特許第5901693号(P5901693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5901693-ガスタービンのためのダンパ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901693
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ガスタービンのためのダンパ
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/18 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   F23R3/18
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-108063(P2014-108063)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2014-228272(P2014-228272A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】13169211.3
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウアス ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヌワレ
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0102963(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0123791(US,A1)
【文献】 特開2005−315473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−60
F02C 7/00−36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃焼室の脈動を低減するためのダンパであって、
入口と、前記燃焼室の内部および共振器キャビティに流体接続したネックチューブとを有する共振器キャビティと、
前記ネックチューブと回転可能に接続され、かつ前記共振器キャビティと前記燃焼室との間に挿入され、前記燃焼室と前記共振器キャビティとの間の相対回転を可能にする補償アセンブリとを備えており、
前記ネックチューブは、第1の端部において、前記燃焼室の壁部に気密に取り付けられており、かつ前記補償アセンブリは、前記ネックチューブの第2の端部に回転可能に接続されており、
前記補償アセンブリは、前記ネックチューブの前記第2の端部に形成された球状部と、該球状部と気密に嵌合したソケット部とを備えており、前記燃焼室と前記共振器キャビティとの間に前記相対回転を提供していることを特徴とする、ダンパ。
【請求項2】
前記燃焼室の前記壁部は、内壁と、該内壁より半径方向外側に位置した外壁とを備えており、
前記ネックチューブは、前記第1の端部において、前記燃焼室の前記内壁に気密に取り付けられており、かつ前記外壁の開口部を通って延びており、前記ネックチューブと前記開口部との間に生じる隙間を覆うために、ハトメが、前記ネックチューブの周囲に気密に取り付けられている、請求項1記載のダンパ。
【請求項3】
前記補償アセンブリは、前記ソケット部に形成された第1の摺動部と、該第1の摺動部に気密に嵌合している第2の摺動部とをさらに備えており、前記第1の摺動部と前記第2の摺動部との間に、前記ネックチューブの長手方向軸線に平行な方向に沿った相対摺動を提供する、請求項1または2記載のダンパ。
【請求項4】
前記補償アセンブリは、前記第2の摺動部に形成された第3の摺動部と、該第3の摺動部に気密に嵌合している、前記共振器キャビティの前記入口に形成された第4の摺動部とをさらに備えており、前記第3の摺動部と前記第4の摺動部との間に、前記ネックチューブの前記長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供している、請求項記載のダンパ。
【請求項5】
前記補償アセンブリは、前記第2の摺動部に形成された第3の摺動部と、該第3の摺動部に気密に嵌合している、前記燃焼室の前記壁部に形成された第4の摺動部とをさらに備えており、前記第3の摺動部と前記第4の摺動部との間に、前記ネックチューブの前記長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供している、請求項3記載のダンパ。
【請求項6】
前記第3の摺動部は、該第3の摺動部に形成された突出部を備えており、該突出部は、前記第4の摺動部に対して気密に摺動することができる、請求項4又は5記載のダンパ。
【請求項7】
