特許第5901562号(P5901562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901562
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20160331BHJP
   B60K 20/06 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B60K20/02 D
   B60K20/06
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-70590(P2013-70590)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193672(P2014-193672A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】柴原 伊左男
(72)【発明者】
【氏名】山本 真史
(72)【発明者】
【氏名】玉置 和也
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−131646(JP,A)
【文献】 特開2006−218944(JP,A)
【文献】 特開2010−284999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
B60K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングフレームの前部に立設されて、操作レバーを上方側に突出させて支持する支持部材と、
前記操作レバーによる操作力を、前記支持部材の後方に配置された入力部に入力するように、前記操作レバーと前記入力部を連係する連繋機構と、
前記ハウジングフレームの上部及び両側部を覆うセンタステップ部と、
前記センタステップ部から左右に延出される左右のサイドステップ部と、が備えられ、
前記連繋機構には、前記操作レバーに連結されて上方側から下方側に向けて延びる下方延出部と、その下方延出部の下端部に連結されて前記ハウジングフレームの前方側から後方側に向けて延びる後方延出部と、が備えられ、
前記下方延出部は、前記支持部材の内部に配設されており、
前記センタステップ部に対して前記左右のサイドステップ部が連結されて搭乗ステップを構成しており、
前記後方延出部は、前記センタステップ部にて覆われるように前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されている作業車。
【請求項2】
前記後方延出部は、前記ハウジングフレームにおける左右中心よりも左右一方側に偏倚した箇所から、前記ハウジングフレームにおける左右中心よりも左右他方側に偏倚した箇所に向けて延出されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記支持部材は、その後方側を開放する形状に形成されており、
前記後方延出部は、前記支持部材の開放部を通して前記支持部材の内部から外部に延出されている請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
前記後方延出部は、前記ハウジングフレームの上部又は側部に備えられたハウジングフレーム用部材を迂回して、前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されている請求項1ないし3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記後方延出部とは別に、前記ハウジングフレームの前方側から後方側に向けて延びる別延設部材が備えられ、
前記別延設部材は、前記センタステップ部にて覆われるように前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記入力部は、前記ハウジングフレームの側部に備えられ、
前記後方延出部における前方側部位は、前記ハウジングフレームの上部に沿わせて配設されており、
前記後方延出部における前記前方側部位よりも後方側の後方側部位には、前後方向に対して傾斜して前記入力部に向けて延びる傾斜部位が備えられている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングフレームの前部に立設されて、操作レバーを上方側に突出させて支持する支持部材と、操作レバーによる操作力を、ハウジングフレームの後部側に配置された入力部に入力するように、操作レバーと入力部を連繋する連繋機構と、が備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の一例が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に示された作業車では、ハウジングフレームの前部に立設されて、操作レバー(特許文献1では「前後進切換レバー」)を上方側に突出させて支持する支持部材が備えられている。そして、作業車には、操作レバーによる操作力を、ハウジングフレームの後部側に配置された入力部に入力するように、操作レバーと入力部を連繋する連繋機構が備えられている。
