と、この吸引開口に連なる吸引室を有し、
上記吸引室の空気を吸引する吸引手段を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の裁断装置において、
電子黒板を用いて、上記マーキングボードと、上記読取装置と、上記画像出力手段を構成することを特徴とする裁断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の裁断装置において、
上記裁断装置本体が、
上記シート材を支持する支持面を有する支持台と、
上記支持台の支持面に支持されたシート材を切断するカッターを内蔵したカッターヘッドと、
上記カッターヘッドを支持面と平行の面内に駆動するヘッド駆動部と、
上記裁断データに基づいて上記ヘッド駆動部とカッターヘッドの動作を制御して、上記マーキングボードに配置された型紙の形状に上記シート材を裁断する裁断制御部と
を有することを特徴とする裁断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地を型紙に沿って裁断してパターンピースを作成する裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、布地を裁断して被服用のパターンピースを作製する裁断装置として、プロッタ型の裁断装置がある。プロッタ型の裁断装置は、布地を支持する支持面を有する裁断テーブルと、裁断刃を内蔵して裁断テーブルの支持面上を平面方向に駆動される裁断ヘッドを備える。この裁断装置は、パターンピースの形状を表す裁断データが入力され、入力された裁断データに基づいて裁断ヘッドを平面方向に駆動しながら裁断刃を作動させ、支持面上の布地を裁断してパターンピースを作製するように構成されている。
【0003】
上記裁断装置で裁断を行うためには、布地からパターンピースを採取する位置を決定する所謂マーキングが行われる。マーキングにおいては、布地と同じ大きさの台紙の上に、パターンピースの形状を表す型紙を、布地の柄や、布地の無駄の最小化を考慮して、互いの位置を調整して配置する。次いで、配置された型紙を筆記具で縁取りし、台紙に型紙の形状を描いて、パターンピースの配置状態を台紙に記録する。
【0004】
最近、コンピュータを用いて、布地を表す仮想布地形状をディスプレイに表示すると共に、パターンピースを表す仮想パターンピース形状を布地と同じ縮尺でディスプレイに表示して、上記仮想布地形状内に仮想パターンピース形状の配置位置を調整可能としたマーキング用のソフトウェアが開発されている。このソフトウェアでマーキングが行われると、パターンピースの配置状態が、原寸大の台紙にプリンタで印刷される。
【0005】
マーキングの後、筆記具やプリンタによりパターンピースの配置状態が表された台紙が作製されると、この台紙をスキャナに通し、台紙に描かれたパターンピースの形状を読み取って裁断データが作製される。この裁断データを裁断装置に入力し、布地の裁断を行っている。
【0006】
パターンピースの配置状態が表された台紙を読み取るためのスキャナとしては、主走査方向に複数配置された密着型イメージセンサを備え、これと直交する副走査方向に台紙を駆動して、密着型イメージセンサで台紙の型紙の形状を読み取るものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−212077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、コンピュータを用いて行うマーキングは、表示装置に原寸大の仮想布地形状と全ての仮想パターンピース形状を表示することが困難であるので、現実感を持って布地の全体を把握しにくいという問題がある。また、マーキングの後、位置決めした型紙の形状を台紙に筆記具で描く作業は、作業者の熟練が必要であり、また、作業に手間と時間がかかる問題がある。また、筆記具又はプリンタでパターンピースの配置状態を台紙に表すためには、布地と同じ寸法の台紙が必要となるので、紙資源の消費が嵩む問題がある。また、コンピュータを用いてマーキングを行った後、パターンピースの配置状態を印刷した台紙をスキャナで読み取って裁断データを作製するには、コンピュータとプリンタとスキャナが必要であり、作業に要する装置が多いという不都合がある。また、マーキングから裁断データの作製までに要する工程が多く、手間と時間がかかる不都合がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、シート材からパターンピースを取り出す位置を調整し、裁断装置で裁断を行うまでの作業を、現実感を持ってパターンピースの位置を調整でき、作業者の熟練を必要とせず、台紙を用いることなく、少ない装置により、少ない手間と時間で行うことができる裁断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の裁断装置は、
