【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1) 油槽と、油槽の中間部にヒーターを設け、ヒーターから上部を高温油槽、それより下部を低温油槽とするフライヤーであって、低温油槽は冷却槽及び/又は冷却管を有し、低温油槽の下部は傾斜及び低温領域を有することを特徴とする第一の構成のフライヤー。
2)前記第一の構成のフライヤーであって、低温領域より揚げカスや水分を排出するための配管及び/又は弁又は栓を有することを特徴とする第二の構成のフライヤー。
3)前記第一又は第二の構成のフライヤーであって、ヒーター下端から3mm以上下方の低温油槽内に、油槽の水平断面積に対する開口率が20〜80%となる空隙を有する構造体を設けたことを特徴とする第三の構成のフライヤー。
4)油槽の中間部にヒーターを設け、ヒーターより上部の高温油槽において調理中に、ヒーターより下部の低温油槽内の油を間接的に水と接触させることにより、低温領域の油温を80℃以下とし、揚げカスや水分を低温領域に沈殿させ、油とともに連続又は間欠に排出するか、又は調理終了まで貯留させることを特徴とする揚げ調理方法。
である。
【0008】
本発明の油槽は、通常の場合防錆性能、加工の容易さからステンレス製であるが、鉄、銅、アルミ及びそれらを含む合金、セラミック又は耐熱樹脂であっても良く、高温油槽には熱伝導率が低く耐熱性の高いセラミック又はステンレスを使用し、低温油槽には熱伝導率の高い銅又はアルミを使用する等の組み合わせでも良い。
油槽は構造体によって所定の位置に固定されており、この構造体は骨格構造を有し、周囲を箱状の筐体で覆い、前面部分には扉を持つ構造がよい。ただし骨格構造を持たず、筐体及び油槽によって強度を保持することもあり、骨格構造も筐体もなく、油槽自体を構造体の主要部分とし、油槽自体にヒーター、脚部及び温度表示盤等の支持構造を設けてもよい。構造体の材料も通常ステンレスであるが、油槽と同様に他の材料であっても良い。
【0009】
油槽の容積及び調理に使用する油量に制限はないが、本発明を適用した自立型フライヤーであれば油量18〜50リットルが好ましく、本発明を卓上用フライヤーに適応する場合には0.5〜10リットルが好ましく、このうち家庭用では1〜2リットルが好ましい。
また調理対象である食材を、高温油槽の中で、ベルト、チェーン、ローラー又は歯車を利用して搬送するか、油中の食材を仕切り板等によって移動する方法によって、連続的に調理を行うフライヤーに適用することも可能であり、この場合には複数の構造体で一つの油槽を固定することや、調理の工程において複数の油槽にわたって移動させることもある。なお、すべてのフライヤーにおいて、一つの構造体が複数の油槽及び低温領域を持っていても良く、一つの油槽の下部が複数の低温領域に分岐していても良く、複数の油槽に対して一つ低温領域であっても良い。
【0010】
ヒーターの加熱方式は、形状の自由度が高いことからステンレス等の金属管に収めた電熱線式が適しているが、ガス燃焼管式やIH式等によっても可能であり、限定するものではない。
ヒーターの発熱量については主として高温油槽の油量及び面積との関係で決定するが、一般フライヤーであれば、好ましくは200V以上の三相電源を使用し、卓上用フライヤーであれば好ましくは200V以上の単相電源を使用し、消費電力は高温油槽内の油量(単位はリットル)×0.4〜0.5kWとするのが好ましく、ヒーター加熱部の表面積あたりの消費電力は、2.5〜3W/cm
2とするのが好ましい。
ヒーター加熱部表面積あたりの消費電力がこれ以上であるとヒーターが過熱しやすく、過熱したヒーターとの接触によって油が劣化し、場合によっては油煙を生じ、これ以下であればヒーター間の空隙が狭くなって揚げカスが通過しにくくなり好ましくない。
【0011】
調理を行う高温油槽の油の深さは、大量調理を行う自立型フライヤーにおいては60〜80mmが好ましく、卓上用においては30〜70mmが好ましく、このうち家庭用においては30〜50mmが好ましい。この理由は、これより深いと水分が低温油槽に達することなく気化する比率が上昇してしまい、これより浅いと調理対象を投入した際に、調理対象がフライヤーの構造にぶつかって損傷することや、調理対象がヒーターに近すぎて部分的に炭化するなどの問題が生ずる可能性があり好ましくない。
