特許第5901650号(P5901650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許5901650グラフト化コポリマー及びポリアミドのブレンド
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901650
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】グラフト化コポリマー及びポリアミドのブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20160331BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20160331BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20160331BHJP
   C08F 257/02 20060101ALI20160331BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20160331BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C08L51/06
   C08L77/00
   C08L53/00
   C08F257/02
   C08F265/06
   C08J3/20 ZCER
   C08J3/20CFG
【請求項の数】2
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-544493(P2013-544493)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2013-545871(P2013-545871A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2011060947
(87)【国際公開番号】WO2012082290
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/422,402
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】クラッパー, ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドフスキー, ケヴィン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマー, クレイグ イー.
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−041273(JP,A)
【文献】 特開昭49−047455(JP,A)
【文献】 特開昭62−220508(JP,A)
【文献】 国際公開第88/003545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−283/00、283/02−289/00、291/00−297/08、301/00
C08G 81/00−85/00、C08L、C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a)1)式(I)
【化1】

(式中、各Rは、独立して水素又はアルキルであり、
は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含み、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含む二価の基であり、
は、水素又はアルキルであり、
Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基であり、酸性基を含まず、5,000〜150,000グラム/モルの重量平均分子量を有する)の第1の化合物、及び
2)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第2のモノマー組成物の重合生成物であり、少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料、
を含む反応混合物の生成物を含むグラフト化コポリマーと、
b)前記グラフト化コポリマーとブレンドされるポリアミドであって、1)200℃以下の融点を有する、2)ブレンド温度において前記組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択される、ポリアミドと、を含む組成物。
【請求項2】
組成物を製造する方法であって、
1)式(I)
【化2】

(式中、各Rは、独立して水素又はアルキルであり、
は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含み、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含む二価の基であり、
は、水素又はアルキルであり、
Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基であり、酸性基を含まず、5,000〜150,000グラム/モルの重量平均分子量を有する)の第1の化合物、及び
2)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第2のモノマー組成物の重合生成物であり、少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料、
を含む反応混合物の生成物を含むグラフト化コポリマーを提供することと、
前記グラフト化コポリマーとポリアミドとをブレンドすることであって、前記ポリアミドが、1)200℃以下の融点を有する、2)ブレンド温度において前記組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択されることと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2010年12月13日出願の米国特許仮出願第61/422402号の利益を主張するものであり、その開示の全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
[技術分野]
グラフト化コポリマー及びポリアミドのブレンド、並びに前記ブレンドの製造方法を記載する。
【0003】
[背景]
アクリルポリマー等の様々なポリマーを強化するために様々な方法が用いられている。例えば、架橋により、より大きな断力及び凝集力をポリマーに付与することができる。この架橋は、化学的又は物理的なものであり得る。化学架橋は、重合反応を受け得る重合性基、及びポリマー内の他の基と反応又は相互作用し得る官能基から選択される少なくとも2つの基を有するモノマーを導入することを含んでよい。物理的架橋方法は、主ポリマーに連結されているが、主ポリマーから相分離してポリマー材料内にその独自のドメインを形成する能力を有する別のポリマー部分の導入を含んでいる。ポリマー材料が接着剤である場合、相分離されるポリマー部分は、例えば、米国特許第6,734,256号(Everaertsら)、同第7,255,920号(Everaertsら)及び同第5,057,366号(Husmanら)号に記載されているように、ガラス転移温度が主粘弾性ポリマーよりも高くなるように選択することができる。
【0004】
ビス−アジリジン化合物は、様々なポリマー系において化学架橋剤として使用されている。このような化合物は、例えば、米国特許第6,893,718号(Melanconら)、独国特許第836,353号(Bestian)、Bestianの論文(J.Lieb.Ann.Chem.,566,210〜244(1950))、Babenkovaの論文(J.of Applied Chemistry of the USSR,40,1715〜1719(1967))及びKadorkinaらの論文(Bulletin of the Academy of Sciences of the USSR,40,780〜783(1991))に記載されている。
【0005】
幾つかのアジリジニル末端ポリマーが、例えば、Kobayashiらの論文(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,43,4126〜4135(2005))、特許第4294369B2号(Kobayashiら)及び欧州特許出願公開第0265091A1号(Hertierら)に記載のように調製されている。
【0006】
感圧性接着剤を調製するためのポリアクリレート及びポリアミドのブレンドは、例えば、米国特許第4,769,285号(Rasmussen)に記載されている。
【0007】
[概要]
グラフト化コポリマー及びポリアミドのブレンドである組成物について記載する。組成物の製造方法についても記載する。グラフト化コポリマーは、(1)アジリジニル基及び第1のポリマー基の両方を有する第1の化合物と、(2)酸性基を有する第2のポリマー材料と、の反応生成物である。グラフト化コポリマーとポリアミドとのブレンドは、例えば、グラフト化コポリマーの凝集力を高めるために用いることができる。
【0008】
第1の態様では、a)グラフト化コポリマーと、b)ポリアミドと、を含むブレンド組成物である組成物について記載する。グラフト化コポリマーは、1)式(I)
【化1】

の第1の化合物と、2)少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料と、を含む反応混合物の生成物を含有する。式(I)中、各Rは、独立して水素又はアルキルである。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含有し、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含有する二価の基である。基Rは、水素又はアルキルである。基Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含有する第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基である。ブレンド組成物に含まれるポリアミドは、1)200℃以下の融解温度を有する、2)ブレンド温度において組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択される。
【0009】
第2の態様では、組成物の調製方法について記載する。方法は、1)上記式(I)の第1の化合物及び2)少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料を含む反応混合物の生成物を含むグラフト化コポリマーを提供することを含む。該方法は、グラフト化コポリマーとポリアミドとを含む組成物を形成することを更に含む。組成物に含まれるポリアミドは、(1)200℃以下の融解温度を有する、(2)ブレンド温度において組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は(3)(1)及び(2)の両方であるように選択される。
【0010】
[詳細な説明]
ポリアミドとブレンドされたグラフト化コポリマーを含む組成物について記載する。グラフト化コポリマーは、(1)アジリジニル基及び第1のポリマー基の両方を有する第1の化合物と、(2)少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料と、を反応させることによって調製される。この反応は、第2のポリマー材料の酸性基による第1の化合物のアジリジニル環の開環、及び第1の化合物の第1のポリマー基を第2のポリマー材料に結合させる(すなわち、グラフト化する)結合基の形成をもたらす。組成物の凝集力は、典型的に、グラフト化コポリマー又はグラフト化コポリマーを形成するために用いられる第2のポリマー材料のいずれかの凝集力よりも高い。
【0011】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、1つ以上の記載された要素を意味する。
【0012】
端点による数範囲の引用は、いずれも、その範囲の端点、その範囲内の全ての数、並びに述べられた範囲内の任意のより狭い範囲を含むことを意味する。
【0013】
用語「アジリジニル」は、式
【化2】

(式中、各Rは独立して水素又はアルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル)である)の三員環構造を指す。アスタリスクは、アジリジニル基が化合物の残部に結合している箇所を示す。
【0014】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせである基を含む。アルキル基は通常、1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、エチルヘキシル、及びイソボルニルが挙げられる。
【0015】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせであり得る。アルキレンは通常、1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキレンは、1〜20個、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上(即ち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上に存在し得る。
【0016】
用語「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rはアルキル基である)の一価の基を指す。
【0017】
用語「アミド」は、式−(CO)NH−の基を指す。
【0018】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環と結合又は縮合した1〜5個の環を有し得る。少なくとも1つの環は芳香環であり、残りの他の環は、芳香環、非芳香環又はこれらの組み合わせであり得る。アリール基の例としては、限定するものではないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0019】
用語「アリーレン」は、炭素環及び芳香族である二価の基を指す。この基は、結合している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。少なくとも1つの環は芳香環であり、残りの他の環は、芳香環、非芳香環又はこれらの組み合わせであり得る。幾つかの実施形態では、アリーレン基は最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、フルオレニレン又はナフタレンであり得る。
【0020】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基である一価の基を指す。
【0021】
用語「アリールオキシ」は、式−OAr(式中、Arはアリール基である)の一価の基を指す。
【0022】
用語「アリールオキシアルキル」は、アリールオキシ基で置換されたアルキル基である一価の基を指す。
【0023】
用語「カルボニル」は、炭素が二重結合で酸素に結合している式−(CO)−の二価の基を指す。
【0024】
用語「カルボニルオキシ」は、式−(CO)Oの二価の基を指すために互換的に使用される。
【0025】
用語「カルボキシル」は、−(CO)OH及び/又はこれらの塩を指す。
【0026】
用語「カルボニルイミノ」は、式−(CO)NR−(式中、Rは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニル又はアリールスルホニルである)の二価の基を指す。
【0027】
用語「ヘテロアルキル」は、1以上の−CH−基がチオ、オキシ又は−NR(式中、Rは水素又はアルキルである)で置換されているアルキル基である一価の基を指す。ヘテロアルキルは、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせであってよく、最大で60個の炭素原子と最大で40個のヘテロ原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、ヘテロアルキル基は、最大で50個の炭素原子と最大で30個のヘテロ原子、最大で40個の炭素原子と最大で30個のヘテロ原子、最大で30個の炭素原子と最大で20個のヘテロ原子、最大で20個の炭素原子と最大で15個のヘテロ原子、又は最大で10個の炭素原子と最大で8個のヘテロ原子を含む。
