特許第5901705号(P5901705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901705ガスタービン用静翼並びにこのような静翼を備えたガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901705
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ガスタービン用静翼並びにこのような静翼を備えたガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20160331BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F01D9/02 102
   F02C7/18 A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-142488(P2014-142488)
(22)【出願日】2014年7月10日
(62)【分割の表示】特願2011-501166(P2011-501166)の分割
【原出願日】2009年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-185647(P2014-185647A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年7月22日
(31)【優先権主張番号】00469/08
(32)【優先日】2008年3月28日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デュッカースホフ・ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ナイク・シャイレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シュニーダー・マルティン
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05488825(US,A)
【文献】 特開2000−199404(JP,A)
【文献】 特開2006−144785(JP,A)
【文献】 特表平09−505655(JP,A)
【文献】 特開2002−322915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(10)用の静翼(20)であって、この静翼(20)が翼頭部(23)と被覆板(21)との間で半径方向に延在する翼本体(22)を備え、この翼本体の内部に冷却通路(30、31、32)が延在し、冷却媒体が前記静翼(20)を冷却するために前記冷却通路を通って流れ、続いて前記静翼(20)から前記タービンを通って流れる高温ガス流(45)に流出可能である、静翼において、
前記翼本体(22)が半径方向において三次元的にがった形を有すること、前記翼本体(22)の内部に、半径方向に延在するある数の冷却通路(30、31、32)が前記高温ガス流(45)の方向に相前後して配置され、かつ前記翼本体(22)の端部に配置された方向変換領域(33、34)によって、前記冷却媒体が方向を変えて前記冷却通路(30、31、32)を順々に流通するように互いに接続されていること、
前記冷却通路(30、31、32)が半径方向において前記翼本体(22)の曲率に三次元的に追従していること、
前記翼本体(22)の内部に、半径方向に延在する少なくとも2つの冷却通路が設けられていること、
前記第1冷却通路(30)の終端が第1方向変換領域(33)によって第2冷却通路(31)の始端に接続されていること、この第2冷却通路(31)の入口の横断面積(Ab2)が前記第1冷却通路(30)の出口の横断面積(Ab1)よりも大きいこと、
前記第2冷却通路(31)の終端が第2方向変換領域(34)によって第3冷却通路(32)の始端に接続されていること、前記被覆板(21)と後縁(28)の一部を冷却するために、冷却媒体を制御して取り出すための絞り装置(39)が前記第2方向変換領域(34)に設けられていること、および前記第3冷却通路(32)の入口の横断面積(Ab4)が前記第2冷却通路(31)の出口の横断面積(Ab3)よりも小さいこと、
前記翼本体(22)が高温ガス流(45)の流れ方向において前縁(27)から後縁(28)まで延在していて、前記翼本体(22)が圧力側と吸い込み側を有していて、この圧力側(46)において前記後縁(28)の手前に、前記後縁(28)の延在方向に対して平行に延在する冷却スリット(29)が設けられ、前記冷却媒体が前記静翼(20)の全長にわたって前記冷却スリットを通って前記第3冷却通路(32)から流出し、前記静翼(20)の後縁(28)を冷却することができること、
