特許第5901636号(P5901636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901636
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】AC電源のための過電圧保護
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20160331BHJP
   H02J 50/00 20160101ALI20160331BHJP
【FI】
   H02H9/04 B
   H02J17/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527267(P2013-527267)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-537034(P2013-537034A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】US2011049969
(87)【国際公開番号】WO2012030963
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】12/873,053
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン シー テリー
(72)【発明者】
【氏名】ポール エル ブローリン
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−097606(JP,A)
【文献】 特開2010−108486(JP,A)
【文献】 特開2002−078247(JP,A)
【文献】 特開2010−087846(JP,A)
【文献】 特開2010−108485(JP,A)
【文献】 特開平10−201088(JP,A)
【文献】 特開平10−145987(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0153300(US,A1)
【文献】 特開2004−206939(JP,A)
【文献】 特開2003−163072(JP,A)
【文献】 国際公開第00/004564(WO,A1)
【文献】 特開2007−181255(JP,A)
【文献】 特開2000−184703(JP,A)
【文献】 特開平10−170581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
H02H 9/00−9/08
H02J 50/00−50/90
H02M 7/00−7/40
H03K 17/00−17/04
17/06−17/08
17/10−17/60
17/61−17/687
17/693−17/70
H04B 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力過電圧保護回路であって、
第2の信号に変換するため交流信号を第1のキャパシタを介して受信するように構成される第1の端子と、
前記交流信号に基づいて前記第2の信号を受信するように構成される第2の端子と、
前記交流信号の直流信号への変換の前の、前記第1の端子を有する回路内の第2のキャパシタと、
前記第2のキャパシタと前記第1の端子とを有する回路内のスイッチであって、前記第2の信号上の過電圧を低減するために、過電圧検出信号に基づいて前記第2のキャパシタを前記第1の端子に選択的に電気的に結合するように構成される、前記スイッチと、
前記第2の端子と前記スイッチとを有する回路内の過電圧検出器であって、前記第2の信号の信号レベルを判定するように構成され、更に、前記第2の信号の前記信号レベルがしきい値より高い旨の判定に応答して、出力での過電圧を低減するために、前記スイッチ前記第1の端子と基準との間で前記第2のキャパシタを電気的に結合するようにさせるように、前記過電圧検出信号を出力するように構成される、前記過電圧検出器と、
前記第1及び第2の端子と前記第1のキャパシタと前記スイッチとを有する回路内の整流回路であって、前記第2の信号を生成するように構成される、前記整流回路と、
第3の端子上の電気信号レベルが第2のしきい値よりも小さいときに、前記過電圧検出信号に基づいて第3のキャパシタを前記第3の端子と前記基準との間で選択的に結合するように構成されている、第2のスイッチと、
