特許第5901647号(P5901647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901647
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20160331BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160331BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B01J27/053 AZAB
   B01D53/94 222
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-541678(P2013-541678)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2012074499
(87)【国際公開番号】WO2013065421
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-238118(P2011-238118)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎憲
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−022918(JP,A)
【文献】 特開2010−274162(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/008073(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/137657(WO,A1)
【文献】 特開2008−100152(JP,A)
【文献】 特開2001−079355(JP,A)
【文献】 特開平11−151439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,86−90,94−96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層が二層以上からなり、その内の一層がロジウム(Rh)を担持した多孔質無機酸化物と硫酸バリウムを5重量%〜70重量%担持したアルミナを含有し、他の一層がパラジウム、または白金から選ばれる1種以上を担持した多孔質無機酸化物を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
アルミナに担持した硫酸バリウムの量が、0.5g/L〜25g/Lであり、触媒層内でRhの少なくとも一部がBaから独立して存在し、EPMA解析から求められるRh−Ba乖離率が10%〜80%であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
ロジウムの担持量が、0.05g/L〜2.0g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
多孔質無機酸化物が、アルミナ、またはジルコニア系複合酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
多孔質無機酸化物の量が、30g/L〜180g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項5】
ジルコニア系複合酸化物が、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化イットリウムから選ばれる1種以上を含有し、その担持量が5重量%〜50重量%であることを特徴とする請求項に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記触媒層が一体構造型担体に被覆されている事を特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒に関し、より詳しくは、特にガソリン自動車から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れ三元触媒(TWC:Three Way Catalyst)として好適な排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒装置には、その目的に応じて様々な触媒が使用されてきた。この主要な触媒成分には白金族金属があり、通常、活性アルミナ等の高表面積の耐火性無機酸化物上に高分散に担持して使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
触媒成分としての白金族金属には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)が知られており、広く自動車等の内燃機関から排出される排気ガス浄化用触媒に使用されてきた。前述のTWCにおいては、Pt、Pdなど酸化活性に優れる触媒活性種と、NOxの浄化活性に優れるRhを組み合わせて使用されることが多い。近年、排気ガス中に含まれる有害物質、特にNOxに対する規制が厳しさを増している。そのため、NOxの浄化活性に優れるRhを効果的に使用する必要がある。また、Rhは産出量も少なく、高価であり、近年市場価格も高騰している。そのため、触媒活性種としてのRhは、資源保護の観点、またコスト面からその使用量を少なくすることが好ましい。
【0004】
また、排気ガス浄化触媒では、更なる浄化性能の向上を図るため、触媒には白金族金属の他、様々な助触媒成分の添加が検討されている。このような助触媒成分としては、酸素吸蔵放出成分(Oxygen Storage Component:OSC)や、アルカリ土類金属や、ジルコニウム酸化物、ゼオライト等が知られている。
このうち、OSCは排気ガス中の酸素を吸蔵・放出するものであり、酸化セリウムが知られている。酸化セリウムは、排気ガス中の酸素濃度が高い時にはCeOとして酸素を吸蔵し、酸素濃度が低い時にはCeになって酸素を放出する。放出された酸素は活性な酸素であり、PtやPdによる酸化作用に利用されることでHC、COの浄化を促進する。また、OSCは酸素の吸蔵・放出により、排気ガス中の酸素濃度変化を緩衝する働きもする。この働きによりTWCでは排気ガスの浄化性能が向上する。TWCは一つの触媒で酸化と還元を行なうものであり、設計上、浄化に適した排ガス成分の範囲がある。この範囲は空燃比に依存することが多い。このような範囲はウィンドウといわれ、多くの場合、Stoichioと呼ばれる理論空燃比の近傍で燃焼した排気ガスをウィンドウ域に設定している。排気ガス中の酸素濃度の変化が緩衝されることで、このウィンドウ域が長時間保たれて排気ガスの浄化が効果的に行なわれる。これは特にRhによるNOxの浄化特性に影響すると言われている。
【0005】
このようなセリウム酸化物は、純粋なセリウム酸化物も使用できるが、ジルコニウムとの複合酸化物として使用されることが多い(特許文献2参照)。セリウム・ジルコニウム複合酸化物は耐熱性が高く、酸素の吸蔵・放出速度も速いといわれている。それはセリウム・ジルコニウム複合酸化物の結晶構造が安定で、主要なOSC成分であるセリウム酸化物の働きを阻害しないために粒子の内部までOSCとしての働きに利用できるためと考えられる。
【0006】
一方、RhによるNOxの浄化では、例えばスチームリフォーミング反応やCO+NO反応がRh成分を介して以下のように促進され、NOxを浄化するものと考えられている。
HC+HO ―――――→ COx+H …… (1)
+NOx ―――――→ N+HO …… (2)
CO+NO ―――――→ CO+1/2N …… (3)
