特許第5901645号(P5901645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901645先進の触媒式スートフィルタならびにその作製方法および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901645
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】先進の触媒式スートフィルタならびにその作製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20160331BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160331BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160331BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B01J29/74 AZAB
   B01D53/86 222
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301C
   B01J37/02 301C
   B01D53/86 100
   F01N3/022 C
   F01N3/023 A
   F01N3/025 101
   F01N3/24 E
   F01N3/28 301J
   F01N3/28 301P
   F01N3/10 A
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-540997(P2013-540997)
(86)(22)【出願日】2011年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-509244(P2014-509244A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】US2011061681
(87)【国際公開番号】WO2012071338
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月17日
(31)【優先権主張番号】12/954,067
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
(72)【発明者】
【氏名】ロス,スタンリー エイ
(72)【発明者】
【氏名】プンケ,アルフレッド ハー
(72)【発明者】
【氏名】グラミシオニ,ゲーリー エイ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/083313(WO,A2)
【文献】 特開2004−321990(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/062733(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73、53/86−90、
53/94−96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在する多孔質壁によって境界が画定されて形成されるとともに、開口入口端部及び閉鎖出口端部を有する入口経路と閉鎖入口端部及び開口出口端部を有する出口経路を備え、長手方向に延在する複数の経路を有するウォールフローモノリスと、
上記ウォールフローモノリスの壁部に浸透する第1のウォッシュコートと、
上記ウォールフローモノリスの上記経路の壁上に配置される第2のウォッシュコートと、を備え、
上記第1のウォッシュコートが、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウム、又は(2)ゼオライト及びアルミナのうちの一方を含み、
上記第2のウォッシュコートが、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウム、又は(2)ゼオライト及びアルミナのうちの他方を含み、
前記多孔質壁は、所定の平均孔径を有し、及び
前記第1のウォッシュコートは、ウォッシュコートスラリーから形成され、該ウォッシュコートスラリーは固体を有し、該固体は、前記多孔質壁の前記平均孔径以下の平均粒径を有する触媒式スートフィルタ。
【請求項2】
上記第2のウォッシュコートが、上記入口経路の壁上に配置される、請求項1に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項3】
上記第2のウォッシュコートが、上記出口経路の壁上に配置される、請求項1または2のいずれかに記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項4】
上記白金は、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の量で存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項5】
上記パラジウムは、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項6】
ゼオライト及びアルミナを含む上記ウォッシュコートは、約0.05g/in〜約0.3g/inの範囲のゼオライトと、約0.2g/in〜約0.5g/inの範囲のアルミナと、を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項7】
ゼオライト及びアルミナを含む上記ウォッシュコートは、酸素貯蔵成分(OSC)に担持されたパラジウムをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項8】
上記パラジウムは、約0.5g/ft〜約30g/ftの範囲の量で存在する、請求項7に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項9】
上記ウォールフローモノリスは、約40%〜約70%の範囲の多孔率及び約10μm〜30μmの範囲の平均孔径を有するコーディエライトを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒式スートフィルタと流動連通したディーゼルエンジンを備え、
上記ディーゼルエンジンと上記触媒式スートフィルタとの間においてこれら双方と流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒をさらに備える、排気処理システム。
【請求項11】
上記触媒式スートフィルタの下流において該触媒式スートフィルタと流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒をさらに備える、請求項10に記載の排気処理システム。
【請求項12】
触媒を被覆したウォールフローモノリスを作製する方法であって、
長手方向に延在する多孔質壁によって境界が画定されて形成されるとともに長手方向に延在する経路を有し、該経路が、開口入口端部および閉鎖出口端部を有する入口経路と、閉鎖入口端部および開口出口端部を有する出口経路と、を備え、上記多孔質壁が平均孔径を有するウォールフローモノリスを提供する工程と、
