(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901644
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】差次的な光吸収による生死判別細胞カウント方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20160331BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20160331BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/48 M
G01N21/27 A
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-540047(P2013-540047)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2014-505465(P2014-505465A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2011061363
(87)【国際公開番号】WO2012068446
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年7月29日
(31)【優先権主張番号】61/414,947
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヘン シン
(72)【発明者】
【氏名】ブレーニマン ユージン
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07411680(US,B1)
【文献】
特開2008−164551(JP,A)
【文献】
特開2006−275771(JP,A)
【文献】
Invitrogen, Countess(商標)Automated Cell Counter,2009, User Manual,Catalog no. C10227,URL,http://tools.thermofisher.com/content/sfs/manuals/mp10227.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞と死細胞とを識別するように細胞集団中の細胞をカウントするための方法であって、
(a)生細胞よりも死細胞を優先的に透過する生体染色で、集団のアリコートを処理する工程;
(b)そのように処理した該アリコートを第一の波長帯の光で照明し、かつ該アリコートの第一の画像を生成する工程であって、該第一の波長帯の光は、該生体染色によって実質的に吸収されず、生細胞と死細胞の双方を視覚化することを可能にする、工程;
(c)該第一の画像中の生細胞と死細胞の双方を含む全細胞の数をカウントする工程;
(d)そのように処理した該アリコートを第二の波長帯の光で照明し、かつ該アリコートの第二の画像を生成する工程であって、該第二の波長帯の光は、該生体染色によって少なくとも部分的に吸収され、ここで、該第一および第二の波長帯は異なり、かつ、該第一および第二の画像は識別可能である、工程;
(e)該第二の画像中の生細胞をカウントする工程;ならびに
(f)該第一の画像中でカウントされた生細胞および死細胞の数から該第二の画像中でカウントされた生細胞数を引き算して、該第一の画像中の死細胞数を得る工程、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(b)が、第一の波長帯に制限された光を用いる第一の照明によってアリコートを照明し、かつ該第一の照明からの該アリコートの該第一の画像を生成することを含み、ならびに工程(d)が、第二の波長帯に制限された光を用いる第二の照明によって該アリコートを別途照明し、かつ該第二の照明からの該アリコートの該第二の画像を生成することを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)および(d)が、第一の波長帯および第二の波長帯の双方を含む波長帯の光によってアリコートを照明することを含み、工程(b)が該第一の波長帯のみの光を用いて該第一の画像を生成することを含み、ならびに工程(d)が該第二の波長帯のみの光を用いて該第二の画像を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第一の波長帯および第二の波長帯の双方を含む波長帯の光が、白色光である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第一の波長帯の光のみを通す吸収フィルターを介して第一の画像を生成すること、および第二の波長帯の光のみを通す吸収フィルターを介して第二の画像を生成することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
第二の波長帯の範囲内の波長に対して選択的に反応性であるピクセルから分離している第一の波長帯の範囲内の波長に対して選択的に反応性であるピクセルを有するCMOS画像センサーによって、第一および第二の画像を生成することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、メチレングリーン、サフラニン、アニリンイエロー、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、ヨウ化プロピジウム、臭化エチジウム、フルオレセインジアセテート、カルボキシフルオレセインジアセテート、フルオレセインイソチオシアネートジアセテート、およびアザフロキシン(azafloxin)からなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、およびメチレングリーンからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、ヤーヌスグリーン、およびヨウ化プロピジウムからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