を含む、過電圧保護回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記過電圧検出器が、前記第2の信号を前記しきい値と比較するように、及び、前記第2の信号が前記しきい値より大きいときに前記過電圧検出信号を生成するように構成される、コンパレータを含む、回路。
【請求項3】
請求項1に記載の回路であって、
前記過電圧検出器が、プルダウンレジスタと、前記しきい値にほぼ等しい降伏電圧を有する降伏ダイオードとを含み、前記降伏ダイオードが、前記第2の信号上の電圧が前記降伏電圧を超えるとき前記過電圧検出信号を出力するように構成される、回路。
【請求項4】
請求項1に記載の回路であって、
整流された信号を平滑化するように構成される整流器キャパシタを更に含む、回路。
【請求項5】
過電圧保護回路であって、
第2の信号への変換のために交流信号を第1のキャパシタを介して受信するように構成される第1の端子と、
前記交流信号に基づいて前記第2の信号を受信する第2の端子と、
前記第1の端子を有する回路内の第2のキャパシタと、
前記第2のキャパシタと前記第1の端子とを有する回路内のスイッチであって、前記第2の端子上の過電圧を低減するために過電圧検出信号に基づいて前記第2のキャパシタを前記第1の端子に選択的に電気的に結合するように構成される、前記スイッチと、
前記第2の端子と前記スイッチとを有する回路内の過電圧検出器であって、前記第2の信号の信号レベルを判定するように構成され、前記第2の信号の前記信号レベルがしきい値よりも大きいと判定することに応答して、前記スイッチに前記第2のキャパシタを前記第1の端子と基準との間で電気的に結合させるように前記過電圧検出信号を出力する、前記過電圧検出器と、
前記過電圧検出信号を受信するように、及び、前記スイッチに前記第2のキャパシタを前記第1の端子に電気的に結合させるためにクランプ信号を選択的に出力するように構成される、スイッチドライバと、
を含み、
前記スイッチドライバが、前記過電圧検出信号を前記しきい値と比較して前記比較に基づいて前記クランプ信号を出力するように構成される比較器と、前記交流信号が第2のしきい値よりも小さいときに前記クランプ信号を前記スイッチに出力するように構成されるラッチとを含む、回路。
【請求項6】
請求項に記載の回路であって、
前記スイッチドライバが、前記交流信号を前記第2のしきい値と比較するように構成される第2のコンパレータを含む、回路。
【請求項7】
請求項に記載の回路であって、
前記スイッチドライバが、前記交流信号がほぼニュートラル信号レベルにあるときに前記クランプ信号を出力する、回路。
【請求項8】
過電圧をクランプするための方法であって、
第1の電源端子で交流信号を受信することと、
整流された信号を生成するために、前記交流信号を整流することと、
前記整流された信号をしきい値信号レベルと比較することと、
前記整流された信号が前記しきい値信号レベルより大きいときにクランプキャパシタを前記第1の電源端子に結合することと、
を含み、
クランプキャパシタを前記第1の電源端子に結合することが、前記クランプキャパシタを前記第1の電源端子と第2の電源端子との間で結合することを含み、前記クランプキャパシタを前記第1の電源端子と第2の電源端子との間で結合することが、前記第1の電源端子での第1の電源信号がほぼニュートラル信号レベルであるときに第1のキャパシタを前記第1の電源端子と基準との間で結合することと、前記第2の電源端子での第2の電源信号がほぼニュートラル信号レベルであるときに第2のキャパシタを前記第2の電源端子と前記基準との間で結合することとを含む、方法。
【請求項9】
過電圧保護を有する誘導性電力伝達システムであって、
第1及び第2の端子を有する受信コイルであって、送信コイルの電圧と電流と周波数とに基づいて、前記第1及び第2の端子上に交流信号を生成するように構成される、前記受信コイルと、
前記交流信号を整流するように、及び整流された信号を出力するように構成される、整流器と、
過電圧保護回路と、
を含み、
前記過電圧保護回路が、
第1のクランプキャパシタ及び第2のクランプキャパシタと、
第1のクランプ信号に基づいて前記整流された信号の過電圧を低減するために、前記第1の端子と基準との間で前記第1のクランプキャパシタを選択的に電気的に結合するように構成される、第1のスイッチと、
第2のクランプ信号に基づいて前記過電圧を低減するために、前記第2の端子と前記基準との間で前記第2のクランプキャパシタを選択的に電気的に結合するように構成される、第2のスイッチと、