【0028】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ又は−NR−(式中、Rは水素又はアルキル)で置換された1以上の−CH−基を有する二価のアルキレンを指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせであってよく、最大で60個の炭素原子と最大で40個のヘテロ原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、ヘテロアルキレンは、最大で50個の炭素原子と最大で30個のヘテロ原子、最大で40個の炭素原子と最大で30個のヘテロ原子、最大で30個の炭素原子と最大で20個のヘテロ原子、最大で20個の炭素原子と最大で15個のヘテロ原子、又は最大で10個の炭素原子と最大で8個のヘテロ原子を含む。
【0029】
用語「ヘテロアリーレン」は、芳香族及び複素環式である二価の基を指す。すなわち、ヘテロアリーレンは、5又は6員を有する芳香環中に少なくとも1つのヘテロ原子を含む。好適なヘテロ原子は、典型的には、オキシ、チオ、又は−NR−基(式中、Rは水素又はアルキルである)である。この基は、連結している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有し得る。少なくとも1つの環はヘテロ芳香環であり、残りの他の基は、芳香環、非芳香環、ヘテロ環、炭素環又はこれらの組み合わせであり得る。幾つかの実施形態では、ヘテロアリーレンは最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、又は1個の環を有する。ヘテロアリーレン基としては、限定するものではないが、トリアジン−ジイル、ピリジン−ジイル、ピリミジン−ジイル、ピリダジン−ジイル等が挙げられる。
【0030】
用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を指す。同様に、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート(すなわち、アクリレートエステル)及びメタクリレート(すなわち、メタクリレートエステル)の両方を指し、用語「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドの両方を指す。
【0031】
用語「オキシ」は、二価の基−O−を指す。
【0032】
用語「ポリアミド」は、式−(CO)NH−の複数のアミド基を有するポリマーを指す。
【0033】
用語「ブレンド温度」は、グラフト化コポリマーとポリアミドとをブレンドするために用いられる温度を指す。ブレンド温度は、周囲温度〜300℃、周囲温度〜250℃、又は周囲温度〜200℃の範囲であることが多い。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリマー」又は「ポリマーの」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等である材料を指す。同様に、用語「重合する」又は「重合」は、ホモポリマー、コポリマー及びターポリマー等の製造プロセスを指す。用語「コポリマー」又は「コポリマーの」は、2以上の異なるモノマーを使用して調製されるポリマーを指す。
【0035】
ブレンド中に含まれるグラフト化コポリマーは、式(I):
【化3】

の第1の化合物に加えて、少なくとも1つの酸基を有する第2のポリマー材料を含む反応混合物から形成される。式(I)中、各Rは独立して水素又はアルキルである。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含有する二価の基である。基Rは、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。基Rは、水素又はアルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル)である。基Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第1のモノマー組成物の重合生成物である第1のポリマー基である。
【0036】
に好適なアルキル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。多くの実施形態では、アジリジニル基は、水素である少なくとも1つのR基及びアルキルである少なくとも1つのR基を有する。幾つかのより具体的な実施形態では、アジリジニル環上のR基のうちの1つはメチルであり、残りのR基は水素である。
【0037】
二価の基Rは、少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含有する。これらの基のうちの少なくとも1つに加えて、Rは、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。すなわち、幾つかの実施形態では、Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、Rは、(a)少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせと、(b)少なくとも1つのオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせとを含む。オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを用いて、例えば、(1)アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、及びヘテロアリーレンから選択される2以上の基を共に結合させる、(2)アルキレン、ヘテロアリーレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンを、アジリジニル基に、基−NH−C(R−C(R−O−(CO)−Qに、又はアジリジニル基及び基−NH−C(R−C(R−O−(CO)−Qの両方に結合させる、あるいは(3)これらの組み合わせ(すなわち、(1)及び(2)の両方)を行うことができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、Rは、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第1の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第2の基に結合している、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第1の基を含む。第2の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第2の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである第3の基に更に結合することができる。第3の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第3の連結基を用いてアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第4の基に更に結合することができる。オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせから選択される追加の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせから選択される追加の基を更に結合することができる。
【0039】
他の実施形態では、Rは、それぞれオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである2つの連結基の間に位置する、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン又はヘテロアリーレンである第1の基を含む。これら連結基のうちの一方は、アジリジニル基に結合し、他方は、基−NH−C(R−C(R−O−(CO)−Qに結合する。これら2つの連結基は、典型的には同じであるが、異なっていてもよい。
【0040】
更に他の実施形態では、2以上のアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン又はヘテロアリーレン基は、それぞれオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである2つの連結基の間に位置する。これら連結基のうちの一方は、基−NH−C(R−C(R−O−(CO)−Qに結合し、他方は、アジリジニル基に結合する。これら2つの連結基は、典型的には同じであるが、異なっていてもよい。2以上のアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせは、典型的に、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−基、又はこれらの組み合わせである追加の連結基を通して互いに結合している。
【0041】
また、幾つかの式(I)の化合物は、式(Ia)
【化4】

の化合物である。式(I)の基Rは、式(Ia)の−(CO)−R−(CO)−に相当する。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含む二価の基である。任意で、基Rは、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。すなわち、幾つかの実施形態では、Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、Rは、(a)少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせと、(b)少なくとも1つのオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせとを含む。
【0042】
式(I)におけるR基と同様に、式(Ia)におけるR基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−、又はこれらの組み合わせである第1の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第2の基に結合している、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第1の基を含んでよい。第2の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第2の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである第3の基に更に結合することができる。第3の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第3の連結基を用いてアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第4の基に更に結合することができる。オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせから選択される追加の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせから選択される追加の基を更に結合してもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、式(Ia)における基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである。代表的なアルキレン基は、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的なヘテロアルキレン基は2〜60個の炭素原子と1〜40個のヘテロ原子、2〜40個の炭素原子と1〜30個のヘテロ原子、2〜20個の炭素原子と1〜15個のヘテロ原子、又は2〜10個の炭素原子と1〜6個のヘテロ原子を有し得る。代表的なアリーレン基としては、限定するものではないが、フェニレン(例えば、メタ−フェニレン又はパラ−フェニレン)及びビフェニレンが挙げられる。代表的なヘテロアリーレンとしては、限定するものではないが、トリアジン−ジイル、ピリジン−ジイル、ピリミジン−ジイル及びピリダジン−ジイルが挙げられる。
【0044】
式(Ia)に係る幾つかのより具体的な化合物は、式(Ib)
【化5】

(式中、Rはアリーレンである)の化合物である。式(Ib)の幾つかの、より具体的な化合物では、アリーレンは、式(Ic)におけるメタフェニレン又は式(Id)におけるパラフェニレン等のフェニレンである。
【0045】
【化6】
【0046】
式(Ia)の化合物の他の例は、式(Ie)の化合物である。
【化7】
【0047】
式(Ie)において、二価の基−Ar−(CO)−X−R−X−(CO)−Ar−は、式(Ia)中のRに相当し、二価の基−(CO)−Ar−(CO)−X−R−X−(CO)−Ar−(CO)−は、式(I)中のRに相当する。各基Arは、アリーレンであり、各基Xは、オキシ又は−NR−である。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含み、且つオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−、又はこれらの組み合わせを更に含んでよい二価の基である。すなわち、幾つかの実施形態では、Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、Rは、(a)少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせと、(b)少なくとも1つのオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせと、を含む。
【0048】
及びR基と同様に、R基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−、又はこれらの組み合わせである第1の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第2の基に結合している、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第1の基を含んでよい。第2の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第2の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである第3の基に更に結合することができる。第3の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第3の連結基を用いてアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第4の基に更に結合することができる。オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせから選択される追加の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせから選択される追加の基を更に結合してもよい。
【0049】
式(Ie)の幾つかの化合物では、各Arは、式(If)のようにフェニレンである。
【0050】
【化8】
【0051】
基R、X、R及びQは、式(Id)について上記で定義したものと同じである。式(If)に示すように、フェニレン基は、メタ位で化合物の残りに結合する。式(If)に示すように、Arは、メタフェニレンである。あるいは、Arは、パラフェニレンであってもよい。
【0052】
式(If)の幾つかの具体的な実施形態では、基Rは、アルキレン又はヘテロアルキレン基である。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜60個の炭素原子と1〜40個のヘテロ原子、2〜40個の炭素原子と1〜30個のヘテロ原子、2〜20個の炭素原子と1〜15個のヘテロ原子、又は2〜10個の炭素原子と1〜6個のヘテロ原子を有する。