生体染色がトリパンブルーおよびヨウ化プロピジウムからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
生体染色がトリパンブルーである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
生体染色がトリパンブルーであり、第一の照明の光が青色光、赤外線、および紫外線からなる群より選択されるメンバーであり、かつ第二の照明の光が赤色光、橙黄色光、および白色光からなる群より選択されるメンバーである、請求項2記載の方法。
【請求項13】
生体染色がトリパンブルーであり、第一の照明の光が青色光であり、かつ第二の照明の光が橙黄色光である、請求項2記載の方法。
【請求項14】
第一の画像が、アリコートを透過した光から生成される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
第一の画像が、アリコートによって散乱した光から生成される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
第一および第二の画像がディジタル画像である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
電荷結合素子、相補型金属酸化膜半導体、フォトダイオードアレイ、電荷注入素子、LCOS(liquid-crystal-on-silicon)イメージャー、および高温ポリシリコンイメージャーからなる群より選択されるメンバー上に第一および第二の画像を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
電荷結合素子および相補型金属酸化膜半導体からなる群より選択されるメンバー上に第一および第二の画像を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
相補型金属酸化膜半導体上に第一および第二の画像を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
以下の工程を含む、生細胞と死細胞とを識別するように細胞集団中の細胞をカウントするための方法:
(a)生細胞よりも死細胞を優先的に透過する生体染色で、集団のアリコートを処理する工程;
(b)そのように処理した該アリコートを第一の波長帯の光で照明し、かつ該アリコートの第一の画像を生成する工程;
(c)そのように処理した該アリコートを第二の波長帯の光で照明し、かつ該アリコートの第二の画像を生成する工程であって、該第一の波長帯および該第二の波長帯は、該第一の波長帯よりも該第二の波長帯からの光を多く該生体染色が吸収するように選択され、ここで、該第一および第二の波長帯は異なり、かつ、該第一および第二の画像は識別可能である、工程;ならびに
(d)該アリコートの個々の細胞について、該第一の画像と該第二の画像との間のコントラストの差を検出し、かつ
閾値を上回るコントラストの差を示す細胞が死細胞と定義されかつ閾値を下回るコントラストの差を示す細胞が生細胞と定義されるように選択された閾値に対して、前記差を比較し、かつ
死細胞と定義された該細胞を、生細胞と定義された該細胞とは別にカウントする工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容が本明細書に組み入れられる2010年11月18日出願の米国特許仮出願第61/414,947号の恩典を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、生物学的な組織または液体中の細胞をカウントするための一般的な血球計算法およびシステムの分野に属する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の説明
生物学的な組織または液体中の生細胞と死細胞とを識別する能力は診断および研究の双方において有益な情報を提供する。識別は、例えば、細菌集団中の生細胞のみが代謝および増殖活性を有することから、また、細胞が病原性微生物である場合は生細胞のみが潜在的な健康リスクを示すことから、細菌の寄生を評価する際に有益である。識別は、薬剤および医薬の作用の有用性またはメカニズムの検討においても、細胞の生存度または死の判断は、しばしばこのような検討の一環であることから、同じく有益である。また、細胞の形態学的な特徴の検討を含む特定の系統の研究では、関心対象の特徴が死細胞の表現型の特徴によってマスキングされるとこれらの検討の結果が不明瞭となる可能性があるので、生細胞は死細胞から識別されなければならない。
【0004】