型紙を配置可能に形成されたマーキング領域を有するマーキングボードと、
上記マーキングボードのマーキング領域の型紙の配置状態を読み取る読取装置と、
上記読取装置が読み取った上記マーキングボードの型紙の配置状態を示す配置画像を出力する画像出力手段と、
上記画像出力手段から出力された配置画像から、上記型紙の輪郭を抽出して裁断データを作製する裁断データ作製手段と、
上記裁断データ作製手段から出力された裁断データに基づいて、シート材を裁断してパターンピースを作製する裁断装置本体と
を備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、マーキングボードのマーキング領域に型紙が配置され、この型紙の配置位置が調整されることにより、マーキング領域に対応するシート材からパターンピースを取り出す位置が調整される。マーキング領域内の型紙の配置位置が決定されると、読取装置により、マーキングボードの型紙の配置状態が読み取られ、上記型紙の配置状態を示す配置画像が画像出力手段から出力される。画像出力手段から配置画像が出力されると、裁断データ作製手段により、上記配置画像から上記型紙の輪郭が抽出されて、裁断データが作製される。裁断データ作製手段から裁断データが出力されると、この裁断データに基づいて、裁断装置本体により、シート材が裁断されてパターンピースが作製される。このように、本発明の裁断装置によれば、マーキング領域内に配置した型紙の位置を調整することにより、シート材からパターンピースを取り出す位置を調整するマーキングを行うことができる。したがって、コンピュータのディスプレイに仮想布地形状と仮想パターンピース形状を表示してマーキングを行うよりも、現実感を持ってシート材の全体を把握しながら、パターンピースを取り出す位置を確認できる。また、読取装置によってマーキングボードのマーキング領域の型紙の配置状態が読み取られ、上記マーキングボードの型紙の配置状態を示す配置画像が画像出力手段によって出力されるので、型紙を筆記具で縁取りして台紙に型紙の形状を描くような熟練が不要である。また、筆記具又はプリンタでパターンピースの配置状態を表す台紙が不要であるので、紙資源の使用を削減できる。さらに、マーキングの作業から、マーキングにより決定された型紙の位置を読み取り、裁断データを作製するまでの作業を、プリンタを用いることなく、少ない装置により、少ない手間と時間で行うことができる。
【0012】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断データ作製手段が、
上記配置画像の上記型紙の輪郭に対応する画素を抽出する輪郭抽出手段と、
上記輪郭抽出手段で抽出された画素を、これらの抽出された画素のうちの所定の画素を通る関数で表されるベクターデータに変換するラスター/ベクター変換手段と
を有する。
【0013】
上記実施形態によれば、上記輪郭抽出手段により、上記配置画像から、上記型紙の輪郭に対応する画素が抽出される。抽出された画素に基づいて、ラスター/ベクター変換手段により、抽出された画素のうちの所定の画素を通る関数で表されるベクターデータに変換される。このベクターデータを、例えば、裁断装置本体の機械原点に関する直交座標に変換することにより、裁断データを作製することができる。このように、ラスターデータである配置画像に基づいてベクターデータが作製されるので、データ量が小さくて、裁断装置本体が裁断動作を実行可能な裁断データが得られる。
【0014】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断データ作製手段が、ベクターデータを編集するベクターデータ編集手段を有する。
【0015】
上記実施形態によれば、裁断データ作製手段において、ベクターデータ編集手段により、ベクターデータが編集される。これにより、マーキングボードを用いたマーキング作業で型紙の配置状態を調整した後に、型紙の形状に対応するベクターデータを、更に調整することができる。上記ベクターデータ編集手段は、ベクターデータで表される形状の変更や、ベクターデータの複製や、ベクターデータの追加や、ベクターデータの削除が可能であるのが好ましい。ここで、ベクターデータで表される形状の変更とは、形状の拡大や、縮小や、変形や、向きの変更をいう。
【0016】
一実施形態の裁断装置は、上記マーキングボードが、上記マーキング領域に形成された吸引開口と、この吸引開口に連なる吸引室を有し、
上記吸引室の空気を吸引する吸引手段を備える。
【0017】
