(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流動体散布装置として、複数の植付条のうち左右に分割された左側領域と右側領域のうちの左側領域に対応する複数の左側植付条を担当する左側の流動体散布装置と、右側領域に対応する複数の右側植付条を担当する右側の流動体散布装置とが備えられ、
前記移送機構として、前記左側の流動体散布装置に対応する左側の移送機構と、前記右側の流動体散布装置に対応する右側の移送機構とが備えられ、
前記制御装置が、前記流動体散布処理において、前記左側の流動体散布装置と前記右側の流動体散布装置とを同時に同じ方向に移動させる請求項2記載の田植機。
前記制御装置は、走行車体に搭載されたエンジンの作動を停止させると、前記左側の流動体散布装置を左側端部に位置させ、前記右側の流動体散布装置を右側端部に位置させるように移動させる格納処理を実行する請求項3又は4記載の田植機。
前記苗植付装置が、左右の分割植付け装置部分に分割され、且つ、これら左右の分割植付け装置部分を左右に並べて連結した正規の作業姿勢と、左右の分割植付け装置部分が向かい合わせとなる横幅の狭い格納姿勢とに切り換え可能に構成されている請求項3〜5のいずれか1項に記載の田植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、例えば、植付用苗の縦送り操作が所定回数行われて流動体散布装置を作動させるタイミングに至ったのち、次回の流動体散布装置を作動させるタイミングに至るまでの間に、切り状態である部分条クラッチが入り状態に切り換えられた場合であっても、その後、植付用苗の縦送り操作が所定回数行われて流動体散布装置を作動させるタイミングに至るまでは、薬剤の散布作業が行われないことになる。
【0005】
その結果、部分条クラッチが切り状態から入り状態に切り換えられた植付条においては、入り状態に切り換えられた後は、植付機構が作動して苗が消費されているにもかかわらず、苗載せ台に載置された植付用苗の縦送り操作が所定回数行われるまで、流動体(薬剤や肥料等)の散布作業が行われないので、流動体の散布量が不足してしまうという不利があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、植付用苗に対する流動体の散布作業が良好に行えるようにすることが可能な田植機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る田植機の特徴構成は、走行機体の後部に苗植付装置が連結され、
前記苗植付装置は、横幅方向に沿って並ぶ複数の植付条毎に植付用苗を載置する苗載せ台と、複数の植付条の夫々に対応して備えられて植付用苗を圃場に植付ける複数の植付機構と、複数条のうち区分けされた部分条毎に前記植付機構への伝動状態を入り切り可能な部分条クラッチとを備えて構成され、
前記苗載せ台に載置された植付用苗に対して流動体を散布する流動体散布装置と、前記流動体散布装置の作動を制御する制御装置とが備えられ、
前記制御装置が、
前記部分条クラッチが伝動入り状態である植付条において、前記苗載せ台に載置された植付用苗の消費具合に対応した所定タイミングに達すると前記流動体供給装置による流動体散布処理を実行し、且つ、前記部分条クラッチが伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられると、前記所定タイミングであるか否かにかかわらず、少なくとも前記部分条クラッチが切り換えられた部分条において、前記流動体散布処理を実行するように構成されている点にある。
【0008】
本発明によれば、部分条クラッチが伝動入り状態である植付条では、所定タイミングに達する毎に流動体供給装置により、例えば薬剤や肥料等の流動体の散布処理が行われる。所定タイミングは、苗載せ台に載置された植付用苗の消費具合に対応したタイミングであり、例えば、苗載せ台の横一列分の植え付けが終了して載置している苗を縦送りする縦送り操作が所定回行われたタイミング等がある。つまり、植付用苗が適量消費されると、植付用苗に流動体が散布供給されることになる。
【0009】
