特許第5901632号(P5901632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5901632-転がり軸受用のシールアセンブリ 図000002
  • 特許5901632-転がり軸受用のシールアセンブリ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901632
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】転がり軸受用のシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20160331BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20160331BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20160331BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F16C33/78 Z
   F16C33/80
   F16J15/32 311P
   F16J15/447
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-524385(P2013-524385)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公表番号】特表2013-534301(P2013-534301A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011058883
(87)【国際公開番号】WO2012019803
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】102010034385.4
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヘップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム ヴァルター
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053893(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/008898(WO,A1)
【文献】 特開2010−043670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 33/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受を、第1の軸受部材(32)と第2の軸受部材(31)との間においてシールするシールアセンブリであって、
前記両軸受部材(31,32)は、互いに相対的に回動可能であり、共通の回動軸線に対して、軸線方向の中間室(61)及び半径方向の中間室(60)を形成し、
前記シールアセンブリは、
−当接部材(24)であって、固定用の、中空円筒状の固定部分(37)、及び前記第2の軸受部材(31)に前記当接部材(24)を位置決めする環状の当接部分(43)を備える当接部材(24)と、
−第1の軸線方向のシールリップ(29)及び/又は半径方向のシールリップ(36)を形成する弾性的な部材(23)を備える、前記第1の軸受部材(32)に固定可能な支持体(39)と、
を有するシールアセンブリにおいて、
前記当接部材(24)は、第2の軸受部材(31)の半径方向に延在する部分と共に第1の受け溝(22)を形成するように設けられていて、前記当接部材(24)の端部分(34)及び前記弾性的な部材(23)の突設部(26)が、前記第1の受け溝(22)に通じる開口(51)を部分的に画成しており、