(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、又は(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの一方を含み、上記多孔質壁の上記平均孔径以下程度の平均粒径を有する固体を含む第1のウォッシュコートスラリを調製する工程と、
上記第1のウォッシュコートスラリが上記多孔質壁に浸透するように上記第1のウォッシュコートスラリの被覆を分散させる工程と、
上記ウォールフローモノリスを乾燥させ、焼成する工程と、
(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、又は(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの他方を含み、上記多孔質壁の上記平均孔径以上程度の平均粒径を有する固体を含む第2のウォッシュコートスラリを調製する工程と、
上記第2のウォッシュコートスラリを用いて上記ウォールフローモノリスの経路壁に被覆を施す工程と、
上記ウォールフローモノリスを乾燥させ、焼成する工程と、
を含む、作製方法。
【請求項13】
水に分散されたゼオライト及びアルミナを含む上記ウォッシュコートスラリは、OSCに含浸させた少なくとも1つの白金族金属をさらに含み、
水に分散されたゼオライト及びアルミナを含む上記ウォッシュコートスラリを調製する工程は、初期湿潤技術によって上記OSCをパラジウム溶液で含浸させ、上記ゼオライト及び上記アルミナを添加する前に上記含浸させたOSCを水に分散させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記第2のウォッシュコートスラリを調製する工程は、会合性増粘剤及び界面活性剤のうちの少なくとも1つを上記スラリに添加する工程をさらに含む、請求項12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素、一酸化炭素、及び微粒子物質を含む排気ガス流を処理する方法であって、
請求項1に記載の触媒式スートフィルタに前記排気ガス流を接触させる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ディーゼルエンジン排気放出システムのための触媒式スートフィルタならびにその製造および使用のための方法を開示する。より具体的には、ウォールフローモノリスの壁に浸透する第1のウォッシュコートおよびウォールフローモノリスの壁上に配置される第2のウォッシュコートを有する触媒式スートフィルタを記載する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン排気は、一酸化炭素(「CO」)、未燃炭化水素(「HC」)、および窒素酸化物(「NOx」)等のガス状排出物だけでなく、いわゆる微粒子または微粒子物質を構成する凝縮相材料(液体および固体)も含有する不均質な混合物である。触媒組成物およびこの組成物が上に配置される基質は、これらの排気成分のいくらかまたはすべてを無害の成分に変換するためにディーゼルエンジン排気系内に提供されることが多い。例えば、ディーゼル排気系は、ディーゼル酸化触媒、スートフィルタ、およびNOxの還元のための触媒のうちの1つ以上を含有することができる。
【0003】
ディーゼル排気の全微粒子物質排出物は、3つの主な成分からなる。1つの成分は、固体の、乾燥した、固体炭素質成分、またはスート成分である。この乾燥した炭素質物質は、ディーゼル排気と一般に関連付けられる視認可能なスート排出物の原因となる。この微粒子物質の第2の成分は、可溶性有機成分(「SOF」)である。可溶性有機成分は、揮発性有機成分(「VOF」)と呼ばれることもあり、この用語が本明細書に使用される。VOFは、ディーゼル排気の温度に依存して、蒸気またはエアロゾル(液体凝縮物の微細な液滴)のいずれかとしてディーゼル排気中に存在し得る。それは、米国重質暫定的連邦試験手順(Heavy Duty Transient Federal Test Procedure)等の標準測定試験によって規定されるように、希釈した排気中52℃の標準の微粒子捕集温度で凝縮した液体として一般に存在する。これらの液体は、(1)ピストンが上下するたびにエンジンのシリンダー壁から掃去される潤滑油、および(2)未燃焼または部分燃焼したディーゼル燃料の2つの源から発生する。
【0004】
微粒子物質の第3の成分は、いわゆる硫酸塩成分である。硫酸塩成分は、ディーゼル燃料中に存在する少量の硫黄成分から形成される。SOの一部は、ディーゼルの燃焼中に形成され、次々に、排気中に水と迅速に結合して硫酸を形成する。硫酸は、エアロゾルとして微粒子で凝縮相として捕集し、または他の微粒子成分に吸着され、それによってTPMの質量に添加する。
【0005】
ハニカムウォールフローフィルタ、巻付け式繊維フィルタまたは充填式繊維フィルタ、開セル状の発泡体、焼結金属フィルタ等のディーゼル排気から微粒子物質を除去するのに有効である多くの既知の構造がある。しかしながら、セラミックウォールフローフィルタは、最も注目を集める。これらのフィルタは、ディーゼル排気からの微粒子物質の90%超を除去することができる。このフィルタは、排気から粒子を除去するための物理的構造であり、この堆積する粒子は、エンジンのフィルタからの背圧を増大させる。したがって、この堆積する粒子は、フィルタから連続的または周期的に焼き飛ばされ、許容し得る背圧を維持しなければならない。残念ながら、炭素スート粒子は、500℃を超える温度を必要とし、酸素リッチ(リーン)排気条件下で燃焼する。この温度は、ディーゼル排気中に典型的に存在するものより高い。
【0006】
組成物が配置される触媒組成物および基質は典型的に、ディーゼルエンジン排気系内に設けられ、これらの排気成分のいくらかまたはすべてを無害の成分に変換する。例えば、白金族金属、卑金属、およびこれらの組み合わせを含有し、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれ得る、酸化触媒は、未燃炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)ガス状汚染物質の両方、ならびに二酸化炭素および水へのこれらの汚染物質の酸化による一部の比率の微粒子物質の変換を促進することによってディーゼルエンジン排気の処理を容易にする。そのような触媒は、ディーゼルエンジンの排気中に配置され、大気に放出する前に排気を処理する、様々な基質(例えば、モノリス基質を通るハニカム流)上に一般に配置されてきた。ある酸化触媒は、NOのNOへの酸化も促進する。
【0007】