そして、ジルコニウム酸化物は、Rh成分と共に用いるとスチームリフォーミング反応やCO+NO反応を促進することが公知の技術となっている(特許文献3参照)。
【0007】
助触媒成分としては、このほかにBa成分などのアルカリ土類金属も知られている(特許文献4参照)。Ba成分は、排気ガス中に含まれるNOxを一時的に吸蔵しBa(NOとなり、吸蔵されたNOxをその後、排気ガスに含まれる還元成分によりNに還元して浄化する。
一般に、エンジンに供給される燃料が少ないとき、空気の量が多いとき、燃焼温度が高いときにNOxが多量に発生する。Ba成分は、このように発生するNOxを一時的に吸収する。
Ba成分に吸収されたNOxは、排気ガス中のNOxの濃度が低く炭酸ガス(CO)濃度が高くなったときにBa成分から放出される。これは前記Ba(NOが水蒸気共存下で炭酸ガスと反応し、BaCOになるものであり、化学平衡であるといえる。Ba成分から放出されたNOxは、前述したようにRh成分表面で還元成分と反応して還元浄化される。
【0008】
このような助触媒成分は2つ以上を併用することもでき、例えば、Ba成分と酸化セリウムを使用したTWCが知られている(特許文献5参照)。ところが、触媒材料の組み合わせによっては浄化性能を低下してしまうことがあり、例えば、Rh成分とBa成分が同一組成中に存在するとNOxの浄化性能が低下することが報告されている(特許文献6参照)。この理由は、アルカリ土類金属成分がNOxを吸蔵する作用を有することから、Rh成分におけるNOxの浄化作用が妨害されることや、BaからRhへの電子供与作用による酸化Rh構造の安定化に起因するためと思われる。
【0009】
そのため、Rh成分とBa成分を分離してアルミナに担持することで、NOx浄化性能と耐熱性を向上させることが提案されている(特許文献7参照)。ここには、触媒層中のRh成分とBa成分がどの程度分離しているかについては言及が無いが、Ba源として水溶性の酢酸Baを用いた場合は、Ba成分がスラリー中に溶出してしまい、Rh成分と十分に分離できているとは言い難い。結果、Rh成分とBa成分が近接してしまうため、NOx浄化性能が低下してしまうという問題は十分には解決できない。
このように、触媒成分の組み合わせは様々であり、触媒成分相互の作用による複雑な反応経路を経ることから、これらを総合的に検討して、最も浄化作用が発揮される触媒成分の組み合わせが模索されている。
【0010】
ところで、排気ガス浄化触媒は、排気ガス流路の中に一つ配置されれば良いが、2個以上配置される場合もある。これは、排ガス規制の強化に伴って、排気ガス浄化触媒の特性をより生かすためであり、白金、パラジウム、ロジウムのそれぞれの貴金属が有する耐久性(耐熱性、耐雰囲気性、耐被毒性)、触媒特性(酸化活性、還元活性)等に応じてそれぞれ最適の位置が設定される。
また、高価な貴金属や希土類の使用量を削減することは、限りある資源の効率的な活用に繋がっており、そのためにも、それぞれの貴金属や希土類の特性に応じて排気ガス流路の最適の位置に排気ガス浄化触媒を設置することが求められている。
【0011】
さらに、近年、排気ガスの規制は、ますます厳しくなる一方であり、複数の触媒を使用して、より優れた排気ガス浄化性能を発揮する触媒の登場が望まれている。排気ガスの中でも特にNOxに対する規制値が厳しくなっており、TWCでもNOxの浄化性能に優れた排気ガス浄化用触媒の必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平05−237390号公報
【特許文献2】特公平06−75675号公報
【特許文献3】再公表特許2000/027508公報、14頁
【特許文献4】特開2007−329768号公報、段落0003
【特許文献5】特開平03−106446号公報
【特許文献6】特開2002−326033号公報、段落0013
【特許文献7】特開平09−215922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、自動車等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる有害物質を触媒と接触させて浄化するための排気ガス浄化用触媒、特にTWC触媒として好適なNOx浄化性能に優れた排気ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意研究を重ね、内燃機関から排出される排気ガスの流路中に、特定の触媒組成物が被覆されたハニカム構造型触媒を設置し、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の内、特にNOxを浄化する排気ガス浄化触媒装置を構成し、これに排気ガスを通過させると、前記触媒組成物が、ロジウムを含有する層に硫酸バリウムをアルミナに担持しまたは担持せずに含有し、同層内でRhの少なくとも一部がBaとは独立して存在し、特定のRh−Ba乖離率であることにより、RhとBaの機能が低下せず窒素酸化物(NOx)を効率的に浄化できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、触媒層が二層以上からなり、その内の一層がロジウム(Rh)を担持した多孔質無機酸化物と硫酸バリウムを5重量%〜70重量%担持したアルミナを含有し、他の一層がパラジウム、または白金から選ばれる1種以上を担持した多孔質無機酸化物を含有する排気ガス浄化用触媒であって、アルミナに担持した硫酸バリウムの量が、0.5g/L〜25g/Lであり、触媒層内でRhの少なくとも一部がBaから独立して存在し、EPMA解析から求められるRh−Ba乖離率が10%〜80%であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ロジウムの担持量が、0.05g/L〜2.0g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、第1の発明において、多孔質無機酸化物が、アルミナ、またはジルコニア系複合酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明のいずれかにおいて、多孔質無機酸化物の量が、30g/L〜180g/Lであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、ジルコニア系複合酸化物が、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化イットリウムから選ばれる1種以上を含有し、その含有量が5重量%〜50重量%であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明の触媒層が一体構造型担体に被覆されている事を特徴とする排気ガス浄化用触媒が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排気ガス浄化用触媒は、窒素酸化物の還元活性に優れ、各種燃焼装置から排出される窒素酸化物に対して高い浄化性能を発揮する。特に、CO/NO比が1以下の還元剤不足雰囲気下でのNO浄化性能が向上し、排気ガス中のCO/NO比が変動しても200〜700℃の温度範囲で窒素酸化物の浄化性能が大幅に向上することから、内燃機関、特にガソリンエンジンから排出される窒素酸化物の浄化に大きな効果を発揮する。
さらに、本発明の排気ガス浄化用触媒は、高価な活性金属の使用量が少なくて済むため低コストで製造する事ができ、TWCなどを組み込んだ排気ガス浄化装置を安定的に生産し供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、排気ガス浄化用触媒において、Rh−Ba乖離率の算出方法を説明するためのグラフで、Rh−Ba乖離率を0%とした場合のRhのBaモル分率分布のモデル図である。