前記支持体(39)は、前記第1の軸受部材(32)の外面に固定された固定部分(48)の軸線方向の端部から半径方向内側にある端部にまで一体に延びていることを特徴とする、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の受け溝(22)を形成する、前記当接部材(24)の少なくとも一部分は、ラビリンスシールの一部を形成する、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記当接部材(24)の固定部分(37)、円錐状に形成されている接続部分(38)により、前記当接部材(24)の当接部分(43)に接続されている、請求項1又は2記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記弾性的な部材(23)にシールリング(25)が一体成形されていて、前記シールリング(25)は、前記支持体(39)の固定部分(48)の非摺動シールを形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記弾性的な部材(23)は、前記第1の受け溝(22)を形成する、前記当接部材(24)の少なくとも一部分と共に、ラビリンス形のシールを少なくとも部分的に形成する、請求項1から4までのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記弾性的な部材(23)は、前記第1の受け溝(22)に対して半径方向内側に配置されている第2の受け溝(27)を形成する、請求項からまでのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記突設部(26)は前記第2の受け溝(27)を部分的に半径方向において覆う、請求項記載のシールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、特にホイール軸受を、第1の軸受部材と第2の軸受部材との間においてシールするシールアセンブリであって、両軸受部材は、互いに相対的に回動可能でありかつ共通の回動軸線に対して軸線方向の中間室も半径方向の中間室も形成し、この構成においてシールアセンブリは、
当接部材であって、当接部材は固定用の、好ましくは中空円筒状の固定部分と、第2の軸受部材における当該当接部材の位置決め用の環状の当接部分とを備える当接部材と、
第1の軸線方向のシールリップ及び/又は半径方向のシールリップを形成する弾性的な部材を備えた、第1の軸受部材に固定可能な支持体と、を有するシールアセンブリに関する。
【0002】
先行技術
発明の背景
軸線方向及び半径方向のシールリップの摺動シールコンタクトを備えたシールアセンブリは、典型的には転がり軸受をシールするために使用される。この構成において、シールしたい2つの軸受部材は、半径方向においても軸線方向においても向かい合っていることがある。このような状況は、機械構造における多くの個所、例えば工作機械において軸又は乗用車又はトラック用のホイール軸受においても生じる。
【0003】
特開200356577号公報に記載の構成は、第1の軸受部材である外輪が、第2の軸受部材であるホイールフランジに対してシールされるようになっているホイール軸受である。さらに軸線方向においても半径方向においても、ホイールハブ若しくはホイールフランジに当接していて、軸線方向のシールリップ及び半径方向のシールリップの摺動シールコンタクトに設けられている当接金属薄板が設けられる。この構成において、シールリップは、外輪の半径方向内面に固定されている支持体によって支持される。
【0004】
先行技術のシールアセンブリは、外部からの環境影響がシールリップに直接的に作用することがあるという点で不都合である。この構成において、シールリップの材料(大抵、エラストマ)は極めて迅速に摩耗する。例えば砂及び水といった異物が運び込まれる場合、シールリップをすり減らし、対向面に溝を形成し、ひいてはシールリップの予圧を減じる研磨作用がもたらされる。
【0005】
目的設定
本発明の要約
したがって本発明の目的は、シールリップに基づくシールアセンブリの寿命及びシール性能を、従来のシールアセンブリの公知の特性を失うことなく、高めることができる廉価な手段を提供することである。
【0006】
上記目的は、冒頭で述べた形式のシールアセンブリにより、第2の軸受部材の半径方向に延びている部分と共に第1の受け溝(Fangrinne)を形成するために当接部材が設けられていることにより達成される。この構成において、当接部材の端部分が、第1の受け溝に通じる開口を部分的に画成する。
【0007】
開口は、遠心工程においても水排出時においても、何かしらの異粒子又は水自体をシールアセンブリに侵入させない、ということを保証するために第1の受け溝に通じる。この理由から開口は、ほぼ軸線方向に配向されていて、第2の軸受部材、例えばホイールフランジに対しても軸線方向に相対している。半径方向において開口の接続部は、水及び汚染粒子を受け溝に収容でき、周方向に導出することができる程度に、受け溝の底部から離されている。
【0008】
