【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。なお、触媒サンプルのRh−Ba乖離率は、以下の要領で決定した。
【0049】
(EPMA測定)
実施例および比較例のサンプルについて、EPMA測定にて元素分布の解析を行った。ハニカムサンプルを10mm四方に切り出して、測定サンプルとした。サンプルの測定面を下にしてモールドに貼り付け、樹脂と硬化剤を10/1.5の割合で混合した液を流し込み、一晩静置させて硬化させた。樹脂埋めしたサンプルを研磨して、カーボン蒸着させて、サンプルの前処理を行なった。
測定はJE0L社製の電子プローブマイクロアナライザーJXA−8100を用いた。加速電圧15KV、照射電流0.03mμA、ピクセルサイズ0.1μm、1セルあたりのデータ採取時間200msec、ビーム径0.7μmの条件で測定を行なった。検出器には波長分散型検出器を用いた。一つのサンプルに対して、計4箇所のライン分析を行なった。
【0050】
(モル分率分布の計算手法)
EPMA測定により得られたRhのL
α線、およびBaのL
α線のそれぞれのセルi(i=1〜e)の強度値Ii(Rh)、Ii(Ba)をそれぞれ合計した。測定データ数eは計4箇所の測定で2000〜3000程度である。前記式(4)のようにRhとBaのそれぞれの強度値の合計の比をとり、Ba/Rhモル比をかけることで、Rh強度に対するBa強度補正係数Kを算出した。RhとBaのモル量n(Rh)、n(Ba)は、前記式(5)のようにそれぞれの質量ωと分子量Mから算出した。さらに、前記式(6)でBa強度Ii(Ba)に強度補正係数Kをかけることで、Baの規格化強度Ii
nml(Ba)を算出した。
【0051】
それぞれのセルiにおいて、RhとBaの物質量に対するBa物質量、すなわちBaモル分率Yi(Ba)を前記式(7)により算出して、強度分布Ii(Ba)をモル分率分布Yi(Ba)に書き換えた。
【0052】
Baモル比率Yi(Ba)を0〜1.0まで0.01刻みで区間分けして、指定したモル分率範囲Yi=k〜k+0.01に対応するセルのRh強度I
Yi(Rh)を前記式(8)に示したように積算した。その積算値J
Y(Rh)から、Rh比率%P
Y(Rh)と累積%C
Y(Rh)を前記式(9)および(10)を用いて求めた。横軸にBaモル分率Y(Ba)をとり、縦軸にRh累積%C
Y(Rh)をプロットして、RhのBaモル分率分布を図示した。
【0053】
(Rh−Ba乖離率の算出)
RhのBaモル分率分布のグラフより、Rh−Ba乖離率を算出した。
RhとBaの乖離率が0%のグラフは、RhとBaの分布が完全に一致することになるため、RhのBaモル分率分布を描くと、全てのRhがRhとBaの添加量に応じたBaモル分率の理論値を示すこととなる(
図1A)。一方、RhとBaの乖離率100%のグラフでは、Rhの存在箇所にはBaが全く存在しないため、全てのRhがBaモル分率=0を示す(
図1B)。さらに、乖離率50%のグラフは、Rhの50%が完全にBaと乖離し(Baモル分率=0)、さらに残りの50%がBaと完全に一致している(Baモル分率=理論値)と定義する。そのときのRhのBaモル分率分布を図示すると、
図1Cのようになる。ここで、Rh−Ba乖離率は、Baモル分率が0から理論値までのRh%の面積(斜線面積部)と対応する。
それにより、実施例および比較例の触媒サンプルは、Rh−Baモル分率のグラフから、それぞれの当該面積を算出して、
図2のように乖離率100%の面積で割りつけることで、Rh−Ba乖離率Sを算出した。
【0054】
(実施例1)
まず、以下の要領で、触媒組成物のRh担持Al
2O
3及びRh担持ZrO
2系複合酸化物を調製し、ハニカム担体に触媒層を形成した。
<Rh担持Al
2O
3>
硝酸ロジウム溶液をRh重量で2.0g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積150m
2/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末398gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.5重量%Rh担持アルミナを調製した。
<Rh担持ZrO
2系複合酸化物>
硝酸ロジウム溶液をRh重量で0.50g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積70m
2/g、平均細孔径14.5nmの市販の5.0重量%酸化セリウム−5.0重量%酸化ランタン−10.0重量%酸化ネオジム−80.0重量%酸化ジルコニウム複合酸化物粉末500gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.1重量%Rh担持ジルコニア系複合酸化物を調製した。
【0055】
<Rh触媒層の調製>
0.5重量%Rh担持アルミナ400gと0.1重量%Rh担持ジルコニア系複合酸化物500gと市販の硫酸バリウム結晶粉末20g、上記市販のγ−アルミナ300g、純水1.2Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0L(600セル/inch
2、4ミル)のコージェライト製ハニカム担体にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行い、実施例1のRh触媒(触媒重量:122g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:2g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記方法でEPMA測定を行った後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、36.0%であった。
【0056】
その後、次の方法で、この触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。
<ラボ耐久処理>
上記で得られたハニカム触媒を、石英製の管状炉にて10%H
2/N
2気流中で900℃、3時間の熱処理を行なった。さらに、電気炉にて空気中で900℃、3時間の熱処理を行なった。