そして、複数条のうちいずれかの部分条において部分条クラッチが伝動切り状態に切り換えられている場合に、その部分条クラッチが伝動入り状態に切り換えられると、前記所定タイミングに達していなくても、少なくとも部分条クラッチが切り換えられた部分条において流動体散布処理が行われることになる。その結果、苗植付け作業中にいずれかの部分条において部分条クラッチが切り状態から入り状態に切り換えられた場合であっても、部分条クラッチが切り換えられた部分条において、流動体の散布量が不足するという不利のない状態で、植付用苗に対する流動体の散布作業が行われることになる。
【0010】
従って、植付用苗に対する流動体の散布作業が良好に行えるようにすることが可能な田植機を提供できるに至った。
【0011】
本発明においては、前記流動体散布装置を前記苗載せ台の横幅方向に沿って移動させる移送機構が備えられ、
前記制御装置が、前記流動体散布処理として、前記流動体散布装置を前記苗載せ台の横幅方向に沿って移動させながら流動体を散布させる処理を実行するように、前記移送機構及び前記流動体散布装置の作動を制御すると好適である。
【0012】
本構成によれば、流動体散布処理として、流動体散布装置を苗載せ台の横幅方向に沿って移動させながら流動体を散布させる処理が行われるので、苗載せ台の植付条の条数が多く、横幅方向に沿って流動体を散布すべき幅が広い場合であっても、流動体散布装置として、散布幅が幅狭にして小型軽量化を図ることができ、流動体散布装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記流動体散布装置として、複数の植付条のうち左右に分割された左側領域と右側領域のうちの左側領域に対応する複数の左側植付条を担当する左側の流動体散布装置と、右側領域に対応する複数の右側植付条を担当する右側の流動体散布装置とが備えられ、
前記移送機構として、前記左側の流動体散布装置に対応する左側の移送機構と、前記右側の流動体散布装置に対応する右側の移送機構とが備えられ、
前記制御装置が、前記流動体散布処理において、前記左側の流動体散布装置と前記右側の流動体散布装置とを同時に同じ方向に移動させると好適である。
【0014】
本構成によれば、複数の植付条が左側領域と右側領域とに左右に分割され、そのうち左側領域に対応する複数の左側植付条においては、左側の流動体散布装置を苗載せ台の横幅方向に沿って移動させながら流動体を散布させることができ、右側領域に対応する複数の左側植付条においては、右側の流動体散布装置を苗載せ台の横幅方向に沿って移動させながら流動体を散布させることができる。
【0015】
このように、複数の植付条を左右に分割して、左右両側で夫々専用の流動体散布装置を備えることで、例えば、1つの流動体散布装置で全条の植付条にわたり移動する構成に比べて、1つの流動体散布装置の移動距離が短くなるので、全条の植付条に対して短い時間で流動体の散布を行うことができる。
【0016】
又、左側の流動体散布装置と右側の流動体散布装置とを同時に移動させるときは、それらが同じ方向に移動するので、左側の流動体散布装置と右側の流動体散布装置とが互いに干渉しあって移動が阻害されることのない状態で良好な移動操作を行うことができる。
【0017】
従って、植付条の個数が多い場合であっても、作業能率のよい状態で且つ流動体散布装置同志が互いに干渉する等の不利のない状態で、流動体の散布処理を良好に行うことができる。
【0018】
本発明においては、前記制御装置が前記流動体散布処理を停止している状態で、手動操作に基づいて格納状態を指令する格納指令手段が備えられ、
前記制御装置が、前記格納指令手段にて格納状態が指令されると、前記左側の流動体散布装置を左側端部に位置させ、前記右側の流動体散布装置を右側端部に位置させるように移動させる格納処理を実行すると好適である。
【0019】
本構成によれば、格納状態が指令されると、左側の流動体散布装置が苗載せ台の左側端部に位置し、右側の流動体散布装置が苗載せ台の右側端部に位置する状態で格納される。このような格納状態が指令されるときは、植付作業が終了して、例えば、残留している流動体を除去させたり、点検等のメンテナンス作業が行われることがあるが、この場合、左右両側の流動体散布装置を苗載せ台の左右両側端部に位置させることで、横側外方からのメンテナンス作業が行い易いものとなる。