図1B図1Bは、排気ガス浄化用触媒において、Rh−Ba乖離率の算出方法を説明するためのグラフで、Rh−Ba乖離率を100%とした場合のRhのBaモル分率分布のモデル図である。
図1C図1Cは、排気ガス浄化用触媒において、Rh−Ba乖離率の算出方法を説明するためのグラフで、Rh−Ba乖離率を50%とした場合のRhの理想Baモル分率分布のモデル図である。
図2図2は、本発明の排気ガス浄化用触媒(実施例5)において、RhのBaモル分率分布からRh−Ba乖離率に対応する面積部を示した図である。
図3図3は、本発明の排気ガス浄化用触媒(実施例2と実施例5と比較例3)において、EPMA測定結果を基に算出されたRhのBaモル分率分布図である。
図4図4は、本発明の排気ガス浄化用触媒(実施例7と比較例2と比較例4)において、EPMA測定結果を基に算出されたRhのBaモル分率分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の排気ガス浄化用触媒、及びそれを用いた触媒装置について詳細に説明する。なお、ガソリンエンジンにおける実施形態を中心に述べるが、本発明は自動車用途に限定されるものではなく、排気ガス中の窒素酸化物の脱硝技術に広く適用可能である。
【0020】
1.排気ガス浄化用触媒
本発明の排気ガス浄化用触媒(以下、触媒組成物ともいう)は、触媒層が二層以上からなり、その内の一層がロジウム(Rh)を担持した多孔質無機酸化物と硫酸バリウムを5重量%〜70重量%担持したアルミナを含有し、他の一層がパラジウム、または白金から選ばれる1種以上を担持した多孔質無機酸化物を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
アルミナに担持した硫酸バリウムの量が、0.5g/L〜25g/Lであり、触媒層内でRhの少なくとも一部がBaから独立して存在し、EPMA解析から求められるRh−Ba乖離率が10%〜80%であることを特徴とする。
すなわち、ロジウム(Rh)がアルミナ、および酸化ジルコニウムを主成分とする複合酸化物から選ばれる1種以上の多孔質無機酸化物上に担持され、さらに硫酸バリウムが単独でまたはアルミナ上に担持されて、10%〜80%のRh−Ba乖離率で存在する。
【0021】
(1)多孔質無機酸化物
本発明において、多孔質無機酸化物の種類は特に制限されるわけではないが、酸化ジルコニウム系複合酸化物、アルミナ、アルミナ系複合酸化物、またはセリアなどが挙げられる。特に、多孔質酸化物は、アルミナ、酸化ジルコニウム系複合酸化物から選ばれた1種以上からなることが好ましい。
【0022】
このうち酸化ジルコニウム系複合酸化物は、ジルコニウム単一成分ではなく希土類元素などとの複合酸化物とすることが好ましい。ジルコニウム単一成分の酸化物には耐熱性が低いという問題がある為である。希土類としては、Ce、La、Nd、Pr、又はYから選ばれる1種以上の使用が好ましい。また、酸化ジルコニウム系複合酸化物に占める希土類元素の割合は、酸化物基準で5重量%〜50重量%であることが好ましく、10重量%〜40重量%であることがより好ましい。
希土類酸化物の割合が5重量%未満であると、酸化ジルコニウム系複合酸化物の耐熱性が低下し、50重量%を超えると、酸化ジルコニウムが有するスチームリフォーミング機能が低下することがある。
酸化ジルコニウム系複合酸化物は、例えば無機または有機のジルコニウム化合物1種以上を大気中、450〜600℃で焼成して得られた酸化物粒子を粉砕したものを原料粉末とし、これに希土類酸化物の原料粉末を混合して製造できる。
【0023】
(2)アルミナ
本発明において、アルミナは、多孔質無機酸化物の一種であり、RhまたはRhおよびBaを担持するために酸化ジルコニウム系複合酸化物とともに使用される。γ−アルミナの他、β−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等が挙げられ、BET比表面積の大きいアルミナが好ましい。一方、α−アルミナはBET比表面積が10m/g以下と小さいため、特にBaを担持する材としては好ましくない。アルミナのBET比表面積は、50m/g以上が好ましく、また80m/g以上がより好ましく、さらには100m/g以上が特に好ましい。
【0024】
(3)ロジウム(Rh)
本発明においては、活性金属として、NOxの浄化活性に優れる貴金属元素のロジウムを使用する。
ロジウムは、上記多孔質無機酸化物に担持され、その際に使用する出発塩としては硝酸ロジウム、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、硫酸ロジウム等が好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物等の残渣が残らない硝酸ロジウムまたは酢酸ロジウムの使用が好ましい。
多孔質無機酸化物へのロジウムの担持量は、0.05g/L〜2.0g/Lが好ましく、0.1〜1.5g/Lがより好ましい。ロジウムの量が0.05g/Lより少ないと脱硝性能が急激に低下し、2.0g/Lより多いと脱硝性能には問題はないが、価格の面で好ましくない。
【0025】
(4)硫酸バリウム
硫酸バリウム(Ba成分)は、スラリー中へのBaの溶出を抑制できるバリウム塩である。硫酸バリウムが排気ガス中700℃を越える高温酸化還元雰囲気に繰り返し晒されると、熱分解などによりBa酸化物として周辺構成材料中に担持され、このBa酸化物が排気ガス中に含まれるNOxを一時的に保持する機能を有するようになる。またBa成分によって保持されたNOxは、Rh成分表面で一酸化炭素などの還元成分と反応して還元浄化される。
【0026】
本発明において、硫酸バリウムは、単独でも良いし、担体のアルミナに担持して用いても良い。硫酸バリウムを担持するアルミナとしては、前記のγ−アルミナの他、β−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等、BET比表面積の大きいアルミナが好ましく使用できる。
硫酸バリウムの使用量は、単独の場合、層中で0.5g/L〜15g/Lが好ましく、1g/L〜10g/Lがより好ましい。また、アルミナに担持する場合は、層中で0.5g/L〜25g/Lが好ましく、1g/L〜20g/Lがより好ましい。この範囲内の使用量であれば排気ガス中に含まれるNOxを一時的に保持する十分な機能を有する。ただし、0.5g/L未満であると、その機能低下が著しくなることがある。
【0027】
本発明では、硫酸バリウムを用いることで、触媒層内でRhの少なくとも一部がBaとは独立して存在する構成(乖離配置)を達成できる。しかしながら、硫酸バリウムは700℃以上の高温かつ還元雰囲気において分解して、Ba酸化物として周辺構成材料中に分散するため、硫酸バリウムの量が多すぎると、分散したBaがRhと近接することにより、NOx浄化性能の低下を引き起こす要因となる。その問題を解決するために、硫酸バリウムをアルミナに担持させ、硫酸バリウム分解時の分散箇所を制限することが望ましい。硫酸バリウム担持アルミナを用いることで、Ba成分量が、例えば20g/L程度と多くても、Rh成分との乖離配置が達成され、更なるNOx浄化性能の向上が期待される。
硫酸バリウムをアルミナに担持する手法としては、以下のような方法が挙げられる。
(プロセス1)
硫酸バリウムの出発塩として、酢酸バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム等の水に可溶な塩を用意する。水への可溶性に優れた酢酸バリウムや塩化バリウムの使用が好ましい。これらのバリウム塩を水に溶解させて調製したバリウムを含む水溶液をアルミナに含浸させた後、焼成する。その後、硫酸もしくは硫酸アンモニウムをSO/Ba比が1〜2になるように加えて、再度焼成する。
(プロセス2)