前記整流された信号の信号レベルを判定するように構成される過電圧検出器であって、前記整流された信号の前記信号レベルが第1のしきい値より高い旨の判定に応答して、
過電圧検出信号を出力するように構成される、前記過電圧検出器と、
前記過電圧検出信号を受信するように構成される第1のスイッチドライバであって、前記第1の端子での第1の電力信号が第2のしきい値より低いときに、前記第1のスイッチに前記第1の端子を前記基準に選択的に電気的に結合させるために前記第1のクランプ信号を出力するように構成される、前記第1のスイッチドライバと、
前記過電圧検出信号を受信するように構成される第2のスイッチドライバであって、前記第2の端子での第2の電力信号が前記第2のしきい値より低いときに、前記第2のスイッチに前記第2の端子を前記基準に選択的に電気的に結合させるために前記第2のクランプ信号を出力するように構成される、前記第2のスイッチドライバと、
を含む、誘導性電力伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般にクランプ回路に関し、より具体的には、AC電源及び調整システムに関する過電圧をクランプするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導性電力伝達システムは、一般に、送信ユニットと受信ユニットとの間で電力をワイヤレスで伝達するために用いられる。送信ユニットは、誘導コイルを介して磁界を生成する。別の誘導コイルを含む受信ユニットが磁界内に配置された場合、磁界は送信ユニットによって生成される磁界に比例する電流を受信ユニットに生成させる。受信ユニットで生成される電流は交流電流であり、受信ユニット内で生成される電流をフィルタリングするために用いることができる誘導性容量性フィルタ回路の共振周波数で電流を交番することによって、送信ユニットから受信ユニットへの電力伝達の効率は向上する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
説明される例において、過電圧保護回路が、第2の信号に変換するため交流信号を受信するように構成される第1の端子、交流信号に基づいて第2の信号を受信するための第2の端子、第1の端子を備える回路内のキャパシタ、第2の信号上の過電圧を低減するために過電圧検出信号に基づいてキャパシタを第1の端子に選択的に電気的に結合するように構成される、キャパシタ及び第1の端子を備える回路内のスイッチ、並びに、第2の信号の信号レベルを判定するように構成され、更に、第2の信号の信号レベルがしきい値より高い旨の判定に応答して、スイッチに、第1の端子と第2の端子との間でキャパシタを電気的に結合させるために過電圧検出信号を出力するように構成される、第2の端子及びスイッチを備える回路内の過電圧検出器を含む。
【0004】
記述される例において、過電圧をクランプするための方法が、第1の電源端子で交流信号を受信すること、整流信号を生成するために交流信号を整流すること、整流信号をしきい値信号レベルと比較すること、及び、整流信号がしきい値信号レベルより高い場合、キャパシタを第1の電源端子に結合することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】誘導性電力伝達システムの概略図である。
【0006】
図2】キャパシタを用いるクランプ回路を含む、例示の誘導性電力伝達システムの概略図である。
【0007】
図3A】複数のキャパシタを用いて実装されるクランプ回路を含む、別の例示の誘導性電力伝達システムの概略図である。
【0008】
図3B】スイッチドライバを用いずに実装されるクランプ回路を含む、別の例示の誘導性電力伝達システムの概略図である。
【0009】
図4図2及び図3Aにおけるスイッチドライバの実装に用い得る、例示のスイッチドライバの概略図である。
【0010】
図5】例示のクランプコンパレータ及び整流器の出力電圧を示すグラフである。
【0011】
図6】例示の整流器出力、交流信号、及びクランプ信号電圧を示すグラフである。
【0012】
図7図2のクランプキャパシタの周波数及び値の関数としてシミュレートされた整流器出力電圧を示すグラフである。
【0013】
