特許第5901619号(P5901619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901619
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】二方向ステント搬送システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20160331BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61F2/95
   A61F2/966
【請求項の数】33
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-514350(P2013-514350)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公表番号】特表2013-528112(P2013-528112A)
(43)【公表日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】US2011039688
(87)【国際公開番号】WO2011156533
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】12/911,604
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/352,408
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511121698
【氏名又は名称】ベニティ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VENITI, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・カオ
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/098232(WO,A1)
【文献】 米国特許第06849084(US,B2)
【文献】 特表2008−504078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0004730(US,A1)
【文献】 特表平7−501476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と末端部を有する細長いインナーシャフトと、
前記インナーシャフト上に配置されて径方向に拡張可能な人工器官であって、前記人工器官は径方向に潰すことができる形状と径方向に拡張可能な形状を有し、前記径方向に潰した形状で前記人工器官は患者の血管を通じて搬送されるように構成されており、前記拡張した形状で前記人工器官は血管壁に係合するものと、
基端部と末端部を有する細長いアウターシャフトと、
基端部と末端部を有し、前記径方向に拡張可能な人工器官上に配置され、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトに着脱自在に固定可能なシャトルシースとを備えたステント搬送システムであって、
前記ステント搬送システムは、基端展開状態と末端展開状態の間で選択的に動作するように構成されており、
前記ステント搬送システムが前記基端展開状態にあるとき、前記シャトルシースは前記インナーシャフトに固定され且つ前記アウターシャフトに固定されず、前記インナーシャフトを末端側に移動させると前記シャトルシースが前記アウターシャフトに対して末端側に移動し、これにより、前記人工器官はその基端から末端に向かって径方向に拡張し、
前記ステント搬送システムが前記末端展開状態にあるとき、前記シャトルシースは前記インナーシャフトに対して固定されず且つ前記アウターシャフトに固定され、前記アウターシャフトを基端側に戻すと前記シャトルシースが前記インナーシャフトに対して基端側に戻り、これにより、前記人工器官はその末端から基端に向かって径方向に拡張する、二方向ステント搬送システム。
【請求項2】
前記インナーシャフトは前記基端部と前記末端部との間に伸びる内腔を有し、前記内腔はガイドワイヤをスライド自在に収容する、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記人工器官は第1のステントを有する、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記第1のステントに取り付けられておらず且つ前記第1のステントから所定の隙間をあけて軸方向に分離されている第2のステントを有する、請求項3のシステム。
【請求項5】
前記第1のステントは自分自身で拡張するステントを備えている、請求項3のシステム。
【請求項6】
前記第1のステントはニッケルチタニウム合金を有する、請求項3のシステム。
【請求項7】
前記アウターシャフトは、前記基端部と前記末端部の間に伸びる内腔を有する、請求項1のシステム。
【請求項8】
前記シャトルシースは、前記径方向に拡張可能な人工器官の長さよりも大きい又はそれと等しい長さを有する、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記シャトルシースは、そのほぼ全長に沿って前記人工器官を規制している、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記シャトルシースは、基端、末端、及びそれら基端と末端の間に伸びる内腔を有する、請求項1のシステム。
【請求項11】
前記シャトルシースはほぼ円筒のシースを有する、請求項1のシステム。
【請求項12】
末端連結機構を有し、前記末端連結機構は前記インナーシャフトの前記末端部を前記シャトルシースの前記末端部に解放可能に連結する、請求項1のシステム。
【請求項13】
前記末端連結機構はバヨネットカップリングを有する、請求項12のシステム。
【請求項14】
前記末端連結機構は、前記インナーシャフトの前記末端部にねじ領域を有し、前記シャトルシースの前記末端部に対応するねじ領域を有する、請求項12のシステム。
【請求項15】
前記末端連結機構は、前記インナーシャフトの前記末端部にヘリカル領域を有し、前記シャトルシースの前記末端部に対応するヘリカル領域を有する、請求項12のシステム。
【請求項16】
前記末端連結機構は、スナップ式連結部、干渉式連結部、掛り付連結部、ロック機構、回転可能なキーロック、直線キーロック、ねじブッシング、ツイストロック、磁気連結部、又は壊れやすい連結部の一つ又は複数を有する、請求項12のシステム。
【請求項17】
基端連結機構を有し、前記基端連結機構は前記アウターシャフトの前記末端部を前記シャトルシースの前記基端部に解放可能に連結する、請求項1のシステム。
【請求項18】
前記基端連結機構は、バヨネットカップリングを有する、請求項17のシステム。
【請求項19】
前記基端連結機構は、前記アウターシャフトの前記末端部にねじ領域を有し、前記シャトルシースの前記基端部に対応するねじ領域を有する、請求項17のシステム。
【請求項20】
前記基端連結機構は、前記アウターシャフトの前記末端部にヘリカル領域を有し、前記シャトルシースの前記基端部に対応するヘリカル領域を有する、請求項17のシステム。
【請求項21】
前記基端連結機構は、スナップ式連結部、干渉式連結部、掛り付連結部、ロック機構、回転可能なキーロック、直線キーロック、ねじブッシング、ツイストロック、磁気連結部、又は壊れやすい連結部の一つ又は複数を有する、請求項17のシステム。
【請求項22】
前記インナーシャフトと前記アウターシャフトはそれぞれねじ領域を有し、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトのねじ領域は前記シャトルシースのねじ領域とねじ係合可能であり、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトのねじ領域を前記シャトルシースのねじ領域にねじ係合することによって前記インナーシャフトと前記アウターシャフトは前記シャトルシースに着脱自在に固定可能であり、
前記インナーシャフトを第1の方向に回転すると前記インナーシャフトは前記シャトルシースに固定され、
前記インナーシャフトを前記第1の方向とは逆の第2の方向に回転すると前記インナーシャフトは前記シャトルシースから解放され、
前記アウターシャフトを前記第1の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースから解放され、
前記アウターシャフトを前記第2の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースに固定される、請求項1のシステム。
【請求項23】
前記インナーシャフトと前記アウターシャフトはそれぞれらせん部を有し、
前記シャトルシースはらせん部を有し、
前記インナーシャフトと前記アウターシャフトは、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトの前記らせん部を前記シャトルシースの前記らせん部にらせん係合することによって着脱自在に固定可能であり、
前記インナーシャフトを第1の方向に回転すると前記インナーシャフトが前記シャトルシースに固定され、前記インナーシャフトを前記第1の方向とは逆の第2の方向に回転すると前記インナーシャフトが前記シャトルシースから解放され
前記アウターシャフトを前記第1の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースから解放され、前記アウターシャフトを前記第2の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースに固定される、請求項1のシステム。
【請求項24】
前記インナーシャフトは、第1の向きのスロットを有する第1のバヨネット連結機構で前記シャトルシースに着脱自在に固定可能であり、前記アウターシャフトは前記第1のスロットとは反対の第2の向きのスロットを有する第2のバヨネット連結機構で前記シャトルシースに着脱自在に固定可能であり
前記インナーシャフトを第1の方向に回転すると前記インナーシャフトが前記シャトルシースに固定され、
前記インナーシャフトを前記第1の方向とは逆の第2の方向に回転すると前記インナーシャフトが前記シャトルシースから解放され、
前記アウターシャフトを前記第1の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースから解放され、前記アウターシャフトを前記第2の方向に回転すると前記アウターシャフトが前記シャトルシースに固定される、請求項1のシステム。
【請求項25】
前記インナーシャフトと前記アウターシャフトの間に 前記インナーシャフトと前記アウターシャフトに同心的に配置されたミドルシャフトを有する、請求項1のシステム。
【請求項26】
前記人工器官は、前記ミドルシャフト上に配置され、該ミドルシャフトを直接係合する、請求項25のシステム。
【請求項27】
前記ミドルシャフトはほぼ滑らかな外面を有する、請求項26のシステム。
【請求項28】
前記ミドルシャフトは基端ステントストッパと末端ステントストッパを有し、
前記基端ステントストッパは前記人工器官の前記基端の基端側に配置され、前記末端ステントストッパは前記人工器官の前記末端の末端側に配置されており、
前記基端ステントストッパは前記人工器官の基端側への移動を防止し、前記末端ステントストッパは前記人工器官の末端側への移動を防止する、請求項25のシステム。
【請求項29】
前記基端側ステントストッパは、前記基端ステントストッパを超える前記人工器官の基端側への移動を防止するリング、バンド、段、ブッシング、スリーブの一つ又は複数を有する、請求項28のシステム。
【請求項30】
前記末端側ストッパは、前記末端ステントストッパを超える前記人工器官の末端側への移動を防止するリング、バンド、段、ブッシング、スリーブの一つ又は複数を有する、請求項28のシステム。
【請求項31】
前記搬送システム作動機構を有し、
前記作動機構は、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトの一方を他方に対して基端側又は末端側若しくは両方にスライド移動するように、前記インナーシャフトと前記アウターシャフトに動作可能に連結されており、
それにより、オペレータ前記インナーシャフトと前記アウターシャフトを前記シャトルシースに選択的に固定又は解放できるように、前記作動機構構成されている、請求項1のシステム。
【請求項32】
前記人工器官及びその周辺組織を可視化するように構成された血管内超音波装置を有する、請求項1のシステム。
【請求項33】
基端部と末端部を有する細長いインナーシャフトと、
前記インナーシャフト上に配置されて径方向に拡張可能な人工器官であって、前記人工器官は径方向に潰すことができる形状と径方向に拡張可能な形状を有し、前記径方向に潰した形状で前記人工器官は患者の血管を通じて搬送されるように構成されており、前記拡張した形状で前記人工器官は血管壁に係合するものと、