【0003】
特許文献1における連繋機構には、操作レバーに連結されて上方側から下方側に向けて延びる下方延出部(特許文献1では「揺動支軸」)と、下方延出部に連結されて、ハウジングフレームの後部の側面に設けられた切換操作用リンク部材へ連繋される他の延出部と、が備えられている。他の延出部は、下方延出部の下端部をL字状に屈曲して支持部材の側面を挿通させて支持部材の外部に延出させ、支持部材及びハウジングフレームの横側を通過して後方側に延出されて、外部に露出されたまま入力部に連繋されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−131646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような作業車では、支持部材やハウジングフレームの外側に、例えば、ステップ、クラッチハウジングのボス、クラッチペダル等の他の部材が配設されている。したがって、上記従来の技術では、連繋機構において、支持部材の側面から外部に延出させた部分や、外部に露出させたまま後方側に延出させた部分が、上述の他の部材と干渉しないように配設することが求められる。よって、連繋機構を配設するにあたり、干渉を回避するための構成を追加する必要がある等、連繋機構を配設するための構成が複雑になる。
【0006】
本発明の目的は、操作レバーと入力部とを連繋する連繋機構を他の部材と干渉しないように好適に配置できる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車は、
ハウジングフレームの前部に立設されて、操作レバーを上方側に突出させて支持する支持部材と、
前記操作レバーによる操作力を、前記支持部材の後方に配置された入力部に入力するように、前記操作レバーと前記入力部を連係する連繋機構と、
前記ハウジングフレームの上部及び両側部を覆うセンタステップ部と、
前記センタステップ部から左右に延出される左右のサイドステップ部と、が備えられ、
前記連繋機構には、前記操作レバーに連結されて上方側から下方側に向けて延びる下方延出部と、その下方延出部の下端部に連結されて前記ハウジングフレームの前方側から後方側に向けて延びる後方延出部と、が備えられ、
前記下方延出部は、前記支持部材の内部に配設されており、
前記センタステップ部に対して前記左右のサイドステップ部が連結されて搭乗ステップを構成しており、
前記後方延出部は、前記センタステップ部にて覆われるように前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されているものである。
【0008】
本発明によると、操作レバーによる操作力がハウジングフレームの後部側に配置された入力部に入力されるように操作レバーと入力部が連繋機構により連繋される。連繋機構のうち下方延出部は、操作レバーに連結されて、支持部材の内部において上方側から下方側に向けて延びて配設されている。なおかつ、連繋機構のうち後方延出部は、下方延出部の下端部に連結され、ハウジングフレームの前方側から後方側に向けて延び、センタステップ部にて覆われ、ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されている。したがって、連繋機構の周囲が支持部材及びセンタステップ部によって覆われるため、ハウジングフレームや支持部材の外側に配設された他の部材との干渉を回避するように連繋機構を配設しなくてもよい。また、連繋機構の周囲を覆うことで、連繋機構自体の保護も行うことができる。
上記構成において、前記後方延出部は、前記ハウジングフレームにおける左右中心よりも左右一方側に偏倚した箇所から、前記ハウジングフレームにおける左右中心よりも左右他方側に偏倚した箇所に向けて延出されていると好適である。
【0009】
上記構成において、前記支持部材は、その後方側を開放する形状に形成されており、
前記後方延出部は、前記支持部材の開放部を通して前記支持部材の内部から外部に延出されていると好適である。
【0010】
本構成によると、連繋機構の後方延出部が、支持部材の後方側の開放部を通して支持部材の内部から外部に延出されているので、支持部材の後方側の開放部を利用でき、支持部材に連繋機構を挿通する挿通孔を形成する等の加工が不必要となる。また、従来のように支持部材の側面を挿通する場合に比べて、連繋機構の後方延出部の配設に必要な横幅スペースが小さくなり、連繋機構をコンパクトに配置できる。
【0011】
上記構成において、前記後方延出部は、前記ハウジングフレームの上部又は側部に備えられたハウジングフレーム用部材を迂回して、前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されていると好適である。
【0012】
本構成によると、連繋機構の後方延出部がハウジングフレーム用部材に干渉することを防止できながら、ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせることができ、ハウジングフレームの外側に連繋機構が大きく張り出すことがなく、連繋機構をよりコンパクトに配設できる。