図8図1図3Bの誘導性電力伝達システムに関する負荷及び周波数の関数として測定された整流器出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、誘導性電力伝達システム100を示す。誘導性電力伝達システム100は、送信器回路102から受信器回路104に電力を伝達する。受信器回路104は電力を調整し、調整された電力を出力デバイス106に提供することができる。図1の例において、出力デバイス106は、受信器回路104によって充電されるバッテリ108である。
【0015】
送信器回路102は、スイッチングネットワーク114を介して直流(DC)電源112から交流電流を受け取る送信コイル110を含む。コントローラ118が、送信コイル110を通してAC電流を流すために電源112に対して送信コイル110を結合及び分離するように、スイッチングネットワーク114を制御する。送信コイル110は、送信コイル110を通して流れるAC電流に起因し、磁界を生成する。いくつかの例では、送信コイル110は30巻きコイルである。
【0016】
送信器回路102及び受信器回路104は、送信器回路102と受信器回路104との間の電力伝達をそれぞれ活性化及び/又は非活性化するように、物理的に結合及び/又は分離され得る。受信器回路104は受信コイル120を含み、受信コイル120は、送信コイル110によって生成される磁界内に置かれると送信コイル110との組み合せで変圧器となる。受信器回路104は直列キャパシタ122をさらに含み、直列キャパシタ122は、受信コイル120との組み合わせで誘導性容量性(LC)フィルタ及び共振周波数を確立する。動作周波数(例えば、送信コイル110及び/又は受信コイル120内のAC信号の周波数)が受信器回路104の共振周波数に近付くと、受信コイル120は電流源と同様に動作する。
【0017】
受信器回路104が送信コイル110の磁界内に置かれると、磁界はAC電流を受信コイル120内に誘導する。受信コイル120は誘導された電流を同期整流器124に送り、同期整流器124は受け取ったAC電流をDC電流に変換する。同期整流器124は、DC電流を平滑化する整流器キャパシタ126にDC電流を出力する。整流器出力又は整流器電圧という用語は、本明細書で用いるように、同期整流器124の出力端子125でのDC信号の電圧を指す。さらに例示の受信器回路104は、出力デバイス106への出力用の線形電圧及び/又は電流を生成するための線形充電器128を含む。
【0018】
同期整流器124は、受信コイル120からAC入力信号を受信するための2つの入力端子130及び132を含む。端子130及び132のそれぞれは、それぞれの端子130又は132がその間に受信コイル120から電流を受け取る(すなわち電流をシンクする)AC位相を有するとみなし得、受信コイル120は整流器出力端子125で電流を提供する(すなわち電流をソースする)ために用いられる。同期整流器124は、一度に1方の端子130(例えば、同期整流器124に電流を提供している端子)を同期整流器124の出力端子125に結合する一方で、他方の端子132を基準端子(例えば接地又は別のニュートラル端子)に結合することによって動作する。端子130の信号レベルが低下し、他方の端子132が電流をソースし始めると、同期整流器124は他方の端子132を整流器出力端子125に結合する一方で、端子130を基準に結合するように切り替える。このように、各端子130又は132のいずれかが、任意の所与の時間で電流を受信コイル120から同期整流器124に向けるか又は基準端子に結び付けられる。
【0019】
システム100の整流器出力電流電圧ラインは、整流器の動作周波数が例示の受信器回路104の共振周波数に近付くにつれて定電流に近付き、それ故に電流ソース挙動に近付く。そのため、同期整流器124、整流器キャパシタ126、及び線形充電器128は、損傷を発生させるのに充分に高い電圧及び電力を受け得る。
【0020】
図2は、クランプキャパシタ204を用いるクランプ回路202を含む、例示の誘導性電力伝達システム200の概略図である。例示の誘導性電力伝達システム200は、例示の送信器回路102、例示の受信コイル120、例示の直列キャパシタ122、端子130及び132、並びに整流器出力端子125を有する例示の同期整流器124、例示の整流器キャパシタ126、及び、図1の例示のバッテリ108に充電するための図1の例示の線形充電器128を含む。図2の例示の受信コイル120は18巻きコイルであり、例示のキャパシタ122は100ナノファラッド(nF)のキャパシタンスを有する。したがって、例示の受信器回路104の共振周波数は約100キロヘルツ(kHz)である。例示のシステム200では、受信コイル120は、送信器回路102によって提供される電力量に起因して、たとえ電圧がより高く、共振周波数に近い場合であっても、1アンペア(A)を超える電流は生成しない。もちろん、他のキャパシタ値又は巻き数を用いることもできる。