開口はラビリンスシールの始端であり、このラビリンスシールは、非接触プレシールとして構成されていて、ラビリンスシールの下流に続くシールリップを周辺の影響から保護する。したがってラビリンスシールは、開口から第1の摺動シールコンタクトまで延び、シールアセンブリの種々異なる構成部材によって、とりわけ当接部材により形成される。
【0009】
互いに相対的に回動可能な2つの軸受部材は、例えば固定型の外輪及び回動可能な内側にあるホイールハブであってよいか、又はホイールハブとして設けられているジャーナルに支承されている外輪であってよい。2つの事例の場合、軸受部材の間に、半径方向及び軸線方向の中間室が形成される。
【0010】
好ましくは、当接部材は、固定用の中空円筒状の固定部分と、第2の軸受部材における当接部材の位置決め用の環状の当接部分とを有する。したがって当接部材は、すなわち中空円筒状の固定部分でもって、半径方向に延びる第2の軸受部材の一部分に衝突若しくは当接するまで、第2の軸受部材に装着されることにより、比較的簡単に組み付け可能になる。固定部分は、軸線方向の位置が後々もはや変わらないように、プレス嵌めによって取り付けられるようになっている。この軸線方向の位置の変化は、当接部分がもはや第2の軸受部材に当接しておらず、ひいては汚染粒子が固定部分まで進出し得るので、不都合であるので、当接部材の固定部分の下側のさびによる腐食は、蓋然性が高いものとなってしまう。
【0011】
第1の軸受部材に固定可能な支持体は、第1の軸線方向のシールリップ及び/又は半径方向のシールリップを形成する弾性的な部材を支持する。半径方向及び/又は少なくとも軸線方向のシールリップは当接部材に当接していて、そこで夫々摺動シールコンタクトを形成する。この構成において好ましくは、当接部材は、シールコンタクト部においても、例えばさびない材料といった、安定性の高い材料と見なされる材料から成っていてよい。択一的には、半径方向のシールリップの代わりに、第2の軸線方向のシールリップが設けられていてもよい。
【0012】
第1の受け溝は、第2の軸受部材の半径方向に延びる部分、及び当接部材の半径方向外側にある部分によって形成される。さらに、外側にある部分は、円筒状の区分を有することができ、この区分に続く端部分を有することができる。この構成において、端部分は、端部分によって画成されている開口に水が侵入しないように、実質的に半径方向に延在しているようになっている。
【0013】
好ましくは、第1の受け溝を形成する当接部材の少なくとも一部分は、ラビリンスシールを形成する。当接部材の外側に位置する端部分は、上述の一部分ではあるが、ラビリンスシールを形成する唯一の部分であり続ける必要はない。したがって材料節約型の二重機能が当接部材において達成される。
【0014】
別の有利な構成において、当接部材の固定部分は、好ましくは円錐状に形成された接続部分により、当接部材の当接部分に接続されている。この構成において、接続部分は、場合によっては好適な種々異なる形状を有することができる。いずれにしても、第2の軸受部材の形状を湾曲させて複製する必要があるので、接続部分の当接は好ましくはない。この場合に、円錐形状は好適である。シールアセンブリ、例えばシールリップの他の当接面のために多くの空間を確保したい場合、接続部分の丸味を帯びた形状が提供される。第2の軸受部材に対する当接部材のシール性を高めることができるように、接続部分と、第2の軸受部材との間の中間室はシール質量体によって充填されていてよく、これによりこの個所において、転がり軸受内への湿気の侵入が防がれる。
【0015】
さらに別の有利な構成において、第1の軸受部材を半径方向で取り囲むために当接部材が設けられている。この構成において、第1の軸受部材は、部分的にラビリンスシールを形成する。したがって第1の軸受部材は同様にシールに対する貢献に寄与し、したがって材料を節約することができる。さらに特に小さな軸線方向の中間室を備えた転がり軸受における上記構成は有利である。
【0016】
さらに別の有利な構成において、第1の軸受部材に固定可能なカバー部分は、当接部材の端部分と共に開口を形成する。この開口の半径方向の寸法が、水及び汚染物の侵入を回避するために可能な限り小さいことが理想的である。この構成において、例えば環状ギャップの形式における開口の環形状は、製造時にもたらされる手間が最も小さいので有利である。
【0017】
さらに別の有利な構成において、開口の一部は、弾性的な部材の突設部によって画成され、他の部分は当接部材の端部分によって画成される。突設部及び端部分の両方が一緒になって開口を形成する。したがって構成部品減少という利点がもたらされる。カセットシール(Kassettendichtung)に類似して、当接部材及びシールリングを備えた2つの部材から成るシールアセンブリが実現可能である。その理由は、開口若しくはラビリンス部を形成するために、第1の軸受部材の外面にカバー金属薄板は不要であるからである。その代わりに、例えばエラストマといった弾性的な部材が上記機能を担う。