【0053】
式(Ia)の化合物の他の例は、(Ig)の化合物である。
【0054】
【化9】
【0055】
式(Ig)では、基−X−R−X−は、式(Ia)中のRに相当し、基−(CO)−X−R−X−(CO)−は、式(I)中のRに相当する。X基及びR基は、式(Ie)について上で定義したものと同じである。式(Ig)の幾つかの具体的な実施形態では、各Xは、オキシ又は−NR−であり、基Rは、アルキレン又はヘテロアルキレンである。
【0056】
式(I)の化合物の更に他の例は、式(Ih)の化合物である。
【0057】
【化10】
【0058】
式(Ih)において、二価の基−R−(CO)−R−(CO)−R−は、式(I)中のR基に等しい。各Rは独立して、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するアルキレンである。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせであり、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。すなわち、幾つかの実施形態では、Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、Rは、(a)少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせと、(b)少なくとも1つのオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせとを含む。
【0059】
、R、又はR基と同様に、R基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−、又はこれらの組み合わせである第1の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第2の基に結合している、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第1の基を含んでよい。第2の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第2の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである第3の基に更に結合することができる。第3の基は、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせである第3の連結基を用いてアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせである第4の基に更に結合することができる。オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせから選択される追加の連結基を用いて、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせから選択される追加の基を更に結合してもよい。
【0060】
式(Ih)の幾つかの化合物は、式(Ii)の化合物である。
【0061】
【化11】
【0062】
式(Ii)において、二価の基−X−R−X−は、式(Ih)中の基Rに相当する。各基Xは、独立して、オキシ又は−NR−である。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含み、且つオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−、又はこれらの組み合わせを更に含んでよい二価の基である。すなわち、幾つかの実施形態では、Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、Rは、(a)少なくとも1つのアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせと、(b)少なくとも1つのオキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせと、を含む。
【0063】
式(Ii)の幾つかの特定の実施形態では、基Rはアルキレン基又はヘテロアルキレン基であり、Xはオキシである。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜60個の炭素原子と1〜40個のヘテロ原子、2〜40個の炭素原子と1〜30個のヘテロ原子、2〜20個の炭素原子と1〜15個のヘテロ原子、又は2〜10個の炭素原子と1〜6個のヘテロ原子を有する。
【0064】
式(I)及び(Ia)〜(Ii)の化合物は全て、Q基を有し、これは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第1のモノマー組成物の重合生成物である第1のポリマー基である。重合反応は、フリーラジカル重合反応である、又は、アニオン性重合反応であってもよいが、フリーラジカル重合反応が用いられることが多い。
【0065】
ポリマー基Q(すなわち、第1のポリマー基Q)を形成するために、任意の好適なエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。好適なモノマーとしては、限定するものではないが、様々な(メタ)アクリレート(すなわち、様々な(メタ)アクリレートエステル)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ビニル化合物等が挙げられる。幾つかの実施形態では、Qは、ポリマー基を形成するために使用されるモノマーが全て同じであるホモポリマー基である。他の実施形態では、Qは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーである。
【0066】
幾つかの実施形態では、式(I)の第1の化合物のポリマー基Qは、1以上の(メタ)アクリレートから形成される。これら(メタ)アクリレートは、多くの場合、式(II)
【化12】

(式中、R10基は水素又はメチルであり、R基はアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル又はアリールオキシアルキルである)のものである。好適なアルキル基は、多くの場合、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキル基は、多くの場合、2〜30個の炭素原子と1〜16個のヘテロ原子、2〜20個の炭素原子と1〜12個の炭素原子、2〜10個の炭素原子と1〜6個のヘテロ原子、又は2〜6個の炭素原子と1〜4個のヘテロ原子を有する。これらのアルキル基及びヘテロアルキル基は、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせであり得る。好適なアラルキル基は、多くの場合、7〜18個の炭素原子を有する。例は、フェニルで置換されたアルキル基である。好適なアリールオキシアルキル基は、多くの場合、7〜18個の炭素原子を有する。例は、オキシフェニルでアルキル基である。これらのモノマーは、ホモポリマーに生成されると、広範囲のガラス転移温度を有し得る。
【0067】
式(I)の化合物の特定の用途に応じた所望のガラス転移温度をもたらすモノマーを選択することができる。より具体的には、ガラス転移温度が20℃以上であるポリマーQ基は、熱可塑性である傾向を有する。本発明で使用する場合、用語「熱可塑性」は、加熱した際に流動し、その後、冷却して室温にした際に元の状態に戻るポリマー物質を意味する。ガラス転移温度が20℃未満であるポリマー基は、ゴム質である傾向を有する。本発明で使用する場合、用語「ゴム質」とは、その元の長さの少なくとも2倍まで伸長し、解放した際にほぼその元の長さまで縮むことができるポリマー物質を意味する。
【0068】
幾つかの実施形態では、ポリマー基Qを生成するために使用される式(II)のモノマーは、n−ブチルアクリレート、デシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソトリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−プロピルアクリレート及びn−オクチルメタクリレート等の(メタ)アクリレートから選択される。これらのモノマーをホモポリマー基に生成すると、ガラス転移温度は20℃未満、10℃未満又は0℃未満になる傾向がある。
【0069】
他の実施形態では、ポリマー基Qを生成するために使用される式(II)のモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ノニルフェノールメタクリレート、セチルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及び3,3,5トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート(すなわち、(メタ)アクリレートエステル)から選択される。これらのモノマーをホモポリマー基に生成すると、ガラス転移温度は少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃又は少なくとも50℃になる傾向がある。
【0070】
これら(メタ)アクリレートモノマーはいずれも、任意で、アミノ基、ヒドロキシル基又はエポキシ基等の基で置換されてもよい。これらの置換基は、モノマーの極性を強化する傾向を有する。アミノ基を有する(メタ)アクリレートの例としては、限定するものではないが、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシル置換基を有する(メタ)アクリレートの例としては、限定するものではないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。エポキシ置換基を有する(メタ)アクリレートとしては、限定するものではないが、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリレートはまた、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート又はポリ(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)であってもよく、これらとしては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらモノマーは、極性分子である傾向を有する。
【0072】
ポリマー基Qは、典型的には、非酸性モノマーから調製される。Q基がモノマーの混合物から調製される場合、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%のモノマーは、カルボキシル基等の酸性基を有さない(すなわち、これらのモノマーは酸性基を有さない)。幾つかの実施形態では、第1のモノマー組成物中のモノマーは全て、酸性基を含まない、又は酸性基を実質的に含まない(例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%のモノマーが酸性モノマーである)。ポリマー基Qを形成するために使用される酸性モノマーの量が多過ぎると、単一のアジリジニル基を有する式(I)の化合物を調製するのが困難になり得る。
【0073】
幾つかの具体的なQ基は、例えば、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、及び、ランダム又はブロックポリ(イソボルニルアクリレート−コ−ベンジルメタクリレート)等の(メタ)アクリレートから調製される。
【0074】
ポリマー基Qを形成するための他の好適なエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド等のアルキルアクリルアミド、メチルアミノエチルアクリルアミド等のモノアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド等である。
【0075】
ポリマー基Qを形成するために使用できる更に他の好適なエチレン性不飽和モノマーは、ビニルエーテルモノマー、ビニルアリールモノマー、ビニル複素環式モノマー、ビニルエステルモノマー等の様々なビニルモノマーである。好適なビニルエーテルモノマーとしては、例えば、ビニルメチルエーテルが挙げられる。好適なビニルアリールモノマーとしては、限定するものではないが、スチレン、α−メチルスチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン)等が挙げられる。これらのビニルアリールモノマーのいずれかは、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ等から選択される1つ以上の基で置換されてもよい。好適なビニル複素環式モノマーとしては、限定するものではないが、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びn−ビニルカプロラクタムが挙げられる。好適なビニルエステルとしては、限定するものではないが、ビニルアセテート及びビニルプロプリオネートが挙げられる。ビニルアリールモノマー、ビニル複素環式モノマー及び一部のビニルエステルモノマー等のモノマーは、ホモポリマー基に生成すると、ガラス転移温度が少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃又は少なくとも50℃になる傾向を有する。
【0076】
一部の特定のQポリマー基は、ビニルアリールモノマー、ビニル複素環式モノマー又はこれらの組み合わせ等のビニルモノマーから調製される。これらのQ基は、ホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。ブロックコポリマーは、2つ以上のブロックを有することができる。幾つかのブロックコポリマーは、ポリ(ビニルアリールモノマー)の第1のブロックと、ポリ(ビニル複素環式モノマー)の第2のブロックと、を有する。幾つかの具体的なポリマーの例は、ポリ(スチレン)、ランダムポリ(スチレン−コ−ビニルピリジン)及びジ−ブロックポリ(スチレン−コ−ビニルピリジン)である。
【0077】
ポリマー基Qは、任意の好適な分子量を有することができる。多くの実施形態では、重量平均分子量(Mw)は、5,000グラム/モル(すなわち、5,000ダルトン)を超える。例えば、重量平均分子量は、7,500グラム/モル超、10,000グラム/モル超、12,000グラム/モル超、15,000グラム/モル超、20,000グラム/モル超であり得る。重量平均分子量は、多くの場合、最大150,000グラム/モル、最大120,000グラム/モル、最大100,000グラム/モル、最大80,000グラム/モル、最大60,000グラム/モル又は最大40,000グラム/モルである。分子量が大きすぎる場合、得られる式(I)の化合物は、第1の化合物の重量に基づいて許容不可能なほど低濃度のアジリジニル基しか有さない恐れがある。すなわち、アジリジニル基に起因するこの化合物の重量%は、ポリマー基に起因する第1の化合物の重量%と比較して許容不可能なほど低いものとなり得る。
【0078】
ポリマー基Qはアニオン性重合又はフリーラジカル重合のいずれによっても形成することができるが、多くの場合、フリーラジカル重合技術が使用される。重合反応は、典型的には、反応開始剤の存在下で生じる。任意の既知の反応開始剤を使用できるが、この反応開始剤は、多くの場合、アゾ化合物である。好適なアゾ化合物としては、限定するものではないが、DuPont(Wilmington,DE)から商品名VAZO 64で市販されている2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、DuPontから商品名VAZO 67で市販されている2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、DuPontから商品名VAZO52で市販されている2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)が挙げられる。4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のカルボキシ含有反応開始剤の使用が多くの場合好ましいが、それは、このような反応開始剤が、式(I)の化合物の調製に関与するポリマー中間体(Q−(CO)−OH)がカルボキシル基を有する可能性を増大させる傾向を有するからである。反応開始剤は、典型的には、モノマー組成物中のモノマーの重量に基づいて、0.01〜5重量%の範囲、0.05〜3重量%の範囲、0.05〜2重量%の範囲、0.05〜1重量%の範囲、又は0.1〜1重量%の範囲の量で添加される。反応開始剤の量は、ポリマー基Qの重量平均分子量を制御するために用いることができる。より多くの量の反応開始剤を用いると、より多くのポリマー鎖が形成される。これにより、より低い重量平均分子量を有するポリマー鎖が生じる。逆に、反応開始剤の量が少量であると、形成されるポリマー鎖のうち、より高い重量平均分子量を有するものは少なくなる。