自動車製造業者は、エンジンにより近い強連結位置でDOCを配置するのに役立つためにハニカム基質を通る流れに配置されるディーゼル酸化触媒のサイズを縮小させることを求めている。結果として、DOCのサイズの減少では、排出要件を満たす炭化水素および一酸化炭素を完全に酸化させることができない。結果として、ますます厳しい排出要件を満たす炭化水素および一酸化炭素の酸化において支援することができる触媒式スートフィルタを提供することが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態は、ウォールフローモノリス、第1のウォッシュコート、および第2のウォッシュコートを備える触媒式スートフィルタを対象とする。該ウォールフローモノリスは、複数の長手方向に延在する経路であって、上記経路の境界を示し、それを画定する長手方向に延在する多孔質壁によって形成される、経路を有する。該経路は、開口入口端部および閉鎖出口端部を有する入口経路と、閉鎖入口端部および開口出口端部を有する出口経路とを備える。第1のウォッシュコートは、該ウォールフローモノリスの該壁に浸透する。第2のウォッシュコートは、該ウォールフローモノリスの該経路の該壁上に配置される。第1のウォッシュコートは、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウム、または(2)ゼオライト及びアルミナのうちの一方を含み、第2のウォッシュコートは、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウム、または(2)ゼオライト及びアルミナのうちの他方を含む。
【0009】
本発明の追加の実施形態は、触媒式スートフィルタと流動連通したディーゼルエンジンを備える排気処理システムを対象とする。詳細な実施形態は、該ディーゼルエンジンと該触媒式スートフィルタとの間で両方と流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒をさらに備える。さらなる実施形態において、排気処理システムは、該触媒式スートフィルタの下流でそれと流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒をさらに備える。
【0010】
詳細な実施形態において、第2のウォッシュコートは、該入口経路の該壁上に配置される。特定の実施形態において、第2のウォッシュコートは、該出口経路の該壁上に配置される。
【0011】
いくつかの実施形態において、該白金は、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の負荷量で存在する。1つ以上の実施形態において、該パラジウムは、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の負荷量で存在する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、ゼオライト及びアルミナを含む該ウォッシュコートは、約0.05g/in〜約0.3g/inの範囲のゼオライトと、約0.2g/in〜約0.5g/inの範囲のアルミナとを含む。
【0013】
詳細な実施形態において、ゼオライト及びアルミナを含む該ウォッシュコートは、酸素貯蔵成分(OSC)に担持されたパラジウムをさらに含む。特定の実施形態において、該パラジウムは、約0.5g/ft〜約30g/ftの範囲の負荷量で存在する。
【0014】
特定の実施形態において、該ウォールフローモノリスは、約40%〜約70%の範囲の多孔率および約10μm〜30μmの範囲の平均孔径を有するコーディエライトを含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、触媒を被覆したウォールフローモノリスを作製する方法を対象とする。複数の長手方向に延在する経路であって、上記経路の境界を示し、それを画定する長手方向に延在する多孔質壁によって形成される、経路を有するウォールフローモノリスが提供される。該経路は、開口入口端部および閉鎖出口端部を有する入口経路と、閉鎖入口端部および開口出口端部を有する出口経路とを備える。該ウォールフローモノリスの該多孔質壁は、平均孔径を有する。第1のウォッシュコートスラリが調製される。第1のウォッシュコートスラリは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの一方を含む。第1のウォッシュコートスラリは、該多孔質壁の該平均孔径ほど以下の平均粒径を有する固体を有する。第1のウォッシュコートスラリの被覆は、第1のウォッシュコートスラリが該ウォールフローモノリスの該多孔質壁に浸透するように分散される。該ウォールフローモノリスは乾燥され、焼成される。第2のウォッシュコートスラリが調製される。第2のウォッシュコートスラリは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの他方を含む。第2のウォッシュコートスラリは、該多孔質壁の該平均孔径ほど以上の平均粒径を有する固体を有する。第2のウォッシュコートスラリで該ウォールフローモノリスの該経路壁上に被覆が適用される。該ウォールフローモノリスは乾燥され、焼成される。
【0016】
詳細な実施形態において、水に分散されたゼオライト及びアルミナを含む該ウォッシュコートスラリは、OSCに含浸させた少なくとも1つの白金族金属をさらに含む。ある実施形態において、水に分散されたゼオライト及びアルミナを含む該ウォッシュコートスラリを調製することは、初期湿潤技術によってOSCをパラジウム溶液で含浸させることと、該ゼオライトおよび該アルミナを添加する前に該含浸させたOSCを水に分散することとを含む。さらなる実施形態において、第2のウォッシュコートスラリを調製することは、会合性増粘剤(会合型増粘剤)および界面活性剤のうちの少なくとも1つをスラリに添加することをさらに含む。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態は、炭化水素、一酸化炭素、および微粒子物質を含む排気ガス流を処理する方法を対象とする。該排気ガス流は、該ウォールフローモノリスの該壁上に配置される第2のウォッシュコートと接触される。第2のウォッシュコートは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの一方を含む。該排気ガス流は、ウォールフローモノリスの壁に浸透する第1のウォッシュコートと接触される。第1のウォッシュコートは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの1つの他方を含む。
【0018】
詳細な実施形態において、該排気ガス流は、第2のウォッシュコートの前に第1のウォッシュコートに接触する。特定の実施形態において、該排気ガス流は、第1のウォッシュコートの前に第2のウォッシュコートに接触する。
【0019】
いくつかの実施形態において、水に分散されたゼオライト及びアルミナを含む該ウォッシュコートは、酸素貯蔵成分(OSC)に担持されたパラジウムをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の1つ以上の実施形態による触媒式スートフィルタの部分断面を示す。
図2】本発明の1つ以上の実施形態によるウォールフローモノリスの部分断面を示す。
図3】ウォールフローフィルタ基質の斜視図を示す。
図4】本発明の1つ以上の実施形態による排出処理システムの一実施形態の概略図を示す。
図5】実施例1〜3の温度の関数としてCO変換率のグラフを示す。
図6】実施例1〜3の温度の関数として炭化水素変換率のグラフを示す。
図7】実施例4および5の温度の関数としてCO変換率のグラフを示す。
図8】実施例4および5の温度の関数として炭化水素変換率のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明が以下の説明に記述される構造または工程段階の詳細に限定されないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な方法で実践または実行することができる。