【0018】
さらに別の有利な構成において、弾性的な部材にシールリングが一体成形されている。この構成において、シールリングは、支持体の固定部分の非摺動シールを形成する。極めて簡単な構成において、シールリングは、例えばOリングとして構成されていてよい。このOリングは、別体の部材として構成されていてよいか、又は素材結合により弾性的な部材に結合されていてよい。
【0019】
弾性的な部材に設けられているシールリングは、支持体の固定部分及び第1の軸受部材が互いに相対的に回転しないので、いわゆる静的なシールを形成する。この構成は、シールリングが第1の軸受部材及び固定部分と共に回動可能であることを排除しない。このことは、例えば特に商用車における使用にも、乗用車における使用にも当てはまることであり、これらの使用においては、第1の軸受部材は、ホイールハブの回動可能な外輪によって形成される。
【0020】
さらに別の有利な構成において、弾性的な部材は、第1の受け溝を形成する、当接部材の少なくとも一部分と共に、ラビリンスシールを少なくとも部分的に形成する。このラビリンスシールは、シールギャップが何度も自身の延在方向を変える非接触シールである。換言すると、ラビリンスシールは、互いに接続されている、種々異なる方向に配向されている複数のギャップから成っている。弾性的な部材の形状及び当接部材の形状は互いに調整されて、ラビリンスシールが、例えば受け溝といった、場合によっては種々異なる受けエレメントでもって形成される。
【0021】
好ましくは、弾性的な部材は、第1の受け溝に対して半径方向内側に配置されている第2の受け溝を形成する。ラビリンスシール内に入り込んだ汚染物又は水は、第2の受け溝に溜めることができ、これと同時に受け溝における周方向の導出により、ラビリンスシールは、第2の受け溝の上流側に位置する環状のギャップを抜け、かつ後続の開口を抜けてラビリンスシールを再び離れることができる点で有利である。第1の受け溝を部分的に形成する当接部材が、均一な上記環状のギャップも部分的に形成し、第2の受け溝を、場合によっては半径方向において覆う、という事実も有利である。
【0022】
好ましくは、突設部は第2の受け溝を部分的に半径方向において覆う。突設部は、実質的に軸線方向に形成されているので、環状のギャップ又は第2の受け溝を半径方向において覆うことが保証されている。同様に、突設部が符号34の端部分も部分的に又は完全に半径方向に覆うと有利である。したがって、開口が実質的に軸線方向に方向付けられていることが保証されている。
【0023】
好ましくは、突設部は、入り込んできた水がラビリンスシールを簡単に再び離れることができるように、円錐状又は類似に成形された内面を、環状のギャップの半径方向外側に配置されている端部に有する。
【0024】
同様に、水が上記突設部において下方に滴ることができるか、若しくは上方からシールアセンブリに落ちる水を、第1の受け溝から離間させておくことできるように、突設部は、シールアセンブリの最も離れて半径方向外側にある部分を形成することもできる。
【0025】
本発明のさらに別の有利な構成及び有利な改良形は、図面の記載及び/又は従属請求項から明かである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】カバー部材を備える、3つの部分から成るシールアセンブリを示す図である。
図2】多機能を有する弾性的な部材を備える、2つの部分から成るシールアセンブリを示す図である。
【0027】
以下に、本発明を、図面に示した実施の形態に基づいて詳細に記載しかつ説明する。
【0028】
実施の形態
図面の説明
図1に、カバー部材10を備えた3つの部分から成るシールアセンブリを示す。このシールアセンブリはラビリンスシールとして構成されていて、当接部材14、第1の軸受部材30及びカバー部材10によって形成される、摩擦のないプレシールを有する。この実施の形態において、カバー部材10は、冷間成形された金属薄板として構成されていて、中空円筒状の区分52の端部に、環状の開口50が配置されている。この環状の開口50は、当接部材14の第1の受け溝12に通じている。択一的には、カバー部材10はプラスチックから成っていてもよいか、又は旋削部材として切削加工されていてよい。カバー部材10はさらに固定部分47を有する。カバー部材10は、プレス嵌めにより、外輪として構成されている第1の軸受部材30の外面に固定されている。