ビーズミル等の粉砕機にアルミナ、硫酸バリウムと水を加えて、平均粒子径が0.1〜1.0μmになるまで粉砕・分散処理を行ない、硫酸バリウムとアルミナの分散スラリーを調製する。この混合スラリーをスプレードライヤー、流動層造粒乾燥機等で平均粒子径5〜50μmまで造粒させ、焼成する。
その際、一次結晶径が10〜500nmと小さい硫酸バリウムや、γ−アルミナの前躯体であるベーマイトを使用すればより分散しやすい。
(プロセス3)
一次結晶径が10〜500nmと小さい硫酸バリウムを水と混合し、イオン性の界面活性剤を添加し、ミキサーで分散・邂逅させ、硫酸バリウム分散液を調製する。この分散液をアルミナ粉末に含浸担持し、焼成する。
なお、硫酸バリウムをアルミナに担持して用いる場合、硫酸バリウムのアルミナへの担持量が5重量%〜70重量%であることが好ましく、10重量%〜60重量%であることがより好ましい。
【0028】
(5)分散助材
本発明においては、多孔質無機酸化物に担持されたRhとBaSO単独またはアルミナに担持されたBaSOとの間を広げ、両者の分散性を良くするために分散助材が使用される。分散助材としては先にあげたアルミナが適している。その際、アルミナの粒子径としては1μm〜50μmのものが好ましい。この分散助材を加えることにより、多孔質無機酸化物に担持されたRhと、BaSO単独またはアルミナに担持されたBaSOとの間を隔てて両者の分散性が向上するとともに、排気ガスの触媒層内部への拡散を促進する働きも有する。
【0029】
(6)Rh−Ba乖離率
排気ガスの触媒層内では、RhがBaのNOx吸蔵能力を有効に生かしながら、Baによる電子供与作用に伴うRhの酸化を抑制する必要があり、そのためには、RhとBaは近過ぎても遠過ぎても好ましくなく、ある程度の距離を保って分布しなければならない。そのような分布状態は、RhやBaの量や調製方法、母材の種類や、母材への担持量といった単純な物性値で一律に決まるものではないために、これまで特定の数式で算定されることはなかった。
そのため、本発明ではRh−Ba乖離率という概念を導入することにより、窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れた三元触媒として好適な排気ガス浄化触媒のRh−Ba間の最適な距離の範囲を導きだすようにした。
即ち、本発明において、Rh−Ba乖離率とは、触媒層中でRhとBaの分布がどの程度独立しているか、いいかえればRhがBaに対して、どの程度乖離して配置されたかを示す重要な指標である。
【0030】
そして、このRh−Ba乖離率は、以下に詳述するように、図1A図1Cに示すEPMA測定の元素分布の解析結果に基づくRhのBaモル分率分布のグラフより算出される。
例えば、RhとBaの乖離率が0%とは、RhとBaの分布が完全に一致する場合であり、RhのBaモル分率分布を描くと、図1Aのように全てのRhがRhとBaの添加量に応じたBaモル分率の理論値を示すこととなる。一方、RhとBaの乖離率100%とは、Rhの存在箇所にはBaが全く存在しない場合であり、図1Bのように全てのRhがBaモル分率=0の位置に存在することを示す。さらに、乖離率50%とは、Rhの50%がBaと乖離し(Baモル分率=0)、さらに残りの50%がBaと一致している場合である(Baモル分率=理論値)と定義する。そのときのRhのBaモル分率分布を図示すると、図1Cのようになる。
ここで、Rh−Ba乖離率は、Baモル分率が0から理論値までのRh%の面積(斜線面積部)と対応する。触媒サンプルにおいて、Rh−Ba乖離率Sを算出するには、これら図1A図1Cを踏まえたうえで、個別にEPMA測定で元素分布の解析を行った後、図2のように、Rh−Baモル分率のグラフを描き、それぞれの当該面積を算出して、乖離率100%の面積との割合から乖離率を求める。
【0031】
本発明において、Rh−Ba乖離率は、10%以上とする必要がある。10%〜80%が好ましく、10%〜70%がより好ましく、10%〜60%がさらに好ましい。本発明において、最も好ましいRh−Ba乖離率は、10%〜50%である。Rh−Ba乖離率が10%未満であると、RhとBaの分布が一致する度合いが大きいため、触媒層内でRhの一部がBaとは独立して存在する構成(乖離配置)をとることが出来ず、RhとBaが近接してしまうため、所望の脱硝性能を得ることができない。一方、Rh−Ba乖離率を高くするには、RhとBaの個々の粒子を同一層内で一定の距離以上を保ちながらより均一に存在させる必要がある。そのため、その様な触媒層を実際に製造するには、Rh−Ba乖離率を上げれば上げるほど製造上の制約が多くなり、製造コストが嵩み生産性が低下してしまう。実用上、好ましいRh−Ba乖離率は10%以上80%以下であり、80%以上の乖離率を達成することは、触媒製造上ならびにEPMA分析上困難であり、また、RhとBaが離れすぎているため、十分な脱硝性能が得られない。
【0032】
(EPMA測定)
Rh−Ba乖離率を決定するには、予め触媒サンプル(以下、単にサンプルともいう)について、EPMA測定にて元素分布の解析を行う。すなわち、まず触媒(ハニカム)サンプルを10mm四方に切り出して、測定サンプルとする。次に、サンプルの測定面を下にしてモールドに貼り付け、樹脂と硬化剤を10/1.5の割合で混合した液を流し込み、一晩静置させて硬化させる。その後、樹脂埋めしたサンプルを研磨して、カーボン蒸着させて、サンプルの前処理を行なう。
本発明において、EPMA測定には、JE0L社製の電子プローブマイクロアナライザーJXA−8100を用いるものとする。そして、加速電圧15KV、照射電流0.03mμA、ピクセルサイズ0.1μm、1セルあたりのデータ採取時間 200msec、ビーム径0.7μmの条件で測定を行なう。ここで重要な測定条件は、ピクセルサイズを0.1μmとすることと直径0.7μmのビームを用いることである。ピクセルサイズとビーム径はEPMA測定の分解能、即ち1つのセルの測定範囲を決定する重要な条件であるため、この条件を外れると本測定結果は正確さを失う。検出器には波長分散型検出器を用い、一つのサンプルに対して、計4箇所のライン分析を行なう。
【0033】
(モル分率分布の計算手法)
引き続き、EPMA測定により得られたRhのLα線、およびBaのLα線のそれぞれのセルi(i=1〜e)の強度値Ii(Rh)、Ii(Ba)をそれぞれ合計する。測定データ数eは計4箇所の測定で2000〜3000程度である。下記式(4)のようにRhとBaのそれぞれの強度値の合計の比をとり、Ba/Rhモル比をかけることで、Rh強度に対するBa強度補正係数Kを算出する。RhとBaのモル量n(Rh)、n(Ba)は、下記式(5)のようにそれぞれの質量ωと分子量Mから算出する。さらに、下記式(6)でBa強度Ii(Ba)に強度補正係数Kをかけることで、Baの規格化強度Iinml(Ba)を算出する。
【0034】
【数1】
【0035】
それぞれのセルiにおいて、RhとBaの物質量の和に対するBa物質量、すなわちBaモル分率Yi(Ba)を下記式(7)により算出し、EPMA測定より得られた強度分布Ii(Ba)をモル分率分布Yi(Ba)に書き換える。
【0036】
【数2】
【0037】
Baモル比率Yi(Ba)を0〜1.0まで0.01刻みで区間分けして、指定したモル分率範囲Yi=k〜k+0.01に対応するセルのRh強度IYi(Rh)を下記式(8)に示したように積算する。その積算値J(Rh)から、Rh比率%P(Rh)と累積%C(Rh)を下記式(9)および(10)を用いて求める。横軸にBaモル分率Y(Ba)をとり、縦軸にRh累積%C(Rh)をプロットして、RhのBaモル分率分布を図示する。本解析手法により算出されたRhのBaモル分率分布を図3図4に示した。
【0038】
【数3】
【0039】
2.一体構造型触媒