前記冷却スリット(29)を通る冷却流を調節するために、縦方向にくまなく分散された制御要素(40)が前記冷却スリット(29)内に設けられていること、
前記制御要素(40)が円形と滴形の2つの異なる形状を有し、これらの制御要素が、縦方向に、形状毎に交互に1つずつ又は複数個ずつ配置されていることを特徴とする静翼(20)。
【請求項2】
第1冷却通路(30)の入口が前記被覆板(21)を通って到達する冷却空気流入部(37)を介して、前記被覆板(21)の上方にある外室に接続されていることと、前記冷却空気流入部(37)を通って流れる冷却媒体質量流量を絞るための絞り要素(38)が前記冷却空気流入部(37)の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項3】
前記絞り要素(38)が1つまたは複数の穴を有する板の形をしていることと、前記絞り要素が前記冷却空気流入部(37)の入口を閉鎖し、前記絞り要素(38)が前記被覆板(21)にろう付けされていることを特徴とする請求項2に記載の静翼。
【請求項4】
前記第1冷却通路(30)の出口の横断面積(Ab1)に対する第2冷却通路(31)の入口の横断面積(Ab2)の比が1.6であることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項5】
前記第2冷却通路(31)の出口の横断面積(Ab3)に対する前記第3冷却通路(32)の入口の横断面積(Ab4)の比が0.9であることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項6】
流れを案内するために、前記第1冷却通路(30)の終端から前記第2冷却通路(31)の始端まで延在する弧状の方向変換要素(35)が前記第1方向変換領域(33)内に配置されていることと、この方向変換要素(35)が前記第1冷却通路(30)の出口の横断面積(Ab1)と前記第2冷却通路(31)の入口の横断面積(Ab2)をそれぞれ、全体面積の33%と66%の2つの部分面積に分割していることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項7】
前記静翼(20)の半分の高さ位置における、前記の3つの冷却通路(30、31、32)の横断面積(Am1〜Am3)が、1:2:1の比であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の静翼。
【請求項8】
前記第3冷却通路(32)が半径方向において外側から内側へ縮小する横断面積を有していることと、通路長さの最初の70%における、外側から内側へのこの横断面積の縮小率が、通路長さの最後の30%における縮小率よりも小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の静翼。
【請求項9】
冷却作用を改善するために、乱流発生用リブ(41、42、43)が前記冷却通路(30、31、32)内に配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の静翼。
【請求項10】
前記乱流発生用リブ(41、42、43)が流れ方向に対して斜めに前記冷却通路(30、31、32)内に配置されていることを特徴とする請求項に記載の静翼。
【請求項11】
前記第1冷却通路(30)が前記前縁(27)の方へ先が尖った三角形の横断面を有し、前記第2冷却通路(31)が長方形の横断面を有し、前記第3冷却通路が前記後縁(28)の方へ先が尖った三角形の横断面を有することと、前記第1と第3の冷却通路(30、32)内の前記乱流発生用リブ(41、43)の高さが前記前縁(27)または前記後縁(28)の方へ低くなっていることと、前記第2冷却通路(31)内の前記乱流発生用リブ(42)が一定の高さを有することを特徴とする請求項または10に記載の静翼。
【請求項12】
熱伝達を改善するために、前記後縁(28)の延在方向に沿ってくまなく分散した突起(44)が前記冷却スリット(29)内に設けられていることを特徴とする請求項に記載の静翼。
【請求項13】
前記静翼(20)がガスタービンのためのものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の静翼。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の静翼(20)を備えたガスタービンにおいて、前記ガスタービンが連続燃焼によって動作し、流れ方向において相前後して2つの燃焼室(14、17)を備え、この燃焼室の後にそれぞれタービン(15、18)が配置されていることと、前記静翼(20)が第2タービン(18)内に配置されていることを特徴とするガスタービン。