【0021】
さらに例示の容量性クランプ202は、同期整流器124の入力端子130と132との間でクランプキャパシタ204を選択的に結合するための、スイッチング素子206及びスイッチドライバ208を含む。例示のスイッチング素子206は、図2ではnチャネル金属酸化物半導体(NMOS)電界効果トランジスタ(FET)として示されている。しかしながら、pチャネル金属酸化物半導体(PMOS)FET、バイポーラ接合トランジスタ、及び/又は他のタイプの電気的及び/又は電気機械的スイッチを含む、他のタイプのスイッチングデバイスを用いることもできる。スイッチング素子206は、スイッチドライバ208によって(例えばNMOSのゲート端子を介して)制御される。
【0022】
過電圧状況によって発生し得る受信器回路104への損傷を防ぐために、例示の誘導性電力伝達システム200は、クランプ回路202及び過電圧検出器210を備えている。一般に、クランプ回路202は、整流器出力端子125に過電圧状況が存在する又は存在し得る旨の判定に応答して、端子130と132との間の電圧をクランプすることにより、整流器出力端子125での過電圧状況を防止又は軽減する。過電圧検出器210は、整流器出力端子125及びクランプ回路202と通信して整流器電圧を監視する。
【0023】
例示の過電圧検出器210は、降伏(例えばツェナー)ダイオード212、プルダウンレジスタ214、及びキャパシタ216を含む。過電圧検出器210は、同期整流器124の出力に過電圧状況が存在するか否かを示す過電圧検出信号を、スイッチドライバ208に提供する。降伏ダイオード212は、整流器電圧の上限しきい値となるように選択し得る降伏電圧を有する。図示された例において、整流器電圧は、典型的に、接地に関して10V未満であり、同期整流器124及び/又は線形充電器128は20Vの電圧でも損傷を受ける可能性がある。したがって、例示の降伏ダイオード212は、12Vから16Vの間で選択された降伏電圧を有する。例示のレジスタ214は10キロオーム(kΩ)の抵抗を有し、例示のキャパシタ216は1マイクロファラッド(μF)のキャパシタンスを有する。もちろん、降伏電圧、抵抗、及び/又はキャパシタンスの値は、特定の応用例に従って調節できる。抵抗及びキャパシタンスの値は、過電圧状況に対する過電圧検出器210の反応時間を判定することができる。
【0024】
過電圧状況が存在しない場合、降伏ダイオード212は電流を導通しないため、レジスタ214によって過電圧検出信号は基準電圧(例えば接地、0V)まで引き下げられる。しかしながら、過電圧状況が発生した場合(例えば、整流器出力電圧が降伏電圧を上回って上昇する場合)、降伏ダイオード212はアバランシェ降伏を有する。結果として、電流は、レジスタ214を通して流れ、過電圧検出信号電圧を上昇させる。
【0025】
スイッチドライバ208は、過電圧検出信号電圧が論理1(例えば論理高)であるとみなすのに充分高い場合、過電圧状況を検出する。しかしながら、スイッチドライバ208は、AC信号レベルに基づき、クランプキャパシタ204の回路内への結合又は分離を遅延又は防止することができる。スイッチドライバ208は、端子130及び132でのAC信号が端子130と132との間でクランプキャパシタ204を結合するのに充分低いか否かを判定する。端子130及び132でのAC信号が高過ぎであり、クランプキャパシタ204が放電された場合、端子130と132との間でクランプキャパシタ204が接続されたとき、大きな突入電流が発生する可能性がある。同様に、クランプキャパシタ204が充電されたとき端子130と132との間でクランプキャパシタ204が切断された場合、大きなキャパシタ放電電流が発生する可能性がある。突入電流又は放電電流は、スイッチング素子206に大きな電圧を発生させる可能性がある。このような場合、スイッチング素子206が突入を処理するのに充分ロバストである(例えばNMOSのサイズを大きくする)必要があるか、又はスイッチ206が損傷を受ける可能性がある。より大きなNMOSは、超小型回路の応用例では一般に望ましくない。以下でより詳細に説明するように、より小さなスイッチング素子206を用いるため及びスイッチング素子206への損傷を防ぐために、スイッチドライバ208は、AC信号が充分低い電圧を有するとき、クランプキャパシタ204を端子130及び132に対し結合及び分離する。その代わりとしてスイッチドライバ208は、より小さなより廉価な回路構成要素を用いながら、システム20の動作周波数期間の半分以内でスイッチング素子206を過電圧状況の有り及び/又は無しに応答させることができる。より大きな電圧及び/又は電力を処理するためにより大きな構成要素を用いることはできるが、誘導性電力伝達システム200が極めて高価になる可能性がある。