【0012】
低温油槽の一部である油槽底部は、揚げカスや水分が低温領域に滑落・集積するように1〜70度、好ましくは25〜45度の傾斜を設ける。この傾斜は急である方が集積には適するが、急すぎると製品の高さの制約から各構成要素の配置が困難となる。
またヒーターから上部の高温油槽の油の容積に対する低温油槽の容積は40〜80%が好ましく、これより少ないと低温油槽の温度は上昇しやすく、これより多いと油の使用量が増加して経済性が損なわれるので好ましくない。
【0013】
低温領域は低温油槽の一部であって最深部を含み、最上部の水平断面積は高温油槽最下部の水平断面積に対し少なくとも50%以上、好ましくは80%以上であり、ヒーターの下端から低温領域の最上部までの距離は、自立型であれば25〜60mm、卓上型であれば15〜50mm、このうち家庭用であれば15〜40mmが好ましい。この理由は、上記より狭い場合、また距離が長い場合は、高温油槽から落下してきた水分の多くは80℃以上の温度の領域で気化してしまい、揚カスも対流によって浮遊を繰り返す確率が高まり、従って沈殿に適さないことにある。また、近すぎると大きな冷却能力を必要とし、エネルギー効率が低下するので好ましくない。
また、容積においては低温油槽の容積に対し25〜75%、好ましくは40〜60%とするのが良いが、この理由は、これ以下であれば低温領域の温度は容易に上昇しやすくなって不安定となり、これ以上にすれば油量が増加するか又は強力な冷却を必要とし、経済性が低下するので好ましくない。
【0014】
また低温領域の形状は、油槽壁面及び底部斜面、又は底部斜面のみによって構成される場合もあるが、底部斜面からさらに窪みを形成し、窪み形状を含んだ低温領域とする方法は、流動性を低下させるので、揚げカスや水分の沈殿及び貯留に適して好ましい。
さらに、低温領域上部の水平断面積は広く、それより下部の中間部が狭く、さらに下部において再び広い構造は、流動性がさらに低く熱源からも隔離されるのでさらに貯留に適していて好ましい。一方窪み又はその一分を低温油槽とする方法は、最上部の面積等、先に上げた条件を満たしにくく、好ましくない。
なお窪みを含め、油槽下部は排出及び洗浄に適するように、角は局面を持つように加工するのが好ましく、形状は円筒状又は円錐状とするなど角の少ない形状が好ましい。
【0015】
次に、冷却槽及び/又は冷却管を設けこれにより低温油槽を冷却する方法について説明する。目的とするところは、冷却することで低温油槽の下部を揚げカスや水分が沈殿しやすく、水分が気化しにくい状態に保つことにある。このためには低温領域の温度を80℃以下に保つ必要があり、具体的には、低温油槽の全部又は主要部分を覆う熱媒体の槽を設ける構成は有効であり、熱媒体としては例えば水、油等が使用可能で、熱媒体として水を用いる場合について以下に説明する。
【0016】
低温油槽を水槽で覆い、水槽には水道水など冷水の注入を行う注水管と、注水開閉装置と、前記水槽最上部に空気抜きを兼ね、温度上昇した水槽上部の水を注入する水により押し出して排出するための、オーバーフロー排水管を備えた構成とすることは有効である。この際水槽の容積は油量に対して100〜200%であれば好ましいが、それ以下であれば注水を連続させることによって必要な冷却力を確保する。
水は温度上昇する際に吸収するエネルギー量が多いので、比較的少量の調理に対しては水槽内に貯留された水が熱量を吸収して低温油槽の温度上昇を防ぎ、連続的に大量調理を行うなどして水温が上昇した場合には、水道水等の冷水を開閉装置の操作により注水管から注入することで水槽の温度を低下させ、さらに必要であれば注水を連続させ及び/又は単位時間あたりの注水量を増加させることで、低温油槽の油を沈殿に適した流動性の低い状態の温度に保つことが可能となる。
なお水道水など冷水の温度は15〜25℃が好ましく、その理由はこれ以下であると結露が発生しやすく、これ以上では冷却力が低下することによる。また、配管等の詰まりを防ぐために軟水が好ましい。
【0017】