上記実施形態によれば、吸引手段により、マーキングボードの吸引開口に連なる吸引室の空気が吸引され、これにより、吸引開口から空気が吸引されてマーキング領域に吸引力が生じる。したがって、型紙をマーキング領域に配置するのみにより、固定用磁石や粘着テープ等を用いることなく、配置位置に型紙を容易に固定することができる。
【0018】
一実施形態の裁断装置は、電子黒板を用いて、上記マーキングボードと、上記読取装置と、上記画像出力手段を構成する。
【0019】
上記実施形態によれば、マーキングボードと、読取装置と、画像出力手段を、汎用の電子黒板を用いて構成することにより、マーキングボードの型紙の配置状態を読み取って配置画像を作製する装置を容易に構成することができる。
【0020】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断装置本体が、
上記シート材を支持する支持面を有する支持台と、
上記支持台の支持面に支持されたシート材を切断するカッターを内蔵したカッターヘッドと、
上記カッターヘッドを支持面と平行の面内に駆動するヘッド駆動部と、
上記裁断データに基づいて上記ヘッド駆動部とカッターヘッドの動作を制御して、上記マーキングボードに配置された型紙の形状に上記シート材を裁断する裁断制御部と
を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、支持台の支持面に支持されたシート材が、裁断制御部の制御により、ヘッド駆動部で駆動されるカッターヘッドのカッターで裁断されて、マーキングボードに配置された型紙の形状に裁断される。支持面とマーキングボードを実質的に同じ寸法にすることにより、支持面に支持されたシート材を実際に観察しながら、マーキングボードに型紙を配置する作業を行うことができる。したがって、シート材からパターンピースを取り出す状況を現実的に予測しながら、正確な柄合わせや、シート材の欠陥を回避しつつマーキングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の裁断装置を示す斜視図である。
【
図2】マーキングボードのボード本体を示す断面図である。
【
図3】裁断装置本体とマーキングボードと制御装置を示すブロック図である。
【
図4】マーキングから裁断までの工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施形態の裁断装置は、シート材としての布地を裁断して被服のパターンピースを作製するプロッタ型の裁断装置である。
図1に示すように、この裁断装置1は、裁断を行う裁断装置本体2と、型紙8を用いてマーキングを行うマーキングボード3と、布地を裁断装置本体2に送る解反機4と、マーキングボード3からの入力情報に基づいて裁断データを作製して裁断装置本体2に出力する制御装置5とで大略構成されている。
【0025】
裁断装置本体2は、上面に矩形の支持面21を有する支持台としての裁断テーブル20と、カッターユニット22を有する。裁断テーブル20は、布地7を解反機4から搬送すると共に裁断時に布地7を支持するベルトコンベヤを内蔵している。ベルトコンベヤは、裁断テーブル20の長手方向の両端に内蔵されて短手方向に延在する図示しないプーリの間に、コンベヤベルトが掛け渡されて構成されている。このコンベヤベルトの上側部の表面が、裁断テーブル20の上側面に露出して、支持面21として機能する。コンベヤベルトはモケット状のシートで形成されている。
【0026】
カッターユニット22は、裁断テーブル20の長手方向の縁部に設置された2つのレールに沿って走行する一対のキャリッジ23と、これら1対のキャリッジ23,23の間に掛け渡されて裁断テーブル20の短手方向に延在する梁部材24と、この梁部材24に設置されたレールに沿って走行するカッターヘッド25を備える。カッターヘッド25は、布地7を切断する回転刃と固定刃を内蔵している。カッターヘッド25は、キャリッジ23で裁断テーブル20の長手方向に移動すると共に、カッターヘッド25に内蔵された駆動機構で裁断テーブル20の短手方向に移動することにより、裁断テーブル20の支持面21と平行の面内に駆動される。このように、レールとキャリッジ23と梁部材24とカッターヘッド25の駆動機構により、ヘッド駆動部が構成されている。
【0027】
マーキングボード3は、裁断テーブル20の支持面21と略同じ寸法の矩形のマーキング領域31が表面に形成され、鉛直方向に立設されたボード本体30と、ボード本体30のマーキング領域31の内容を読み取る読取装置32と、読取装置32の動作を制御すると共に読取装置32が読み取った内容を表す画像情報を出力するボード制御部33を有する。ボード本体30と読取装置32とボード制御部33は、市販の電子黒板を利用して作製されている。マーキングボード3は、裁断装置本体2の裁断テーブル20の近傍に配置されている。