【0020】
本発明においては、前記制御装置が、走行車体に搭載されたエンジンの作動を停止させると、前記左側の流動体散布装置を左側端部に位置させ、前記右側の流動体散布装置を右側端部に位置させるように移動させる格納処理を実行すると好適である。
【0021】
本構成によれば、エンジンの作動を停止させると、左側の流動体散布装置が苗載せ台の左側端部に位置し、右側の流動体散布装置が苗載せ台の右側端部に位置する状態で格納される。エンジンを停止させたのちに、左右両側の流動体散布装置を苗載せ台の左右両側端部に位置させることで、横側外方からのメンテナンス作業が行い易いものとなる。
【0022】
そして、この構成では、エンジンを停止させるだけで格納処理が行われるので、手動操作による格納のための特別な操作を行う煩わしさがなく、操作性に優れている利点がある。
【0023】
本発明においては、前記苗植付装置が、左右の分割植付け装置部分に分割され、且つ、これら左右の分割植付け装置部分を左右に並べて連結した正規の作業姿勢と、左右の分割植付け装置部分が向かい合わせとなる横幅の狭い格納姿勢とに切り換え可能に構成されていると好適である。
【0024】
本構成によれば、植付作業を行う通常の作業時には、正規の作業姿勢にすることで、左右の分割植付け装置部分が左右に並べて連結した状態となるので、複数条の夫々にて適正に植付作業を行える。そして、作業が終了して移動走行等を行うときは、左右の分割植付け装置部分が向かい合わせとなる横幅の狭い格納姿勢に切り換えることで、移動走行時に左右両側に出っ張ることがなく、他物との干渉のおそれを少なくすることができる。
【0025】
このように苗植付装置が左右の分割植付け装置部分に分割される構成において、上記したような移送機構により流動体散布装置を苗載せ台の横幅方向に沿って移動させる構成を採用するものでは、左側の流動体散布装置と右側の流動体散布装置とを夫々備えることにより、左右の分割植付け装置部分において夫々良好に流動体の散布処理を行うことができるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明に係る乗用型の田植機の実施形態について説明する。
図1に示すように、田植機は、乗用型に形成された走行機体1の後部に、油圧式のリフトシリンダ2の作動で昇降揺動するリンク機構3を介して10条植え形式の苗植付装置4を駆動昇降可能に連結して構成されている。
【0028】
走行機体1は、その前部に搭載されたエンジン5からの動力を図示しない変速装置を介して、左右の前輪6及び後輪7に走行用として伝達する4輪駆動型に構成され、その中央部には、左右の前輪6を操舵するステアリングホイール8や運転座席9などを備えた搭乗運転部10が形成されている。
【0029】
図2及び
図6に示すように、苗植付装置4は、横長角筒状の主フレーム11、走行機体1から取り出された作業用動力を受けるフィードケース12、10条の植付条毎に植付用苗としてのマット状苗を載置するとともに、一定ストロークで左右に往復横移動する苗載せ台13、10条分の回転式の植付機構14、左右両側に2条分の植付機構14を備えた5個の植付け伝動ケース15、田面の植付け箇所を均平整地する4個の整地フロート16等を備えている。
【0030】
図6〜
図9に示すように、苗植付装置4は左右の分割植付け装置部分4L,4Rに分割されており、左側の分割植付け装置部分4Lに、左側4条分の分割苗載せ台部分13L、左側4条分の植付機構14、左側2個の整地フロート16等が装備されている。又、右側の分割植付け装置部分4Rに、右側6条分の分割苗載せ台部分13R、右側6条分の植付機構14、右側2個の整地フロート16等が装備されている。そして、これら左右の分割植付け装置部分4L,4Rを左右に並べて連結した正規の作業姿勢(
図7参照)と、左右の分割植付け装置部分4L,4Rが向かい合わせとなる横幅の狭い格納姿勢(
図9参照)とに切換え可能に構成されている。
尚、苗植付装置4の左右方向については、図面の記載から容易に構成を理解するために、車体後部から見た状態での左右方向にて定義している。
【0031】