請求項3から6までのいずれか1項記載のダンパを有する燃焼チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに関し、より詳細にはガスタービンの燃焼室における脈動を低減するためのダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスタービンでは、通常、燃焼過程中に、ガスタービンの燃焼室において、燃焼の不安定性および種類に起因する音響振動が生じる。この音響振動は、非常に顕著な共振になることがある。燃焼室脈動としても知られているそのような振動は、燃焼室自体を、燃焼室の寿命を決定的に低減し、かつ最悪の場合、燃焼室の破壊さえも引き起こすことがある厳しい機械的負荷にさらす、振幅およびその関連する圧力変動の形をとることがある。
【0003】
一般的に、ヘルムホルツダンパとして知られているタイプのダンパは、ガスタービンの燃焼室で発生する脈動を減衰させるために使用されている。現在、そのようなダンパを使用する際の主な難点の1つとして、これらのダンパのための空間が制限されているという事実がある。そのような状況に取り組む際に考えられる1つの手段は、燃焼室の外側にダンパを配置することである。実際には、燃焼室を構成している複数の異なる層の熱膨張によって、そのようなダンパを直接使用することができない。
【0004】
ガスタービンの燃焼室における共振振動を低減するための減衰装置が、米国特許出願公開第2004/0248053号明細書に開示されており、燃焼室が、燃焼室に面している外部壁面部分と内部壁面部分とを備えており、中間空間を気密に囲んでおり、その中間空間には、燃焼室壁を対流冷却するために冷却空気が供給され得る。少なくとも1つの第3の壁面部分が設けられており、外部壁面部分とともに気密な体積を囲んでいる。気密な体積は、少なくとも1つの接続ラインによって燃焼室に気密に接続されている。ガスケットが、気密な体積に位置している接続ラインの端部において溶接されており、かつ外部壁面部分を覆い、気密性を提供している。このガスケットおよび接続ラインによって、減衰装置は、外部壁面部分と内部壁面部分との間の熱膨張差を1つの方向において補償することができる。
【0005】
ガスタービンエンジンに適した燃焼室が、米国特許出願公開第2006/0123791号明細書に示されており、共振器キャビティと、室内と流体接続している共振器ネックとを有した、少なくとも1つのヘルムホルツ共振器を備えている。ヘルムホルツ共振器は、燃焼室の内部ケーシングに固定されており、共振器ネックは、燃焼室の内壁の開口部から燃焼室の内部に貫通している。環状シール部材が、ネックの外周に配置されており、ネックと開口部との間に気密シールを提供している。ネックは、燃焼室に対するネックの限定的な相対的軸方向運動を提供しているので、エンジン作動時に、負荷が共振器ネックから燃焼室へ実質的に伝達されない。
【0006】
少なくとも1つの共振器を備えているガスタービンのための燃焼器が、国際公開第2012/057994号に開示されており、外側ライナと内側ライナとを備えている。共振器は、外側ライナに接続されている。燃焼器ライナは、共振器の基部から延び、かつ内側ライナと外側ライナとを貫通して燃焼室まで達しているスロート部を備えている。燃焼器ライナは、ハトメアセンブリをさらに備えている。ハトメアセンブリは、スロート部の軸線に沿った第1の方向および第1の方向に直交した第2の方向において、スロート部付近における内側ライナと外側ライナとの間の相対的な熱膨張を可能にしている。
【0007】
脈動減衰分野において上記のような開発があるが、熱膨張差をなくすための補償効果を向上させる余地が大いにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0248053号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0123791号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/057994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、燃焼器室とダンパ、特にダンパの共振器キャビティとの間に発生する熱膨張差による相対回転を補償することができるガスタービンのためのダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、ガスタービンの燃焼室における脈動を低減するためのダンパによって得られ、ダンパは、入口と、燃焼室の内部および共振器キャビティに流体接続したネックチューブとを備えた共振器キャビティと、ネックチューブと回転可能に接続され、かつ共振器キャビティと燃焼室との間に挿入され、燃焼室と共振器キャビティとの間の相対回転を可能にする補償アセンブリとを備えている。
【0011】
1つの可能な実施の形態によれば、ネックチューブは、その第1の端部において、燃焼室の壁部に気密に取り付けられており、補償アセンブリは、ネックチューブの第2の端部に回転可能に接続されており、補償アセンブリは、ネックチューブの第2の端部に形成された球状部と、球状部と気密に嵌合しているソケット部とを備えており、燃焼室と共振器キャビティとの間に相対回転を提供している。
【0012】
別の1つの可能な実施の形態によれば、補償アセンブリは、ソケット部に形成された第1の摺動部と、第1の摺動部と気密に嵌合している第2の摺動部をさらに備えており、第1の摺動部と第2の摺動部との間に、ネックチューブの長手方向軸線に平行な方向に沿った相対的な摺動を提供している。