【0013】
上記構成において、前記後方延出部とは別に、前記ハウジングフレームの前方側から後方側に向けて延びる別延設部材が備えられ、
前記別延設部材は、前記センタステップ部にて覆われるように前記ハウジングフレームの上部又は側部に沿わせて配設されていると好適である。
【0014】
本構成によると、連繋機構の後方延出部が配設されるハウジングフレームとセンタステップ部の間に形成された空間内に、連繋機構以外の別延設部材をも配設でき、ハウジングフレームとセンタステップ部の間に形成された空間を有効活用できる。
【0015】
上記構成において、前記入力部は、前記ハウジングフレームの側部に備えられ、
前記後方延出部における前方側部位は、前記ハウジングフレームの上部に沿わせて配設されており、
前記後方延出部における前記前方側部位よりも後方側の後方側部位には、前後方向に対して傾斜して前記入力部に向けて延びる傾斜部位が備えられていると好適である。
【0016】
本構成によると、連繋機構は、ハウジングフレームの上部に沿わせて後方延出部における前方側部位が配設され、前方側部位よりも後方側の後方側部位において前後方向に対して傾斜して入力部に向けて延びる傾斜部位を有する。これにより、連繋機構において傾斜部位を設けずに、連繋機構における各部分を略直交するように連繋している場合に比べて、連繋機構の全長を短くでき、連繋機構の製作コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】前後進切り替え用の連繋機構などの構成を示す要部の縦断左側面図である。
図3】前後進切り替え用の連繋機構などの構成を示す要部の横断平面図である。
図4】前後進切り替え用の連繋機構などの構成を示す要部の縦断背面図である。
図5】前後進切り替え用の連繋機構などの構成を示す要部の分解斜視図である。
図6】トラクタの伝動機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタ(「作業車」の一例)は、車体フレーム11の前半部に水冷式のエンジン14などを配備し、車体フレーム11の後半部に搭乗運転部29を形成している。そして、エンジン14の左右に駆動可能な操舵輪としての前輪27を配備し、搭乗運転部29の左右に制動可能な駆動輪としての後輪24を配備して、4輪駆動型に構成している。
【0020】
車体フレーム11は、エンジン14の下部に、その下部から前方に向けて延出するように前フレーム部材26を連結し、エンジン14の後下部に、エンジン14の後下部から後方に向けて延出するようにハウジングフレーム13を連結して構成している。前フレーム部材26には、左右の前輪27を前車軸(図示せず)などを介して駆動可能かつ操舵可能に支持する前車軸ケース28をローリング可能に装備している。
【0021】
図1〜5に示すように、搭乗運転部29は、板金製の搭乗ステップ23、位置調節可能な運転座席30、前輪操舵用のステアリングホイール32、及び、エンジン回転数調節用のアクセルペダル、などを配備して構成している。ステアリングホイール32は、ステアリング軸36及びパワーステアリング機構などを介して左右の前輪27に連繋している。つまり、ステアリングホイール32、ステアリング軸36、及び、パワーステアリング機構、などによって、前輪操舵用の操作手段33を構成している。ステアリング軸36は、搭乗運転部29の前端箇所に後傾姿勢で備えたステアリングポスト31に挿通している。ステアリングポスト31は、車体フレーム11に後傾姿勢で立設した前後方向視が略門型の支持部材38の上端に立設している。
【0022】
図1に示すように、ハウジングフレーム13は、前ケース部15と中間ケース部16と後ケース部17とに分割可能な3分割構造に構成している。そして、それらのうちの中間ケース部16と後ケース部17とからトランスミッションケース(以下、ミッションケースと称する)12を構成している。後ケース部17には、トラクタの後部に連結するロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置(図示せず)の昇降操作を可能にする左右一対のリフトアーム2、左右のリフトアーム2を上下方向に揺動駆動する油圧式のリフトシリンダ3、及び、トラクタの後部にロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結した場合に作業装置への作業用動力の取り出しを可能にするPTO軸25、などを装備している。
【0023】
図6に示すように、エンジン14からの動力は、乾式の単板クラッチからなる主クラッチ18を経由した後、走行伝動系4とPTO伝動系5とに分配供給している。そして、走行伝動系4を経由する走行用の動力を左右の前輪27及び左右の後輪24に伝達している。又、PTO伝動系5を経由する作業用の動力をPTO軸25に伝達している。
【0024】