【0026】
図3Aは別の例示の誘導性電力伝達システム300の概略図であり、キャパシタ304a及び304bを用いて実装されるクランプ回路302を含む。さらに例示のクランプ回路302は、同期整流器124の入力端子130及び132と基準(例えば接地、ニュートラル)との間でクランプキャパシタ304a及び304bのうちのそれぞれを選択的に結合するために、スイッチング素子306a及び306b並びにスイッチドライバ308a及び308bを含む。さらに例示の誘導性電力伝達システム300は、図2に示された例示の過電圧検出器210を含む。
【0027】
例示のクランプキャパシタ304a、例示のスイッチング素子306a、及び例示のスイッチドライバ308aは、図2を参照して上述した、クランプキャパシタ204、スイッチング素子206、及びスイッチドライバ208のそれぞれと同様又は同一に動作可能である。しかしながらクランプキャパシタ304aは、端子130と基準との間で選択的に結合される。同様に、例示のクランプキャパシタ304b、例示のスイッチング素子306b、及び例示のスイッチドライバ308bは、クランプキャパシタ304aが端子132と基準との間で選択的に結合されることを除けば、クランプキャパシタ204、スイッチング素子206、及びスイッチドライバ208のそれぞれと同様又は同一に動作可能である。スイッチング素子306a及び306bの両方がオンに切り換えられ、端子130及び132のうちのそれぞれと基準との間でクランプキャパシタ304a及び304bを結合するとき、端子130及び132は、スイッチング素子306a及び306b並びに基準を介して効果的に結合される。
【0028】
スイッチドライバ308a及び308bは、端子130及び132でのそれぞれのAC信号に基づいて、それぞれのスイッチング素子306a及び306bの切り替えを制限する。したがってスイッチドライバ308aは、端子130でのAC信号が所定のしきい値より低いとき、スイッチング素子306aのみが端子130と基準との間でクランプキャパシタ304aを結合及び分離できるようにする。同様に、スイッチドライバ308bは、端子132でのAC信号が所定のしきい値より低いとき、スイッチング素子306bのみが端子132と基準との間でクランプキャパシタ304bを結合及び分離できるようにする。
【0029】
図3Bは、スイッチドライバなしで実装されるクランプ回路312を含む、別の例示の誘導性電力伝達システム310の概略図である。例示のクランプ回路312は、図3Aのクランプキャパシタ304a及び304b並びにスイッチング素子306a及び306bを含む。しかしながら、図3Aのスイッチドライバ308a又は308bは含まない。その代わりに、スイッチング素子306a及び306bの入力端子(例えばFETのゲート端子)は、例示の降伏ダイオード212の陽極端子に結合される。動作において、整流器出力端子125で過電圧状況が発生したとき、降伏ダイオード212は電流を導通し始め、それが、端子130及び132を基準に結合するスイッチング素子306a及び306bの入力端子での電圧を増加させる。逆に、過電圧状況がもはや存在しない場合、降伏ダイオード212は電流の導通を停止し、レジスタ214は、電圧を引き下げ、スイッチング素子306a及び306bに端子130及び132を基準から分離させる。
【0030】
図3Bの例示のクランプ回路312はスイッチドライバ308a及び308bを含まないため、端子130及び132でのAC電圧とは無関係に、過電圧検出器210によってスイッチング素子306a及び306bをオンにする(例えば端子130及び132を基準に結合する)ことができる。したがっていくつかの例では、スイッチング素子306a及び306bは、スイッチング素子306a及び306b又は誘導性電力伝達システム310に損傷を発生させることなく、スイッチング素子306a及び306bが突入電流及び/又はキャパシタ放電電流を処理できるようにするために、比較的大きな外部スイッチング素子を用いて実装可能である。