【0022】
本出願では、以下の用語は、後述するそれぞれの意味を有する。
【0023】
「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」等の用語は、エンジンからの放出物、または触媒式スートフィルタを含むがこれに限定されない1つ以上の他の触媒系成分の下流の放出物を指す。
【0024】
「耐火性金属酸化物」は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、および物理的混合物または原子をドープした組み合わせを含むその化学的組み合わせを指す。
【0025】
「白金族金属成分」は、白金族金属またはそれらの酸化物のうちの1つを指す。
【0026】
「希土類金属」は、ランタン、セリウム、プラセオジム、およびネオジムを含む元素周期表に定義されるランタン系列のうちの1つ以上の酸化物を指す。
【0027】
「ウォッシュコート」は、処理されるガス流が経路を通ることができるように十分に多孔質である、モノリス基質またはフィルタ基質を通るハニカム流等の耐火性基質に適用される触媒または他の材料の薄い接着性被覆の当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書で使用され、Heck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley−Interscience,2002,pp.18−19に記載されるように、ウォッシュコート層は、モノリシック基質または下層のウォッシュコート層の表面上に配置される組成的に別個の材料層を含む。触媒物品は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、それぞれのウォッシュコート層は、独自の化学触媒機能を有することができる。
【0028】
「流動連通」は、排気ガスまたは他の流体が成分間および/または導管間を流れることができるように、成分および/または導管が隣接されることを意味する。
【0029】
「下流」は、成分に先行する成分よりエンジンからさらに遠い経路内の排気ガス流中の成分の位置を指す。例えば、ディーゼル微粒子フィルタがディーゼル酸化触媒からの下流と呼ばれるとき、排気導管内のエンジンから生じる排気ガスは、ディーゼル微粒子フィルタを通じて流れる前にディーゼル酸化触媒を通じて流れる。したがって、「上流」は、別の成分に対してエンジンにより近く位置する成分を指す。
【0030】
本発明の実施形態は、COおよび炭化水素の酸化活性を向上させた触媒式スートフィルタを作製する方法を対象とする。従来の触媒式スートフィルタは、多孔質フィルタ壁の空き空間の内側に置かれる触媒被覆を有し、ここですべての成分が壁内で密接に混合される。本発明の1つ以上の実施形態は、フィルタの多孔質壁内に置かれる、白金及びパラジウム等の主な貴金属成分を有する。ゼオライトおよび/または酸素貯蔵成分の別個の薄い層(または部分層)は、フィルタ壁の上に被覆される。そうすることによって、フィルタの酸化活性は、同じ組成を有する標準被覆方法と比較して大いに増大される。
【0031】
本発明の1つ以上の実施形態は、図1〜3に示すように、触媒式スートフィルタを対象とする。触媒式スートフィルタは、複数の長手方向に延在する経路であって、上記経路の境界を示し、それを画定する長手方向に延在する多孔質壁14によって形成される、経路を有するウォールフローモノリス10を備える。図1および2は、入口経路16、出口経路18および多孔質壁14を示す、ウォールフローフィルタ基質とも呼ばれる、ウォールフローモノリス10の部分断面を示す。ウォールフローモノリス10は概して、図1および2に示される複数の経路を備えることを理解すべきである。
【0032】
示されるウォールフローモノリス10は、流路とも呼ばれる、複数の交互に閉鎖した経路11を有し、微粒子フィルタとしての機能することができる。ウォールフローモノリス10は、入口端部30および出口端部32を有する。ウォールフローモノリス10の入口経路16は、ガス流が入口経路16の出口端部32を通過するのを防ぐことに有効である、出口プラグ13を有する開口入口端部および出口端部32を有する。出口経路18は、入口端部および開口出口端部で入口プラグ12を有する。交互経路11は、反対側の端部で接続され、入口端部30および出口端部32で格子状パターンを形成する。この構成は、ガス流20に入口経路16の開口端部を通じてウォールフローモノリス10を入れさせる。ガス流20は、出口プラグ13によって止められ、多孔質壁14を通じて出口経路18へ拡散される。ガス流20は、入口プラグ12のため、入口経路16に戻って通過することができない。
【0033】
ウォールフローモノリス10の多孔質壁14のそれぞれは、複数の細孔15を有する。図1は、多孔質壁14内の単純な開口である細孔15を示す部分断面を示す。しかしながら、細孔15は、それらが多孔質壁14の表面17に結合し得る、多孔質壁14の三次元構造全体にわたってねじれ、曲がることを当業者によって理解されるであろう。第1のウォッシュコート22は、細孔15の表面を被覆するウォールフローモノリス10の多孔質壁14に浸透する。第1のウォッシュコート22は、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウムまたは(2)ゼオライト及びアルミナのうちの一方から選択される。第2のウォッシュコート24は、ウォールフローモノリス10の経路の多孔質壁14の表面17上に配置される。第2のウォッシュコート24は、(1)耐火性金属酸化物担持粒子上の白金及びパラジウムまたは(2)ゼオライト及びアルミナのうちの他方を含む。理解されるように、一実施形態において、白金及びパラジウム含有ウォッシュコートは、ゼオライト及びアルミナ含有ウォッシュコートが多孔質壁の表面上に配置される間、多孔質壁に浸透する。別の実施形態では、ゼオライト及びアルミナ含有ウォッシュコートは、白金及びパラジウム含有ウォッシュコートが多孔質壁の表面上に配置される間、多孔質壁に浸透する。
【0034】
図1に示す実施形態において、第2のウォッシュコート24は、入口経路16の多孔質壁14の表面17上に位置する。これは、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。別の実施形態(図示せず)において、第2のウォッシュコート24は、出口経路18の多孔質壁14の表面17上に位置する。これは、ガス流20矢印の方向を反転することによって想定されることが可能であり、切り替えられる入口経路16および出口経路18をもたらす。
【0035】
特定の実施形態において、第2のウォッシュコート24は、入口経路16および出口経路18の両方の多孔質壁14の表面17上に位置する。これらの状況において、入口経路16の多孔質壁14上の第2のウォッシュコート24の特定の組成は、出口経路18の多孔質壁14上の第2のウォッシュコート24のものと同じまたはそれと異なり得る。第2のウォッシュコート24の組成のさらなる説明は、以下で説明する。
【0036】