図6に示すように、主フレーム11は、左右に分割されており、その左側の主フレーム部分11Lに、左側4条分の分割苗載せ台部分13Lと左側2個の植付伝動ケース15が備えられ、右側の主フレーム部分11Rに、フィードケース12、右側6条分の分割苗載せ台部分13R、および、右側3個の植付伝動ケース15が備えられている。また、リンク機構3の後端部にローリング自在に支持された中央フレーム17の左右張出し部17aに、縦向きの支点P1周りに旋回揺動可能に左右一対の揺動アーム18L,18Rが装備されるとともに、各揺動アーム18L,18Rの遊端部に左右の主フレーム部分11L,11Rの中間部位が縦向きの支点P2周りに回動可能にそれぞれ連結支持されている。
【0032】
また、前記支点P1において固定配備した大径のスプロケット19と、前記支点P2において主フレーム部分11L,11Rに固定された小径のスプロケット20に亘ってチェーン21が巻回張設されており、揺動アーム18L,18Rが支点P1周りに旋回作動することに連動して、主フレーム部分11L,11Rが各揺動アーム18L,18Rの旋回方向と逆方向に増速されて揺動するようになっている。
【0033】
ここで、左右の分割植付け装置部分4L,4Rを左右に並べて連結した正規の作業姿勢では、
図6に示すように、各揺動アーム18L,18Rはそれぞれの遊端部が外側に向かう横向き姿勢になり、各主フレーム部分11L,11Rも横向き姿勢になる。そして、この状態から各揺動アーム18L,18Rを後方に向けて略90°旋回させると、これに連動して各主フレーム部分11L,11Rは前後方向に向かう姿勢にまで揺動し、左右の分割植付け装置部分4L,4Rが向かい合った格納姿勢となる。このような苗載せ台13の姿勢の切り換え操作は手作業で行われることになる。
【0034】
フィードケース12の右側方には苗載せ台横送り用の横送り軸22が備えられている。周知構成であるから詳述はしないが、この横送り軸22には外周部に往復螺旋溝が形成され、且つ、この横送り軸22に対して、右側の分割苗載せ台部分13Rに連結された従動部材23が装着されている。従動部材23には螺旋溝に係入して摺動案内される図示しない係合部が備えられ、横送り軸22が回転することにより、右側の分割苗載せ台部分13Rと左側の分割苗載せ台部分13Lとが一体的に左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成されている。
【0035】
図2〜
図4に示すように、苗載せ台13には、各植付条毎に載置されているマット状苗からなる植付用苗を所定量ずつ縦送りする苗縦送りベルト24が備えられている。そして、
図6に示すように、フィードケース12の左右両側には苗縦送り駆動軸25L,25Rが装備され、左側の苗縦送り駆動軸25Lで左側4条分の分割苗載せ台部分13Lにおける苗縦送りベルト24が駆動されるとともに、右側の苗縦送り駆動軸25Rで右側6条分の分割苗載せ台部分13Rにおける苗縦送りベルト24が駆動されるようになっている。
【0036】
すなわち、苗縦送り駆動軸25R,25Lに装備した左右一対の回転アーム26のうちのいずれか一方が、苗載せ台13が左右のストロークエンドに到達するごとに、
図2に示すように、各苗縦送りベルト24を駆動する苗縦送り駆動軸27に装備した操作アーム28を蹴り上げ操作して、図示しないラチェット機構を介して苗縦送り駆動軸27を所定角度だけ間欠駆動することで、各苗縦送りベルト24を所定量だけ回動させて植付用苗を縦送りするように構成されている。つまり、各苗縦送りベルト24は、苗縦送り駆動軸27の間欠回転駆動に伴って、駆動されて植付用苗を下方に向けて所定量だけ縦送り作動を行うように構成されている。尚、図示しないが、苗縦送り駆動軸27は左右に分離および連結可能に構成されている。
【0037】
又、フィードケース12から分岐した動力が伝動軸29L,29Rを介して5個の植付伝動ケース15に伝達され、各植付機構14が駆動されるようになっている。各植付機構16は、苗載せ台13に載置された10条分のマット状苗の夫々に対応して配備され、回転駆動されることにより、対応する植付用苗から所定量の苗を切り取って圃場に植え付ける植え付け作動を行う。
【0038】