【0079】
また、ポリマー基Qを形成するために使用されるモノマー組成物は、分子量を制御するために、連鎖移動剤を含んでもよい。有用な連鎖移動剤の例としては、限定するものではないが、四臭化炭素、アルコール、メルカプタン及びこれらの混合物が挙げられる。例えば、3−メルカプトプロピオン酸等のカルボキシル含有連鎖移動剤の使用が、多くの場合好ましい。これらのカルボキシル含有連鎖移動剤は、式(I)の化合物の調製に関与するポリマー中間体がカルボキシル基を有する可能性を増大させる傾向を有する。
【0080】
連鎖移動剤は、ほとんどのエチレン性不飽和モノマーについて使用することができる。連鎖移動剤が使用された場合、ポリマー物質の一方の端部は多くの場合反応開始剤に由来する基になり、もう一方の端部は連鎖移動剤に由来する基になり得る。反応開始剤又は連鎖移動剤のうちの少なくとも1つは、酸性官能基(例えば、カルボキシル基)を供給するように選択され得る。酸性官能基を含む反応開始剤及び連鎖移動剤の両方を使用することは、ほとんどのポリマー鎖が酸性官能基を含有する可能性を増大させる傾向を有する。
【0081】
連鎖移動剤の代わりに、モノマー組成物は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から市販されている2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、1,1,3,3−テトラエチル−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−2−イルオキシ、ジ−tert−ブチルニトロキシド、又はAlfa Aesarから市販されている4−オキソ−TEMPO等のニトロキシド媒介剤を含んでもよい。この重合反応は、「リビング」又は「制御されている」と考えられ、必要に応じて開始及び終了させることができる。この制御機構は、アルコキシアミン結合を形成するための活性(すなわち、増殖している)ポリマー鎖上のフリーラジカルに対するニトロキシド媒介剤の可逆性カップリングに依存している。ニトロキシド媒介剤を添加すると、ポリマー鎖のラジカルがハロゲン原子にキャップされ、更なる増殖が不可能になる。しかしながら、ある温度では、アルコキシアミン結合は、開裂させることができ、ポリマー鎖を活性にして成長を持続させることが可能になる。それゆえに、アクティブポリマー鎖とドーマントポリマー鎖の間の均衡は、重合のために使用される温度範囲の選択により制御することができる。この温度範囲は、典型的には、100℃〜160℃の範囲である。得られるポリマー物質は、比較的狭い分子量分布を有する傾向がある。
【0082】
ニトロキシド媒介剤は、多くの場合、スチレン等のモノマーの重合に使用される。ニトロキシド化合物が使用されると、ポリマー物質の一方の端部は多くの場合反応開始剤から誘導される基になり、もう一方の端部はニトロキシド化合物にすることができる。これらのうちの少なくとも1つは、典型的には、酸官能基(例えば、カルボキシル基)を供給するように選択される。例えば、反応開始剤が4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)であり、ニトロキシド媒介剤TEMPOが使用される場合、ポリマーの一方の端部は、通常、−NH−C(CN)(CH)−CH−CH−COOHである。この例では、カルボキシル基は、反応開始剤により供給される。
【0083】
場合によっては、ニトロキシド媒介剤及び反応開始剤種は、1つの化合物から得ることができる。例えば、一部のアルコキシアミン化合物は、特定の温度で分解して、反応開始ラジカルとニトロキシドラジカルの両方を生じることができる。このような反応開始剤は、Messerschmidtらによる論文(Macromolecules,41(2008))に記載されている。分解されたアルコキシアミンからの反応開始剤種はまた、カルボキシル基を有し得、生じたポリマー基に鎖の一方の端部にカルボキシル基を残す。鎖のもう一方の端部は、分解されたアルコキシアミン化合物のニトロキシド部分でキャップされる。Leenenら(e−Polymers,71(2005))及びDufilsら(Polymer,48(2007))による論文に記載されている1つのこのような化合物は、2−メチル−2−(N−tert−ブチル−N−(1’ジエチルホスホノ−2,2’−ジメチルプロピル)アミノキシル)プロパン酸である。
【0084】
本発明で使用するとき、用語「多分散性」又は「多分散指数」は、分子量分布の尺度であり、ポリマーの数平均分子量(Mn)で除算した重量平均分子量(Mw)を指す。全てが同じ分子量のものであるポリマー物質は1.0の多分散性を有し、一方、1を超える分子量を有するポリマー物質は1.0を超える多分散性を有する。多分散度は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して決定することができる。多分散指数は、典型的には、10.0未満、5.0未満、2.0未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満又は1.1未満である。ニトロキシド媒介剤を使用した場合、多分散指数は、多くの場合、1.0〜1.4の範囲、1.0〜1.3の範囲、又は1.0〜1.2の範囲である。従来の連鎖移動剤をニトロキシド媒介剤の代わりに使用する場合等の非リビング重合方法が使用される場合には、多分散指数は、多くの場合、1.5〜10.0の範囲、1.5〜6.0の範囲、1.5〜4の範囲、1.5〜2.0の範囲、1.5〜2.0の範囲又は1.6〜2.0の範囲である。
【0085】
式(I)の化合物は、反応スキームAに示すように形成することができる。
【0086】
【化13】
【0087】
反応スキームAでは、式(III)の化合物は、カルボキシル末端ポリマーである。基Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基である。基Qは、多くの場合、フリーラジカル重合法により調製される。式(IV)の化合物は、ビス−アジリジン化合物である。式(III)中のポリマー基Q、並びに式(IV)中のR及びRは、式(I)について上で定義したものと同じである。
【0088】
式(III)の化合物は、典型的には、カルボキシル基を1つだけ有する。すなわち、ポリマー基Qは、通常、カルボキシル基を含有しないか、又は少量のカルボキシル基しか含有しない。ポリマー基Q中の複数のカルボキシル基は、式(IV)のビス−アジリジン化合物と反応する際に、化学的架橋の形成を引き起こす傾向を有する。しかしながら、カルボキシル基の濃度が十分に低い場合には、これらの基とビス−アジリジン化合物の反応可能性を最小化することができる。すなわち、Q基中では低レベルのカルボキシル基が使用され得る。
【0089】
反応スキームAは、典型的に、式(III)の化合物中の酸性基に比べて、式(IV)のビスアジリジン化合物中のアジリジニル基をモル過剰で使用する。アジリジニル基のモル数は、多くの場合、酸性基のモル数の少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、又は少なくとも4倍である。この過剰は、ビス−アジリジン化合物中のアジリジニル基の両方が式(III)のカルボキシル基末端ポリマーと反応するのを最小化する傾向を有する。この反応により、アジリジニル環の一方は開環するが両方は開環しない。式(I)の所望の生成物は、式(III)のカルボキシル末端ポリマーとの反応により開環されていないアジリジニル基を有する。
【0090】
反応スキームAは、典型的に、式(III)のポリマー及び式(IV)のビスアジリジン化合物と混和性である溶媒の存在下で、室温又は高温(例えば、80℃以下)で生じ得る。式(I)の化合物の調製に好適な溶媒としては、限定するものではないが、トルエン、キシレン、酢酸エチル及びメチルエチルケトンが挙げられる。得られた式(I)のアジリジニル末端ポリマーは、次に、アジリジニル末端ポリマーと不混和性である大量の溶媒の添加により、析出させられる。溶媒の体積は、多くの場合、生成物溶液の体積の少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍又は少なくとも10倍である。生成物(すなわち、式(I)の化合物)の析出に好適な溶媒としては、限定するものではないが、メタノールが挙げられる。析出したポリマー物質は、次いで、濾過し、乾燥させることができる。収率(%)は、多くの場合、85%超、90%超、92%超又は95%超である。
【0091】
反応スキームAは、式(I)の化合物を調製するための柔軟な方法を提供する。より具体的には、フリーラジカル重合反応を用いる中間体カルボキシル含有化合物Q−(CO)OHの形成により、ポリマー基Qを形成するために使用されるモノマーの選択を非常に柔軟なものにすることができる。
【0092】
形成されると、式(I)の第1の化合物は、第2のポリマー材料と反応することができる。このような反応は、第1のポリマー基Qを第2のポリマー材料にグラフト化する結合基の形成をもたらす。この結合基は、式(I)の第1の化合物のアジリジニル基と第2のポリマー材料の酸性基との反応から生じる。
【0093】
反応スキームBは、1つのこのような反応の例である。この反応スキームでは、式(I)の化合物は、カルボキシルを含有する第2のポリマー材料G−(CO)OHと反応して、式(VI)のグラフト化化合物を生成する。この反応スキームでは、第2のポリマー材料上の酸性基は、カルボキシル基である。式(V)及び(VI)における基Gは、第2のポリマー材料から少なくとも1つの酸性基を引いた残りである。
【0094】
【化14】
【0095】
式G−(CO)OH(V)のカルボキシル含有化合物は説明を容易にするためにただ1つのカルボキシル基を以って反応スキームに示しているが、この化合物は任意の好適な数のカルボキシル基を有し得る。つまり、最終生成物は、式−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Qの複数の基を含んでよい。第2のポリマー材料が複数のカルボキシル基を有する場合、これらカルボキシル基の全て又は任意の割合が、式(I)の化合物と反応し得る。
【0096】
言い換えれば、第2のポリマー材料は、複数の酸性基を有し得、これら酸性基の全て又は任意の割合が、式(I)の化合物と反応し得る。第2のポリマー材料は、多くの場合複数の酸性基を有する。反応生成物は、第2のポリマー材料がこのグラフト化コポリマーの主鎖であり、第1の化合物のポリマー基がペンダント基である、グラフト化コポリマーである。酸性基がカルボキシル基である場合、グラフト化コポリマーは、1以上の基の式−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Q(式中、R、R及びQを有する)有することができ、上記に定義したものと同じである。
【0097】
少なくとも1つの酸性基を有する任意のポリマー材料を、第2のポリマー材料として使用することができる。好ましくは、第2のポリマー材料は、複数の酸性基を有する。幾つかの第2のポリマー材料は、酸性モノマーを含む第2のモノマー組成物の重合によって形成される。好適な酸性モノマーは、典型的には、エチレン性不飽和基に加えて酸性基又は酸性基の塩を有する。酸性モノマーは、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸(すなわち、酸性基は−COOH基である)、エチレン性不飽和ホスホン酸(すなわち、酸性基は−PO基である)、エチレン性不飽和スルホン酸(すなわち、酸性基は−SOH基である)又はこれらの塩であり得る。複数の酸性モノマーを使用することができる。複数の酸性モノマーが使用される場合、これらは、同じ又は異なる酸性基を有することができる。
【0098】
例の酸性モノマーとしては、限定するものではないが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸等が挙げられる。酸性モノマーが塩形態である場合、塩のカチオンは、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウムのイオン)、アルカリ土類のイオン(例えば、カルシウム、マグネシウム又はストロンチウムのイオン)、アンモニウムイオン、1つ以上のアルキル基で置換されたアンモニウムイオン、1つ以上のアリール基で置換されたアンモニウムイオン、又は1つ以上のアリール基と1つ以上のアルキル基で置換されたアンモニウムイオンであり得る。多くの実施形態では、酸性モノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸である(すなわち、酸性基はカルボキシル基である)。
【0099】
幾つかの例では、第2のポリマー材料は、酸性モノマーのホモポリマーである。例えば、第2のポリマー材料は、ポリ(メタ)アクリル酸であってよい。他の例では、第2のポリマー材料は、酸性モノマーと少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーとを含む第2のモノマー組成物から形成されるコポリマーである。式(I)中のポリマー基Qの形成に好適なモノマーとして上述した任意のエチレン性不飽和モノマーを第2のモノマー組成物中で使用することができる。
【0100】
幾つかのより具体的な第2のポリマー材料は、例えば、(a)(メタ)アクリル酸と、(b)少なくとも1つの(メタ)アクリレート(すなわち、(メタ)アクリレートエステル)と、を含む第2のモノマー組成物から形成することができる。この(メタ)アクリレートエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸と非三級アルコールとの反応生成物であり得る。非三級アルコールは、典型的には、1〜20個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、1〜14個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、又は4〜12個の炭素原子を有する。このアルコールは、式R11OH(式中、R11は、アルキル基(直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基又はビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である)のアルコールであってよい。非三級アルコールの好適な例としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール(tridencanol)、1−テトラデカノール、1−オクタデカノール、2−オクタデカノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロール、2−プロピルヘプタノール、イソボルネオール、フェニルメタノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0101】
(メタ)アクリレートは、多くの場合、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ドデシルアクリレート、ベンジルアクリレート及びこれらの混合物から選択される。
【0102】