ウォールフローモノリスは、当業者に既知である任意の好適な材料であり得る。好適なウォールフローモノリス材料の非限定例としては、コーディエライト、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、およびムライトが挙げられる。ウォールフローモノリスの多孔率はまた、得られたフィルタの所望の性質に応じて異なり得る。詳細な実施形態において、モノリスの多孔率は、約40%〜約70%の範囲である。特定の実施形態において、モノリスの多孔率は、約50%である。モノリスの平均孔径もまた、異なり得、モノリス材料に応じて異なる。いくつかの実施形態において、モノリスは、約10μm〜30μmの範囲の平均孔径を有する。
【0037】
第1のウォッシュコート22中の白金及びパラジウムの負荷量が異なり得る。詳細な実施形態において、白金は、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の負荷量で存在する。1つ以上の実施形態において、白金は、約0.5〜約30g/ftの範囲、約1g/ft〜約30g/ftの範囲、約0.75g/ft〜約60g/ftの範囲、または約1.5g/ft〜約15g/ftの範囲の負荷量で存在する。様々な実施形態において、第1のウォッシュコート22中の白金の負荷量は、約0.5g/ft、0.75g/ft、1g/ft、1.25g/ft、1.5g/ft、1.75g/ft、2g/ft、3g/ft、4g/ft、5g/ft、6g/ft、7g/ft、8g/ft、9g/ft、10g/ft、15g/ft、または20g/ft以上である。
【0038】
詳細な実施形態において、パラジウムは、約0.5g/ft〜約80g/ftの範囲の負荷量で存在する。1つ以上の実施形態において、パラジウムは、約0.5〜約30g/ftの範囲、約0.5g/ft〜約15g/ftの範囲、約1g/ft〜約80g/ftの範囲、約1g/ft〜30 80g/ft、または約1g/ft〜約15g/ftの範囲の負荷量で存在する。様々な実施形態において、第1のウォッシュコート22中のパラジウムの負荷量は、約0.5g/ft、1g/ft、1.5g/ft、2g/ft、3g/ft、4g/ft、または5g/ft以上である。
【0039】
白金及びパラジウムを含有するウォッシュコート中の担持粒子は、当業者に既知である任意の担体を含み得る。詳細な実施形態において、白金及びパラジウムを含有するウォッシュコート中の担持粒子は、1つ以上の耐火性金属酸化物を含み得る。特定の実施形態において、耐火性金属酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、およびジルコニアのうちの1つ以上である。白金及びパラジウムを含有するウォッシュコート中の担持粒子は、ウォールフローモノリスの平均孔径に応じて異なり得る。第1のウォッシュコート22がウォールフローモノリスの多孔質壁14に浸透することを確実にするために、白金及びパラジウムのウォッシュコートがウォールフローモノリスの壁に浸透する実施形態において、ウォールフローモノリスの平均孔径未満の担体の粒径を有することが有用であり得る。詳細な実施形態において、担持粒子は、約10μm以下のD90を有する。D90は、約90%の粒子がより細かい粒径を有する規定サイズである。特定の実施形態において、第1のウォッシュコート中の担持粒子は、約9μm、8μm、7μm、6μm、または5μm以下のD90を有する。1つ以上の実施形態において、第1のウォッシュコート22のD90は、第2のウォッシュコート24のD90以下である。
【0040】
ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコート中のゼオライトは、任意の好適なゼオライトであり得る。詳細な実施形態において、ゼオライトは、αゼオライト、βゼオライト、およびY型ゼオライトのうちの1つ以上である。特定の実施形態において、ゼオライトは、βゼオライトである。詳細な実施形態において、ゼオライトは、約0.05g/in〜約0.3g/inの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、約0.1g/in〜約0.2g/inの範囲の量で存在する。様々な実施形態において、ゼオライトは、約0.05g/in、0.1g/in、0.15g/in、0.2g/in、または0.25g/in以上の量で存在する。特定の実施形態において、ゼオライトは、約0.1g/inで存在する。
【0041】
ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコート中のアルミナは、約0.2g/in〜約0.5g/inの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態において、アルミナは、約0.3g/in〜約0.4g/inの範囲の量で存在する。様々な実施形態において、アルミナは、約0.2g/in、0.3g/in、または0.4g/in以上の量で存在する。特定の実施形態において、アルミナは、約0.5g/inで存在する。
【0042】
特定の実施形態において、ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートは、約0.05g/in〜約0.3g/inの範囲のゼオライトおよび約0.2g/in〜約0.5g/inの範囲のアルミナを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、アルミナおよびゼオライトを含有するウォッシュコートは、酸素貯蔵成分(OSC)に担持された白金族金属をさらに含む。白金族金属は、任意の好適な白金族金属であり得る。特定の実施形態において、ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコート中の白金族金属は、パラジウムである。酸素貯蔵成分は、当該技術分野で既知の任意の好適なOSCであり得る。詳細な実施形態において、OSCは、セリア、セリア含有化合物、および希土類金属含有化合物のうちの1つ以上である。OSCは、約0.05g/in〜約0.2g/inの範囲の量で存在し得る。
【0044】
ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコート中のOSCに担持されたパラジウムの量は、触媒式スートフィルタの所望の性質に応じて、異なり得る。詳細な実施形態において、パラジウムは、約0.5g/ft〜約30g/ftの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態において、パラジウムは、約0.5g/ft〜約15g/ftの範囲、または約1g/ft〜約15g/ftの範囲の量で第2のウォッシュコート24中に存在する。様々な実施形態において、パラジウムは、約0.05g/ft、1g/ft、2g/ft、3g/ft、4g/ft、5g/ft、10g/ft、または15g/ft以上の量で存在する。特定の実施形態において、パラジウムは、ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコート中に約15g/ftの量で存在する。
【0045】