苗植付装置4には、左右方向に並設された10個の植付機構14のうちの対応する隣接した2つの植付機構14毎に伝動状態を切り換える植え付け用の部分条クラッチ30が、操作レバー31により各別に入り切り自在に設けられ、全ての部分条クラッチ30を入り状態にすると、10条植え形式での植付作業を行うことができ、一部の部分条クラッチ30だけを入り状態にすると、該当する植付条(2条、4条、6条又は8条)だけで植付作業を行うことができる。
【0039】
そして、苗植付装置4には、載置された植付用苗に対して所定量の薬剤(流動体の一例)を散布供給する流動体散布装置としての薬剤散布装置32と、この薬剤散布装置32を苗載せ台13の横幅方向に沿って移動させる移送機構33とが備えられている。具体的には、
図3に示すように、左右の分割植付け装置部分4L,4Rの夫々に対応させて、薬剤散布装置32として、右側の薬剤散布装置32Rと左側の薬剤散布装置32Lとが備えられ、移送機構33として、左側の薬剤散布装置32Lに対応する左側の移送機構33Lと、右側の薬剤散布装置32Rに対応する右側の移送機構33Rとが備えられている。
【0040】
次に、薬剤散布装置32について説明する。
左右の薬剤散布装置32は、夫々同一の構成であるから、右側の薬剤散布装置32Rについてのみ説明し、左側の薬剤散布装置32Lについては説明を省略する。
図2に示すように、剤散布装置32Rは、顆粒状の薬剤を貯留するホッパー35、ホッパー35から所定量の薬剤を繰り出す繰出し部36、繰出し部36で繰り出された薬剤を下方に供給案内する供給ホース37などを備えて構成され、右側の分割植付け装置部分4Rの右側端部に固定状態で設置された後述する電動モータ38の動力で、その全体がガイドレール39に沿って右側の分割植付け装置部分4Rの横幅方向に移動しながら、繰出し部36が薬剤を繰り出すように構成されている。
【0041】
説明を加えると、
図3及び
図5に示すように、右側の分割植付け装置部分4Rから立設された複数の支持フレーム40により、右側の分割植付け装置部分4Rの横幅方向に沿ってガイドレール39が架設支持され、繰出し部36における繰出ケース41がガイドレール39に対して摺動可能に支持されている。繰出ケース41には、薬剤を繰出すための繰出用のロール(図示せず)が内装されている。
【0042】
次に、右側の薬剤散布装置32Rに対する移送機構33Rについて説明する。
図5に示すように、ガイドレール39の右側端部に位置する支持フレーム40に支持された収納ケース43の内部にて、ブラケット44を介して減速機付きの電動モータ38が支持されている。そして、電動モータ38の出力軸38aに駆動連結された駆動スプロケット45とガイドレール39の左側端部に装備された従動スプロケット46とにわたって無端回動チェーン47が巻回張設されている。
尚、左側の薬剤散布装置32Lに対する移送機構33Lについても同様な構成であるが、左側の移送機構33Lでは、収納ケース43及び電動モータ38はガイドレール39の左側端部に支持されている。
【0043】
図5に示すように、無端回動チェーン47の途中に固定状態で取り付けられた係止ピン48が摺動案内部材42に備えられた係合部材49に係止して、無端回動チェーン47の回動に伴って薬剤散布装置32を連動して移動させる構成となっている。従って、電動モータ38、無端回動チェーン47、係止ピン48等により、移送機構33Rが構成されている。
【0044】
又、無端回動チェーン47の係止ピン48が位置する経路とは反対方向に移動する反対側の経路に係合して連動回動するスプロケット50が繰出し部36に備えられ、無端回動チェーン47の回動に伴うスプロケット50の回動により繰り出し作動を行うことができるように構成されている。又、図示はしないが、薬剤の繰出し量を変更調節することができるようになっている。
【0045】
次に、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lの移送作動並びに繰出し作動の制御、具体的には、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lに対応して備えられる左右一対の電動モータ38の作動制御を行うための構成について説明する。
【0046】