また調理を行ったあとに高温油槽の温度を保ちながら待機した場合や、散発的に調理を行なう状態であれば、注水を行わなくても筐体内外への放熱により水槽の温度は徐々に低下し、無駄に冷却水を使用する必要もない。また注水した際に温度の高くなった最上部の水から優先的に排出されるので効率的で、水槽の熱エネルギー吸収力により常時注水を必要とはせず、高い冷却能力にもかかわらず低コストの調理運用を可能にする。
さらにオーバーフロー排出管は水槽の最上部に位置しており、注入した冷水に気泡が含まれていた場合や水分が気化して気泡が発生した場合も、速やかに排出される効果がある。以上の水槽構造以外にも、低温油槽の内部又は外部に冷却管をめぐらせて流水によって冷却する方法も有効であり、これらと水槽構造との組み合わせによる方法も有効である。
【0018】
このほか、熱媒体による冷却管を筐体外周部との間でめぐらせ、低温油槽で加熱されたことで発生する浮力による上昇力と、空冷によって比重が上昇して発生する下降する力を利用して循環させる方法や、循環をポンプやスクリューによって強制的に行う方法、また冷凍サイクルを用いて冷却する方法も有効である。なお、冷凍サイクルにおいてはアンモニア・炭化水素・二酸化炭素等を使用する蒸気圧縮式が好ましいが、空気冷凍式、蒸気噴射式、吸収式、吸着冷凍式等、他の方式であっても良い。
以上のようないずれの方法であっても、低油槽から熱を奪い、その熱を外部に移動するものであって、それぞれの製品構成において採用される冷却方法は、低温油槽の低温領域の温度を80℃以下、好ましくは70℃以下に保つ冷却能力を有するものである。ただし過度に低い温度は沈殿には適しても、より大きな冷却能力を必要とし経済性を損なう可能性があるので好ましくない。
これらの温度を管理する方法として、低温領域の最上部に温度センサーを設ける方法は好ましいが、この他にも低温油槽内の別の地点又は冷却槽に温度センサーを設ける方法も可能であり、これらの場合には、設けるセンサー位置の油温又は水温と、低温領域の最上部の温度との相関関係を十分に把握したうえで、温度管理を行う必要がある。
【0019】
次に本発明の第一の構成による効果について説明する。高温油槽内の油を加熱して調理を行えば、室温と同程度であった低温油槽内の油の温度も次第に上昇するが、本発明による構成では低温油槽は冷却槽及び/又は冷却管を有しており、これによって低温油槽の低温領域の油の温度を80℃好ましくは70℃以下に保つことが可能で、低温領域は沈殿に適した流動性の低い状態に保たれる。この結果、上部から落下して流動性の低い状態の油に達した揚げカスはさらに落下し、傾斜部分においては滑落して沈殿・集積する。揚げカスはその後排出されるまで、又は調理を終了するまで温度の低い状態で低温領域に貯留される。
【0020】
また本発明による構成においても、水分のうち質量の小さな状態のものは気化してしまうが、より質量が大きい状態の水分は対流等により激しく移動しながらも比重差によって落下して100℃地点を通過し、さらに流動性の低い80℃以下の低温領域まで落下して沈殿し、排出されるまで、又は調理を終了するまで温度の低い状態で貯留され、低温の油及び揚げカスとともに排出することが可能となる。
これらの結果揚げカスは炭化の進行やこれに伴う油の劣化もなく、高温油槽に浮遊して食材に付着することもなく、油はねや水蒸気及びオイルミストは減少し、厨房内の環境は改善し、清掃の負担を軽減し、筐体内の汚れも減少し、温度が低い低温油槽内の低温領域では油が劣化することはなく、高温油槽内においても、高温の油が水又は気化した水分と接触する機会が減少することで油の劣化は抑制され、揚げ物の風味が向上する効果を生み、作業は安全で揚げカスが自然発火することも油煙を発することもない。
【0021】
本発明による、配管及び/又は弁又は栓を有する第二の構成について以下に説明するが、このうちまず、栓を設ける構造と、配管及び栓を設ける構成について説明する。
ここで用いる栓とは回転させて開閉を行うかバネによって圧着と解放を行う蓋であって、多くはステンレス製であり、漏れを防ぐためにフッ素系ゴム等の耐熱ゴム又は膨張黒鉛その他のシール材によるオーリング又はシートが設けられている。
栓による方法であれば、低温油槽の低温領域に直接排出口を設けることも可能であり、しかも詰まりにくい排出口が必要であれば、最大は低温領域の底部の面積に近い大きさが可能であり、空間的に余裕のない場合においても設けることができる。