【請求項15】
複数列の静翼と動翼が流れ方向において相前後して前記第2タービン(18)内に配置されていることと、前記静翼(20)が2つの動翼の間の中間の静翼列に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンの分野に関する。本発明は、請求項1の前提部分に記載したガスタービン用静翼に係る。
【背景技術】
【0002】
据置型の連続燃焼式大型ガスタービンは工業的な使用において実証されている。このガスタービンの場合、2つの燃焼室が流れ方向に相前後して配置され、各燃焼室にタービンが付設されている。このタービンは各燃焼室で発生した高温ガスによって駆動される。例えば、本出願人によって型式名称GT24/26で提供されているこのようなガスタービンは、例えば、非特許文献1に記載されている。この非特許文献1のさし絵1は本願において図1として示してある。さらに、このようなガスタービンの他の説明は特許文献1から明らかである。
【0003】
図1は連続燃焼式ガスタービン10を示している。このガスタービンの場合、圧縮機11、第1燃焼室14、高圧タービン15、第2燃焼室17および低圧タービン18が軸線19に沿って順々に配置されている。このガスタービンは要約すると次の通りである。圧縮機11と両タービン15(高圧)、18(低圧)は、軸線19の回りに回転するロータの一部である。圧縮機11は吸い込まれた空気を圧縮する。圧縮された空気はプレナムに流れ、そしてそこから第1燃焼室に流れる。この第1燃焼室は、例えば、特許文献2、さらに特許文献3から明らかなように、予混合バーナによって運転される。圧縮された空気が予混合バーナ内に流れ、そこで少なくとも1つの燃料との混合が行われる。この燃料と空気の混合気は第1燃焼室14内に流入する。この第1燃焼室において、この混合気は安定した火炎前面を形成しながら燃焼する。このようにして発生した高温ガスは後続の高圧タービン15で出力しながら部分的に膨張し、そして第2燃焼室17に流入する。この第2燃焼室では、さらなる燃料供給16が行われる。高圧タービン15内で部分的に膨張した高温ガスがまだ高い温度によって、自己着火に基づく燃焼が第2燃焼室17内で行われる。第2燃焼室17内で後熱された高温ガスは多段式低圧タービン18内で膨張させられる。この低圧タービンには、動翼からなる翼列と静翼からなる翼列が相前後して交互に配置されている。
【0004】
図1の公知のガスタービンにおいて、静翼20′は内部冷却される真っ直ぐな翼として形成されている。後縁は、使用される冷却媒体、ほとんどの場合、冷却空気によって冷却される。この冷却空気は少なくとも一部が翼後縁に穿孔された穴を通って吹き出される。静翼の真っ直ぐな延長形状と、それに合わせられた、衝突式冷却インサートによる冷却とによって、効率が制限される。ガスタービンの設計時にこの効率制限をなくすことは利益をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0620362B1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0321809A1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0704657A2号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Joos F.et al.“Field experience with the sequential combution system of the GT24/26gas turbine family” ABB Review 5/1998,S.12−20(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は対策を講じようとするものである。本発明の課題は、公知の静翼の制限をなくし、ガスタービンの効率を高めることができる静翼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴全体によって解決される。本発明にとって、静翼の翼本体が半径方向において三次元的にときおり強く曲がった形を有することと、翼本体の内部に、半径方向に延在するある数の冷却通路が高温ガス流の方向に相前後して配置され、かつ翼本体の端部に配置された方向変換領域によって互いに接続され、冷却媒体が方向を変えて冷却通路を順々に流通するように、方向変換領域による接続が行われていることと、冷却通路が半径方向において翼本体の曲率に三次元的に追従していることが重要である。翼本体の強く曲がった形状により、ガスタービンの高温ガス流との相互作用が著しく改善される。翼本体の外部形状に追従する冷却通路の形状は、静翼の熱的な高負荷を受ける部分の冷却の改善を可能にする。