【0029】
外輪は、例えばホイールハブ30の少なくとも一部分を形成するので、カバー部材10は、一種の遠心金属薄板(Schleuderblech)になる。この遠心金属薄板から、回動運転中に水が半径方向に離れ、開口50から遠ざけられる。第1の固定型の受け溝12に到達する水及び汚染粒子は周方向に案内され、重力に基づき地表に向かって鉛直方向で滴下する。
【0030】
さらに第1の受け溝12は、軸線方向の中間室61を覆う。この中間室61は、従来のシールアセンブリに比べて、水及び粒子に対するプレシールに基づき接近しづらくなった。
【0031】
軸線方向の中間室61には、第2の軸受部材31と一緒になって水密に閉鎖している当接部分41の少なくとも一部分が設けられてもいる。第2の軸受部材31は、この実施の形態においては固定型のジャーナルとして形成されている。
【0032】
円錐状の接続部分18は、当接部分41を中空円筒状の固定部分40に接続する。この固定部分40は、プレス嵌めにより、特にその軸線方向位置において位置固定されていて、当接部分41の水密な当接は危険にさらされない。さらに接続部分18は、軸線方向のシールリップ16,17と共に、2つの摺動シールコンタクトを形成する。これらのシールコンタクト部は、ホイール軸受の転動室を保護する。全てのシールリップ16,17,19は、弾性的な部材13に形成されていて、達成したいシール作用に関連して、夫々単独で、又は各任意の互いの組合せにおいて使用可能である。使用されるシールリップが少なければ、それだけ一層、シールアセンブリの摩擦係数は小さい。
【0033】
支持体45は、弾性的な部材13の係止部46により、第1の軸受部材30の内側溝に係止されている。択一的には支持体45自体は、円筒形のプレス嵌め部により、第1の軸受部材30の内面に固定されていてよい。支持体45及び弾性的な部材13は、簡単に第1の軸受部材30内に圧入可能であるシールリング11を一緒に形成する。係止部46の外側半径は、確かに第1の軸受部材30の内側半径よりも大きいが、圧入は、係止部46の弾性的な特性に基づき簡単に可能である。
【0034】
半径方向外側にある軸線方向のシールリップ16は、第1の受け溝15を形成する。水及び汚染粒子は、第1の受け溝15を、重力により再び離れることもある。このことは、カバー部材10及び当接部材14の中空円筒状の区分52が、内側で少なくとも少しだけ円錐状に形成されることにより助成することができるので、簡単な排出が可能である。
【0035】
図2に、多機能を有する弾性的な部材23を備えた2つの部分から成るシールアセンブリを示す。弾性的な部材23は、図1に示したカバー部材10の機能を担う。この理由から、弾性的な部材23の支持体39が、プレス嵌めにより第1の軸受部材32の外面に固定されている。支持体39の固定部分48の下側のさびによる腐食を回避するために、いわゆる静的なシールが、一体成形されている非摺動シール25により形成される。この実施の形態において、このシール25はほぼ環形状を有し、半径方向に又は第1の軸受部材32の外側溝に当接する。
【0036】
シールアセンブリを乗用車(PKW)において使用したい場合、第1の軸受部材32は固定型の外輪に相当するので、非摺動シール25は、固定型のシールでもある。したがって第2の軸受部材31が、ホイールフランジにより形成される半径方向に延在する部分を備えたホイールハブである。
【0037】
カバー部材24は、図1の軸受部材41と同様に第2の軸受部材31に固定されている。この実施の形態においてとりわけ、カバー部材24は運転中の回転のために設けられている。したがって端部分34に遠心作用がもたらされ、この遠心効果は、汚染物及び水が開口51内に侵入しない、ということをもたらす。好ましくは、端部分34は掻取りエッジ(Abrisskante)を有していて、この掻取りエッジは、場合によっては端部分34における軽度の傾斜部により実現される。
【0038】
開口51が軸線方向でホイールフランジに向かって配向されていることにより、好ましくは、半径方向に流れる水がラビリンスシール内に侵入することを回避することができる。好ましくは突設部26は、シールアセンブリの最大外側半径を有するように成形されている。したがって汚染水は、最大外側半径において下方に滴下することができる。さらに突設部は、環状のギャップも覆う。この環状のギャップは、第2の受け溝27に通じる。ギャップの環形状は、侵入してきた汚染物若しくは水がラビリンスシールを、開口51を通って簡単に再度離れることができる、ということを保証する。第2の受け溝27は、軸線方向の非接触シールリップにより形成することができる。このシールリップの端部は、半径方向外側に方向付けられていて、第1の受け溝22の半径方向内側にある底部と一緒に、第2の環状の貫通開口の形式のラビリンスシールの他のシールエレメントを形成する。