図10に示すように、部分条クラッチ30の入り切り状態を検出する5つのクラッチ状態検出センサS1、苗縦送りベルト24の作動状態を検出する縦送り検出センサS2、左右の薬剤散布装置32R,32Lが横移動範囲の左側端部に位置したことを各別に検出する一対の左端検出センサS3、左右夫々の薬剤散布装置32R,32Lが横移動範囲の右側端部に位置したことを各別に検出する一対の右端検出センサS4、左右夫々の薬剤散布装置32R,32Lの横移動距離を各別に検出可能な一対のロータリエンコーダS5、それらの検出情報に基づいて左右の電動モータ38の作動を制御するマイクロコンピュータからなる制御装置34が備えられている。
【0047】
クラッチ状態検出センサS1は、部分条クラッチ30を入り切りする操作レバー31の操作状態に基づいて、各部分条クラッチ30の切り換え状態を検出する。又、縦送り検出センサS2は、
図2に示すように、苗載せ台13の縦送り作動時に、苗縦送り駆動軸25R,25Lに備えられた回転体51が接触して入り操作されるリミットスイッチにて構成されている。
【0048】
又、
図5に示すように、左端検出センサS3及び右端検出センサS4は、夫々、電動モータ38を支持するブラケット44に、無端回動チェーン47に備えられた図示しない操作片が接触作用したことを検出するリミットスイッチにて構成されている。つまり、左端検出センサS3は、薬剤散布装置32が横移動範囲の左側端部に位置している状態で無端回動チェーン47に備えられた対応する操作片が接触作用する箇所に備えられ、右端検出センサS4は、薬剤散布装置32が横移動範囲の右側端部に位置している状態で無端回動チェーン47に備えられた対応する操作片が接触作用する箇所に備えられている。
【0049】
ロータリエンコーダS5は、図示はしないが、電動モータ38の出力軸38aに一体回動する状態で備えられた突起付き回転体と近接センサとを備えて、出力軸38aが単位角度回転する毎に1パルスを出力するものであり、パルス数をカウントすることで出力軸38aがどの程度回転したかを検出することができるように構成されている。
【0050】
次に、制御装置34の制御動作について説明する。
制御装置34は、電源が投入されて起動すると、左端検出センサS3及び右端検出センサS4からの出力に基づいて、薬剤散布装置32が横移動範囲の左右いずれかの端部に位置しているか否かを判別し、左右いずれかの端部に位置していない場合には、左端検出センサS3が検出するまで薬剤散布装置32を移動させるように左右夫々の電動モータ38を作動させる。このように左右の薬剤散布装置32が共に左側端部に位置する状態(
図11(a)にて示す状態)が作業用初期状態である。
【0051】
植付作業に伴う薬剤散布作業を実行するのに先立って、制御装置34は、5つのクラッチ状態検出センサS1の検出情報に基づいて、左右両側の薬剤散布装置32を移動させるための横移動経路を設定する。すなわち、部分条クラッチ30が入り状態に設定されている植付条に対応する領域において横移動し、部分条クラッチ30が切り状態に設定されている植付条に薬剤を散布しないように横移動経路を設定する。
【0052】
例えば、右側端部の部分条クラッチ30だけが切り状態にある場合について説明すると、
図11に示すように、左側の薬剤散布装置32Lは4条分の植付条の全移動範囲が横移動経路となり、右側の薬剤散布装置32Rは6条分の植付条のうちで左側の4条のみを対象として横移動経路が設定される。
【0053】
このような設定状態で植付作業が開始されると、植付用苗が所定量植付けられて苗縦送り駆動軸27が回動して縦送りベルトが回動して苗縦送り作動が行われると、そのことが縦送り検出センサS2にて検出される。そして、このような縦送り検出センサS2による苗縦送りの検出作動が所定回数(例えば、3回)行われたことが検出されると(所定タイミングに至ると)、制御装置34は、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lが共に右方向に向けて移動するように左右両側の電動モータ38を作動させて、薬剤散布処理(流動体散布処理の一例)を実行する。
【0054】
薬剤散布処理を実行しているとき、左側の電動モータ38に対応して備えられる右端検出センサS4により、左側の薬剤散布装置32Lが横移動経路の右側端部に到達したことが検出されると、左側の電動モータ38の作動を停止して薬剤散布処理を終了する。その後は、次回の所定タイミングに至るまで、その停止位置に維持する(