<モデルガス触媒性能試験>
上記ラボ耐久処理後のハニカム触媒を7セル×7セル×7mmLで切り出し、TPD用のサンプルホルダーに入れ、市販のTPDリアクター(昇温脱離ガス分析装置)にて触媒性能試験を行なった。表1のようなモデルガス条件下で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(実施例2)
実施例1の硫酸バリウム量を50gとした他は実施例1と同じ調製法で、実施例2のRh触媒(触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図3に示すようになった。
図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、21.0%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0059】
(実施例3)
実施例1の硫酸バリウム量を100gとした他は実施例1と同じ調製法で、実施例3のRh触媒(触媒重量:130g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:10g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAにより測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、17.2%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
なお、上記の実施例1〜3は、参考例である。
【0060】
(実施例4)
実施例1の硫酸バリウム20gの代わりに、下記の40重量%硫酸バリウム担持アルミナ50gを用い、その代わりにγ−アルミナを270gにしてスラリーを調製した。
<40重量%BaSO
4担持Al
2O
3>
市販の酢酸バリウム結晶を酸化バリウム換算で260g量り取った後、純水で溶解して酢酸バリウム水溶液を調製し、BET比表面積150m
2/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末600gに含浸担持した。この含水粉末を700℃、1時間空気中で焼成した。さらに、このバリウム含有粉末にBa/Sモル比が1/1となるように市販の濃硫酸(規定度:36N)(または市販の硫酸アンモニウム結晶)を水で希釈して添加し、500℃で1時間焼成することで、40重量%硫酸バリウム担持アルミナを調製した。バリウム成分が硫酸バリウムであることはXRD回折ピークから同定した。
実施例1と同じようにハニカム担体へコーティングし、実施例4のRh触媒(触媒重量:122g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:2g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAで測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、33.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0061】
(実施例5)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を125g、γ−アルミナの量を225gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例5のRh触媒(触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図3に示すようになった。
図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、26.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を250g、γ−アルミナの量を150gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例6のRh触媒(触媒重量:130g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:10g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルのRh−Ba乖離率を前記のEPMAで測定した後、モル分率分布の計算手法で算出したところ、15.6%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0063】
(実施例7)
実施例4の40重量%硫酸バリウム担持アルミナの量を500g、γ−アルミナの量を0gとした他は実施例4と同じ調製法で、実施例7のRh触媒(触媒重量:140g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図4に示すようになった。
図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、25.2%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0064】
(比較例1)
実施例1の硫酸バリウム量を0gとした他は実施例1と同じ調製法で、比較例1のRh触媒(触媒重量:120g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:0g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。なお、この触媒サンプルは硫酸バリウムを含まず、すべてのRhがBaのモル分率=0であるため、理論上、Rh−Ba乖離率は100%となる。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0065】
(比較例2)
実施例1の硫酸バリウム量を
200gとした他は実施例1と同じ調製法で、比較例2のRh触媒(触媒重量:140g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:
20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図4に示すようになった。
図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、5.3%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0066】
(比較例3)
実施例5で用いた40重量%硫酸バリウム担持アルミナの代わりに、下記の方法で調製した酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを117g加えた他は実施例5と同じ調製法で、比較例3のRh触媒(触媒重量:124g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図3に示すようになった。
図3より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、4.1%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
<酢酸Ba担持Al
2O
3>
市販の酢酸バリウム結晶を酸化バリウム換算で260g量り取った後、純水で溶解して酢酸バリウム水溶液を調製し、BET比表面積150m
2/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末600gに含浸担持した。この含水粉末を700℃、1時間空気中で焼成することで、酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを調製した。
【0067】
(比較例4)
実施例7で40重量%硫酸バリウム担持アルミナを用いた代わりに、酢酸バリウムを出発塩とするBa担持アルミナを469g加えた他は実施例7と同じ調製法で、比較例4のRh触媒(触媒重量:137g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
次に、この触媒サンプルを前記のEPMAで測定した後、Rh−Baモル分率分布を求めると、
図4に示すようになった。
図4より、Rh−Ba乖離率を算出したところ、26.7%であった。
その後、実施例1と同様に触媒サンプルのラボ耐久処理を行ってから、モデルガス触媒性能試験を行った。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
「評価」
表2から明らかなように、硫酸バリウムを含む実施例1〜7は、Baを含まない比較例1と比較して、いずれも高いNOx浄化率を示しており、Ba添加によるNOx浄化活性が向上したことが分かる。その際のRh−Ba乖離率はいずれも10%以上であり、Rh成分のごく近傍にBa成分は存在していなかったと考えられる。特に、γ−アルミナに担持した実施例4〜7の場合には、硫酸バリウムが2.0〜20g/Lの範囲で、高いNOx浄化性能を示した。これは、硫酸バリウムがアルミナ上に分散して固定化されることでRh成分と乖離され、Rhの機能とBaの機能を両立させることが達成されたためであると考えられる。
また、硫酸バリウムのみを添加した実施例1〜3の場合には、2.0〜10g/Lで良好な脱硝性能を発揮するが、比較例2のように硫酸バリウムの量が20g/Lと過剰であると、Rh−Ba乖離率が5%程度にまで低下してしまい、RhとBaが近接することでNOx浄化性能も低下してしまったと考えられる。一方、酢酸バリウムを出発塩としてアルミナに担持させた比較例3及び4の場合には、スラリーを調製する際に、アルミナに担持させたバリウムがスラリー中に溶け出してしまい、Rhの近傍にBaが付着してしまうことでRh−Ba乖離率が低下すると共に、RhにBaが近接することでNOx浄化性能を低下させたと考えられる。
この様に、Rh単層触媒であっても、特にγ−アルミナに代表される高BET比表面積の担体に担持された硫酸バリウムを添加することで60〜70%近い脱硝性能を得ることができた。
【0070】
(実施例8)
まず、以下に示す要領で、Pd担持Al
2O
3およびPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物を調製した。
<Pd担持Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で3.0g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積150m
2/g、平均細孔径15nmの市販のγ−アルミナ粉末497gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.6重量%Pd担持アルミナを調製した。
<Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.5g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積70m
2/g、平均細孔径16nmの市販の45.0重量%酸化セリウム−5.0重量%酸化ランタン−50.0重量%酸化ジルコニウム複合酸化物粉末498.5gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.3重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物を調製した。
【0071】
引き続き、これら原料粉末を用いて、以下の要領で、触媒層が二層以上からなり、Rhが表層(上層:第2層)に位置する一体構造型の排気ガス浄化用触媒(第一触媒)を調製した。
<第一触媒Pd層(下層)の調製>
0.6重量%Pd担持アルミナ500g、0.3重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物500g、市販のγ−アルミナ200g、市販の硫酸バリウム粉末100g、純水1.3Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体(600セル/inch
2、4ミル)にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第一触媒Pd層(下層、触媒重量:130g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L)を得た。