生細胞と死細胞とを識別する一つの手段はDNAに関するアッセイによるものであり、これはDNAが通常、生細胞にのみ関連するためである。しかし、この方法は、DNAが細胞死の後、数週間の間は細胞内に存続し得るために信頼できない。その他の方法は、生細胞のみまたは死細胞のみに存在するマーカーに結合する造影物質で処理した細胞の画像を取り込む工程を含む。しかし、この処理は追加の工程であり、現在存在する自動化された装置は、組み入れに容易に適応できるものではない。またさらなる方法は、死細胞に入射光を吸収させて、それによって全細胞数から死細胞を除外することを可能にする生体染色の使用を含む。しかし、死細胞を生体染色で処理すると、しばしば細胞の外形線が分かりにくく、互いに重複または接する複数の細胞が単一の細胞として数え間違えられる可能性があり、不揃いの形状の単一の細胞が2個またはそれよりも多い細胞として数え間違えられることもある。生細胞は、明るいコアと暗い輪郭を持ち、その結果、コアと細胞の外形線とのコントラストによって、コンピュータソフトウェアまたはヒトの脳は個々の細胞を認識することができるので、それらが凝集していたり異なる大きさであったりしても互いに区別することが比較的容易である。死細胞では、細胞の内部および細胞の輪郭が共に暗いため、このようなコントラストはない。したがって、カウント目的のための死細胞の解凝集(declumping)はほとんど不可能である。市販業者から現在入手可能な一部の細胞カウンターは、制限された解像度と組み合わせた広い視野を有する。加えて、これらの特徴によって死細胞から生細胞を区別することが困難となり、死細胞が共に凝集するとさらに困難になる。
【発明の概要】
【0005】
このたび、細胞集団中の生細胞と死細胞とを識別する細胞カウントは、生体染色で集団を処理する工程、集団または集団のアリコートを照明する工程、および集団を透過する照明からの光のたった2つの画像を得る工程によって得ることができるということを見出した。この画像は、生体染色によって異なる程度で吸収される異なる波長帯の光の画像である。1つの画像は、ユーザーまたはセンサーが全細胞、生細胞および死細胞をカウントすること、または全細胞、生細胞および死細胞を表すカウントを達成することを可能にし、もう一方の画像は、ユーザーまたはセンサーが生細胞を死細胞から識別すること、または死細胞を別にして生細胞を表すカウントを達成することを可能にする。2つの照明から、識別可能な細胞の画像、好ましくは連続的な細胞の画像が得られ、2枚の画像は共同で、生細胞および死細胞の双方に関する全情報を提供する。特に、集団によって実質的に吸収されない光の画像であり得る細胞集団による吸収の程度のより低い光の画像は、ユーザーまたはセンサーが全細胞、生細胞および死細胞をカウントすること、または全細胞、生細胞および死細胞を表すカウントを達成することを可能にし、吸収の程度のより高い光の画像は、ユーザーまたはセンサーが生細胞を死細胞から識別すること、または死細胞を別にして生細胞を表すカウントを達成することを可能にする。前者の画像、即ち、全細胞数が導かれる画像は、細胞の外形線を際立たせることによって個々の細胞を示し、そうでなければ入射光の吸収に起因するであろう不確かな形状によるものではない。したがって、2つのカウントから、それぞれ、全細胞および生細胞の正確なカウントが得られ、引き算によって死細胞の正確なカウントも得られる。
[本発明1001]
以下の工程を含む、生細胞と死細胞とを識別するように細胞集団中の細胞をカウントするための方法:
(a)生細胞の膜よりも死細胞の膜を優先的に透過する生体染色で、集団のアリコートを処理する工程;
(b)そのように処理した該アリコートを照明し、かつ該アリコートを透過する光の第一および第二の画像を生成する工程であって、該第一の画像は、該生体染色によって実質的に吸収されない第一の波長帯の光の画像であり、かつ該第二の画像は、該生体染色によって少なくとも一部分が吸収される第二の波長帯の光の画像である、工程;ならびに
(c)該第一および該第二の画像中の細胞をカウントする工程であって、それによって、該第一の画像中でカウントされた細胞数が、該集団の全細胞を表し、該第二の画像中でカウントされた細胞数が、該集団の生細胞を表し、かつ該第一の画像中でカウントされた細胞数引く該第二の画像中でカウントされた細胞数が、該集団の死細胞を表す、工程。
[本発明1002]
工程(b)が、
第一の波長帯に制限された光を用いる第一の照明によってアリコートを照明し、かつ該アリコートを透過する該第一の照明からの光の該第一の画像を生成すること、および第二の波長帯に制限された光を用いる第二の照明の光によって該アリコートを別途照明し、かつ該アリコートを透過する該第二の照明からの光の該第二の画像を生成すること
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
工程(b)が、
第一の波長帯および第二の波長帯の双方を含む波長帯の光によってアリコートを照明し、かつ第一の波長帯のみの光の該第一の画像を生成すること、および該第二の波長帯のみの光の該第二の画像を生成すること
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
第一の波長帯および第二の波長帯の双方を含む波長帯の光が、白色光である、本発明1003の方法。
[本発明1005]
第一の波長帯の光のみを通す吸収フィルターを介して第一の画像を生成すること、および第二の波長帯の光のみを通す吸収フィルターを介して第二の画像を生成することを含む、本発明1003の方法。
[本発明1006]
第一の波長帯の範囲内の波長に対して選択的に反応性であるピクセルが第二の波長帯の範囲内の波長に対して選択的に反応性であるピクセルから分離しているCMOS画像センサーによって、第一および第二の画像を生成することを含む、本発明1003の方法。
[本発明1007]