【0031】
図2図3A、及び図3Bの例示のシステム200、300、及び310において、動作周波数が共振周波数に近付くにつれて、送信器回路102から受信器回路104へのエネルギー伝達の効率性が向上するため、受信器回路104の共振周波数又は近似共振周波数は有利な動作周波数である。したがって、整流器出力端子125での整流器電圧は、共振周波数で非常に高くなる可能性がある。
【0032】
図4は、図2及び図3Aのスイッチドライバ208、308a、及び308bを実装するために用いることができる例示のスイッチドライバ400の概略図である。明確及び簡潔にするために、図4図3Aの例示のスイッチドライバ308aを実装しているものとして説明する。例示のスイッチドライバ400は、ゲートDラッチ402、並びに2つのコンパレータ404及び406を含む。ゲートDラッチ402は、D端子で入力信号を、E端子でイネーブル信号を受信し、Q端子からクランプ信号を出力する。E端子は、入力信号がクランプ信号として通過するか否かを制御する。コンパレータ406は、端子130でのAC信号(AC SIGNAL)をしきい値(ACしきい値)と比較し、AC信号が、端子132と基準との間でクランプキャパシタ304aを結合及び/又は分離するのに充分低い信号レベルを有するか否かを判定する。したがって、AC信号がしきい値より低い場合、コンパレータ406は、ゲートDラッチ402をイネーブルにする(例えば、D端子で受信した入力信号をQ端子から出力する)ために論理高信号を出力する。
【0033】
コンパレータ404は、整流器電圧(VREC)を整流器電圧しきい値(VRECしきい値)と比較する。整流器電圧がしきい値より大きい(例えば過電圧状況が存在する)場合、コンパレータはゲートDラッチ402のD端子に高論理信号を出力する。ラッチ402のE端子がイネーブルされる(例えば、AC信号がACしきい値より小さい)場合、D端子への入力がQ端子から出力される(例えばクランプ信号)。クランプ信号は、スイッチング素子306aのスイッチ入力(例えばNMOSのゲート端子)に入力される。したがって、ラッチ402のE端子がイネーブルされ、整流器電圧が過電圧状況である場合、Q端子は論理高クランプ信号を出力して、スイッチング素子306aに端子132と基準との間でクランプキャパシタ304aを結合させる。同様に、ラッチ402のE端子がイネーブルされ、整流器電圧が過電圧状況にない場合、Q端子は、スイッチング素子をオフにする論理低クランプ信号を出力して、クランプキャパシタ304aを端子132及び基準から分離する。しかしながら、ラッチ402のE端子がディスエーブルされる場合、クランプ信号は過電圧状況にかかわらず一定に維持される。
【0034】
いくつかの例において、ゲートDラッチ402はDフリップフロップを用いて実装可能である。そうした場合、Dフリップフロップは、エッジセンシティブ(edge-sensitive)であり、コンパレータ406からの出力が低から高に変化するとき(例えば、AC信号がACしきい値を下回って下がるとき)のみ、その出力を変更することができる(例えば、過電圧状況の有り及び/又は無しに基づいて、スイッチング素子306aの状態を変更することができる)。
【0035】
図5は、例示のクランプ信号502(例えば、図2及び図3Aのスイッチドライバ208、308a、及び308bの出力)及び整流器出力504の電圧を示すグラフ500である。整流器出力504がしきい値(例えば約14V)を超えるとき、クランプ信号502はアクティブになる(例えばスイッチング素子206をオンにする)。クランプ信号502がアクティブにされる間、クランプキャパシタ204は、整流器出力504を低減させるために端子130及び132でAC信号をクランプする。整流器出力504がしきい値506を下回って低下するとき、クランプ信号502は論理低へ低下し、これによってスイッチング素子206がオフになり、端子130及び132からクランプキャパシタ204を分離する。
【0036】
図6は、例示の整流器出力602、AC信号604、及びクランプ信号電圧606を示すグラフ600である。例示のグラフ600は、例示のグラフ500よりも小さな時間基準を有し、整流器電圧における上昇をより詳細に示す。
【0037】