基端部と末端部を有する細長いアウターシャフトと、
基端部と末端部を有し、前記径方向に拡張可能な人工器官上に配置されたシャトルシースとを備えたステント搬送システムであって、
前記インナーシャフトの末端部は前記シャトルシースの末端部に解放可能に連結されており、前記アウターシャフトの末端部は前記シャトルシースの基端部に解放可能に連結されており、
前記アウターシャフトが前記シャトルシースから分離された状態で前記インナーシャフトを末端側に移動させると前記シャトルシースが末端側に移動し、これにより、前記人工器官はその基端から末端に向かって径方向に拡張し、
前記インナーシャフトが前記シャトルシースから分離された状態で前記アウターシャフトを基端側に戻すと前記シャトルシースが基端側に戻り、これにより、前記人工器官はその末端から基端に向かって径方向に拡張するように構成されており、
前記ステント搬送システムはまた末端連結機構を有し、前記末端連結機構は前記インナーシャフトの前記末端部を前記シャトルシースの前記末端部に解放可能に連結し、
前記ステント搬送システムはさらに基端連結機構を有し、前記基端連結機構は前記アウターシャフトの前記末端部を前記シャトルシースの前記基端部に解放可能に連結する、二方向ステント搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略医療装置に関し、特に、ステント又はその他の移植構造等の人工器具のための内腔搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この搬送装置は、体の動脈系、静脈系、又はその他の部分にステントを配置するために使用される。本明細書では、ステントやその他の移植可能な医療装置(例えば、をグラフト(移植物)、ステント−グラフト、フィルタ、シャント、バルブ等)を使用することを人工器官装着という。人工器官装着は、組織への薬の輸送、組織の支持、体腔開存性の維持、及びその他の機能を達成するために使用され、科学文献及び特許文献で数多く報告されている。
【0003】
一般に、ステントは、非拡張状態でカテーテルを介して体の所望位置に送られる。通常、ステントとカテーテルを組み合わせたものがステント搬送システムと呼ばれる。所望位置に置かれると、ステントは展開(拡張)されて体腔内に移植される。体の場所の例としては、限定的ではないが、動脈(例えば、大動脈、冠状動脈、頸動脈、頭蓋動脈、腸骨動脈、大腿動脈等)、静脈(例えば、大静脈、頸静脈、腸骨静脈、大腿静脈、肝静脈、鎖骨下静脈、腕頭静脈、奇静脈、頭蓋静脈等)、及びその他の場所(食道、胆管、気管、気管支、十二指腸、結腸、尿管を含む。)がある。
【0004】
一般的に、ステントは、据え付けるために求められる小径非拡張形状と、血管、腔、又は管の中に据え付けた後の大径拡張形状をとる。 あるステントは自己拡張性を有し、あるステントは例えばバルーンによってその内側から与えられる径方向外側の力によって機械的に拡張される。幾つかのステントは、自己拡張性と機械的に拡張可能なステントの両方に共通する幾つかの一つ又は複数の特性を有する。
【0005】
自己拡張性ステントは、予め設定された形状に弾性的に付勢される材料で作られる。これらの材料は、超弾性の形状記憶材料を含み、所定場所に搬送されると又は温度の変化によって移植形状に拡張することができる。自己拡張性ステントは、例えば、ニチロール(ニッケルチタニウム合金)、鋼ばね、形状記憶ポリマーを含む種々の材料で構成される。
【0006】
多くのステント搬送システム、特に、自己拡張式ステントを搬送するために使用されるものでは、一般にステントは規制部材又はその他の保持装置(例えば、シース、アウターシャフト)でカテーテル上に非拡張状態で保持される。そのステントは、ステント上からアウターシャフトを後退させることによって展開される。後退させるシャフトと一緒にステントが長手方向に後戻りするのを防止するために、多くの搬送システムは、プッシャ、バンパ、ハブ、ホルダ、又はその他の停止部材をカテーテルシャフトに設けている。
【0007】
正確にステントを搬送することは容易ではない。バルーン拡張ステントの場合、ステントはこれが径方向の拡張するにしたがって短くなり、そのために、処置位置にステントを展開する際に長さの変化を考慮しなければならない。自己拡張性ステントの場合、ステントの弾性により、それらが展開中に搬送カテーテルから飛び出してしまうことがある。そのため、ステント等の人工器具を所望治療位置に正確に搬送できる改良ステント搬送システムを提供することが望まれている。また、治療する人体の位置によっては、ステントを正確に搬送することがさらに難しくなる。人体のある場所では、ステントを正確に配置することが、良好な手術結果を得るうえできわめて重要である。例えば、入口部の冠動脈病変の経皮冠動脈{けいひ かんどうみゃく}インターベンション(PCI)は技術的に難しい。その理由は、側枝を傷つけることなく口部に正確にステントを展開することが好ましいからである。腸骨静脈圧迫症候群(IVCS)や後血栓性症候群(PTS)に日常的に使用される腸骨大腿骨や腸骨大静脈のステント手術においても同程度の正確さが要求される。もしもステントが展開後に正確に配置されていなければ、深在下大静脈がステントで部分的に又は完全に遮断される(すなわち、ステントで閉鎖される) 。ステントを正確に配置することが大切なその他の場所としては、血管系への適用に限定されるものでなく、胃静脈瘤の食道ステント手術、門脈圧亢進症の治療のための{もんみゃくあつ こうしん しょう}経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)のステント手術、及び動脈瘤(例えば、AAA、大腿骨、膝窩)の血管内ステントグラフト手術にも利用される。
【0008】
また、搬送カテーテルが治療部位に向かって進む方向に応じて、ステントを所望の方向に展開することが望まれる。外科医は、ステント搬送システムを人体内腔を通じて目的場所に挿入する前に、人体内部に種々のアクセス位置(例えば、大腿部の静脈又は動脈、内頸静脈(IJV)等)から進入させる。外科医がどのアクセス位置を選択するかに応じてステント搬送システムはその方向が変わるため、搬送システムはそれに応じた適正なステント解放モード(ステントの基端解放又は末端解放)を有することが必要である。したがって、オペレータ(例えば、外科医)がいずれの解放モードでも該システムを利用できるように、搬送システムには両解放モードを利用できるようにすることが好都合である。通常の商用ステント搬送システムでは、オペレータはステントを末端から解放する一方の方法に限られている。ステント外科手術は、いずれの解放形態が採用されるかを決定づけるものである。例えば、大腿部から進入する大腿動脈ステント手術の場合、より小径のステントを最初に配置して次のステントとのオーバーラップ量を正確に制御するように、基端解放方式を用いて種々の大きさの複数のステントを展開しオーバーラップさせることをユーザは選択する。
【0009】
複数のステントを搬送する場合、それらのステントを選択的に展開できることが望ましい。例えば、腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフトは、複数のコンポーネント(トランク又は本体、分岐本体、本体伸展、四肢伸展、段付肢、フレア肢等)で構成される。各コンポーネントは好適な解放方式で配置されて展開されるので、複数のステント又はステントグラント若しくはコンポーネントを有する一つの二方向展開システムで複数の標準搬送システムの機能を達成することができる。ステントやコンポーネントの展開は、基端解放と末端解放を組み合わせることもできる。この種のステント手術は、分岐点が存在する人体のその他の場所で有効である。
【0010】
さらに、ステントの末端と基端の両方を正確に配置することを要求する解剖学的特徴に目標場所が挟まれている場所では、オペレータは二方向展開を必要とする。二方向展開システムは、一方では末端解放、他方では基端解放を用いる。展開されたステントにおいて重要性の低い端部は、目標場所の中間位置で別のステントに重ね合わされる。二方向にステントを展開することができなければ、ある長さの病変を治療するのに不適正な長さのステントが利用されることになれば、オペレータは、ステントの過小配置又は過大配置、不正確なステント配置などの問題に直面する。上述のように、血管系の腸骨大腿骨及び腸骨大静脈ステント手術では、下大静脈の合流点から脚の深在部までの全体にステントを配置することが必要とされる。合流点でステントを正確に展開するためには末端解放が好ましい。これに対し、深在部のステント梗塞を防止するためには基端解放が望ましい。2つの二方向展開システムを利用してこの手術を行うことに代えて、2つのステント(一方は末端解放され、他方は基端解放される)を有する別の形態の二方向展開装置を用いることによりこの手術はきわめて簡単になる。
【0011】
したがって、多くの従来のステント手術で行われているように、ステントはその末端からその基端に向けて展開することが望ましい。その他に、ステントをその基端からその末端に向けて展開することが望ましい場合もある。複数のステントを展開する場合、第1のステントを第1の方向に展開し、第2のステントを第1の方向と同じ又はそれとは異なる第2の方向に展開してもよい。二方向ステント展開システム等の改良されたステント搬送システム(二方向モデル、又は選択的に展開可能なステント搬送システムという。)は都合のよいものである。また、現在FDAの認可を受けて商業的に利用できる、血管流出障害を治療するためのステント及び搬送システムは存在しないので、そのような装置及びその使用方法に対する必要性が存在する。これらの目的の幾つかは、ここで説明する発明により達成される。
【0012】
2010年10月12日に提出された米国特許出願No.12/903,056号を含む関連特許出願の内容は参照により本件出願に組み込まれる。その他の関連する特許及び特許出願として、米国特許第7、137,993号、第6,849,084号、第6,716,238号、第6,562,064号、第5,873,907号、米国特許出願No.2009/0264978号、2004/220585号、2002/120323号、2002/188341号がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、概略、医療装置、特に、ステント又はその他の移植構造等の人工器具のための内腔搬送システムに関する。この搬送装置は、体の動脈系、静脈系、又はその他の部分にステントを配置するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の形態において、二方向ステント搬送システムは、基端と末端を有する内側の細長いシャフトと、前記内側の細長いシャフト上に配置された径方向に拡張可能な人工器具を有する。この人工器具は、径方校に崩壊可能な(潰すことができる)形状と、径方向に拡張可能な形状を有する。崩壊した形状で人工器官は患者の血管を通って送られるように構成されており、拡張した形状で人工器官は血管壁又はその他の組織に係合する。外側の細長いシャフトは基端部と末端部を有する。シャトルシースは、基端部と末端部を有する。シャトルシースは、径方向に拡張可能な人工器官の上に配置される。インナーシャフトの末端はシャトルシースの基端部に解放可能に連結される。アウターシャフトがシャトルシースに連結されていなければ、インナーシャフトが末端に向けて前進するとシャトルシースは基端側に進み、これにより、人工器官は基端から末端に向けて径方向に拡張する。インナーシャフトがシャトルシースに連結されていない場合、アウターシャフトが基端側に後退すると、シャトルシースを基端側に後退し、これにより、人工器官はその末端から基端に向けて径方向に拡張する。
【0015】
インナーシャフトは、ガイドワイヤをスライド自在に収容するように構成された、基端と末端の間に伸びる内腔を有する。人工器官は第1のステントを有する。第2のステントをシステムに含めることができる。また、第2のステントを第1のステントに取り付けることなく第1のステントから所定の隙間をあけて分離してもよい。ステントは、自己拡張性、拡張可能なバルーン、又はその組合せであってもよい。ステントは、ニッケルチタニウム合金(例えば、ニチロール)で作ることができる。
【0016】
アウターシャフトは、基端部と末端部との間に伸びる内腔を有する。シャトルシースは、径方向に伸張可能な一つ又は複数のステントの長さと等しいかそれよりも大きい長さを有する。シャトルシースは、ほぼその全長に亘って人工器官を規制する。シャトルシースは、基端、末端、それらの間に伸びる内腔を有する。シャトルシースは、実質的に円筒形のシースを有する。
【0017】