【0022】
栓による排出口は直接下向きに設ける場合もあるが、配管によって作業がしやすい方向及び地点に誘導した上で設ける場合もあり、配管機能と貯留機能を併せ持った形状の低温領域としたうえで水平に近い方向に向かって排出するように栓を設ける場合もある。この例としては、内径15〜60mmの管を低温領域の最深部に下向きに設け、すぐに70〜89度の範囲で湾曲させ、回転により開閉する栓を設けたところまでを低温油槽の一部として利用する形状である。なお、バネによって圧着と解放を行う栓であれば円形である必要はなく、管を扁平にすることや角型にすることも可能である。ただし栓による方法は、一度解放すると排出中にこれを止めることは困難であり、調理終了後に油が冷えてから排出を行う。
【0023】
次に配管及び弁を設ける方法について説明する。主に業務使用により連続的に大量の揚げカス及び水分が生じる調理においては、放置すれば低温領域から溢れてヒーターに接近して危険なので、調理中にこれを除去する必要がある。
具体的には、低温領域の最深部にメインドレインを兼ねた排出管を設ける方法が最も一般的であり、メインドレインとは別に、メインドレインの上方に揚げカスや水分を含んだ油を上向きに吸い込むように排出管を設ける構成も有効である。これらの排出管は随時開閉できる弁を有しており、弁は手動でも電動でも良い。
【0024】
最後に配管による方法について説明する。メインドレインとは別に排出用の配管を低温領域に設け、この配管に、螺旋状の歯を持つスクリューを回転させて搬送するスクリューポンプや、二つの回転する歯車で搬送するギアポンプ、チューブ式ポンプなど、流動性の低い流体及び固形物である揚げカスも搬送可能なポンプを設け、吸引して排出を行う方法は、排出先の位置、特に高さを自由に選択できるので好ましい。また、この方法は排出速度及び排出量の調整が容易であり、従って連続して排出を行うことも可能で、排出に伴う調理面の変動を小さくできる点でも好ましい。またサイフォンによる方法も有効である。さらに、このようなポンプによって揚げカスと水分を含んだ油を吸引するか、吸引及び押し上げて調理面より高い位置で排出し、重力によって落下させながら揚げカスを除去し、水分を分離し、その後に油を油槽に戻す方法は有効である。
また、弁及び/又はポンプを電動とした上で、タイマー情報やセンサー情報により排出を自動化することも有効であり、同様に温度センサーの情報に基づいて冷却の実行と停止、及び/又は強弱調節によって低温油槽の温度制御を自動化することも有効である。
【0025】
第二の構成による効果について説明する。上記のように、栓又は配管と栓を設ける方法によれば、調理終了後に油が冷えてから排出を行うことが前提であるが、貯留されていた揚げカスや水分を外部に回収することが可能であり、作業は安全で、回収した揚げカスが空気に触れて自然発火することもない。
また配管及び弁、又は配管を有する方法を用い、調理中に、排出による調理面の変動が小さくなるように連続又は間欠に排出を行えば、調理の中断も必要とせず、揚げカスや水分を低温の状態で外部に回収することが可能であり、作業は安全で、低温で回収した揚げカスは自然発火することもない。
【0026】
以下、本発明による第三の構成である空隙を有する構造体について説明する。当構造体の形状は、油槽の水平断面を覆い、四方の油槽壁面との間に膨張に備える隙間を設けており、0.3〜10mmの板状の構造に多数の穴を開けたものや、その穴の上部に皿状の傾斜を設けたもの、また穴ではなくスリットを設けたもの、二等辺の三角柱を二等辺の頂点を稜線として隙間をおいて水平に並べる方法や、同様の山型の傾斜形状を板によって成型する方法、碁盤状の互いに隣り合う升目を1升おきに空隙とし、空隙でない部分はピラミッド状の傾斜構造とするものなどがある。
空隙の大きさは2〜20mmの円形や1〜20mmのスリットを多く用いるが、一般的な大きさのパン粉を使用する調理においては8〜10mmの円形や5〜8mmのスリットが好ましく、空隙でない部分は空隙に向かって傾斜していることが好ましい。
また、水平断面積に対する流路面積の開口率は20〜80%、好ましくは40〜60%であり、これより開口率が低いと対流の抑止効果が小さく、逆に高いと揚げカスや水分が通過しにくくなる。なお当構造体に用いる素材は厚さが0.3〜2mmのステンレス板でも良いが、1〜10mmのフッ素系樹脂やセラミック等、熱伝導率の低いものが好ましい。