他の任意のコモノマーが第2のモノマー組成物中に存在してもよい。これらの任意のコモノマーとしては、限定するものではないが、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミド)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、シアノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シアノエチルアクリレート)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート)が挙げられる。更に他の好適なコモノマーとしては、ポリエチレングリコールアクリレート、エトキシエチルアクリレート及びエトキシエトキシエチルアクリレート等のポリ(アルキレンオキシド)アクリレートが挙げられる。
【0103】
第2のモノマー組成物は、多くの場合、1〜30重量%の(メタ)アクリル酸と70〜99重量%の(メタ)アクリレート(すなわち、(メタ)アクリレートエステル)を含有する。重量%は、第2のポリマー材料を調製するために使用される第2のモノマー組成物中のモノマーの合計重量に基づく。この組成物を有するポリマー材料は、ガラス転移温度が20℃未満、10℃未満、0℃未満、−10℃未満又は−20℃未満である粘弾性材料(すなわち、流動し得るエラストマー材料)となる傾向を有する。得られるグラフト化コポリマーは、例えば、感圧性接着剤組成物等の様々な接着剤組成物において用いることができる。より多量の(メタ)アクリル酸が含まれる場合、粘弾性材料のガラス転移温度及び剛性は、望ましくないほど高くなる恐れがある。しかしながら、(メタ)アクリル酸が少なすぎる場合、粘弾性材料が第1の化合物と反応する可能性が減少する、あるいは、得られるグラフト化コポリマーにおけるグラフト化部位が非常に少なくなる。存在するグラフト化部位があまりにも少ない場合には、グラフト化ポリマー及びグラフト化ポリマーを含有する任意の接着剤の凝集力が、許容できないほど低くなる恐れがある。
【0104】
幾つかの例では、第2のモノマー組成物は、第2のモノマー中のモノマーの合計重量に基づいて、1〜25重量%の(メタ)アクリル酸と75〜99重量%の(メタ)アクリレートエステル、1〜20重量%の(メタ)アクリル酸と80〜99重量%の(メタ)アクリレートエステル、1〜15重量%の(メタ)アクリル酸及び85〜99重量%の(メタ)アクリレートエステル、1〜10重量%の(メタ)アクリル酸と90〜99重量%の(メタ)アクリレートエステル、又は5〜15重量%の(メタ)アクリル酸と85〜95重量%の(メタ)アクリレートを含有する。
【0105】
モノマーに加えて、第2のモノマー組成物は、典型的には、様々なモノマーのフリーラジカル重合のための反応開始剤も含む。重合開始剤は、熱反応開始剤、光開始剤、又はその両方であってよい。フリーラジカル重合反応に既知である任意の好適な熱反応開始剤又は光開始剤を使用できる。反応開始剤は、典型的には、第2のモノマー組成物中のモノマーの合計重量に基づいて、0.01〜5重量%の範囲、0.01〜2重量%の範囲、0.01〜1重量%の範囲又は0.01〜0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0106】
幾つかの実施形態では、熱反応開始剤が使用される。熱反応開始剤は、典型的には、ペルオキシド、アゾ化合物、過硫酸塩又はレドックス(還元−酸化)系である。好適なペルオキシドとしては、これらに限定するものではないが、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジセチルペルオキシジカルボネート及びラウリルペルオキシドが挙げられる。好適なアゾ化合物としては、限定するものではないが、DuPont(Wilmington,DE)から商品名VAZO 67で市販されている2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、DuPontから商品名VAZO 64で市販されている2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)及びDuPontから商品名VAZO 52で市販されている2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)が挙げられる。好適な過硫酸塩としては、限定するものではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。好適なレドックス系としては、限定するものではないが、過硫酸塩と還元剤(ピロ亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム等)の組み合わせ、ペルオキシドと三級アミン(ジメチルアニリン等)の組み合わせ、又は、ヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシド)と遷移金属(例えば、コバルトナフタレン)の組み合わせが挙げられる。
【0107】
幾つかの実施形態では、光開始剤が使用される。光開始剤の幾つかの例は、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル若しくはベンゾインイソプロピルエーテル)及び置換ベンゾインエーテル(例えば、アニソインメチルエーテル)である。光開始剤の他の例は、2,2−ジエトキシアセトフェノン又は2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Ciba Corp.(Tarrytown,NY)から商品名IRGACURE 651で、あるいはSartomer(Exton,PA)から商品名ESACURE KB−1で市販されている)等の置換アセトフェノンである。光開始剤の更に別の例は、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換α−ケトール、2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド、及び、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシムである。
【0108】
第2のモノマー組成物は、典型的には、フリーラジカル重合反応を調節することにより、粘弾性材料の分子量を制御するための連鎖移動剤も含む。好適な連鎖移動剤としては、限定するものではないが、ハロゲン化炭化水素(例えば、四臭化炭素)、及びメルカプタン(例えば、ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール、イソオクチルチオグリコレート(IOTG)、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート、2−メルカプトイミダゾール及びメルカプトエチルエーテル)等のイオウ化合物が挙げられる。特定の有機溶媒はまた、エタノール、イソプロパノール及び酢酸エチル等の連鎖移動剤として機能することができる。
【0109】
第2のモノマー組成物中に含まれる連鎖移動剤の量は、所望の分子量及び使用される具体的な連鎖移動剤に依存する。イオウ化合物と比較して、例えば、有機溶媒は通常、より不活性であり、大量に存在させる必要がある。連鎖移動剤は、多くの場合、第2のモノマー組成物中のモノマーの合計重量に基づいて0.001〜10重量%の範囲の量で存在する。この量は、第2のモノマー組成物中のモノマーの合計重量に基づいて0.01〜5重量%、0.01〜2重量%、0.01〜1重量%、又は0.01〜0.5重量%の範囲であり得る。
【0110】
第2のポリマー材料は、任意の好適な方法又はプロセス(例えば、米国特許第5,986,011号(Ellis))を用いて、第2のモノマー組成物から調製することができる。多くの実施形態では、不活性有機溶媒を使用しない方法又は非常にわずかな量の不活性有機溶媒(例えば、第2のモノマー組成物の合計重量に基づいて5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満)を使用する方法が使用される。モノマー及び得られるコポリマー物質が互いに混和性である場合、このような方法を使用することができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、反応物質と生成物の混和性をもたらすために、不活性有機溶媒が大量に使用される。第2のモノマー組成物中に含まれるとき、不活性有機溶媒は、典型的に、第2のモノマー組成物の総重量に基づいて50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下である。
【0111】
第2のポリマー材料を形成するために使用される一部のプロセスでは、第2のモノマー組成物は、重合前にシート上に配置する、2枚のシートの間に配置する、又はパッケージ化材料により少なくとも部分的に包囲することができる。シート又はパッケージ化材料は、多くの場合、第2のポリマー材料を調製するために使用される特定の重合方法に基づいて選択される。例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート又はアイオノマーポリマー等の可撓性熱可塑性ポリマーを使用することができる。
【0112】
幾つかの実施形態では、第2のモノマー組成物は、米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載のように、封止したパウチ等のパッケージ化材料内で重合される。使用されるパッケージ化材料の量は、典型的には、パッケージ化材料と第2のモノマー組成物の合計重量に基づいて、約0.5重量%〜約20重量%の範囲である。例えば、パッケージ化材料は、1〜20重量%、1〜15重量%、2〜15重量%、1〜10重量%、2〜10重量%、1〜5重量%又は2〜5重量%の範囲であり得る。パッケージ化材料の厚さは、多くの場合、0.01ミリメートル〜0.25ミリメートルの範囲、0.01〜0.20ミリメートルの範囲、0.01〜0.10ミリメートルの範囲、又は0.03〜0.10ミリメートルの範囲である。パウチは、任意の好適なサイズを有することができるが、多くの場合、サイズは、0.1〜500グラム、1〜500グラム、1〜200グラム、1〜100グラム、2〜100グラム、5〜100グラム、又は5〜50グラムの第2のモノマー組成物を収容できるように選択される。
【0113】
熱重合プロセスが使用される場合、好適なシート又はパッケージ化材料は、典型的には、第2のモノマー組成物の重合温度よりも高い融解温度を有する。シート又はパッケージ化材料は、多くの場合、少なくとも90℃、少なくとも100℃又は少なくとも120℃の融点を有する。融点は、多くの場合、200℃未満、175℃未満、又は150℃未満である。重合温度は、熱反応開始剤の活性化温度に依存する。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を用いる反応は約80℃にて行うことができるが、一方、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)を用いる反応は約70℃にて行うことができる。
【0114】
幾つかの熱重合プロセスでは、第2のモノマー組成物を収容するパッケージ化材料は、モノマーを重合させるのに十分な時間熱交換媒質内に浸漬される。熱交換媒質は、例えば、水、ペルフルオロ化液体、グリセリン、又はプロピレングリコールであり得る。あるいは、パッケージ化された第2のモノマー組成物を、加熱した金属圧板、加熱した金属ローラー又はマイクロ波エネルギーに近接して配置することにより、熱重合に必要な熱を供給することができる。
【0115】
光重合プロセスが使用される場合、好適なシート又はパッケージ化材料は、典型的には、シート又はパッケージ化材料を通して十分な量の化学線(例えば、紫外線)を第2のモノマー組成物に到達させることができる。発光スペクトルの少なくとも60%又は少なくとも70%が280〜400ナノメートルの範囲であり、強度が約0.1〜25mW/cmである紫外線光が、多くの場合、選択される。
【0116】
一部の光重合プロセス中、第2のモノマー組成物を収容する封止されたパウチを、水浴又は他の熱転移流体中に浸漬することにより、温度を制御することができる。例えば、パッケージ化された第2のモノマー組成物は、90℃以下であるが、多くの場合、50℃以下の温度で制御される水浴中に浸漬することができる。温度は、例えば、5〜50℃、5〜40℃、又は5〜30℃の範囲で制御され得る。
【0117】
任意の所望の分子量の第2のポリマー材料を反応スキームBにおいて調製及び使用できるが、重量平均分子量は、多くの場合、少なくとも50,000グラム/モル、少なくとも100,000グラム/モル、少なくとも200,000グラム/モル、又は少なくとも500,000グラム/モルである。幾つかの実施形態では、重量平均分子量は、最大で3,000,000グラム/モル、最大で2,000,000グラム/モル、最大で1,000,000グラム/モルであり得る。第2のポリマー材料の分子量が増加するにつれて、第2のポリマー材料を式(I)の第1の化合物と混合することがより困難になる恐れがある。
【0118】
第2のポリマー材料の重量平均分子量は、多くの場合、200,000〜2,000,000グラム/モルの範囲、200,000〜1,000,000グラム/モルの範囲、500,000〜2,000,000グラム/モルの範囲、又は500,000〜1,000,000グラム/モルの範囲である。分子量が大きすぎると、第2のポリマー材料は良好に流動しなくなり、得られるグラフトポリマーからコーティングを調製するのが困難になる恐れがある。しかし、分子量が小さすぎると、得られるグラフト化コポリマーの凝集力が不所望に低くなる恐れがある。
【0119】
グラフト化コポリマーを調製するために、少なくとも1つの酸性基(好ましくは複数の酸性基)を有する第2のポリマー材料と、単一のアジリジニル基及び第1のポリマー基を両方有する第1の化合物とを反応させてよい。第2のポリマー材料の酸性基がカルボキシル基である場合、反応によって、式:−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Q(式中、R、R及びQは、上記に定義したものと同じである)の少なくとも1つのペンダント基(好ましくは、複数のペンダント基)を有するグラフト化コポリマーが形成される。
【0120】
第2のポリマー材料が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートエステルを含有する第2のモノマー組成物を用いて形成された粘弾性材料である場合、得られるグラフト化コポリマーは、多くの場合、−(CO)OR11基と−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Q基とを含むペンダント基を有する炭化水素主鎖を有する。基R、R、R11及びQは、先に定義したものと同じである。−(CO)OR11基は、第2のモノマー組成物中に含まれる(メタ)アクリレートエステルに由来する。ペンダント基−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Qは、粘弾性材料のカルボキシル基と第1の化合物のアジリジニル基との反応から生じる。粘弾性材料を形成するために使用される(メタ)アクリル酸に由来する未反応の−(CO)OH基が存在する場合には、これらの基も、グラフト化コポリマー中に存在することができる。
【0121】
グラフト化コポリマーの幾つかの実施形態では、第2のポリマー材料は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートエステルを含有する第2のモノマー組成物から形成される粘弾性材料であり、一方、第1の化合物は、粘弾性材料と混和性ではない第1のポリマー基Qを有するように選択される。すなわち、第1のポリマー基Qは、粘弾性材料から相分離する。この相分離により、グラフト化コポリマーの物理的架橋として機能し得る第1のポリマー基の別個のドメインが形成される。グラフト化コポリマーは、多くの場合、感圧性接着剤等の接着剤として使用することができる。接着剤の凝集力は、より多くのグラフト化基をグラフト化化合物に導入することにより(すなわち、−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Qペンダント基)を導入することを通して)上昇する傾向がある。
【0122】