システムはまた、インナーシャフトの末端をシャトルシースの末端に解放可能に連結する末端連結機構を有する。末端連結機構は、インナーシャフトの末端にねじ領域又はヘリカル(らせん)領域を有し、シャトルシースの末端に対応するねじ領域又はヘリカル(らせん)領域を有する。末端連結機構は、一つ又は複数の、スナップフィット(はめ合い)、干渉フィット、係り付きコネクタ、ロック機構、回転可能なキーロック、リニアキーロック、ねじ付ブッシング、ツイストロック、磁気カップリング、バヨネットカップリング、又は壊れやすいコネクタを有する。システムはまた、アウターシャフトの末端部をシャトルシースの基端部に解放可能に連結する基端連結機構を有する。基端連結機構は、アウターシャフトの末端にねじ領域又はヘリカル領域を有し、シャトルシースの基端に対応するねじ領域又はヘリカル領域を有する。基端連結機構は、一つ又は複数の、スナップフィット(はめ合い)、干渉フィット、係り付きコネクタ、ロック機構、回転可能なキーロック、リニアキーロック、ねじ付ブッシング、ツイストロック、磁気カップリング、バヨネットカップリング、又は壊れやすいコネクタを有する。
【0018】
インナーシャフトは、シャトルシースとねじ領域又はヘリカル領域で係合(ねじ係合又はヘリカル係合)し、アウターシャフトもシャトルシースとねじ領域又はヘリカル領域で係合(ねじ係合又はヘリカル係合)する。インナーシャフトをシャトルシースにねじ係合又はヘリカル係合するのは第1の方向で、アウターシャフトをシャトルシースにねじ係合又はヘリカル係合するのは第2の方向(第1の方向とは反対の方向)で、その結果、インナーシャフトを第1の方向に回転すると該インナーシャフトがシャトルシースに連結し、インナーシャフトを第2の方向(第1の方向とは反対の方向)に回転すると該インナーシャフトがシャトルシースから外れる。アウターシャフトをさらに第1の方向に回転すると、アウターシャフトがシャトルシースから外れ、アウターシャフトを第2の方向に回転すると該アウターシャフトがシャトルシースに係合する。インナーシャフトは、第1の方向のスロットを有するバヨネットカップリング機構によりシャトルシースに連結してもよい。また、アウターシャフトは、第1のスロットの方向と異なる第2の方向のスロットを有する第2のバヨネットカップリング機構でシャトルシースに連結してもよい。インナーシャフトを第1の方向に回転すると、インナーシャフトがシャトルシースに連結し、第1の方向とは反対の第2の方向にインナーシャフトを回転すると該インナーシャフトがシャトルシースから外れる。アウターシャフトを第1の方向に回転すると該アウターシャフトがシャトルシースから外れ、アウターシャフトを第2の方向に回転すると該アウターシャフトがシャトルシースに係合する。
【0019】
システムはまた、インナーシャフトとアウターシャフトに同心的に、これらのシャフトの間に配置されたミドルシャフトを有する。人工器官は、ミドルシャフトの上に、これに直接係合して配置してもよい。ミドルシャフトは、ほぼ平滑な外面を有する。ミドルシャフトは、基端側のステントストッパと末端側のステントストッパを有する。基端側のストッパは、人工器官の基端に、基端側に向けて配置される。また、末端側のストッパは、人工器官の末端に、末端側に向けて配置される。基端側のストッパは人工器官が基端側に移動するのを防止し、末端側のストッパは人工器官が末端側に移動するのを防止する。基端側のストッパ又は末端側のストッパは、人工器官が基端側又は末端側に移動するのを防止する、一つ又は複数のリング、バンド、段、ブッシング、又はスリーブを有する。
【0020】
システムは、搬送システムの基端近傍に配置された作動機構を有する。作動機構はインナーシャフトとアウターシャフトに動作可能に連結されており、これにより、オペレータはインナーシャフトとアウターシャフトをシャトルシースに連結及び分離できる。作動機構はまた、基端側と末端側にインナーシャフトとアウターシャフトをスライド自在に又は回転自在に移動させるように構成される。システムはさらに、人工器官及びその周辺組織を可視化する血管内超音波装置を有する。
【0021】
本発明の他の形態では、患者内部の治療部位で人工器官を展開する二方向方法は、基端と末端を有する人工器官を備えた搬送カテーテルを提供することを有し、前記人工器官は潰れた状態で搬送カテーテル上に配置される。人工器官は目的の治療部位に搬送される。また、人工器官の展開方向は選択される。展開方向は、人工器官をその基端から末端に向かって径方向に拡張する方向と、人工器官を基端から末端に向けて径方向に拡張する方向を有する。人工器官から規制部材が取り除かれると、選択された展開方向に向けて人工器官は径方向に拡張できる。人工器官は、潰れた形状から拡張形状に向けて径方向に、選択された展開方向に拡張し、その結果、拡張された人工器官が目的の治療部位の組織に係合する。搬送カテーテルは患者から取り出され、人工器官は展開した状態で患者内の目的治療部位に残る。
【0022】
人工器官を搬送することは、搬送カテーテルを患者の血管内で目的治療部位に向けて前進させることを含む。搬送カテーテルは、基端、末端、それらの間の内腔を有する。人工器官の搬送は、内腔内に配置されたガイドワイヤに沿って搬送カテーテルをスライド自在に前進させることを含む。人工器官の搬送は、人工器官を血管(腸骨血管等)内に配置することを含む。
【0023】
搬送カテーテルは、細長いインナーシャフトと、人工器官上に配置されたシャトルシースを有する。人工器官に対する展開方向の選択は、細長いインナーシャフトをシャトルシースに連結すること、細長いインナーシャフトを前進させることでシャトルシースを末端側に人工器官から離れるように前進させること、人工器官を基端から末端に向けて径方向に拡張することを含む。細長いインナーシャフトをシャトルシースに連結するのは、細長いインナーシャフトをシャトルシースにねじ係合又はヘリカル係合すること、又は、それらをバヨネットカップリングに連結することを含む。搬送カテーテルはまた、細長いアウターシャフトを有し、展開方向の選択は該細長いアウターシャフトをシャトルシースから分離することを含む。細長いアウターシャフトをシャトルシースから分離するのは、細長いアウターシャフトをシャトルシースからねじ係合又はヘリカル係合を分離することを含む。分離は、細長いアウターシャフトとシャトルシースのバヨネットカップリングを解放することを含む。
【0024】
搬送カテーテルは、細長いアウターシャフトと、人工器官の上に配置されたシャトルシースを有する。人工器官の展開方向の選択は、細長いアウターシャフトをシャトルシースに連結すること、細長いアウターシャフトを基端側に後退させてシャトルシースを基端側に人工器官から離れるように後退させること、末端から基端に向けて人工器官を径方向に拡張することを含む。細長いアウターシャフトをシャトルシースに連結することは、細長いアウターシャフトをシャトルシースにねじ係合又はヘリカル係合で係合することを含む。その連結は、細長いインナーシャフトとシャトルシースをバヨネットカップリングで連結することを含むことができる。搬送カテーテルはまた、細長いインナーシャフトを有し、展開方向の選択はシャトルシースから細長いインナーシャフトを分離することを含む。細長いインナーシャフトをシャトルシースから分離することは、細長いインナーシャフトをシャトルシースからねじ係合又はヘリカル係合を外すことを含む。分離は、細長いアウターシャフトとシャトルシースの間のバヨネットカップリングを解除することを含む。
【0025】
搬送カテーテルは、人工器官の上に配置されたシャトルシースを有し、規制部を取り除くことはシャトルシースを人工器官から離すように末端に移動させることを含み、これにより、人工器官が解放され、人工器官の基端から末端に向けて伸びる方向に、径方向に拡張する。搬送カテーテルは人工器官の上に配置されたシャトルシースを有する。そして、規制部を取り除くことは、シャトルシースを人工器官から離れるように基端側に後退させることを含み、その結果、人工器官が解放され、人工器官の末端から人工器官の基端側に伸びる方向に、径方向に拡張する。
【0026】
人工器官の径方向の拡張は、ステントを自己拡張させることを含む。搬送カテーテルを患者から取り出すのは、患者の血管から搬送カテーテルを取り出すことを含む。人工器官は、2つの人工器官部分を有する。上記方法は、第1の人工器官に対する第1の展開方向を選択すること、第1の人工器官を第1の方向に向けて径方向に拡張すること、第2の人工器官を前記第1の展開方向とは反対の第2の展開方向に向けて径方向に拡張することを含む。上記方法は、拡張された人工器官を種々の技術(超音波、蛍光透視法を含む)を用いて可視化することを含む。その方法はまた、径方向に拡張した人工器官をシャトルシースに戻し、該人工器官を再度配置し、該人工器官を径方向に拡張することを含む。径方向の拡張された人工器官は、バルーン等の拡張可能な部材で拡大される。
【0027】
以下の記載では、添付図面に関連して、これら又はその他の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、末端ステント解放用に構成された二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図1B図1Bは、末端ステント解放用に構成された二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図1C図1Cは、末端ステント解放用に構成された二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図1D図1Dは、末端ステント解放用に構成された二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【0029】
図2A図2Aは、基端ステント解放用に構成された図1A〜1Dの実施例を示す。
図2B図2Bは、基端ステント解放用に構成された図1A〜1Dの実施例を示す。
図2C図2Cは、基端ステント解放用に構成された図1A〜1Dの実施例を示す。
図2D図2Dは、基端ステント解放用に構成された図1A〜1Dの実施例を示す。
【0030】
図3A図3Aは、末端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図3B図3Bは、末端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図3C図3Cは、末端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図3D図3Dは、末端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図3E図3Eは、末端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【0031】
図4A図4Aは、基端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図4B図4Bは、基端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図4C図4Cは、基端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図4D図4Dは、基端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図4E図4Eは、基端ステント解放用の二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【0032】
図5A図5Aは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図5B図5Bは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図5C図5Cは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図5D図5Dは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図5E図5Eは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図5F図5Fは、マルチステントを搬送する二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【0033】
図6A図6Aは、末端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
図6B図6Bは、末端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
図6C図6Cは、末端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
【0034】
図7A図7Aは、基端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
図7B図7Bは、基端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
図7C図7Cは、基端ステント解放法により血管にステントを配置する方法の実施例を示す。
【0035】
図8A図8Aは、腸骨血管圧迫症候群の基本的な解剖図を示す。
図8B図8Bは、腸骨血管圧迫症候群の基本的な解剖図を示す。
【0036】
図9図9は、2つ又はそれ以上のステントの重ね合わせを示す。
【0037】
図10A図10Aは、ねじ連結機構の実施例を示す。
図10B図10Bは、ねじ連結機構の実施例を示す。
図10C図10Cは、ねじ連結機構の実施例を示す。
図10D図10Dは、ねじ連結機構の実施例を示す。