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、メチレングリーン、サフラニン、アニリンイエロー、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、ヨウ化プロピジウム、臭化エチジウム、フルオレセインジアセテート、カルボキシフルオレセインジアセテート、フルオレセインイソチオシアネートジアセテート、およびアザフロキシン(azafloxin)からなる群より選択されるメンバーである、本発明1001の方法。
[本発明1008]
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、およびメチレングリーンからなる群より選択されるメンバーである、本発明1001の方法。
[本発明1009]
生体染色がトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、ヤーヌスグリーン、およびヨウ化プロピジウムからなる群より選択されるメンバーである、本発明1001の方法。
[本発明1010]
生体染色がトリパンブルーおよびヨウ化プロピジウムからなる群より選択されるメンバーである、本発明1001の方法。
[本発明1011]
生体染色がトリパンブルーである、本発明1001の方法。
[本発明1012]
生体染色がトリパンブルーであり、第一の照明の光が青色光、赤外線、および紫外線からなる群より選択されるメンバーであり、かつ第二の照明の光が赤色光、橙黄色光、および白色光からなる群より選択されるメンバーである、本発明1002の方法。
[本発明1013]
生体染色がトリパンブルーであり、第一の照明の光が青色光であり、かつ第二の照明の光が橙黄色光である、本発明1002の方法。
[本発明1014]
第一の画像が、アリコートを透過した光の画像である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
第一の画像が、アリコートによって散乱した光の画像である、本発明1001の方法。
[本発明1016]
第一および第二の画像がディジタル画像である、本発明1001の方法。
[本発明1017]
電荷結合素子、相補型金属酸化膜半導体、フォトダイオードアレイ、電荷注入素子、LCOS(liquid-crystal-on-silicon)イメージャー、および高温ポリシリコンイメージャーからなる群より選択されるメンバー上に第一および第二の画像を生成することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
電荷結合素子および相補型金属酸化膜半導体からなる群より選択されるメンバー上に第一および第二の画像を生成することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
相補型金属酸化膜半導体上に第一および第二の画像を生成することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
以下の工程を含む、生細胞と死細胞とを識別するように細胞集団中の細胞をカウントするための方法:
(a)生細胞の膜よりも死細胞の膜を優先的に透過する生体染色で、集団のアリコートを処理する工程;
(b)そのように処理した該アリコートを照明し、かつ該アリコートを透過する光の第一および第二の画像を生成する工程であって、該第一の画像は、第一の波長帯の光の画像であり、かつ該第二の画像は、該第一の波長帯よりも該第二の波長帯からの光を実質的に多く該生体染色が吸収するように選択された該第二の波長帯の光の画像である、工程;ならびに
(c)該アリコートの各細胞について、該第一の画像と該第二の画像との間のコントラストのあらゆる差を検出し、かつ
閾値を上回るコントラストの差を示す細胞が死細胞と定義されかつ閾値を下回るコントラストの差を示す細胞が生細胞と定義されるように選択された閾値に対して、前記差を比較し、かつ
死細胞と定義された該細胞を、生細胞と定義された該細胞とは別にカウントする工程。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明および選択された態様
本明細書において「生体染色」という用語は、死細胞と比べて生細胞の色素排除を示す、即ち、生細胞の膜よりも死細胞の膜を優先的に透過する染料または色素を示すために用いられる。生体染色は当技術分野において公知であり、本発明の実践では、当技術分野において公知のものを含む、色素排除を示す任意の色素を用いることができる。生体染色の例には、トリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、メチレングリーン、サフラニン、アニリンイエロー、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、ヨウ化プロピジウム、臭化エチジウム、フルオレセインジアセテート、カルボキシフルオレセインジアセテート、フルオレセインイソチオシアネートジアセテート、およびアザフロキシン(azafloxin)がある。これらの中でより一般的なものはトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、トリパンレッド、バイタルレッド、ニュートラルレッド、ヤーヌスグリーン、インドシアニングリーン、ヨウ化プロピジウム、およびメチレングリーンであり、特にトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、ヤーヌスグリーン、およびヨウ化プロピジウムである。さらなる関心対象のサブセットはトリパンブルー、ブリリアントクレシルブルー、メチレンブルー、ヤーヌスグリーン、およびヨウ化プロピジウムである。多くの状況において、トリパンブルーおよびヨウ化プロピジウムは最も好都合であり、一部の実施においてはトリパンブルー単独が有利である。特定の吸収プロフィールを達成するために生体染色の組み合わせが用いられ得るが、大半の場合は、単一の生体染色が、本明細書において求められる識別を達成するのに十分な結果を提供する。