【0009】
本発明の一実施形態は、第1冷却通路の入口が被覆板を通って到達する冷却空気流入部を介して、被覆板の上方にある外室に接続されていることと、冷却空気流入部を通って流れる冷却媒体質量流量を絞るための絞り要素が冷却空気流入部の領域内に配置されていることを特徴とする。
専用の絞り要素による、翼を通って流れる冷却媒体質量流量の入口側の絞りは、冷却媒体質量流量の正確な調節を可能にし、効率を低下させる不要な損失を回避する。
【0010】
絞り要素は好ましくは1つまたは複数の穴を有する板の形をし、絞り要素は冷却空気流入部の入口を閉鎖し、絞り要素は被覆板にろう付けされている。被覆板が接続している。これにより、冷却空気流を簡単に調節することができる。
【0011】
他の実施形態は、第1冷却通路の終端が第1方向変換領域によって第2冷却通路の始端に接続されていることと、この第2冷却通路の入口の横断面積が第1冷却通路の出口の横断面積よりも大きく、この場合好ましくは、第1冷却通路の出口の横断面積に対する第2冷却通路の入口の横断面積の比が約1.6であることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の実施形態では、第2冷却通路の終端が第2方向変換領域によって第3冷却通路の始端に接続され、被覆板と翼後縁の一部を冷却するために、冷却媒体を制御して取り出すための絞り装置が第2方向変換領域に設けられ、第3冷却通路の入口の横断面積が第2冷却通路の出口の横断面積よりも小さい。第2冷却通路の出口の横断面積に対する第3冷却通路の入口の横断面積の比は約0.9である。
【0013】
絞り装置が流通方向に対して横向きに配向された多数のリブを備えていると有利である。
【0014】
特に、流れを案内するために、第1冷却通路の終端から第2冷却通路の始端まで延在する弧状の方向変換要素が第1方向変換領域内に配置され、この方向変換要素が第1冷却通路の出口の横断面積と第2冷却通路の入口の横断面積をそれぞれ、全体面積の約33%と約66%の2つの部分面積に分割している。
【0015】
さらに、3つの冷却通路が設けられている場合に流れを案内するために、第2方向変換領域の終端と第3冷却通路の始端との間に延在する弧状の2つの方向変換要素が第2方向変換領域内に配置され、この方向変換要素が第2方向変換領域の中央の横断面積をそれぞれ全体面積の約33%の3つの部分面積に分割し、かつ第3冷却通路の入口の横断面積を全体面積の約36%、約36%および約28%の3つの部分面積に分割していると有利である。
【0016】
本発明の他の実施形態は、静翼の半分の高さ位置における、3つの冷却通路の横断面積が、1:2:1の比であることを特徴とする。
【0017】
他の実施形態では、翼本体が高温ガス流の流れ方向において前縁と後縁との間で延在し、かつ圧力側と吸い込み側を有している。この圧力側において後縁の手前に、後縁に対して平行に延在する冷却スリットが設けられ、冷却媒体が静翼の全長にわたって冷却スリットを通って第3冷却通路から流出し、静翼の後縁を冷却することができる。
【0018】
好ましくは、冷却スリットを通る冷却流を調節するために、縦方向にくまなくされた制御要素が冷却スリット内に設けられ、制御要素が少なくとも2つの異なる形、特に円形と滴形を有し、これらの制御要素が、縦方向に、各々少なくとも一つずつの形状を含む組合せで繰り返し交互に配置されている。
【0019】
さらに、被覆板を冷却するために、第2方向変換領域と冷却スリットとの間に、冷却媒体を制御して取り出すための絞り装置が設けられ、この絞り装置が流通方向に対して横向きに配向された多数のリブを備えている。
【0020】
さらに、第3冷却通路が半径方向において外側から内側へ縮小する横断面積を有し、通路長さの最初の70%における、外側から内側へのこの横断面積の縮小率が、通路長さの最後の30%における縮小率よりも小さいと有利である。
【0021】
冷却作用を改善するために、乱流発生用リブを冷却通路内に配置することができる。この乱流発生用リブは、特に、流れ方向に対して斜めに冷却通路内に配置されている。
【0022】