図10E図10Eは、ねじ連結機構の実施例を示す。
【0038】
図10F図10Fは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
【0039】
図10G図10Gは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10H図10Hは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10I図10Iは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10J図10Jは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10K図10Kは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10L図10Lは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
図10M図10Mは、バヨネットカップリング機構の実施例を示す。
【0040】
図11A図11Aは、スナップフィット(はめ合い)の実施例を示す。
図11B図11Bは、スナップフィット(はめ合い)の実施例を示す。
図11C図11Cは、スナップフィット(はめ合い)の実施例を示す。
【0041】
図11D図11Dは、スナップフィット又はプレスフィットの他の実施例を示す。
図11E図11Eは、スナップフィット又はプレスフィットの他の実施例を示す。
【0042】
図12図12は、カップリング機構の他の実施例を示す。
【0043】
図13図13は、二方向ステント搬送カテーテルを操作するために使用されるハンドルの実施例を示す。
【0044】
図14A図14Aは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図14B図14Bは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図14C図14Cは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図14D図14Dは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図14E図14Eは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図14F図14Fは、図13に類似のハンドル部材を用いた末端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【0045】
図15A図15Aは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図15B図15Bは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図15C図15Cは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図15D図15Dは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図15E図15Eは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
図15F図15Fは、図13に類似のハンドル部材を用いた基端ステント解放のために構成されてそれを示す二方向ステント搬送カテーテルの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、概略医療装置、特に、ステント等の人工器官、又はその他のインプラント構造のための、内腔配送システムに関する。この配送システムは、ステントを動脈系、静脈系、又は体のその他の部分に配置するために利用される。ステント又は移植片、ステント移植片、シャント、バルブ等のその他のインプラント式医療装置を使用することを「プロテーゼ(人工装具)」という。プロテーゼは、薬、組織、支持組織を搬送したり、体内腔の開存性を維持したり、またはその他の機能を実行したりするために利用され、科学誌及び特許文献に広く報告されている。
【0047】
図1A図1D図2A図2Dは、プロテーゼ用の二方向性搬送システムの第1実施例を示す。ステントの搬送について説明するが、このシステムは他のプロテーゼ(例えば、移植片、ステント移植片、フィルタ等)の搬送にも利用できる。図1A図1Dは、ステントの先端(末端)解放を示しており、そこでは、ステントは該ステントがその先端(末端)からその後端(基端)に向かって拡張するように展開される。図2A図2Dは、ステントの後端(基端)解放を示しており、そこでは、ステントは該ステントがその後端(基端)からその先端(末端)に向かって拡張するように展開される。
【0048】
図1Aは、ステントを先端から展開するように構成されたステント搬送システム100を示す。搬送システム100は、インナー(内側)シャフト102、ミドル(中間)シャフト108、アウター(外側)シャフト114、シャトルシース(さや)120、及びステント128を含む。シャフトは、好ましくは、円形横断面の押出成形管であるが、その他の断面(例えば、卵形、長方形、楕円形)であってもよい。以下に説明する本実施例及び他の実施例におけるシャフトは、ポリエチレン、PTFE,FEP,PVC又はその他の公知の材料で作られる。インナーシャフト102は、造影剤又はガイドワイヤ(図示せず)を摺動自在に収容するために、インナーシャフトの基端から末端に伸びる中央内腔(ルーメン)を有する。末端における先細り形状のノーズコーンはインナーシャフト102に連結されており、血管やその他の組織に損傷しないようにしてある。ハブ106又はフレア領域は、ユーザが把持する領域を提供するとともに、インナーシャフトが末端側に過剰に前進してミドルシャフト108に進入する(又はミドルシャフトを基端側に過剰に後退させる)のを防止する。ミドルシャフト108はまた、その基端から末端に伸びる中央内腔110を有し、インナーシャフト102の上にスライド自在に配置されている。ミドルシャフト108はまた、ユーザが把持する領域を提供するとともに、ミドルシャフト108が末端側に過剰に前進してアウターシャフト114に進入する(又はアウターシャフト114を基端側に過剰に後退させる)のを防止するハブ112又はフレア領域を有する。ミドルシャフト108はインナーシャフト102の上にスライド自在に配置され、また、アウターシャフト114の中にスライド自在に配置され、さらに、シャトルシース120の中にスライド自在に配置されている。以下に説明する本実施例及び他の実施例は「ワイヤ上での使用」のために構成されているが、搬送カテーテルはガイドワイヤに素早く交換できるように改変することが簡単にできる。急速交換及びワイヤ上での使用は、米国特許第5,451,233号等の特許文献に詳細に記載されている。また、ハブ106,112,118は、搬送カテーテルの基端部から血液又はその他の流体が出るのを防止しながら、複数のシャフトが相互に相対移動できる止血弁を備えていてもよい。シャフトにしっかりを密着してシャフト相互の移動を防止するためにTuohy−Borst(商標名)等の止血弁が使用できる。したがって、Tuohy−Borstは、固定機構としても利用される。
【0049】
ステント128は、搬送のための崩壊(潰した)形状でミドルシャフト108上に配置されている。搬送中及び展開中にステント128がミドルシャフト108に沿って基端側又は末端側に移動するのを一対のストッパ130,132が防止している。ストッパ130,132は、ステント128がミドルシャフト108に沿って摺動するのを防止するリング、バンド、段(ステップ)、ブッシング、スリーブ、バンプ、フランジ、盛り上がった環状部分、又はその他の構造である。ストッパ130,132は、ステント手技中に蛍光透視法でステントの基端と末端を可視化するためにX線不透過性であってもよい。その他の可視化技術(例えば、X線、内視鏡、IVUS,MRI、超音波、CT、及びその他の技術を利用してもよい。好ましくは、ステント128は、自己拡張型のステントである。したがって、シャトルシース120は、ステント128を拘束して該ステントが径方向に拡張するのを防止するために、ステント上に配置される。ステント128は、自己拡張型合金又は形状記憶合金(例えば、ニチノール、ばね鋼、弾性ポリマー、又は公知のその他の材料)で作られる。シャトルシース120は、その長さが少なくともステント128と同じか又はそれよりも長い。
【0050】
アウターシャフト114は、該シャフト114の基端と末端との間に伸びる中央内腔116を有し、該中央内腔の中にミドルシャフト108が摺動自在に配置されている。アウターシャフト108の基端にあるハブ118は、ユーザに把持領域を提供し、ミドルシャフト108上にあるハブ112が末端側に過剰に前進するのを防止する(又は、アウターシャフト114が基端側に過剰に後退するのを防止する)。
【0051】
基端のロック機構又は連結機構122は、アウターシャフト113の末端をシャトルシース120の基端に連結する。末端のロック機構又は連結機構124は、シャトルシース120の末端をインナーシャフト102の末端にノーズコーン126を介して連結する。基端と末端のロック機構又は連結機構は、種々の形態(例えば、スナップフィット、干渉フィット、とげ付きコネクタ、ロック機構、キーロック、回転式又は直動式ロック、ねじ付きブッシング、ツイストロック、磁気カップリング、バヨンネットカップリング、破壊式又は壊れやすいコネクタ、その他の公知のもの)をとり得る。基端のカップリングは、末端のカップリングと同じ形態をとり得る。または、基端と末端に異なるカップリングを用いてもよい。この実施例では、基端ロック122がロックされており(黒塗りの四角形122で示されている)、末端ロック124がアンロックされている(ロックされていない)(白抜きの四角形124で示されている)。このような構成により、図1B図1Dに示すように、ステント128を末端側に送り出すことができる。
【0052】
図1Bにおいて、アウターシャフト114は、ミドルシャフト108とインナーシャフト102に対して基端側に後退される。アウターシャフト114はシャトルシース120にロックされ、シャトルシース120はインナーシャフト114にロックされていないので、アウターシャフト114が基端側に後退すると、シャトルシース120も基端側に後退する。図1Cは、シャトルシース120が基端側に後退すると、ステント128が部分的に解放され、ステント128が自身で拡張して径方向に拡張した形状になる。この部分的に拡張した形状で、外科医は、ステント128をシャトルシース120によって拘束された潰れた形状に戻すために、シャトルシース120を末端側に逆前進させることができる。最初の展開が不適当であった場合、ステントを元の位置に戻すことができる。シャトルシース120が基端側に移動し続けると、ステント128はその末端から基端に向けて自身で拡張し続ける。図1Dは、シャトルシース120が完全に基端側に後退してステント128が完全に解放されると、 ステント128が径方向に完全に拡張した形状になることを示している。次に、拡張したステント128を介して搬送カテーテル100が基端側に戻されて患者から取り除かれる。それぞれのシャフトを他のシャフトに対して容易に動作させるために、種々の作動機構(例えば、回転ノブ、スライドレバー等)を有するハンドル(図示せず)をカテーテルの基端に設けてもよい。このハンドルは、ここに開示されている実施例以外でも利用できる。この搬送方法は、典型的な順向性大腿静脈で利用できる。先端解放は、後退方式を採用する場合、深部端にステントを配置するために利用できる。
【0053】
図2A図2Dは、ステントの基端配送に適した形状に設計された搬送システム100を示す。図2Aは、基端と末端のロック又はカップリング122、124が入れ違いになっている構成の違いを除いて、図1A図1Dを参照して説明したものと実質的に同じ搬送システム100を示す。この実施例では、末端ロック124はロック構造で、シャトルシース120がノーズコーン126を介してインナーシャフト102に連結されている。ロック構造は黒塗り長方形で示してある。基端ロック122はアンロックされており、白抜き長方形122で示すようにシャトルシース120がアウターシース114にロックされていない。
【0054】
図2Bにおいて、ステント128に対して、インナーシャフト102が末端側に前進し、それにより図2Cに示すようにシャトルシース120も末端側に前進する。シャトルシース120が末端側に進むにしたがってステント128が解放されるようになり、ステント128の解放部分が自分自身でその基端から末端に向けて拡張し、径方向に拡張した形状になる。また、図2Cに示すようにステント128の一部が拡張した状態で、外科医はインナーシャフト102を基端側に後退させてシャトルシース120をステント128上で後退させて再びステント128を捕獲し収容して潰した状態に納めることができる。これにより、最初の展開が不適切であった場合、外科医はステントを再配置することができる。図2Dは、シャトルシースが末端側に移動してステント128を解放し、ステント128が完全に拡張された状態を示す。カテーテル100は、拡張したステント128を介して基端側に後退させて患者から取り出すことができる。この搬送方法は、反対側の後退静脈アプローチ又は頸静脈アプローチ中に利用できる。深静脈源上にステントを配置するのは難しい。したがって、順向性アプローチを使用する際に基端解放を利用できる。