図6に示すように、走行伝動系4には、エンジン14からの動力を4段に変速可能に構成したスライディングメッシュ式の主変速装置19、主変速装置19による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換え可能に構成したシンクロメッシュ式の前後進切換装置20、前後進切換装置20による前後進切り替え後の動力を高低2段に変速可能に構成したスライディングメッシュ式の副変速装置21、左右の後輪24の差動を許容しながら副変速装置21による変速後の動力を左右の後輪24に伝達する後輪用差動装置6、副変速装置21による変速後の動力から前輪駆動用の動力を取り出すギヤユニット7、及び、左右の前輪27の差動を許容しながらギヤユニット7からの動力を左右の前輪27に伝達する前輪用差動装置8、などを備えている。
【0025】
図1図2に示すように、主クラッチ18は、搭乗運転部29の左足元箇所に配備したクラッチペダル45の踏み込み操作に連動して、エンジン14からの動力を走行伝動系4に伝達する入り状態から、その伝動を遮断する切り状態に切り換わり、クラッチペダル45の踏み込み解除操作に連動して切り状態から入り状態に切り換わるように構成している。
【0026】
ハウジングフレーム13は、その内部における前ケース部15に主クラッチ18を収容しており、中間ケース部16に、前方側から、主変速装置19、前後進切換装置20の順に並ぶように収容しており、後ケース部17に、前方側から、副変速装置21、後輪用差動装置6の順に並ぶように収容している。副変速装置21は、図3図6に示すように、運転座席30の側方に位置する副変速レバー104の前後方向への揺動操作に連動して、低速伝動状態又は高速伝動状態に切り替わるように構成している。そして、図2に示すように、中間ケース部16の上部には、その上部を開放可能にする蓋部材9を着脱可能にボルト連結している。蓋部材9の左前端部の左右中央箇所には、主変速装置19を操作するための主変速レバー41を揺動可能に支持するレバー支持部42(「ハウジングフレーム用部材」の一例)を上向きに膨出形成している。
【0027】
図1〜5に示すように、搭乗ステップ23は、ミッションケース12の中間ケース部16を上方から覆うカバーを兼ねる板金製のセンタステップ部43(「カバー」に相当)と、このセンタステップ部43から左右に延出する板金製の左右のサイドステップ部44とから構成している。センタステップ部43は、中間ケース部16におけるレバー支持部42よりも後側部分を上方から覆う前後長さを有する状態で、その左右幅が中間ケース部16の左右幅よりも幅広になるように逆U字状に屈曲形成している。このように、センタステップ部43は、ハウジングフレーム13の上部及び両側部を覆うように構成されている。そして、その左下端部分の内面には、中間ケース部16の左側面との間に空間を確保するための円筒状の前後一対のスペーサ57を溶接している。又、その右側面には、横向きU字状に屈曲形成した板金製のレバーガイド61を溶接している。左側のサイドステップ部44は、中間ケース部16の上下中間部に位置するように、前後のスペーサ57を利用してセンタステップ部43とともに中間ケース部16の左側壁にボルト連結している。右側のサイドステップ部44は、中間ケース部16の上下中間部に位置するように、センタステップ部43とともに中間ケース部16の右側壁にボルト連結している。そして、中間ケース部16にセンタステップ部43及び左右のサイドステップ部44をボルト連結した状態では、中間ケース部16の上面とセンタステップ部43との間、及び、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間のそれぞれに所定の空間を確保することができ、又、左右のサイドステップ部44が同じ高さ位置に位置するように構成している。センタステップ部43における天板部分の右後端箇所には、中間ケース部16の右後端上部に備えたオイルゲージ(図示せず)の抜き差しを許容する切欠部58を形成している。
【0028】
図4図5に示すように、ステアリングホイール32などを支持する略門型の支持部材38は、その後方側を開放する形状に形成されており、中間ケース部16における蓋部材9よりも前側の前端部分にボルト連結している。支持部材38は、ハウジングフレーム13の前部に立設されており、ステアリングホイール32の他に、前後進切換レバー39(「操作レバー」の一例)を上方側に突出させて支持している。支持部材38における左側壁部38Aの内面側には、筒状の軸支部48を、支持部材38に略沿った後傾姿勢で左側壁部38Aとパワーステアリング機構のコントロールユニット37との間に位置するように固定装備している。又、左側壁部38Aの上端部には、前後進切換レバー39のレバーガイドを兼ねる軸支部材47をボルト連結している。
【0029】
図1〜6に示すように、前後進切換レバー39は、中間ケース部16における左側壁の後側部位から左方に突出する前後進切換装置20の操作軸35(「入力部」に相当)に、前後進切り替え用の連繋機構46を介して連繋している。このように、操作軸35は、支持部材38よりも後方側のハウジングフレーム13の側部に備えられており、連繋機構46は、支持部材38に支持された前後進切換レバー39による操作力を、支持部材38の後方に配置された操作軸35に入力するように、前後進切換レバー39と操作軸35を連繋している。連繋機構46は、L字状に屈曲形成した第1連繋ロッド49(「下方延出部」に相当)、長さ調節可能なターンバックル式でクランク状に屈曲形成した第2連繋ロッド50(「後方延出部」に相当)、及び、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間に位置するように操作軸35の突出端部に固定装備した操作アーム55(「後方延出部」に相当)、などを備えている。