【0039】
弾性的な部材23が多くの機能を担うことができるように、弾性的な部材23は、固定部分48の軸線方向の端部から、半径方向内側にある、支持体39の端部にまで延びている。弾性的な部材23は、支持体39を半径方向外側に覆い、軸線方向で当接部材43と支持体39との間に配置されている。択一的には各機能は、別個に加工される弾性的な部材によって実施することもできるが、このことは比較的大きな製造の手間に繋がる。
【0040】
シールアセンブリは、軸線方向のシールリップ29と、半径方向のシールリップ36とを有する。これらのシールリップ29,36は当接部材24と一緒になって、若しくはシールリップ29,36は夫々、接続部分38と固定部分37と共に、摺動シールコンタクトを形成する。
【0041】
図2に示したシールアセンブリは、第1の軸受部材32と第2の軸受部材31との間に位置する半径方向の中間室60の外側に設けられている。好ましくは、第1の軸受部材32に、シールアセンブリの挿入を許容する措置を少し施すこともできる。単に1つの外側溝だけが、非摺動シール25にとって有利であるが、絶対ではない。さらに2つの部分から構成されていることに基づき、別個のカバー部材は省かれるので、シールアセンブリの組込み時には利点が発生する。
【0042】
弾性的な部材23及び支持体39を有するシールリング21は、シールリングの通常の機能の他に、ラビリンスシールの形式のプレシールを少なくとも部分的に形成し、かつ第1の軸受部材32に対する外側の静的なシールをもたらすという役割をさらに担う。ちょうど支持体39のように、好ましくは金属薄板から製造されている当接部材24も、当接金属薄板の既に公知の機能を超えるシール性のために他の機能も担う。この場合、当接金属薄板は、第1の受け溝22を軸線方向の中間室61に形成する。
【0043】
両図面の実施の形態は、回動する第1の軸受部材30,32にも、固定型の第1の軸受部材30,32にも使用可能であり、つまり、本発明に係るシールアセンブリは、同様にトラック用のホイール軸受にも、乗用車用のホイール軸受にも、各ホイール軸受が外側回動型又は内側回動型に設計されているかにかかわらず使用することができる。
【0044】
要するに、本発明は、第1の軸受部材と第2の軸受部材との間における転がり軸受、特にホイール軸受をシールするシールアセンブリに関する。両軸受部材は、互いに相対的に回動可能であり、共通の回動軸線に対して軸線方向の中間室も、半径方向の中間室も形成する。この実施の形態において、シールアセンブリは、以下の部材を有する。つまり、当接部材であって、固定する、好ましくは中空円筒状の固定部分と、当接部材を第2の軸受部材に位置固定するための環状の当接部分とを備えた当接部材、並びに第1の軸受部材に固定可能な、第1の軸線方向のシールリップ及び/又は半径方向のシールリップを形成する弾性的な部材を有する支持体を有する。本発明に係る教示は、寿命及びシール性能をいかに廉価に高めることができるかである。第2の軸受部材の半径方向に延在する部材との当接部材が、第1の受け溝を形成する、ということを提案する。この実施の形態において、当接部材の端部分は、第1の受け溝に通じる開口を部分的に画成する。したがって、ラビリンスシールを、付加的な摩擦損失なくシールに寄与するプレシールとして構成することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 カバー部材 11 シールリング
12 第1の受け溝 13 弾性的な部材
14 当接部材 15 第2の受け溝
16 軸線方向のシールリップ 17 軸線方向のシールリップ
18 接続部分 19 半径方向のシールリップ
21 シールリング 22 第1の受け溝
23 弾性的な部材 24 カバー部材
25 非摺動シール 26 突設部
27 第2の受け溝 28 半径方向の端部分
29 軸線方向のシールリップ 30 第1の軸受部材
31 第2の軸受部材 32 第1の軸受部材
34 端部分 35 環状の中間部分
36 半径方向のシールリップ 37 固定部分
38 接続部分 39 支持体
40 固定部材 41 当接部材
43 当接部分 44 端部分
45 支持体 46 係止部
47 固定部分 48 固定部分
50 開口 51 開口
52 中空円筒状の区分 60 半径方向の中間室
61 軸線方向の中間室
図1
図2