【0055】
図1A図1D及び図2A図2Dに示す実施例において、基端と末端のロック機構又はカップリング機構122,124は、ロック構造又はアンロック構造に予め設けることができる。当業者は、任意のロック構造とアンロック構造の組み合わせが可能であると理解している。したがって、カテーテルには、ロック位置又はアンロック位置に両ロックを設けてもよい。また、カテーテルにはロックされた基端ロックとアンロックされた末端ロックを設けてもよいし、アンロックされた基端ロックとロックされた末端ロックを設けてもよい。ユーザは提供されたカテーテルを利用できるし、または、所望のステント展開方向に応じてロック構造はカテーテルを使用する前に又は現場でユーザによって変更できる。本実施例及び本願で開示されたその他の実施例に適用される種々のロック機構の例を以下に詳細に説明する。
【0056】
図3A図3Eは、二方向ステント搬送システムの別の実施例を示す。搬送システム300は、シャフトがどのように動作するかに応じて、基端ステント搬送又は末端ステント搬送のいずれにも利用できる。図3Aは使用前の好適な構造の搬送システム300を示す。システム300は、インナーシャフト302,ミドルシャフト308,アウターシャフト314、シャトルシース320、及びステント328を含む。シャフト302,308,314はそれぞれ、シャフトの基端と末端との間に伸びる内腔を有し、そこに他のシャフトを摺動自在に収容して該シャフトに対して相対的に移動することができる。例えば、インナーシャフト302はミドルシャフト308の内腔に摺動自在に配置され、ミドルシャフトはアウターシャフト314の内腔に摺動自在に収容される。また、各シャフト302,308,314は、該シャフトの基端近傍にハブ又はフランジ領域306,312,318を有し、オペレータが把持する領域を提供するとともに、シャフトが他のシャフトに対して過剰に移動するのを防止するストッパを提供する。ハブのその他の形態は上述のものとほぼ同じである。
【0057】
ステント328は、ミドルシャフト308上でシャトルシースによって径方向に収縮した形状に拘束されて保持されている。ステントのストッパ330,332は、図1A図1D及び図2A図2Dを参照して上述したものと同じ形状を有する。ストッパ330,332は、ミドルシャフト308に対するステント328の軸方向の好ましくない移動を防止する。ロック機構又はカップリング機構324はノーズコーン326を介してシャトルシース320の末端をインナーシャフト302に連結する。この好ましい実施例において、ロックは閉鎖されており(黒塗り長方形によって示すように)、シャトルシース320がノーズコーン326を介してインナーシャフト302に連結されている。ステント328は、上述したステント128と同じ形状を有する。
【0058】
図3Bにおいて、インナーシャフト302は末端側に前進する。ロック324は閉鎖されているので、シャトルシース320は末端側に移動する。シャトルシース320が末端側に移動するにしたがって、アウターシャフト314によって拡張が規制されるまで、ステント328は次第に解放されて自己拡張し始める。図3Cに示すように、インナーシャフト302がさらに末端側に前進すると、ステントは完全に解放され始めるが、自分自身で拡張してアウターシャフト314に係合すると更なる自己拡張が防止される。
【0059】
次に、図3Dに示すように、アウターシャフト314は基端側に後退する。アウターシャフト314が基端側に後退すると、ステント328の拘束が解かれ、ステントは自分自身で基端側から径方向に拡張する。図3Dにおいて、ステント328は、部分的に拡張し、部分的に拘束されている。この状態で、オペレータは、随意にアウターシャフト314を後退させてステント328を再度捕獲して潰した状態に再拘束することができる。これにより、最初の配置が適当でない場合、ステント328を再配置して再展開することができる。次に、ステント328が完全に解放されるようにアウターシャフト314は基端側に後退し、ステント328は径方向に拡張して完全に拡張した形状になる。次に、カテーテル300はステント328を介して基端側に後退され、患者から取り出される。
【0060】
図3A図3Eのロック324は好ましくはロック状態にあり、そのために、インナーシャフト302が末端側又は基端側に移動するそれに応じてシャトルシース320が移動する。カテーテルにはアンロック状態のロックを設けてもよいし、ユーザは必要に応じてそれをロックすることができる。
【0061】
図4A図4Eは、ステントを基端側に展開するにあたって図3A図3Eの搬送カテーテル300がどのように使用されるかを示す。図4A図4Eの搬送システム300は、シャフトの動作する順序が違いためにステントが逆方向に展開されるという点を除いて、図3A図3Eで説明したシステムと同一である。
【0062】
図4Aは、使用前のステント搬送システム300を示す。図4Bにおいて、アウターシャフト314は、図4Cに示すように、シャトルシース320がアウターシャフト314から解放されるまで基端側に後退する。図4Dにおいて、インナーシャフト302は末端側に移動する。ロック324はノーズコーン326を介してシャトルシース320にロックしているので、シャトルシース320は末端側に移動し、ステント328はシャトルシース320による拘束から外れると自分自身で拡張する。また、上述のように、ステントを部分的に拡張する一方で、外科医は最初の展開が適当でない場合に該ステントを再び捕獲して再配置することができる。インナーシャフト302を後退させることでステント328は再捕獲できる。そして、ステント328がシャトルシース320で拘束された潰れた状態に戻るように、シャトルシース320を基端側に後退する。図4Eにおいて、シャトルシース320がステント328から取り除かれるように、インナーシャフトは末端側に進む。次に、ステント328が解放され、径方向に拡張してその拡張状態になる。次に、搬送カテーテル300は、ステント328を介して基端側に後退されて患者から取り除かれる。
【0063】
図5A図5Fは、二方向ステント搬送システム500の他の実施例を示す。この実施例は、図1A図1D及び図2A図2Dで説明したものと類似しており、大きな違いは、本実施例では2つのステントを、一方を基端解放し、もう一方を末端解放するという点である。図5Aは、インナーシャフト502,ミドルシャフト508,アウターシャフト514,シャトルシース520,及び2つのステント528,529を有する搬送システム500を示す。3つのシャフト502,508,514はそれぞれ、別のシャフトに対して相対的に移動するように、基端と末端との間に伸びる中央内腔を有する。インナーシャフト502はミドルシャフト508の内腔に摺動自在に配置され、ミドルシャフト508はアウターシャフト514の内腔に摺動自在に配置される。また、シャフト502,508,514の基端に設けたハブ又はフランジ領域506,512,518は、外科医が使用中及び動作中に把持する領域を提供するとともに、シャフトが過剰に移動するのを防止するストッパを提供する。また、この実施例では、上述の実施例と同様に、ハブは、シリンジ、チューブ、その他の装置とのカップリング用に、ルアー(Luer)テーパ 又はねじ部等の標準的な連結機構を有する。その他の上述したハブの特徴は本実施例でも利用できる。
【0064】
ステント528,529はミドルシャフト508上に配置され、ステントストッパ530,531,532はミドルシャフト514に沿ったステントの好ましくない軸方向の移動を防止する。ステント528,529とステントストッパ530,531,532は上述のものと同じ形をしている。ロック機構又はカップリング機構522,524は、以下に詳細に説明するように、シャトルシース520をインナーシャフト502又はアウターシャフト514に連結する。図5Aにおいて、ロック524は、シャトルシース520がノーズコーン526を介してインナーシャフト502に接続されるように閉鎖又はロックされる(黒塗り長方形で示す)。ロック522は、アウターシャフト514がシャトルシース520に対して自由に移動するように解放(アンロック)される(白塗りの長方形で示す)。
【0065】
図5Bにおいて、インナーシャフト502は末端側に移動し、それに対応してシャトルシース520を末端側に移動する。基端側のステント529が解放され始めると、それは部分的に径方向に拡張した形状となる。この時点で、再配置が望ましい場合、外科医はインナーシャフト502を後退させてステント529を再捕獲して径方向に潰れた形状に拘束する。もしその必要が無ければ、ステント529が完全に解放されて図5Cに示す拡張した形状になるように径方向に拡張されるまで、インナーシャフト502は末端側に前進される。インナーシャフト502はさらに末端側に前進して末端側ステントを末端解放する、又は、図5Dに示すように、インナーシャフトが基端側に後退して末端ロック又はコネクタ524を解放する(白抜き長方形で示す。)とともに基端ロック又はコネクタ522をロックする(黒塗り長方形で示す。)。
【0066】
図5において、その後、アウターシャフト514は基端側に後退され、ステント528が解放され始めるようにシャトルシース520を基端側に後退する。これにより、ステント528は径方向に自分自身で拡張する。ステント528が部分的に拡張されると共に部分的に潰れた状態にある場合、再配置が必要であれば、アウターシャフト514を随意に末端側に移動してステント528を再捕獲して径方向に潰れた形状で再拘束される。そのような必要がなければ、図5Fに示すように、ステント528がもはや拘束されていない状態までアウターシャフト514は基端側にさらに後退され、ステントは径方向に拡張した形状まで自分自身で基端側に向かって(第1のステント529と反対側に)拡張する。次に、搬送システム500はステント528,529を介して基端側に後退されて患者から取り出される。
【0067】
この実施例において、ステントを展開する順序は任意である。例えば、両ステントを基端から展開してもよいし、両ステントを末端から展開してもよい。他の実施例では、基端側のステントは基端から展開され、末端側のステントは末端から展開される。その他の実施例では、基端側のステントは末端から展開され、末端側のステントは基端から展開される。展開方向は、シャフトが動作する順序、シャトルシースがインナーシャフトとアウターシャフトに連結されているか否かに応じて決められる。さらに、搬送システムで搬送されるステントの数は任意で、実施例は該システムを2つのステントを搬送するもの限定するものでない。
【0068】
上述した実施例は、シャトルシースをインナーシャフト又はアウターシャフトに着脱可能に連結するための複数の異なるロック機構又はカップリング機構を備えている。例えば、図10Aは、どのようにねじカップリングが使用されるかを示している。搬送カテーテル1002は、アウターシャフト1004,インナーシャフト1018,シャトルシース1010,及びインナーシャフト1018に連結されたノーズコーン1016を有する。上述の実施例で説明したミドルシャフトとステントは、図面を簡略化するために省略されている。アウターシャフト1004はねじ付き末端部1006を有し、シャトルシース1010の基端部はねじ部1008を有する。シャトルシース1010の末端部は、ねじ部1012を有し、ノーズコーン1016の基端はねじ部1014を有する。アウターコーン1004はシャトルシース1010に対して回転されて末端側に移動し、アウターシャフト1004をシャトルシース1010にねじ係合する。同様に、インナーシャフト1018はシャトルシースに対して回転して基端側に後退され、ノーズコーン1016とインナーシャフト1004をシャトルシース1010にねじ係合する。ねじは、同一方向でもよいが、一方向に回転するとシャトルシースが一方のシャフトに連結するとともにシャトルシースが残りのシャフトから外れるように逆方向であってもよい。逆方向に回転すれば、シャフトシースが一方のシャフトから外れるとともに残りのシャフトに連結する。ねじは左ねじでもよいし、右ねじでもよい。また、カップリングが予め設定されているシステムでは、そのカップリングが外されるか又は互いにカップリングされる。雄ねじ又は雌ねじはシャトルシースと対応するシャフトの間で入れ替えることができる。
【0069】
図10B〜図10Eは、ここで説明する任意の実施例におけるカップリング機構を構成するために、シャトルシース、インナーシャフト、又はアウターシャフトの端部に用いられるねじカップリングの実施例を示す。例えば、図10Bは内ねじ1052を有するねじ付きチューブ1050を示し、図10Cは内ねじを有する ねじ付きナット1054を示す。図10D図10Eに示されるねじ付きロッドは、図10B図10Cの実施例とねじ係合する。図10Dは、外ねじとを有するねじ付きロッド1058と該ねじ付きロッドを貫通する中央チャンネル1060を示す。図10Eは、外ねじと中実中央部1064を有するねじ付きロッド1062を示す。