【0030】
図1〜6に示すように、第1連繋ロッド49は、その縦軸部56の下部側を支持部材38の軸支部48に回転可能に内嵌し、かつ、摺動不能にピン固定している。又、縦軸部56の上部側を、支持部材38及び軸支部材47に形成した挿通孔に挿通し、かつ、軸支部材47に軸受部材を介して回転可能かつ摺動不能に連結している。そして、縦軸部56の上端部分に、その上端部分から左方に延出する状態で前後進切換レバー39を上下揺動可能に連結している。又、縦軸部56の下端部分から支持部材38の右側壁部38Cに向けて延出するアーム部51の延出端に、第2連繋ロッド50の前端部を枢支連結している。つまり、第1連繋ロッド49は、支持部材38の内部において、上方側から下方側に向けて延出されており、その下端部において第2連繋ロッド50に連結されている。
【0031】
図1〜6に示すように、第2連繋ロッド50は、第1連繋ロッド49と直交する後下がり傾斜姿勢で第1連繋ロッド49のアーム部51と操作アーム55とにわたって架設している。そして、その架設状態では、その前後向きの前側部分52(「前方側部位」に相当)が、支持部材38における左右の側壁部38A,38Cの間の後方側の空間部38B(「開放部」に相当)から中間ケース部16の上方におけるレバー支持部42の右側方を通り、斜め向きの中間部分54(「傾斜部位」、「後方側部位」に相当)が、中間ケース部16の上面とセンタステップ部43との間を通り、前後向きの後側部分53(「後方側部位」に相当)が、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間を通るように構成している。このように、第2連繋ロッド50は、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の上部及び側部に沿わせて配設されている。そして、第2連繋ロッド50は、支持部材38に孔部等の加工をせずに、支持部材38の後方側の空間部38Bを通して延設されており、第1連繋ロッド49と第2連繋ロッド50の連結部が、ハウジングフレーム13における上部右側部分に位置していることから、ハウジングフレーム13における上部左側部分に位置しているレバー支持部42を迂回して第2連繋ロッド50を配設し易い。また、第2連繋ロッド50は、前後向きの前側部分52と、前後方向に対して傾斜する斜め向きの中間部分54と、前後向きの後側部分53とを備えていることから、単純な形状の前後向きの部分を多く有しながら、第1連繋ロッド49から操作軸35に至る連繋ロッドの配索距離を短くできる。
【0032】
つまり、前後進切り替え用の連繋機構46は、略門型の支持部材38における左右の側壁部38A,38Cの間に確保した空間、及び、中間ケース部16とセンタステップ部43との間に確保した空間を利用して、前後進切換レバー39と前後進切換装置20の操作軸35とにわたるように構成している。
【0033】
図4に示すように、前後進切換レバー39には、軸支部材47に第1連繋ロッド49の縦軸部56を中心とする円弧状に形成したガイド孔47Aに係入するガイド杆40を備えている。軸支部材47には、ガイド杆40との係合による前後進切換レバー39の中立位置での係止保持を可能にする凹部47Bを、ガイド孔の前後中間箇所に連通させた状態で形成している。前後進切り替え用の連繋機構46には、ガイド杆40を凹部47Bに係合付勢するねじりバネ63を備えている。
【0034】
上記の構成から、前後進切換レバー39をねじりバネ63の作用によって凹部47Bに係合することにより、前後進切換レバー39を中立位置に係合保持することができ、これにより、前後進切換装置20を中立状態に維持して、主変速装置19から左右の前輪27及び左右の後輪24への伝動を遮断することができる。この状態から、前後進切換レバー39をねじりバネ63の作用に抗する方向(上方)に揺動操作して、ガイド杆40の凹部47Bとの係合を解除することにより、前後進切換レバー39の前後進切り替え方向(前後方向)への揺動操作を可能にすることができる。そして、前後進切換レバー39を前後進切り替え方向に揺動操作することにより、前後進切換装置20を前進伝動状態と後進伝動状態とに切り替えることができ、走行状態を前進状態と後進状態とに切り替えることができる。
【0035】
つまり、前後進切換レバー39及び前後進切り替え用の連繋機構46により、搭乗運転部29からの前後進切換装置20の操作を可能にする前後進切り替え用の操作手段34を構成している。
【0036】