物理的架橋は、典型的に、ポリマー鎖内の絡み合いの自然又は誘導形成に依存し、グラフト化コポリマーの凝集力を上昇させる傾向を有する。物理的架橋は、多くの場合、グラフト化コポリマーが、比較的高温で融解状態で加工可能であるが、より低温で架橋形態をとることができることから望ましい。グラフト化コポリマーは、溶融加工可能であり、得られる架橋は、可逆性である。つまり、グラフト化コポリマーは、繰り返し加熱して流動させ、次いで、再度冷却して、物理的に架橋された物質を形成することができる。対照的に、化学架橋コポリマーは、典型的に、ホットメルト接着剤として加工することができない。
【0123】
粘弾性である第2のポリマー材料から相分離させるために、及び物理的架橋をもたらすために、第1の化合物は、多くの場合、周囲温度で第2のポリマー材料に不混和性であるように選択される。物理的架橋は、第1の化合物が少なくとも20℃以上のガラス転移温度を有するとき、促進される。このような第1の化合物を形成するために、第1のポリマー基Qを形成するために使用されるモノマーは、多くの場合、ホモポリマーとして重合されたときに、少なくとも20℃又は少なくとも50℃に等しいガラス転移温度を有するように選択される。好適なモノマーは、(メタ)アクリレート又は様々なビニルモノマー(例えば、ビニルエーテルモノマー、ビニルアリールモノマー、ビニル複素環式モノマー、ビニルエステルモノマー等)であり得る。
【0124】
第2のポリマー材料として用いられる(メタ)アクリレート系粘弾性材料から相分離し得るポリマー基Qを形成するための幾つかの具体的なモノマーとしては、限定するものではないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ノニルフェノールメタクリレート、セチルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン)、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、n−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、ビニルプロプリオネート又はこれらの混合物が挙げられる。
【0125】
ガラス転移温度に加えて、第1の化合物の分子量(例えば、ポリマー基Qの分子量)は、グラフト化コポリマーが相分離及び物理的架橋するかどうかに影響し得る。第1の化合物中のポリマー基Qの分子量が少なくとも5000グラム/モルの重量平均分子量を有する場合には、相分離が生じる可能性がより高い。すなわち、第1の化合物は、重量平均分子量が5000グラム/モルを超えるように選択される。Q基の重量平均分子量は、多くの場合、7,500グラム/モル超、10,000グラム/モル超、12,000グラム/モル超、15,000グラム/モル超、又は20,000グラム/モル超である。感圧性接着剤の凝集力は、ポリマー基Qの重量平均分子量が増加するにつれて、上昇する傾向を有する。
【0126】
しかしながら、ポリマー基Qの分子量が大きすぎると、粘弾性材料との反応により重量基準で形成されるペンダント基の数が減少する可能性がある。つまり、ポリマー基Qの重量が大きくなるにつれて、重量基準で、式−(CO)OC(RC(RNH−R−NH−C(RC(R−O(CO)−Qの多くのペンダント基を形成することがより困難になる恐れがある。ポリマー基Qの重量平均分子量は、多くの場合、最大で150,000グラム/モルである。例えば、この重量平均分子量は、最大120,000グラム/モル、最大100,000グラム/モル、最大80,000グラム/モル、最大60,000グラム/モル又は最大40,000グラム/モルであり得る。
【0127】
グラフト化コポリマーは、多くの場合、ポリマー材料の総重量(例えば、第1の化合物及び第2のポリマー材料)に基づいて、少なくとも0.5重量%の第1の化合物を含む反応混合物から調製される。例えば、グラフト化コポリマーを形成するために用いられる反応混合物は、反応混合物中のポリマー材料の総重量(例えば、第1の化合物及び第2のポリマー材料)に基づいて、0.5〜20重量%の第1の化合物及び80〜99.5重量%の第2のポリマー材料を含有し得る。この反応混合物は、多くの場合、1〜15重量%の第1の化合物及び85〜99重量%の第2のポリマー材料、1〜10重量%の第1の化合物及び90〜99重量%の第2のポリマー材料、又は5〜15重量%の第1の化合物及び85〜95重量%の第2のポリマー材料を含有する。
【0128】
同様に、第1の化合物の重量の大部分は第1のポリマー基Qに起因することが多いので、グラフト化コポリマーは、多くの場合、グラフト化コポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%のペンダント基Qを含有する。グラフト化コポリマーは、例えば、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の基Qを含有し得る。グラフト化コポリマー中の基Qの濃度は、多くの場合、グラフト化コポリマーの総重量に基づいて0.5〜20重量%、1〜20重量%、2〜20重量%、5〜20重量%、1〜15重量%、1〜10重量%、又は2〜10重量%の範囲である。
【0129】
幾つかの具体的なグラフト化コポリマーは、粘弾性の第2のポリマー材料と、粘弾性の第2のポリマー材料と混和性ではない第1の化合物と、から生成される。より具体的には、Qポリマー基は、グラフト化コポリマーの粘弾性部分から相分離する。第1の化合物は、ポリ(ビニルアリールモノマー)等のホモポリマー(例えば、ポリ(スチレン))、ポリ(ビニルアリールモノマー)の第1のブロックとポリ(ビニル複素環式モノマー)の第2のブロックとを有するブロックコポリマー(例えば、ジ−ブロックポリ(スチレン−コ−ビニルピリジン))、ポリ(ビニルアリールモノマー)とポリ(ビニル複素環式モノマー)とのランダムコポリマー(例えば、ランダムポリ(スチレン−コ−ビニルピリジン))であるQポリマー基を有し得る。あるいは、化合物は、例えば、ランダム又はブロックコポリマーであるポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、又はポリ(イソボルニルアクリレート−コ−ベンジルメタクリレート)等のポリ(メタ)アクリレートであるQポリマー基を有し得る。粘弾性材料は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートエステルを含有する第2のモノマー組成物の重合生成物であってよい。
【0130】
グラフト化コポリマーを調製するために、第2のポリマー材料(例えば、粘弾性材料)は、多くの場合、ホットメルトプロセスを用いて、第1の化合物と反応させる。ホットメルト加工は、多くの場合、不活性有機溶媒の使用を最小化又は削減することができるため、望ましいと考えられる。すなわち、グラフト化コポリマーとポリアミドとのブレンド工程は、多くの場合、溶媒を含まないか、又は実質的に溶媒を含まない。本明細書で使用するとき、用語「実質的に溶媒を含まない」は、組成物が、組成物の総重量に基づいて2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の溶媒を有することを意味する。環境及び経済の両観点から、溶媒を含まないか又は低濃度の溶媒しか含まないことが望ましい場合がある。
【0131】
粘弾性材料を調製し、次いで、第1の化合物と混合する。任意の好適なホットメルト法を使用して、第1の化合物を第2の粘弾性材料と混合することができる。一部の方法では、粘弾性材料は、パウチ等のパッケージ化材料内に配置され(例えば、粘弾性材料は、パッケージ化材料内で調製することができる)、C.W.Brabender(Hackensack,NJ)から市販されているもののうちの1つのような混合装置内で又は押出成形機内で第1の化合物と合わせられる。混合装置は、粘弾性材料を取り囲んでいるパッケージ化材料の破砕、パッケージ化材料融解、又はこれらの両方を行うことができる。
【0132】
グラフト化コポリマーを形成し、任意でパッケージ化材料を融解するのに十分である任意の好適な反応時間及び温度を使用することができる。例えば、第1の化合物は、少なくとも100℃、少なくとも110℃又は少なくとも120℃に等しい温度で、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、又は少なくとも20分間、粘弾性材料と混合することができる。温度及び時間は、多くの場合、パッケージ化材料が融解するが、第1の化合物、第2のポリマー材料、又は両方を分解するには不十分であるように選択される。パッケージ化材料の量及びパッケージ化材料の種類は、グラフト化化合物の所望の特性がパッケージ化材料により悪影響を受けないように選択される。
【0133】
グラフト化コポリマーは、ポリアミドとブレンドされて、ブレンド組成物を形成する。ポリアミドの添加により、グラフト化組成物の凝集力を更に強化することができる。この凝集力の更なる強化は、ポリアミド内の水素結合、ポリアミドとグラフト化コポリマーとの間の水素結合、又は両方に起因し得る。ブレンド組成物(すなわち、ブレンド)の凝集力は、典型的に、グラフト化コポリマー単独の凝集力よりも大きく、且つグラフト化コポリマーを形成するために用いられる粘弾性材料にポリアミドを添加することによって得られる凝集力よりも大きい。ブレンドの強化された凝集力は、多くの場合、粘弾性材料からのグラフト化コポリマーの形成によって得られる上昇した凝集力と、グラフト化コポリマーを形成するために用いられる粘弾性材料にポリアミドを添加することによって得られる上昇した凝集力との合計よりも大きい。
【0134】
任意の好適なポリアミドを用いてよい。ポリアミドは、脂肪族セグメント、芳香族セグメント、又はアミド基によって分離されているこれらの組み合わせを有し得る。アミド基は、通常、ポリアミドの主鎖に存在する。好適なポリアミドは、典型的に、1)200℃以下の融解温度を有する、2)ブレンド温度において組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択される。
【0135】
ポリアミドの第1のクラスは、200℃以下の融点を有する。幾つかの好適なポリアミドは、190℃以下、180℃以下、170℃以下、又は160℃以下の融解温度を有する。融解温度は、典型的に、ポリアミドに含まれるアミド基の濃度と共に上昇する。200℃以下の融点を有するポリアミドは、溶融加工によってグラフト化コポリマーとブレンドすることができる。すなわち、グラフト化コポリマー及びポリアミドの両方は、200℃以下のブレンド温度において溶融状態でブレンドすることができる。約200℃を超えるブレンド温度を用いる場合、グラフト化コポリマーが少なくとも幾つかの分解を受ける可能性が増加する。しかし、200℃を超えるブレンド温度は、材料がこの温度である時間が比較的短い場合に用いることができる。
【0136】
あるいは、グラフト化コポリマー及びポリアミドは、組成物にポリアミドが溶解して良好な混合結果が得られる程度にブレンド温度が十分に高い場合、ポリアミドの融解温度よりも低い温度でブレンドすることができる。ポリアミドは、グラフト化コポリマー、ブレンド組成物に含まれる不活性溶媒、又はこれらの両方に溶解し得る。
【0137】
200℃以下の融点を有する好適なポリアミドは、芳香族セグメント、脂肪族セグメント、又はこれらの組み合わせを有し得る。脂肪族セグメントは、直鎖状、環状、又は分枝状であってよい。脂肪族セグメントは、炭素主鎖を有してもよく、主鎖中に炭素原子と共に含まれるヘテロ原子を有してもよい。脂肪族セグメントは、飽和であっても部分的に不飽和であってもよい。幾つかの実施形態では、脂肪族セグメントは、アルキレン基又はヘテロアルキレン基である。
【0138】
200℃以下の融点を有するポリアミドの幾つかの例は、ポリエーテル系ポリアミドである。すなわち、これらポリアミドは、少なくとも1つのポリエーテルセグメント(すなわち、式−(CHO−(式中、nは、少なくとも1に等しい整数である)の複数の基を有するヘテロアルキレンセグメント)を有する。ポリエーテルセグメントは、多くの場合、式−CHCHO−、−CHCHCHO−、−CHCHCHCHO−等の繰り返し単位である。好適なポリエーテル系ポリアミドは、多くの場合、ブロックコポリマーであり、少なくとも1つのアルキレンセグメントを更に含んでよい。特定のポリエーテル系ポリアミドとしては、Arkema Inc.(Philadelphia,PA)から商品名PEBAX(例えば、PEBAX 1205、PEBAX 2533、及びPEBAX 6333)として市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
200℃以下の融点を有するポリアミドの他の例は、ダイマー酸系ポリアミドである。ダイマー酸は、典型的に、オレイン酸又はトール油脂肪酸等の18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の二量体化によって形成される。ダイマー酸は、多くの場合、少なくとも部分的に不飽和であり、且つ多くの場合、36個の炭素原子を含有する。ダイマー酸系ポリアミドは、ダイマー酸とジアミンとの縮合反応を用いて形成されることが多い。ジアミンは、多くの場合、アルキレンジアミン又はヘテロアルキレンジアミンである。具体的なダイマー酸系ポリアミドとしては、Henkel(Rocky Hill,CT)から商品名MACROMELT(例えば、MACROMELT 6240)として市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
200℃以下の融点を有するポリアミドの更に他の例は、ポリ(ラウリルラクタム)等のポリ(ラクタム)である。開環反応によって形成されるこれらポリアミドは、アミド基によって分離されている複数のアルキレンセグメント(例えば、11個の炭素原子を有するアルキレン等)を有する。ポリ(ラクタム)の例は、Scientific Polymer Products,Inc.(Ontario,NY)から商品名NYLON 12として市販されているポリ(ラウリルラクタム)である。
【0141】
他の好適なポリアミドは、ブレンド温度でブレンド組成物に少なくとも部分的に溶解し得るものである。このクラスのポリアミドの融点は、200℃以下であってよく、又は200℃超であってもよい。融点が200℃以下である場合、第1のクラスのポリアミドについて上述した通りブレンドしてよい。ポリアミドの融解温度が200℃超であるとき、ポリアミドは、200℃超のブレンド温度でグラフト化コポリマーとブレンドすることができるが、ただし、合わせる温度及び時間及び温度は、グラフト化コポリマーの分解を最小限に抑えるか又は防ぐように選択される。更に別の方法では、グラフト化コポリマー及びポリアミドは、組成物にポリアミドが溶解して良好な混合が得られる程度に十分ブレンド温度が高い場合、ポリアミドの融解温度よりも低い温度でブレンドすることができる。ポリアミドは、グラフト化コポリマー、ブレンド組成物に含まれる不活性溶媒、又はこれらの両方に溶解し得る。
【0142】
本明細書で使用するとき、用語「部分的に溶解する」は、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、又は少なくとも99.8重量%のポリアミドがブレンド温度で溶解することを意味する。幾つかの実施形態では、ブレンド温度で、透明なブレンド組成物が形成されることが望ましい。ブレンド温度は、ブレンドに含まれる、特定のグラフト化コポリマー(例えば、グラフト化コポリマーの分解を最小限に抑えるか又は防ぐように選択される)及びポリアミドに基づいて選択される。不活性溶媒が存在する場合、ブレンド温度は、多くの場合、不活性溶媒の沸騰温度よりも低い。ブレンド温度は、多くの場合、周囲温度〜300℃の範囲、周囲温度〜250℃の範囲、又は周囲温度〜200℃の範囲である。
【0143】
第2のクラスのポリアミドは、典型的に、脂肪族セグメント及びアリーレンセグメントを有する。アリーレンセグメントは、多くの場合、フェニレンを含み、脂肪族セグメントは、多くの場合、アルキレン又はヘテロアルキレンである。この種のポリアミドは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、又はこれらの組み合わせと、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、又はこれらの組み合わせと、の縮合反応によって調製することができる。好適なアルキレンジアミンは、多くの場合、6〜12個の炭素原子を含む分枝状又は環状のアルキレンである。一例は、アルキレン基が分枝状であり、且つ9個の炭素原子を含有する以下の化学構造のポリアミドである。変数nは、3超、10超、20超、又は50超である。