第1の時間期間608の間、整流器出力602は過電圧しきい値より小さく(例えば、整流器出力602は過電圧状況になく)、AC信号604は同相であり(例えば、図1の同期整流器124の端子130は電流をシンクしている)、クランプ信号606は論理高である(例えば、クランプキャパシタ204は端子130と132との間で結合される)。整流器出力602は過電圧しきい値より小さいが、AC信号604がしきい値610より高い間、スイッチドライバ208はクランプ信号606を変化させないため、クランプ信号606は論理高のままである。
【0038】
第1の時間期間608の終わりに、AC信号604はしきい値610を下回って下がり、この時点で、整流器出力602も過電圧しきい値より小さいため、クランプ信号606は低下する。第2の時間期間612の間、整流器出力602は過電圧しきい値を上回って上昇する。AC信号604が同相でない(例えば端子132が電流をシンクする)間、図1の受信コイル120及び直列キャパシタ122を含むLCフィルタに起因して、AC信号604の電圧は依然として上昇し得る。したがって、スイッチドライバ208は、過電圧状況に応答して、クランプ信号606が、クランプキャパシタ204を結合するために上昇すことを防止する。AC信号604がしきい値610を下回って下がるとき、スイッチドライバ208は、クランプ信号606を論理高まで上昇させて、クランプキャパシタ204を端子130に結合する。そのため、第3の時間期間614の間、クランプキャパシタ204はAC信号604をクランプして整流器出力602を低下させる。結果として、整流器出力602は低下し、AC信号604は、AC信号604がクランプされていない場合よりもゆっくりと上昇する。
【0039】
図7は、図1の例示の誘導性電力伝達システム100に関する周波数と並列キャパシタンスの関数としてシミュレートされた整流器出力電圧を示すグラフ700である。例示の周波数線702及び704は、それぞれ共振周波数の倍数として示される。図7に示されるように、図1の整流器出力は、約140nFより大きいキャパシタンス値を有するクランプキャパシタを用いて、任意の周波数で20V未満にクランプすることができる。図2の例示のクランプキャパシタ204は、200nFのキャパシタンス値を有する。図3の例示のクランプキャパシタ304a及び304bは、それぞれ450nFのキャパシタンス値を有する。したがって、図3Aのクランプキャパシタ304a及び304bがどちらもそれぞれの整流器端子130及び132を基準に結合する場合、端子130と132との間の有効キャパシタンスは約450nFである。
【0040】
図8は、図1図3Bの誘導性電力伝達システム100、200、300、及び310に関する負荷と周波数の関数として測定された整流器出力電圧802、804、806を示すグラフ800である。前述のように、図1図3Bの例示の受信器回路104は約100kHzの共振周波数を有する。図8に示されるように、同期整流器124の出力電圧125(例えば整流器キャパシタ126での電圧)は、同期整流器124の負荷にほぼ比例して上昇する。加えて整流器電圧は、動作周波数が受信器回路104の共振周波数に近付くにつれて、単位抵抗(オーム)当たりより高いレートで上昇する。例えば、40オーム(Ω)負荷に対する104kHzの802での整流器電圧は約21.5ボルト(V)であるが、40Ω負荷に対する106kHzの804での整流器電圧は約20Vである。整流器電圧802及び804が危険電圧808まで上昇すると、同期整流器124、整流器キャパシタ126、及び/又は線形充電器128は損傷を受ける可能性がある。
【0041】
例示の誘導性電力伝達システム200、300、及び310は、例示の整流器電圧806が過電圧しきい値(例えば18V)を上回って上昇することを防ぐ。システム100に損傷を与える可能性のある危険電圧808を受け得る図1の誘導性電力伝達システム100とは対照的に、例示の誘導性電力伝達システム200、300は過電圧しきい値までに制限される。前述のように、整流器出力電圧806がしきい値電圧を上回って上昇すると、クランプ回路202、302、及び312は整流器出力電圧806を制限する。このように、例示の誘導性電力伝達システム200、300、及び310は、より小さくより廉価な回路構成要素を保護するためにクランプ回路202、302、及び312を含めることによって、図1の誘導性電力伝達システム100よりも少ない製造コストで実装可能である。
【0042】
当業者であれば、説明した例示の実施形態及び特許請求の範囲内に存する他の実施形態に対し改変が成され得ることが理解されよう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8