好ましくは、第1冷却通路が前縁の方へ先が尖った三角形の横断面を有し、第2冷却通路が長方形の横断面を有し、第3冷却通路が後縁の方へ先が尖った三角形の横断面を有し、第1と第3の冷却通路内の乱流発生用リブの高さが前縁または後縁の方へ低くなっており、第2冷却通路内の乱流発生用リブが一定の高さを有する。
【0023】
熱伝達を改善するために、面にくまなくした突起が冷却スリット内に設けられている。
【0024】
本発明の静翼がガスタービンで使用されると有利である。ガスタービンは連続燃焼式であり、流れ方向において相前後して2つの燃焼室を備え、この燃焼室の後にそれぞれタービンが配置され、本発明に係る静翼は好ましくは第2タービン内に配置されている。
【0025】
第2タービンは、特に、複数列の静翼が相前後して設けられるように形成され、本発明による静翼が軸方向の流れ方向において中間の静翼列に配置されている。
【0026】
次に、図に関連して本発明を実施形態に基づき詳しく説明する。本発明の直接的な理解のために必要でないすべての要素は省略されている。異なる図において、同じ要素には同じ参照符号が付けてある。流れ方向は矢印で示してある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来技術による連続燃焼式ガスタービンの原理的な構造を示す図である。
図2】本発明の有利な実施形態に係る、図1の連続燃焼式ガスタービンの静翼の側面図である。
図3図2の静翼の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2は静翼を側方から見た図である。この静翼はここでは、本発明の排他的でない有利な実施形態に従い、ガスタービンの低圧タービンのためのものである。この場合、ガスタービンは連続燃焼式で運転される。静翼20は三次元的にときおり強く曲がった翼本体22を備えている。この翼本体は縦方向(ガスタービンの半径方向)において翼頭部23と被覆板21との間で延在し、高温ガス流45の方向において前縁27から後縁28まで達している。両縁27、28の間において翼本体22は外側を圧力側(図2において観察者の側)と(反対の)吸い込み側とによって画成されている。圧力側には、後縁28に対して平行に延在する冷却スリット29が後縁28のすぐ手前に配置されている。冷却空気は翼内部からこの冷却スリットを経て外部に流出し、冷却スリット29と後縁28との間の翼領域と後縁28自体を冷却する。静翼20は被覆板21の上側に形成されたフック状の固定要素24、25によって、タービンハウジングに固定されている。一方、静翼は翼頭部23がロータに密接している。被覆板21の側面にはシール溝26が設けられている。このシール溝は隣接する静翼の間の隙間をシールするために帯状シールを収容する。
【0029】
静翼20の内部構造が図3に示してある。3つの冷却通路30、31、32が翼本体を縦方向に延在している。この冷却通路は翼本体の曲率に三次元的に追従し、高温ガス流45の方向において相前後して配置され、そして冷却媒体が冷却通路30、31、32を順々に方向を変えて流通するように、翼本体の一端に配置された方向変換領域33、34によって互いに接続されている。第1冷却通路30の終端は第1方向変換領域33によって第2冷却通路31の始端に接続されている。その際、第2冷却通路31の入口の横断面積Ab2は、第1冷却通路30の出口の横断面積Ab1よりも大きい。第1冷却通路30の出口の横断面積Ab1に対する第2冷却通路31の入口の横断面積Ab2の比は好ましくは約1.6である。
【0030】
第2冷却通路31の終端は、第2方向変換領域34によって第3冷却通路32の始端に接続されている。その際、第3冷却通路32の入口の横断面積Ab4は第2冷却通路31の出口の横断面積Ab3よりも小さい。第2冷却通路31の出口の横断面積Ab3に対する第3冷却通路32の入口の横断面積Ab4の比は好ましくは約0.9である。この特別な比は、第2冷却通路から第3冷却通路への冷却空気流の減少を補償するために選定されている。第2方向変換領域34と冷却スリット29との間には、外側プラットホーム21と後縁28の一部を冷却するように冷却媒体を制御して取り出すための絞り装置39が設けられている。この絞り装置は本実施形態では、流通方向に対して横方向に配向された多数のリブを備えている。その際、冷却媒体は静翼20の全長にわたって第3冷却通路32から冷却スリット29を経て流出し、静翼20の後縁28を冷却する。
【0031】
相前後して接続配置された冷却通路30、31、32内の流れを案内するために、第1冷却通路30の終端から第2冷却通路31の始端まで延在する弧状の方向変換要素35が第1方向変換領域33内に設けられている。この方向変換要素35は、第1冷却通路30の出口の横断面積Ab1と第2冷却通路31の入口の横断面積Ab2をそれぞれ、全体面積の約33%と約66%の2つの部分面積に分割するように、第1方向変換領域33内に配置されている。