図11(b)で示す状態)。
【0055】
一方、薬剤散布処理を実行しているとき、右側の電動モータ38については、それに対応して備えられるロータリエンコーダS5の検出情報に基づいて、検出されるパルス数から演算して求めた右側の薬剤散布装置32Rの移動距離が、4条分の移動距離に達したことを判別すると、その時点で右側の電動モータ38の作動を停止して薬剤散布処理を終了する。その後は、次回の所定タイミングに至るまで、その停止位置に維持する(
図11(b)で示す状態)。
【0056】
その後、縦送り検出センサS2による検出作動が所定回数行われて次回の所定タイミングに至ると、制御装置34は、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lが共に左方向に向けて移動し、左端検出センサS3により横移動経路の左側端部に到達したことが検出されるまで左右両側の電動モータ38を作動させる。電動モータ38の作動を停止すると、次回の所定タイミングに至るまで、その停止位置に維持する(
図11(c)で示す状態)。
植付作業が行われている間は、上述したような処理を繰り返し実行することになる。
【0057】
制御装置34は、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられると、縦送り検出センサS2の検出結果にかかわらず、部分条クラッチ30が切り換えられた植付条を含む、部分条クラッチ30が入り状態になっているすべての植付条において、薬剤散布処理を実行するように構成されている。
【0058】
すなわち、植付作業に伴う植付用苗の縦送り作動は略一定時間間隔で行われ、植付用苗の縦送り作動が行われる毎に、上述したような薬剤散布処理が行われるが、
図11(d)に示すように、植付用苗の縦送り作動が行われたのち、次回の植付用苗の縦送り作動が行われるまでの間に、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられると、縦送り検出センサS2の検出状態にかかわらず、その時点で直ちに、薬剤散布処理が行われるのである。
【0059】
そして、その後は、上記した所定タイミングに至る毎に、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられた植付条を含む、すべての植付条を対象として、上述したような薬剤散布処理を実行する(
図11(e)参照)。
【0060】
このような制御を実行することで、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられた植付条において、薬剤の散布量が不足する不利を回避できるものとなる。
【0061】
図10に示すように、右側の薬剤散布装置32Rに対応する移送機構33Rにおける収納ケース43に、薬剤散布装置32Rの位置を変更調節可能な押し操作式の左移動スイッチSW1及び右移動スイッチSW2が備えられている。
制御装置34は、左移動スイッチSW1が操作されると、その左移動スイッチSW1が押されている間、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lが左方向に移動するように一対の電動モータ38を回動させる。又、右移動スイッチSW2が操作されると、その右移動スイッチSW2が押されている間、左右両側の薬剤散布装置32R,32Lが右方向に移動するように一対の電動モータ38を回動させる。このような移動操作は、植付作業終了後においてメンテナンス作業を行う場合に行われる。
【0062】
そして、左移動スイッチSW1と右移動スイッチSW2とが同時に押し操作されると、制御装置34は、左側の薬剤散布装置32Lをガイドレール39の左側端部に位置させ、右側の薬剤散布装置32Rをガイドレール39の右側端部に位置させるように移動させる格納処理を実行する(
図12(a)参照)。この格納処理は、上記したような苗植付装置4を格納姿勢に切り換えるのに先立って行われる。従って、左移動スイッチSW1と右移動スイッチSW2とにより、手動操作に基づいて格納状態を指令する格納指令手段54が構成される。
【0063】