【0007】
上記の通り、所望の細胞カウントは、異なる波長帯のたった2つの画像で得ることができるが、異なった波長帯の3つまたはそれよりも多い同様の画像でもカウントを得ることができる。一つの画像では、染料が膜を透過した細胞は、膜を透過していない細胞と識別可能であり、もう一つの画像では、染料が膜を透過した細胞は、膜を透過していない細胞と識別できない。ヒトの眼で互いを識別できる画像および機器の使用によって識別可能な画像は、すべて本発明の範囲内である。多くの場合、より高い吸収を示す画像は、イメージャーに伝わる光または染料が透過した細胞によって散乱する光のいずれも全くないように、光が、部分的とは対照的に、完全に生体染料によって吸収された画像である。吸収の程度の差は、いくつかの場合には、肉眼によるよりも機器の使用によってより正確に検出することができる。大半の場合において、吸収および非吸収の識別は観察者または機器の検出限界によって決定される。所与の照明の波長スペクトルは単一の吸収ピーク、2つもしくはそれよりも多い一連のこのようなピーク、幅広のピークもしくは幅の狭いピーク、長い尾を引くピーク、またはこのようなピークの組み合わせであり得る。吸収の差は光学フィルターによって、または単色LEDの使用によって、またはスペクトルの選択されたセグメントに対して検出を制限するその他の手段によって増強することができる。
【0008】
生体染色によって吸収されなかった光によって生じる画像は、細胞集団を通過する光の透過によって、または細胞集団による光の散乱によって得ることができる。散乱画像は暗視野顕微鏡検査法によって得ることができる。非吸収画像が透過によって得られるか散乱によって得られるかに関わらず、吸収を示す画像と非吸収を示す画像との識別は様々な任意の方法において達成することができる。本発明の特定の態様において、各画像は、その他の照明の波長帯とは異なるある波長帯での別々の照明の使用によって得られ得る。これらの態様において、各画像の波長帯は照明の波長帯によって制御され、画像自体は、細胞集団を透過したまたは細胞集団によって散乱した照明光の一部、またはそのように透過もしくは散乱した光のすべてのいずれかであり得る。したがって、画像の波長帯は照明によって決定される。その他の態様において、各画像の波長帯は、検出器に到達する波長帯を制限することによって制御されるか、または照明の波長帯のこのような制限を伴うことなく検出器によって検出される。このことは、検出のために指定された波長帯の光のみを選択する検出器によって、または細胞集団と検出器との間にフィルターを挿入することによって達成され得る。
【0009】
画像の波長は、所望の吸収の程度の差を達成するために生体染色の選択と合わせて選択する。生体染色としてトリパンブルーの例では、トリパンブルーは青色域の光の吸収が極めて低いために、吸収のないまたはより低いもしくは最小限の吸収を示す画像は、青色光の画像であり得る。したがって、照明または検出において波長弁別が達成されるかどうかに依存して、細胞集団は青色光単独で、または細胞集団と検出器との間に青色光のフィルターを設置してより広いスペクトルの光で照射してよい。同様にトリパンブルーによって吸収されない、即ち、透過または散乱する青色光の代替は赤外線および紫外線である。吸収されない光の画像から、全細胞、生細胞および死細胞を示すカウントを達成することができる。続いて、吸収を示すまたは非吸収画像よりも高い吸収の程度を示す画像は、スペクトルの実質的な部分として青色域の範囲外の波長を含む任意の光で達成され得る。トリパンブルーによって吸収される光、即ち、青色域の範囲外の波長の実質的な部分を含む光の例は赤色光、橙黄色光、および白色光である。橙黄色光は約590nmのその波長の部分に認められ、これはトリパンブルーの吸収ピークと一致する。この第二の照明からの画像は生細胞のカウントを可能にする。
【0010】
画像は連続して取得され得、この場合、画像が取得される順序は重要でない。したがって、より低吸収性または非吸収性の画像は、生体染色による吸収を示す画像の前または後のいずれでも実施することができ、逆も同様である。光路のどこに波長弁別を課すかに応じて、照明は白色光源のような通常の光源によって、もしくはカラーフィルターを併用した白色光源によって、またはマルチカラーの発光ダイオード(LED)によって達成することができる。光源の選択は重要ではなく、様々であり得る。光源の一つのタイプは、蛍光コーティングを持つ単一の白色発光ダイオード(LED)である。一つの例は、Philips Lumileds Lighting Company, San Jose, California, USAから入手可能なLUXEON(登録商標) Rebel White、部品番号 LXML-PWN1-0050である。照明は透過照明または落射照明のいずれであってもよいが、多くの機器の配置では透過照明の方が好都合である。照明はコリメーティングレンズを介して実施してもよい。
【0011】