【0013】
別の1つの可能な実施の形態によれば、補償アセンブリは、第2の摺動部に形成された第3の摺動部と、第3の摺動部と気密に嵌合している、共振器キャビティの入口に形成された第4の摺動部とをさらに備えており、第3の摺動部と第4の摺動部との間に、ネックチューブの長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供している。
【0014】
別の1つの可能な実施の形態によれば、燃焼室の壁部は、外壁と、外壁より半径方向内側に位置した内壁とを備えており、ネックチューブは、その第1の端部において、燃焼室の内壁に気密に取り付けられており、かつ外壁の開口部を通って延びており、ハトメが、ネックチューブの周囲に気密に取り付けられて外壁の開口部を覆っている。
【0015】
別の1つの可能な実施の形態によれば、第3の摺動部は、突出部を備えており、突出部は、第4の摺動部に対して気密に摺動することができる。
【0016】
別の1つの可能な実施の形態によれば、ネックチューブは、第1の端部において、共振器キャビティの入口に気密に取り付けられており、補償アセンブリは、ネックチューブの第2の端部に回転可能に接続されており、補償アセンブリは、ネックチューブの第2の端部に形成された球状部と、球状部に気密に嵌合しているソケット部とを備えており、燃焼室と共振器キャビティとの間に相対回転を提供している。
【0017】
別の1つの可能な実施の形態によれば、補償アセンブリは、ソケット部に形成された第1の摺動部と、第1の摺動部と気密に嵌合している第2の摺動部とをさらに備えており、第1の摺動部と第2の摺動部との間に、ネックチューブの長手方向軸線に平行な方向に沿った相対的な摺動を提供している。
【0018】
別の1つの可能な実施の形態によれば、補償アセンブリは、第2の摺動部に形成された第3の摺動部と、第3の摺動部と気密に嵌合している、燃焼室の壁部に形成された第4の摺動部とをさらに備えており、第3の摺動部と第4の摺動部との間に、ネックチューブの長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供している。
【0019】
別の1つの可能な実施の形態によれば、第3の摺動部は、突出部を備えており、突出部は、第4の摺動部に対して気密に摺動することができる。
【0020】
本発明のダンパにおいて、補償アセンブリを設けることによって、燃焼室と共振器キャビティとの間における相対回転の補償が保証され、それによって、動作寿命が延びる。
【0021】
本発明の目的、利点および他の特徴は、単に例証を目的とした好適な実施の形態の非限定的な記載を添付の図面を参照して読むことによってより明らかとなるであろう。添付の図面において、同じ部材には同じ参照符合が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一部を見やすいように切り取った、本発明の実施の形態によるガスタービンの燃焼室の一部を備えたダンパの模式的な断面図である。
図2】一部を見やすいように切り取った、本発明の別の実施の形態によるガスタービンの燃焼室の一部を備えたダンパの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、一部を見やすいように切り取った、本発明の実施の形態による、ガスタービンの燃焼室200の一部とともに示すダンパ100の模式的な断面図である。ダンパ100は、周壁102と入口104とにより画定された、箱状または筒状の共振器キャビティ110を備えている。図1に示されるように、本発明の技術的解決策の十分かつ完全な理解を妨げることがないため、共振器キャビティ110の主要部は切り取ってある。また、見やすくかつ簡潔にするために、燃焼室200の本発明に密接に関わっている部分のみを図1に示している。共振器キャビティ110は、図1には示されていない留め具によって、燃焼室200の構造部106に気密に取り付けられている。本発明の例示的な実施態様では、燃焼室200の構造部106は、燃焼室200のケーシングであってよい。構造部106が、共振器キャビティ110のための支持部を提供し、かつ本明細書において記載されているように燃焼室のケーシングに限定されているのではないということが当業者には理解されよう。加えて、共振器キャビティ110と燃焼室200との間の相対運動を補償するために、ダンパ100は、本発明による補償アセンブリ130を通じて共振器キャビティ110と流体接続しているネックチューブ120を備えている。
【0024】
1つの例示的な実施の形態によれば、ネックチューブ120は、第1の端部122において、燃焼室200の壁部に気密に取り付けられている。例えば、ネックチューブ120の第1の端部122は、燃焼室200の壁部に溶接されていてもよい。燃焼室200が、内壁202と内壁202より半径方向外側に位置した外壁204とを備えている2重壁燃焼室に適用することができる1つの可能な実施態様として、ネックチューブ120が外壁204の開口部206を通って延びた状態で、ネックチューブ120の第1の端部122を燃焼室200の内壁202に気密に取り付けてもよい。この場合、ネックチューブ120と開口部206との間に生じる隙間を覆うために、ハトメ208を、例えば溶接によってネックチューブ120の周囲に気密に取り付けて、それにより気密性を提供してもよい。