【0070】
カップリング機構又はロック機構124,122,324,524,522,612,712及び708の他の実施例がバヨネットカップリングであり、これはねじスナップ式コネクタ又はBNCコネクタと呼ばれる。ここで説明するカップリングコネクタ又はロック機構は、シャトルシースをインナーシャフト又はアウターシャフト若しくはそれらの両方に着脱自在に連結するために利用される。以下の実施例は、ここで説明する任意の搬送システムに利用できる。 図10F図10Mは、この種のカップリング、連結、又はロック機構の代替的実施例の種々の形態を示す。
【0071】
図10Fに示すカップリング及びロック機構を説明する。この実施例において、コネクタ又はバヨネットカップリングは雌コネクタ1026と雄コネクタ1036を有する。雌コネクタ1026は中央チャンネル1040と、少なくとも一つで好ましくは2つ以上の、雌コネクタ1026の側壁を貫通する溝付きチャンネル1028を有する。溝付きチャンネル1028は直線部1030、横方向部1032、及び受け部1034を有する。以下の実施例に示し該実施例で説明するように、カップリングのそれぞれの部分1030,1032,1034の相対的な長さ、大きさ、及び方向は、設計要素の数に応じて変化する。
【0072】
図10Fの実施例では、直線部1030はコネクタ1026の長軸にほぼ平行である。図10Fはまた、直線部1030に対して所定の角度もって配置された横方向部1032を示す。一つの形態では、受け部1034は、スロット1028の他の部分と異なる直径を有する。受け部の直径は、他の部分よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。図示するように、受け部1034は、スロット1028の他の部分よりも大きな直径を有する球根状又はフレア状の端部を有する。一つの形態では、受け部1034はスロット1028の他の部分とは異なる形状を有する。図10Fの実施例において、スロット1028は略長方形を有し、受け部1030は円形を有する。
【0073】
図10Fは、雄コネクタ1036の図を示す。雄コネクタ1036は、雌コネクタ1026の中央チャンネル1040に収容される細長い末端部1038を含む。少なくとも一つ、好ましくは2つ以上のピン1042が、細長い末端部1038から径方向外側に伸びている。使用時、雄コネクタ1036は、細な長い末端部1038が中央チャンネル1040に収容されるように、雌コネクタ1026に挿入される。ピン1042はスロット1028に整列され、雄コネクタが雌コネクタに挿入されると、ピンがスロット1028に沿って受け部1034に前進する。雄コネクタと雌コネクタの間の相対的な移動により、ピン1042がスロット1028に沿って移動する。相対的なカップラの移動の程度及び型式はスロット1028の部分の形状と方向によって変わる。
【0074】
特に図10Fのスロットを見ると、雄末端部1038が中央チャンネル1040に入ると、ピン1042が直線部1030に導入される。雌コネクタ内に雄コネクタを引き続いて挿入すると、ピン1042がスロットの直線部1030に沿って該直線部の端部に到達するまで前進する。雄コネクタ1036は、雌コネクタ1026に対して回転し、その結果、ピン1042がスロットの横方向部1032に沿って該横方向部の端部に到達するまで前進する。図10Fに示すように、ピン1042は、ピン1042を受けるように構成された一つ又は複数の特徴を有する受け部1034に収まる。スロットは、スロットの任意の断面に沿った特定の場所に一つ又は複数のピンを維持するために、一つ又は複数の適当に配置されたノッチ、刻み目、回り止め、又は溝を設けてもよい。図示する実施例において、受け部1034は、ピン1034に一致する大きさと形状を有する円形部1035を含む。円形部1035とピン1034は、ピンが受け部に容易はまるように相補的な円形面を有し、スロットの一部とピンの一部が何らかの相補的特徴部分を有するように構成されており、スロット1028の選択された位置に又は選択された状態でピンが止まることを保証している。また、いくつかの実施例では、バヨネットカップリングにスプリング(図示せず)が含まれている。スプリングは、雄コネクタを雌コネクタから離す方向に付勢するように、カップリング内に設けられている。スプリングの付勢力は、ピン1042が受け部1034に止まるのを保証するために利用される。追加的に又は代替的に、スプリングの付勢力は、ピン102をスロット内又は雌カップリング内に維持するために、又はスロット内又は雌カップリング内に設けた適当な戻り止め、ノッチ又はロック機構と係合してピンをスロット内又は雌カップリング内に維持するために利用される。そのような適当な戻り止めの一例は雌カップリング1026の丸くなった部分1035である。雄と雌のコネクタを相互にロックするために、上述の又はその他の適当なロック機構のいずれかを用いてもよい。
【0075】
ロックされた状態で、2つのコネクタ1026,1036は、中央チャンネル1040内で、ピン1042を受け部の円形部1035に納めた状態で、雄コネクタと係合する。二つのコネクタ1026,1036は、採用する特定のカプラー接続(例えば、スロット形状又は他は特定のロック機構の特性)に応じた適当な動作によって、互いに取り外される。ピン1042は、摩擦接合によってスロット1028に沿って着座する。摩擦接合は、例えば一つ又は複数のピンの直径に対するスロットの径を小さくすることによってスロットに導入することができる。この場合、ピンがスロットの縮小部又は小径部に入ると、ピンがその部分にくさびとなって割って入る。
【0076】
図10Fに示す実施例では、雌コネクタに対して雄コネクタを内側に押し込むと、ピン1042が丸い受け部1035から外れる。次に、2つのコネクタ1026,1036を相対的に回転することで、ピン1042は横方向部に沿って摺動し、横方向部に沿って外側にスライドするように移動する。次に、2つのコネクタ1026,1036を他方に対して離れる方向に引くと、ピン1042はスロットの直線部1030に沿って該直線部から取り出される。雄コネクタ又は雌コネクタをシャトルシース120,320,520,610の一端に設けるとともに、シャトルシースが着脱自在に連結される他方のコネクタを内側又は外側のシャフトに設けてもよい。また、溝に利き手があるように、バヨネットカップリングにも左手機構又は右手機構を設け、一方向に回転すればコネクタが解放され、他方に回転すればコネクタが連結されるようにしてもよい。したがって、左手式バヨネットカップリングをシャトルシースの一端に設け、右手式バヨネットカップリングをシャトルシースの反対側に設けてもよい。これにより、反対側の端部を接続することなく、シャトルシースの一端が接続される。ロック機構又はカップリング機構の動作は、図14A図15Dを参照して以下に説明する。
【0077】
図10G図10Hは、バヨネットカップリングの他の実施例を示す。この実施例は図10Fのバヨネットカップリングに類似しているが、2つのスロット1028に係合する2つのピン1042を有する代わりに4つのスロット1028aに係合する4つのピン1042を有する。図10Gは雄コネクタ1036を有する。雄コネクタ1036は、ほぼ円筒形でコネクタ末端部1038の本体から径方向外側に伸びる4つのピンを備えている。好ましくは、ピン1042は90度の間隔をあけて配置されるが、これは限定的なことではない。雌コネクタ1026は、好ましくは90度の間隔をあけて配置された4つのスロット1028aを有する。スロット1026aは、水平部1030a、横方向部1032a、及び受け部1034aを有する。横方向部1032aはまた、横方向部と受け部との間の移行部として別の曲がり部1032aを有する。スロット1028aは、雄コネクタ末端部1038が雌コネクタに挿入された後、スロット1028aに沿ってピン1042を前進させるために、必要に応じて他方に対して移動・前進・又は回転すると、ピン1042を受けるような大きさとしてある。水平部1030aは、実施例10Fのそれよりも短い。受け部1034aは、図10Fの実施例のような円形部1035ではない。雄コネクタ及び雌コネクタの他の形態及びそれらの動作は、上述の図10Fを参照して説明したものと同じ形態を採り得る。
【0078】
図10Hは、平坦なシートからスロット付き雌コネクタを形成する方法の例を示す。スロット1028aが平坦な材料シートに加工された後、図10Gに示すように該シートを円筒状に巻いて雌コネクタ1026aを形成する。ここで示す実施例のように、雌コネクタはチューブ(管)を切って作ることもできる。雄コネクタは、ピンをプレスフィット、接着、溶接等して形成、加工、又は成形される。
【0079】
図10I図10Mは、図10F図10Gに示すバヨネットカップリングの他の実施例を示す。図10I図10Jは、図10F図10Gに示す雌バヨネットカップリングに類似の雌カップラ1026bの図を示し、図10Iは全体斜視図で図10Jは平坦なシート状に展開したカップラを示す。カップリング1026bは、直線部1030b、横方向部1032b、及び受け部1034bを備えたスロット1028bを含む。この実施例において、長手方向部1030bと横方向部1032bは90度の角度をあけて方向付けられている。雌コネクタ1026bは、上述のバヨネットカップリングと同様に、2つのピン式雄コネクタ1036に係合するように設計されている。雄コネクタと雌コネクタの他の形態、及びそれらの動作は、図10F図10Gの雄コネクタ1026と雌コネクタ1036を参照して説明したものと同じ形態をとる。
【0080】
図10K図10L、及び図10Mは、別のスロットの設計を示す。容易に対比できるように、これらの代替的なスロットの設計は、図10H図10Jに示すように平坦なシート状に示されており、ロール状に巻いて又は上述のようにして雌コネクタに形成される。
【0081】
図10Kは、雌カップリング1026cの一部としての、別のスロット1028cを示す。スロット1028cは、直線部1030c、横方向部1032c、及び受け部1034cを有する。図10Jに示す受け部と同様に、受け部1034cはまた、コネクタの長軸にほぼ直交する方向に向けて雌コネクタの周囲に沿って伸びている。図10Kの直線部1030cと横方向部1032c は、図10Jに示す90度の関係とは対照的に、約45度の角度をあけて配置されている。
【0082】
別の形状のスロット1028cが、図10Lの雌カップリング1026dに示されている。図10Lの 直線部1030dと横方向部1032dは、図10Kに示すように、約45度の角度をあけて配置されている。図10Lのスロット1028dは、図10K図10Fとは対照的に、細長い受け部は備えていない。図10Lの受け部1034dは、図10Fに示す細長い受け部1034(すなわち、丸い部分1035)とは対照的に、図10Kにおける横方向部1032dと同じ径を有する。
【0083】
別の代わりのスロット形状が、図10Mに示された雌カップリング1026eに表されている。図10Jのスロットの離散的に線形な横断面とは対照的に、図10Mのスロット1028eは唯一の横断面である。図示する実施例において、横断面1032Aは、約90度のカーブを描いている。従来の実施例のように、受け部1034eは、横断面1032eと同じ寸法を有する。横断面1032eは、図10Hに示すような複合曲線(例えば、符号1032a1で示す。)を含む他の形状を含むことができる。
【0084】
上述の説明から明らかなように、複数のスロット溝を揺する実施例があり得る。また、平坦なシートからスロット付雌カップリングを形成する複数の方法があり得る。一般に、雌コネクタにおけるスロットの形状と大きさは、種々変更可能で、横断部、長手方向部、角付き部、曲線部、受け(端)部、又はそれらの組合せの一つ又は複数を含むことができる。雄コネクタのピンは、対応する雌コネクタに対応した大きさと間隔を有する。種々のスロット部の長さ、幅、相対比率は、種々の設計条件に応じて変化する。一つの実施例では、雌コネクタは、0.050〜1.000インチ、好ましくは0.100〜0.500インチの長さを有する。雌カップリングのスロットは、0.010〜0.050インチ(好ましくは0.015〜0.030インチ)の幅、0.050〜1.500インチ(好ましくは、0.100〜0.500インチ)の長さを有する(雌カップラの全長「1」に対する割合。図10I参照)。雌カップリングのスロットは、カップリングの周囲をピンが0.1〜約3回転、好ましくは0.25〜1回転する移動経路を形成することができる。雌コネクタのスロット数は1スロット以上、2スロット、又は3スロットである。雌コネクタスロットは、90度の角度をもって配置された(図10J)、45度(図10L)、又は60〜150度(好ましくは80〜100度)の範囲に配置された横方向又は長手方向の部分を有する。受け部1034は、隣接する部分よりも大きな径を有するフレア部、拡大円形部(図10Fの受け部1034を参照)、隣接するスロット部と同じ径を有する細長い受け部(長い形態が図10Kに、短い形態が図10Gと10Hに示してある。)他の形態では、スロットの端部にある受け部は他の一つ又は複数のスロット部よりも狭い。一つの形態では、受け部は、他のスロット部の幅に比べて、約0.005〜0.020インチの範囲の幅を有する一つ又は複数のスロット部よりも狭い幅を有する。