【0028】
図2は、マーキングボード3のボード本体30を示す断面図である。ボード本体30は、鋼製の板材で形成された横長の長方形のパネル34を有し、このパネル34には、平面視において縦方向及び横方向に2センチメートル間隔をおいて設けられた複数の吸引開口34aが形成されている。パネル34の表面には、不織布で形成された通気シート35が設けられている。通気シート35は、通気性を有するシート状部材であれば、不織布以外のもので形成されてもよい。通気シート35は、通気シート35の表面に配置される型紙8との境界を正確にトレース可能とするため、型紙8に対して、明度や彩度や色相の差が大きい色に着色する。本実施形態では、型紙8を白色とし、通気シート35を黒色とする。型紙8とは、被服のパターンピースの形状に切り抜かれた紙片であり、全面を白色とするのが好ましいが、少なくとも輪郭部分が白色であればよい。また、通気シート35との色の対比により型紙8の輪郭が明らかであれば、輪郭部分以外の部分は他の色でもよい。また、型紙8には、型紙8の位置の基準となるトンボや、文字や、記号等が付されてもよい。
【0029】
マーキングボード3のボード本体30は、パネル34の周縁を封止するようにパネル34の裏面に固定された気密ケーシング36が固定されている。気密ケーシング36の内側には吸引室37が形成され、この吸引室37はパネル34の吸引開口34aに連通している。気密ケーシング36には吸引ホース38が連結され、この吸引ホース38には吸引ポンプ39が接続されている。吸引ポンプ39が作動すると、吸引ホース38を介して気密ケーシング36内の空気が吸引され、吸引開口34aを通して通気シート35に空気を吸引する流れが形成されて、通気シート35の表面に型紙8を吸着するように形成されている。なお、ボード本体30には通気シート35を設けなくてもよく、この場合、パネル34の表面を、型紙8に対して明度や彩度や色相の差が大きい色に着色すればよい。
【0030】
ボード本体30の長手方向に延在する上端縁には、読取装置32を案内するレールが設けられている。ボード本体30の身近手方向に延在する両側縁には、ボード本体30を支持する脚部が設けられている。
【0031】
マーキングボード3の読取装置32は、ボード本体30の短辺と略同じ長さの細長のケーシング内に、ボード本体30の短辺方向に延在するリニアイメージセンサが内蔵されている。読取装置32の上端部には、ボード本体30の上端縁のレールに沿って走行する走行装置が設けられている。この読取装置32は、走行装置により、リニアイメージセンサの延在方向と直角方向であるボード本体30の長辺方向に走行しながら、リニアイメージセンサでボード本体30のマーキング領域31を走査するように形成されている。
【0032】
マーキングボード3のボード制御部33は、読取装置32の動作を制御する制御手段として機能すると共に、読取装置32のリニアイメージセンサからの出力に基づいてマーキング領域31における型紙8の配置状態を示す配置画像を出力する画像出力手段として機能する。
【0033】
解反機4は、ベルトコンベヤの一端側に、裁断テーブル20の短辺に隣接して配置されている。解反機4は、布地のロール71が載置された状態で、このロール71を回転駆動して布地7を巻き出すものである。この解反機4は、図示しないモータによって回転駆動され、回転軸が所定間隔をおいて平行に配置された2つの解反ローラを有する。これら2つの解反ローラに接するように、解反ローラの間の上側にロール71が載置され、解反ローラが回転するに伴ってロール71から布地を巻き出すように構成されている。解反機4には、解反ローラよりも裁断テーブル20側に、解反ローラから巻き出された布地7を裁断テーブル20に送るガイドローラが設けられている。
【0034】
制御装置5は、市販のノート型PC(パーソナルコンピュータ)によって構成され、裁断装置本体2とマーキングボード3に接続されている。制御装置5は、マーキングボード3から型紙8の配置画像が入力され、配置画像から裁断データを作製し、裁断装置本体2に出力する。制御装置5は、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムをCPUが実行して、次の各部の機能を実現する。
【0035】
図3は、裁断装置本体2と、マーキングボード3と、制御装置5を示すブロック図であり、配置画像及び裁断データに関する処理を実行する部分を示している。
図3に示すように、制御装置5はマーキングボード3に接続され、マーキングボード3の制御部33から、マーキング領域31における型紙8の配置状態を示す配置画像が入力される。制御装置5は、輪郭抽出手段としての輪郭抽出部51と、ラスター/ベクター変換手段としてのトレース部52と、トレース部52からのデータを編集するベクターデータ編集手段としてのベクターデータ編集部53と、ベクターデータ編集部53からのデータを裁断データに変換する裁断データ変換部54を有する。