本発明の排気ガス浄化用触媒は、上記触媒成分が各種担体表面に被覆された構造型触媒として用いることができる。ここで担体の形状は、特に限定されるものではなく、角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状などの構造型担体から選択可能である。構造型担体のサイズは、特に制限されないが、角柱状、円筒状、球状のいずれかであれば、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。中でも、ハニカム状のハニカム構造担体の使用が好ましい。
【0040】
(ハニカム構造担体)
ハニカム構造担体とは、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックや、ステンレス等の金属からなるもので、その構造は構造担体中の全体に渡って伸びている平行な多数の微細な気体流路を有するもので一体構造型担体ともいわれる。このうち材質としてはコージェライトが耐久性、コストの理由で好ましい。
また、このようなハニカム構造担体としては、さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、そのセル密度は100〜900セル/inchであることが好ましく、200〜600セル/inchである事がより好ましい。セル密度が900セル/inchを超えると、付着したPMで目詰まりが発生しやすく、100セル/inch未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことである。
また、ハニカム構造担体には、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。フロースルー型構造体であれば空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体であれば、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。本発明の排気ガス浄化用触媒は、そのどちらの構造体にも用いる事ができる。
【0041】
(層構成)
本発明の排気ガス浄化用触媒を用いた一体構造型触媒は、前記触媒組成物をハニカム構造担体に二層以上被覆したものである。
【0042】
触媒層が二層以上からなる場合、いずれかの1層がロジウムを担持した多孔質無機酸化物と硫酸バリウムを含有する層(Rh層)であればよい。そして、Rh層が、パラジウムなどを含有する層(Pd層)と別層に存在するように構成する事がより好ましい。これにより、還元活性に優れるロジウムを担持した多孔質無機酸化物と、酸化活性に優れるパラジウムなどを含有する層が別々になり、それぞれの機能を発揮しやすくなるためである。
二層触媒の場合、外層がRh層で内層がPtやPdであると効果的であるが、本発明の目的を損なわない限り、内層にRh層、外層にPtやPdを用いても構わない。また、三層触媒の場合、Rh層が真ん中で、Pd層がそれを両方から包み込んだサンドイッチ構造を取ることも差し支えない。
【0043】
多孔質無機酸化物、すなわちジルコニア系複合酸化物又はアルミナの使用量は、Rh層中で30g/L〜180g/Lが好ましく、50g/L〜150g/Lがより好ましい。多孔質酸化物の量が30g/L未満では、Rh層中での排ガス滞留が不十分となりNOxの浄化性能が低下し、180g/Lより多いと、触媒重量が重くなる上にハニカム構造体のセルが狭くなることがあり、これにより、触媒の昇温特性が悪化する上、圧損も増大する傾向にあるので好ましくない。
【0044】
なお、硫酸バリウムをアルミナなどの多孔性無機酸化物に担持して用いる場合、硫酸バリウムの担持量が5重量%〜70重量%であることが好ましく、10重量%〜60重量%であることがより好ましい。
多孔性無機酸化物への硫酸バリウム担持量が5重量%未満であると、脱硝性能には影響しないが、アルミナなどの多孔性無機酸化物の含有量が増大するため、触媒重量が重くなる上にハニカム構造体のセルが狭くなる。これにより、触媒の昇温特性が悪化する上、圧損も増大するので、好ましくない。
【0045】
(触媒調製法)
本発明に係る一体構造型触媒を調製するには、前記触媒組成物と、必要に応じてバインダーなどを水系媒体と混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へ塗工して、乾燥、焼成する。
すなわち、まず、触媒組成物と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中で触媒組成物が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、アルカリを配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を適用しても良い。
【0046】
次に、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウオッシュコート法が好ましい。
塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持された一体構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、70〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0047】
3.排気ガス浄化用触媒を用いた触媒装置
本発明においては、上記排気ガス浄化用触媒を含む一体構造型触媒をエンジンからの排気系に配置して触媒装置を構成する。
エンジンからの排気系における触媒の位置および個数は、排気ガス規制に応じて適宜設計できる。排気ガス規制が厳しくない車種では、1個の触媒装置で対応し、排ガス規制の厳しい車種では2個の触媒を用い、排気系における直下触媒の後方に、脱硝性能に特に効果を発揮しうる本発明の触媒は床下位置に配置することができる。
その際、触媒の層構成はNOxの排出濃度、稼動システムに応じて決定でき、Rh単層触媒としたり、Rhとその他の貴金属による複層触媒とするなど使い分けることができる。また、他方の直下触媒には、公知の触媒、例えばPd担持アルミナ、Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物などの材料で構成される触媒を使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。なお、触媒サンプルのRh−Ba乖離率は、以下の要領で決定した。
【0049】
(EPMA測定)
実施例および比較例のサンプルについて、EPMA測定にて元素分布の解析を行った。ハニカムサンプルを10mm四方に切り出して、測定サンプルとした。サンプルの測定面を下にしてモールドに貼り付け、樹脂と硬化剤を10/1.5の割合で混合した液を流し込み、一晩静置させて硬化させた。樹脂埋めしたサンプルを研磨して、カーボン蒸着させて、サンプルの前処理を行なった。
測定はJE0L社製の電子プローブマイクロアナライザーJXA−8100を用いた。加速電圧15KV、照射電流0.03mμA、ピクセルサイズ0.1μm、1セルあたりのデータ採取時間200msec、ビーム径0.7μmの条件で測定を行なった。検出器には波長分散型検出器を用いた。一つのサンプルに対して、計4箇所のライン分析を行なった。
【0050】
(モル分率分布の計算手法)
EPMA測定により得られたRhのLα線、およびBaのLα線のそれぞれのセルi(i=1〜e)の強度値Ii(Rh)、Ii(Ba)をそれぞれ合計した。測定データ数eは計4箇所の測定で2000〜3000程度である。前記式(4)のようにRhとBaのそれぞれの強度値の合計の比をとり、Ba/Rhモル比をかけることで、Rh強度に対するBa強度補正係数Kを算出した。RhとBaのモル量n(Rh)、n(Ba)は、前記式(5)のようにそれぞれの質量ωと分子量Mから算出した。さらに、前記式(6)でBa強度Ii(Ba)に強度補正係数Kをかけることで、Baの規格化強度Iinml(Ba)を算出した。