第2のウォッシュコート24はまた、会合性増粘剤および界面活性剤を含むが、これに限定されない他の成分を含んでよい。会合性増粘剤は、第2のウォッシュコート24の粘度を高めるために添加されてよい。界面活性剤は、表面張力を低下させるために第2のウォッシュコート24に添加されてよい。第2のウォッシュコートとともに使用するための好適な界面活性剤は、アニオン、カチオン、非イオン性、または両性であり得る。1つ以上の実施形態による好適な会合性増粘剤としては、会合性ポリマーと呼ばれ得る、疎水性エトキシレートウレタン等のポリマーが挙げられる。好適な会合性増粘剤としては、Byk Chemie、Rohm and Haas Company、およびBASFから入手可能な会合性ポリマーと呼ばれる、HEUR(疎水性エトキシレートウレタン)が挙げられる。1つ以上の実施形態において、高い擬塑性指数(せん断力を有しない高い粘度)または高い減粘の会合性増粘剤を有する会合性増粘剤が有用である。一実施形態において、会合性増粘剤は、安定pH領域を有し、非イオン性質である。1つ以上の実施形態による好適な界面活性剤としては、スラリ中に湿潤、消泡、および分散を示す、非イオン性界面活性剤が挙げられる。特定の実施形態において、1つ以上の実施形態において、会合性増粘剤および界面活性剤は、会合性増粘剤が低いHLB(疎水性親油性平衡)を好むように相乗的であり、せん断力を有せずに粘度増大を容易にする。好適な界面活性剤は、BASF、Lubiizol、Air Products、およびAKZO Nobelから得ることができる。
【0046】
触媒式スートフィルタの特定の実施形態では、アルミナに担持された約20g/ftの白金および約10g/ftのパラジウムを含む第1のウォッシュコート22を有する。第2のウォッシュコート24は、入口経路の壁上に配置され、酸素貯蔵成分に担持された約10g/ftのパラジウム、約0.1g/inのβゼオライト、および約0.05g/inのアルミナを含む。
【0047】
基質
1つ以上の実施形態によれば、触媒のための基質は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるそれらの材料のうちのいずれかであってよく、金属ハニカム構造またはセラミックハニカム構造を典型的に含む。1つ以上の実施形態によるウォールフロー基質は、基質の長手方向軸に沿って延在する複数の細かく実質的に平行なガス流経路を有する。典型的に、それぞれの経路が基質本体の1つの端部で遮断され、交互経路が反対側の端面で遮断される。そのようなモノリシック担体は、さらに少ない数が使用され得るが、断面の1平方インチ当たり最大約700以上の流路(または「セル」)を含有してよい。例えば、担体は、1平方インチ当たりのセル数(「cpsi」)約7〜600セル、さらに通常約100〜400セルを有してよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形であり、あるいは他の多角形である、断面を有することができる。ウォールフロー基質は典型的に、0.002〜0.1インチの壁厚を有する。ウォールフロー基質の特定の実施形態では、0.002〜0.015インチの壁厚を有する。しかしながら、本発明が特定の基質の種類、材料、形状に制限されないことを理解されるであろう。
【0048】
セラミック基質は、任意の好適なセラミック材料または金属材料で作製されてよい。例示的なセラミック材料としては、コーディエライト、コーディエライト−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポージュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩等を挙げられるが、これらに限定されない。例示的な金属担体としては、チタンおよびステンレススチール、ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金等の耐熱金属および金属合金が挙げられる。
【0049】
基質の多孔率は、所望の触媒式スートフィルタ性質に応じて調製されることができる。特定の実施形態において、ウォールフローモノリスの多孔率は、約11μm〜約23μmの範囲である。
【0050】
触媒の調製方法
本発明の追加の実施形態は、触媒式スートフィルタを作製する方法を対象とする。(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの一方を含む、第1のウォッシュコートスラリが調製される。第1のウォッシュコートスラリは、ウォールフローモノリス内の細孔15の平均孔径ほど以下の平均粒径を有する固体を有する。第1のウォッシュコートスラリの被覆は、第1のウォッシュコートスラリが多孔質壁に浸透するようにウォールフローモノリス内に分散される。ウォールフローモノリスは次に、モノリスの多孔質壁14の細孔15内に第1のウォッシュコート22を固定するために乾燥され、焼成される。
【0051】
(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの他方を含む、第2のウォッシュコートスラリが調製される。第2のウォッシュコートスラリは、細孔15の平均孔径ほど以上の平均粒径を有する固体を有する。第2のウォッシュコートスラリの被覆は、ウォールフローモノリスの経路の壁上に適用される。ウォールフローモノリスは、多孔質壁14の表面17上に第2のウォッシュコート24を固定するために乾燥され、焼成される。
【0052】
第2のウォッシュコートスラリは、入口経路16または出口経路18の表面17のいずれかまたは両方を被覆するために使用され得る。いくつかの実施形態において、第2のウォッシュコートスラリは、入口経路16の壁14の表面17上に被覆され、図1に示す触媒式スートフィルタ(ウォールフローモノリス10)を生じる。1つ以上の実施形態において、第2のウォッシュコートスラリは、出口経路18の壁14の表面17上に被覆される。特定の実施形態において、第2のウォッシュコートスラリは、入口経路16および出口経路18の両方の多孔質壁14の表面17上に被覆される。第2のウォッシュコートスラリは、ゼオライト、アルミナ、および/または他の成分が出口経路18の場合と入口経路16の場合とでは異なるように修正されることができる。第1のウォッシュコートスラリおよび第2のウォッシュコートスラリの両方の被覆プロセスは、利用されるウォールフローモノリスの多孔率に応じてD90を調節するために粒子を粉砕することを含むように修正されてよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、ウォールフローモノリスの被覆は、モノリスを水中に配置することと、白金及びパラジウムのうちの1つ以上の溶液を液滴方法で添加することとを含む。いくつかの実施形態において、この水は既に、ゼオライト及びアルミナのうちの1つ以上を含有する。しかしながら、これらの成分は、モノリスが浸された後、添加されることができ、同時にまたは他の成分(例えば、白金及びパラジウム)から切り離して添加されることができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属を含有するウォッシュコートスラリの調製は、アルミナ担持粒子に白金溶液およびパラジウム溶液のうちの1つ以上を含浸させることを含む。白金及びパラジウムは、同時にまたは別々に含浸させることができ、同じ担持粒子または別個の担持粒子に含浸させることができる。詳細な実施形態において、含浸手順のいずれかまたはすべては、初期湿潤技術によって達成される。
【0055】
ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートスラリはまた、白金及びパラジウムを含むが、これらに限定されない、白金族金属を含んでもよい。ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートスラリへの白金族金属の添加は、必要とされる重大な酸化機能があるときの特定の使用であってよい。ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートが高い白金族金属組成を有するとき、触媒式スートフィルタは、ディーゼル酸化触媒として機能する。
【0056】
いくつかの詳細な実施形態において、ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートスラリは、OSCに含浸させた少なくとも1つの白金族金属をさらに含む。白金族金属は、白金及びパラジウムを含むが、これらに限定されない、任意の好適な白金族金属であり得る。OSC材料は、セリアを含むが、これらに限定されない、任意の好適な材料であり得る。特定の実施形態において、白金族金属は、パラジウムである。ゼオライト及びアルミナを含有するウォッシュコートスラリは、初期湿潤技術によってOSC材料をパラジウム溶液で含浸させること、かつゼオライト及びアルミナを添加する前に含浸させたOSCを水中に分散させることによって調製されてよい。
【0057】
詳細な実施形態では、第2のウォッシュコートスラリへの会合性増粘剤および界面活性剤のうちの1つ以上の添加をさらに含む。会合性増粘剤は、第2のウォッシュコートスラリの粘度を高めることができる。界面活性剤は、スラリの表面張力を低下するのに有用である。界面活性剤は、アニオン、カチオン、両性または非イオン性を含む任意の好適な界面活性剤であり得る。
【0058】
排出処理
基本構成において、図4に示すように、排気処理システムは、ディーゼルエンジン40の下流でそれと流動連通して位置決めされる触媒式スートフィルタ42を備える。炭化水素、一酸化炭素、および微粒子物質を含む排気ガス流は、エンジン40によって排出される。排気ガス流は、下流の触媒式スートフィルタ42を通過する。
【0059】
いくつかの実施形態において、排気ガス流は、触媒式スートフィルタの壁上に配置される第2のウォッシュコートと接触される。第2のウォッシュコートは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの一方を含む。排気ガス流は次に、ウォールフローモノリスの壁に浸透する第1のウォッシュコートに接触する。第1のウォッシュコートは、(1)水に分散された耐火性金属酸化物担持粒子上の白金族金属、または(2)水に分散されたゼオライト及びアルミナのうちの他方を含む。いくつかの実施形態において、排気ガス流は、第1のウォッシュコートの前に第2のウォッシュコートに接触する。特定の実施形態において、排気ガス流は、触媒式スートフィルタの入口側上の第2のウォッシュコートに接触し、スートフィルタの壁内の第1のウォッシュコートの後には、スートフィルタの出口側の壁上の第2のウォッシュコートがさらに続く。いくつかの実施形態において、スートフィルタの出口側上の第2のウォッシュコートは、スートフィルタの入口側上の第2のウォッシュコートと異なる。
【0060】
排出処理システムのいくつかの実施形態では、ディーゼルエンジンと触媒式スートフィルタとの間で両方と流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒および/または触媒物品をさらに備える。1つ以上の実施形態において、触媒式スートフィルタの下流でそれと流動連通して位置決めされる1つ以上の触媒および/または触媒物品がある。好適な任意の触媒成分としては、窒素酸化物、アンモニア酸化、微粒子ろ過、NOx貯蔵および/または捕捉成分、炭化水素、還元/酸化成分、ならびに還元剤インジェクタのうちの選択的触媒還元のための材料が挙げられ得るが、これらに限定されない。前述一覧の触媒物品は、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的と解釈されるべきではない。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、言うまでもなく、いかなる方法においてもその範囲を限定的と解釈されるべきではない。例えば、実施例がチタン酸アルミニウムウォールフローフィルタおよびコーディエライトウォールフローフィルタのために提供されるが、炭化ケイ素フィルタは、本明細書で記載される実施例による類似の結果を示すことが予想される。
【0062】
実施例1〜3
実施例1〜3を50%の多孔率および19μmの平均孔径を有するコーディエライトで作製された類似のフィルタ基質上に調製した。セル密度は、1平方インチ当たり300のセルであり、壁厚は、13ミルであった。基質は、1.5ミル(直径)×6ミル(長さ)円形の寸法を有した。基質は、非対称設計を有し、すなわち、入口流路は、出口流路より大きな開口領域を有した。
【0063】
実施例1〜3のそれぞれは、同じ組成を有したが、後述するように異なるプロセスで作製した。それぞれの実施例は、Pt20g/ft、Pd20g/ft、Al0.25g/in、βゼオライト0.2g/in、およびOSC0.15g/inからなる。OSCは、CeO45%、ZrO45%、La8%、およびPr112%からなる混合物であった。この組成は、フィルタ基質の長さの至るところで同じであった。これらの実施例1〜3を使用したアルミナ粉末は、6μmのD90を有した。実施例1〜3のそれぞれを700℃で4時間熟成した。
【0064】
実施例1
白金テトラモノエタノールアミン水酸化物溶液(20g/ft)を初期湿潤技術によってアルミナ粉末に含浸させた。硝酸パラジウム溶液(10g/ft)を同様にしてアルミナ担体に含浸させた。別個のパラジウム(10g/ft)をOSC成分に含浸させた。次いで、2つの粉末を物理的に水に混合かつ分散し、スラリを作製した。次いで、βゼオライトをスラリに添加した。最終スラリは、16%の固体含有量、pH2.5、および2cPの粘度を有した。
【0065】
次いで、スラリをスラリ面の下の基質の入口側およびその真上(約1/4インチ)の出口側を有するスラリに基質を浸すことによってウォッシュコートした。基質をスラリから取り出し、ウォッシュコートスラリが出なくなるまで空気流を出口側から吹き付けた。次いで、被覆した試料を110℃で2時間乾燥させ、空気中、450℃で1時間焼成した。
【0066】
実施例2
最初に、白金テトラモノエタノールアミン水酸化物溶液(20g/ft)を初期湿潤技術によってアルミナ粉末に含浸させた。次いで、硝酸パラジウム溶液(10g/ft)を同様にしてアルミナ担体に含浸させた。Pt/Pdを含浸させたアルミナを水に分散し、7%の固体含有量、pH3.7、および2cPの粘度によって第1のウォッシュコートスラリを作製した。次いで、第1のウォッシュコートスラリを実施例1と同様にして基質にウォッシュコートした。
【0067】
パラジウム(10g/ft)をOSC成分に含浸させた。Pdを含浸させたOSC粉末を水に分散し、第2のウォッシュコートスラリを作製した。βゼオライトを第2のウォッシュコートスラリに添加した。第2のウォッシュコートスラリは、10%の固体含有量、pH1.7、および2cPの粘度を有した。次いで、基質を第2のウォッシュコートスラリによってウォッシュコートし、実施例1と同様にして乾燥させ、焼成した。