【0036】
制御装置5の輪郭抽出部51は、マーキングボード3の制御部33から入力された配置画像の画像処理を行い、型紙8の輪郭を抽出する。輪郭抽出部51は、配置画像において、明度や再度や色相が急激に変化する画素を抽出する。トレース部52は、輪郭抽出部51で抽出された画素を、これらの抽出された画素のうち、所定の画素を通る関数で表されるベクターデータに変換する。ベクターデータ編集部53は、トレース部52で変換されたベクターデータを編集する。ベクターデータ編集部53によって可能な編集は、ベクターデータで表される形状の変更や、ベクターデータの複製や、ベクターデータの追加や、ベクターデータの削除である。ここで、ベクターデータで表される形状の変更とは、形状の拡大や、縮小や、変形や、向きの変更をいう。ベクターデータ編集部53でベクターデータを編集することにより、型紙8を作製してマーキングボード3で読み取る作業をやり直すことなく、裁断装置本体2が裁断を実行する形状を所望の形状に設定することができる。ベクターデータ編集部53は、CAD(computer aided design)ソフトウェアや画像描画ソフトウェアにより実現することができる。なお、トレース部52で変換されたベクターデータを、ベクターデータ編集部53で編集することなく、裁断データ変換部54に出力してもよい。裁断データ変換部54は、トレース部52で変換されたベクターデータや、ベクターデータ編集部53で編集されたベクターデータを、裁断装置本体2が裁断動作を実行できる形式である裁断データに変換する。裁断データは、裁断テーブル20の支持面21上に設定される平面座標で表される。上記輪郭抽出部51及びトレース部52は、市販の汎用コンピュータプログラムを用いることができ、例えば、アドビシステムズ株式会社製イラストレーターCS6の画像トレース機能を利用することができる。
【0037】
裁断装置本体2には、裁断装置本体2及び解反機4の動作を制御する裁断制御部27が設けられている。裁断制御部27は、解反機4のロール71から裁断テーブル2の支持面21に布地7を引き出す際に、裁断装置本体2のベルトコンベヤと解反機4の動作を制御する。また、裁断制御部27は、支持面21上の布地7を裁断する際のカッターユニット22の動作を制御する。
【0038】
図4は、上記構成の裁断装置1を用いて、布地7からパターンピースを採取する位置を決定するマーキングを行い、マーキングで決定されたとおりに布地7の裁断を行うまでの工程を示すフローチャートである。
【0039】
まず、解反機4と裁断テーブル20のベルトコンベヤを作動させ、解反機4のロール71から布地7を巻き出して、裁断テーブル20の支持面21上に布地7を配置する。続いて、マーキングボード3を起動し、吸引ポンプ39を作動させて吸引開口34aを通じた大気の吸引を開始し、通気シート35に吸着力を生成させる。この後、操作者により、マーキングボード3のマーキング領域31に、布地7から採取すべきパターンピースの形状に形成された型紙8が配置される(ステップS1)。マーキング領域31に配置された型紙8は、吸引ポンプ39により通気シート35に生成された吸着力により、通気シート35の表面に保持される。操作者は、裁断テーブル20の支持面21上の布地7を確認しながら、マーキング領域31における型紙8の位置を調整する。こうして、マーキング領域31の型紙8の位置を調整することにより、型紙8に対応するパターンピースの柄合わせを行い、また、布地7に織り目や柄の不整が存在する場合は、これらの不整を回避する。マーキング領域31に対して型紙8の配置位置の調整を行うマーキング作業が完了すると、操作者がマーキングボード3に読み取り開始を入力し(ステップS2)、読み取り開始の入力を受けたマーキングボード3は、読取装置32を作動させてマーキング領域31を走査する(ステップS3)。読取装置32による読み取り動作が完了すると、ボード制御部33により、マーキング領域31の型紙8の配置画像が出力され(ステップS4)、この配置画像が制御装置5に入力される(ステップS5)。制御装置5に入力された配置画像は、輪郭抽出部51によって所定の画素が抽出されて、型紙8の輪郭が抽出される(ステップS6)。型紙8の輪郭を表す画素は、トレース部52により、所定の画素を通るベクターデータに変換される(ステップS7)。マーキングボード3に配置した型紙8の形状や、型紙8の配置状態に変更がある場合は、トレース部52で変換されたベクターデータをベクターデータ編集部53で編集を行う。トレース部52で変換されたベクターデータや、ベクターデータ編集部53で編集されたベクターデータは、裁断データ変換部54により、裁断データに変換される(ステップS8)。こうして作製された裁断データは、制御装置5から出力され(ステップS9)、裁断装置本体2の裁断制御部27に入力される(ステップS10)。裁断データが入力された裁断制御部27は、カッターユニット22を作動させ、支持面21上の布地7の裁断を実行する(ステップS11)。カッターユニット22により、布地7が裁断データで表される形状に裁断され、型紙8に対応する形状のパターンピースが得られる。