【0051】
それぞれのセルiにおいて、RhとBaの物質量に対するBa物質量、すなわちBaモル分率Yi(Ba)を前記式(7)により算出して、強度分布Ii(Ba)をモル分率分布Yi(Ba)に書き換えた。
【0052】
Baモル比率Yi(Ba)を0〜1.0まで0.01刻みで区間分けして、指定したモル分率範囲Yi=k〜k+0.01に対応するセルのRh強度IYi(Rh)を前記式(8)に示したように積算した。その積算値J(Rh)から、Rh比率%P(Rh)と累積%C(Rh)を前記式(9)および(10)を用いて求めた。横軸にBaモル分率Y(Ba)をとり、縦軸にRh累積%C(Rh)をプロットして、RhのBaモル分率分布を図示した。
【0053】
(Rh−Ba乖離率の算出)
RhのBaモル分率分布のグラフより、Rh−Ba乖離率を算出した。
RhとBaの乖離率が0%のグラフは、RhとBaの分布が完全に一致することになるため、RhのBaモル分率分布を描くと、全てのRhがRhとBaの添加量に応じたBaモル分率の理論値を示すこととなる(図1A)。一方、RhとBaの乖離率100%のグラフでは、Rhの存在箇所にはBaが全く存在しないため、全てのRhがBaモル分率=0を示す(図1B)。さらに、乖離率50%のグラフは、Rhの50%が完全にBaと乖離し(Baモル分率=0)、さらに残りの50%がBaと完全に一致している(Baモル分率=理論値)と定義する。そのときのRhのBaモル分率分布を図示すると、図1Cのようになる。ここで、Rh−Ba乖離率は、Baモル分率が0から理論値までのRh%の面積(斜線面積部)と対応する。
それにより、実施例および比較例の触媒サンプルは、Rh−Baモル分率のグラフから、それぞれの当該面積を算出して、図2のように乖離率100%の面積で割りつけることで、Rh−Ba乖離率Sを算出した。
【0054】
(実施例1)
まず、以下の要領で、触媒組成物のRh担持Al及びRh担持ZrO系複合酸化物を調製し、ハニカム担体に触媒層を形成した。
<Rh担持Al
硝酸ロジウム溶液をRh重量で2.0g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積150m/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末398gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.5重量%Rh担持アルミナを調製した。
<Rh担持ZrO系複合酸化物>
硝酸ロジウム溶液をRh重量で0.50g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積70m/g、平均細孔径14.5nmの市販の5.0重量%酸化セリウム−5.0重量%酸化ランタン−10.0重量%酸化ネオジム−80.0重量%酸化ジルコニウム複合酸化物粉末500gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.1重量%Rh担持ジルコニア系複合酸化物を調製した。
【0055】
<Rh触媒層の調製>
0.5重量%Rh担持アルミナ400gと0.1重量%Rh担持ジルコニア系複合酸化物500gと市販の硫酸バリウム結晶粉末20g、上記市販のγ−アルミナ300g、純水1.2Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0L(600セル/inch、4ミル)のコージェライト製ハニカム担体にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行い、実施例1のRh触媒(触媒重量:122g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:2g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記方法でEPMA測定を行った後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、36.0%であった。
【0056】
その後、次の方法で、この触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。
<ラボ耐久処理>
上記で得られたハニカム触媒を、石英製の管状炉にて10%H/N気流中で900℃、3時間の熱処理を行なった。さらに、電気炉にて空気中で900℃、3時間の熱処理を行なった。
<モデルガス触媒性能試験>
上記ラボ耐久処理後のハニカム触媒を7セル×7セル×7mmLで切り出し、TPD用のサンプルホルダーに入れ、市販のTPDリアクター(昇温脱離ガス分析装置)にて触媒性能試験を行なった。表1のようなモデルガス条件下で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(実施例2)
実施例1の硫酸バリウム量を50gとした他は実施例1と同じ調製法で、実施例2のRh触媒(触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図3に示すようになった。図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、21.0%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0059】
(実施例3)
実施例1の硫酸バリウム量を100gとした他は実施例1と同じ調製法で、実施例3のRh触媒(触媒重量:130g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:10g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAにより測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、17.2%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
なお、上記の実施例1〜3は、参考例である。
【0060】
(実施例4)
実施例1の硫酸バリウム20gの代わりに、下記の40重量%硫酸バリウム担持アルミナ50gを用い、その代わりにγ−アルミナを270gにしてスラリーを調製した。
<40重量%BaSO担持Al
市販の酢酸バリウム結晶を酸化バリウム換算で260g量り取った後、純水で溶解して酢酸バリウム水溶液を調製し、BET比表面積150m/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末600gに含浸担持した。この含水粉末を700℃、1時間空気中で焼成した。さらに、このバリウム含有粉末にBa/Sモル比が1/1となるように市販の濃硫酸(規定度:36N)(または市販の硫酸アンモニウム結晶)を水で希釈して添加し、500℃で1時間焼成することで、40重量%硫酸バリウム担持アルミナを調製した。バリウム成分が硫酸バリウムであることはXRD回折ピークから同定した。
実施例1と同じようにハニカム担体へコーティングし、実施例4のRh触媒(触媒重量:122g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:2g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAで測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、33.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0061】