【0032】
同様に、流れを案内するために、第2方向変換領域の中央と第3冷却通路32の始端との間でほぼ平行に延在する2つの弧状の方向変換要素36が第2方向変換領域34内に配置されている。この方向変換要素36は、第2冷却通路31の出口の第2方向変換領域34の中央の横断面積をそれぞれ全体面積の約33%の3つの部分面積に分割し、かつ第3冷却通路32の入口の横断面積Ab4を全体面積の約36%と約36%と約28%の3つの部分面積に分割するように、第2方向変換領域34内に配置されている。
【0033】
静翼20の半分の高さ位置の(中間の)3つの冷却通路30、31、32の横断面積Am1、Am2、Am3は、冷却を最適化するために、好ましくは1:2:1の比である。第3冷却通路32の横断面積は外側から内側へ半径方向に縮小している。この場合、通路長さの最初の70%における、外側から内側への横断面積の縮小率は、最後の30%における横断面積の縮小率よりも小さい。
【0034】
冷却通路のこの採寸により、本発明による湾曲翼の最適な冷却が達成される。
【0035】
第1冷却通路30の入口は外側プラットホーム21を通過する冷却空気流入部37を介して、外側プラットホーム21の上方にある外室に接続されている。冷却空気流入部37の領域内には、冷却空気流入部37を流通する冷却媒体質量流量を絞るための専用の絞り要素38が配置されている。この絞り要素38は1つまたは複数の穴を有する板の形をしている。この絞り要素は外側プラットホーム21にろう付けされ、冷却空気流入部37の入口を閉鎖する。
【0036】
冷却システムの他端には、冷却スリット29を通過する冷却流れを調節するために縦方向にくまなく分散された制御要素40が冷却スリット29内に配置されている。この制御要素40は図において2つの異なる形状、すなわち円形と滴形で現れる。これらの形状はこれら二つに限ったものではない。両形状は冷却スリット29内に縦方向に1つずつ交互に配置してもよいし、または、必要に応じて交互に複数個ずつ配置してもよい。この場合、滴形の制御要素はそれぞれ局部的な高温ガス流れを達成する。熱伝達を改善するために冷却スリット29内で面にくまなく分散した突起44が、流れ方向において制御要素40の手前に設けられている。突起44は半径方向において一定の間隔を有する一方、軸方向の間隔は変化し、翼の中央部が最小であり、静翼の端側の閉鎖面21、23の方へ増大している。これは高温ガス流45の温度分布と調和している。高温ガス流の温度分布は翼の中央部が最高であり、端側の閉鎖面の方に向かって下降している。
【0037】
同様に、冷却作用を改善するために、冷却通路30、31、32内に乱流発生用リブ41、42、43が配置されている。この乱流発生用リブ41、42、43は冷却通路30、31、32内の流れ方向に対して斜めに向いている。
【0038】
翼形に一致して、第1冷却通路30は前縁27の方へ先が尖った三角形の横断面を有し、第2冷却通路31は長方形の横断面を有し、そして第3冷却通路は後縁28の方へ先が尖った三角形の横断面を有する。これに応じて、第1と第3冷却通路30、32内の乱流発生用リブ41、43は高さが前縁27または後縁28の方へ低くなっており、一方、第2冷却通路31内の乱流発生用リブ42は一定の高さを有する。
【0039】
本発明に従って最適化された静翼20が連続燃焼式ガスタービンで使用されると有利である。このガスタービンは流れ方向に相前後して設けられた2つの燃焼室を備え、この燃焼室にはそれぞれタービンが後続している。その際、静翼は第2タービン内に配置され、この第2タービンは流れ方向において相前後して設けられた多数の列の静翼を備え、静翼は中央の静翼列内に配置されている。
【符号の説明】
【0040】
10 ガスタービン
11 圧縮機
12、16 燃料供給部
13 EVバーナ
14、17 燃焼室
15 高圧タービン
18 低圧タービン
19 軸線
20、20′ 静翼
21 被覆板
22 翼本体
23 翼頭部
24、25 固定要素(フック状)
26 シール溝
27 前縁
28 後縁
29 冷却スリット
30、31、32 冷却通路
33、34 方向変換領域
35、36 方向変換要素
37 冷却空気流入部
38 絞り要素(板状)
39 絞り装置(リブ状)
40 制御要素
41、42、43 乱流発生用リブ
44 突起
45 高温ガス流
46 圧力側(翼本体)
Am1、Am2、Am3 横断面積(翼中央)
Ab1〜Am5 横断面積(方向変換領域)
図1
図2
図3