【0068】
実施例3
基質を実施例2の第1のウォッシュコートスラリによってウォッシュコートし、同様にして乾燥/焼成した。パラジウム(10g/ft)をOSC成分に含浸させた。Pdを含浸させたOSC粉末を水に分散し、第2のウォッシュコートスラリを作製した。βゼオライトを第2のウォッシュコートスラリに添加した。事前粉砕したアルミナ(0.03g/in)およびアルミナコロイド結合剤(0.02g/in)を第2のウォッシュコートスラリに添加し、ウォッシュコートの接着力を向上させた。20%の会合性増粘剤を添加し、ウォッシュコートのレオロジーを向上させ、1%の界面活性剤を添加し、表面張力を低下させた。第2のウォッシュコートスラリは、11%の固体含有量、pH19、および2cPの粘度を有した。次いで、基質を第2のウォッシュコートスラリによってウォッシュコートし、実施例1と同様にして乾燥させ、焼成した。
【0069】
実施例4〜5
実施例4および5に使用されるフィルタ基質を50%の多孔率および23μmの平均孔径を有するコーディエライトで作製した。セル密度は、1平方インチ当たり250のセルであり、壁厚は、15ミルであった。基質は、1.5ミル(直径)×6ミル(長さ)円形の寸法を有した。アルミナは、実施例1〜3のものと同じであった。実施例4および5のそれぞれを750℃で4時間熟成した。
【0070】
実施例4
最初に、アルミナ粉末を水に分散し、約20%の固体を有するスラリを作製した。白金溶液をよく攪拌してスラリ液滴に添加した。次いで、パラジウムを同様にして添加した。βゼオライトを最後にスラリに添加した。最終的に、スラリを10%の固体含有量、pH3.6、および14cPの粘度を有した被覆目標に基づき希釈した。次いで、スラリを実施例1と同様にして基質にウォッシュコートした。実施例4は、Pt3.33g/ft、Pd1.67g/ft、Al0.1g/in、およびβゼオライト0.1g/inの組成を有した。
【0071】
実施例5
最初に、アルミナ粉末を水に分散し、約20%の固体を有する第1のウォッシュコートスラリを作製した。白金溶液をよく攪拌してスラリ液滴に添加した。次いで、パラジウムを同様にして添加した。最終的に、スラリを4%の固体含有量、pH4.3、および2cPの粘度を有した被覆目標に基づき希釈した。次いで、第1のウォッシュコートスラリを実施例1と同様にして基質にウォッシュコートした。
【0072】
βゼオライトを水に分散させることによって第2のウォッシュコートスラリを調製した。事前粉砕したアルミナ(0.03g/in)およびアルミナコロイド結合剤(0.02g/in)をスラリに添加し、ウォッシュコートの接着力を向上させた。スラリを20μmのD90まで連続ミルで粉砕した。20%の会合性増粘剤を使用し、レオロジーを向上させ、1%の界面活性剤を添加し、表面張力を低下させた。第2のウォッシュコートスラリは、5%の固体含有量、pH3.8、および2cPの粘度を有した。基質を第2のウォッシュコートスラリでウォッシュコートし、実施例1と同様にして乾燥させ、焼成した。実施例5は、Pt3.33g/ft、Pd1.67g/ft、Al0.1g/in、βゼオライト0.1g/in、およびアルミナ結合剤0.05g/inの組成を有した。
【0073】
試験条件
すべての実施例をCO1000ppm、HC420ppm(Cに基づく)、Nо100ppm、10%のO、7%のHO、5%のCOを有する供給ガスを有する実験室の反応器内で試験を行った。炭化水素は、プロペン、トルエン、およびデカンの等分からなった。ガス時空速度(GHSV)は、35,000hr−1であった。これらの実施例のそれぞれの点火温度を表1および図5〜8に記載し、関連グラフを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
図5は、実施例1〜3の温度の関数としてCO変換率のグラフを示す。図6は、実施例1〜3の温度の関数として炭化水素変換率のグラフを示す。それは、本明細書に記載される実施形態のうちの1つ以上によって作製された実施例2および3が単一のウォッシュコートを有した実施例1より低い点火温度(T50)を有した、これらのグラフの両方から分かることができる。
【0076】
図7は、実施例4および5の温度の関数としてCO変換率のグラフを示す。図8は、実施例4および5の温度の関数として炭化水素変換率のグラフを示す。それは、本明細書に記載される1つ以上の実施形態によって作製された実施例5が単一のウォッシュコートを有した実施例4より低い点火温度を有した、これらのグラフの両方から分かることができる。
【0077】
したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、触媒式スートフィルタであって、両方のフィルタを約700℃で約4時間熟成した後、単一ウォッシュコート層内に類似の組成を有する触媒式スートフィルタのものより低い約10℃超の一酸化炭素点火温度および炭化水素点火温度を有する、触媒式スートフィルタを対象とする。
【0078】
触媒式スートフィルタの詳細な実施形態では、フィルタを約700℃で約4時間熟成し、C1に基づくCO1000ppm、炭化水素420ppm、NO100ppm、10%のO、7%の水、5%のCOを含有する供給口を有する流動反応器系内で試験を行ったとき、約140℃未満の一酸化炭素のT50を示し、ここで残りはNから成り、炭化水素構成は、C1に基づくプロペン、トルエン、およびデカンのほぼ等分である。触媒式スートフィルタの特定の実施形態では、フィルタを約700℃で約4時間熟成し、C1に基づくCO1000ppm、炭化水素420ppm、NO100ppm、10%のO、7%の水、5%のCOを含有する供給口を有する流動反応器系内で試験を行ったとき、約150℃未満の炭化水素のT50を示し、ここで残りはNから成り、炭化水素構成は、C1に基づくプロペン、トルエン、およびデカンのほぼ等分である。
【0079】
したがって、本発明がそれの様々な実施形態に関連して開示したが、他の実施形態が以下の特許請求の範囲に規定するように本発明の趣旨および範囲内に入ることを理解されるべきである。
【0080】
本明細書にわたって言及する、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「1つの実施形態」は、実施形態との関連において記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所で「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「1つの実施形態において」等の表現の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられ得る。
【0081】
本明細書の本発明が特定の実施形態を参照して記載されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の例示に過ぎないことが理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本発明の方法および装置に対して様々な修正および変形を行え得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る修正および変形を含むものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8