(実施例5)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を125g、γ−アルミナの量を225gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例5のRh触媒(触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図3に示すようになった。図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、26.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を250g、γ−アルミナの量を150gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例6のRh触媒(触媒重量:130g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:10g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAで測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、15.6%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0063】
(実施例7)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を500g、γ−アルミナの量を0gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例7のRh触媒(触媒重量:140g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図4に示すようになった。図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、25.2%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0064】
(比較例1)
実施例1の硫酸バリウム量を0gとした他は実施例1と同じ調製法で、比較例1のRh触媒(触媒重量:120g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:0g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。なお、この触媒サンプルは硫酸バリウムを含まず、すべてのRhがBaのモル分率=0であるため、理論上、Rh−Ba乖離率は100%となる。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0065】
(比較例2)
実施例1の硫酸バリウム量を200gとした他は実施例1と同じ調製法で、比較例2のRh触媒(触媒重量:140g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図4に示すようになった。図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、5.3%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0066】
(比較例3)
実施例5で用いた40重量%硫酸バリウム担持アルミナの代わりに、下記の方法で調製した酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを117g加えた他は実施例5と同じ調製法で、比較例3のRh触媒(触媒重量:124g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図3に示すようになった。図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、4.1%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
<酢酸Ba担持Al
市販の酢酸バリウム結晶を酸化バリウム換算で260g量り取った後、純水で溶解して酢酸バリウム水溶液を調製し、BET比表面積150m/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末600gに含浸担持した。この含水粉末を700℃、1時間空気中で焼成することで、酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを調製した。
【0067】
(比較例4)
実施例7で40重量%硫酸バリウム担持アルミナを用いた代わりに、酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを469g加えた他は実施例7と同じ調製法で、比較例4のRh触媒(触媒重量:137g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、図4に示すようになった。図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、26.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
「評価」
表2から明らかなように、硫酸バリウムを含む実施例1〜7は、Baを含まない比較例1と比較して、いずれも高いNOx浄化率を示しており、Ba添加によるNOx浄化活性が向上したことが分かる。その際のRh−Ba乖離率はいずれも10%以上であり、Rh成分のごく近傍にBa成分は存在していなかったと考えられる。特に、γ−アルミナに担持した実施例4〜7の場合には、硫酸バリウムが2.0〜20g/Lの範囲で、高いNOx浄化性能を示した。これは、硫酸バリウムがアルミナ上に分散して固定化されることでRh成分と乖離され、Rhの機能とBaの機能を両立させることが達成されたためであると考えられる。
また、硫酸バリウムのみを添加した実施例1〜3の場合には、2.0〜10g/Lで良好な脱硝性能を発揮するが、比較例2のように硫酸バリウムの量が20g/Lと過剰であると、Rh−Ba乖離率が5%程度にまで低下してしまい、RhとBaが近接することでNOx浄化性能も低下してしまったと考えられる。一方、酢酸バリウムを出発塩としてアルミナに担持させた比較例3及び4の場合には、スラリーを調製する際に、アルミナに担持させたバリウムがスラリー中に溶け出してしまい、Rhの近傍にBaが付着してしまうことでRh−Ba乖離率が低下すると共に、RhにBaが近接することでNOx浄化性能を低下させたと考えられる。
この様に、Rh単層触媒であっても、特にγ−アルミナに代表される高BET比表面積の担体に担持された硫酸バリウムを添加することで60〜70%近い脱硝性能を得ることができた。
【0070】
(実施例8)
まず、以下に示す要領で、Pd担持AlおよびPd担持CeO−ZrO系複合酸化物を調製した。
<Pd担持Al
硝酸パラジウム溶液をPd重量で3.0g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積150m/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末497gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.6重量%Pd担持アルミナを調製した。
<Pd担持CeO−ZrO系複合酸化物>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.5g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積70m/g、平均細孔径16nmの市販の45.0重量%酸化セリウム−5.0重量%酸化ランタン−50.0重量%酸化ジルコニウム複合酸化物粉末498.5gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.3重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物を調製した。