【0085】
図10Hと同様に、図10J、10K、10L、及び10Mはそれぞれ、平坦なシートから図10F、10G、及び10Iに示すスロット付雌コネクタを形成する例示的な方法を示す。スロットは、例えば、EDM、光化学エッチング、レーザ切断等で平坦なシート材料に加工される。その後、加工されたシート材料は円筒形状に巻かれて雌コネクタが形成される。ここで説明するすべての雌コネクタの実施例のように、コネクタは管(チューブ)から切り出される。雄コネクタの実施例のように、雄コネクタは、ピン1042、1078を押圧、接着、溶接等でそれに取り付けて形成される。代わりに、ピンは加工してもよいし、成形してもよい。ピンは、ここに説明するように、対応する雌コネクタに係合するように間隔をあけて、所定の大きさと形状にされる。
【0086】
その他のコネクタは、所定の力が加わるまで原形を保って接続されているが、それ以上の力が加わると破壊する、壊れやすいワイヤ、ストランド、ファイバ、チューブ、タブ、フック、バーブ(鉤状物)から形成された、壊れやすいコネクタを有する。これらのコネクタが有望であり、それらは連結が一回だけ壊すことができるもので、再度連結することはできない。したがって、何回も接続・分離できるものが好ましい。図11A図11Cは、連結機構として利用できるスナップフィットを示す。図11Aは、係合部のくぼみ領域1104にロックする片持ち式スナップフィット1102を示す。図11BはU形状の片持ち式スナップフィット1106を示し、図11CはL形状の片持ち式スナップフィット1108を示す。片持ち式スナップフィットは、複数のシャフトの一つのくぼみに係合するシャトルシースの一部であってもよいし、スナップフィットを複数のシャフト上に設けるとともにくぼみ部をシャトルシースの一部とし
【0087】
図11Dは、上述のコネクタ機構を形成するために使用されるスナップフィットの他の実施例を示す。コネクタは、雄部1126と雌部1132を有する。コネクタの雄部1126は、隆起した環状フランジ1130をその末端近傍に備えた細長い末端部1128を有する。複数の長手方向のスリット1138は、径方向の伸縮する、末端部1128に設けた複数の弾性アームを形成している。雌コネクタ1132は、そこを貫通する中央チャンネル1136を有する基端部1134を含む。中央チャンネル1136は、拡大領域1140で開放している。使用時、末端部1128は、中央チャンネル1136にスライド自在に挿入され、弾性アームを崩壊形状に付勢する。雄コネクタは、環状フランジ1130が拡大領域1140に入るまで、雌コネクタ内に前進される。アームはそれらの非付勢形状に戻ると、環状フランジを外側に付勢し、これにより、雄コネクタと雌コネクタを互いに解放可能にロックする。これら2つは、適当な引張力を加えることにより、互いに引き離すことができる。
【0088】
図11Eは、雄コネクタ1146と雌コネクタ1140を有するスライド式連結機構を示す。雄コネクタは細長い末端領域1148を有し、雌コネクタはそれを貫通する中央チャンネル1144を備えた受け部1142を有する。雄コネクタと雌コネクタは、末端領域1148が受け部1142に受けられるように、互いに他方に向けて押される。2つのコネクタの大きさは、不用意に解放するのを防止するために、互いに他方に対して適当な摩擦を作用するように調節される。これら2つのコネクタは、適当な引張力を加えると互いに他方から解放される。
【0089】
図12は、ここに開示した搬送カテーテルのいずれの実施例でも使用できるスパイラル(らせん)式又はヘリカル(らせん)式カップリング機構の実施例を示す。カップリング機構は、第1のスパイラル式又はヘリカル式コネクタ1202と第2のスパイラル式又はヘリカル式コネクタ1204を有する。第1のスパイラル式コネクタは、好ましくは円筒形の基端部1206を有し、これはシャトルシース、又は内側シャフト、若しくは外側シャフトの端部に、接着、溶接、ねじ、プレスフィット(はめ合い)等によって連結される。スパイラルコネクタの末端1210は、第1の方向に向けてスパイラル状又はヘリカル状に曲がり、ねじ状領域を形成する。スパイラルコネクタの外径は、好ましくはコネクタの全長に亘って一定であるが、これは限定的なことではない。また、中央チャンネル1214はスパイラルコネクタ1202を貫通しており、第1コネクタ1202の内径もまた好ましくはコネクタの全長に亘って一定であるが、これは必要なことではない。第2スパイラルコネクタ1204は、第1コネクタ1202と同一で、180度回転してある。第2コネクタ1204は、上述の方法エーエム他は当業者に公知の方法でシャトルシース、インナーシャフト、又はアウターシャフトと連結するために、好ましくは円筒形の基端部1208を有する。第2コネクタ1204の末端部1208は、第1の方向とは反対の第2の方向に向けてスパイラル状又はヘリカル状に曲がっており、ねじ状領域を形成している。スパイラルコネクタ1204の外径は、その全長に亘って好ましくは一定であるが、これは限定的な意味ではない。また、中央チャンネル1212はスパイラルコネクタ1204を貫通しており、第2コネクタ1204の内径もまたその全長に亘って好ましくは一定であるが、それは必要なことではない。2つのコネクタは、ねじ状領域が重なって互いにかみ合うように、一方のコネクタは他方のコネクタに対して回転することで相互に連結される。また、ここで開示されている他のねじ式実施例と同様に、2つのスパイラルコネクタをシャトルシース両端で使用すると、一方向に回転すればシャトルシースが一方のシャフト(インナーシャフト又はアウターシャフト)に連結するとともに該シャトルシースが他方のシャフトから外れる。同様に、反対方向に回転すれば、シャトルシースはその一端が外れて他端が連結される。らせんピッチは、好ましくは、比較的低摩擦で回転がスムーズとなり、2つのコネクタを相互にロックするために必要な回転数が多くのオペレータにとって容易に行えるものであるように設定される。この設計の利点は、個々のコネクタを組み合わせた長さ以下の長さを有する一片の管から両コネクタを切り出すことができることである。また、両半部は他方とミラー対称な形状であるために、一つのコネクタを製造すればよい。一方のコネクタがシャトルシース又はシャフトの一端に使用され、同じものをひっくり返して反対側の端部に使用される。この形態は、部品の在庫を減らすことができ、製造が容易であるから好ましい。
【0090】
二方向ステント展開用ハンドル1300の実施例が図13に示してある。ステントを展開するハンドルの動作は、図14A図15Fを参照して詳細に説明する。ハンドル1300は、スライド式シースを用いたカテーテル100,300,500と連動して動作するように設計されている。ここで説明するカテーテルは、一つ又はそれ以上の分離可能なコネクタ又はカップリングを採用している。コネクタ又はカップリングは、ステントを掴み又はその展開を制御するように、カテーテルの構成に関連して配置されている。上述のように、コネクタ又はカップリングは、ステント部の基端側と末端側に配置されており、アウターシース又はシャトルシースの一端が分離されてステントに対して基端側又は末端側に移動するようにしてある。この構成により、ステントは、展開条件に応じて、基端側から末端側に向けて又はその反対に向けて展開できる。ハンドルにカテーテルが連結されていることにより、シャトルシース又はシャフトを遠隔で相対的に回転し移動して容易にステントを配置、展開、捕獲、及び取り出しできる。
【0091】
一つの実施例では、ハンドル1300は、分離トルク部1305、セレクタスイッチ1310、基端スライダ1311、及び末端スライダ1306を有する。分離トルク部1305は、アウターシース又はシャフトに、ここで説明するカップリング機構により接続されている(例えば、図1A、2A)。分離トルク部1305を回転すると、アウターシース又はシャフトが回転する。回転の方向を時計回り方向又は反時計回り方向にするかは、分離セレクタスイッチ1310の位置により決定される。末端/基端の分離セレクタスイッチ1310又は分離セレクタスイッチが、分離トルク部1305の回転する方向を決定する。ここで説明するように、シャトルシース又は一つ又は複数のシャフトの間の回転などの相対運動は、幾つかの実施例では、カップリング又はロッキング機構を連結又は分離するために利用される。一実施例では、セレクタスイッチは、カテーテルのインナー部材(例えば、一つ又は複数のシャフト)に対するアウターシャフトの回転方向を決定するために利用される。一つの実施例では、基端側のシースコネクタ(すなわち、雄/雌コネクタの基端側端部)には右手ねじが採用され、末端側のコネクタ(すなわち、相補的な雄/雌コネクタ)は左手ねじを採用している。このように、アウターシャフトの回転をトルク部1305に伝えてハンドルに対して一方向に回転すると、他方のコネクタをそのままにして、一方のコネクタが緩む。その結果、セレクタスイッチ1310とトルク部1305の協力により、アウターシースの回転方向に応じて、カップリング機構の末端又は基端が解放される。
【0092】
セレクタスイッチ1310は、どの方向が選択されているかによって、分離トルク部1305の回転方向を制限する。一つの実施例では、セレクタスイッチ1310を末端一に移動すると、トルク部1305が時計回り方向に回転し、反対時計回り方向の回転を規制する。代わりに、セレクタスイッチ3110を基端位置に移動すると、逆の結果となる。
【0093】
トルク部1305と同様に、基端と末端のスライダ1311,1306はシャフト、シース、システム100の一部の一つ又は複数に連結され、その結果、カテーテル部材の相対的な移動と制御が行なわれる。哺乳動物の血管又は内腔で使用する場合、ハンドル1300は体の外側に位置し、カテーテルの末端にあるステントとその他の部材が体内に配置されて遠隔操作される(例えば、図6A図7C)。末端のスライダ1306はアウターシース又はシャフトに連結される。その結果、末端スライダ1306が末端から基端に移動すると、アウターシャフトとそれに取り付けた構造(シャトルシース等)が同様に動作する。このように、図1C及びその他で示すものと同様に、末端スライダ1306が移動するとアウターシャフト114が移動してステント128が表れる。ここで説明のとおり、末端スライダ1306が移動することはアウターシャフトハブ118,318,又は518を移動することである。
【0094】
一つの実施例では、末端スライダ1306は2つの動作モードを有する。第1のモードは、アウターシャフトの細かい動きである。種々の方法によって細かい動きが制御される。一つの実施例では、細かい動きは、ハンドル1300のねじ部上におけるスライダ1306の回転によって達成される。図13に示す実施例に示すねじ部1320はそのような目的のものである。スライダ1306内に適当な内部機構を設けることで、スライダ制御の回転によってアウターシャフトを移動できる。一つの特定の実施例では、ねじ部1320のピッチは、スライダ1306が一回転するとアウターシャフトが約1mm移動するようにする。スライダ1306の一回転につき、1mm未満の量(例えば、0.5mm)又は1mmを超える量(2,3,4,5mm又はそれ以上)の移動を提供する他のねじピッチも可能である。スライダ1306の第2の動作モードでは、アウターシースが粗く/急速に移動する。一つの実施例では、このスライダ動作モードは、スライダ1306に設けた解除ボタン1325を押圧することによって行われる。スライダ1306の解除ボタン1325を押すと、スライダ機構がハンドル1300のねじから外れる。ねじ1320から外れると、スライダ1306はスロット1330に沿って自由に移動する。スロット1330に沿って適当な方向にスライダを移動すると、アウターシャフト又はそれに接続されているステント等の構成が対応して移動(移動量の比1:1)が生じる。
【0095】
動作モードに拘わらず、ステントの末端から基端に向かう展開は、末端1306をハンドルに沿って基端側に移動することで達成される。展開後、カテーテルの末端は、末端1306をスタート地点に戻すことによって再びシースで覆われる。
【0096】
基端側のスライダ1311は、インナーシース又はシャフトに接続される。これにより、基端側スライダ1311が移動すると、例えば、図2A〜2Dに示すように、それに取り付けたインナーシャフトと構造(シャトルシース120又はノーズコーン126)が同様に移動する。このように、基端側のスライダ1311は、インナーシャフト102とそれに関連する部品を移動又は静止状態に保持し、図2C等に示すように(そこでは、インナーシャフトの移動が展開に利用されている)、ステント128を露出させる。基端スライダ1311の移動は、インナーシャフトハブ106,306,又は506の移動に相当する。
【0097】
一つの実施例では、基端側のスライダ1311は、末端スライダ1306について上述したものと同様に、細かい制御モードと粗い制御モードを有する。基端側のスライダ1311は、ステントの展開が基端側のスライダ1311を動かすことによって達成されるという点で異なる。必要であれば、シースに対するステントの再収納は、基端側のスライダ1311をスタート位置に戻すことによって達成される。