【0027】
空隙を有する構造体を設けた第三の構成によれば、揚げカス及び水分は比重差によって油中を落下し、当構造体の空隙を通過しさらに落下して低温領域に沈殿する。一方、食材の大量投入時又は調理作業者が攪拌を行った場合の揺動や、水分の多い食材を投入した場合に顕著である猛烈な上昇流と下降流に対し、当構造体は障害として働きこれを抑制するので、これより下部の油の温度は上昇しにくく、必要な冷却能力は低くて済む。
また当構造体とヒーターの間に3〜60mm、好ましくは5〜30mmの距離を置いて設置するが、これにより対流の流動性が確保されて高温油槽の油は加熱されやすい一方、流動性の不足によるヒーターの過熱や、輻射熱による当構造体の温度上昇、また低温油槽内の温度上昇が避けられ、本発明による第一又は第二の構成によるフライヤーの効果を助長する効果をもたらす。
【0028】
以下では、本発明と併用することで効果を助長するその他の構成について説明する。
本発明の構成によるフライヤーでは、低温油槽は冷却槽及び/又は冷却管によって低温に保たれており、従って一般フライヤーのように煙突効果によって冷却を行う必要はない。このため筐体内の空間を低温油槽上部の位置で遮断することが可能となり、その結果筐体上部の高熱を利用した煙突効果による厨房内空気の吸引はなくなり、油煙やオイルミストなどによる筐体内部の汚れは激減し、日常の清掃作業を容易にし、厨房内に放出する排熱量を減少させ、従ってフライヤーの熱効率は向上し、厨房等の空調に必要とするエネルギー量を減少させる効果をもたらす。
また、遮断された上部の空間を耐熱断熱材で満たすか、その一部又は全部を真空構造とするか、同空間が接する各面を耐熱断熱材で覆えば、上記の効果をさらに高め、作業者がフライヤーから受ける輻射熱も大幅に減少する。
【0029】
また、前記の低温油槽を水槽で覆った構成において、筐体内部の空間を低温油槽上部の位置を含め、水槽によって遮断する構成は有効である。この結果、水槽の外周面が筐体外部に露出する構造が可能となり、水槽容積の拡大をもたらし、また外周面から空冷される構造となり、これによって注水を必要とする機会を減少させることや、水槽を扁平にして筐体内下部の自由度を向上させることが可能となる。
また大電力によって加熱するフライヤーにおいて顕著であるが、電源制御のためのリレーや制御基板は高熱を発するので、水槽がこれらの冷却機能を兼ねる構成とすれば、冷却能力も高いうえに追加的コストも軽微となり、空冷の場合のようにこれらの部品の近傍に汚れが集積することもない。
【0030】
調理油面より高い位置に固定式又は着脱式の油供給ホッパーを設け、このホッパーと低温油槽を油供給管で繋ぎ、固定式においては油供給ホッパーと油供給管を、着脱式においては油供給管を耐熱断熱材により覆うこと、また樹脂等、熱伝導率の低い素材により構成することも有効である。
この結果、本発明によるフライヤーから排出した油から揚げカス及び水分を除去した油を、又は調理による減少を補うために別途追加する油を、油供給ホッパーを経由して調理中に給油しても低温油槽の油温を上昇させることはなく、高温油槽の油温を低下させることも無駄な再加熱の必要もなく、エネルギー効率を改善する効果をもたらす。
また油供給ホッパーを経由して給油を行えば、万一供給する油に水分が含まれていても高温の油と直接接することはなく、水分は加熱されることなく低温油槽に達し落下して沈殿するので、油はねを引き起こすことも油の劣化を引き起こすこともない。このため長時間にわたる連続的な調理においても、本発明の効果を助長して劣化の少ない油による調理を継続でき、供給する油を油供給ホッパーに投入しその直後に排出を行えば、排出による調理面の変動を抑える効果も発揮する。
このほか、低温領域を含め低温油槽の底部の傾斜角が小さい場合に、揚げカス及び水分の滑落を促進するために振動用モーターを設ける方法も有効である。
【0031】
なお低温領域の容積を、想定する揚げカス及び水分の発生量以上に大きくすれば、調理の終了まで揚げカスを排出する必要はなく、低温領域に排出口を設けない構成が可能であり、油量が10リットル以下、好ましくは5リットル以下のフライヤーに適している。