<第一触媒Rh層(上層)の調製>
上記第一触媒Pd層をコートしたハニカム担体に、第一触媒Rh層(上層、触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)として実施例2で調製したスラリーをコーティングした。こうして一連の触媒調製法により、実施例8の床下2層触媒(触媒総重量:255g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:15g/L)を得た。
【0072】
その後、下記に示す上下2層の第二触媒で構成された直下触媒と、上記第一触媒で構成された床下触媒とを1個ずつ触媒コンバーター内に格納した後、耐久ベンチに設置されたエンジンの排気ラインの直下位置と床下位置に各々を設置した。その後、エンジンを稼動し、A/F変動下、950Cで80時間耐久処理した。評価は、評価用車輌の直下位置および床下位置に各々の触媒コンバーターを搭載して行なった。
<第二触媒Pd層(下層)>
3.0重量%Pd担持アルミナ300g、1.0重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物1200g、市販の硫酸バリウム粉末100g、純水1.6L、をポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体(600セル/inch
2、4ミル)にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第二Pd触媒層(下層、触媒重量:160g/L、Pd:2.0g/L、硫酸バリウム:10g/L)を得た。
<第二触媒Pd層(上層)>
3.0重量%Pd担持アルミナ400g、1.0重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物400g、市販の硫酸バリウム粉末200g、市販のベーマイト30g、純水1.3Lをポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。上記第二Pd触媒層をコートしたハニカム担体にこのスラリーをコーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃、1時間の焼成を行ない、第一Pd触媒層(上層、触媒重量:130g/L、Pd:1.6g/L、硫酸バリウム:20g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)を得た。
一連の触媒調製法により直下2層触媒(触媒総重量:290g/L、Pd:3.6g/L、硫酸バリウム:30g/L)を得た。
【0073】
引き続き、この触媒装置を用いて、下記の要領で実機触媒性能試験を行った。
<実機触媒性能試験>
触媒性能は、走行モードLA−4にて評価を行なった。触媒のNOx浄化性能比較は、LA−4モードを走行した際の加速領域の平均NOx浄化率で行なった。LA−4走行モードの中で、特にNOx浄化反応の進み難い189〜291秒と1566〜1680秒の加速領域、すなわちSVが高い、NOx排出量が多い、COが少ない(CO/NOx<1)領域を抽出して、直下触媒通過後のNOx排出量に対する床下触媒通過後のNOx排出量より平均NOx浄化率を算出した。触媒のNOx浄化性能を調べた結果を表3に示す。
なお、この実施例8は、参考例である。
【0074】
(実施例9)
実施例2で調製したスラリーの代わりに実施例5で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、実施例9の床下2層触媒{触媒総重量:255g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:15g/L、(内訳:上層、触媒重量:125g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0075】
(比較例5)
実施例2で調製したスラリーの代わりに比較例1で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、比較例5の床下2層触媒{触媒総重量:250g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L(内訳:上層、触媒重量:120g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム:0g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0076】
(比較例6)
実施例2で調製したスラリーの代わりに比較例3で調製したスラリーを用いた他は実施例8と同じ調製法で、比較例6の床下2層触媒{触媒総重量:250g/L、Rh:0.25g/L、Pd:0.45g/L、硫酸バリウム:10g/L(内訳:上層、触媒重量:124g/L、Rh:0.25g/L、硫酸バリウム換算重量:5g/L、Rh担体の多孔質無機酸化物の合計量:90g/L)}を得た。
次に、実施例8に記載の要領で触媒のNOx浄化性能を調べた。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
「評価」
表3より明らかなように、Rh層にBaを含まない比較例5や、酢酸バリウムを出発塩としてアルミナに担持させた比較例6に対し、Rh層に硫酸バリウムを含む実施例8および9は、加速領域でのNOx平均浄化率が90%以上の優れたNOx浄化性能を発揮した。特に、硫酸バリウムをアルミナに担持した実施例9は、加速領域において95%近い高いNOx浄化率を示し、NOx排出量を大幅に低減できることが確認された。
こうしてRh触媒に硫酸バリウムを乖離して配置させることで、NOx浄化性能が向上することが分かる。さらに、硫酸バリウムにγ−アルミナに代表される高BET比表面積の担体に担持させることで、触媒層中でRh成分とBa成分を粒子レベルで乖離することが可能となった。その結果、Rhの機能とBaの機能を両立させることができ、高いNOx浄化性能を示す触媒装置が得られた。