【0040】
本実施形態の裁断装置1によれば、布地7を支持面21に支持した裁断テーブル20の近傍で、マーキングボード3のマーキング領域31内に型紙8を配置し、この型紙8の位置を調整することにより、布地7を視認しながらパターンピースを取り出す位置を調整してマーキングを行うことができる。したがって、コンピュータのディスプレイに仮想布地形状と仮想パターンピース形状を表示してマーキングを行うよりも、現実感を持ってシート材の全体を把握しながら、パターンピースを取り出す位置を確認できる。
【0041】
また、マーキングボード3の読取装置32によってマーキング領域31の型紙8の配置状態が読み取られ、この配置状態を表す配置画像がボード制御部33によって出力されるので、型紙を筆記具で縁取りして台紙に型紙の形状を描くような熟練が不要である。また、筆記具又はプリンタでパターンピースの配置状態を表す台紙が不要であるので、紙資源の使用を削減できる。さらに、マーキングボード3を用いたマーキングの作業から、マーキング領域31の型紙8の位置を読み取り、制御装置5で裁断データを作製するまでの作業を、プリンタを用いることなく行うことができるので、マーキング及び裁断データの作製に使用する装置を少なくできる。さらに、台紙に型紙の形状を描いたり、型紙の形状を印刷したり、型紙の形状が表された台紙の読み取りを行う必要が無いので、少ない手間と時間でマーキングと裁断データの作製を行うことができる。
【0042】
また、ベクターデータを編集するベクターデータ編集部53を有するので、マーキングボード3で読み取った型紙8の形状や配置状態に修正の必要が生じても、型紙8を作り直してマーキングボード3で読み取ることなく、ベクターデータ編集部53でベクターデータを修正するのみにより、所望の形状の裁断を実行することができる。また、マーキングボード3で型紙8を読み取って作製したベクターデータを複製し、複製したベクターデータの形状を変更することにより、実際に作製した型紙8の形状のパターンピースに加えて、実際に型紙8を作製していない形状のパターンピースをも取得することができる。また、マーキングボード3で型紙8を読み取って作製したベクターデータを複製することにより、あるいは、複製したベクターデータの形状を変更することにより、マーキングボード3に型紙8を配置した領域の面積よりも広い面積の布地7に対して、裁断を行うことができる。したがって、制御装置5にベクターデータ編集部53を設けることにより、裁断装置本体2の布地7を支持して裁断を実行する支持面21の面積が、マーキングボード3のマーキング領域31よりも大きい場合であっても、支持面21の全面に支持された布地7の全面に裁断パターンを設定して裁断を実行することができる。すなわち、制御装置5にベクターデータ編集部53を設けていれば、マーキングボード3のマーキング領域31は、裁断装置本体2の支持面21よりも小さくてもよい。
【0043】
また、制御装置5にベクターデータを記憶する記憶部を設け、既に作製されて記憶部に記憶されたベクターデータをベクターデータ編集部53で読み出して編集を行い、編集後のベクターデータを用いて裁断装置本体2で裁断を行ってもよい。また、ベクターデータを作製するベクターデータ作製部を制御装置5に設け、マーキングボード3を経由することなく、ベクターデータ作製部で作製したベクターデータを用いて裁断装置本体2で裁断を行ってもよい。ここで、ベクターデータ作製部は、CADソフトウェアや画像描画ソフトウェアで実現できる。したがって、ベクターデータ編集部53がベクターデータ作製部を兼ねてもよい。
【0044】
上記実施形態において、ボード本体30のパネル34に吸引開口34aと気密ケーシング36を設け、吸引ホース38を介して吸引ポンプ39で吸引して通気シート35に型紙を吸着させたが、パネル34に固定用磁石や粘着テープ等で型紙を直接配置してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 裁断装置
2 裁断装置本体
3 マーキングボード
4 解反機
5 制御装置
7 布地
30 ボード本体
31 マーキング領域
32 読取装置
33 ボード制御部
34 パネル
34a 吸引開口
51 輪郭抽出部
52 トレース部
53 ベクターデータ編集部
54 裁断データ変換部