【0025】
別の実施の形態として、本発明を1重壁燃焼室に適用する場合、ハトメ208を使用しなくてもよい。
【0026】
本発明の1つの例示的な実施の形態によれば、補償アセンブリ130を、ネックチューブ120に回転可能に接続し、かつ共振器キャビティ110と燃焼室200との間に挿入して、燃焼室200と共振器キャビティ110との間の相対回転を可能にしてもよい。この実施の形態では、補償アセンブリ130は、ネックチューブ120の第1の端部122の反対側の第2の端部124に回転可能に接続してもよい。具体的には、補償アセンブリ130は、第2の端部124に形成された球状部126と、球状部126に気密に嵌合したソケット部132とを備えており、燃焼室200と共振器キャビティ110との間の相対回転を提供してもよい。ガスタービンの作動中、燃焼室200と共振器キャビティ110との間の熱膨張差による相対回転は、潜在的な構造的損傷を防ぐため、補償アセンブリ130により補償または吸収される。
【0027】
加えて、補償アセンブリ130は、ソケット部132の反対側に形成された第1の摺動部134と、第1の摺動部134に気密に嵌合している第2の摺動部136とを備えており、第1の摺動部134と第2の摺動部136との間に、ネックチューブ120の長手方向軸線に平行な方向に沿った相対摺動を提供してもよい。ガスタービンの作動中、第1の摺動部と第2の摺動部との間の相対摺動によって、燃焼室200と共振器キャビティ110との間における、ネックチューブ120の長手方向軸線に沿った、熱膨張差による相対運動を補償することができる。
【0028】
さらに、補償アセンブリ130は、第1の摺動部134の反対側の第2の摺動部136に形成された第3の摺動部138と、第3の摺動部138に気密に嵌合している、共振器キャビティ110の入口104に形成された第4の摺動部108とを備えており、第3の摺動部138と第4の摺動部108との間に、ネックチューブ120の長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供してもよい。ガスタービンの作動中、第3の摺動部138と第4の摺動部108との間の相対摺動によって、燃焼室200と共振器キャビティ110との間における、ネックチューブ120の長手方向軸線を横断する方向の、熱膨張差による相対運動を補償することができる。
【0029】
図1に示されるように、第4の摺動部108を入口104の端面によって提供してもよく、このことは、当業者が採用し得る1つの可能な解決策を示している。しかし、同等の構造を第4の摺動部108として使用してもよい。例えば、共振器キャビティ110を、入口104の大きさおよび寸法を調整するための開口部を有したプレートなどの図示しない中間部材によって、燃焼室200の構造部106に取り付ける場合、第4の摺動部108をプレートによって提供してもよい。別の例として、凹部を入口104の下方に提供し、この凹部に沿って第3の摺動部138が摺動することができるような特別な形を構造部106が有しているのであれば、燃焼室200の構造部106の一部を使用して第4の摺動部108を提供してもよい。
【0030】
1つの可能な実施態様として、共振器キャビティ110は、円形の入口104を備えた筒状であってよい。この場合、円形の入口104は、その周囲にフランジを備えており、そのフランジによって、共振器キャビティ110は、燃焼室200のケーシングに取り付けられている。この実施態様では、球状部126は、特定の用途に適合した大きさを有する管状のネックチューブ120の第2の端部124の周囲に形成してもよい。補償アセンブリ130のソケット部132および第1の摺動部134は、特定の幅および厚さを備えるリングによって提供されてもよく、その場合、ソケット部132はリングの内周面に円形溝として形成され、かつ第1の摺動部134はリングの外周面になる。この場合、図1は、補償アセンブリ130の断面図を示してもよい。補償アセンブリ130の第2の摺動部136は、リングの外径に気密に嵌合する内径を有するスリーブによって提供されてよく、リングとスリーブとの間の相対摺動を提供する。さらに、第3の摺動部138は、円縁部に突出部を備えた円形プレートによって提供されてよい。円形プレートは、スリーブと一体に形成してもよい。円形プレートの突出部は、第4の摺動部としてのフランジの端面に沿って気密に摺動可能であり、円形プレートと共振器キャビティとの間の相対摺動を提供してもよい。上記の実施態様は1つの例のみを意図しており、かつ本発明の範囲および用途に関する任意の限定として解釈されないことが当業者には理解されよう。本開示の教示に従って、当業者は、本発明を、共振器キャビティ、補償アセンブリおよびネックチューブの形状、寸法および構造が異なる別の用途に適合させることができ、それらはすべて本発明の保護範囲に該当すると見なされるべきである。
【0031】