画像はアナログ画像またはディジタル画像のいずれであってもよい。一部の態様において、ディジタル画像が好ましい。画像は当技術分野において公知の様々なタイプのセンサーによって得ることができる。例は、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、フォトダイオードアレイ、電荷注入素子、LCOS(liquid-crystal-on-silicon)イメージャー、および高温ポリシリコンイメージャーである。CCDおよびCMOSの検出器はディジタル画像化において特に好都合である。異なる波長に選択的に反応性であるピクセルを有するCMOS画像センサーを用いて異なる画像を生成することができ、このようなセンサーは、取得しようとするすべての画像の波長帯を含む波長帯を用いて照明が実施される場合に特に有用であり得る。勿論、このような照明は白色光を用いてフィルターの必要なしに達成することができる。したがって、二画像のシステムでは、センサーの一部のピクセルが一つの画像の波長帯の範囲内の波長に反応性であり、その他のピクセルはもう一方の画像の波長帯の範囲内の波長に反応性である。
【0012】
ディジタル画像は、当業者によって容易に編集されるプログラムおよび市販のソフトウェアを含む任意のパターン認識プログラムによって加工され得る。このようなプログラムのオープンソースの例は、National Institutes of Healthにて開発されてCollins, T.J., "ImageJ for microscopy," BioTechniques 43(1 Suppl.): 25-30 (July 2007)により報告されたJavaをベースとする画像処理プログラムであるImageJである。血液学の系におけるImageJの使用は、Gering, T.E.およびC. Atkinson, "A rapid method for counting nucleated erythrocytes on stained blood smears by digital image analysis," J. Parasitol, 90(4): 879-81 (2004)により報告されている。死細胞に対して画像コントラストを与える第二の照明波長を加えることによって、本発明の細胞カウントシステムはさらなる自由度を持ち、画像コントラストの変化は、画像解析ソフトウェアに新しい選別器が加わることを可能にする。一つの画像中の細胞を第二の画像中の同一の細胞(即ち、同一の位置の細胞)と比較する。2つの画像間の所与の細胞のコントラストが閾値よりも大きく異なる場合は、細胞は死細胞として同定され、差がないまたは閾値よりも小さな差がある場合は、細胞は生細胞として同定される。閾値は、生存していることが公知である細胞と、死滅していることが公知である細胞との画像を比較することによって予め決定され得るまたは設定され得る。一つのコントラストクラスの細胞をもう一つのコントラストクラスの細胞から分離するために、弁別分析として当技術分野において公知の数学的解析を画像に適用することができる。
【0013】
本発明に基づく照明および画像化は自動細胞カウンターに特に適している。自動細胞カウンターの説明は、Chang, J.K.らの、2008年8月12日に発行された米国特許第7,411,680号 B2の"Device for Counting Micro Particles"、Chang, J.K.らの、2006年10月5日に公開された米国特許出願公開第2006/0223165号A1の"Device for Counting Cells and Method for Manufacturing the Same"、および2010年8月27日に出願された同時係属の米国特許出願第12/860,979号の名称"Compact Automated Cell Counter"、発明者McCollumら(Bio-Rad Laboratories, Inc.、譲受人)に記載されている。
【0014】
本発明に従ってカウントすることができる細胞は接着細胞および非接着細胞の双方を含み、非接着細胞は懸濁液中の細胞、生物学的組織中の細胞、培養培地中の細胞、播種された細胞、またはその他の任意の形態の細胞であり得る。本明細書に開示される方法によりカウントすることができる細胞の例は、赤血球、白血球、血小板、主たる肝細胞および肝臓上皮細胞を含む肝臓の細胞または肝臓由来の細胞、一般的な上皮細胞、一般的な内皮細胞、神経細胞、間葉細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、癌由来の細胞、骨髄細胞、ランゲルハンス島、副腎髄質細胞、骨芽細胞、破骨細胞、Tリンパ球、ニューロン、グリア細胞、神経節細胞、網膜細胞、ならびに筋芽細胞である。幹細胞も用いることができる;例は間葉幹細胞、神経幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、マウス胚幹細胞、およびヒト胚幹細胞である。その他の多くの例が存在し、当業者には容易に明らかである。
【0015】
本明細書に添付される特許請求の範囲において、「一つの(a)」および「一つの(an)」という用語は「一つまたは複数」を意味することを意図する。「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」のようなその変化形は、工程または要素の詳述に先行する場合は、さらなる工程または要素の付加が任意であり、除外されないことを意味することを意図する。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、およびその他の刊行された参考資料は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書に引用される任意の参考資料または一般的な任意の先行技術と本明細書の明示的な教示との間の矛盾はいずれも、本明細書における教示を支持して解消されることを意図する。これは、単語またはフレーズに関して技術分野で理解されている定義と、同一の単語またはフレーズに関して本明細書で例示的に示している定義との間のあらゆる矛盾を含む。