【0144】
【化15】
【0145】
このようなポリアミドは、Evonik Degussa Corporation(Parsippany,NY)から商品名TROGAMID(例えば、TROGAMID T)として市販されている。類似のポリアミドは、商品名NYLON 6(3)TとしてScientific Polymer Products,Inc.(Ontario,NY)等の他の供給元から市販されている。
【0146】
好適なポリアミドは、グラフト化コポリマーと混合できる任意の分子量を有してよい。好適である特定の分子量は、ポリアミドの化学組成に依存し得るが、数平均分子量は、多くの場合、少なくとも10,000グラム/モル、少なくとも20,000グラム/モル、又は少なくとも50,000グラム/モルである。数平均分子量は、500,000グラム/モル以下又は更に高くてもよい。例えば、数平均分子量は、400,000グラム/モル以下、300,000グラム/モル以下、200,000グラム/モル以下、又は100,000グラム/モル以下であってよい。幾つかの例では、数平均分子量は、10,000〜500,000グラム/モルの範囲、50,000〜500,000グラム/モルの範囲、又は50,000〜300,000グラム/モルの範囲である。
【0147】
ブレンド組成物(例えば、グラフト化コポリマー及びポリアミド)は、典型的に、グラフト化コポリマー単独よりも高い凝集力を有する。この強化された凝集力は、ポリアミドのアミド基とグラフト化コポリマーの様々な極性基との間の水素結合、ポリアミド自体内の水素結合、又はこれらの組み合わせに起因し得る。これら結合は、多くの場合、ブレンド組成物をコーティングできる高温(例えば、100℃〜200℃)で破壊され得る。しかし、室温に冷却すると、水素結合が形成されて、強化された凝集力が提供される。凝集力の上昇は、ブレンド組成物中に含まれるポリアミドの添加量におよそ比例している。
【0148】
より多くのポリアミドをブレンド組成物に添加すると、組成物の弾性率及びガラス転移温度が上昇し得る。ブレンド組成物を感圧性接着剤組成物等の接着剤組成物として用いる場合、ブレンド中のポリアミドの量は、典型的に、ブレンド組成物の総重量に基づいて20重量%以下である。ポリアミドの量がより多い場合、ブレンド組成物は、感圧性接着剤の通常の特性を有さない場合がある。すなわち、ガラス転移温度、弾性率、又はこれらの両方が、組成物がもはや感圧性接着剤として機能しない点まで上昇する可能性がある。
【0149】
ブレンド組成物(すなわち、ブレンド)は、多くの場合、ブレンド組成物の総重量に基づいて、0.5〜20重量%のポリアミドと、80〜99.5重量%のグラフト化コポリマーと、を含む。幾つかのブレンドは、1〜20重量%のポリアミド及び80〜99重量%のグラフト化コポリマー、2〜20重量%のポリアミド及び80〜98重量%のグラフト化コポリマー、1〜15重量%のポリアミド及び85〜99重量%のグラフト化コポリマー、2〜15重量%のポリアミド及び85〜98重量%のグラフト化コポリマー、1〜10重量%のポリアミド及び90〜99重量%のグラフト化コポリマー、2〜10重量%のポリアミド及び90〜98重量%のグラフト化コポリマー、又は5〜10重量%のポリアミド及び90〜95重量%のグラフト化コポリマーを含有する。
【0150】
グラフト化化合物及びポリアミドのブレンド組成物は、感圧性接着剤等の接着剤として用いることができる。このように、組成物は、粘着性であってよい。しかし、より高い粘着性が望ましい場合、更なる粘着付与剤をブレンド組成物に含めてもよい。感圧性接着剤組成物に典型的に含まれる任意の粘着付与剤を使用してよい。固体又は液体の粘着付与剤のいずれを使用してもよい。固体粘着付与剤は、一般には、約10,000グラム/モル以下の数平均分子量(Mn)及び約70℃を超える軟化点を有する。液体粘着付与剤は、約0℃〜約70℃の軟化点を有する粘稠な物質である。固体粘着付与樹脂が一般的に好ましい。
【0151】
好適な粘着付与樹脂として、ロジン及びその誘導体(例えばロジンエステル)、ポリテルペン及び芳香族修飾ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、並びに、炭化水素樹脂、例えば、αピネン系樹脂、βピネン系樹脂、リモネン系樹脂、脂肪族炭化水素系樹脂、芳香族修飾炭化水素系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及びジシクロペンタジエン系樹脂が挙げられる。これら粘着付与樹脂は、必要に応じて、感圧性接着剤に対するこれらの色の影響を低下させるために水素を添加してもよい。幾つかの実施形態では、粘着付与剤は、グラフト化コポリマーを形成するために用いられる粘弾性材料と混和性であるが、グラフト化コポリマー中のポリマー基Qとは不混和性であるように選択される。
【0152】
粘着付与剤をブレンド組成物に添加するとき、組成物は、多くの場合、ブレンドの総重量(例えば、粘着付与剤、グラフト化コポリマー、及びポリアミドの重量)に基づいて0.5〜50重量%の粘着付与剤を含有する。幾つかの実施形態では、ブレンド組成物は、1〜50重量%、1〜40重量%、5〜40重量%、1〜30重量%、5〜30重量%、1〜20重量%、又は5〜20重量%の粘着付与剤を含有する。
【0153】
粘着付与剤を含むブレンド組成物は、例えば、ブレンド組成物の総重量に基づいて1〜50重量%の粘着付与剤、30〜98.8重量%のグラフト化コポリマー、及び0.2〜20重量%のポリアミドを含有してよい。幾つかの例は、1〜40重量%の粘着付与剤と、40〜98.5重量%のグラフト化コポリマーと、0.5〜20重量%のポリアミドと、を含有する。他の例は、1〜30重量%の粘着付与剤と、50〜98重量%のグラフト化コポリマーと、1〜20重量%のポリアミドと、を含有する。更に他の例は、1〜30重量%の粘着付与剤と、60〜98重量%のグラフト化コポリマーと、1〜10重量%のポリアミドと、を含有する。
【0154】
充填剤、可塑剤等の接着剤組成物に一般的に添加される他の材料をブレンド組成物に添加してよい。
【0155】
ポリアミドは、グラフト化コポリマーの形成後にグラフト化コポリマーとブレンドしてよい。あるいは、ポリアミドは、式(I)の第1の化合物及び粘弾性材料である第2のポリマー材料とブレンドしてよい。言い換えれば、グラフト化コポリマーは、ポリアミドの存在下で形成してもよい。多くの実施形態では、グラフト化コポリマーは、ホットメルトプロセスを用いて形成され、ポリアミドとブレンドされる。任意の好適なホットメルト法を用いて、グラフト化コポリマーを調製し、得られるグラフト化コポリマーとポリアミドとをブレンドすることができる。幾つかの方法では、第2のポリマー材料(粘弾性材料)は、ポリマーパウチ等のパッケージ化材料内に配置され(例えば、粘弾性材料は、パッケージ化材料内で調製され得る)、C.W.Brabender(Hackensack,NJ)から市販されているもののうちの1つのような混合装置内で又は押出成形機内で第1の化合物と合わせられる。混合装置は、粘弾性材料を取り囲んでいるパッケージ化材料の破砕、パッケージ化材料の融解、又はこれらの両方を行うことができる。パッケージが破壊されると、粘弾性材料は、第1の化合物と反応して、グラフト化コポリマーを形成する。次いで、得られるグラフト化コポリマーをポリアミドとブレンドしてよい。
【0156】
この温度は、典型的に、第1の化合物を第2のポリマー材料と反応させて、溶融グラフト化コポリマーを形成するのに十分高いように選択される。次いで、グラフト化コポリマーが溶融状態である間にグラフト化コポリマーをポリアミドと混合する。温度は、典型的に、ポリアミドも溶融するか又は少なくとも部分的に溶解して、グラフト化コポリマーと適切に混合されるように選択される。合わせたグラフト化コポリマーの調製及びポリアミドとのブレンドの温度は、多くの場合、200℃以下であるように選択される。高温を用いてもよく、時間と温度との組み合わせは、グラフト化コポリマーの分解を防ぐか又は最小限に抑えるように選択される。
【0157】
ブレンド組成物は、多くの場合、ダイを用いてフィルム又はコーティングとして送達される。このフィルム又はコーティングは、多くの場合、基材の一方又は両方の主表面上に配置される。金属含有材料、ポリマー材料、セラミック材料又はガラスから生成されるもの等の任意の好適な基材を使用することができる。基材は、剛性又は可撓性、透明又は不透明、並びに任意の好適な厚さであり得る。フィルム又はコーティングが感圧性接着剤である場合、基材は裏材であってよい。好適な裏材としては、限定するものではないが、紙、布(織布又は不織布)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらのコポリマー)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(エチレンアクリル酸))、発泡体(ポリウレタン又はポリアクリレートから調製されるもの等)、金属箔等が挙げられる。
【0158】
幾つかの実施形態では、ブレンド組成物は、2つの基材の間に配置される。第1の基材は、例えば、感圧性接着剤に好適な裏材であってよく、第2の基材は剥離ライナーであってよい。例えば、シリコーンコーティング(シリコーン剥離ライナー)、ポリフルオロポリエーテルコーティング又はポリフルオロエチレンコーティングでコーティングされた裏材のような任意の好適な剥離ライナーを使用することができる。
【0159】
ブレンド組成物は、凝集力をもたらすために物理的架橋及び水素結合の両方を有してよい。物理的架橋はグラフト化コポリマー内の相分離に依存するが、水素結合は、相分離に依存しない。むしろ、水素結合は、グラフト化コポリマーの様々な極性基、ポリアミド内の様々な他の極性基、又はこれらの両方と、ポリアミド上のアミド基との相互作用に依存する。凝集力を改善するためのこれら2つのアプローチにより、協同又は相乗効果が生じる。すなわち、強化された凝集力は、水素結合のみを用いて得られる強化と物理的架橋のみを用いて得られる強化との合計よりも大きい。
【0160】
ブレンド組成物は、高温で流体であり、次いで、室温に冷却したとき、物理的に架橋し、水素結合してよい。この種の架橋及び結合は、可逆的であってよい。すなわち、ブレンド組成物は、繰り返して流体又は溶融状態に加熱し、再度冷却することができる。物理的架橋及び水素結合は、流体又は溶融状態から冷却したとき繰り返し再形成することができる。
【0161】
望ましい凝集力を得るために、更なる架橋(例えば、化学架橋、光架橋、又は電子ビーム架橋)を必要としない。これは、放射線透過の深さの限定、大きな設備投資、ライン速度の限定、及び高い付加荷重等の光架橋及び電子ビーム架橋に関連する典型的な問題なく凝集力を得ることができるので、特に有利である。
【0162】
更に、物理的架橋及び水素結合の両方を併用すると、グラフト化コポリマーの形成において、酸含量の低い粘弾性化合物(グラフト化コポリマーを形成するために用いられる第2のポリマー材料)を使用することができる。これら系では、物理的架橋及び水素結合のいずれかのみの使用は、典型的に、望ましい凝集力を提供するのに不適切である。物理的架橋及び水素結合の組み合わせにより、結果として良好な凝集力を有するブレンド組成物を形成することができる。これら系は、多くの場合、医療及びエレクトロニクス用途に望ましい。
【0163】
組成物又は組成物を製造する方法である様々な項目が提供される。
【0164】
項目1は、ブレンド組成物である、組成物である。組成物は、a)グラフト化コポリマーと、b)ポリアミドと、を含む。グラフト化コポリマーは、1)式(I)
【化16】

の第1の化合物と、2)少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料と、を含む反応混合物の生成物を含有する。式(I)中、各Rは独立して水素又はアルキルである。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含有し、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含有する二価の基である。基Rは、水素又はアルキルである。基Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含有する第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基である。ブレンドに含まれるポリアミドは、1)200℃以下の融解温度を有する、2)ブレンド温度において組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択される。
【0165】
項目2は、接着剤である、項目1に記載の組成物である。
【0166】
項目3は、感圧性接着剤である、項目1又は2に記載の組成物である。
【0167】
項目4は、ホットメルト加工可能である、項目1〜3のいずれか一項に記載の組成物である。
【0168】
項目5は、前記ポリアミドが、組成物の総重量に基づいて0.5〜20重量%の範囲の量で存在する、項目1〜4のいずれか一項に記載の組成物である。
【0169】
項目6は、前記ポリアミドが、少なくとも1つのポリエーテルセグメントを有するブロックコポリマーである、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物である。
【0170】
項目7は、前記ポリアミドが、(a)少なくとも1つのポリエーテルセグメントと、(b)少なくとも1つのアルキレンセグメントと、を有するブロックコポリマーである、項目1〜6のいずれか一項に記載の組成物である。
【0171】
項目8は、前記ポリアミドが、複数のアルキレン又はヘテロアルキレンセグメントを有する、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物である。
【0172】
項目9は、前記ポリアミドが、(a)少なくとも1つのアルキレン又はヘテロアルキレンセグメントと、(b)少なくとも1つのアリーレンセグメントと、を有するブロックコポリマーである、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物である。
【0173】
項目10は、前記ポリアミドが、(a)アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミナー、又はこれらの組み合わせと、(b)ダイマー酸と、を含む反応混合物の生成物である、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物である。
【0174】
項目11は、前記第2のポリマー材料が、(a)(メタ)アクリル酸と、(b)少なくとも1つの(メタ)アクリレートエステルと、を含む第2のモノマー組成物の重合生成物である、項目1〜10のいずれか一項に記載の組成物である。
【0175】
項目12は、基Qが、グラフト化コポリマー中の第2のポリマー材料から相分離する、項目1〜11のいずれか一項に記載の組成物である。
【0176】
項目13は、Qを形成するために使用される少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーが、ホモポリマーとして重合する場合、少なくとも20℃に等しいガラス転移温度を有するように選択される、項目1〜12のいずれか一項に記載の組成物である。
【0177】
項目14は、Qが、5000グラム/モル超の重量平均分子量を有する、項目1〜13のいずれか一項に記載の組成物である。
【0178】
項目15は、前記第1のモノマー組成物が、スチレン、α−メチルスチレン又はアルキル置換スチレンを含む、項目1〜14のいずれか一項に記載の組成物である。
【0179】
項目16は、前記第1のモノマー組成物が、(メタ)アクリレートエステル、(メタ)アクリルアミド又はこれらの組み合わせを含む、項目1〜14のいずれか一項に記載の組成物である。
【0180】
項目17は、前記基Qが、ランダムコポリマーであり、前記第1のモノマー組成物が、ビニルアリールモノマー及びビニル複素環式モノマーを含む、項目1〜14のいずれか一項に記載の組成物である。
【0181】
項目18は、前記基Qがブロックコポリマーであり、前記第1のモノマー組成物が、ポリ(ビニルアリールモノマー)の第1のブロックと、ポリ(ビニル複素環式モノマー)の第2のブロックと、を含む、項目1〜14のいずれか一項に記載の組成物である。
【0182】
項目19は、粘着付与剤を更に含む、項目1〜18のいずれか一項に記載の組成物である。