別の例示的な実施の形態によれば、図2に示されるように、本発明によるダンパ100の切取模式断面図が提供される。ダンパ100は、周壁102と入口104とにより画定された、箱状または筒状の共振器キャビティ110を備えている。共振器キャビティ110は、図2には示されていない留め具によって、燃焼室200の構造部106に気密に取り付けられている。本発明の例示的な実施態様では、燃焼室200の構造部106は、燃焼室200のケーシングであってよい。構造部106が、共振器キャビティ110のための支持部を提供し、かつ本明細書において記載されているように燃焼室のケーシングに限定されているのではないということが当業者には理解されよう。加えて、共振器キャビティ110と燃焼室200との間の相対運動を補償するために、ダンパ100は、本発明による補償アセンブリ130を通じて共振器キャビティ110と流体接続しているネックチューブ120を備えている。図2に示される実施の形態として、ネックチューブ120は、第1の端部122において、共振器キャビティ110の入口104に気密に取り付けられている。例えば、ネックチューブ120の第1の端部122は、共振器キャビティ110の入口104と一体に形成されている。別の例として、ネックチューブ120の第1の端部122は、共振器キャビティ110の入口104に溶接されていてもよい。この実施の形態において、補償アセンブリ130は、ネックチューブ120の第2の端部124に回転可能に接続されている。
【0032】
本発明の1つの例示的な実施の形態によれば、補償アセンブリ130は、回転補償構造を備えていてもよい。具体的には、補償アセンブリ130は、ネックチューブ120の第1の端部122とは反対側の第2の端部124に形成された球状部126と、球状部126に気密に嵌合しているソケット部132とを備えており、燃焼室200と共振器キャビティ110との間に相対回転を提供してもよい。ガスタービンの作動中、燃焼室200と共振器キャビティ110との間における熱膨張差による相対回転は、補償アセンブリ130により補償または吸収され、潜在的な構造的損傷を防ぐことができる。
【0033】
加えて、補償アセンブリ130は、ソケット部132の反対側に形成された第1の摺動部134と、第1の摺動部134と気密に嵌合している第2の摺動部136とを備えており、第1の摺動部134と第2の摺動部136との間に、ネックチューブ120の長手方向軸線に平行な方向に沿った相対摺動を提供してもよい。ガスタービンの作動中、第1の摺動部と第2の摺動部との間の相対摺動によって、燃焼室200と共振器キャビティ110との間におけるネックチューブ120の長手方向軸線に沿った、熱膨張差による相対運動を補償することができる。
【0034】
さらに、補償アセンブリ130は、第1の摺動部134の反対側の第2の摺動部136に形成された第3の摺動部138と、第3の摺動部138に気密に嵌合している燃焼室200の壁部210に形成された第4の摺動部108とを備えており、第3の摺動部138と第4の摺動部108との間に、ネックチューブ120の長手方向軸線を横断する方向の相対摺動を提供してもよい。図2に示されるように、第4の摺動部108は、燃焼室200の壁部210の表面により提供されている。
【0035】
燃焼室と共振器キャビティとの間の相対回転が顕著であり、かつネックチューブの長手方向軸線およびネックチューブの長手方向軸線を横断する直交方向に沿ったそれらの間の相対回転がわずかである特定の用途において、補償アセンブリの第1の摺動部と第2の摺動部とを一体的に形成してもよく、かつ補償アセンブリの第3の摺動部と第4の摺動部とを一体的に形成してもよいか、または締付具によって固定してもよいことに注意すべきである。この場合、補償アセンブリは、燃焼室と共振器キャビティとの間の相対回転を、ネックチューブの球状部と補償アセンブリのソケット部とによって補償するだけでよい。
【0036】
相対回転と相対運動とを同時に補償する必要がある別の用途において、摺動部対、すなわち第1の摺動部および第2の摺動部ならびに第3の摺動部および第4の摺動部の両方または一方を、ネックチューブの球状部と補償アセンブリのソケット部と組み合わせて使用することができることにも注意すべきである。当業者は、適切な組み合わせの補償構造を理解し、所望の回転補償および/または運動補償を達成することができることを理解するだろう。
【0037】
本発明は、限られた数の実施の形態のみに関して詳細に記載されているが、本発明がそれらの開示された実施の形態に限定されているのではないということが容易に理解されよう。むしろ、本発明は、前述されていないが本発明の趣旨と範囲に適合している、任意の数の変形、改変、代替または類似の配置を含むように変更することができる。加えて、本発明の実施の形態が種々記載されているが、本発明の態様は、一部の実施の形態のみを含んでもよいことが理解されよう。従って、本発明は、上述の記載により限定されるものとは見なされず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0038】
100 ダンパ
102 周壁
104 入口
106 構造部
108 第4の摺動部
110 共振器キャビティ
120 ネックチューブ
122 第1の端部
124 第2の端部
126 球状部
130 補償アセンブリ
132 ソケット部
134 第1の摺動部
136 第2の摺動部
138 第3の摺動部
200 燃焼室
202 内壁
204 外壁
206 開口部
208 ハトメ
210 壁部
図1
図2