図8に示すように、苗植付装置4を格納姿勢に切り換えると、左側の分割植付け装置部分4Lでは左側端部が機体前部側に位置し、右側の分割植付け装置部分4Rでは右側端部が機体前部側に位置する。その結果、
図9に示すように、上記した格納処理を実行することにより、左右の薬剤散布装置32R,32Lが走行機体1に近接する状態となるので、外物との衝突のおそれが少ないものとなる。
【0064】
又、
図10に示すように、収納ケース43に押し操作式の計量スイッチSW3が備えられ、制御装置34は、計量スイッチSW3の操作に基づいて計量用の制御作動を実行するように構成されている。この計量用の制御作動は、作業開始前に薬剤散布装置32による実際の繰出し量を計量して変更調節するために行われる。
【0065】
計量用の制御作動について説明すると、制御装置34は、計量スイッチSW3が1度押し操作されると、
図12(a)に示す格納状態(左側の薬剤散布装置32Lが左側端部に位置し、右側の薬剤散布装置32Rが右側端部に位置する状態)から左右の薬剤散布装置32R,32Lが共に左側端部に位置する状態(
図12(b)に示す状態)になるように電動モータ38を作動させる。再度、計量スイッチSW3が操作されると、1回だけ薬剤散布処理が行われる。そして、このときの
図12(c),(d)に示すように、供給ホース37の下端部に貯留容器Cを取り付けておき、実際に繰出された薬剤の量を計測するのである。
【0066】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられると、部分条クラッチ30が入り状態になっているすべての植付条において、薬剤散布処理を実行するようにしたが、このような構成に代えて、部分条クラッチ30が伝動切り状態から伝動入り状態に切り換えられると、部分条クラッチ30が切り状態から入り状態に切り換えられた植付条においてのみ、薬剤散布処理を実行する構成としてもよい。
【0067】
(2)上記実施形態では、植付用苗の消費具合に対応した所定タイミングとして、縦送り検出センサS2による苗縦送りの検出作動が所定回数として3回行われると、薬剤散布処理を実行する構成としたが、所定回数としては、3回に限らず、1回、2回、又は、4回以上等種々変更して実施することができる。又、このように苗縦送りの回数に代えて、走行機体が所定距離走行する毎に、所定タイミングに至ったものとして、薬剤散布処理を実行する構成としてもよい。
【0068】
(3)上記実施形態では、左移動スイッチSW1と右移動スイッチSW2とが同時に押し操作されると、制御装置34が格納処理を実行するようにしたが、格納指令専用のスイッチを設けるようにしてもよく、又、このような構成に加えて、次のように構成してもよい。
すなわち、制御装置34にキースイッチ(図示せず)の操作情報も入力され、キースイッチによりエンジン停止操作が行われると、制御装置34が格納処理を実行する構成としてもよい。例えば、植付作業終了後、エンジン5の作動を停止させたとき等において、苗植付装置4が格納姿勢に切り換えられる可能が大であるから、エンジン停止に伴って格納処理を実行することで、特別な操作は不要で操作の煩わしさがない。
【0069】
(4)上記実施形態では、苗植付装置4が、左右の分割植付け装置部分4R,4Lに分割され、且つ、正規の作業姿勢と格納姿勢とに切り換え可能に構成したが、このような構成に限らず、苗植付装置4が一体的に構成されるものでもよく、このように一体的に構成される苗載せ台であっても、植付条数が多い場合に、左右両側に薬剤散布装置32を各別に備えるようにしてもよい。
【0070】
(5)上記実施形態では、薬剤散布装置32を横移動させる移送機構33が備えられ、薬剤散布装置32を苗載せ台13の横幅方向に沿って移動させながら流動体(薬剤)を散布させる構成としたが、このような構成に代えて、薬剤散布装置32を位置固定状態で備えて、苗載せ台の全条に流動体を供給することができる状態と、部分条クラッチ30が入り状態となっている植付条に部分的に薬剤を供給することができる状態とに切り換え可能に構成されるものでもよい。
【0071】
(6)上記実施形態では、流動体散布装置として薬剤散布装置を示したが、薬剤に代えて、肥料やその他の種類の流動体を散布する構成としてもよい。又、乗用型の田植機に限らず、歩行型の田植機であってもよい。