【0183】
項目20は、ブレンド組成物の総重量に基づいて1〜50重量%の粘着付与剤、30〜98.8重量%のグラフト化コポリマー、及び0.2〜20重量%のポリアミドを含む、項目19に記載の組成物である。
【0184】
項目21は、組成物を製造する方法である。前記方法は、グラフト化コポリマーを提供することと、前記グラフト化コポリマーをポリアミドとブレンドすることと、を含む。前記グラフト化コポリマーは、1)式(I)の第1の化合物と、
【化17】

(2)少なくとも1つの酸性基を有する第2のポリマー材料と、を含む、反応混合物の生成物を含有する。式(I)中、各Rは独立して水素又はアルキルである。基Rは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組み合わせを含有し、任意で、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、−NR−又はこれらの組み合わせを更に含有する二価の基である。基Rは、水素又はアルキルである。基Qは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含有する第1のモノマー組成物の重合生成物を含む第1のポリマー基である。ブレンドに含まれるポリアミドは、1)200℃以下の融解温度を有する、2)ブレンド温度において組成物に少なくとも部分的に可溶性である、又は3)1)及び2)の両方であるように選択される。
【0185】
項目22は、前記グラフト化コポリマーが、ポリアミドの存在下で形成される、項目21に記載の方法。
【0186】
項目23は、前記組成物が、ブレンド工程中に溶媒を含まない、又は実質的に溶媒を含まない、項目21又は22に記載の方法である。
【0187】
項目24は、前記ポリアミド及び前記グラフト化コポリマーが、ブレンド温度で両方とも溶融状態にある、項目21〜23のいずれか一項に記載の方法である。
【0188】
項目25は、ブレンド温度が、前記ポリアミドの融解温度よりも低い、項目21〜23のいずれか一項に記載の方法である。
【実施例】
【0189】
全てのパーセントは、特に指示しない限り、重量に基づく。
【0190】
以下の実施例で使用される材料は、特に明記しない限り、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)又はSigma−Aldrich Company(St.Louis,MO)から購入した。
【0191】
Alfa Aesar(Ward Hill,MA)製の阻害物質除去樹脂(CAS # 9003−70−7)を充填したカラムにモノマーを通すことにより、モノマーから阻害物質を除去した。このように処理したスチレン及びビニルピリジン等のモノマーを「処理モノマー」と呼ぶ。
【0192】
[分子量分布の試験方法]
化合物の分子量分布は、従来のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて特性評価した。Waters Corporation(Milford,MA)から入手したGPC装置は、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(モデル1515HPLC)、オートサンプラー(モデル717)、UV検出機(モデル2487)、及び屈折率検出機(モデル2410)を備えていた。クロマトグラフは、2つの5マイクロメートルのPLgel MIXED−Dカラム(Varian Inc.(Palo Alto,CA)から入手可能)を備えていた。
【0193】
ポリマー又は乾燥ポリマーサンプルを0.5%(重量/体積)の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、VWR International(West Chester,PA)から入手可能である0.2マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンフィルターを通して濾過することにより、ポリマー溶液のサンプルを調製した。得られたサンプルをGPCに注入し、35℃に維持したカラムを通して毎分1ミリリットルの速度で溶出させた。このシステムを、線形最小二乗分析を用いてポリスチレン標準で較正して、検量線を確立した。重量平均分子量(Mw)及び多分散指数(重量平均分子量を数平均分子量で除した商)をこの標準検量線に対して各サンプルについて計算した。
【0194】
[室温における剪断力の試験方法]
実施例に記載の通り調製した幅25.4ミリメートル(mm)の試験ストリップを用いて剪断試験を実施した。ステンレス鋼パネルを、アセトンで拭き取ることによって洗浄し、乾燥させた。各試験ストリップの25.4mm×25.4mmの部分がパネルと強固に接触し、各試験ストリップの一方の端部が自由端になるように、試験ストリップをパネルに適用した。試験ストリップの接着しているパネルを、延在している自由端とパネルとが180°の角度を形成するようにラック内で保持した。1キログラムの重りを各試験ストリップの自由端に取り付けた。室温(約23℃)で試験を実施し、試験パネルから各試験ストリップが分離するまでの経過時間を剪断力として分で記録した。各サンプルについて2回の剪断試験を実施し、結果を平均した。
【0195】
[引き剥がし接着力の試験方法]
実施例に記載の通り調製した試験ストリップを用いて引き剥がし接着力を測定した。ステンレス鋼パネルを、アセトンで拭き取ることによって洗浄し、乾燥させた。幅1.25センチメートル(cm)×長さ10〜12cmであると測定された試験ストリップを、2キログラム(kg)の硬質ゴムローラを2回転がすことによってパネルに接着した。試験ストリップの自由端を、除去角度が180°になるように折り返し、接着試験スケール(スリップ/ピールテスターモデル3M90、Instrumentors Inc.Strongsville,OHから入手)の水平アームに取り付けた。ステンレス鋼パネルを、スケールから12インチ/分(30.5cm/分)の速度で離れるプラットフォームに取り付けた。試験ストリップを試験パネルに適用した直後に、接着を確立させる時間を作らずに剥離試験を開始した。引き剥がし試験中のピーク及び最低力(ニュートン)の平均を記録した。引き剥がし試験は各サンプルについて3回実施し、平均して、引き剥がし力値を得た。
【0196】
[予備実施例P1:アジリジニル末端ポリスチレン]
300グラムのスチレンモノマーと、7グラムの4,4’アゾビス(4−シアノ吉草酸)反応開始剤と、1.8グラムの2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)と、55グラムのキシレン溶媒とを、凝縮器、機械的攪拌機、及び窒素パージ管を備える複数口の1,000ミリリットル(mL)のフラスコに添加することによって、カルボキシル末端(酸含有)ポリスチレンポリマーの組成物を調製した。フラスコをセプタムで密閉し、30分間窒素を吹き込んだ。次いで、フラスコを145℃に加熱した油浴に入れ、撹拌しながら10時間その温度で保持した。反応中、最初は赤色であった溶液が、淡い黄色がかった色に変化し、固体の反応開始剤が溶解した。生成物をフラスコ内で冷却し、GPC及びH−NMR分析のためにサンプルを取り出した。GPC分析に基づいて、スチレンモノマーの変換率は約85パーセントであり、カルボキシル末端ポリスチレンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約15,500グラム/モルであり、多分散性は1.3であった。
【0197】
1,1’−イソフタライルビス(2−メチルアジリジン)の5重量%トルエン溶液600グラムを
【化18】

冷却フラスコに添加し、室温(約20〜25℃)で24時間混合することによってアジリジニル末端ポリ(スチレン)を、調製した。得られた溶液を6倍(体積)過剰の冷メタノールに添加した。沈殿したアジリジン末端ポリ(スチレン)ポリマーを濾過し、回収し、真空下で乾燥させた。ポリマーの重量平均分子量は、約15,600グラム/モルであり、多分散指数は1.36であった。
【0198】
[予備実施例P2:アジリジニル末端ポリ(メチルメタクリレート)]
294グラムのメチルメタクリレート(MMA)、5.4グラムの3−メルカプトプロピオン酸(MPA)、VAZO−67として販売されている熱反応開始剤である、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.96グラム及び250グラムのトルエンを、電磁撹拌棒を収容している狭口ガラス瓶に添加し、十分混合することにより、カルボキシル末端(酸含有)ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーの組成物を調製した。組成物に30分間窒素を吹き込んだ。次いで、瓶を密閉し、回転及び加熱している水浴(Atlas,Inc.(Athens,GA)から商品名Launder−O−meterで入手可能)に70℃で20時間入れた。GPC分析に基づいて、カルボキシル末端ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーは、15,000グラム/モルの重量平均分子量(Mw)を有し、メチルメタクリレートモノマーの変換率は約99パーセントであった。
【0199】
1,1’−イソフタライルビス(2−メチルアジリジン)の5重量%トルエン溶液600グラムをカルボキシル末端ポリ(メチルメタクリレート)を含有する瓶に添加し、室温で24時間混合することによって、アジリジニル末端ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーを調製した。得られた溶液を6倍(体積)過剰の冷メタノールにゆっくりと添加し、沈殿したアジリジニル末端ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーを濾過し、回収し、真空下で乾燥させた。GPC分析に基づいて、ポリマーの重量平均分子量は約15,500グラム/モルであり、多分散指数は1.3であった。
【0200】
[予備実施例P3〜P5:粘弾性材料の調製]
琥珀色の瓶中で、表1に示す量のイソオクチルアクリレート(IOA)及びアクリル酸(AA)を、0.004グラムのイソオクチルチオグリコレート(IOTG)及び0.02グラムの2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY))から商品名IRGACURE 651で市販されている)と混合することによって硬化性組成物を調製した。厚さ0.065mmの透明なポリ(エチレン酢酸ビニル)フィルムを熱融着させて、18cm×5cm及び各重量約1.4グラムと測定された開放型パウチを形成することによってパウチを調製した。ポリ(エチレン酢酸ビニル)フィルムは、Flint Hills Resources(Wichita,KS)から商品名VA−24として入手した。各パウチに約26グラムの硬化性組成物を充填した。パウチの開放端から空気を押出し、次いで、開放端を封止した。Midwest Pacific Impulse Sealer(J.J.Elemer Corp.St.Louis,MO)を用いてパウチをシールした。シールしたパウチを17℃の一定温度水浴に浸漬し、各側面上に8分間紫外線(365nm、4mW/cm)を照射して、硬化性組成物を重合させた。得られた生成物は、粘弾性材料であった。各ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、GPCによって分析することにより、ポリマーの分子量を測定した。
【0201】
【表1】
【0202】
[実施例1〜21:グラフト化コポリマー及びポリアミドブレンドの調製]
予備実施例P3〜P5から得られた粘弾性材料のパウチを、C.W.Brabender(Hackensack,NJ)から商品名BRABENDER(Half Size Mixer)として市販されている高温配合機を用いて融解させた。各サンプルについて、粘弾性材料のパウチを150℃の設定温度で100毎分回転数(rpm)にて5分間混合した。各パウチ内の粘弾性材料が均一に融解したようにみえたら、予備実施例P1又はP2から得られたアジリジニル末端ポリマー及びポリアミドを添加し、150℃で10分間100rpmで混合した。ポリアミドサンプル6(3)T及びN12では、混合温度を175℃に上昇させた。次いで、混合チャンバーを100℃に冷却し、混合パドルの回転を逆にして、得られた物質を排出させ、回収した。各実施例で用いる具体的な粘弾性材料、アジリジニル末端ポリマー、及びポリアミドを以下の表2に記載する。
【0203】
本明細書で使用するとき「P1205」は、Arkema,Inc.(Colombes,France)から商品名PEBAX 1205として市販されているポリアミドを指す。この材料は、融解温度147℃のポリエーテル系ポリアミドである。
【0204】
本明細書で使用するとき「P2533」は、Arkema,Inc.(Colombes,France)から商品名PEBAX 2533として市販されているポリアミドを指す。この材料は、融解温度134℃のポリエーテル系ポリアミドである。
【0205】
本明細書で使用するとき「P6333」は、Arkema,Inc.(Colombes,France)から商品名PEBAX 6333として市販されているポリアミドを指す。この材料は、融解温度169℃のポリエーテル系ポリアミドである。
【0206】
用語「M6240」は、Henkel(Dusseldorf,Germany)から商品名MACROMELT 6240として市販されているポリアミドを指す。この材料は、融解温度141℃のダイマー酸系ポリアミドである。
【0207】
用語「N6(3)T」は、Scientific Polymer Products Inc(Ontario,NY)から商品名NYLON 6(3)Tとして市販されているナイロンを指す。この材料は、テレフタル酸及びアルキレンジアミンのブロックコポリマーである。この材料は、250℃の融解温度を有する。
【0208】
用語「N12」は、Scientific Polymer Products Inc.(Ontario,NY)から商品名NYLON 12として市販されているポリ(ラウリルラクタム)系ポリアミドを指す。この材料は、178℃の融解/軟化温度を有する。
【0209】
冷却後、約1グラムのブレンド組成物を、下塗りポリエステルライナー(Mitsubishi(Greer,SC))から入手したHOSTAPHEN 3SAB PETフィルム)及びシリコーン処理剥離ライナー(Siliconature SPA(Godega di Sant’Urbano,Italy)から入手したSilphan S36ライナー)の間に配置した。この構造体を、プレート温度を80℃に設定したCarver,Inc.(Wabash,IN)製の加熱したプレスのプレートの間に配置し、約0.05ミリメートル(mm)の厚さに圧縮した。冷却後、試験ストリップを調製し、試験方法に従って引き剥がし接着力及び剪断力を試について試験した。結果を表2に示す。
【0210】
【表2】
【0211】
[実施例22:グラフト化コポリマー、ポリアミド、及び粘着付与剤ブレンドの調製]
21グラムの粘弾性材料P3、0.84グラムのポリアミドP1205、1グラムのアジリジニル末端ポリマーP1、及び3グラムの粘着付与剤(Eastman Co.(Kinsgport TN)によって商品名REGALREZ 6108として販売されている部分的に水素添加されている炭化水素樹脂)を用いて、ブレンド組成物を調製した。パウチ材料及び粘弾性材料が均一に融解したようにみえるまで、150℃の温度設定で100rpmにて5分間、パウチ内の粘弾性材料P3をC.W.Brabender(Hackensack,NJ)製の配合機内で混合した。次いで、粘着付与剤を添加し、同じ条件下で5分間混合した。次いで、アジリジニル末端ポリマーP1及びポリアミドP1205を添加し、150℃で10分間100rpmにて混合した。
【0212】
ブレンド組成物の試験ストリップを調製し、実施例1〜21に記載の通り評価した。剪断力は、1,980分であり、引き剥がし接着力は43N/dmであった。
【0213】
[比較例C1〜C15]
試験ストリップを調製し、実施例1〜20に記載の調製及び評価手順を用いて表3に示す組成物を調製し、評価した。試験結果を表3に示す。比較例C1〜C10にはポリアミドが含まれておらず、比較例C11〜C15にはアジリジニル末端ポリマーが含まれていなかった。
【0214】
【表3】