図2図3及び図5に示すように、中間ケース部16とセンタステップ部43との間の空間には、前後進切り替え用の連繋機構46の第2連繋ロッド50とともに、トラクタに備えた、例えばエンジン回転数を検出する回転数センサ(図示せず)などの各種の検出器(図示せず)、搭乗運転部29に備えた表示パネルや各種の設定器(図示せず)、及び、トラクタに搭載した制御ユニット(図示せず)、などを通信可能に接続する信号線などを束ねたワイヤハーネス59(「別延設部材」の一例)を通している。つまり、ワイヤハーネス59が、第2連繋ロッド50とは別に、ハウジングフレーム13の前方側から後方側に向けて延ばされて備えられている。ワイヤハーネス59は、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の上部に沿わせて配設されている。このように、中間ケース部16とセンタステップ部43との間の空間を、前後進切り替え用の連繋機構46やワイヤハーネス59などを配索する配索空間に有効利用している。
【0037】
図1〜5に示すように、中間ケース部16における左側壁の前後中間箇所には、クラッチペダル45を上下揺動可能に支持する左右向きの支軸100を装備している。クラッチペダル45は、支軸100に装着した状態では、その揺動始端側が左側のサイドステップ部44の下方を通って左側のサイドステップ部44の前方に向かう状態になり、その遊端側が左側のサイドステップ部44の前方から左側のサイドステップ部44の前端部上方に向かう状態になるように、横向きV字状に屈曲形成している。そして、その揺動支点部に一体装備した連繋アーム101を、中間ケース部16における左側壁の前端部位から左方に突出する主クラッチ18の操作軸に、左側のサイドステップ部44の下方に位置するように操作軸の突出端部に固定装備した操作アーム(図示せず)と、左側のサイドステップ部44の下方に位置する状態で連繋アーム101と操作アームとにわたって架設した連繋ロッド103とを介して連繋している。
【0038】
また、搭乗運転部29における足元箇所の左右中央側にはPTOレバー60を前後揺動可能に配備している。PTOレバー60は、PTO伝動系5におけるPTOクラッチを操作するためのものであり、センタステップ部43のレバーガイド61との係合による入り位置及び切り位置での位置保持が可能となるように構成している。
【0039】
〔別実施形態〕
【0040】
(1)上記実施形態では、操作レバーの一例として前後進切換レバー39を示したが、これに限らず、他の主変速レバーや他の副変速レバー等の他の操作レバーであってもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、センタステップ部43が下開きの正面断面視でU字状に形成され、センタステップ部43の上面の全体が連繋機構46の第1連繋ロッド49よりも上方に位置するようにされている一例を示したがこれに限られない。例えば、連繋機構の可動範囲の上方に位置する部位のみを上方に膨出させた形状に形成しカバーであってもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、ハウジングフレーム用部材が、ハウジングフレーム13の上部に備えられている一例を示したがこれに限られず、ハウジングフレーム用部材が、ハウジングフレーム13の側部に備えられていてもよい。また、ハウジングフレーム用部材の一例として主変速レバー41を支持するレバー支持部42を一例に示したがこれに限られない。例えば、ハウジングフレーム13の上面から上方へ突出する部材、側面から外側方へ突出する部材等の他のハウジングフレーム用部材であってもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、別延設部材としてワイヤハーネス59が、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の上部に沿わせて配設されている一例を挙げたがこれに限られない。別延設部材の一例であるワイヤハーネス59が、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の左右横一側の側部の側面に沿わせて配設されていてもよい。また、別延設部材の一例としてワイヤハーネス59を挙げたが、これに限られず、ワイヤー、ロッド、ホース等の他の延設部材であってもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、作業車の一例としてトラクタを示したが、これに限られず、乗用草刈機、乗用田植機、ホイールローダ等の他の作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
13 :ハウジングフレーム
35 :操作軸(「入力部」)
38 :支持部材
38B :空間部(「開放部」)
39 :前後進切換レバー(「操作レバー」)
42 :レバー支持部(「ハウジングフレーム用部材」)
43 :センタステップ
44 :サイドステップ部
46 :連繋機構
49 :第1連繋ロッド(「下方延出部」)
50 :第2連繋ロッド(「後方延出部」)
52 :前側部分(「前方側部位」)
53 :後側部分(「後方側部位」)
54 :中間部分(「傾斜部位」、「後方側部位」)
55 :操作アーム(「後方延出部」)
59 :ワイヤハーネス(「別延設部材」)
図1
図2
図3
図4
図5
図6