具体的には、低温油槽の傾斜面に、低温領域の一部である貯留部を設け、貯留部は上部より下部が膨らんでおり、膨らみは一方向にのみ偏っており、膨らみのある方向とその反対側の油槽上部には、油槽を傾けて油を外部に注げるように注ぎ口を設けている。
調理が終了し油が冷えた後に、従って揚げカスや水分が貯留部に十分沈殿した状態で、膨らみのある方向とは逆の油槽の端をゆっくりと最大90度になるまで持ち上げることによって、揚げカスや水分が除去された油を油槽の外部に注ぎ、取り出すことができる。
貯留部には揚げカスと水分及び油が残るので、今度は反対方向にゆっくり傾ければ、これらを外部の容器に取り出すことができ、この際ステンレス等によるメッシュ及び/又は濾紙又はペーパータオル等を通過させて揚げカスを除去すれば、水と油は容器内で徐々に分離し、再利用に適した油を回収することができる。
【0032】
以下は本発明による揚げ調理方法に関する説明である。
一般的にほとんどの揚げ調理は165〜190℃の範囲で行われるが、低温で長時間かけて行う調理では100℃に近い低い温度とする場合もあり、高温で仕上げることで食感を高める調理では短時間であるが200℃を超える温度で調理を行うこともある。これらを含めて100〜210℃での揚げ調理を行う場合に、底部から加熱する方法で行えば、水分は逃げ場がないので全量が気化してしまい、同じく逃げ場のない揚げカスの炭化も進む。また一般フライヤーを用いた調理では、調理開始当初は低温油槽の温度は低く揚げカスや水分は沈殿可能であるが、大量の調理を行う場合や長時間に及ぶ調理では低温油槽の油温も上昇してしまい、この結果水分のほとんどが気化し揚げカスの炭化も進行することとなり、炭化した揚げカスが食材に付着することもある。
【0033】
これに対して本発明による揚げ調理方法では、少なくともヒーターより下部の、低温油槽内の下部である低温領域の油温を80℃以下に保つので、揚げカスや水分は常に沈殿しやすく、揚げカスの炭化もほとんど進行しない。もしこれ以上の温度であると流動性が高くなって沈殿しにくいうえ水分が気化する可能性も高まり、100℃以上であれば水分は確実に気化する。なお低温領域の油温を80℃以下としたが、これは低温領域の最上部でも80℃以下であることを意味し、油は上部の温度が高く下部は低いので、低温領域の下部はさらに温度が低い。また80℃以下とした低温領域の油温は、好ましくは70℃以下であり、これによって揚げカス及び水分はより沈殿しやすく、より長時間の貯留によっても炭化は進行しにくく、気化による気泡もさらに減少する。
【0034】
揚げカスを多く発生させる調理においては、沈殿した揚げカス及び水分を調理中に油とともに間欠で排出することにより、調理面の変動によって調理を中断することもなく、排出で減少した量に相当する油を油槽に供給すれば、調理を継続することができる。この際排出による変動幅は好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下であり、1回に許容される排出量は、油槽の水平断面積に上記の変動幅を乗じたものとなる。
なおポンプを用いて排出を行なう場合等においては、時間当たりの排出量を少なくして連続的に排出を行なっても良い。
これに対して揚げカス及び水分の発生量が少ない調理においては、排出における時間当たりの排出量を減少させるか排出の間隔を長くするが、調理中は揚げカスや水分の排出を行わず低温領域に貯留し、調理終了後に、高温油槽の温度も低下したことを確認したうえで排出又は除去作業を行う方法も可能である。
【0035】
これらの結果、炭化した揚げカスが食材に付着して風味を損なうことはなく、炭化した揚げカスが排出時の流動性を阻害することもなく、揚げカスの回収は低温で行われるので作業は安全で、回収した揚げカスが空気に触れて自然発火することもなく、水分の一部が外部に回収されるので油はねや水蒸気量、オイルミストや排熱量も減少して厨房内の環境は改善し、清掃の負担も軽減することとなり、さらに筐体内部が汚れにくいため故障は少なく、高温の油が水分と接触する機会が減少して油の劣化も抑制されるので風味が向上し、油の使用回数又は期間が増して油の消費量も減少可能となる。