【0098】
ハンドルのデザインを検討するにあたって、基端が3つの同心チューブ又はシャフトで終わるように、カテーテルの基本デザインを考慮してもよい。これら3つのチューブ又はシャフトは、アウターシャフト、ミドルシャフト、インナーシャフトである。シャフトとカテーテルの部品との関係の様々な他の実施例が図1A〜5Fに示されて説明されており、それらは図14A〜15Fにおいてハンドル部品に接続されている。
【0099】
一つの特定の実施例では、チューブ又はシャフトが以下のように操作されたときにステントが展開される。
【0100】
末端から基端への展開
【0101】
アウターシャフト
・時計回り方向(装置の末端から見た場合)に回転して末端カップラーを分離する。
・シャフトを基端側に移動してステントを露出させる。
・シャフトを末端側に移動して末端をシースに収める。
【0102】
ミドルシャフト
・ハンドルに対して固定する。
【0103】
インナーシャフト
・ハンドルに対して固定される。
【0104】
基端から末端に向けて展開
【0105】
アウターシャフト
・反時計回り方向(装置の末端から見た場合)に回転して基端カップラを分離する。
・シャフトは上述の工程後静止状態を維持する。
【0106】
ミドルシャフト
・ハンドルに対して固定される。
【0107】
インナーシャフト
・シャフトを末端側に移動してステントを露出させる。
・シャフトを基端側に移動して末端をシースに収める。
【0108】
上述した展開を達成するために組み合わせて使用される、シャフトの3つの基本動作がある。
1.アウターシャフトの時計回り方向又は反時計回り方向の回転
2.アウターシャフトの直線移動
3.インナーシャフトの直線移動
【0109】
図14A〜14Fは、二方向搬送システムの末端解放ステント展開を示す。簡単にするため、展開シーケンスとハンドル1300の使用は、図1A〜1Dで説明したステント展開に類似のシーケンスに従う。本シーケンスにおいて、末端コネクタが予め接続され、ロックされ、係合された状態から、カップリング機構の分離を詳細に説明する。セレクタスイッチ1310、ノブ1312、及びトルク部1305が図にそれぞれ示されている。末端解放用搬送システムを作動して末端コネクタを分離するためのハンドル1300の要素について説明する。雌コネクタは図10Iのコネクタ1026bの実施例で、それらの符号が付されている。図14Aは、連結機構124,122を囲む領域の2つの拡大部1,2を含む。拡大部1,2により、ハンドル部品の様々な動きに対するコネクタの動作が理解できる。
【0110】
図14Aにおいて、すべての要素が中立位置又開始位置にあり、ピン1042は雌コネクタ1026bのスロット1028bの受け部(すなわち、端部1034b)にある。図14Bにおいて、セレクタスイッチ1310のノブ1312は、末端解放が行えるように末端位置に付勢される。図14Cにおいて、トルク部1305は、矢印で示すように、時計回り方向に回転される。図14Cのインサート1に示すように、ピン1042は受け部1034bから横方向部1032bを介して移動する。横方向部1302bと長手方向部1030bの間の移行部にピン1042が収まると、トルク部1305の回転が終了する。スロットの屈曲部にピン1042が入ると末端コネクタ124が分離し、基端コネクタ122(黒で示す。)は連結状態を維持する。
【0111】
図14Dにおいて、末端スライダ1306は、アウターシャフト114と共に基端側に移動する。シャトルシース120は基端コネクタ122を介してアウターシャフト114に連結され且つ末端コネクタ124を介してノーズコーン126に連結されていないので、シャトルシース120もまた基端側に移動する。図14Dのインサート1に示すように、末端コネクタ124のピン1042は、雌コネクタ1026bのスロット1028bの長手方向部1030bから出る。図10F〜10Mについて説明したように、一つ又は複数のピン1042が雄コネクタに連結されるか又はそこに形成される。代わりに、ピン1042で接続することも可能である。ピン1042はコネクタの一部になり得る。または、一つ又は複数のピン1042を他の部材(例えば、ノーズコーン又はシャフト)に一体化してもよい。図14の実施例では、ピン1042は、ミドルシャフト108に接続されるか、又はそれから形成される。
【0112】
図14Eにおいて、末端スライダ1306、ハブ118を引き続いて基端側に移動すると、ステント128がシャトルシース120から部分的に展開する。図14Fにおいて、末端スライダ1305、ハブ118が基端側に完全に移動すると、ステント128がシャトルシース120から完全に展開する。
【0113】
図14A〜14Fが図1A〜1Dに関してステントの搬送を説明しているように、図15A〜15Fが図2A〜2Dの展開シーケンスに関して二方向搬送システムの基端解放ステント展開を示している。拡大したインサート1,2はまた、ピンと部品の動きの詳細を示すために使用されている。このシーケンスにおいて、基端コネクタが予め接続され、ロックされ、係合された状態から、カップリング機構の分離を詳細に説明する。
【0114】
図15Aにおいて、すべての要素が中立位置又は開始位置にあり、図14Aと同じように、また、インサート1,2に示すように、コネクタ124,122aのピン1042が雌コネクタ1026bのスロット1028bの受け部(端部1034b)にある。図15Bにおいて、セレクタスイッチ1310のノブ1312が基端位置に押されて基端解放が可能になる。図15Cにおいて、トルク部1305が反時計回り方向に回転され(矢印で示す)、基端コネクタ122のピン1042が受け部1034bから、末端雌コネクタ1026bのスロット1028bの横方向部1032bを介して移動する。トルク部の端部で、ピン1042がスロット1028bの横方向部1032bと長手方向部1030bの間の移行部に収まる。ピン1042がスロット1028bの屈曲部に位置すると、基端コネクタ122が分離し(白で示す)、末端コネクタ1241が連結した状態に留まる(黒で示す)。図15Dにおいて、基端スライダ(図示しないが、インナーハブ106に連結されている)は、インナーシャフト104に沿って末端側に移動する。インナーシャフト104がノーズコーン126に取り付けられ、ノーズコーン126が静止してロックされた末端コネクタ124を介してシャトルシース120に連結され、さらに、シャトルシースがアウターシャフト108に解放された末端部を介して分離されているので、シャトルシース120もまた末端側に移動する。基端コネクタ122のピン1042が移動し、末端雌コネクタ1026bのスロット1028bの長手方向部1030bから出る。図15Eにおいて、引き続いて基端側スライダ/ハブ106が基端側に移動すると、ステント128がシャトルシース120から部分的に展開する。図15Fにおいて、基端スライダ/ハブ106が完全に末端側に移動すると、ステント128がシャトルシース120から完全に展開する。
【0115】
図6A〜6Cは、上述のような二方向ステント搬送システムで血管を治療する方法を示す。図6Aにおいて、搬送カテーテルは、血管内部を目標治療位置に前進される。この実施例において、治療位置は、周囲の血管、骨、又はその他の解剖学的構造によって圧縮された、静脈の狭窄領域Sである。搬送カテーテルは、インナーシャフト602,ミドルシャフト604,アウターシャフト606、シャトルシース610,基端ロック608,末端ロック612,及びノーズコーン614を有する。図面を明瞭にするため、シャフト上の基端ハブ等のその他の構成は省略されている。基端ロック608はロック位置に示されている(暗色長方形で示す)。一方、末端ロックは非ロック状態で示されている(白抜き長方形で示す。)カテーテルが目的の治療部位に前進されると、アウターシャフトが基端側に後退され、それによりシャトルシース610が基端側に後退する。ステント616は、径方向に完全に拡張するまで図6Bに示すように基端側に向けて自分自身で拡張し、図6Cに示すように血管壁に係合して圧縮によって生じた狭窄を和らげる。次に、搬送カテーテルは患者から取り除かれる。この方法では、上述の他の形態と同様に、搬送カテーテルは、血管内に経皮的に導入され、ガイドワイヤ(0.035インチのガイドワイヤ等)に沿って経管的に前進される。代わりに、カテーテルは、外科的な切開部を通じて導入してもよい。
【0116】
図7A〜7Cは、上述の二方向ステント搬送システムを用いて血管を治療する他の方法を示す。図7Aにおいて、搬送カテーテルは、血管V内の目的治療部位に前進される。この実施例では、治療部位は周囲の血管、骨、又はその他の解剖学的構造からの圧縮によって生じた、血管の狭窄領域Sである。搬送カテーテルは、インナーシャフト702,ミドルシャフト704,アウターシャフト706,シャトルシース710、基端ロック708、末端ロック712、及びノーズコーン614を含む。図面を明瞭にするために、搬送カテーテルの他の部分(基端ハブ等)は省略されている。基端ロック708は非ロック状態で示されており(白抜き長方形)、末端ロック712はロック状態で示されている(暗い長方形で示す)。カテーテルが目的の治療部位に前進すると、インナーシャフトが末端側に進み、これにより、シャトルシース710が進む。ステント716が規制から解除され、径方向に拡張された形状まで完全に拡大するまで、末端側に向けて自分自身で拡張し、血管壁に係合し、図7Cに示すように圧縮で生じた狭窄を和らげる。その後、搬送カテーテルは患者から取り除かれる。
【0117】
図8A〜8Bは、静脈狭窄の治療として血管にステントを配置することを示す。静脈狭窄は、凝血、血液の凝固に続く瘢痕化、又は静脈血管(鼠径靱帯と交差する大腿静脈又は骨盤動脈が重なって交差する骨盤静脈など)上に加わる外部からの局部的な圧縮力によって生じる。一つ又は複数のステントは、上述の実施例で説明したものを用いて、静脈に送り込まれる。図8A〜8Bは、外部の圧縮力を受けている静脈を示す。図8Aにおいて、右総腸骨動脈RCIAは左総腸骨動脈LCIAに載っている。脊椎SPが両血管RCIA、LCIAの後ろに位置しており、したがって、左総腸骨動脈LCIAが右総腸骨動脈RCIAと脊椎SPの間に挟まれている。図8Aは、図8Aの断面を示しており、左総腸骨動脈LCIAの挟まれた部分が強調されている。静脈が挟まれていることにより、静脈流が阻害される。腸骨静脈の静脈流障害、下肢の共通流出路が深刻な臨床症状を生み出す。腸骨静脈の障害は血栓形成、動脈樹の重なりと脊椎からの圧力に起因する外部圧縮に原因がある。静脈流障害は臨床的には慢性静脈疾患に大きな影響を与える。複合静脈還流障害は、静脈性高血圧、及び腫れ、変色、跛行、潰瘍などの静脈疾患に関連する深刻な症状を招く。
【0118】
治療は、伝統的には外科バイパス手術によるものである。しかし、過去十年間、経皮静脈内ステント手術が、慢性静脈疾患による静脈流障害の治療における一つの選択方法として出現してきた。しかし、この治療に対してFDAの承認を受けたステント又は搬送システムは存在しない。したがって、そのような使用はFDA認可外の使用と考えられる。ステントを配置することは有効なことと認められており、血管のステント手術は狭窄を緩和し、血流を通常にするものである。一つ又は複数のステントを血管内に配置できる。複数のステントを展開する場合、ステントは端部と端部を対向させた状態で配置されるか、又は、互に重ね合わされる。図9では、2つのステント901,902は領域903を有し、そこでは2つのステントが互いに重なっている。この実施例では、ステント902は径方向に拡張しており、そのステントの一部が他方のステント901の中で拡張している。ステントを重ねることは、米国特許出願第12/903,056号で詳細に説明されている。この実施例のステント又は本願で説明したステントは治療薬(例えば、ヘパリンなどの抗血栓性剤、血栓溶解{けっせん ようかい}剤、血栓を減少させるその他の治療剤、その他の治療剤)を含むことができる。
【0119】
本願で説明するすべての方法において、血管内又は目的治療部位で一つ又は複数のステントが展開された後、それらのステントは該ステントを組織に留めて拡張径を最大にするためにバルーンカテーテルで広げることができる。これは、別のバルーン拡張用カテーテルで行うことができる、又は、本願で説明する搬送システムの実施例にその他の拡張可能な部材を含めることができる。ステントの配置と拡張は、血管内超音波(IVUS)を使って確認できる。IVUSカテーテルは、別のカテーテルでもよいし、本発明の搬送システムに一体化してもよい。いくつかの実施例では、IVUSプローブが標準ガイドワイヤ(0.035インチガイドワイヤ)に一体化され、従来のガイドワイヤがIVUSガイドワイヤに置換される。
【0120】
複数の実施例について容易に理解できるように詳細に説明したが、当業者には種々の改変が可能であることが明らかである。ここで説明した種々の特徴は互いに組み合わせてもよいし、別のものに代えてもよい。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図10L
図10M
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F