【0071】
引き続き、これら原料粉末を用いて、以下の要領で、触媒層が二層以上からなり、Rhが表層(上層:第2層)に位置する一体構造型の排気ガス浄化用触媒(第一触媒)を調製した。
<第一触媒Pd層(下層)の調製>
0.6重量%Pd担持アルミナ500g、0.3重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物500g、市販のγ−アルミナ200g、市販の硫酸バリウム粉末100g、純水1.3Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体(600セル/inch、4ミル)にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第一触媒Pd層(下層、触媒重量:130g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L)を得た。
<第一触媒Rh層(上層)の調製>
上記第一触媒Pd層をコートしたハニカム担体に、第一触媒Rh層(上層、触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)として実施例2で調製したスラリーをコーティングした。こうして一連の触媒調製法により、実施例8の床下2層触媒(触媒総重量:255g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:15g/L)を得た。
【0072】
その後、下記に示す上下2層の第二触媒で構成された直下触媒と、上記第一触媒で構成された床下触媒とを1個ずつ触媒コンバーター内に格納した後、耐久ベンチに設置されたエンジンの排気ラインの直下位置と床下位置に各々を設置した。その後、エンジンを稼動し、A/F変動下、950Cで80時間耐久処理した。評価は、評価用車輌の直下位置および床下位置に各々の触媒コンバーターを搭載して行なった。
<第二触媒Pd層(下層)>
3.0重量%Pd担持アルミナ300g、1.0重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物1200g、市販の硫酸バリウム粉末100g、純水1.6L、をポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体(600セル/inch、4ミル)にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第二Pd触媒層(下層、触媒重量:160g/L、Pd:2.0g/L、硫酸バリウム:10g/L)を得た。
<第二触媒Pd層(上層)>
3.0重量%Pd担持アルミナ400g、1.0重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物400g、市販の硫酸バリウム粉末200g、市販のベーマイト30g、純水1.3Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。上記第二Pd触媒層をコートしたハニカム担体にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第一Pd触媒層(上層、触媒重量:130g/L、Pd:1.6g/L、硫酸バリウム:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
一連の触媒調製法により直下2層触媒(触媒総重量:290g/L、Pd:3.6g/L、硫酸バリウム:30g/L)を得た。
【0073】
引き続き、この触媒装置を用いて、下記の要領で実機触媒性能試験を行った。
<実機触媒性能試験>
触媒性能は、走行モードLA−4にて評価を行なった。触媒のNOx浄化性能比較は、LA−4モードを走行した際の加速領域の平均NOx浄化率で行なった。LA−4走行モードの中で、特にNOx浄化反応の進み難い189〜291秒と1566〜1680秒の加速領域、すなわちSVが高い、NOx排出量が多い、COが少ない(CO/NOx<1)領域を抽出して、直下触媒通過後のNOx排出量に対する床下触媒通過後のNOx排出量より平均NOx浄化率を算出した。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表3に示す。
なお、この実施例8は、参考例である。
【0074】
(実施例9)
実施例2で調製したスラリーの代わりに実施例5で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、実施例9の床下2層触媒{触媒総重量:255g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:15g/L、(内訳:上層、触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0075】
(比較例5)
実施例2で調製したスラリーの代わりに比較例1で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、比較例5の床下2層触媒{触媒総重量:250g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L(内訳:上層、触媒重量:120g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:0g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0076】
(比較例6)
実施例2で調製したスラリーの代わりに比較例3で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、比較例6の床下2層触媒{触媒総重量:250g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L(内訳:上層、触媒重量:124g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
「評価」
表3より明らかなように、Rh層にBaを含まない比較例5や、酢酸バリウムを出発塩としてアルミナに担持させた比較例6に対し、Rh層に硫酸バリウムを含む実施例8および9は、加速領域でのNOx平均浄化率が90%以上の優れたNOx浄化性能を発揮した。特に、硫酸バリウムをアルミナに担持した実施例9は、加速領域において95%近い高いNOx浄化率を示し、NOx排出量を大幅に低減できることが確認された。
こうしてRh触媒に硫酸バリウムを乖離して配置させることで、NOx浄化性能が向上することが分かる。さらに、硫酸バリウムにγ−アルミナに代表される高BET比表面積の担体に担持させることで、触媒層中でRh成分とBa成分を粒子レベルで乖離することが可能となった。その結果、Rhの機能とBaの機能を両立させることができ、高いNOx浄化性能を示す触媒装置が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の排気ガス浄化用触媒は、ガソリンエンジンからの排気ガス中の窒素酸化物を浄化する性能に優れるから、窒素酸化物を炭化水素および一酸化炭素と同時に浄化する三元触媒に最適である。ただし、本発明は自動車用途に限定されるものではなく、排気ガス中の窒素酸化物の脱硝技術にも広く適用可能である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4